エコロジー行動意図の規定要因分析 : 職場など公的場所での消費者集団の一員としての省エネ・キャンペーンに対するエコロジー行動意図
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(2) 14. (366). 横浜国際社会科学研究 第 12 巻第 3 号(2007年 9 月). の特徴を上げることができる.. 一人一人がいくら地球温暖化対策に努めようと. 1.公的場所での環境配慮型消費者行動. しても,周りの人が一緒に協力しないと,実行. 職場など公的場所での環境配慮型消費者行動. できない.行政からのお勧めは,公衆を教育す. は, 家庭のような私的場所での環境配慮行動と,. るという側面の効果もあるだろう.. 違うパターンで行われている.家庭ではこまめ. 本研究は,行政からのお勧めニュアンスが強. に電気を消したり,エネルギーや水を節約した. い公的場所での消費者の省エネ環境配慮行動に. りするのを常に行うのに対し,公的場所では,. 焦点を当て,特にこのような環境配慮という価. 電気や機器などつけっぱなしする場合が少なく. 値観の共有に基づいていない集団の一員として. な い.Seligman & Ferigan(1990)の 研究 に. の消費者の省エネ環境配慮行動意図の規定要因. よると,家庭でのエネルギーや水の消費の主な. を検討してみる.. 規定要因は態度であるのに対し,他者の目に触 れる公的場所での消費行動では,主観的規範が. 第二章 消費者行動と環境問題に関しての先行 研究. 主な規定要因になっていた. 2.集団の一員としての環境配慮型消費者行動. 前述したように,環境問題はきわめて範囲が. 環境配慮型行動は,環境団体への参加や組織. 広くかつ複雑である.西尾(1999)によれば,. の一員としての集団行動と,環境配慮型製品を. 環境問題は多様で複雑な構造をし,環境配慮に. 買うことやリサイクルなど一人で実行する個人. 協力した結果を確認しにくく,社会的ジレンマ. 行動がある.集団行動の場合は,消費者が自ら. 性をもち,外部不経済を引き起こすという特徴. ボランティアとして環境団体に参加し環境配慮. がある.このような特徴をもつ環境問題に関す. 型行動を行う場合と,消費者が所属する集団が. る研究は幅広い専門分野で扱われており,消費. 環境配慮型行動を決め,メンバー全員が統一的. 者行動と環境問題についての研究も新しいテー. に環境配慮型行動をとる場合の二つが考えられ. マではない.アメリカでは 1970 年代から,当. る.個人の環境配慮型行動は,消費者一人一人. 時の大気汚染やごみ公害などの問題の発生とと. の個人的な意思決定で行うのに対し,集団行動. もに,環境問題に関する消費者行動は多く研究. は,複数の消費者が共通の目標に達するために. されてきた.日本でも,80 年代末から消費者. 行う行動である.2005 年夏の「クール・ビズ」. の環境配慮型行動と環境問題との関連が,消費. キャンペーンでは,消費者の勤務先が集団(組. 者の身近なリサイクル行動やエコロジー製品の. 織)全体 で 統一的 に 省 エ ネ 環境配慮型行動 を. 購買やボランティアとして環境保全団体の活動. 行った場合が多かったといえるだろう.. への参加など,さまざまな視点から研究されて. 3.行政からのお勧めニュアンスが強い. きた.. 環境省は温室効果ガスを削減し,地球温暖化. 以下では,これまでに報告されている興味深. を防止するために,夏期冷房時のオフィスの室. い関連研究の成果に基づき,エコロジー行動の. 温を 28℃ にすることを呼びかけている.それ. 規定要因を分析してみる.表 2-1 は先行研究. に加えて,オフィスで快適に過ごすために,環. を対象とするエコロジー行動,データ,エコロ. 境省では,夏のノーネクタイ,ノー上着ファッ. ジー行動の規定要因に基づいて整理したもので. ション を 提唱 し,そ の 名称 を 公募 に よって. ある.. 「クール・ビズ」 (Cool Biz)と決定した.この 一連の省エネ・キャンペーンは行政からのお勧 めニュアンスが強いといえよう.公的場所での 冷房設定のような省エネ行動は,個人としての. 先行研究のまとめとしては,以下の四つの点 を取り上げることができよう..
(3) 大気汚染 へ の 関心 と 低公 害ガソリンの利用態度. 社会的責任行動. 全体的なエコロジー態度. リサイクル行動. 仮想的なエコ商品(洗剤, ペーパータ オ ル,ソ フ ト ドリンク)の選択. デポジット制に関する法 律への支持度. 社会的責任行動. エ コ ロ ジー行動研究 の メ タ分析. Kassarjian [1971]. Anderson Jr. and Cunningham [1972]. Kinnear et al. [1974]. Webster, Jr. [1975]. Murphy et al. [1978]. Crosby et al. [1981]. Antil [1984]. Hines et al. [1987]. エコロジー行動. 1971 年以降に公表されて いる 315 研究を対象. 690 人 アメリカ アンケート調査. 306 人 ミシガン州 電話調査. 179 人 アメリカ南西部 実験. 227 人 ニューイングランド州 アンケート調査. 500 人 カナダ アンケート調査. 412 人 テキサス州 アンケート調査. 242 人 ロサンゼルス インタビュー調査. データ,サンプル. 人口密度 / 都市化傾向. 人種 社会階層. 教育水準 世帯収入. 世帯収入. 年齢 職業 社会階層. 有意 な デ モ グ ラ フィック 規定要因. 表 2-1 エコロジー行動に関する先行研究の概要. 自力性. 保守性 社会的責任感. 疎外感. 寛容性 責任感. 理解力 寛容性 損失回避. 疎外感 独断家 保守性 ステータス志向 個人生活精通度 コスモポリタン志向. 有意 な パーソ ナ リ ティ規 定要因. エコロジー態度 社会的責任感 エコロジー知識量 環境へのコミットメント. エコロジー態度 有効性認知 エコロジー知識量 エコロジー努力度. エコロジー態度 ごみ問題への関心度 詰め替え商品の利用経験 法律施行後の雇用不安 法律施行後の価格上昇. 社会的関心 社会的責任 有効性認知. 有効性認知. 大気汚染保護態度. その他の有意な規定要因. エコロジー行動意図の規定要因分析(李) (367) 15.
(4) リサイクル行動. Vining and Ebreo [1990]. 全体的 な エ コ ロ ジー行動 実践度. Pickett et al. [1993]. 広瀬 [1994]. 環境配慮的行動(目標意 図,行動意図). エ コ ロ ジー商 品 の 購 買 (購) エ コ ロ ジー活動 へ の 参加 (活). エ コ ロ ジー商品 の 購入意 図. Schwepker Jr. and Cornwell [1991]. Scott and Willits [1994]. 資源 ゴ ミ 回収・リ サ イ ク ル行動. Oskamp et al. [1991]. 家 具・ 洋 服 の リ ユ ー ス (家) 新聞のリサイクル(新) 環境保全のために車を使 わずに歩く(歩). 全体的 な エ コ ロ ジー行動 の実践度(実) 規制への支持(規). Samdahl and Robertson [1989]. 2582 人 ペンシルバニア州 アンケート調査. 460 人 アメリカ南西部 アンケート調査. 150 人 アメリカ中南部 アンケート調査. 221 人 カリフォルニア州 電話調査. 340 人 アメリカ西部 インタビュー調査. 197 世帯 イリノイ州 アンケート調査. 2131 人(1978 年のデータ) イリノイ州 アンケート調査. 791 人 ドイツ アンケート調査. 性別:購,活 年齢:活 教育水準:購,活 世帯収入:購,活. 収入,人種,コミュニティ の大きさ. 世帯収入,持 ち 家,居住 タイプ. 性別:家,新,歩 年齢:家,新 子供の数:家 教育水準:歩 社会階層:歩 世帯収入:家 持ち家:家,新 新聞読時間:新. 年齢,世帯収入. 年齢:実,規 教育水準:規 世帯収入:実,規 居住地域の大きさ:規. 年齢:自,断 教育:断,省 収入:断 居住地域の大きさ:断,省. エコ経済バランス観:購, 活 自然との共生観:購,活. 自力性. 援助性向:家,新 援助への価値:家,新. 法的平等志向:実,規. 変革性:省,商 疎外感:自. 環境 リ ス ク 認知,責任帰 属 の 認知,対処有効性認 知,実 行 可 能 性 評 価,便 益・費 用 評 価,社 会 規 範 評価. 政策への関心度:購. 環境へのコミットメント. 汚染 の 認知,ゴ ミ 減量態 度,エコ生活志向. ゴ ミ 問題深刻度,リ サ イ クルへの動機,エコロジー 知識量,友人 / 近隣 の リ サイクル参加度. エコ知識量:歩 情報探索性向:新 規範的影響:家,新,歩. 個人的負担感,世帯生活 負担感,経済的誘因. 環境問題の認知:規. 汚染態度:省 エコ態度:自,商,活. (368). Granzin and Olsen [1991]. 自動車の使用(自) 家庭断熱材の使用(断) 省エネ行動(省) エコ商品の使用(商) エコ活動への参加(活). Balderjahn [1988]. 16. 横浜国際社会科学研究 第 12 巻第 3 号(2007年 9 月).
