インド・トリプラ州 -- もうひとつの「バングラデ
シュ」 (異文化言い分EVEN)
著者
村山 真弓
権利
Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア
経済研究所 / Institute of Developing
Economies, Japan External Trade Organization
(IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp
雑誌名
アジ研ワールド・トレンド
巻
187
ページ
44-45
発行年
2011-04
出版者
日本貿易振興機構アジア経済研究所
URL
http://hdl.handle.net/2344/00004271
44
アジ研ワールド・トレンド No.187 (2011. 4) 角︵ つ の ︶ と い う と 男 性的 な イ メ ー ジ が 強 い 。 オスは 自 分 の パ ー ト ナ ー を見 つ け る の に角 を 誇 示 すると い う 。 だから こ の エ ッ セ イ の タ イ ト ル も ちょ っ と ず れ た 感 じ が す るだ ろ う 。 し か し 、 こ こ では 動 物 の 世 界の 角 を 語 ろ う と し て いるので は な く、 イ ン ド ネ シ ア の あ る 地方 で 作 ら れ て い る 代 表 的な 工 芸 品 で あ る 角 に つ いて お 話 し た いの で あ る。 美 し く か つ 実 用 的 な 角 の 工 芸 品を 嗜 好 す る の は 女 性 達 で あ る 。 牛 や 野牛 の 角 は 往 々 に し て 無価値 な も の と み な さ れ て い た 。 し か し 、 中 部 ジ ャ ワ の マ ゲラ ン地 方 の ス カ ン地 区 デ サ ・ プ カ ン ︵ デ サ は 村 の こ と ︶ の 村 人 の 見 方 は ち が っ て い た。 デ サ ・ プ カン は 仏 教 遺 跡 で 有 名 な ボ ロ ブ ド ゥ ー ル か ら北に 二 〇キ ロ 、 ジ ョ ク ジ ャ カ ル タ は北 へ 四 八キ ロ 離 れた とこ ろ に 位 置 す る 。 角 は 彼 ら の 収 入 源 と な っ た 。 デ サ ・ プカ ン は 、 一 九 六 〇 年 代に 角 を 材 料 に 使 い 工 芸 品 を 制 作 するよ う にな っ た 。 角 は 他 で は 見 ら れ な い 見 栄 え のする 商品 に 生 ま れ 変 わ っ た 。 角 工 芸 品 に は 他 の 素 材 、 例 え ば 木材 も 使 用 さ れ た 。 木 工 芸 品 や 角 ・ 木 工 芸 品 は 一 九九 〇 年 代 に な っ て から 盛ん に生 産 さ れ る ように な っ た 。村 は﹁ デ サ ・ プ カ ン 角 木 工 芸 産 業セ ン タ ー﹂ と知 れ 渡 る よ う に な っ た 。 木 材 を補 完 的 な材 料と し て 使用し た の に は い き さ つ があ る 。 木 を 使 う こ と に よ り 職 人 の 創 造 性 へ の欲 求 が 満 たされ た し 、 また 角 の 供 給 が 減 っ た と い う 事 情 も あ っ た 。 角の 供 給 が 減 っ た 背 景 には 角 が 生 え て い な い 子 ど も の 牛 や 年 取 っ た 牛 が 多 く られるよ うにな っ たと いう 事 情 が ある 。 こ の地 域のある 工芸 職 人 に よ るとそ れ ま で は 動 物 の角 は ジ ャ ワ 島 の 多 く の都 市に屠 畜 場 が あ っ たため 手 に 入れ る こ と が で き た 。 し か し 、 原 材 料と し て の 角 の 供 給 が減 っ た た め 、 ジ ャ ワ 島以 外 の 島 ︱ ス マ ト ラ 、 ス ラウ ェ シ 、 カリ マ ン タ ン 島 ︱ か ら 運 ば れるよ う にな っ た 。 こ れ ら 三 つ の島 で は 、 角 は 豊 富に 取 れ たが 輸 送 経 費 が 高 値 で あ っ た こと が 障 碍 と な っ た 。 デ サ ・ プ カ ン の 職 人 の 匠 技 が 野 牛 や牛 の 角 を木 材と 組 み 合わ せ て 工 芸 品 に 仕 立 て て ゆく 。 そ う し て で き あが っ た 家具 、 小 間 物 、 装 飾品 に は 目を 見 張る よう な 芸 術 の 香 り がす る 。 ス プ ー ン 、 ご 飯 茶 碗 、 ケ プクと呼 ば れ る 宝 石 箱 、 櫛 、 パ イ プ 、 フ ォ ー クな どな ど 。 こ れ ら の 角 製 品 は プ ラ ス チ ッ ク 製品 と 競 合す る も の で あ るが 、 角 は有 機 的 な原 材 料 で あ る た め環 境 汚 染 を 引 き 起 こさ ず 、 ま た リ サ イ ク ル も 可 能 で あ る た め 環 境 に 優 し い 。 角で 作 っ た ス プー ン、 ナ イ フ 、 フ ォ ー ク な ど の 食 器 は 健 康 上の 理 由 か ら よ り 安 全 で あ る と 考 え ら れ て い る 。 角 は 、 動物 の 一 部 で あ り そ の 製造過程 に お い て 化学合成物質が 生じな い 。従 来 、 角 製 品 ︱ と く に 食 器 ︱ の ほ う が ポリ マ ー やプ ラ ス チ ッ ク の 製 品 よ り 優 れ て い る と の 科 学的 な 証 明 は な い が 、 プ ラ ス チ ッ ク製 品と違 い 角 製 品は熱 に も 強 い のは 事 実 で あ る 。