Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/
Title
合着時の調整のとき,どのような器具で行うのがベスト
なのかわかりません。
Author(s)
四ツ谷, 護
Journal
歯科学報, 120(1): 96-98
URL
http://hdl.handle.net/10130/5119
Right
Description
クラウン装着前に行う口腔内試適時には,最初に 1)隣接歯間関係,次に2)クラウンの適合状態,続 いて3)咬合接触状態の順に確認・調整を行いま す。通常のクラウン(全部金属冠・メタルコーピン グを用いた前装冠・ジルコニアコーピングを用いた 前装冠・フルジルコニアクラウン)では,機械的強 度が高いため,咬合調整を含めたすべての調整を装 着前に行うこととなります。しかしハイブリッド型 コンポジットレジンを用いた CAD/CAM 冠や,二 ケイ酸リチウムに代表されるガラスセラミックスク ラウンでは,支台歯との接着後の咬合調整が中心と なります。口腔内試適時の調整手順は理解している ものの,具体的な手技・器材の取り扱いに悩んでい る若手医局員も少なくないと思います。ここでは症 例ごとに異なる1)隣接歯間関係と3)咬合接触状態 に焦点を絞ってポイントを説明していきます。2) クラウンの適合状態については,前回の臨床のヒン ト1) を参照してください。 1.隣接歯間関係の確認・調整 隣接面の接触状態の調整は,ラボとのコミュニ ケーションが非常に大事です。従来法であるダウエ ルピンを用いた作業用模型上では,材料の寸法変化 だけで な く,歯 型 分 割 に よ る 誤 差 が 認 め ら れ ま す2) 。なじみのラボへの技工発注では,製作仕上げ 時の模型上で「通常」や「きつめ」という細かな技 工指示を行うこともできるようになります。しかし ながら,「ちょっと き つ め」や「い つ も よ り き つ め」といった漠然とした指示では困ります。具体的 には「35μm の咬合紙が抵抗をもって引き抜けるよ うにしてください」や「隣接面コンタクトをワンペ ンシル(ツーペンシル)削去してください」のよう に,定量化された器具を用いた表現により,チェア サイドでは常に同じスタートラインに立つことがで きます。このルーティンワークにより診療効率の向 上が図れ,経験値の積み重ねができます。 実際の口腔内での確認で留意すべき点は,開口時 と閉口時では歯間離開度が異なるという点です。通 常の歯間は,咬合力が作用しない安静時には3∼12 μm 程度の間隙があり,咬頭嵌合時には上下顎歯列 が縮小するため食片圧入を防止するといわれており ます3) 。一般的に用いられるコンタクトゲージの適 切な使用方法として,50μm のコンタクトゲージは 入るが110μm のコンタクトゲージは入らない状態 を適正と考えます。調整前の状態でよくみられる50 μm のコンタクトゲージが入らない状況は,前述の ような理由で生理的動揺を妨げてしまい,その結 果,咬合時違和感が生ずる原因となるかもしれませ ん。一方,110μm のコンタクトゲージが入る状況 では,歯周組織の状態など骨植に影響する因子を考
臨床のヒント
Q&A
クラウンブリッジ補綴系
Q&Aコーナーは,東京歯科大学の3病院の臨床研修歯 科医から寄せられた質問に対しての回答です。回答は本 学3施設の専門家にお願い致します。内容によっては基 礎や臨床,あるいは歯科や医科と複数の回答者に依頼す る場合もあります。毎号掲載いたしますので,会員の皆 様もご質問がございましたら,ぜひ東京歯科大学学会ま でeメールかファックスで依頼していただきたいと存じ ます。必ずご期待に添えることと思います。今号はクラ ウン装着時の器具に関する質問です。Question
