北 海 道 に お け る
Pn
速 度 の 推 定 *
宮 村 淳
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Estimate of Pn Velocity beneath Hokkaido, Japan
] un'ichi M iyamura
Sapporo District Meteorological Observatory
For the purpose of estimating Pn -velocity beneath Hokkaido,
J
apan, the time -term method was applied to the first P-arrival time data which were observed at 21 stations operated byJ
apan Meteorological Agency and the Research Center for Earthquake Prediction, Hokkaido University. 21 crustal events which occurred in and arround Hokkaido were used in this analysis.In comparison with their data accuracy, a stable solution was obtained in calculation. The Pn -velocity was estimated as 7.87士O.10km/s.It was considered that its velocity was lower than that in the slab" (high-V,high-Q) descending from Kurile and ]apan trenches beneat h Hokkaido.
From each station time -term obtained, the crustal structure model in Hokkaido should be expected as follows: the model has a relatively low -velocity or thick crust in the central and northern parts of Hokkaido and the eastern Pacific coast of the Hidaka region, and a relatively high -velocity or thin crust in the southwestern and eastern parts of Hokkaido.
~ 1. はじめに 北海道における最上部マントルのP波速度(Pn速 度)の推定は,乙れまでにいくつかなされている. たとえば,自然地震データの解析では長宗(1968) による北海道全体についてのもの, Suzuki (1978) による北日本についてのものがある.一方,人工地 震データの解析で、はOkadaet al.(1973)による北 海道西部についてのものがある. 一般に,走時解析によりPn速度を推定する場合, 自然地震データの解析では広範囲のデータが得られ るものの震源要素の不確定さによる精度の問題があ り,また,人工地震データの解析では走時データの 精度は良いが視IJ線を十分長く取ることが難しいとい った問題があり,それぞれに一長一短がある. 吉井(1971)はとうした問題を解析するひとつの 試みとして,全国に展開されている気象庁地震観測 網による十分長い測線で得られた多数の自然地震デ ータに,人工地震データの解析のために開発された タイムターム法を適用する乙とで統計的により信頼 度の高い解析を行なって,東日本および西日本にお ける平均的なPn速度を推定した. 乙の調査では正吉井(1971)と同様に北海道周辺 に発生した自然地震の走時データにタイムターム法 を適用して,北海道における平均的なPn速度を推起 した.また,得られた各観測点のタイムタームから 北海道の地殻構造についても簡単に考察した. ~ 2. 解析資料 解析に使用した観測点21点の位置および地震21個 の震央をFig.1I乙示す.観測点はできるだけ検知能 力が高いこと,北海道全体に分布することを条件と して,気象庁 (JMA)の高感度地震観測点,旭川12 CAS 2),智"路2(KS 2),広尾2(HR 2), 室蘭2 CMR 2)の76型地震計,網走CABA),根室CNEM) の67型地震計,および十勝岳A点 (TKA)のA74型 地震計の合計7点と北海道大学理学部地震予知観測 地域センター CRCEP)の 微 小 地 震 観 測 点 , 苫 前 (TOI) ,浜益 CHAM),積丹 (SHK),今金(IMG), 上の国 (KKJ),恵山(ESH),みすまい CHSS),日
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Received Aug. 4, 1988 林札幌管区気象台 K U 416 験 震 時 報 第52巻 第1-2号 44・ 42
・
40. 140。 142・
144・ 146・
148・
