特集にあたって -- 経済開発、人間開発、平和構築
、そして… (特集 アフリカ開発の現在)
著者
武内 進一
権利
Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア
経済研究所 / Institute of Developing
Economies, Japan External Trade Organization
(IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp
雑誌名
アジ研ワールド・トレンド
巻
158
ページ
2-3
発行年
2008-11
出版者
日本貿易振興機構アジア経済研究所
URL
http://hdl.handle.net/2344/00004878
アジ研ワールド・トレンド No.58(2008. )― 2
特
集
に
あ
た
っ
て
─
経
済
開
発
、人
間
開
発
、平
和
構
築
、そ
し
て
…
武内進一
二 〇 〇 八 年 五 月 に 横 浜 で 開 催 さ れ た 「 第 四 回 ア フ リ カ 開 発 会 議 」( T I C A D Ⅳ ) を ひ と つ の 契 機 と し て 、 ア フ リ カ 開 発 へ の 関 心 が 日 本 で も 大 き く 高 ま っ て い る 。 本 特 集 で は 、 ア フ リ カ 開 発 に 関 わ る 主 要 な 論 点 を 取 り 上 げ 、 そ の 現 状 と 課 題 を 明 ら か に し た い 。 な お 、 本 特 集 で は 、 サ ハ ラ 以 南 ア フ リ カ 諸 国 に 焦 点 を 絞 り 、 ア フ リ カ と い う 言 葉 で サ ハ ラ 以 南 ア フ リ カ を 指 す 。●
ア
フ
リ
カ
開
発
問
題
の
広
が
り
ア フ リ カ と い え ば 、 貧 困 や 紛 争 な ど 悲 惨 な 状 況 ば か り が 強 調 さ れ る 傾 向 に あ る 。 し か し 、 こ こ 数 年 の ア フ リ カ 経 済 は 資 源 価 格 の 高 騰 を 背 景 に 高 成 長 を 続 け て お り 、 ス テ レ オ タ イ プ の イ メ ー ジ は 当 て は ま ら な い 。 石 油 に よ っ て 巨 富 を 得 た 富 裕 層 や 、 起 業 に 成 功 し た ビ ジ ネ ス マ ン も 現 れ つ つ あ る 。 ア フ リ カ で の 投 資 機 会 を う か が う 多 国 籍 企 業 も 増 え て き た 。 と は い え 、 ア フ リ カ が 直 面 す る 諸 課 題 が 順 調 に 解 決 に 向 か っ て い る わ け で は な い 。 絶 対 的 貧 困 の 解 消 、 貧 富 の 格 差 是 正 、 資 源 セ ク タ ー に 代 わ っ て 経 済 成 長 を 牽 引 し う る 産 業 の 育 成 、 農 業 ・ 農 村 部 門 の 開 発 、 環 境 保 全 、 教 育 の 普 及 、 H I V / エ イ ズ な ど 感 染 症 対 策 、 さ ら に 紛 争 の 解 決 や 復 興 な ど 、 取 り 組 む べ き 課 題 は 依 然 山 積 し て い る 。 近 年 、 こ れ ら の 課 題 は い ず れ も 開 発 に 関 わ る 問 題 と し て 位 置 づ け ら れ 、 国 際 的 な 取 り 組 み が 議 論 さ れ て い る 。 ア フ リ カ 内 外 の 状 況 が 大 き く 変 化 す る な か 、 そ の 開 発 問 題 は 経 済 、 社 会 、 政 治 の 諸 側 面 に 関 連 す る 多 様 な 課 題 を 包 摂 す る よ う に な っ た 。 T I C A D Ⅳ を は じ め ア フ リ カ 開 発 に 関 す る 国 際 会 議 に お い て も 、 狭 義 の 経 済 成 長 や 貧 困 削 減 だ け で な く 、 教 育 や 医 療 、 気 候 変 動 と 環 境 問 題 、 紛 争 と 平 和 構 築 と い っ た 幅 広 い テ ー マ が 議 論 さ れ て い る 。 