(5) エ コ 商品 の 選択(過去一 年間 に お け る 選択頻度 を 調査). 環境 ボ ラ ン ティア の 活動 の及ぼす効果. 環境 ボ ラ ン ティア 団体 の 行動意図. 計画的 な 一般 の エ コ ロ ジー行動. エコロジー行動. 河川に対するエコロジー 行動(集団行動,個人行動). エコロジー行動. ゴミ減量行動. Swenson and Wells [1997]. 杉浦ら [1998]. 安藤ら [1999]. Kaiser et al. [1999]. Kaiser and Shimoda [1999]. 野波ら [2002]. 西尾 [2002]. 西尾 [2005]. 20 歳以上の市民 3000 人 千葉県四街道市 留置法. 10 代~50 代計 300 人 首都圏また阪神圏在住 自由回答方式. 環境団体の団体員 202 人, 一般住民 1300 人 質問票. 445 人 質問票. 1643 人 質問票. 環境運動団体の 231 人 質問紙. 日進市 180 世帯 郵送留置法. DDB Needham data 1992 年 3922 人,1993 年 3690 人. 43000 世帯 カナダの統計局のデータ 教 育 水 準,世 帯 収 入,コ ミュニティの大きさ. 教 育 水 準,世 帯 収 入,コ ミュニ ティの 大 き さ,共 同住宅 コスモポリタン,リベラ リ ズ ム,倹約志向,健康 志向,ヘルシー志向. エ コ ロ ジー関与,コ ス ト 評価,ベネフィット評価, 社会規範評価. 行動と生活者とのかかわ り 度,ベ ネ フィット,実 行 で き る よ う な 仕組 み, 一人で実践できない. 愛着:集 主観的規範:集,個 一般的態度:個 リスク認知:個 コスト評価:個 主観的規範:個. 道徳的責任感. 知 識,環 境 価 値 観,行 動 意図. 組織 へ の 帰属意識,主観 的規範,コスト評価. 実行可能性評価,社会規 範評価. エ コ ロ ジー意識,コ ミュ ニ ティ関与,情報収集志 向,経 済 的 安 定 性,生 活 安定. リサイクル・プログラム へのアクセスしやすさ. (注 1)アンダーラインなしは有意な正の関係,アンダーラインは有意な負の関係. (注 2)1997 年までのものは西尾(1999,p. 54─56)の研究に依拠し,1997 年以後のものは追加修正してまとめた. (注 3)略語については,自は自動車の使用,断は家庭断熱材の使用,省は省エネ行動,商はエコ商品の使用,活はエコ活動への参加,実は全体的なエコロジー行動の実践度, 規は規制への支持,家は家具・洋服のリユース,新は新聞のリサイクル,歩は環境保全のために車を使わずに歩く,購はエコロジー商品の購買,集は集団行動,個は 個人行動との意味である.. リサイクル行動. Berger [1997]. エコロジー行動意図の規定要因分析(李) (369) 17.
(6) 18. (370). 横浜国際社会科学研究 第 12 巻第 3 号(2007年 9 月). 1.エコロジー行動の多様性. 要因に関する分析結果からみても,同じ要因が. 環境問題は一言でいっても,地球温暖化,オ. 異なるエコロジー行動の規定要因であるという. ゾン層の破壊,汚染,砂漠化,廃棄物問題など,. 研究結果もあるが,異なるエコロジー行動が異. 範囲広くしかも各問題の間に関連がある.この. なる要因によって規定されているという研究の. ような極めて複雑な構造を持つ環境問題は,そ. 結果もある.. の対策法も多様である.したがって,先行研究. したがって,本研究は多様かつ複雑な構造を. でもさまざまな視点からエコロジー行動に焦点. 持つ環境問題の対策としての具体的なエコロ. を当てた.1970 年代に,当時のアメリカにおい. ジー行動に焦点を当てることにした.. て大気汚染への関心を背景とした低公害ガソリ ンの利用に関する Kassarjian [1971] の研究をは じめ,全体的なエコロジー行動(Kinnear et al.. 2.デ モグラフィック要因,パーソナリティ要 因以外の要因の研究. [1974],Samdahl and Robertson [1989],Pickett. 先行研究では,デモグラフィック規定要因と. et al. [1993],広瀬 [1994],西尾 [2002] など)や,. して有意な結果を得たのは,主に年齢,世帯収. リ サ イ ク ル 行動(Webster, Jr. [1975],Vining. 入,社会階層,教育水準,居住地域の大きさで. and Ebreo [1990],Granzin and Olsen [1991],. ある.しかし,これらのデモグラフィック規定. Oskamp et al. [1991],Berger [1997] な ど) ,エ. 要因は一貫した研究結果が得られなかった.. コ ロ ジー商 品 の 選 択( Murphy et al. [1978],. エ コ ロ ジー行動 と 年齢 と の 関係 に 関 し て. Balderjahn [1988],Schwepker Jr. and Cornwell. は,Anderson Jr. and Cunningham [1972],. [1991],Scott and Willits [1994],Swenson and. Balderjahn [1988],Samdahl and Robertson. Wells [1997] な ど) ,法律 や 規制 へ の 支持 に 関. [1989],Vining and Ebreo [1990],Granzin and. す る 研 究( Crosby et al. [1981],Samdahl and. Olsen [1991],Scott and Willits [1994] の研究で. Robertson [1989] など) ,省エネ行動(Balderjahn. 有意な相関を見出されたが,Kassarjian [1971],. [1988],Granzin and Olsen [1991]) ,ゴミの回収. Webster, Jr. [1975],Crosby et al. [1981],. (Oskamp et al. [1991],西尾 [2005] な ど) ,エ コ. Antil [1984],Hines et al. [1987],Oskamp et. ロジー活動への参加(Balderjahn [1988],Scott. al. [1991],Schwepker Jr. and Cornwell [1991],. and Willits [1994],杉浦ら [1998],安藤ら [1999],. Pickett et al. [1993] の研究では,有意な相関が. 野波ら [2002] など)などの視点からさまざまな. 見られなかった.特に近年地球温暖化などの環. 研究が行われてきた.. 境問題が放送媒体でよく取り上げられ,学校で. その中でも,全体的なエコロジー行動に焦点. の教育も浸透しつつあるため,今後は,年齢と. を当てた研究より, 具体的なエコロジー行動 (リ. エコロジー行動の関係は薄くなるであろう.. サイクル行動,エコロジー商品の選択,省エネ. エコロジー行動と世帯収入との関係に関して. 行動,ゴミの回収,エコロジー活動への参加な. も,一貫 し た 研究結果 が 見 ら れ な かった.世. ど)に焦点を当てた研究のほうが圧倒的に多. 帯収入の高い方がエコロジー行動の実践度が. かった.研究の焦点が全体的なエコロジー行動. 高 い と い う 研究結果 は 多 かった が,一方世帯. から具体的なエコロジー行動へ移る傾向が見ら. 収入の低い方が実践度は高いという研究結果. れる.それは全体的なエコロジー行動の構成要. ( Samdahl and Robertson [1989]) も あった.. 素としての各具体的なエコロジー行動は,関連. 環境問題の対策としてのエコロジー行動は,節. がありながら, 行動の特徴や規定要因が異なり, 個別に研究する必要があるためといえよう. 関連のある各具体的なエコロジー行動の規定. 約という行動もあるが,環境に優しい新製品 (値段が高くても)を買うという行動もある. 前者は世帯収入の低い人が実践しやすいが,後.
