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医療領域のソーシャルワーカーの実践能力に関する研究: 沖縄地域学リポジトリ

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Title

医療領域のソーシャルワーカーの実践能力に関する研究

Author(s)

富樫, 八郎

Citation

沖縄大学人文学部紀要 = Journal of the Faculty of

Humanities and Social Sciences(4): 85-90

Issue Date

2003-03-31

URL

http://hdl.handle.net/20.500.12001/6075

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<研究ノート>

医療領域のソーシャルワーカーの実践能力に関する研究

樫八郎

要約 本研究の目的は、2つの研究課題を検討することにある。第1の目的は、ソーシャル ワーカーの実践能力の構成要素である価値・態度、知識、技術の下位項目の検討である。 第2の目的は、ソーシャルワーカーと医師との関係性について医師の認知を検討するこ とである。その結果、価値・態度の下位項目では「人への細やかな配慮」、知識の下位 項目では「社会資源」などの知識、技術の下位項目では「調整」「アセスメント」「人間 関係」などの技術であることが示唆された。またソーシャルワーカーの業務性格につい て、医師はソーシャルワーカーと診療補助職とを同一視していないことが示唆された。 キーワード:病院、ソーシャルワーカー、実践能力 1.問題の所在 日本の医療は、医療制度改革(厚生労働省、 2002)')のもとで大きな変化をみせてきてい る。その基本方向を「良質で効率的な医療を 国民が享受していけるようにするためには、 保険医療システム、診療報酬体系、医療保険 制度といった医療制度を構成する各システム を大きく転換していかなければならない」と している。それは、急性期型病院や慢性期型 病院といった病院機能の分類化、診療報酬(診 療・治療などに対する報酬で病院収益の中心) の引き下げ、入院料での入院期間の縛り(入 院1ヶ月を超過した場合に収益が減少する 等)、健康保険・被保険本人の3割負担の導入 (負担増)、70歳以上の高齢者医療費の1割負 担の導入(負担増)などとなって具体化され てきている。患者・家族の視点に立てば、「治っ ていない傷病」がありながらも短期入院で転・ 退院をせがまれ、医療費の負担も大きいとい うことになる。また視点を転じて病院管理の 側面でみれば、短期入院を前提に、高度の治 療を行い、収益をあげるといった病院経営に 徹しない限り病院存続が難しい時代になって きている。近年の診療報酬点数の誘導で、1989 年の一般病院(一般病床)の平均在院日数が 387日だったものが、1995年には33.7日、 2001年には30.1日に短縮化が図られてい る2)。短期入院、専門分化された高度医療のも とで医師をはじめとする医療スタッフは多忙 をきわめている。そしてこの多忙は、患者・ 家族に対する一律的・機械的な対応に転ずる ことにもなる。 このような病院医療の下で、客観的思考よ り感‘情的思考(CasseL1976)3)、問題解決中 心より清動中心の対処(Lazarus&Folk-man,1984)4)をとるといわれる患者.家族は、 短期の入院・治療期間の中で新たな生活の再 構成を余儀なくされる。傷病が重篤な場合、 患者・家族の生活課題は多岐で、それに対す る対処能力(問題解決能力)はより落ちるの が通常である。Caplan(1961)5)は、心理的. 社会的問題の発生予防の立場から重篤な傷病 を負った患者・家族に対する専門的援助の必 要性を強調している。 医療領域のソーシャルワーカー(以下swと 略記)は、患者を生活者としてみない医療す なわち傷病の診断・治療中心の当時のアメリ カ医療の中に、個別患者の生活課題解決の援 助者として誕生した。約100年前の1905年 「SWの一番大切な仕事はSWがいなければ 見失われてしまう個人的欲求を発見し、それを 満たすことである(Cabot,1919)6)という基本的 -85-