Fig. 1 Distributions of epicenters and seismo-logical stations. x epicenters • : JMA stations0 :
RCEP stationsDa te Origin time Epicenter Depth Hag NO h m s Lat.(N) Lon. (E) km Har. 20,1984 6 42 7.6 42.088・139.308・ 14 4.2 Apr.. 2,1984 16 14 44.4 42.373・144.745・ 18 3.8 Apr. 3,1984 5 4 40.0 46.505・141.332・ 20 5.0 Oct. 1,1984 5 15 30.0 42.010・140.098・ 11 3.5 Nov. 11,1984 20 24 49.9 40.242・142.413・ 18 4.0 FEB. 2, 1985 20 6 47.6 43.738・147.312・
。
5.3 HAR. 6,1985 135831.3 44.482・140.792・ 19 4.0 APR. 13,1985 11 32 31.6 43.540・140.745・ 5 3.9 AUG. 24,1985 18 9 3.9 43.670・146.670・ 20 4.7 10 NOV. 3,1985 12 1547.0 44.043・139.473・。
4.1 11 NOV. 15,1985 20 56 22.5 44.133・147.685・。
4.8 12 FEB. 16,1986 19 54 3.5 42.688・140.172・。
3.6 13 HAR. 2,1986 5 33 58.7 40.473・140.152・ 16 4.4 14 APR. 16,1986 215216.6 43.598' 147.512・。
6.2 15 HAY 17.1986 839 10.7 44.190・142.075・。
4.2 16 HAY 26,1986 121133.1 40.078・141.203・ 11 4.4 17 JUN. 20守1986 19 7 56.4 40.412・139.112・ 14 4.1 18 AUG. E,1986 3 36 25.7 43.725・140.058・。
4.0 19 :'UG.l0,1986 175039.3 40.678・140;815・ 10 4.5 20 NC・13,1936 2; 44 8.1 43.803・141.848・ 1: 5.3 21 J;;~. 23.1987 026 17.8 41.820・143.710・ 5 4.0 Table Eart hquake parameters used i n t his study. T-0/8.0 (sec) 25REDUCED TRAVEL TIME CURVE
20 15 1 0 ~。一。 o :'+>。い a 。.:~ 8~_. 。句ピ・3 プペ。 tP 00。 。。ぁコ岱ー。. 向。o~':..ooov 1込:J:ii:~~骨%ぺ。身。 0& 。、 _ 6.付時伊
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ムー-一一一一一_CL_一一ーー一一一一ー一一一一一一ーーーー一一一一ー一一一一一一ーー一一ー一一一一 F h u ー10 1 O 0 2 O 0 3 O 0 -400 500 600 700 800 900 1 000 0 (km) Fig.2 Reduced travel time plots for all data versus epicentral distance.The ordinate is T-D/8, where T is travel time and D is epicentral distance.
高(HIC),三石 (MUJ),えりも (ERM),浦幌 (U だし,未刊分については地震速報によった). 気象 RHλ 弟子屈 (TES),訓子府(KNP),赤岩(AKA) 庁で、は1983年に震源計算法の改良および使用する走 の合計14点を使用した. 時表の変更がなされた〔浜田・他(1983),浜田(1984))
表には,使用した地震の震源要素がまとめである. 乙とから, 1984年以降ζl発生した地震を対象とする 震源要素は地震月報に記載された値を採用した(た 乙とで、震源要素の均質性を保つようにした.また,
-REDUCED TRAVEL TI
門E CURVE
T-0/8.0 (sec) 2S 20 15 10 a - 2 8。
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5 。...ーーーー一一ー一一一一ーーーーー一一ーーーーーー一ーーーーーー一一一ーーー一一『ーー一ーーーー一ー R U -10 100 200 300 400 500 600 700 800 900 1000 0 IkmlFig.3 Reduced travel time plots for 197 data which were finally used in this study. τne ordinate is the same as that in Fig.2. VELOCITY km/s 震源から観測点までの伝播経路ができるだけ片寄ら ないように,かっ,その伝播経路が海溝付近から北 海道下へ潜り込むりソスフェア(スラブ)内を通過 しないような地震をできるだけ選んだ.震源の深さ はいずれも 20km以浅 lζ求まったもので,決定精度か ら考えて地殻内 lζ発生した乙とは間違いない. P波初動到着時刻は, JMA観測点は月報の報告 値, RCEP観測点はルーチン処理による験測値を採 用した.なお,十勝岳A点については,現地で直接 験測した値を使用した.乙れらの初動データには, ip. P