角の 加工 プ ロ セ ス は シ ン プ ル で あ る 。 ま ず角を き れ い に 水 洗 し 、 熱 す る 。 そ う す る と 弾力性が 少 し出 て柔 ら か くな る 。 熱し て た い ら に し たも の を 製 品 の かたち に し て い く の で ある。 紙 ヤ ス リ を つ か っ て 表 面 を な めら か に し、 光 沢 を つ け て い く 。 デ サ ・ プ カ ン の 角 ・木 材工芸 品 セ ン タ ーはそ の 製 品 を 国 内 の 大 都 市 ︱ ス ラ バ ヤ 、 ヨク ジ ェ カル タ 、 ジ ャ カル タ 、 バ リ 、 バ ン ド ン ︱ な ど に 出 荷 し て い る 。 イ ン ド ネ シ ア 国 内 の 大 都市市場 に 留 ま ら ず 、 角木材製 品 は ヨ ー ロ ッ パ 各 地 にも 輸 送 され 割 合 と 安 価 な 値 段 で 売 られ て い る 。 例 え ば 、 櫛は 日 本 円 で 一 〇 円 ほ ど。 ま た 木 製 の 壁 掛 け 時 計 は 四 〇 〇 円、 木製 の 杖 が 一 五 〇 円 で あ る 。 装 飾性が 高 ま る と お 値段 は 高 め と な る 。 美 し く 装飾 し た 龍像 は 一 二 五 〇 円 と な る 。 角 工 芸 は 世代 か ら 世代世代 に 引 き 継 が れ て い く 文 化遺 産で ある 。 源 流 を た ど ると 角 を 使 っ た 考 古 学 的 な 遺 品 に たど り 着 く 。 元 来 、 角 は誇りと栄 光 の 象 徴 で あ っ た 。 ト ラジ ャ 、 ス ラ ウ ェ シ 、 北 部 ス マ ト ラ の 一 地方 で は 、 角 が 家 族 や 部 族 の 威 信の シ ン ボルとし て 使 わ れ て い た こ と が 知 ら れ て い る 。 今 日 、 角 工 芸 セ ン タ ー で 製 作 さ れ て い る 工 芸 品 は 、 古 代 の 先祖 の 文 化が そ の 時代時代 の 創作性 や ト レ ンド とミ ッ ク スし て 世 代 を 超 え て 継 承 さ れて き た の で あ ろ う 。 角 とい う 副 産 物 を 利 用 し て 生 活 の 糧 を え る とい う 人々 の 創 造 性 の 顕 わ れ で あ る 。 別 の 見 方 をすれ ば 地 域 の 経済 を 発 展 さ せ る う え で の 共 同 体 の エ ン パ ワ ー メ ン ト の ひ と つ の顕 われと し て 角 工芸 があるとも い え る 。 角 工芸 は 中央 ジ ャ ワ 、 マ ゲ ラ ン の デ サ ・ プ カ ン だ け で は な くジ ャ ワ 島の 各 地 に 見 ら れ る 。 記 録 による と ジ ョ ク ジ ャ カ ル タ の プルバ ヤ ン 、 ソ ロ のクル エ ル 、 ウ ェ スト ジ ャ ワ の サ カ ブミ 等で ある 。デ サ ・ プカ ンを 含 め 、 こ れ ら の 四 都 市 は現 在 も角 工 芸 の 中 心地 で あ る 。 ジ ャ ワ に は角 生産 の セ ン タ ー が か な り あ る 。 前 述 し た よ う に 元手 と 原 材料 の 不 足が 職 人に と っ て の ボトル ネ ッ ク に な っ て い る 。 中 央 政 府 、 地 方 政府が と も に 生 産 活動が 続 け ら れ る よ う 職 人 達 の 抱 え る 問題 の 解 決 に 取 り 組 ん で い る 。 角 工 芸産業を 維持す る こ との 重 要 性 は 文 化 の 継 承 と い う 観 点 に 加 え、 工 芸 品 が 生 み出 す 付 加 価 値 に あ る 。 眼 鏡 フ レ ー ム の 有 名 ブ ラ ン ド 、 ロー デン シ ュ ト ッ ク は ス カ ブ ミ 角 工 芸 を 眼 鏡 フ レ ー ム の 一 部に使 用 し独 自 の デ ザ イ ン を 生 み 出 し て い る 。 最後 に な っ た が 、 も し 読者 の み な さ ん が イ ン ド ネ シ ア を訪 問 す る機 会 が あ っ た ら 是 非 角 工 芸セ ン タ ー に 立 ち 寄 っ て み て 欲 し い 。 工 芸 品 の ひ と つ ひ と つ を よ く ご 覧 頂 き た い 。ご満 足 頂 けるは ず である 。 バン グ ラ デ シ ュは イ ン ドが好き で は な い 。 イ ン ドは 強 圧 的 な 態 度 で 、 ガ ンジ ス 川 の水 を上流 で 奪 い、 不 要 な 時 は 放 流 し て バン グ ラ デ シ ュ に 干 ば つ や洪 水 を も た ら す と 思 わ れて い る 。 そ し て イ ン ド もバ ン グ ラ デ シ ュ の こ と は好 き で は な い 。 一 九 四七 年 の 印 パ 分離独立 ま で は 、 イ ン ド の 一 部 ︵ 東 ベ ン ガ ル ︶ Mr. Umar Fakrudin/アジア経済研究所 開発スクール外国人研修生 Junior ResearcherCenter of Trade Policy Analysis and Development for Foreign Trade, Trade Policy Analysis and Development Agency, Ministry of Trade(商業省)