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沖縄大学人文学部紀要第4号2003 業務の範囲だからである。このことについて 医療領域のSWをはじめて導入したCabotは 「SW自身の質によってこの仕事は築かれ、 拡大され、あるいは破壊される'0)」とSWの 実践能力の重要性を指摘している。またSW の業務の性格(固有の業務、事務補助的業務、 診療補助的業務など)を医師がどのように捉 えているかも、SWの業務内容や機関内の位 置づけに影響を与える。患者・家族の生活課 題とそれに対する対処能力に焦点を当てて ソーシャルワークを実施するSWの業務が、 事務補助的業務なのか、診療補助的業務なの か、それとも固有な業務なのか、この論議は 長年専門職団体の関心事であった。このこと から本研究では医師のSW認知についても検 討してみたい。 な役割をもって、MGH(MassachusettsGen‐ eralHospital)に配置された。わが国におい ても1926年に済生会本部病院(現.東京都済 生会中央病院)に、1929年に聖ルカ病院(現. 聖路加国際病院)にSWの誕生をみた7)。その 後SWの種は、全国の保健医療機関にまかれ 現在9117名(厚生労働省、2001)のSWが 存在するようになってきている8)。 しかし、全国9239病院(厚生労働省、2001) との関連でみた場合、-病院あたりのSW配 置は約1人でしかない。これを裏付けるように 広井良典(2001)9)は「患者に対する心理的. 社会的サポート」に関する調査報告で次のよ うなことを指摘している。病院において患者 に対する心理的・社会的サポートは、ほとん ど行われていないこと。そして患者.家族が 望むサポートの主な内容は、不安に対する心 理的援助、医師などと患者の調整役、退院(社 会復帰)援助、医療福祉制度の,情報提供援助 などとしている。またこの心理的・社会的サ ポートに当たる専門職の中心は、swである としている。 しかしながら、前述の-病院当たりのsw 配置でも示されているとおり、SWの配置さ れている病院は未だ少ないのである。またs Wが配置されていても、SWに対する認識や 位置づけには、大きなバラツキがある。 このSW配置の低さや機関内での定着.発 展の遅延要因は、病院管理職のSw認知の不 足やSW自身の実践能力の未成熟、診療報酬 対象外のSW援助、無資格など、その複合に あると考えられる。その中でもswの実践能 力とSWに対する医師の認知の如何は、sw 配置、定着・発展に大きな影響を与えるもの と考える。換言すれば、swの未配置やsw の不安定な位置づけなどは、swに対する医 師の認知の低さやSW自身の実践能力の未熟 さの上に生まれるのである。このことは長年 医療領域でSWとして働いてきた筆者の体験 的実感でもある。後発・少数職種としてのs wは自らがもつ実践能力で、医療スタッフの 無理解を理解に転ずるよう働きかけることも 2.研究目的 本研究では、2つの研究課題について明らか にする。第1の目的は、SWの実践能力の構 成要素である態度・価値、知識、技術の下位 項目の検討にある。換言すれば医療領域のS Wには、具体的にどのような態度・価値、知 識、技術が求められているかを検討すること にある。第2の目的は、SW業務の性格に対 する医師の認知を検討することである。この SW業務の』性格に対する認知は、医師とsw との関係性にも影響を与えることになる。 本研究と関連する先行研究を概観しても、 本研究のような手法(SWの態度・価値、知 識、技術に対する医師の認知.期待度からs Wの実践能力の構成要素をみようとする研 究)で明らかにした研究はみられていない。 なお、本研究で用いる実践能力とは「態度. 価値、知識、技術の各下位項目の総体」と定 義しておく。 a研究方法 SWの実践能力の構成要素の把握をするた めに、調査対象施設はswの配置病院に限定 し、かつ調査対象者はSWと日常的に協働し ている医師に限定し、その上swの業務に理 -86-

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②有効回答数は145であった。 2)統計処理

①選択肢に対する反応をみるために、平

均値を求めた。 ②平均値からのバラツキをみるために標 準偏差を求めた。 解と協力を示す医師に限定した。このように して抽出された医師は、日常的にSWがみせ る態度・価値、知識、技術の具現化されたも の(下位項目)を目前に「そのとおり」と肯 定的に認知したり、「こうあってほしい」と期 待したりする。そこでの肯定的認知や期待度 の反応から態度・価値、知識、技術の下位項 目を検討することにした。 1)調査対象 調査対象は、全国37病院(一般病院・精神 病院・リハビリテーション病院)の医師248 名とした。 2)調査期間 2002年2月1日~2月15日までとした。 3)手続き ①調査者が知っている全国37病院のS Wに電話で研究のねらいを事前に説明 し、アンケート調査の協力を要請した。

②記入する医師達に配慮し質問紙はハガ

キ一枚とした。このハガキ・質問紙を37 病院のSWに送付し、各病院のSWから 直接医師に質問紙を手渡してもらった。 ③各医師から記入後、直接調査者に返信 してもらった。 4)質問紙の構成

①質問項目

内的妥当性を保証するために、研究者 3名と現任SW3人で協議し’8質問項目 (下位項目)を設けた。(tablel) ②選択肢 3件法(1.不可欠、2.あるのが望まし い、3.なくてもよい)を採用した。 5)データ処理