(7) エコロジー行動意図の規定要因分析(李). (371). 19. 者は世帯収入の高い人が実践しやすいと考えら. al. は,Anderson Jr. and Cunningham が 使 用. れる.したがって,世帯収入は行動により一貫. した指標を用い,エコロジー製品の購買への態. した結果が見られなかった.各具体的なエコロ. 度と購買行動の両方について測定した.分析結. ジー行動にあわせて考えるべきであろう.. 果としては,デモグラフィック要因より,パー. エコロジー行動と社会階層との関係に関して. ソ ナ リ ティ要因(理解力,寛容性,損失回避). は,有意な相関を見出した研究はある (Anderson. のほうがよりよい測定変数であること,また,. Jr. and Cunningham [1972],Murphy et al. [1978],. 環境汚染に対しての行動の有効性についての認. Granzin and Olsen [1991])が,研究数が少ない.. 知は,消費者の環境配慮への関心の程度に顕著. 教育水準 に 関 し て は,Webster, Jr. [1975],. な効果があることがわかった.. Balderjahn [1988],Granzin and Olsen [1991],. それ以降の研究において見出された有意な. Scott and Willits [1994],Berger [1997],. パーソ ナ リ ティ規定要因 は,責任感,自力性,. Swenson and Wells [1997] の 研究 で は 有意 な. 変革性,援助性向,価値観などさまざまであっ. 正 の 相関 が 見出 さ れ た が,一方 Samdahl and. た.しかし,パーソナリティ規定要因は,デモ. Robertson [1989] の 研究 で は 負 の 相関 と い う. グラフィック規定要因より,説明力が高いと認. 結果が出ている.また,有意な相関が見られ. 知されながら,90 年代以降の研究では,ほと. な かった 研究 も 多 かった(Kassarjian [1971],. んど注目されなくなっている.その代わりに,. Anderson Jr. and Cunningham [1972],Crosby. 有効性評価,社会的規範,関与,実行 し や す. et al. [1981],Antil [1984],Hines et al. [1987],. さ,コスト評価,ベネフィット評価,知識,環. Vining and Ebreo [1990],Oskamp et al. [1991],. 境問題の認知などの規定要因がよく取り上げら. Schwepker Jr. and Cornwell [1991],Pickett et. れている.それは,パーソナリティ規定要因も. al. [1993]) .近年 の 研究 で は,教育水準 よ り エ. 一貫した研究結果が少ないゆえに,注目されな. コ知識量などの要因がより注目されている.. くなったためといえよう.. エコロジー行動と居住地域の大きさとの関係 に関しても,一貫した研究結果は得られていな. 3.集団行動を中心とした研究の不足. い.Samdahl and Robertson [1989],Schwepker. 先行研究を概観すると,早期の研究のほとん. Jr. and Cornwell [1991],Berger [1997],Swenson. どは個人のエコロジー行動に注目し,エコロ. and Wells [1997] の研究では有意な正の関係が見. ジー商品の購買(意図)や使用,リサイクル行動,. 出されたが,一方 Balderjahn [1988] の研究では,. 省エネ行動,ゴミの回収,規制や法律への支持. 家庭断熱材の使用と省エネ行動との間に負の関. などに焦点を当ててきた.エコロジー活動への. 係が出た.. 参加に注目した研究も,消費者個人の視点から. 早期 の 研究 の 中 で パーソ ナ リ ティ規定要. 研究がなされた(Balderjahn [1988],Scott and. 因 に 注目 し た 研究 と し て,Anderson Jr. and. Willits [1994]).. Cunningham [1972] と Kinnear et al. [1974] の. 安藤ら(1999)の研究では,それまでの研究. 研究がある.Anderson Jr. and Cunningham の. において環境ボランティアが環境ボランティア. 研究は社会的責任行動性向の違いを分析した結. 活動に参加する動機や環境問題に関する意識な. 果,社会的責任行動はデモグラフィック要因よ. どがほとんど明らかになっていないと指摘し,. り,パーソナリティ要因によってのほうが説明. 環境ボランティア団体の行動意図に焦点を当. でき,疎外感,独断性,保守性, ステータス志向,. て,環境運動団体メンバーの 231 人を対象者と. 個人生活精通度,コスモポリタン志向という有. してアンケート調査を行い,環境運動の「活動. 意な規定要因を取り上げた.一方,Kinnear et. 継続意図」と「積極的活動意図」を従属変数と.
(8) 20. (372). 横浜国際社会科学研究 第 12 巻第 3 号(2007年 9 月). して測定し,その規定要因を検討した.分析の. の研究は一般的なエコロジー行動意図ではな. 結果は,環境運動の継続意図を規定する要因と. く,具体的なエコロジー行動(省エネ行動)意. して有意な説明変数となったのは,組織への帰. 図 に 注目 し,デ モ グ ラ フィック 要因 や パーソ. 属意識,主観的規範,コスト評価であった.積. ナリティ要因ではなく,90 年代以降の研究で. 極的活動意図を規定する要因として有意な説明. よく取り上げられた規定要因に注目し,個人行. 変数となったのは,組織への帰属意識と主観的. 動意図ではなく,集団行動意図に注目し,2005. 規範であった.. 年夏 の クール・ビ ズ キャン ペーン に 焦点 を 当. その後,野波ら(2002)の研究は,河川に対. て,研究を行った.. するエコロジー行動(集団行動,個人行動)に 注目し,河川環境を共有財と定義し,河川への. 第三章 本研究━モデルと仮説の構築. 愛着と共同利用感という 2 つの要因と環境配慮. 先行研究において多く研究されてきたエコロ. 行動との関連について,環境ボランティアの団. ジー行動(意図)の規定要因は,最初にデモグ. 体員および一般住民の比較を通して検討した.. ラフィック変数が注目されたが,説明力が上が. さらに,河川に対する環境配慮行動を個人行動. らないため,パーソナリティに関するさまざま. と集団行動に分類し,それぞれの規定要因につ. な変数を付け加えるかたちで,研究が展開され. いて調べた.. てきた.その中で代表的な規定要因としては,. 環境団体 の 団体員 202 人 と 一般住民 1300 人. エコロジー関与,社会的規範,有効性評価,実. に質問票を配布し調査を行った結果,集団行動. 行しやすさ,コスト評価,ベネフィット評価,. 意図の主な規定要因は愛着,主観的規範である. 知識,環境問題の認知などが取り上げられた.. のに対し,個人行動意図の主な規定要因は一般. 環境 を 配慮 し た 行動 は,大別 し た だ け で も,. 的態度,リスク認知,コスト評価,主観的規範. Reduce, Recycle, Reuse, Refuse が あ り,特 定. の 4 つであった.. のエコロジー行動意図に対する規定要因は,す. しかしながら,集団行動に注目した研究はま. べてのエコロジー行動の意図に対して有意な規. だ少ない.特に,環境問題が深刻になりつつあ. 定要因であるとは限らない.. る現在,環境配慮型集団行動も増える見込みの. 本研究 で 焦点 を 当 て た エ コ ロ ジー行動意図. 中,集団行動の解明に関する研究は急務である. は,特に行政が導入を奨励する職場などの公的. といえよう.. 場所において,省エネ・キャンペーンに対して 集団の一員として知覚する消費者省エネ行動意. 4.政府の行政指導ニュアンスの強い集団行動 に関する研究課題. 図(以下エコロジー行動意図と略称する)であ る.取り上げたエコロジー行動意図の規定要因. 数少ない集団行動に関する先行研究は,その. は,先行研究で扱われていたエコロジー関与,. ほとんどはボランティア団体の環境保全活動に. 社会的規範,実行しやすさ,有効性評価,そし. 注目 し て き た(杉浦 ら [1998],安藤 ら [1999],. て,先行研究で扱われていない他集団の行動へ. 野波ら [2002]) .このようなボランティアが自. の予測の五つである.. ら環境保全活動を行う集団行動と,強い政府の. 先行研究で扱われたエコロジー関与,社会的. 行政指導 ニュア ン ス に よ る 環境保全集団行動. 規範,有効性評価という規定要因は,今回の行. と,同じ要因によって規定されていると言い切. 政からのお勧めニュアンスが強い公的場所での. れないので,政府の行政指導ニュアンスの強い. 消費者の省エネ環境配慮行動意図に関しても規. 集団行動に関する研究を行う必要がある.. 定要因であると思われるため,本研究で取り上. 以上の先行研究に関する分析をふまえ,今回. げることにした.また,西尾(2005)の先行研.
