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アジ研図書館で、シンガポールの戦後史を深く旅する (アジ研図書館を使い倒す 第6回)

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Academic year: 2021

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(1)

アジ研図書館で、シンガポールの戦後史を深く旅す

る (アジ研図書館を使い倒す 第6回)

著者

鍋倉 聰

権利

Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア

経済研究所 / Institute of Developing

Economies, Japan External Trade Organization

(IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp

雑誌名

アジ研ワールド・トレンド

213

ページ

44-44

発行年

2013-06

出版者

日本貿易振興機構アジア経済研究所

URL

http://hdl.handle.net/2344/00003701

(2)

  シンガポールという、アジア最先端の社会を もとに社会学研究を進めるにあたって、アジ研 図書館を活用しています。   日々変化するシンガポール社会の最新状況に ついては、現地調査やインターネットを活用す る こ と に よ っ て、 フ ォ ロ ー す る こ と が で き ま す。こうしたなか、当館では、それでは捉えら れないこととして、最先端社会に至るまでの歴 史的な積み重ねを掘り下げるべく、戦後の現地 紙をマイクロフィルムで読んでいます。   シンガポールは、一九六五年に成立した新興 国家で、歴史的な積み重ねは興味深くないと思 われがちです。一八一九年に英国東インド会社 のラッフルズが上陸して植民地建設が始まった 時から数えても、二〇〇年に達しません。   他方、シンガポールは、たいへん興味深い社 会でもあります。華人、マレー人、インド人、 その他という、人種的・民族的・文化的背景の 異なる人々から成る、多人種・多民族・多文化 社会であると同時に、これらの人々の八割以上 が、住宅開発庁という団地当局の下にある団地 に暮らす「総団地化」社会でもあるのです(鍋 倉聰[二〇一一] 『シンガポール「多人種主義」 の社会学』 、世界思想社) 。   歴史的な積み重ねがあまり重視されないシン ガポールですが、このように興味深い社会が成 立するにあたっては、その積み重ねを無視する わけにはいきません。シンガポール社会が現在 あるように至る歴史的背景を追究すべく、当館 で現地紙を同時代的に読んでいます。   「 シ ン ガ ポ ー ル の 成 功 」 と よ く い わ れ る よ う に、リー・クアンユー初代首相率いる人民行動 党(PAP)のもと、シンガポール政府が行っ てきたことは讃えられてばかりですが、それは あ く ま で 結 果 論 に 過 ぎ ま せ ん。 「 成 功 」 に 至 る 過程では、様々なことがありました。   リー・クアンユーの野党新人議員時代や、P APがまだ権力基盤を確立していないのが、一 九五〇年代から六〇年代にかけてのシンガポー ルでした。マレーシアの成立とシンガポールの 分離やインドネシアとの対立のなか、揺れてい たのが、当時のシンガポールだったのです。   こ う し た 明 日 ど う な る か 分 か ら な い 当 時 の 朝、現地のコピ店(コーヒーショップ)で、新 聞を広げていた人々や、新聞記事をもとに熱く 議論していた人々の隣に座り、コピオ(ブラッ クコーヒー)を飲みながら新聞を読むような状 況に、自分自身を置くことが理想的です。   もちろん、タイムマシンでも使わない限り、 このような状況に自分自身を置くことは不可能 です。しかし、理想的な状況にできるだけ近づ いて現地紙を読むことはできます。そこで有効 なのが、マイクロフィルムを使って、現地紙を 読むことなのです。   実物の古紙を今さら積まれても、扱いが大変 です。インターネットは、接続に余計な時間が かかるうえ、記事が分断されて連続性に欠きま す。検索機能を駆使しても、精度を欠き、肝心 の記事がなかなかヒットしません。   一方、マイクロフィルムでは、当時の時間の 流れに近いペースで、次のページにどんな記事 が出てくるのか、わくわくしながら、現地紙を 順に一枚一枚読むことができます。アジ研図書 館で、いわばシンガポールの戦後史を深く旅す ることができるのです。   また、研究者の立場としていえば、研究上有 用な記事は、その場でプリントアウトして手も とに置くことが欠かせません。後から再度記事 を探してコピーするのは、新聞記事の場合は容 易ではありません。   シンガポールの現地紙に関して以上記したこ とを唯一満たしてくれるのは、私の知る限り、 アジ研図書館しかありません。日本の国会図書 館は論外として、シンガポール国立図書館は、 資料自体は豊富に揃っているものの、閲覧やコ ピーする設備や環境は、当館に及びません。   こうして、当館のマイクロフィルム再生機を 活用させていただいております。単に読むだけ では不十分ですので、この結果を論文や著書な どで還元していくつもりです。   アジ研図書館におかれましては、素晴らしい 設備のもと、これまで蓄積してきた豊富な資料 を活かして、アジア一の図書館を目指していた だきたいと思います。 (なべくら   さとし/滋賀大学経済学部准教授)

第六回

44

アジ研ワールド・トレンド No.213 (2013. 6)

アジ研図書館で、シンガポールの戦後史を深く旅する

鍋倉

 

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