兵庫教育大学 研究紀要 第47巻 2015年 9 月 pp 95 107
学級担任のオーセ ンテ イ ッ ク発話 と児童の自己概念お よ び自己開示 と の関連
一教師の価値観や信念 を学級経営に活かす試み ( II )
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Relationship between the class teacher 's authentic utterance and the pupil 's
sel f-concept and sel f-disclosure: A new idea for applying teachers' values and/or
conviction to classroom management ( II)
竹 西 亜 古*
稲 田 雄一郎**
竹 西 正 典***
TAKENISHI Ako
INADA Yuichiro
TAKENISHI M asanori
本研究では、 オ ー セ ンテ イ ツク リ ー ダー シ ツ プ理論 (authentic leadership model) を学級経営 に応用 し、 担任教師のオ ー セ ンテ イ ツク発話が児童の自已 におよぼす影響 を検討 し た。 担任の行動のう ち、 ひと り ひと り の児童に同時的 ・ 一斉的に 働 き 掛け る も の と し て、 「先生の話」 と し て設置 さ れた時間 におけ る発話 を対象 に、 ラ イ フ イ ベ ン ト ・ ト レ イ ル (LET) で査定 さ れた各担任の価値観 ・ 信念に基づ く も の を、 オ ー セ ンテ イ ツク発話 と し て抽出 し た。 その上で全発話時間におけ る オー セ ンテ イ ツク発話出現率 を求め、 そ れと 児童の自己概念記述 (研究 1 ) 、 自己開示の程度 (研究 2 ) 、 学級内関係性 の自己評価 (研究 3 ) と の関連 を検討 し た。 その結果、 担任のオー セ ンテ イ ツク発話率は、 児童の自己概念記述の多様化、 自己開示 の多 さ 、 学級内関係性の肯定的評価 と 有意に相関 し てい る こ と が明 ら かにな っ た。 オ ーセ ンテ イ ツク発話は、 手 続き的公正 (procedural fairness) の要素に相当す る。 児童に対 し て 「正直に」 「一貫性 を持 っ て」 「 配慮 を怠 ら ない」 接 し 方 をす る こ と が、 学級担任のオ ー セ ンテ イ ツク な行動で あ り 、 フ ェ ア な学級 を作 る第一歩で あ る。 キ ーワ ー ド : 学級経営 オ ー セ ン テ イ ツ ク リ ー ダ ー シ ツ プ 自己 概念 自己 開示 フ ェ ア Key words : classroom management, authentic leadership, sel f-concept, sel f-disclosure, fair
I
問 題
小学校に通う 児童にと っ て、 学校生活におけ る学級で の人間関係は重要であり 、 学級担任の指導によ り 、 児童 の心理的 ・ 社会的 な発達が促進 さ れなけ ればな ら ない。 Sullivan (1953) は、 8 歳~ 12歳頃には、 満足欲求や安 全欲求 を経験す る他者と し ての仲間の存在が重要と なり 、 劇的 な心理発達上の変化が生 じ る と し た。 ま た、 他者 と 自己の体験 を比較する事によ り 自分の人格に修正 を加え る能力 が急速に発達 し 、 自己 や他者につい ての限定的 な 考 え が訂正 さ れる と も 述べ て い る。 Rosenberg (1986) は、 児童期 には年齢の積 み重 ねと と も に、 他者 と の関係 性によ る心的状態に基づい た自己表現や自己知覚が多 く な る と し てい る。 「自己」 は、 自分 を知 る も のと し ての 「主我 ( I )」 と 、 知 ら れる も の と し て の 「客我 (me)」 に分け ら れ、 「 客体 と し ての自己」 に あ た る も のが自己 概念 と さ れて い る (James, 1892) 。 こ の考え方は、 他者から見え る自 分 を自分が どう 解釈す るかによ っ て自己 規定が変 わる と い っ た、 対人的、 社会関係的側面が強調 さ れてい る。 こ れら の知見 を、 学級 と い う 形態 によ っ て対 人接触があ る 程度規定 さ れる小学校生活におい て考え た場合、 学級内 の他者 と の関係性の中 で、 どれだけ刺激 を得 て、 い かに 多様 な視点 を獲得す るかと い う こ と が、 児童の自己概念 形成に と っ て非常 に重要で あ る こ と を示 し てい る と 言え よ う o その中で学級集団の指導者で あ る学級担任は、 児童の 自己概念形成 に と っ て どのよ う な存在 に な るので あ ろ う か。 1980年代から90年代にかけ て、 欧米の多 く の研究者 が、 肯定的な自己概念を育て るこ と は初等教育におけ る 一 つの重要 な目的 で あ り 、 子 ど も のパ ー ソ ナ リ テ ィ の発 達や学業成績の向上、 円滑 な対人関係の構築、 精神の安 定につ なが る と し てい る (富岡, 2013) 。 その意味では、 日本の教師 も児童の肯定的 な自己概念形成のための視点 を念頭に置き、 意図的な教育活動 を営むこ と が望ま しい と い う こ と が言え る。 学級におい て児童の自己概念 を育 て る働き かけ が意識的 に行われる こ と は少 ない。 し か し、 教師が適切 な刺激 を与え るこ と で、 児童の内面に影響 を およぼす こ と は可能であ ろ う 。 先述 し た知見 を総合的に と ら え る と 、 人の内面的変化 の プロ セ ス には、 他者か ら の刺激に対 し て生 じ た反応 によ っ て、 自分 を と ら え直す 内的 な作業が含 ま れる と 考え ら れる ためで あ る。 教師か ら の刺激 を受け た児童が何 ら かの反応 を示す と 、 教師あ * 兵庫教育大学大学院教育実践高度化専攻生徒指導実践開発 コ ース * * 八幡浜市立江戸岡小学校 * * * 京都光華女子大学 平成27年 6 月29 日受理るいは周囲の他の児童が反応す る。 双方向の反応 によ る 相互作用の中で、 そ れぞれが自 ら の行動 やその基底 にあ る思いや考え を内省 し 、 確信や再構成の機会 を得 る こ と に な る 。 Figure 1 教師の行動が児童の内面変化をもたらすプロセス こ れは、 自己概念形成の ための重要 な プロ セ ス と も な る。 す なわち、 児童は重要な他者であ る教師から の刺激 に反応す るこ と で、 反応の主体であ る 「自己」 をよ り 一 層意識でき るよ う にな り 、 自己概念の分化や多様化がな さ れる と 考え ら れるので あ る。 Shavelson et al. (1976) は、 自己概念は年齢 と と も に分化 し、 幼少期から児童期 にかけ ては自分 と 環境 と の区別が厳密にはで き てお らず、 自己概念 も包括的で分化 し てい ない と し てい る。 特に小 学校児童の自己概念は安定的でない可能性が高 く 、 他者 と の多様 な関係性におい て比較的短い スパ ンで変化が生 じ る と 推測 さ れる。 こ のよ う な意味 か ら も 、 学級担任が 他者の ひと り と し ての役割 を意識的 に担い、 児童が日々 多元的 に自分 を見つめ ら れる よ う にす る こ と が重要であ る と 考え ら れる。 そ れでは、 そのよ う な教師側の刺激 と し て適切 な働 き かけは な んであ ろ う か。 当然、 児童 ひと り ひと り の適性 に合 わせた個別的働 き かけは必要かつ重要であ ろ う 。 し かし、 一人の学級担任の時間的 ・ 労力的問題を考え ると、 そのよ う な個別的 ・ 情緒的接触には自ず と 限界が伴 う 。 学級経営的な観点から は、 一人の学級担任が学級の児童 全員 に投げかけ る行動から 、 個々の児童の内面の変容 を 促 し、 肯定的自己概念 を発達 さ せる必要があ る だ ろ う 。 そこ で、 本研究では、 学級全体に対す る働き かけ であり 、 し か も児童の内面 に ポ ジテ ィ ブ な影響 を お よ ぼ し う る担 任 の行 動 と し て 、 オ ー セ ン テ イ ツ ク リ ー ダ ー シ ツ プ理 論 に基づ く 発話に注目 し 、 そ れが児童の自己発達におよ ぼ す影響 を検討 し たい。 