(9) エコロジー行動意図の規定要因分析(李). (373). 21. 究ではコスト評価,ベネフィット評価の規定要. 数」として規定した.さらに,消費者関与は活. 因が扱われたが,今回の省エネ行動に関する研. 性化の契機となる要因に着目することにより,. 究では実行しやすさの規定要因を取り上げた.. 「対象特定的関与」と「状況(課題)特定的関. それは個別のコスト,ベネフィット評価より,. 与」に区分した.前者は消費者個人がある特定. 職場などのエアコン温度設定に対してクール・. の対象物(製品,ブランド,店舗,広告媒体な. ビズを実行しやすいかどうかのほうが行動意図. ど)に対して示す関与であり,後者はある特定. に直接影響すると思われるからである.そし. の状況における何らかの課題達成を契機として. て,近年環境問題が深刻になっており,政府に. 喚起される関与である.. よる省エネ推奨および媒体がこの問題に関する. 前述した西尾(2005)は,青木の関与概念を. 報道頻度を高めることにより,消費者個人は環. 参照し,「エコロジー関与」を定義した.本研. 境問題に対する認知あるいは知識をある程度を. 究に適しているため,本研究でも,「エコロジー. 持っていると想定し,今回の研究では取り上げ. 関与」を「環境問題に対するエコロジー行動を. なかった.. 実践することが,消費者個人の価値体系におい てより中心的でより重要な価値の実現と深く結. 1.エコロジー関与. びついているゆえに喚起される活性化された状. 西尾(2005)によれば,エコロジー行動の説. 態である」と定義する.エコロジー関与は,行. 明変数としては,環境問題の重要度や関心度と. 動意図に影響を及ぼすだけでなく,関与の高低. いう浅いレベルの状態変数は取り上げられてき. 水準により,有効性評価や他集団の行動への予. たものの,消費者行動研究において関与という. 測が行動意図への影響するルートも違ってくる. 深いレベルの変数を取り上げ,その影響を明示. と仮定する.. 的に示した研究は見当たらない.本研究では, エコロジー関与を行動意図の一つの規定要因と. 2.社会的規範. して取り上げる.. Granzin and Olsen(1991)の 研究 で は,再. 「関与(involvement) 」に関しては,多く研. 利用のための家具や洋服の寄付,新聞のリサイ. 究されており,青木(1990)は,消費者の行動. クル,環境保全のために車を使わず歩くといっ. を分析し説明するための重要な構成概念として. た行動の実践度は,友人や知人からの社会的規. 「関与(involvement) 」という概念が注目され,. 範の影響を受けることを示した.集団行動意図. 数多くの研究が行われてきたが,関与の概念規. の規定要因としても,安藤ら(1999)と野波ら. 定については各研究者の間で意見が一致せず,. (2002)の研究で行動意図との有意な相関が見. 研究上の混乱が生じていると指摘している.そ. られた.. こで,青木は消費者関与についての概念的整理. 消費者行動研究においては,エコロジー行動. を試みるとともに,消費者の内的な状態変数と. は個人の意識や評価によるものだけでなく,準. して概念規定される関与の水準を測定するため. 拠集団の環境問題に対する考え方や実践度の影. の尺度を開発した.. 響も受けていると考えられている.. 青木は,消費者関与の最広義の概念を「対象. 「準拠集団(reference group)」と は,個人. や 状況(な い し 課題)と いった 諸要因 に よっ. の行動に影響を与える人々の集団のことを指し. て活性化 さ れ た 個人内の目標志向的な状態で. ている.準拠集団には大きく分けて,自分が現. あり,個人の価値体系の支配を受け,当該対象. 在属している集団,自分が属したいと希望する. や状況(ないし課題)にかかわる情報処理や意. 集団(期待集団),自分が属したくない集団(拒. 思決定の水準およびその内容を規定する状態変. 否集団),の 三 つ が あ る.Park と Lessig が 準.
(10) 22. (374). 横浜国際社会科学研究 第 12 巻第 3 号(2007年 9 月). 拠集団の役割を,1)情報源としての役割,2). 策としてどの程度の効果があるか,と消費者個. 功利的な判断をするための役割,3)価値表現. 人が感じる主観的評価である.. としての役割,の三つにまとめている.. Kinnear ら(1974)の研究では,有効性につ. 消費者行動論との関連の視点から見ると,消. いての認知は,消費者の環境配慮への関心の程. 費者行動意図を説明するには,消費者が属する. 度に顕著な効果があることがわかった.しかし,. 集団の持つ規範的要因が重要な要因であること. 今まで有効性についての研究結果は一貫したも. が明らかにされてきている.消費者が属する集. のではなかった.安藤ら(1999)の研究では,. 団の規範は,消費者個人の行動に同調するよう. 有効性に対する認知は行動意図の規定要因とし. に圧力をかけると考えられる.. て取り上げられたが,分析の結果としては有意. 特 に,2005 年夏 の 省 エ ネ・キャン ペーン で. な結果が得られなかった.環境問題に対する行. は,職場の冷房温度の設定は決まりとしての働. 動の有効性評価は,効果が得られるまでに時間. きが大きかったと予測できるだろう.本研究で. がかかり,見えにくい.しかも,他集団への予. 扱 う「社会的規範」と は,友人,知人,家族,. 測(他の会社,デパートや交通機関など公的場. 職場の決まりなどといった個人の行動に直接に. 所では,省エネ・キャンペーンに対する行動の. 影響を及ぼす準拠集団や,消費者が直接に属し. 予測)も,有効性評価に影響を及ぼすと予測で. ている集団が持っている規範である.社会的規. きる.これについて仮説 3 でまた詳しく述べる.. 範を省エネ・キャンペーンに対する行動意図の. 本研究では有効性評価を省エネ・キャンペーン. 一つの規定要因とする.. に対する行動意図の一つの規定要因とし,検討 してみる.. 3.実行しやすさ. 仮説 1:関与,社会的規範,実行しやすさ,有. エコロジー行動の多くは,手間や労力などの. 効性評価は,公的場所の集団省エネ行. コスト評価と個人が得るベネフィット評価が規. 動意図の規定要因であり,行動意図に. 定要因として取り上げられたが,公的場所の省. は正の影響を与える.. エ ネ・キャン ペーン に 対 す る 集団行動 の 場合 は,行動の実行しやすさが一つの規定要因と考. 5.他集団の行動への予測. えられる.職場でクール・ビズを実行している. 意思決定科学領域の研究では,ゲーム理論が. が,通勤の交通機関や店舗などほかの公的場所. ある.その理論は複数の意思決定主体が意思決. にはエアコンが効きすぎる場合は,これからの. 定に関して相互作用する状況を研究する学問. 行動意図に影響を及ぼすと考えられる. そこで,. で,1990 年代 か ら 経済学 の 中心的 な 分析手法. 商品の受け入れやすさ,ほかの公的場所の省エ. として用いられるようになった.また経済学以. ネ実行度などが,条件として検討をしていきた. 外にも,経営学・社会学・政治学・法学・生物. い.. 学などで幅広く応用されてきた. ゲーム理論の前提は,1)ゲームのプレイヤー. 4.有効性評価. (player)は自己の利益を最大化するように行. 有効性評価とは,ある環境配慮型行動を実践. 動する,2)その際,各プレイヤーは合理的に. するより,ある環境問題の解決にどの程度有効. 判断 し,自己 の 戦略 を 決定 す る,3)従って,. であるか,と消費者個人が感じた主観的評価で. 他者がとる戦略を予測し,自己の戦略を立てる. ある.省エネ行動に対する有効性評価とは,夏. ことである.. 期に涼しい服を着て冷房の温度を(平年より高. 人間が直面する意思決定の問題に対し,自分. く)28℃に設定することにより,地球温暖化対. 以外の人間と自分との相互作用を考えて行動を.
(11) エコロジー行動意図の規定要因分析(李). (375). 23. ␠ળ⊛ⷙ▸ 㑐ਈ ⋭ࠛࡀⴕേᗧ ࿑㧔⊛႐ᚲ㧕. ታⴕߒ߿ߔߐ. ലᕈ⹏ଔ. ઁ㓸࿅ߩⴕ േ߳ߩ੍᷹ 図 3-1 エコロジー行動意図の規定要因モデル. 決める場合が多い.しかし,今までの環境配慮. 行動を決める場合も考えられる.. 型消費者行動に関する研究では,消費者が受身. 仮に,2005 年の夏に,消費者が属している. として社会的規範からどのように影響を受ける. 集団が,省エネ・キャンペーンに賛同して夏の. かという視点からしか研究されていなかった.. 冷房を 28℃に設定したとし,その消費者が次. 消費者が自らの判断で他者がとる行動を予測. の冬の省エネ・キャンペーンにも応じるかどう. し,自分の行動(意図)を決めることは現実の. かを考えよう.ほかの集団がどうするかを予測. 世界に十分にありうるため,他者の行動への予. しながら,消費者は自分のこれからの行動意図. 測は環境配慮型消費者行動(意図)の規定要因. を決めることが考えられる.. として研究に含むべきである.. 以上のことから,他集団の行動の予測と行動. 地球温暖化対策の 1 つとしての冷暖房を控え. 意図の関係について,以下の仮説 2 を立てた.. めに設定しようという省エネ・キャンペーン. 仮説 2:他集団の行動への予測は,公的場所の. は,年に 2 回(夏,冬)行われる.同じ季節で. 集団省 エ ネ 行動意図 の 規定要因 で あ. 自分の属する集団がキャンペーンに応じるかど. り,行動意図には正の影響を与える.. うかを決めるとき,同じ季節における他集団の. 以上をまとめて図示したのが,図 3-1 であ. 行動への予測をしながら行動を決めることが充. る.. 分に考えられる.例えば,自分が属する集団は. Petty and Cacioppo(1983, 1986)による精緻化. 省エネ・キャンペーンを継続していく見込みの. 見込みモデル(Elaboration Likelihood Model,. 一方で,キャンペーンを実行しない他集団が存. 略して ELM と呼ばれる)では,説得には二つ. 在している場合でも,先手を打って実行するか. のルートがあると示している.第一のルート. どうかという判断が必要になるだろう.また,. は中心的ルート(central route)であり,態度. 他集団がキャンペーンを実行している一方で自. の変容は問題についてじっくり考えた結果生じ. 分が属する集団は次回の省エネ・キャンペーン. る,と さ れ る.第二 の ルート は 周辺的 ルート. を実行するかどうか, という状況を考えながら,. (peripheral route)であり,態度の変容は対象.