ア フ リ カ 開 発 の 問 題 領 域 が 拡 大 し 、 議 論 が 複 雑 化 す る な か で 、 ア フ リ カ 諸 国 の 現 状 を 正 確 に 理 解 し 、 開 発 に 関 連 し て 取 り 組 ま れ て い る 実 践 の 成 果 と 課 題 を 把 握 す る こ と が ま す ま す 重 要 に な っ て い る 。 本 特 集 に 寄 せ ら れ た 論 考 は い ず れ も 、 開 発 の 処 方 箋 を 直 接 提 示 す る も の で は な い が 、 そ れ を 考 え る 上 で 必 要 不 可 欠 な 基 礎 情 報 を 提 供 す る こ と を 主 眼 に 置 い て い る 。●
開
発
思
想
の
変
化
ア フ リ カ 開 発 に 関 わ る 問 題 領 域 が 顕 著 に 拡 大 し た 理 由 は 、 開 発 思 想 の 変 化 と ア フ リ カ に お け る 現 実 の 展 開 と い う 二 つ の 側 面 か ら 捉 え る こ と が で き る 。 一 昔 前 、「 開 発 」 と い う 言 葉 の 意 味 内 容 は 、 事 実 上 「 経 済 開 発 」 で あ っ た 。 例 え ば 、 一 九 八 〇 年 代 の 開 発 政 策 の 支 柱 で あ っ た 構 造 調 整 政 策 は 、 マ ク ロ 経 済 の バ ラ ン ス を 回 復 さ せ 、 市 場 原 理 を 通 じ て 経 済 成 長 を 目 指 し た 。 し か し 、 そ れ は 教 育 や 医 療 な ど 社 会 セ ク タ ー へ の 配 慮 が 乏 し く 、 都 市 住 民 を 貧 困 化 さ せ て 政 治 不 安 を 招 い て し ま う 。 一 九 九 〇 年 代 に な る と 、 そ の 反 省 に 立 っ て 貧 困 削 減 が 主 要 な 政 策 目 標 と な り 、 教 育 や 保 健 ・ 衛 生 に 支 援 の 重 点 が 置 か れ る よ う に な っ た 。 二 〇 〇 〇 年 に 採 択 さ れ た 「 ミ レ ニ ア ム 開 発 目 標 」 で は 八 つ の 具 体 的 な 目 標 が 定 め ら れ た が 、 そ の う ち 五 つ は 教 育 、 保 健 ・ 衛 生 、 ジ ェ ン ダ ー に 関 わ っ て い る 。 経 済 成 長 が 依 然 重 要 な 課 題 で あ る こ と は い う ま で も な い が 、 人 間 開 発 の 側 面 へ の 配 慮 は 今 や 不 可 欠 で あ る 。ア
フ
リ
カ
開
発
の
現
在
特
集
特
集
アフリカ開発の現在
―アジ研ワールド・トレンド No.58(2008. ) 一 方 、 一 九 九 〇 年 代 に は 、 開 発 援 助 に 関 わ る 人 び と の 間 で ガ バ ナ ン ス や 平 和 構 築 に 対 す る 関 心 が 高 ま っ た 。 冷 戦 終 結 に 伴 っ て 、 国 際 社 会 が 紛 争 解 決 や 平 和 構 築 に 関 与 す る 機 会 が 増 え 、 関 与 の あ り 方 を め ぐ る 議 論 が 活 発 化 し た の で あ る 。 こ の 文 脈 で 、 外 交 ・ 防 衛 ・ 開 発 ( い わ ゆ る 3 D ) の 相 互 交 流 が 説 か れ 、 ま た 緊 急 人 道 支 援 、 平 和 構 築 支 援 、 開 発 支 援 を 連 続 し て ス ム ー ズ に 展 開 す る 必 要 性 が 指 摘 さ れ て い る 。 一 昔 前 な ら 、 内 政 に 関 わ る 政 治 的 イ シ ュ ー だ と し て 議 論 の 埒 外 に 置 か れ て き た ガ バ ナ ン ス の よ う な 課 題 が 、 今 日 で は 開 発 問 題 の な か で 中 心 的 な 位 置 を 与 え ら れ て い る 。