学 級 に お け る オ ー セ ン テ イ ッ ク リ ー ダ ー シ ッ プの効果性 オ ー セ ン テ イ ツク と は 「 本物 の ・ 本来 の」 を 意味 す る 単 語 で あ り 、 オ ー セ ン テ イ ツ ク リ ー ダー と は、 自己 形 成 の過程 を経 て築 き あ げた本来 の自分 ( オ ー セ ン テ イ ツク セ ル フ : authentic-self) を自覚 し 、 そ の自分 を偽 る こ と な く 行動 に反映 さ せ る こ と に よ っ て、 フ オロ ワ ー に ポ ジ テ ィ ブ な影響 を お よ ぼす リ ー ダー を指 す。 リ ー ダーに な る以前か ら人 と し て生 き て き た道、 さ ら には職業人 と し て歩 んで き た来 し方、 その過程での様々な経験 と 内省 に よ っ て培 われた 「生 き てい く 上で大切 に し てい る価値観 や信念」 あ るいは 「自 ら の生き方 ・ 生き様」 を自覚 し、 その価値観や生 き方 を基盤に フ オロ ワ ー に接 し 意思決定 を行 う こ と が オ ー セ ン テ イ ツク な行動 で あ る。 児童に対する教師の行動は多岐にわたるが、 学級担任、 特に小学校の担任には、 学級全体の児童に 「語り かけ る」 時間、 すなわち比較的発話自由度の高い時間帯が多 く 存 在す る。 そこ で竹西ら (2013) は、 担任の語り に含ま れ る オ ー セ ン テ イ ツ ク な発 話 に注目 し た。 オ ー セ ン テ イ ツ ク な発話 と は、 担任自身 が人生で培 っ た信念や価値観に 関連す る発言であ り 、 人 と し て大事 に し て き た も の を表 出す る行為 を指す。 竹西 らは小学校 5 年の 5 ク ラ ス を対 象 に担任 の発 話記録 を分析 し 、 オ ー セ ン テ イ ツ ク 発 話 を 抽出 し た。 その上 で、 そ れぞれの ク ラ スの児童の関係自 尊心 と 学級所属感 を測定 し、 発話 と の関連 を検討 し た。 その結果、 担任 の オー セ ン テ イ ツク発話 と 児童の関係自 尊心お よ び学級所属感 と の間 に、 有意 な正 の相関 を見 い だ し た。 関係自尊心 と は、 他者 と の関係 におけ る感情 を 伴 っ た自己評価で あ り 、 他者 と 一緒にい る こ と の幸福感 や他者か ら 必要 と さ れてい る存在意義感 か ら な る (竹西, 2010) 。 こ の こ と か ら 担任 の オ ー セ ン テ イ ツ ク な発話 が 多いほど、 児童は学級内での対人的幸福感や自己存在感 を高め、 学級への所属意識 も高ま る と いえ る。 担任 の オー セ ン テ イ ツ ク 発話は、 児童の肯定的自己概 念の発達 に と っ て も ポ ジ テ ィ ブ な影響 を お よ ぼす と 予 想 さ れる。 オ ー セ ン テ イ ツ ク な発話は、 Figure 1 で示 し た 教師が与え る刺激 と し て重要であ る と 考え ら れる。 オー セ ン テ イ ツ ク リ ー ダ ー の も と で フ オロ ワ ーは、 リ ー ダ ー の示す価値観や生き方 を学習 し無自覚のう ちに内面化 さ せ る こ と が、 成人 を対象 と し た研 究 で示唆 さ れてい る (ex. Avolio and Gradner, 2005) 。 ま た現時点 で オ ーセ ン テ イ ツ ク リ ー ダ ー の行動 要素 を備 え て い る と み な さ れ る人 の多 く が、 自己形成 の過程 で オ ー セ ン テ イ ツ ク な先 達 が い た こ と を 述 べ て い る (e:,c. Shamir and Eilam, 2005) 。 学級担任のオー セ ン テ イ ツク な発話は、 担任自 身 の オ ー セ ン テ イ ツク セ ル フ の表出 で あ り 、 自己 形成 に 根 ざす も ので あ る。 従 っ て、 児童の自己 の意識化 を促進 し う る機能 を持つ と 考え ら れる。 ま た オーセ ン テ イ ツク発話は、 教師自身 の自己開示 と も捉え ら れる。 自 ら が人 と し て なに を大事 に し てい るの か、 場合 に よ っ ては、 なぜ その こ と を大事 にす るのか、
学級担任のオ ーセ ンテ イ ツク発話 と 児童の自己概念およ び自己開示 と の関連 なぜ そのよ う な考え や気持 ち を持 つ よ う に な っ たのか と い っ た自己形成の過程に関わる内容 を児童に伝え る自己 開示であ る。 従 っ て自己開示の返報性現象から も、 教師 から 嘘偽 り のない気持 ち、 大事 に し てい る考え を伝え ら れた児童は、 自 ら の気持 ち や考え を教師 に開示 し たい動 機 を強め る と 考 え ら れる。 さ ら に、 そのよ う な状態が学 級全体で生 じ れば、 児童同士の相互作用の中で も偽り の ない自分 を開示す る発言が増加す る と 考え ら れ、 その結 果、 学級内の関係性向上が期待 で き よ う 。 研究目的 と 仮説 以上の議論から、 本研究では、 学級担任のオー セ ンテイ ツ ク発話 と児童の自己概念発達 と の関連 を検討す る こ と を 目的 と する。 具体的な検討点は次の 3 点である。 1 ) 児 童の自己概念発達、 特に自己概念の分化 ・ 多様化と担任 の オ ーセ ン テ イ ツク発話 と の関連 (研究 1 ) 。 2 ) 児童 の学級内 での友人に対す る自己開示行動 と の関連 (研究 2 ) 。 3 ) 学級集団内 の相互関係性の向上 と の関連 (研 究 3 ) 。 仮説は、 こ れら 3 点のいず れにおい て も ポジテ ィ ブな関連が見 ら れる こ と であ る。 学級担任が、 教師 一児 童間、 児童 一児童間の相互作用 を大切に し 、 自 ら のオー セ ンテ イ ツク セル フ を偽 る こ と な く 表出 し てい く こ と で、 児童の自己概念の分化 ・ 多様化、 自己開示行動の促進に 寄与す る と と も に、 学級内の関係性 を向上 さ せう る だ ろ う o
II 研 究 1
研究 1 では、 学級担任の オ ー セ ン テ イ ツク発話 に よ っ て、 児童の自己 概念に どのよ う な変容が見 ら れるのか を 明 ら かにする。 こ こ では、 自己概念を 「自分自身や他者 が自分の特徴 を どう と ら え てい るかについ ての自分の考 え」 と し、 成長 と と も に分化 ・ 多様化 し てい く こ と が望 ま し い も の と と ら え る。 Damon & Hart (1982) は、 年 齢の積み重ねと と も に、 身体的自己、 行動的自己、 社会 的自己、 心理的自己の順に自己概念が発達 し てい く と し てい るが、 本研究 では、 10~ 12歳 と い う 発達段階での自 己概念は安定的でな く 比較的短い スパ ンで変化が生 じ る と 予想 さ れる こ と か ら 、 他者 と の相互作用の促 進に よ っ て、 上記のよ う な自己概念の各側面 をバ ラ ンス よ く 自覚 で き る こ と が望 ま し い と と ら え た。 なお、 こ こ での 「分 化」 と は、 す で に内在化 し てい る自己 規定の際の主要な 着 眼点 か ら 生 じ る下位概念が増え て い く こ と で あ り 、 「多様化」 と は着眼点自体に新 たな視点が加わっ てい く こ と を意味 し てい る。 学級担任の オ ー セ ン テ イ ツク発話 は児童に と っ て有効 な刺激と なり 、 自己概念の分化 ・ 多 様化の促進につ なが る と 推測 さ れる。 方 法 研究協力者と なっ た学級担任は、 F 県 G 市内 H 校 4 ・ 5 ・ 6 年担任 3 名 (教師 A ・ B ・ C) 、 G 市内 H 校以外の 協力校 4 ・ 5 年生担任 2 名 (教師 D ・ E) であ っ た。 そ れぞれの教師の年代 と 性別は、 4 年担任教師 A が40代 男性、 5 年担任教師 B も40代男性、 6 年担任教師 c は 50代女性、 4 年担任教師 D は30代男性、 5 年担任教師 E は40代女性で あ っ た。 対象 と な っ た児童は、 こ れら の学 級に所属す る計129名。 いずれの学校学年 も単学級であっ た。 研究実施にあた っ ては協力者 と な っ た学級担任の承諾 お よ び所属校 の校長 の許可 を得 る と と も に、 PTA を通 じ て児童の保護者への告知 も行 っ た。 なお担任 には、 研 究目的 と 仮説は告げず、 児童の自分の捉え方の調査 と 学 級状態の観察 と い う 名目で依頼 し たが、 研究終了後に目 的 と 得 ら れた結果 を説明 し 、 知見の現場還元 をはかっ た。 ( 1 ) 児童の自己概念測定1 ) Twenty Statements Test : 20答法 (以下 TST と 略記 す る)