①処理手段

統計用ソフトSPSSを活用した。 ②データ解析 平均値から検討した。 2)記述統計量 tablel 4.結果 1)回収数

①148名の医師(回収率60%)から回答

がみられた。 -87- 下位項目 度数 平均値 標準偏差 態度・価値 人への細やかな配盧ができる 人権意識がある 優しさがある 広い社会的関心を 持っている 新しい医療への関 心を持っている 145 145 145 145 145 1.26 144 1.51 3 2.17 、51 、59 、97 、51 、56 知識 社会資源について の知識がある 傷病による生活障 害の知識がある 看護職と同程度の 医学知識がある 医学検査項目に関 する知識がある 145 145 145 145 1.37 1.50 2.17 2.18 、57 、60 、56 49 技術 関係者(機関)との 調整能力がある 正しく相手を理解す る力がある 人間関係をつくる能 力がある 説明力がある 的確に問題を把握 する力がある 面接技術を身につ けている 企画力がある 集団を指導する力 がある 介護技術を身につ けている 145 145 145 145 145 145 145 145 145 1.22 1.24 1.28 1.33 1.34 1.37 1.71 2.02 2.26 .52 、52 、54 、54 、55 、60 62 、61 61

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沖縄大学人文学部紀要第4号2003 しさ」、また人間と社会との関係性の理解 のためにも「広い社会的関心」を持つこ と必要である。 ②知識の下位項目とswの課題 実践能力のあるswになるためには、 医療・福祉制度、フォーマル、インフォー マルな「社会資源についての知識」がも とめられ、かつ傷病によって引き起こさ れる心理的、家族的、経済的、社会的問 題などの「傷病による生活障害の知識」 をもつことが求められる。 ③技術の下位項目とswの課題 実践能力のあるswになるためには、 患者・家族との関わりが可能となるよう な「面接技術」、面接場面でのアセスメン ト能力すなわち「正しく相手を理解する 力」や「的確に問題を把握する力」が求 められる。また院内外の関係者との「人 間関係をつくる能力」や「関係者(機関) との調整能力」も求められる。そしてまた 医療・福祉サービスの「企画力」や関係者を 納得させる「説明力」も必要となる。 なお、「集団を指導する力」について平 均値2.02となっているが、これは一般病 院のSWの実践実態の反映である。多忙 をきわめ個別援助もままならない実態が 現場にはある。グループワークまで手が 届いていない現実の評価と考察できる。 2)SW業務の性格に対する医師の認知 SWと協働し、SWの機能や役割を知る多く の医師たちは、SWと診療補助職(看護師. 薬剤師・理学療法士等)を同一視していない。 このことは、態度・価値、知識、技術の下位 項目のデータが示している。逆説的に医師が 診療補助職とswを同一視しているならば 「新しい医療への関心」「看護職と同程度の医 学知識」「医学検査項目に関する理解」「介護 技術」などについては、必要不可欠(平均値 l)に近い反応をみせることになる。しかし、 データでは否である。 このことについて管理職の医師で複数sw の配置を経験した増子忠道(1997)IDは、医 3)下位項目への反応

①反応の解釈

平均値が1に近づくほど「肯定的認知. 期待する=不可欠」を意味し、平均値が 3に近づくほど「否定的認知.期待しな い=なくてもよい」を意味する。

②SWの態度.価値

「人への細やかな配慮」「人権意識」「優 しさ」「広い社会的関心」には肯定的認知 や期待が示され、「新しい医療への関心」 には、、、あるのが望ましい”の反応である。 ③SWの知識 「社会資源についての知識」「傷病によ る生活障害の知識」には肯定的認知や期 待が示され、「看護職と同程度の医学知 識」「医学検査項目に関する知識」は、いある のが望ましい”の反応である。

④SWの技術

「関係者(機関)との調整能力」「正し く相手を理解する力」「人間関係をつくる 力」「説明力」「的確に問題を把握する力」 「面接技術」「企画力」には肯定的認知や 期待が示され、「集団を指導する力」「介 護技術」は、、、あるのが望ましい〃の反応 である。 5.考察・結論 DSWの実践能力の構成要素 本研究は、研究目的でも述べたとおり、医 療領域のSWの実践能力の構成要素すなわち SWの態度.価値、知識、技術の具体的な下 位項目の検討にあった。この下位項目は、s wと協働している医師から検出できると考え た。具体的には、swに理解と協力を示す医 師のSW評価一下位項目への肯定的認知や期 待度を測定することで検出できると推測し た。