(12) 24. (376). 横浜国際社会科学研究 第 12 巻第 3 号(2007年 9 月). が肯定的,あるいは,否定的な手がかりと結び. そこで,以下の仮説 3 を立てた.. ついて起こる,とされる.彼らのモデルでは,. 仮説 3.1:関与の低い人は,他集団の行動への. 消費者が何らかのメッセージを受けたときに,. 予測が直接にエコロジー行動意図に. そのメッセージを積極的に考えようとする動機. 影響する.. があるかどうかによって, 後のルートが変わる,. 仮説 3.2:関与の高い人は,他集団の行動への. としている.積極的に考えようという動機付け. 予測が,有効性評価を通してエコロ. がないときに,周辺的ルートで情報を処理され. ジー行動意図に影響する.. る.また,真剣に考えようという動機がある場 合に,そのメッセージを考える能力もあるとき に,中心的ルートで処理されるが,能力がない. 第四章 アンケート調査および構成概念,測定 尺度. ときには,周辺的ルートで情報を処理される.. 4-1 調査対象と調査方法. この精緻化見込みモデルに関連させ,さら. 研究は質問票によるアンケート調査を行い,. に調整役として関与に注目したのは,Miniard. そ の 調査結果 を Amos に よ る 共分散構造分析. ら(1991)である.彼らは関与の高低で精緻化. によって分析し,仮説を検証した.. 見込みモデルに差があるかを比較検討したとこ. 調査の時期は 2005 年 12 月である.首都圏で. ろ,高関与グループでは,低関与グループの 2. データが入手しやすいため,アンケート調査の. 倍も積極的に考えようとする結果となった.こ. 対象者は首都圏(横浜市,川崎市,東京都)に. のように関与は行動意図に影響することが示さ. 勤務している社会人に絞った.調査の方法は留. れた.. 置法であり,職場の担当者にアンケート調査の. そこで,エコロジー関与の高低による説得の. 主旨を説明した上,アンケート調査票を置いと. ルートの違いを比較検討したい.全ての人は環. き,協力者が記入後調査票を回収した.職場で. 境問題に対して深く考えるわけではない.受け. 配布した調査票は 564 票であり,そのうち 306. たメッセージを真剣に考えようと動機付けられ. 票が回収された.回収した調査票は構成概念に. るのは,エコロジー関与の高い人であると考え. 関する質問が一つでも欠損のあるものを除き,. られる.そのため,関与の高い人が,関与の低. 有効回答数は 286 票となった.. い人に比べて,他集団の行動への予測や有効性. 本研究での分析目的は,特定の母集団のプロ. 評価の規定要因に対する考え方について,より. フィールを明らかにすることではなく,各構成. 深い理解を持っていると考えるのが自然であろ. 概念の測定とその間の関係を把握することであ. う.関与の高い人ならば,仮に他集団が省エネ・. るため,回収したアンケート調査票を用いて分. キャンペーンに応じず,一部の集団が先に省. 析するのは問題ないと考えられる.. エネ行動を実行した場合でも,自分が省エネ・ キャンペーンに応じれば,たとえわずかでも. 4-2 構成概念と測定尺度. CO2 の削減ができ,地球温暖化の対策として効. 構成概念として,エコロジー関与,社会的規. 果があることを理解して,これからも自分が. 範,実行しやすさ,他集団の行動への予測,有. もっと努力しようと考えるではないだろうか.. 効性評価,行動意図に関する項目をアンケート. それに対し,エコロジー関与の低い人は,他集. 調査票に含んだ.各構成概念は直接に観測でき. 団の行動への予測による判断が直接に行動意図. ない潜在変数であり,測定誤差を伴う複数の指. に影響を与えると考えられる.つまり,関与の. 標を用いて測定できると考えられる.. 高低により,他集団の行動への予測や有効性評. 測定の信頼性と構成概念の妥当性を考慮し,. 価が行動意図に影響するルートが違ってくる.. 一つの構成概念に関して,多項目を使って測定.
(13) エコロジー行動意図の規定要因分析(李). (377). 25. 表 5-1 各構成概念の測定尺度 因子負荷量. α係数. 0.885 0.902 0.786 0.746. 0.8474. 私の家族は省エネ行動に積極的である. 社会的 友人や知人は省エネ行動に積極的である. 規範 上司は私が省エネ・キャンペーンに協力すべきだと思っている.. 0.832 0.887 0.750. 0.7520. 夏のとき,軽装にしないためにオフィスの冷房を強くするのは,エネルギーの 無駄遣いだと思う. 有効性 今年の夏,「クール・ビズ」の実行により,地球温暖化対策に貢献できたと思う. 評価. 0.748. 省エネ・キャンペーンに参加する人はこれからもだんだん増えると思う. 他集団 これからは,交通機関も省エネ・キャンペーンに参加すると思う. これからはレストランやデパート等も省エネ・キャンペーンに参加すると思う.. 0.788 0.892 0.824. 省エネ・キャンペーンに参加することが好きである. 地球温暖化対策の省エネ・キャンペーンに(今後とも)参加したいと思う. これから自ら省エネ行動を行いたい. 環境を考えて,家族,友人,知人などの周囲の人に省エネの大切さを伝え,協 力するようにすすめている.. 0.894 0.889 0.861 0.768. 指 標. 関 与. 環境を考えた生活を送るために自分なりにいろいろと工夫している. 行動をするときは,環境への影響や対応を考えて行動をしている. 私は環境問題を話題にすることが多い. 商品を選ぶときは,できる限り省エネ効果のある商品を選択する.. 「COOL BIZ」の実施により約 46 万トン CO2 を削減できた.この数字を見て,「クール・ ビズ」は地球温暖化の対策として効果があったと思う.. 行動 意図. 0.774 0.731. 0.6836. 0.7683. 0.8719. 表 5-2 探索的因子分析の結果 因子 1. 2. 3. 4. 5. 環境を考えた生活を送るために自分なりにいろいろと工夫している.. .800. .276. .174. .040. .095. 行動をするときは,環境への影響や対応を考えて行動をしている.. .834. .263. .176. .035. .074. 私は環境問題を話題にすることが多い.. .535. .442. .189. .068. .065. 商品を選ぶときは,できる限り省エネ効果のある商品を選択する.. .509. .347. .233. .092. -.065. 私の家族は省エネ行動に積極的である.. .354. .570. .206. .032. .076. 友人や知人は省エネ行動に積極的である.. .309. .835. .068. .075. .057. 上司は私が省エネ・キャンペーンに協力すべきだと思っている.. .226. .511. .153. .096. .105. 夏のとき,軽装にしないためにオフィスの冷房を強くするのは,エネルギーの無 駄遣いだと思う.. .040. .096. .156. .132. .467. 今年の夏, 「クール・ビズ」の実行により,地球温暖化対策に貢献できたと思う.. .124. .161. .104. .163. .724. 「COOL BIZ」の実施により約 46 万トン CO2 を削減できた.この数字を見て, -.005 「クール・ビズ」は地球温暖化の対策として効果があったと思う.. -.064. .156. .169. .656. 省エネ・キャンペーンに参加する人はこれからもだんだん増えると思う.. .019. .034. .092. .576. .264. これからは,交通機関も省エネ・キャンペーンに参加すると思う.. .122. .032. .097. .924. .077. これからはレストランやデパート等も省エネ・キャンペーンに参加すると思う.. .042. .144. .132. .646. .196. 省エネ・キャンペーンに参加することが好きである.. .306. .178. .732. .137. .310. 地球温暖化対策の省エネ・キャンペーンに(今後とも)参加したいと思う.. .213. .203. .800. .186. .285. これから自ら省エネ行動を行いたい.. .428. .239. .569. .190. .187. 環境を考えて,家族,友人,知人などの周囲の人に省エネの大切さを伝え,協力 するようにすすめている.. .442. .378. .357. .191. .197. 因子抽出法 : 主因子法 回転法 : Kaiser の正規化を伴うバリマックス法.