TST は、 「私は~ 」 と い う 一人称代名詞に続い て、 20 の文 を作成す る方法であり Khun & McPartland (1954) によ っ て開発 さ れた。 自由回答法なので、 調査対象者は 自分自身 を自分の言葉で自由に表現す るこ と ができ る。 ま た、 個人が置かれた状況や関心、 注目 し てい る こ と 、 「自分はこ う だ」 と 認知 し てい る特性、 その認知す る特 性 を持つこ と への評価や態度な ど、 個別的で記述的なデー タ が得 ら れる。 さ ら に、 各反応 の カ テ ゴリ ー化 に よ り 、 数量化や系列 の分析、 記述領域の偏 り な どの分析が可能 と な る。 2 ) TST 実施手順 平成25年 3 月に H 校の児童 4 ~ 6 年の数名ずつを対 象に予備調査 を行 っ た。 発問の仕方、 回答用紙の問題点 を吟味 し、 教示文の改善を行った。 平成25年 4 月中旬に、 G 市内の 4 ~ 6 年の 5 学級全129名 を対象に実施 し た。 続 く 7 ・ 9 ・ 11月の継続調査は、 担任が主体と な っ て実 施 し た。 なお担任 の実施 に当 た っ ては 「 実施説明文」 「児童への教示文」 を作成 し、 実施方法 を理解 し て も ら っ たう え で行 っ た。 ( 2 ) 担任 の オ ー セ ン テ イ ッ ク セ ル フ 形成 の査 定 竹西 ら (2013) が開発 し た 「 ラ イ フイ ベ ン ト ・ ト レイ ル法 (Life-events Trail Method : 以下 LET と 略記す る)」 を用い て、 各担任のオーセ ン テ イ ツク セル フ の査定 を行 っ た。 LET と は リ ー ダー ( こ こ では教師) が、 自己形成 過程におい て経験 し て き た重要な 「 出来事」 「体験」 を 振 り 返り 、 自分の信念や価値観の原点 を発見 ・ 確認す る も ので あ る ( 具体的 な作業内容は、 竹西 ・ 竹西 ・ 森下,
2013参照) 。 LET の実施によ っ て 「経験 を通 じ て、 価値 観や生 き方が明確 に形成 さ れてい る か」 「価値観や生 き 方 におい て、 役割 と し ての自己 と 本来の自己が矛盾 な く 統合 さ れてい るか」 な どが明 ら かにな り 、 オ ーセ ンテ イ ツ ク セルフ の形成過程、 形成程度が査定で き る。 ( 3 ) 担任の発話の測定 と オー セ ンテ イ ッ ク発話の抽出 上記 LET の作業 に よ っ て明 ら かに さ れた各自 の価値 観や信念への言及やそ れら に基づ く 発言 ・ 発話 を オ ー セ ン テ イ ツク 発話 と し て捉え た。 1 ) 「先生の話」 の録音 5 名の学級担任が 「朝の会」 「終わり の会」 後に設定 さ れてい る 「先生の話」 の時間に、 学級児童全体に語 っ た内容 を Ic レ コ ーダーで録音 し た。 期間は 4 ・ 6 ・ 7 ・ 9 ・ 11月の内 1 週間ずつ。 どの学級 も、 朝の会の後、 終 わり の会の後 と も に10分ほ どの時間が設定 さ れてい る。 その時間 を満度に録音 し た場合、 [朝の会10分 + 終わり の会10分] X 5 日 = 100分が発話場面合計時間 と な る。 し か し、 朝の会、 終わり の会の時間が延 びたり 、 帰 り の 準備等 に時間がかか っ たり す る こ と も日常的 にあ り 、 録 音時間は日々異な る。 2 ) オ ー セ ン テ イ ツ ク 発 話 の抽 出 教師 ご と に、 「先生の話」 合計時間のう ち、 LET の実 施 に よ っ て抽 出 し た各教師 の オ ー セ ン テ イ ツ ク セ ル フ と 関連のあ る発話の時間 を計測 し た。 ただ し児童に向け て 話 を し た後、 児童に発表 さ せたり 話 し合わせる時間 を設 け た り し た場合、 その場面は オ ー セ ン テ イ ツク 発話 の抽 出対象 と し なか っ た。 一方、 先生の話の中で、 話に伴 う 児童の反応に対す るやり と り から生 じ る相互作用的 な対 話か ら は、 オ ー セ ン テ イ ツク 発 話の抽出計測 を行 っ た。 結 果 ( 1 ) LET によ る査定結果 5 人 の学級担任 の LET か ら 得 ら れた オ ー セ ン テ イ ツ ク セ ル フ の内容 を Table t に示す。 いず れの担任 も オ ー セ ン テ イ ツ ク セ ル フ を形成 し てい る様子が う かがえ た。 ( 2 ) オ ー セ ン テ イ ツ ク 発話の出現率 録音 し た 「先生の話」 の全体時間におけ るオー セ ンテイ ツ ク発話の時間の割合 を算出 し た。 結果を Table 2 に示す。 5 名の学級担任のう ち、 教師 c ・ E は総 じ て50%前後 と 安定的 であ っ た。 教師 A ・ B ・ D は、 時期によ り ばら つ き があ っ た。 ( 3 ) TST 回答の分類
Damon & Hart (1982) によ る自己概念の発達図式 を
榎本 (1998) が改変 し た も の、 Shavelson ら (1976) の 自己概念の多次元階層因子モ デルを参考に、 8 観点で分 Table 1 LET によ り 得 ら れた学級担任の価値観 ・ 信念 学 担 オ
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セ ン テ イ ツ ク ・ セ ル フ ( L E T に よ り 確 題 ・ 拍 出 ) 教 師 A ★ 人 と の か か わ り を 大 切 に で き る あ た た か い 心 を 持 つ こ と , ★ 自 分 の こ と ( 名 前 、 体 、 心 、 命 ) を 大 切 に す る こ と , ★ 元 気 で 気 持 ち の よ い あ い さ つ や 返 事 が で き る こ と , ★ 当 た り 前 の こ と が 当 た リ 前 に で き る よ う に な る こ と で 、 自 信 に つ な げ て い く こ と , 教 師 B ★ で き る で き な い で は な く 、 や る か や ら な い か が 大 切 , ( 挑 戦 す る こ と の 意 義 ) ★ 自 分 で 考 え て 行 動 す る , ★ 人 の こ と で も 行 動 に 移 せ る , ★ 人 と の か か わ り に お い て 責 任 あ る 行 動 を と る こ と , ★ 人 と の か か わ り の 中 で 、 楽 し く 元 気 に 過 ご す こ と , ★ 人 の 思 い を し っ か り と 聞 き つ つ 白 分 の 思 い を は っ き り と 伝 え る 中 で 人 間 関 係 を 築 く こ と , 教 師 0 ★ 心 ( 気 持 ち ) の 持 ち 方 を 自 分 自 身 で 調 整 で き る こ と . ★ 人 の 話 を 日 と 耳 と 心 で 真 剣 に 聴 く こ と ( そ の こ と が 相 手 を 大 切 に す る こ と に つ な が る ) , ★ 誰 に 対 し て も 思 い や り の 心 を も っ て 接 す る こ と , ★ 責 任 と 自 覚 あ る 行 動 を と る こ と , ★ 何 事 に も 全 力 で 取 り 組 む 「 ひ た む き さ 」 . 教 師 D ★ で き た 、 で き な か っ た で は な く 、 自 分 自 身 が 伸 び た か ど う か が 重 要 で あ る , ★ 人 に 思 い や り を 持 ち 、 自 分 ら し く 楽 し い 学 校 生 活 を 送 る こ と を 大 事 に し た い と い う こ と , ★ 人 は 認 め ら れ る 経 験 の 中 て 、 成 長 し て い く も の で あ る , ★ め あ て に 向 け て 努 力 す る こ と が 大 切 , ★ 笑 顔 や 感 謝 の 気 持 ち を わ す れ な い , 教 師 E ★ 目 標 に 向 か つ て 、 あ き ら め ず が ん ば り ぬ く ( 継 続 的 な 努 力 の 過 程 を 大 切 に し た い ) , ★ 自 分 の 言 葉 で 、 思 い を 伝 え よ う と す る こ と が 大 切 , ★ で き る こ と は 何 か 、 自 ら 考 え て 行 動 す る こ と が 大 切 , ★ 周 囲 の 人 と の 和 、 人 と の か か わ り ( コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン ) を 大 切 に す る , ★ 真 っ 直 く、 ( 誠 実 に ) に 生 き る , Table 2 学級担任の オ ー セ ン テ イ ツ ク発話出現率 、、