①態度・価値の下位項目とswの課題

実践能力のあるswとなるためには、 患者・家族や医療スタッフなどに「細や かな配慮」ができ、かつ差別や偏見など を許さない「人権意識」と人間的な「優 -88-

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るだけでも大きな進歩といえる。卒後の 新人SWは、医療現場で態度.価値、知 識、技術をゼロからはじめている実態が あるからである。そのためにも教育機関 とフィールドのSWとの連携.協力が課 題となる。 療知識とSWと医師の関係を次のように述べ ている。まず医療知識については「細かい医 療知識ではなく、予後の知識(回復の可能性、 再発の可能性)や障害レベルとつらさ(困難 のレベル)の理解、日常生活上注意すべき事 柄(食事、家屋、ストレス、生活習`慣の改善) 等の知識」とし、次に医師とSWの関係につ いては「医師が(SWを)指導したり指示し たりすることはない。むしろ医師はSWに ケースを依頼する関係になる」と述べている。 増子氏の記述は、医療現場でSWにもとめら れる医療知識の程度と内容、医師とSWとの 関係性を的確に表現している。 [引用文献] !)厚生労働省保険局総務課「医療制度改革試 案』2001 2)厚生労働省『平成13年(2001)医療施設 (動態)調査・病院報告の概況』ぎようせ い2002 3)J・キャッセル箸/大橋秀夫訳「医者と患 者新曜社』1981,p26-29. 4)リチャードs・ラザルス&スーザン・フォ ルクマン箸/本明寛・春木豊・織田正美監 訳『ストレスの心理学』実務教育出版 1991,p154-160. 5)Gキャプラン箸/山本和郎訳『地域精神衛 生の理論と実際」医学書院1968 6)RC・キャボット箸森野郁子訳『医療ソー シャルワーク」岩崎学術出版1977 7)中島さっき『医療ソーシャルワーク』誠信 書房1979 8)厚生労働省『前掲書』2002 9)広井良典「患者に対する心理的・社会的サ ポートーアンケート集計結果概要のお知ら せ」『COML』NQ128ささえあい医療 人権センター2001 ,0)浅賀ふさ「私と医療社会事業の出会い」『25 年のあゆみ-日本医療社会事業協会史』日 本医療社会事業協会1978,pl45-152より 引用 山増子忠道「医療専門職からみた医療ソー シャルワーカーの役割・位置づけ」『社会福 祉研究』NC、69(財)鉄道弘済会1977,p63. 6.本研究の限界 本研究でのSWの態度・価値、知識、技術 に関する質問項目(下位項目)は3人の研究 者と3人の現任SWで協議し作成したもので あるが、プリテストの実施はしていない。ま た調査対象は37病院248名の医師でしかな い。質問項目(下位項目)の内的妥当性すな わち質問紙の精度およびサンプル数などの点 で本研究には限界がある。 7.実践と教育へのサゼッション

①実践へのサゼッション

本研究から示唆されたSW像は、診療 補助職としてのSWではない。医師は、 SWの基本的役割の遂行を期待している のである。すなわち人権尊重や人間の社 会性、潜在的可能性といった態度.価値 と人間理解や社会資源などの知識および 面接や調整の技術をもって、患者の生活 課題や対処能力をアセスメントし、その 患者の問題解決能力を内外資源の活用で 支援し、同時に家族や社会サービスなど の環境の応答性を高めるSWを期待して いるのである。 ②教育へのサゼッション 本研究で示唆されたSWの実践能力の 構成要素は、教育機関の社会福祉援助技 術演習などを通して、その初歩を習得す -89-

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A Study on Competence of Hospital Social Workers

Hachiro Togashi

Abstract

The purpose of this study was to evaluate two objectives. The first objective

was to examine the significance of the sub-items included in the main

constitutive elements of hospital social workers' competence: value, attitude,

knowledge and skill. The second objective was to know how doctors recognize

hospital social workers in theirs occupational relationship.

The results of this study suggested that "thoughtfulness to others

ll

among

the sub-items of value and attitude; "knowledge of social resources" among the

sub-items of knowledge; and "coordination," "assessment," and "human relation"

among the sub-items of skill are more significant than others.

Concerning occupational position of hospital social workers, the results of this

study suggested that doctors do not identify hospital social workers with

paramedical staffs.

Keywords: hospital, social worker, competence

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