山梨肺癌研究会会誌 9巻2号 1996
気管支鏡で病理診断が得られなかつた
症例の治療方針
山梨厚生病院 呼吸器外科 虎走英樹 有泉憲史 橋本良一 呼吸器内科 池田華子 はじめに 気管支鏡下に病理診断が確定出来ない肺病変に対する治療方針は苦慮するこ とが多い。特に最近ではCT下生検や胸腔鏡手術の進歩で、より適切な方針を 決めるのに迷うことも多くなった。我々の施設での基本方針と症例を提示し、 問題点を再考するたたき台としたい。我々の施設での基本方針を示す。
L 画像診断などで悪性が強く疑われ手術的切除が可能な場合は、開胸生検にて 迅速病理診断で確診後切除する。 2.画像診断などで悪性が強く疑われるが手術的切除は不可能と思われる場合は、 経皮的針生検などにより確診を試みる。 3.良性の方がより疑われる場合は、経皮的針生検を試みる。施行困難な場合や false negativeが心配される時などは胸腔鏡下生検を行う。 Spicular sign,Pleurai tttt indentationを伴う1,2x l.Ocmの腫瘤を認める。 開胸生検施行、迅速病理 診断で高分化腺癌と確診 開胸生検を施行した症例 ユ, 画像診断で悪性が強く疑われ手術的切除が可能と思われた症例 胸部単純X−P;左上肺野に1.Ox1.Ocmの辺縁不鮮明、内部均一な淡い腫瘤 状陰影を認める。 73歳 男性CT;左S1+2に
。懸 』灘鳶 } ぼ /§ 一94一平成8年9月1日 左肺上葉切除術+リンパ節郭清R2a施行。 2.臨床経過で陰影の増大を認めた症例 胸部単純X−P;左中肺野に0.8x1.Ocn1の辺縁鮮明、内部均一な淡い腫瘤状 陰影を認める。腫瘤状 陰影は1.Ox1.8cmと 増大を認めた為、開胸 生検施行、迅速病理診 断で腺癌と確診、左肺 下葉切除術+リンパ節郭 清R1(+4.5.6.7.)施行。
59歳 女性
難∨
驚 ]賠s.m.◎6 [M〔げ 3.良性の方がより疑われたが経皮的針生検を行ってもfalse negativeが心配さ れた症例 胸部単純X−P;左中肺野に1.5x2.Ocm辺縁鮮明、内部均一な淡い腫瘤状陰 影を認める。CT;左舌区末梢に模状のair−space consolidation,肺野条件で索 状のopacityを呈す。 ず経皮的針生検を行っ てもfalse negativeが 心配され、患者側の希 望もあり開胸生検を施行 迅速病理診断で非特異的 肉芽腫と確診 現在ならば胸腔鏡下生検 を行う症例である。 一95一山梨肺癌研究会会誌 9巻2号 1996 画像診断などで悪性が強く疑われ手術的切除が可能な場合でも、高齢者やhigh risk症例の場合、経皮的針生検にて確定診断を得る方針である。 考察 気管支鏡下に病理診断が確定出来ない肺病変に対する治療方針は苦慮するこ とが多い、我々の施設では画像診断などで悪性が強く疑われ手術的切除が可能な 場合は、開胸生検を施行する方針《高齢者やhigh risk症例の場合は除く)であ が、施設によりこの場合方針はまちまちである。 白木ら1) は開胸肺生検施行の理由として、1.気管支鏡施行2回以上 2.経皮肺 生検 陰性 3.胸部X線像 a)spicula,notch,pleural indentation b)過去の X線像に比し増大傾向 4.腫瘍マーカーの上昇 5.検査拒否 等を挙げている。 又、篠原氏2)3) は肺野病変に対してCTガイド下経皮的針生検は98%の命中 率、88%の陽性率が期待でき有用であり、径が2.1cm以上の病変での命中率100 %であり、特別な場合を除き径2cm以上の病変には開胸肺生検を施行する適応は なかろうとも報告している。 特に、我々が画像診断などで悪性が強く疑われ手術的切除が可能な場合、開胸 生検を行う理由のひとつして,経皮的針生検による腫瘍細胞の播種及び胸壁への Imp lantat i onの回避iがある。 Struve−Chr i stensenら4) は、経皮的針生検は針生 検経路に89%の悪性細胞を認めるが、臨床上lmplantationを形成するのは0.04% であり経皮的針生検は有用かつ安全性が高いと報告している。確かに経皮的針生 検による腫瘍細胞の播種及び胸壁Implantationの報告例も少なく、本邦では数例 5)6》のみである。 しかし、Imp lantat i onの可能性や、報告例等は見当たらない が、針生検操作による血行性遠隔転移の可能性も否定できない為、悪性が強く疑 われ手術的切除が可能と考えた場合開胸生検を施行している。ただし、手術によ る開胸生検の侵襲の大きさ、合併症を考慮し慎重な症例の選択が必要であると考 える。 一96一
平成8年9月1日 結語 気管支鏡で病理診断が得られなかった症例の治療方針 1.画像診断などでより良性の方がより疑われる場合は、まず経皮的針生検を試る。 2.画像診断などで悪性が強く疑われ手術的切除が可能な場合は、開胸生検を行う。 文献 1)白木 硬、他:当院における肺癌診断の現状一開胸肺生検を中心にして一。 岐阜県医師会医学雑誌:141−145、1985 2)篠原義智:CTガイド下肺針生検の成績と限界。 Modern Phys .i cian15:745 −750,1995 3)篠原義智:肺野微小病変に対する各種生検診断法の問題点と工夫。Modern Physician15:1117−1126,1995 4) Struve−Christensen、 E.:latrogellic dissemination of tu皿or cells。 Disse皿ination of tu皿or cells along the needle track after percutanaous transthorac i c lung I)iopsy.Dan.澱ed.BulL,25:82,1978. 5)高橋 孝、他:経皮的肺針生検穿刺部位に1皿plantationを形成した子宮癌肉 腫肺転移の1例。日胸30:1333−1337 1992. 6)市場正敏、他:肺癌Needle biopsy後の胸壁播種の1例。肺癌、15:337, 1975. 一97一