、
、、 A B 0 D E 4月 7.9 31.5 49.5 13.8 46.5 6月 37.0 12.5 39.3 30.7 55.2 7月 31.8 38.9 43.4 20.4 49.0 9月 29.4 53.0 45.0 49.8 56.1 11月 35.9 59.2 49.1 45.2 49.4 ' 全発 時間における割合 (% ) 類 し た (Table 3 参照) 。 なお、 「 II 学業的自己」 につい ては、 Damon & Harts の図式 では 「行動的自己」 と な っ てい るが、 児童の発達段階 を ふま え 、 学齢期 には学業 に 関 す る こ と か ら 自 己 を と ら え る こ と が多 い と す る Shavelson ら のモ デル を取 り 入 れた分類 と し た。 さ ら に、 分類の軸と し て自己の 「表層的側面」 「内面的側面」 を 加え た。 こ の軸 の導入 に よ っ て、 児童の記述 を、 単 な る 行動や役割の記述 と 、 そ れに伴 う 自己評価や心理状態の 記述 を分け て捉え る こ と がで き る。 Table 3 自己概念記述の分類 表層的側面 内面的側面 ]V 心理的自己 一般的な「好き嫌い」の感情 対人、社会関係に関する包括 的自己認知 III 社会的自己 社会的な立場、役割、行動にする事実 対人、社会関係に関する思い (評価・ 願望・ 配慮・ 不安) ]I 学業的自己 実 学業における行動に関する事 学業に関する思い (評価・ 願望・ 配慮・ 不安) , 身体的自己 身体的特性、身体的行動に関 する事実 身体的特性、行動、能力、技能 に関する思い (評価・ 願望・ 配慮・ 不安) ( 4 ) 自己概念記述量の経時的変化 8 観点 で分類 し た記述量のそ れぞれにおい て、 4 月 か ら 11月 の 4 回の測定か ら 得 ら れた各側面の記述量 を学級 ご と に示す (Figure 2) 。 た だ し 、 教師 A の学級 (A 学 級 と 略記す る。 以下同様) と c 学級では、 諸般の事情 に よ り 9 月の実施はで き なか っ た ため、 デー タ が欠損 し学級担任のオ ー セ ンテ イ ッ ク発話と 児童の自已概念お よ び自已開示 と の関連 教師A学級/教師C学級 ※g月は未実施 E_1身体表層 Isl 学業表層 社会表層 口心理 表層 國身体内面 l21学業内面 m 社会内面 口心理内面 日空想 未 回答 表層的側面 内面的側面 C C A A 月 月 月 月 4月A 月 月 月 月 0% 20% 40% 60% 80% 100% 教師 D学級 口 身体 表層 学 業 表層 因社 会 表層 口心理 表層 國身体内面 国学業内面 [[n 社会内面 口心理内面 目空想 Ia 未回答 表層的側面 内面的側面 月 月 月 月 月 月 月 月 教師 B学級 口身体表層 Isl 学業表層 目社会表層 口心理 表層 國身体内面 a 学業内面 l:[l 社会内面 口心理内面 目空想 未回答 表層的側面 内面的側面 0% 20% 40% 60% 80% 100% 教師 E学級 口身体表層 学業表層 社会表層 口心理表層 國身体 内面 学 業 内面 Ill 社会内面 口心理 内面 目空 想 未回答 表層的側面 内面的側面 Figure 2 児童の自己概念記述の経時的変化 Table 4 自己概念記述の)(2 検定結果 A 4-→7月 7→11 月 4→11 月 心理内面の (2)=12.34, p< 001 社会内面の (2) =12.56, p< 0 01 社会内面の (2) =10.41 , p< 001 心理内面の,r (2) =1809, p< 001 B 4→7月 7→9月 4→11 月 社会表層の,r (2) =12.07, p< 0.01 心理表層の (2) =4.73, p< 0.05 心理内面の (2) =12.46, p< 0.01 学業表層の (2)=26.04, p< 001 社会表層の (2)=7 40, p< 0.01 心理表層の (2) =9.02, p< 0.01 学業内面の (2) =604, p< 0 05 :身体表層の (2) =524, p< 0 05 の (2) =2695, p< 001 心理表層の (2) =4703, p< 0 01 内面の (2) =15.67. < 001 社会内面の (2) =1717. < 001 c 4→7月 7→11 月 4→11 月 身体表層の (2) =405, p< 0 05 社会表層の (2) =388, p< 0.05 身体内面の (2) =7.49, p< 0.01 社会内面の (2) =26.92, p< 0 01 身l本内面の (2) =759, p< 001 社会内面の,r (2) =509, p< 0.05 心理表層の (2) =4 48, p< 0 05 身体内面の,r (2) =737, p< 0.01 内面の (2) =10 62, p< 0 01 社会内面の (2) =48.35, p< 0.01 心理内面の (2) =12.80, p< 0.01 D 4→7月 7- ,9月 9→11 月 4→11 月 社会表層の (2 ) =5 24 , p < 0 05 社会内面の,r (2) =415, p< 0 05 社会内面の,r (2) =440, p< 0 05 学業表層の (2) =5 45, p< 0 05 心理表層の (2) =785, p< 0.01 社会内面の (2) =1683, p< 0 01 E 7
-
9月 学業表層の (2)=611 p< 005 心理表層の,r (2)=906 p< 001 身体内面の,r (2) =5.37, p< 0.05 心理内面の (2) =4.38, p< 0.05 て い る 。 B 学級 と D 学級、 E 学級は、 4 ・ 7 ・ 9 ・ 11月 と 時 間 の経過 と と も に徐 々 に カ テ ゴ リ ー ご と の記述量 に偏 り が少 な く な っ た。 A 学級、 D 学級におい ては、 表層的側 面に大き な変容は見 ら れないが、 内面的側面の カ テ ゴリ ー におい ては記述量 の偏 り が少 な く な っ た。 ま た、 どの学 級 も 回 を追 う ご と に未回答 数が減 っ た。 2 検定 の結果 か ら 記述量の変化 が有意 に認め ら れた期間 と 自己概念の カ テ ゴリ ー を Table 4 に示す。 ( 5 ) オ ー セ ン テ イ ッ ク発話出現率 と 自己概念の相関 オ ー セ ン テ イ ツ ク 発 話 出 現 率 と 記 述 量 の 相 関 を Figure 3 に示す。 カ テ ゴリ ー ご と に調べ た と こ ろ 、 8 つ のう ち 「社会的自己の内面的側面 (r = 0.64, p< 0.01)」 「学業的自己の表層的側面 (r = 0.50, p< 0.01) 」 有意な 正 の相関、 「 心理的自己 の表層的側面 (r =-
0.62, p<
0.01) 」 に有意な負 の相関があ っ た。:
(-/ o ) ﹁一 e -M 一一A発話出現率と
「社会的自己の内面的側面」
◆ v = 0 .1672x ト0.0511 ◆R2 = 0.4 )37
◆/ '' /
.
fill
' ◆、
'
Ill・ ' ◆ ◆ ◆ _-
ll ◆ ▲◆
r= 0.64 )<0.01
25 3 5 45 A発話出現率発 (% ):
(o )< l[I一一e
一 、一一:
A発話出現 率と
「心理的自己の表層的側面」
、、
,,
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ▲、、、
、、
◆ ◆ ◆y = -0.