合着時の調整のとき,どのような器具で行うのがベストなのかわかりません。Answer
96 ― 96 ―慮し,仮着で様子をみる方がよい場合もあります。 また最後方臼歯の補綴では,クラウン装着後,しば らくするとコンタクトが広がってくる場合が多々み うけられます。最後方歯近心隣接面の接触は「50 μm のコンタクトゲージが抵抗をもって挿入でき る」状態にすることで,食片圧入を防止できます。 その他に隣接歯間関係の検査に利用できる器材に は,デンタルフロスと咬合紙があります。デンタル フロスを利用する方法は,患者本人がホームケアで 使用することもあるため,隣接面接触点を通過する ときの抵抗感から判定することになります。試適前 に補綴部位だけでなく歯列全体の接触強さを把握 し,クラウン試適時にも同様に確認することが重要 です。また試適時のデンタルフロスは,頰側もしく は舌側の片方を固定して接触強さを確認するなど慎 重に扱う必要があります。一方咬合紙は,隣接面接 触点の調整部位を印記するのに用います。小さく 切った咬合紙を補綴装置に密着させて口腔内に挿入 する,もしくは隣接歯に密着させてから補綴装置を 挿入することで,隣接面のどの部分の接触が強いの かが確認できます。この操作は,比較的前歯部にお いては容易に行うことができます。しかし臼歯部で 咬合紙の挿入が困難な場合は,隣接面に咬合紙や油 性マジックでマーキングしてクラウンを試適するこ とで接触点を確認することが可能です。 2.咬合接触状態の確認・調整 咬合接触検査で用いる器材は,咬合紙,レジスト レーションストリップス,オクルーザルインディ ケーターワックス,シリコーンゴム検査材,感圧 フィルムがあります。間接法により製作されたクラ ウンは,通常どんなに慎重に作業した場合でも口腔 内で200μm 程度高い状態で完成します3) 。これは, 印象材や模型材の変形・寸法変化あるいは咬合採得 の不備による誤差だけでなく,咬頭嵌合位の再現誤 差も大きく影響するからです。咬合調整が完了した クラウンの誤差は,咬合性外傷や知覚過敏症状が起 こらないように最終的には10μm 以下になることが 望ましく,口腔内試適でこの誤差を埋めなくてはい けません。 咬合紙は,一般的に約35μm の厚さのものを2色 (咬頭嵌合位・偏心咬合位)用います。咬頭嵌合位の 調整では,患者座位あるいは立位の状態でタッピン グをしてもらった咬合紙記録の色の抜け方(咬合紙 の穿孔,色素の剥離)を確認します。例えば下顎大 臼歯に単冠を装着する場合,両隣接歯に咬合接触が 認められない場合は,100μm 程度の過高の状態と 判断できます。この段階では,カーボランダムポイ ントなど形態修正に適した器具を用いても構いませ ん。調整を進めるに従い,まず補綴部位から離れた 反対側に咬合接触がみられるようになります。その 後,両隣接歯においても咬合接触が認められるよう になったら,表面粗さの少ないシリコーンポイント に変更して仕上げていくとよいでしょう。また対合 歯とのクリアランスが十分でなく,補綴装置の穿孔 が心配な場合には,メジャーリングデバイスを用い 補綴装置の厚さを確認しながらの慎重な作業が必要 です。 レジストレーションストリップスは厚さ12μm の フィルムで,引き抜き試験に用います。色素の印記 はできませんが,咬頭嵌合位での咬合接触部位の同 定が容易に行うことができます。1歯対2歯咬合の 場合,フィルムの幅を考慮して咬頭が咬みこむ辺縁 隆線にストリップスを位置させると確実な操作とな るでしょう。 ワックスやシリコーンゴムを用いた方法は,咬合 接触部位の観察に優れるので,咬合紙の色素が付着 しにくいセラミックス材料の咬合調整時に利用する と効率的です。