(14) 26. (378). 横浜国際社会科学研究 第 12 巻第 3 号(2007年 9 月). を行った. 「関与」に関する項目は,青木(1990). 説モデルの検証を行った.. の消費者関与概念の尺度と測定結果,および西. こ こ で,「実行 し や す さ」項目 に つ い て. 尾(2005)の尺度を参考にし,生活を送るとき. は,実行 し た 199 人 の データ に よ り 算出 し た. に環境を考えて工夫しているかどうか,行動す. Cronbach の α 係数 が 0.5044 で あ り,0.6 よ り. るときに環境への影響や対応を考えているかど. 低いため,図 3-1 に示したモデルから「実行. うか,環境問題を話題にする頻度,省エネ効果. しやすさ」規定要因を取り除き,2005 年夏に. のある商品の使用頻度などに関する複数の指標. 省エネ・キャンペーンに応じた人と応じなかっ. で測定した. 「社会的規範」は,家族が持つ内. た 人 の データ を 合併 し,286 人 の データ を 基. 的規範と友人や知人が持つ外的規範について測. にしてモデルを検討することにした.「実行し. 定した.さらに,2005 年の夏の省エネ・キャ. や す さ」以外 の 各構成概念 の 指標 は,す べ て. ンペーンに関しては,職場の決まりが重要な規. 1 因子に集約され,信頼性係数も 0.7 以上であ. 範になると思われるため,それについても測定. り(「有効性評価」項目 の 信頼性係数 は 0.6836. した. 「実行しやすさ」は,クール・ビズ関連. であり,0.7 を少し下回ったが,意図の規定要. 商品の受け入れやすさ,地球温暖化対策として. 因としてモデルに含めて検討することにした),. 気軽に貢献できたかどうか,ほかの公的場所の. 表 5-1 に示したように特定化された.このよ. 省エネ実行度の差異より苦しみに関する項目か. うに,特定化された指標から構成概念を測定す. ら 構成 さ れ た. 「有効性評価」は 西尾(2005). ることが妥当だと判断される.. の尺度を参考にするとともに,特にクール・ビ. なお,すべての観測変数を対象とした探索的. ズの効果に関する項目から構成された. 「他集. 因子分析を行った結果,エコロジー関与,社会. 団の行動への予測」に関する項目は独自に作成. 的規範,有効性評価,他集団の行動への予測と. し た.調査対象者 が こ れ か ら 省 エ ネ・キャン. 行動意図の五つの因子になっていることが確認. ペーンに参加する人の人数に関する予測と想像. された.(表 5-2). できる他集団(交通機関,公衆場所,会社員グ ループ,公務員グループなど)の行動への予測. 5-2 仮説 1 と仮説 2 の検証結果. に関する項目が含まれている. 「行動意図」は,. 仮説 1 と仮説 2 を検証するために,Amos に. 地球温暖化対策の省エネ・キャンペーンに参加. よる共分散構造分析を行った.分析にあたって. することに対する好感度と意欲および周りの人. は,すべての規定要因が行動意図に影響すると. への推薦度に関する項目から構成されている.. いう仮説モデルから出発し,一変量ワルド検定. 以上の質問項目はすべて 7 段階尺度( 「非常に. の結果を参考にし,規定要因のパスの増減と適. そう思う⑴」─「非常にそう思わない⑺」で測. 合度の変化を加味しながらモデルを決めた.最. 定した.. 初に描いたパス図には四つの規定要因をすべて 第五章 分析結果. 含 ん だ が,「社会的規範」か ら「行動意図」ま でのパス係数は 5% の水準で有意にならなかっ. 5-1 分析方法およびモデルの特定化. たため,モデルから取り除き,再び分析を行っ. 分析に当たっては,各構成概念の指標ごとに. た.その結果,最終的に導かれたのは,図 5-1. 主因子法による因子分析を行い,尺度の一次元. に示したモデルである.. 性を確認した.また,各構成概念の指標ごとに 信頼性係数(Cronbach の α 係数)を 算出 し,. モデルの適合度指標としては,モデルがデー タと適合しているかを確認できる χ2 値の有意. 観測変数を特定化した.最後には,特定化され. 確率は,0.000 であり,0.05 より小さい.しか. た指標を用い,共分散構造分析(Amos)で仮. し,χ2 値は標本数による影響を受けやすいた.
(15) エコロジー行動意図の規定要因分析(李). 䏈䎔䎔. 㑐ਈ 䎔. 䏈䎛. 㑐ਈ 䎕. 䏈䎜 䏈䎔䎓. 䏈䎔䎘 䏈䎔䎙 䏈䎔䎚. 䎑䎙䎛 㑐ਈ 䎖 䎑䎙䎕 㑐ਈ 䎗. 䎑䎛䎚 䎑䎜䎓 㑐ਈ 䏈䎕䎔. 䎑䎘䎔 䎑䎔䎚. ᗧ࿑. 䎑䎖䎛. 䎑䎘䎘 䎑䎚䎘 ലᕈ䎖 䎑䎙䎘 ലᕈ䎕. ലᕈ. 䎑䎕䎕 䏈䎔䎜. ലᕈ䎗. ઁ㓸࿅䎔. 䏈䎔䎕. ઁ㓸࿅䎕. 䏈䎔䎖. ઁ㓸࿅䎖. 䏈䎕 䏈䎖 䏈䎗. 䕯䎕 ୯䰉䎕䎔䎚䎑䎓䎘䎙 䏓 ୯䰉䎑䎓䎓䎓 䎪䎩䎬䎠䎑䎜䎓䎔 䎤䎪䎩䎬䎠䎑䎛䎘䎖 䎤䎬䎦䎠䎕䎛䎘䎑䎓䎘䎙 䎵䎰䎶䎨䎤䎠䎑䎓䎛䎘. 䎑䎙䎘 䎑䎛䎙 䎑䎚䎖. 䏈䎔. ᗧ࿑ 䎔 䎑䎛䎜 ᗧ࿑ 䎕 䎑䎛䎛 䎑䎚䎛 ᗧ࿑ 䎖 䎑䎙䎙 ᗧ࿑ 䎗. 䎑䎔䎗. 䎑䎗䎔 䏈䎔䎗. (379). ઁ㓸࿅. 図 5-1 仮説 1 と仮説 2 の検証結果. 表 5-3 モデルのパラメータ推定値 推定値. 標準誤差. 確率. 標準化推定値. 有効性. <. 関与. .133. .059. 検定統計量 2.267. .023. .165. 有効性. <. 他集団. .344. .070. 4.899. ***. .414. 意図. <. 関与. .550. .067. 8.172. ***. .508. 意図. <. 他集団. .160. .069. 2.334. .020. .143. 意図. <. 有効性. .509. .098. 5.165. ***. .378. 意図 1. <. 意図. 1.000. 意図 2. <. 意図. 1.009. .051. 19.878. ***. .881. 意図 3. <. 意図. .771. .048. 16.239. ***. .779. 意図 4. <. 意図. .798. .063. 12.647. ***. .660. 関与 1. <. 関与. 1.208. .094. 12.889. ***. .874. 関与 2. <. 関与. 1.202. .092. 13.107. ***. .903. 関与 3. <. 関与. 1.000. 関与 4. <. 関与. .883. .092. 9.627. ***. .623. 有効性 2. <. 有効性. .745. .105. 7.119. ***. .546. 有効性 3. <. 有効性. 1.299. .158. 8.237. ***. .755. 有効性 4. <. 有効性. 1.000. 他集団 1. <. 他集団. .608. .062. 9.855. ***. .653. 他集団 2. <. 他集団. .910. .084. 10.874. ***. .862. 他集団 3. <. 他集団. 1.000. .887. .679. .654. .728. 27.