D3294x
-t 2 _ r、 a50.325
、
lll
、
、
◆ ◆ ◆r= -
-0.60 :)<0.01
▲ 25 35 45 A発話出現率 (% ) Figure 3 教師のオ ー セ ン テ イ ッ ク発話率 と 児童の自己概念記述量 と の相関 考 察 今回の TST の結果では、 心理的自己の表層的側面 を 表す内容 と し ては、 「 ~ が好 き 、 嫌い」 と い う 表現が非 常に多い (25~ 45%) 。 このこ とは、 梶田 (1985) が児 童期 にはその傾向が強い と 述べ てい る こ と に一致す る。 し か し、 こ れら の表現によ る自己記述量は、 オーセ ンテ イ ツ ク発話出現率 と の負 の相関が見 ら れた。 こ のこ と か ら、 学級担任のオー セ ンテ イ ツク発話が、 児童の自己定義の 多様化に貢献す る可能性が指摘 で き る。 つま り 、 担任が オ ー セ ン テ イ ツ ク セ ル フ に 立脚 し た 価値 観 や信念 を語 る こ と で、 児童が 「 ~ が好 き 、 嫌い」 と い つたよ う な 「自 ら の嗜好傾向 を直情的に表現す る こ と で自己 を捉え る」 こ と から 、 自己のその他の側面 に目 を向け、 自己定義の 幅 を ひろげ る視点 に移行 し た可能性が考え ら れる。 ま た、 オーセ ン テ イ ツク 発話 と 「社会的自己の内面的 側面」 に相関が見 ら れた。 社会的自己の内面的側面には、 対人的関係や社会的関係におい て、 他者評価の影響 を含 んだ自己評価、 自 ら の願望 や展望、 不安 な どの複雑 な心 理が含 ま れてい る と 考え ら れる。 こ の こ と か ら も 、 学級 担任のオー セ ン テ イ ツク発話は、 児童の自己概念の分化 ・ 多様化 に影響 を及ぼす と こ と が示唆 さ れよ う 。 一方、 今回の結果では、 学期が進むにつ れて どの学級 も 未回答の個数が減る傾向 にあ る。 こ れは、 定期的 な実 施に伴 っ て、 要領 を得 た と も 考え ら れるが、 時間の経過 によ る成長 ・ 発達によ っ て、 20回答 で き るだけの多面的 な視点 を獲得 し た こ と に よ る変容 であ る と と ら え る こ と も で き よ う 。m 研 究 2
研究 2 では、 自己調整や対人関係促進におい て重要だ と さ れる自己開示に焦点 を当 て、 学級担任のオー セ ンテ イ ツ ク発話が児童の自己開示行動に どのよ う な影響 を及ぼす のかを検討す る。 なお本研究では、 自己開示 を 「相互の やり と り を通 し て、 自分のこ と を自発的 に他者に伝え る こ と」 と 捉え た。 ま た学級内で親 しい と 思う 友達に、 自 分が どのよ う な話題 を どれ く ら い話すかと い う こ と を調 査 し、 数値化 し た ものを 「自己開示度」 と し た。 オーセ ン テ イ ツ ク セ ル フ を自 覚 す る 教師 の自己 開示的 な オ ー セ ンテ イ ツク発話は、 学級内 におけ る児童相互の自己開示 行動 を促進す る と 考え ら れる。 方 法 ( 1 ) 小学生用自己開示尺度の作成 1 ) 質問紙作成 榎本 (1997) の自己開示質問紙 (ESDQ一高校生 ・ 大学 生用) を参考に、 4 段階22項目の質問文 を作成 し た。 調 査票 では 「 な かよ し の友 だ ち」 を思い浮かべ て、 その友 だち に以下のこ と を どの く ら い話 し ます かと い う 質問の も と 、 「自分 のす き な も のの こ と」 か ら 「家族 と し た こ と」 「 し よう 来の ゆめ」 「自分の体についての不安や悩み」 「人 か ら ひ ど く 傷つけ ら れたこ と」 等、 自己開示 におい て浅い と さ れる項目から深い と さ れる項目ま で を並べた。 な お、 ワ ー デ イ ン グに つい ては、 小学生向 き に な る よ う 小中およ び特別支援学校の現職教員 によ る吟味 を経た。 2 ) 予備調査と因子分析 平成成25年11月から26年 1 月の約 2 か月間に、 F 県 G 市内の小学校13校、 4 ・ 5 ・ 6 年生児童の計763名を対学級担任のオ ーセ ンテ イ ツク発話 と 児童の自己概念お よ び自己開示 と の関連 象に予備調査 を実施 し た。 得 ら れたデー タ を用い て因子分析 を実行 し た。 最尤法 プロ マ ッ ク ス回転後のパ タ ー ン行列 を Table 5 に示す。 4 因子が抽出 さ れた。 第 1 因子に 「勉強のこ と」 「今が んば っ てい る こ と」 「今 の日 標」 な どの項目が高 く 負荷 し たため、 こ の因子を 「社会的展望」 と 名付け た。 第 2 因子には 「容姿の悩み」 「体の不安」 「勉強の悩み」 な ど が高 く 負荷 し たため 「自己苦悩」 と し た。 第 3 因子には 「友人に関す る悩み」 「落ち込んだこ と」 「失敗 し たこ と」 が高 く 負荷 し たため 「対人苦悩」 と 名付け た。 第 4 因子 には、 「好 き な こ と」 「 趣味」 「噂話」 が負荷 し たため、 こ れを 「身近な生活」 と 名付け た。 それぞれの因子に負 荷 し た項目 を自己開示の段階に ま と めた も の を Table 6 友 ば 悩 悩 安 み き 味 見 族 割 き 標 来 強 ん 悩 悩 姿 康 不 性 悩 独 敗 め 心 好 趣 意 噂 家 役 好 目 将 勉 が 、 運 勉 容 健 体 異 友 孤 失 だ 傷 Table 5 自己開示尺度因子分析結果 0 8 1 2 1 1
業
1 0 0 1 3 9 0 7 3f
報
n
報
因 子 抽 出 法 : 最 尤 法 回 転 法 : K a is e r の 正 規 化 を 伴 う プ ロ マ ッ ク ス 法 a : 7 回 の 反 復 で 回 転 が 収 束 Table 6 自己開示段階と 各因子の項目a 段 階 項 目 I (因子4 ) 身近な生活 ①好きなもののこと (テレビ・ 音楽・ 服装・ 持 ち物) ②休日の過ごし方や楽しみ、 趣味のこと ③他人のうわさ話 I I (因子1 ) 社会的展望 ④好きな友達、 気の合う友達のこと ⑤今の目標 (習い事や部活動、 スポーツ少年団) ⑥興味のある勉強 (教科) のこと ⑦学校生活に関する思いや意見 ⑧がんばっていることや がんばっ てよかったこと ⑨将来の夢やなりたい大人像 ⑪学校での自分の役割や仕事のこと I I I (因子2 ) 自己苦悩 ⑫運動能力 についての不安やなやみ ⑬勉強成績についての不安やなやみ ⑮家族に対する不満や願望 ⑱容姿についての不安やなやみ ⑳健康についての不安やなや み ⑳男性・ 女性としての自分の体についての不安 ⑩異性の体などについての自分の興味 IV(因子3 ) 対人苦悩 ⑩苦手な友達のこと、 友達関係の不安やなやみ ⑭失敗して、 ものすごく 落ち込んだこと ⑮性格や行動のネガティブ ななやみ ⑰心をひどく傷つけられたこと ⑲孤独 を感 じたときの悲しい気持ち 平成 25 年 11 月実施 N= 763 ゛ 項日 に付した番号は、予備調査における「開示度の高い話題」の順位 に示す。 ( 2 ) 対象 5 学級におけ る自己開示度の測定 平成26年 4 月、 7 月、 9 月、 11月の4 回にわたり 、 対 象 ク ラ スの児童の自己開示度 を測定 し た。 調査は集団で 実施 し、 担任が配布回収 し た。 対象児童数は129名。 結 果 ( 1 ) 自己開示行動の経時的変化 対象学級ごと に、 4 月から11月の自己開示行動の変化 を Figure 4 に示す。 自己開示行動の値は各因 に負荷 し た項目の値 を単純合計 し た も ので あ る。 学級 ご と に経時的変化 を見 る と 、 ①B 学級は、 9 月か ら 11月は、 各因子 と も やや下降傾向 にあ るが、 他の学級 と比べて 7 月以降は全体的に自己開示度が高い。 ②D 学 Figure 4 学級別にみた自己開示度の経時的変化 ** p <0.05 * p <0.10級は大 き な変動 は ない も のの、 どの因 子 も 時間の経過 と と も に上昇 し た。 ③ 「身近 な生活」 につい ては、 B 学級 でのみ 4 月から 7 月 に上昇が見 ら れた。 ④E 学級では、 9 月 から 11月 で そ れま で変容があま り 見 ら れなか っ た因 子群の 「自己苦悩」 「対人苦悩」 が上昇 し た、 な どが見 て取 れる。 こ のよ う に学級 ご と で特有の変動が見 ら れる が、 全体 と し ては上昇傾向がう かがえ る。 そ こ で、 5 学 級全体のデータ を集計 し、 自己開示行動の因子 ごと に経 時的変化が見 ら れるか を検討 し た。 結果 を Table 7 に示 す。 One-way ANOVA の結果、 4 因 子のい ず れにお い て も 4 月から11月の上昇が有意に認めら れ、 今回測定 し た 自己開示 の どの側面 に おい て も 、 児童の行動が高 ま っ た こ と が示 さ れた。 Table 7 内容別にみた自己開示度の差( 4 月調査と11 月調査) オ ー セ ン テ イ ッ ク発話 と の有意 な相関が得 ら れた。 