また感圧フィルムを用いる方法は, 早期接触や咬頭干渉の有無などをデジタル化された データで確認することができるため,術前・術後の 咬合接触状態の把握に用いるとよいでしょう。しか しながら繰り返しの咬合接触状態の確認を,複数回 行うこととなる補綴装置の咬合調整においては,咬 合紙やレジストレーションストリップスを用いるこ とが経済的にも効率的な手技となります。 3.補綴装置の研磨 チェアサイドにおける回転式研磨は,クラウン装 着前の最終段階であり,鏡面研磨と同程度の表面粗 さを得るために正しい順序で丁寧に行うことが大切 です。研磨は同一方向でなく交互にクロスする方向 に行うという原則も忘れてはいけません4)。しかし ながら例えば全部金属冠において正しい操作を経て 歯科学報 Vol.120,No.1(2020) 97 ― 97 ―
鋳造されたクラウンの鋳肌は滑らかなので,表面形 状から判断してシリコーンポイントで中研磨からは じめても構いません。しかし,形態修正の過程で生 じた大きな傷が残った状態で,中研磨・仕上げ・艶 だし研磨と進んでも,その傷は消えることはありま せん。荒研磨は,付与した形態を失わないように注 意しながら大きな傷を消すことが必要です。特に歯 頸部マージン部の研磨においては,回転数に注意し て行うとよいでしょう。それゆえチェアサイドにお ける形態修正・荒研磨は最小限となることが望まし く,補綴装置の材料的性質に合わせた器具選択が必 要です。 近年歯冠修復材料として多用されているジルコニ アの研磨に対しては,従来の研磨器具では対応が難 しい状況でしたが,ジルコニアより硬いダイヤモン ド砥粒含有の研削・研磨器具を使用することでチェ アサイドにおいても研磨面の仕上げが可能となりま した。心配されていた対合歯摩耗については,鏡面 研磨を施すことで問題は少なくなり,摩耗量に影響 するのは,硬さではなく表面性状であることがわ かってきています。またハイブリッド型コンポジッ トレジンは従来型と比べて耐摩耗性や曲げ強度が改 善されているため,研磨手順は陶材(ポーセレン)に 準じた器材と方法を採用するとよいでしょう。 最後に,材料別に,東京歯科大学水道橋病院補綴 科で使用している器材(2020年3月現在)を紹介しま す(表1,図1,2)。 Answer:四ツ谷 護 東京歯科大学クラウンブリッジ補綴学講座 文 献 1)東京歯科大学学会 歯科学報編集部 編:歯界展望別冊 臨 床 の ヒ ン ト Q&A,医 歯 薬 出 版,東 京,46−48, 2017. 2)大山儀三,玉置博規 編:歯科技工別冊 誤差を埋める クラウンブリッジの臨床・技工,医歯薬出版,東京,46 −47,2013. 3)矢谷博文,三浦宏之,細川隆司,ほか 編:第5章 装 着と術後管理.クラウンブリッジ補綴学 第5版,医歯 薬出版,東京,2014. 4)新谷明喜,玉置幸道,仁科匡生 編:歯科技工別冊 臨 床でいきる 研磨のすべて,医歯薬出版,東京,62− 65,2002. 表1 東京歯科大学水道橋病院補綴科で使用の器材 一覧 金属 ジルコニア シリカ系セラミックス コンポジットレジン 形態修正 カーボランダムポイント ダイヤモンドポイント ダイヤモンドポイント カーバイドバー 荒研磨 サンドペーパーポイント セラダイヤ (緑) カーボランダムポイント 中研磨 シリコーンポイント (茶) セラダイヤ (青) ホワイトポイント 仕上げ研磨 シリコーンポイント (青) セラダイヤ (黄) シリコーンポイント P タイプ 艶だし研磨 鹿皮ホイール ルージュ(緑) ロビンソンブラシ(図1) ダイヤモンドペースト(図2) 鹿皮ホイール ダイヤモンドペースト(図2) 図1 研磨用ホイール 上:ロビンソンブラシ 下:ゴム製研磨材 図2 ダイヤモンド微粒子含有ペースト 98 歯科学報 Vol.120,No.1(2020) ― 98 ―