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健康危機管理―産学官連携を通じて次の災害に備えるために―

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J. Natl. Inst. Public Health, 68 (2) : 2019 73

健康危機管理

―産学官連携を通じて次の災害に備えるために―

古屋好美

甲府市保健所

Preparedness and response in public health of Japan:

Prospects for more resilience by industry-academic-government

integrated system toward all hazards

Yoshimi Furuya

Kofu City Health Center, Department of Health and Social Welfare, Kofu City

<巻頭言>

わが国の地域保健における健康危機管理の歩みは平成に入ってから始まり,約30年が経過しました. わが国はこの間,多彩な自然災害,SARS や2009年新型インフルエンザ・パンデミックなどの新興感 染症,テロなど様々な危機を経験しました.平成17(2005)年「地域保健検討会中間報告」で保健所 が健康危機管理12分野の拠点とされ,以後,地域保健の現場である保健所では全国保健所長会協力事 業等を通じて,さまざまな準備や実経験の共有を実施してきました.その結果,日常遭遇する健康危 機管理は地域保健の中核をなす重要な分野となり,日々の保健衛生行政にしっかりと根付いたと言え ましょう.一方で,今後発生の懸念される南海トラフ地震や国際情勢の複雑化と社会情勢の変化に伴 う人的災害など,「未曾有の」または「想定を超える」災害への備えは必ずしも十分ではありません. 昨今の自然災害の大規模化・多様化とその対応に要する資源・労力は多大であり,とりわけ保健医療 は人命・健康に直結する分野であることから最優先課題の一つです. 東日本大震災は地域保健にとっても未曾有の大災害として,圧倒的な人的・物的資源の不足・偏 在と需給調整の困難さを経験したことから,公衆衛生における支援体制構築への期待が高まり,2018 年 3 月に「災害時健康危機管理支援チーム(DHEAT)」創設の運びとなりました.同年 7 月には西日 本豪雨に対してDHEATが初めての派遣となり,活躍しました.このように健康危機管理に対する実 務支援が開始されるとあらためて指揮調整の意義が重要となってきました.また,後方支援,ロジス ティクスの意義も明らかとなってきています.これらの要となる機能を体制の要素とする危機管理調 整システム(危機対応システム)があります. 一方,大災害は住民にとってはもちろんのこと,行政にとっても過酷で辛い経験です.行政に携わ る人々も被災地の住民であり,被災者でもあります.これを乗り越えるには,被災自治体にあっては 連帯感・共感・次なる災害へ残せる教訓を得ることが重要ではないでしょうか.現状を直視して最善 を尽くし,未来へ託せる教訓を残すことこそが,今私たちにできる最善の準備です.2017年 4 月,災 害時にトップがなすべきこと協働策定会議による「被災地からおくるメッセージ 災害時にトップが なすべきこと」は,被災経験のある市町村長からの貴重なメッセージで,首長間で教訓を残したもの と言えましょう.この中には保健医療に直接関わる項目や危機管理全般に渡る項目があり,その中に 「職員を意識的に組織的に休ませること」というのがあります.産業保健では予てより安全配慮義務 が重視されていますが,災害時への適用も視野に入ってきていると考えられます.危機管理調整シス テムは,担当者が長時間ずっと同じ業務を担うのではなく,人員交代を可能とするシステムというこ とでこの趣旨にもかなっています. 地域保健にとって産業分野や学術分野は重要なパートナーであり,災害についても平時から連携を 深めたい分野です. 2011年東日本大震災後の日本公衆衛生学会公衆衛生モニタリング・レポートに は情報マネジメントによる被害軽減への展望の記述があり,「総合的解釈,追加危機予測も行ってい くための統合された中枢組織」,「限界を認め現実を前提に支援内容を検討」,「マネジメント組織を確 立し,現場でも柔軟に対応」,「学際性とネットワークを活用」とする提案がされました. 7 年後の

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2018年 7 月の西日本豪雨では,内閣府官民合同チーム「ISUT(Information Support Team)」が国と地 方・民間の災害情報ハブ推進チームとして, 1 ヶ月間災害対応に貢献し,2019年度からは本格稼働する 予定ということです.これは災害情報管理における産学官連携の先進事例でしょう.大災害に対する 対策・対応には,オール・ジャパンの連携体制が求められると考えますが,その枠組は未だ明らかで はありません. DHEAT創設を契機として,災害時の標準的な対応(反応的に行う対応と事案毎に柔軟に行う対応) としての危機管理調整システムを検討する機会が到来したと考えます.この企画では,産学官協働を 通じてわが国の健康危機管理体制を強化することを目指します.そのため,執筆者による各分野の現 状,すなわち産学官が共通して推進すべき危機マネジメントの基本システムや危機管理体制強化へ先 行した取り組みが既にあることなどから,対応の方向性や課題などを議論します.執筆者一同,本企 画に携わらせていただいたことに対し,関係各位に心より感謝を申し上げます.また,今後,この基 本システムである危機管理調整システム(危機対応システム)の社会実装ならびに産学官連携を推進 できるよう,多くの方々のご理解とご協力をお願い申し上げます.

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