こ の こ と は担任 の オ ー セ ン テ イ ツ ク 発話が、 児 童 の自己 の捉 え方のみな ら ず、 自己 を語 る と い う 行動側面 に も 影響 を お よ ぼ し う る こ と を示 し てい る。 一方 で、 児童全体で みる と 4 月から11月 と 学期が進む につれて、 自己開示行動が活発 にな っ てい るこ と がわかっ た。 こ の結果は、 お そ ら く 今回の協力 者が、 様々 な分野 で多様 な経験 を蓄積 し各分野で功績 を上げてき たベ テ ラ ン教師ばかり であり 、 児童の実態に応 じ た教育活動が展 開 さ れてい る こ と に起因す る と 考え ら れる。 し か し 、 そ のよ う な教師が率 い る学級 に おい て も 、 教師 の オ ー セ ン テ イ ツク発話出現率 と児童の自己開示行動に有意な正の 相関が得 ら れた。 こ のこ と は、 学級担任の様々な教育活 動 の中 で も 、 特 に オ ー セ ン テ イ ツ ク 発話や オ ー セ ン テ イ ツ ク セル フ に基づ く 行動が児童に対 す る有効 な刺激 と な る こ と 、 さ ら には、 そ れが児 童 の ポ ジ テ ィ ブ な変容 を も た ら す重要な要素のひと つ と な る こ と を意味 し てい る と 言 え よ う 。 ( 2 ) オー セ ンテイ ツク発話出現率と自己開示行動の相関 調査全期間 を ま と め て担任の オ ー セ ン テ イ ツク発話 と 児童相互の自己開示行動の相関 を算出 し た。 担任のオー セ ン テ イ ツク発話出現率は研究 1 のデー タ を用い た。 そ の結果、 r = 0.52 (p< 0.05) と な り 有意な正の相関が得 ら れた。 全期間 を通 じ たすべ ての担任の発話率 と 児童の 自己開示度の関係 を Figure 5 に示す。
IV 研 究 3
研 究 3 で は、 学級担任 の オ ー セ ン テ イ ツ ク 発話 が、 児 童の学級内対人関係の主観的評価 ( 以下、 学級内関係性 と 呼 ぶ) に どのよ う な影響 を及ぼすのか を検討す る。 そ のために、 学級の関係性 を 「対友人」 「対学級集団」 「対 学級担任」 の 3 側面から取 り 上げ、 そ れぞれの関係性に おけ る児童の主観的評価 を質問紙 に よ っ て把握 し 、 そ れ ら が学級担任 の オー セ ン テ イ ツク発話 と どのよ う に関連 があ るのか を明 ら かに し てい く 。 方 法 ( 1 ) 学級内関係性尺度の作成 1 ) 質問紙作成 児童から見た関係性の対象 を 「学級内の親 し い友人」 「学級集団」 「学級担任」 の 3 つに設定 し、 それぞれと の 関係性におけ る自己有用感、 連帯感、 安心感な どに関す る児童の主観的評価 を測定す る項目 を作成 し た。 ワー デイ ン グは、 仮作成の後、 現職教員 5 名の吟味 によ り 加筆、 修正 を行 っ た。 2 ) 予備調査 と因子分析 平成25年11月から 2 か月の間に G 市内の小学校13校、 4 ・ 5 ・ 6 年生児童の計763名 を対象に予備調査 を実施 し 、 得 ら れたデー タ を用い て因子分析 を実行 し た。 最尤 法 プロ マ ッ ク ス回転後のパ タ ー ン行列 を Table 8 に示す。 4 因子が抽出 さ れた。 学級集団に関わる質問につい ては、 集団におけ る自己の存在意義に関わる も の ( 6 項目) と 集団 を自 ら と 一体 と し て と ら え る も の ( 4 項目) と に分 かれたため、 後者 4 項目を除外 し、 前者を 「自己存在感」 と 名付け た。 残 る 2 因子は、 そ れぞれ 「担任信頼感」 、 a ● n:I A発話出現率と自己開示度の相関 A : ● B: ★ C: ■ D: ◆ E: ▲ ★ 9月 11 .」・ 11月 y = 0. D2 653x _ n つ・ - 21.: 7 2 0 _51 ★ 4 月 ■ l 1 1 日,'
l 1 日、
、
'.-
・・ l
● ,◆ .:; 月 l l 月 .---・'1
●
9 9月 ・ l ・・ 4月 ●r=0.' 2 ρ・ :0.05
20 30 40 50 A発話出現率 (% ) Figure 5 教師のオーセンテイツク発話率と児童の自己開示度の相関 考 察 研究 1 の自己定義に続い て、 自己開示行動におい て も学級担任のオ ーセ ンテ イ ツク発話 と 児童の自己概念お よ び自己開示 と の関連 「親友親密度」 と名付けた。 ( 2 ) 対象 5 学級におけ る学級内関係性の測定 平成26年 4 月、 7 月、 9 月、 11月の 4 回にわたり 、 対 象 ク ラ スの児童の学級内関係性 を測定 し た。 調査は集団 で実施 し、 担任が配布回収し た。 対象児童数は129名。 結 果 ( 1 ) 学級内関係性の経時的変化 因子分析 で え ら れた因 子 ご と に項日 を単 純合計 し 、 「自己存在感」 「 親友親密度」 「担任信頼感」 の 3 合成変 数 を作成 し た。 合成変数 ごと にみた各学級の経時的変化 を Figure 6 に示す。 B 学級は、 9 月末ま での上昇変容 が顕著 で あ っ た。 D ・ E 学級は、 大 き な変容はないが、 どの因 子 も 現状維持 あ るいは上昇傾向が見 ら れた。 どの 学級 も、 2 学期にな る と すべての因子群で 1 学期に比べ て数値が伸 び悩む傾向があ る中で、 2 学期開始から 9 月
Table 8
の'
. 0 2 4 . 1 2 2 . 0 3 2 0 8 0 . 0 5 0 0 6 1 . 0 6 1 0 6 7 . 1 1 6 0 5 5 . 0 4 6 . 0 0 8 . 0 2 7 . 0 4 0 . 1 3 8 . 0 2 1 . 0 1 5 . 1 0 1 . 0 0 4 . 0 1 4 . 0 8 2 . 0 0 3 . 0 2 6 . 0 3 8 . 1 4 4 . 1 4 2 . 0 6 9 . 1 9 2 . 1 9 2 . 3 3 2_
. 3 9 7 . 2 6 0l
. 0 2 0 . 0 2 7 . 1 2 3 . 0 7 8 . 0 3 8 . 1 5 1 . 0 8 2 . 1 0 9 . 2 7 8 . 0 0 6 . 0 0 6 . 1 0 6 . 2 7 4 . 0 4 2 . 0 5 7 . 4 7 1 . 0 3 9 . 0 5 8 . 1 1 0_
. 0 7 7_
. 1 7 4 . 0 1 6 . 1 8 9 . 0 4 1 . 0 0 2 . 0 3 2 . 0 4 4 . 0 9 0 . 0 1 7 . 1 4 0 . 1 4 3 . 1 4 4 . 1 9 3 . 2 0 3 t , な や み t ・ 正 直 t ・ 大 切 t ・ が ん ば t ・ 合 う t , 受 入 t ・ 仲 間 t , 長 所 t ・ た よ り t , で き る m , 楽 し い m i 理 解 m , 言 え る m i が ん ば m , 仲 間 m i 合 う m i 活 躍 m i で き る m i 認 め m i 役 割 . 0 5 6 . 0 0 9 . 0 3 0 . 0 9 5 . 1 3 3 . 0 8 0 . 0 1 0 . 0 1 9 . 0 4 1 . 0 2 7 . 0 4 2 . 0 1 0 . 0 2 8 . 1 2 0 . 0 1 1 . 0 7 8 . 0 9 6 . 0 2 6 . 0 0 1 . 1 3 1 . 因 子 抽 出 法 最 尤 法 回 転 法 K ・ s ・ の 正 規 化 を 伴 う プ ロ マ ッ ク ス 法 a : 6 回 の 反 復 で 回 転 が 収 東 Figure 6 学級別にみた学級内関係性の経時的変化 ** p <0.05 * p <0.10 6 5 4 3 2 1 0 9 8 7 6 4 4 4 4 4 4 4 3 3 3 3A発話出 現率と親 友親 密度の 相関
A● B★ C■ D◆ E▲ ★ ★ ▲/
l/ ・ '
◆/
● l/
,/ l
/
y
二 \3.037 1x - 85 911
-
R2= 0 3154
★
●l
l
r= 0.56 p<0.01 5 15 2 5 3 5 45A発話出現率 ( % )
5 5 65A発話出 現 率と自 己 存 在 感の 相関
6 5 4 3 2 1 0 9 8 7 6 2 2 2 2 2 2 2 1 1 1 1rL]
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r= 0.70 p<0.01 5 15 25 35 45A発話出現率 (% )