・
ePをすべて含んでいるが,走時曲線上で明 らかに他のデータから逸脱したものは除外した. Fig.2は, Fig.1!C:示した観測点一地震に対して 得られたすべてのP波初動走時データを示している. 震央距離150回よりも近距離では地殻内を伝播して きた直接波が初動となり,遠距離ではモホ面直下を 伝播してきた屈折波が初動となって観測されている 乙とを示している.したがって,震央の誤差を考慮 して,震央距離180回以上の走時データを解析に使 用する乙とにした. S. D.9 e c 10 4。
↓
。
Fig.4 Distribution of standard deviations of solutions versus Pn -velocitv for the time -term solutions. ,18 験 震 時 報 第52巻 第1-2号 RESIDUAL(sec l 6
TRAVEL T
I
門E RESIDUAL
4 2 4奇
訟
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a 0 十ーーー一ーー一一宅対~噌<Ð -ミヱラぐ品。'~-_:.Jlー一一一ー一ーーーーーーー一一一ーーーレ
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:
いもナ、叫しょ。円。
円 4 -4 -ー6 100 200 300 4-00 500 600 700 800 900 1000 0 (kmlFig.5 Travel time residuals for the solutions derived by time-term method.The ordinate is the same as that in Fig.2. ~ 3. 解析方法 タイムターム法によるPn速度の推定では!地殻内 に発生した j番目の地震から射出したP波がモホ面 で 屈 析 し た あ と 番 目 の 観 測 点 に 伝 わ っ て き た 時 に観測される走時Tijは, T ij= Dij /V
+
Ai+
Bj で近似できる.乙乙で, Dijは震央距離,V
はPn速 度, Ai, Bjはそれぞれ観測点および震源に関する タイムタームである.Pn速度の解析においてタイム タームを含める乙とは,各観測点や震源の直下の地 殻構造による影響を差し引くことになるので,単純 な見かけ速度の解析に比べるとより真の速度を反映 した結果を期待できる.前節で述べた資料に基づき Tijおよび DijをデータとしてAi,BjおよびVを最 小自乗法的に求めた.タイムターム法の計算は Me-reu(966)によった. 実際の解析においては,精度の悪いデータはでき るだけ避けなければならないが,今回の解析で=はル ーチン処理による験測値を原則として使用している ため,あらかじめ精度の悪いデータを取り除くこと は難しい.そ乙で,より精度の高い結果を得るため, 今回は便宜上次の手順で解析した.まず,最初に用 意した走時データセットに対してタイムターム法を 適用し,その結果得られたAi,BjおよびVから走 時残差を計算する.乙の時,大きな残差を示す走時 データをいくつか取り除いて新しい走時データセッ トを作成し,再びタイムターム法を適用する.乙の 操作を走時残差がすべてある範囲内におさまるまで 繰り返し,最終的に得られた解を推定値とした. ~ 4. 解析結果 228個の走時データからなるデータセットに対し て,走時残差が士 1秒以内になるまで計算を繰り返 した.最終的には197個の走時データに対して解析 した.その走時曲線をFig.31乙示す.解析の結果得 られたPn最小日乗速度は 7.87土0.10lan /sで,それ に対するデータ全体の標準偏差は0.46秒である. Fig.4 R:はPn速度に対する標準偏差の分布を示す. 最小自乗速度7.87lan/sR:鋭い谷が見られ,安定した 収束解が得られた乙とがわかる.参考までに,タイ ムターム法で処理したあとの走時残差の分布をFig. - 18-1
4
0
01
4
2
01
4
4
0146
046
01
4
0
01
4
2
0144
01
4
6
0 Fig.6 {al Distribution of the relative value of time-term for stations in cases where the time-term at IMG is regarded as zero. • : positive value0 :
negative value{bl Average travel time residuals Qf teleseismic P-wave for 17 RCEP stations by Nakanishi (1986). Symbols are the same as in {al.