(16) 28. (380). 横浜国際社会科学研究 第 12 巻第 3 号(2007年 9 月). 表 5-4 関与の高低によるグループ化する基準 関与平均 度数 平均値 平均値の標準誤差 中央値 最頻値 標準偏差 分散 歪度 歪度の標準誤差 尖度 尖度の標準誤差 範囲 最小値 最大値 合計 パーセンタイル. 統計量 有効 欠損値. 25 50 75. 286 0 .0000 .04910 -.1956 -.55 .83031 .68941 .680 .144 -.212 .287 3.94 -1.80 2.15 .00 -.5586 -.1956 .5455. め,モデル全体を評価する指標 GFI(Goodness. は一部支持され,仮説 2 は支持された.三つの. for Fit Index) と AGFI( Adjusted Goodness. 規定要因の中には,「関与」がもっとも「行動. for Fit Index)を用い,モデルの適合度を評価. 意図」に影響していることがわかった.このよ. した.適合度指標がどの程度の値であれば,モ. うに,「行動意図」の従属変数に対し三つの独. デルを受容するかという具体的な基準を与える. 立変数が直接影響する程度が把握できた.. ことは難しい.因果モデルがデータを何パーセ. ま た,「関与」と「他集団 の 行動 へ の 予測」. ント説明したかという「説明力」の目安である. という規定要因は,「有効性評価」要因を介在. GFI 指標 は,豊田(1992)に よ れ ば,0.9 以上. し「行動意図」に影響を与えることもわかった.. が望ましいとされている.本モデルは GFI が. それらの間接効果を含めて各規定要因からの総. 0.901 と,0.9 を超えたため,モデルとデータの. 合効果を検討すると,以下のようになった.. 当てはまりはよいと判断し,このモデルを採用. 「有効性評価」からの効果は,0.378 であった.. して検討することにした.. 「関与」からの総合効果は,0.165 × 0.378 +. 図 5-1 では, 「他集団の行動への予測」から 「行動意図」へのパス係数と, 「関与」から「有 効性評価」へのパス係数は 5% 水準で有意にな. 0.508 = 0.571 であった. 「他集団の行動への予測」からの総合効果は, 0.414 × 0.378 + 0.143 = 0.299 であった.. り,ほかのパスはすべて 1% 水準で有意になっ. 「他集団 の 行動 へ の 予測」か ら「行動意図」. た.まず,直接効果を現す「関与」 , 「有効性評. へ の 0.299 の 総合効果 を 見 る と,省 エ ネ・. 価」 , 「他集団の行動への予測」から 「行動意図」. キャンペーンに対する「行動意図」の規定要. ま で の 標準化係数 は,そ れ ぞ れ 0.508,0.378,. 因 と し て の「他集団 の 行動 へ の 予測」の 影. 0.143 であり,三つの規定要因とも「行動意図」. 響は,無視できない規定要因であることがわ. と正の関係性が見られた.したがって,仮説 1. かった..
(17) エコロジー行動意図の規定要因分析(李). (381). 29. 表 5-5 低関与グループのパラメータ推定値 標準誤差. 検定統計量. 確率. ラベル. 標準化推定値. 有効性. <. 他集団. 推定値 .378. .213. 1.777. .076. W11. .267. 意図. <. 他集団. .594. .071. 8.378. ***. W9. .411. 意図. <. 有効性. .489. .120. 4.081. ***. W10. .479. 意図 1. <. 意図. 1.000. 意図 2. <. 意図. 1.105. .069. 15.914. ***. W1. .963. 意図 3. <. 意図. .727. .070. 10.311. ***. W2. .689. 意図 4. <. 意図. .594. .071. 8.378. ***. W9. .633. 他集団 1. <. 他集団. .742. .108. 6.866. ***. W5. .500. 他集団 2. <. 他集団. .992. .136. 7.275. ***. W4. .797. 他集団 3. <. 他集団. 1.000. 有効性 2. <. 有効性. .685. .130. 5.261. ***. W7. .548. 有効性 3. <. 有効性. 1.394. .205. 6.801. ***. W6. .951. 有効性 4. <. 有効性. 1.000. 䏈䎚. ઁ㓸࿅䎔. 䏈䎙. ઁ㓸࿅䎕. 䏈䎘. ઁ㓸࿅䎖. .854. .556. .708. 䎑䎘䎓 䎑䎛䎓 䎑䎘䎙. ઁ㓸࿅. 䏈䎔䎕 䎑䎗䎔 ᗧ࿑. 䎑䎛䎘 䎑䎜䎙 䎑䎙䎜. 䎑䎕䎚 䎑䎙䎖 䎑䎗䎛. 䏈䎔䎓. ലᕈ䎕. 䏈䎜. 䎑䎜䎘 ലᕈ䎖 䎑䎚䎔. 䏈䎛. ലᕈ䎗. 䎑䎘䎘. ᗧ࿑䎔. 䏈䎔. ᗧ࿑䎕. 䏈䎕. ᗧ࿑䎖. 䏈䎖. ᗧ࿑䎗. 䏈䎗. 䕯䎕 ୯䰉䎔䎗䎔䎑䎜䎚䎔 䏓୯ 䎠䎑 䎓䎓䎓 䎪䎩䎬䎠䎑 䎛䎗䎘 䎤 䎪䎩䎬䎠䎑 䎚䎙 䎖 䎤 䎬䎦䎠䎕䎔䎚䎑 䎜䎚䎔 䎵䎰 䎶䎨䎤 䎠䎑䎓䎛䎖. ലᕈ. 䏈䎔䎖. 図 5-2 仮説 3.1 低関与グループの分析結果. 5-3 仮説 3.1 と仮説 3.2 の検証結果. れに関する統計量は表 5-4 に示したとおりで. 仮説 3.1 と 3.2 を 検証 す る た め,消費者層 ご. ある.. とに規定要因がエコロジー行動意図への働きが. 関与の平均得点が 25 パーセンタイルの-0.5586. 異なるかどうかを多母集団の同時分析により確. より小さい人は,エコロジー関与の低い人と. 認した.. し,得点が 75 パーセンタイルの 0.5455 より大. 消費者を層別化するために,アンケート調査. きい人は,エコロジー関与の高い人とし,低. 票の関与に関する四つの質問項目の得点を標準. 関与と高関与の二つのグループに分けた.これ. 化し,一人一人に対する関与の平均得点を算出. によって分けられた低関与グループの標本数は. し,関与の高低によるグループ化を行った.そ. 73(平均値-0.8963)であり,高関与グループ.
(18) 30. 横浜国際社会科学研究 第 12 巻第 3 号(2007年 9 月). (382). 表 5-6 高関与グループのパラメータ推定値 確率. ラベル. 有効性. <. 他集団. 推定値 .458. .118. 3.891. ***. W011. .665. 意図. <. 他集団. .059. .233. .252. .801. W09. .056. 意図. <. 有効性. .797. .400. 1.991. .046. W010. .520. 意図 1. <. 意図. 1.000. 意図 2. <. 意図. 1.105. .069. 15.914. ***. W1. .927. 意図 3. <. 意図. .727. .070. 10.311. ***. W2. .739. 意図 4. <. 意図. .594. .071. 8.378. ***. W9. .501. 他集団 1. <. 他集団. .742. .108. 6.866. ***. W5. .781. 他集団 2. <. 他集団. .992. .136. 7.275. ***. W4. .863. 他集団 3. <. 他集団. 1.000. 有効性 2. <. 有効性. .685. .130. 5.261. ***. W7. .452. 有効性 3. <. 有効性. 1.394. .205. 6.801. ***. W6. .657. 有効性 4. <. 有効性. 1.000. 䏈䎚 䏈䎙 䏈䎘. 標準誤差. 検定統計量. 標準化推定値. .906. .731. .602. ઁ㓸࿅䎔. 䎑䎚䎛 ઁ㓸࿅䎕 䎑䎛䎙 䎑䎚䎖 ઁ㓸࿅䎖. ઁ㓸࿅ 䎑䎓䎙. 䏈䎔䎕. ᗧ࿑ 䎑䎙䎙. 䎑䎜䎔 䎑䎜䎖 䎑䎚䎗 䎑䎘䎓. ᗧ࿑ 䎔. 䏈䎔. ᗧ࿑ 䎕. 䏈䎕. ᗧ࿑ 䎖. 䏈䎖. ᗧ࿑ 䎗. 䏈䎗. 䎑䎘䎕 䏈䎔䎓. ലᕈ䎕. 䏈䎜. ലᕈ䎖. 䏈䎛. ലᕈ䎗. 䎑䎗䎘 䎑䎙䎙 䎑䎙䎓. 䕯䎕 ୯䎠䎔䎗䎔䎑 䎜䎚 䎔 䏓 ୯ 䎠䎑䎓䎓䎓 䎪 䎩䎬䎠䎑䎛䎗䎘 䎤䎪 䎩䎬䎠䎑䎚䎙䎖 䎤䎬䎦䎠䎕䎔䎚䎑䎜 䎚䎔 䎵䎰 䎶䎨䎤 䎠䎑䎓䎛䎖. ലᕈ. 䏈䎔䎖. 図 5-3 仮説 3.2 高関与グループの分析結果. の標本数は 71(平均値 1.1955)であった.. 概念間のパス係数を推定し,その違いを比較す. ここでは,関与の高低によって, 「他集団の. ることが目的である.. 行動への予測」が直接「行動意図」に影響を及. そ の 結 果, モ デ ル 全 体 の 適 合 度 指 標 は. ぼすか,それとも「有効性評価」を通じて「行. GFI=0.845,AGFI=0.763 で あった.適 合 度 は. 動意図」に影響を及ぼすかを検討するため,構. サンプル全体で分析した場合より低いが,それ. 成概念と対応している各観測変数のパス係数に. は同値制約を課しているためで,モデルを棄却. 等値制約をおいて,グループごとに構成概念間. せずに検討することにした.. の因果構造を同時に分析した.ここでは,構成. 低関与 グ ループ の 分析結果 で は(図 5-2),.