5 5 6 5 Figure 7 教師のオ ー セ ン テ イ ッ ク発話率 と 児童の学級内関係性の相関末にかけ ての B ・ E 学級の自己存在感の上昇は顕著であ っ た。 ( 2 ) 担任のオー セ ン テ イ ッ ク発話出現率 と 学級内関 係性の相関 調査全期間 を ま と め て担任の オ ー セ ン テ イ ツク発話 と 児童の学級内関係性の相関を調べた。 担任のオー セ ンテイ ツ ク 発話 出現率 は研 究 1 の デ ー タ を用 い た。 そ の結果、 「親友親密度」 「自己存在感」 におい て、 有意な正の相関 があ っ た (Figure 7 ) 。 特 に、 自己存在感につい ては、 r = 0.70 (p< 0.01) と 強い相関があ り 、 学級担任のオーセ ンテ イ ツク発話 と の関連が認め ら れた。 一方 「担任信頼 感」 と の間には有意 な相関は認め ら れなか っ た。 考 察 研究 3 では、 児童の学級内関係性の側面から、 担任の オー セ ンテ イ ツク発話 を検討 し た。 学級内関係性に注目 し た理由は、 児童の自己概念が多様化す る こ と で、 自己 開示 に も多 様性や深みが生 じ る と 、 学級内 での相互的人 間関係 も同時 に促進 さ れる と 考 え ら れた ためで あ る。 そ の結果、 こ こ で も 担任の オ ー セ ン テ イ ツク 発話率 と の関 係が見い だ さ れた。 特 に、 自己存在感 と の関連は顕著 で あ っ た。 学級担任 の オ ー セ ン テ イ ツ ク な発話 は、 単 に児 童の自己概念 を多 様化 さ せ る だけ ではな く 、 関係の中の 自己 をよ り 肯定的に評価す るこ と を も促進す る と 言え る。 ま た、 親友 親密度 と の関連は、 担任 の オ ー セ ン テ イ ツク 発話が、 児童相互間の関係性に肯定的影響 をおよぼ し う る こ と を示 し てい る。 今回の指標では特に親 し い友人 と の関係性に限定 し たが、 本研究の オ ー セ ン テ イ ツク発話 は 「先生の話」 と い う 学級全体に向け た場で測定 さ れた こ と を考え合わせる と 、 特定の友人関係 を越え て学級内 全体の関係性向上に寄与 し う る と も考え ら れる。 V 総 合 的 考 察 本研 究 で は、 オ ー セ ン テ イ ツ ク リ ー ダ ー シ ツ プ理論 を 学級経営 に応用 し 、 担任教師のオー セ ンテ イ ツク な行動 が児童にも たら す変容 を検討 し た。 学級内 におけ る担任 教師の行動のう ち、 ひと り ひと り の児童に同時的 ・ 一斉 的 に働 き 掛け る も の と し て、 「先生の話」 と し て毎日定 時的 に設置 さ れた時間 におけ る発話 を対象 と し 、 ラ イ フ イ ベ ン ト ・ ト レイ ル(LET) で査定 さ れた各担任の価値観 ・ 信念 に基づ く と も の を、 オ ー セ ン テ イ ツ ク 発話 と し て抽 出 し た。 その上 で全発話時間 に おけ る オ ー セ ン テ イ ツク 発話出現率 を求め、 それと児童の自己概念記述 (研究 1 ) 、 自己 開示 の程度 (研究 2 ) 、 学級内関係性の自己評価 (研究 3 ) と の関連 を検討 し た。 その結果、 担任 の オー セ ンテ イ ツク発話率は、 児童の自己概念記述の多様化、 自己開示の多 さ、 学級内関係性の肯定的評価 と 有意に相 関 し てい る こ と が明 ら かに な っ た。 加え て、 本研究では 4 月から11月にかけ て 4 回の継続調査 を実施 し、 児童の 自己概念や自己開示の経時的変化 を追っ たこ と によ り 、 担任教師の オ ー セ ン テ イ ツク行動 が児童の内面 に効果に つい て、 よ り 考察 を深め る こ と がで き た。 以下、 順 に考 察を加え る。 研究 1 では、 20回答法 (TST) を用いて児童の自己概 念記述 を求めた。 自己概念記述の分析に関 し ては、 い く つかの先行研究が提示 さ れてい るが、 本研究 では対象が 小学生であ る こ と を踏まえ、 先行研究 を原型にい く つか の改良 を加え た。 なかで も新 た な分類軸 と し て、 内容が 表層的か内面的か を導入 し た こ と は有意義 で あ る と 思わ れる。 こ の軸の導入によ っ て小学生の回答が 「 0 0 をす る」 「 0 0 で あ る」 と い う 自己 に関す る事実の陳述に と どま っ てい るか、 そ れと も 「 0 0 を し て自信がつい た」 「 0 0 であ る こ と に不安 を感 じ る」 よ う に、 自己の事実 を感情や評価に関連 させてよ り 内面的に捉え る視点が育 っ てい るか を検討 す る こ と が可能 に な っ た た めで あ る。 4 月から11月にかけ て 4 回の継続調査 を実施 し、 児童の自 己概念や自己開示の経時的変化 を追っ た。 その結果、 6 年生学級 (c 学級) を除 く 学級では、 内面的側面の記述 の割合が増加 し てい く 様相が捉え ら れた。 ま たよ り 詳細 な 8 分類 で み る と 、 学級 に よ る差違はあ る も のの、 すべ ての学級で分布の変化が有意に認めら れた。 4 月 と 11月 の差違 で み る と 、 全学級の中 で有意 な変化 がみ ら れた カ テ ゴリ ーが17あ るう ち、 11が内面的側面におけ る変化で あ っ た。 こ のこ と か ら も、 児童の自己概念記述が経時的 に変化 し、 内面的側面の記述が増加 し てい る こ と がいえ よ う o 児童の自己概念記述の変化は、 時間がも た ら し た発達 的変化 に よ る部分、 ま た TST を繰り 返 し た こ と に よ る 慣れによ る部分が考え ら れる。 し か し、 こ れら の要因 と は別 に、 本研 究 で は、 学級担任 の オ ー セ ン テ イ ツ ク セ ル フ に基づ く 働 き かけ の効果が示唆 さ れた。 TST 結果 を 8 分類 し た そ れぞれの記述量 と 、 そ の時点 におけ る担任 の オ ー セ ン テ イ ツ ク 発話出現率 と の関係 を 2 軸 に プロ ッ ト し た結果、 児童の自己概念の 3 つの側面に関 し て、 有 意な相関が認め ら れた。 なかで も 「社会的自己 の内面的 側面」 と は高い相関 (r = 0.64) が見 ら れた。 LET の結 果得 ら れた各 担任 の オ ー セ ン テ イ ツ ク セ ル フ に基づ く 価 値観 ・ 信念は、 そ れぞれの担任 が歩 んだ人生 におけ る経 験 を経 て形成 さ れた独自 の も ので あ る。 し か し 、 そ こ に は共通性 も あり 、 今回対象 と な っ た 5 人の教師におい て は 「人と の関わり におけ る心 (教師 A) 、 責任 (教師 B) 、 思い や り (教師 C ・ 教師 D) 、 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン (教 師 E) 」 と い う 関係性に関す る価値観や信念が同 じ であ っ た。 こ のこ と から、 各担任の 「先生の話」 の時間には人 と の関係性 のあ り 方 に関す る オ ー セ ン テ イ ツ ク 発 話が な
学級担任のオ ーセ ンテ イ ツク発話 と 児童の自己概念およ び自己開示 と の関連 さ れた と 考え ら れ、 その発話の多 さ が、 児童の社会的自 己に関す る内面的側面の記述 (対人 ・ 社会関係に関す る 感情や自己評価 を と も な っ た自己記述) の多 さ に結 びつ いたと考え ら れる。 ま た 「学業的自己の表層的側面」 と も 相関が見 ら れたが、 こ れも対象 と な っ た教師の複数が 努力 や挑 戦に価値 をおい てい る こ と か ら 、 そ れら の含 ま れる発話の多 さ が、 学習への取 り 組み行動から自身 を振 り 返 る児童の記述の多 さ を引 き出 し た と 考え ら れる。 児童の自己概念が多様にな るこ と は、 自己開示の促進 を伴 う 可能性があ る。 場合 によ っ て多様 な自己概念はそ の一部につい て寡黙 さ を要請 し た り 、 他者 と 無関連 な形 で深化す る こ と も あ る だ ろ う 。 し か し小学生の場合、 自 己 を捉え る視点が増え るこ と は、 多 く の 「語れる自己」 を持 つ こ と につ なが る と いえ る。 研究 2 の結果は、 担任 のオー セ ンテ イ ツク な働 き かけが児童の自己概念 と 同時 に、 自己開示 を促進 し う るこ と を示 し た。 研究 2 では、 まず小学校高学年児童の自己開示度 を測 定す る尺度 を構成 し、 因子構造 を明 ら かに し た。 大学生 を対象 と し た先行研究の尺度 を踏まえ、 内容の内面性や 話 し に く さ を反映 さ せた段階的尺度 を構成 し 、 763人の 小学校高学年児童を対象 と し た予備調査 を行 っ た。 因子 分析の結果から 「身近な内容」 「社会的展望」 「自己苦悩」 「対人苦悩」 の 4 因子 を抽出 し 、 そ れぞれを I から IVの 段階に位置づけ た。 本調査 では対象 と な っ た 5 学級で、 研究 1 と同様 4 月から11月にかけ て4回実施 し、 経時的 変化 を追 っ た。 その結果、 学級 に よ る変化 の違い はあ る ものの、 全体 と し て見 た場合、 4 月 と 11月では自己開示 の 4 段階すべ てにおい て、 児童の開示度に有意な上昇が 見 ら れた。 こ の間、 同 じ対象児童群で、 自己概念の多様 化が生 じ ていたこ と から、 自己概念の多様化 と自己開示 の促進は同時進行的 に生 じ る と い つて よ い だ ろ う 。 さ ら に、 担任教師の オ ー セ ン テ イ ツ ク 発話率 と 児童の 自己開示度 と の間に有意な相関が見 ら れた (r = 0.50) 。 