Q
-20 験 震 時 報 第52巻 第1-2号 5 IC示す.Fig.2IC見 ら れ た よ う な , 走 時 が 同 じ 震 央 距 離 に 対 し て5秒前後の幅を持つ分布に比べると, タイムタームの導入lとより分布のばらつきはかなり 小さくなった乙とがわかる. ~ 5. 考 察 ま ず , 得 ら れ た 最 小 自 乗 速 度 に つ い て 考 察 す る . 長 宗 (968)は, 1967年 弟 子 屈 地 震 の 走 時 解 析 か ら 北 海 道 に お け る 見 か けPn速 度 に つ い て7.7km/sの値 を得た.Suzuki (978)は 北 日 本 内 陸 部 を 伝 わ るPn 地 震 波 線 の 区 間 速 度 に つ い て7.5--7.7 km/ sの値を得 た.一方, Okada et al.(1973)は人工地震による 走 時 デ ー タ と 重 力 デ ー タ ( ブ ー ゲ ー 異 常 ) の 解 析 か ら北海道西部のPn速 度 を7.5回/sとした.今回得ら れ た 結 果 は 乙 れ ら の 値 に 比 べ る と や や 大 き い が , 海 溝 付 近 か ら 潜 り 込 む ス ラ ブ のPn速度のように8.0km /sを越えるものではなく,データの精度の割にはか な り 妥 当 な 値 が 得 ら れ た . し か し , 今 回 の 解 析 で は Pn速 度 の 地 域 性 や 深 さ 方 向 へ の 速 度 増 加 な ど を 考 慮 し て い な い た め , 今 回 得 ら れ た 結 果 に そ れ ら の 影 響 が 含 ま れ て い る 可 能 性 が あ り , 乙 れ 以 上 の 詳 細 な 議論はできない. 次lと,得られたタイムタームについて考察する. 使 用 し た 震 源 要 素 に は 不 確 定 さ が あ る た め , 震 源 の タイムタームBjに つ い て 考 察 す る こ と は 大 変 難 し い が , 観 測 点 の タ イ ム タ ー ムAiについては,その相 対 値 の 分 布 を 考 察 す る 乙 と は 可 能 で あ ろ う . Fig.6(aHc各 観 測 点 の タ イ ム タ ー ムAiの 相 対 分 布を示す.Fig.6(b)は中西(1987)に よ り 求 め ら れ たRCEP17点(今回使用した観測点とは一部異なる) に お け る 遠 地 地 震 に 対 す る 平 均 相 対 走 時 残 差 の 分 布 で あ る . 細 部 で は 差 異 が 見 ら れ る も の の , 全 体 の パ タ ー ン は よ く 似 て い る . ま っ た く 異 な る デ ー タ か ら 得られた2つの分布はし、ずれも地殻構造を反映する 情 報 で あ り , 両 者 が 互 い に 同 様 な パ タ ー ン を 示 す 乙 とは,今回得られたAiの 分 布 が 北 海 道 の 地 殻 構 造 を反映している乙とを示す. Fig.6(a)に つ い て 簡 単 に 考 察 す る と , 北 海 道 南 西 部 お よ び 東 部 で は 相 対 的 に モ ホ 面 が 浅 い か あ る い は 相 対 的 に 高 速 度 の 地 殻 が 存 在 し , 北 海 道 中 央 部 北 部 お よ び 日 高 地 方 の 太 平 洋沿岸では相対的にモホ面が深~\かあるいは相対的 に 低 速 度 の 地 殻 が 存 在 す る 乙 と が 予 想 さ れ る . ~ ~. お わ り に 今 回 の 解 析 に 使 用 し た デ ー タ は ほ と ん ど が ル ー チ ン 処 理 に よ る 験 測 値 で あ っ た た め , 必 ず し も 十 分 な 精 度 が 保 証 さ れ て い な い . 再 験 測 ・ 震 源 再 決 定 に よ る 精 度 向 上 の 余 地 は ま だ あ る . ま た , 地 殻 構 造 の 地 域 性 や 深 さ 方 向 へ の 速 度 増 加 の 影 響 に つ い て の 検 討 な ど , 興 味 あ る 検 討 課 題 が 残 さ れ て い る . 謝 辞 北 海 道 大 学 理 学 部 地 震 予 知 観 測 地 域 セ ン タ ー に は 貴 重 な デ ー タ の 使 用 を 快 諾 し て い た だ き ま し た . 旭 川 地 方 気 象 台 十 勝 岳 火 山 観 測 所 に は 験 測 の 便 宣 を 図 っ て い た だ き ま し た . 札 幌 管 区 気 象 台 大 沢 光 雄 観 測 課 長 に は 原 稿 を 読 ん で い た だ き ま し た . 記 し て 感 謝 いたします. 参 考 文 献 浜 田 信 生 ・ 吉 田 明 夫 ・ 橋 本 春 次 ( 1983):気象庁震源 計算プログラムの改良,験震時報, 48, 35--55. 浜 田 信 生 (1984) 近 地 地 震 用 走 時 表 の 再 検 討 , 気 象研究所研究報告, 35, 109--167. Mereu, R.F.(1966) : An iterative method for solving the time-term equatlons, Am. Geop-hys. Union Geophys. Monograph, No. 10, 495 --497.
Okada, Hs., S. Suzuki, T. Moriya and S. Asano
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