(19) エコロジー行動意図の規定要因分析(李). (383). 31. 表 5-7 パラメータ間の差に対する検定統計量 W1. W2. W4. W5. W6. W7. W9. W10. W11. W09. W010. W1. .000. W2. -4.824. .000. W4. -.762. 1.747. .000. W5. -2.904. .116. -2.090. .000. W6. 1.337. 3.084. 1.626. 2.803. .000. W7. -2.850. -.283. -1.626. -.335. -3.696. .000. W9. -5.833. -1.427. -2.701. -1.193. -3.713. -.612. .000. W10. -4.005. -1.623. -2.877. -1.602. -4.472. -1.269. -.704. .000. W11. -3.284. -1.567. -2.572. -1.596. -3.092. -1.178. -.983. -.419. .000. W09. -4.297. -2.742. -3.485. -2.679. -4.337. -2.335. -2.200. -1.646. -1.011. .000. W010. -.750. .172. -.459. .134. -1.411. .277. .497. .754. .911. 1.222. .000. W011. -4.779. -1.969. -3.618. -2.139. -3.495. -1.165. -1.008. -.176. .349. 1.446. -.803. W011. .000. 「他集団 の 行動 へ の 予測」か ら「有効性評価」. た.つまり,関与の高い人にとっては,「他集. へのパス係数の「確率」値は 0.076 であり,5%. 団の行動への予測」が直接に「行動意図」に影. 水準に有意にならなかったことから, 「他集団. 響せずに,「有効性評価」を通して「行動意図」. の行動への予測」は「有効性評価」に影響しな. に影響を及ぼすと解釈できる.. い(パス係数= 0)ということがわかった. 「他. さらに,分析の結果のパラメータ間の差に対. 集団の行動への予測」から「行動意図」までの. する検定統計量表では,低関与グループの「他. パ ス 係数 と, 「有効性評価」か ら「行動意図」. 集団の行動への予測」から「行動意図」へのパ. までのパス係数は,それぞれ 0.411 と 0.479 で. ス 係数「W9」と,高関与 グ ループ の「他集団. あり,1% 水準で有意になった.つまり,関与. の行動への予測」から「行動意図」へのパス係. の低い人にとっては, 「他集団の行動への予測」. 数「W09」が交差するセルを見ると,-2.200. が直接「行動意図」に影響すると解釈できる.. という検定統計量が表示されており,絶対値が. これに対して,高関与グループの分析結果で. 2.000 を超えているため,5% 水準で有意な差が. は (図 5-3) , 「他集団の行動への予測」から 「行. あることがわかった.つまり,低関与グループ. 動意図」へのパス係数の 「確率」は 0.801 であり,. の「他集団の行動への予測」から「行動意図」. 5% 水準で有意にならなかったことから, 「他. へのパス係数「W9」と,高関与グループの「他. 集団の行動への予測」は直接に「行動意図」に. 集団の行動への予測」から「行動意図」へのパ. 影響しない (パス係数= 0)ということがわかっ. ス係数「W09」は等しくないと解釈できる.. た. 「他集団の行動への予測」 から 「有効性評価」. 以上から,仮説 3.1 と仮説 3.2 は支持された.. へのパス係数と, 「有効性評価」から「行動意 図」へ の パ ス 係数 は,そ れ ぞ れ 0.665 と 0.520. 第六章 考察. であり,それぞれ 1% と 5% 水準で有意になっ. 本研究では,行政が勧めた職場などの公的場.
(20) 32. (384). 横浜国際社会科学研究 第 12 巻第 3 号(2007年 9 月). 所における集団の一員としての省エネ行動意図. 伝えていくかを考えたうえで,省エネ・キャン. の規定要因モデルを提示し,実証分析を通じて. ペーンを浸透させることが必要であると考えら. その構造の解明を試みた.規定要因としては,. れる.. 先行研究で検証された要因を踏まえ,本研究に 適当 と さ れ る「エ コ ロ ジー関与」 , 「社会的規 範」 , 「実行しやすさ」 , 「有効性評価」の規定要 因を検討しながら,先行研究で扱われていない 「他集団の行動への予測」という要因を導入し, エコロジー行動意図の規定要因として検討して みた.その結果, 「実行しやすさ」要因は信頼 性と妥当性を分析する際に,モデルから取り除 かれた.提示したモデルは消費者から収集され たデータとの適合度が一応の水準に達するもの で, 「社会的規範」以外の要因はモデルで仮定 したような因果関係が確認された.行政が勧め た職場などの公的場所における集団の一員と しての省エネ行動意図の規定要因は, 「エコロ ジー関与」 , 「有効性評価」 , 「他集団の行動への 予測」によって規定されていることが明らかに なった.特に, 「他集団の行動への予測」は「行 動意図」の規定要因として明らかになった点か ら,行政が勧めた公的場所の集団省エネ・キャ. 謝 辞 本研究を行うにあたり,暖かくご指導してくだ さった指導教官である横浜国立大学大学院国際社 会科学研究科阿部周造先生に深く感謝し,厚く御 礼申し上げます. また,匿名のレビューワの先生には幾つかの貴 重な指摘をいただいたこと,そして,アンケート 調査で協力をいただいたカービューの陈奕锋さ ん,ソニーの山下陽子さん,三井住商の深田進さ ん,桜庭さん,さらに,回答していただいた横浜 市,川崎市,東京都の職員と会社員の方々に感謝 します. また, チョードリ先生, 宋煒先輩, 中村陽人さん, 八島明朗さんをはじめ阿部ゼミナールでともに学 んだ方々からアドバイスをいただきました.皆さ んに心から感謝いたします. また,一年間の研究生の期間を含めて本論文の 完成まで,大きく支えてくれた家族には感謝の気 持ちでいっぱいです. そのほか多くの方々のご協力のもとに本研究は 成り立っております.皆様に心から御礼申し上げ たいと思います. 本当にありがとうございました.. ンペーンを行う際には,各集団が同調できる推 進方法がより重要である,といえるであろう. また,エコロジー関与の高低によって異なる 行動意図パターンを明らかにするため,関与の 高低により,消費者をグループ化した.消費者 層(高関与グループと低関与グループ)ごとに 「有効性評価」と「他集団の行動への予測」規 定要因がエコロジー行動意図へ与える働きが異 なるかどうかを多母集団の同時分析によって検 証した.その結果,関与の低い人は, 「他集団 の行動への予測」が直接に「エコロジー行動意 図」に影響するのに対し,関与の高い人は, 「他 集団の行動への予測」が「有効性評価」を通し て「エコロジー行動意図」に影響することがわ かった.従って,エコロジー行動意図があって も,背景となる規定する要因やパターンが異な る消費者が混在しているため,行政はその相違 を理解し,どのような主体にどのような情報を. 参考文献 Anderson, W. T., Jr. and W. H. Cunningham (1972), “The Socially Conscious Consumer”, Journal of Marketing, Vol. 36, July, p. 23─31. Antil, J. H. (1984), “Socially Responsible Consumers: Profile and Implications for Public Policy,” Journal of Macromarketing, Vol. 19, fall, p. 18─39. Balderjahn, I. (1988). “Personality Variables and Environmental Attitudes as Predictors of Ecologically Responsible Consumption Patterns”, Journal of Business Research, Vol. 17, p. 51─56. Berger, I. E. (1997), “The Demographics of Recycling and the Structure of Environmental Behavior”, Environment and Behavior, Vol. 29, No. 4, p. 515─531. Crosby, L. A., J. D. Gill and J. R. Taylor (1981), “Consumer/Voter Behavior in the Passage of the Michigan Container Law”, Journal of Marketing, Vol. 45, Spring, p. 19─32..
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