研 究 1 と 2 の結果 を合 わせ る と 、 担任 の オ ーセ ン テ イ ツ ク な発話が増え る と 、 児童の自己概念発達が促進 さ れ、 同時に学級内 におけ る自己開示行動 も増え る と 考え ら れ る。 担任のオーセ ンテ イ ツク発話が、 学級内の自己開示 行動 を促進す る過程には、 自己概念の多 様化 を通 じ る過 程 と 、 直接的 な影響過程の 2 つが考え ら れる。 前者の過 程は、 Figure 1 に示 し た プロ セ スで あ り 、 担任の行動が 刺激 と な っ て内面的変化 を起こ し た児童の場合、 その変 化は次 な る行動や反応に現 れる と い う も のであ る。 一方、 自己開示 には返報性の現象が知 ら れてい る。 「先生の話」 で 語 ら れ る オ ー セ ン テ イ ツ ク な内 容 は 、 担任 の オ ー セ ン テ イ ツク セル フ形成の過程への言及 も含 ま れよ う 。 教師 自身によ る 「先生はこ のよ う な経験を し、 その時こ う 考 え こ う 思 っ た」 と い う 語 り は、 オ ー セ ン テ イ ツ ク で あ る と同時に教師の偽り のない自己開示 であ る。 こ のよ う な 発話の多用が児童の中に、 自分 を素直に表出 し、 表出 さ れた相手 に同様の開示 を行 う と い う 暗黙の規範や、 学級 がそ れを安心 し てで き る環境 であ る と い う 認知 を与 え た と も 考え ら れる。 学 級担任 の オ ー セ ン テ イ ツ ク 発話 は、 児 童 の関係 性 に おけ る自己 評価 に も 関連す る こ と が明 ら かに な っ た。 研 究 3 では、 学級におけ る他者 と の関係性の評価 を、 自己 存在感、 親友親密度、 教師信頼の 3 側面から捉え て測定 し た と こ ろ、 前者 の 2 つ に関 し て担任 の オ ーセ ン テ イ ツ ク発話率 と の相関が得 ら れた ( 自己存在感 r = 0.70, 親 友親密度 r = 0.56) 。 こ れらの相関は、 竹西 らの先行研究 (2013) で得 ら れた結果の再現 と いえ る。 先行研究では、 学級担任 の オー セ ン テ イ ツク発話が、 児童の関係自尊心 およ び学級所属感 と 相関 を持 つこ と が示 さ れてい る (関 係自尊心 r = 0.63, 学級所属感 r = 0.50) 。 関係自尊心は、 関係的幸福 と 関係的存在意義から 構成 さ れ、 後者は 「周 囲 と の関係で自分が必要 と さ れてい る」 と い う 認知 であ る。 ま た学級所属感は、 学級の一員 と し てのアイ デ ンテ イ テ イ を測定す る も ので あ っ た。 こ れら の結果 を総合す る と 、 オ ー セ ン テ イ ツ ク 発 話 の多 い担任 の学級 で は、 児 童 が自分自身 の必要性 を感 じ、 友人 と の関係で幸福感や親 密度 を感 じ 、 学級の一員 と し ての アイ デ ン テ イ テ イ を築 づい てい る程度が高い と いえ よ う 。 本研究の結果 を総合す る と 、 学級担任のオー セ ンテ イ ツ ク発話は、 2 つの側面から児童に肯定的影響 をおよ ぼ し う る と いえ る。 ひと つは児童の自己発達におけ る影響 で あ り 、 も う ひと つは児童の対 人関係性におけ る影響 で あ る。 学級担任、 小学校の担任は特に多 く の時間 を児童 と 過 ご し 、 児童 に対 し て様々 な行動 を と っ てい る。 教師の 様々な行動は ひと つ と つが児童に と っ ての刺激 と し て働 く が、 なぜ 、 オ ー セ ン テ イ ツ ク 発話は こ のよ う な効果 を 持 つ の で あ ろ う か。 そ れは、 オ ー セ ン テ イ ツ ク リ ー ダー の要件 (竹西 ら , 2013) を再確認す る こ と で明 ら かにな る。 そ れに基づ く と 、 オ ー セ ン テ イ ツ ク 発 話 の特徴 は、 1 ) 自己形成の過程 を経 て得 た価値観や信念 を、 自己利 益や他者評価の懸念のために偽 るこ と な く 表出す るこ と 、 2 ) 重要な決定や判断 を行 う 際も 含 めて常 に、 揺 る ぎの ない拠 り 所 と し て表明す るこ と 、 3 ) こ れら の表出や表 明が自己満足 や押 し つけ にな ら ない ために、 常 に フ オロ ワ 一理解につ と め、 適切 な タ イ ミ ン グで行 う こ と 、 で あ る o こ れら 3 点は、 手続き的公正 (procedural fairness) の 基 本 的 要 素 で あ る 「 正 直 さ (honesty) 」 「 一 貫 性 (consistency) 」 、 そ し て 「 配慮 性 (consideration) 」 に相 当す る。 手続き的公正 と は、 対 人関係およ び集団組織運 営 におけ る極めて重要な要素 で あ り 、 その効果性は様々 な場面 で実証 さ れてい る (Lind & Tyler, 1988) 。 なか で も リ ー ダーの手続き、 フ オロ ワ ーへの接 し方や決定の
仕方におけ る フ ェ ア さ の も た ら す効果につい て、 竹西 ・ 竹西 (2006) は、 フ オロ ワーの自尊心やアイ デ ンテイ テイ を高 め る効果 と 、 フ オロ ワ 一間 の相互サ ポー ト を強 め る 効果の 2 種類 を明 ら かに し てい る。 学級経営におい て担 任が オ ーセ ン テ イ ツク な行動 を と る と い う こ と は、 児童 に対 し て フ ェ ア な リ ー ダーで あ る こ と を意味す る。 児童 に対 し て 「正直に」 「一貫性 を持 っ て」 「配慮 を怠 ら ない」 接 し 方 をす る こ と が、 学級担任 の オ ー セ ン テ イ ツ ク な行 動であり 、 フ ェ アな学級 を作 る第一歩であ る と いえ る。 こ のよ う な フ ェ ア な学級では、 教師 と 児童の信頼関係 が形成 さ れる。 手続き的公正が リ ー ダーと フ オロ ワ ー の 信頼形成に寄与す る こ と は、 成人 を対象 と し た研究 では 広 く 知 ら れてい る (ex. 竹西 ・ 竹西, 2006) 。 し かし、 本 研究 では担任のオー セ ンテ イ ツク発話率 と 児童の教師信 頼 と の間 には相関が得 ら れなか っ た (研究 3 ) 。 なぜ相 関が得 ら れなか っ たのか現時点 で明示はで き ないが、 教 師の オ ー セ ン テ イ ツク 行動 の場合 、 そ の効果性が時間 を 経 て出現す る場合があ るのかも し れない。 担任が適時 を 狙 っ たつ も り で も オ ーセ ン テ イ ツク発話の繰 り 返 し は、 その時の小学生 に と っ て 「 う る さ い話」 と 感 じ ら れるか も し れない。 し か し 、 そ こ で示 さ れた価値観や信念あ る いはそ れを真摯 に語 っ てい た教師の姿は記憶の どこ かに 残 り 、 成長 し た後 に 「遅 れて感 じ る信頼」 と な る こ と も あ る だ ろ う 。 オ ー セ ン テ イ ツ ク リ ー ダ ー シ ツ プ に 関 す る 研 究 で は、 オ ー セ ン テ イ ツ ク リ ー ダ ーの多 く が、 自己 形 成の過程 で オ ー セ ン テ イ ツ ク な大人 に出会い、 その出会 い を 貴 重 な 体 験 と 捉 え て い る こ と が 報 告 さ れ て い る
(Shamir & Eilam, 2005) 。 教師がオーセ ンテ イ ツク であ
る こ と は、 児 童の オ ー セ ン テ イ ツク セ ル フ形成 に 関与 す る可能性が大 き く 、 その意味 で即時的 ではない信頼の形 成 も あ り 得 る と 考え ら れる。 本研究では学級におけ る担任教師の行動が、 児童の内 面におよぼす影響 を行動科学的手法で検討 し た。 教師の 日々の働 き かけ を客観的 デー タ によ り 把握 し、 児童への 影響過程 を検討す る こ と は、 学級経営 に行動科学的分析 を加え るこ と であり 、 直感的な学級経営、 個別的な学級 経営 を、 理論化 し一般化するう え で極めて重要な作業で ある。 し かし一方で、 学級経営には数多 く の影響因が存 在 し 、 個々の要因 を同定す る ために必要な科学的手法、 す なわち共変量の統制に大 き な困難 を伴 う と 言わ ざる を 得 ない。 こ れは本研究の結果に関 し て も同様 であ る。 本 研 究 では、 担任 の オ ー セ ン テ イ ツク 発話量の効果性 を、 児童の変数 と の相関分析 によ っ て検討 し た。 従 っ て、 本 研究の結果につい ては、 今後、 2 変数の相関に誤差 と し て働 く 他の要因の可能性 を捨 てず、 さ ら に吟味す る こ と が必要であ ろ う 。 ま た、 相関分析 で得 ら れた結果は、 因 果 を保証 し ない こ と も看過 し てはな ら ない。 学級担任の 行動が原因 と な っ て児童の変容が得 ら れる こ と を明示す るために も、 今後、 因果の方向性 を明示 で き る操作的 な 実験や統制群 を用い た比較 を行 う こ と が要請 さ れる。
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