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〈判例研究〉神戸市外郭団体第2次訴訟--最高裁第二小法廷判決平成24年4月20日(民集66巻6号2583頁)

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(1)神戸市外郭団体第2次 訴訟. 神戸市外郭 団体第2次 訴訟 一 最 高裁第 二小 法廷 判決平 成24年4月20日(民. 村 1.は. じめ に. 2.本. 件 の 概 要 及 び判 旨. a.事. 実 の 概 要(地 裁 ・高 裁 判 決 まで). b.判. 旨(破 棄 自判). 3.本. 集66巻6号2583頁)一. 中. 洋. 介. 件 の 整 理 と主 な 争 点. a.本. 件の整理. b.本. 件 にお け る争 点. 争点①. 職 員 の 派 遣 と補 助 金. 争点②. 住民訴訟. 争点③. 議会の議決. 4.研. 究. a.本. の点. a-2.②. ③の点. a-3.住. 民 訴 訟 の 意 義 につ いて の 判 例. b.本 5.お. 1.は. 件 に関 連 す る判 例. a-1.①. 件判決の評価 わ り に(検 討 及 び残 され た 課 題). じ め. に. 本 件 は,神 戸 市 の 派 遣 した職 員 の 給 与 相 当額 を 補 助 金 と して 支 出 した 件 につ き,補 助 金 に よ って 間 接 的 に給 与 支 給 を 行 う こ とが,公 益 法 人 等 へ の 一 般 職 の地 方 公 務 員 の 派 遣 等 に 関 す る 法 律(平 成12年 法 律 第50号:以. 下. 「派 遣 法 」)に 照 ら して 違 法 で あ る と して な され た住 民 訴 訟 で あ る。 本 件 に お いて 地 裁 判 決 時 は,派 遣 法 と補 助 金 に よ る給 与 支 給 が 主 な 争 点 とな って 109.

(2) 近畿大学法学. 第60巻 第3・4号. い たが(最 高 裁 決 定 平 成21年12月10日 一 神 戸 市 外 郭 団 体 派 遣 人 件 費1次 訴 訟:以 下 「神 戸 市1次 訴 訟 」 一 に お いて も この 点 が 争 点 とな って い た。), 高 裁 判 決 前 に神 戸 市 が 損 害 賠 償 請 求 権 等 に係 る権 利 放 棄 の 議 決 を 行 っ た こ とか ら,住 民 訴 訟 と権 利 放 棄 の 議 決 の 関 係 性(住 民 訴 訟 提 起 時 に お け る権 利 放 棄 の 議 決 の 有 効 性)に つ いて も高 裁 判 決 以 降,争 点 と して 追 加 され て い る。 派 遣 法 と補 助 金 に よ る給 与 支 給 の 点 につ いて は,最 高 裁 に よ る判 断 が な され た こ とが あ るが,住 民 訴 訟 と権 利 放 棄 の 議 決 の 関 係 性 につ いて は,こ れ ま で下 級 審 に お い て 判 断 が 分 か れ て お り(1),それ らの上 告 審 にお いて も 上 告 不 受 理 等 に よ り最 高 裁 の 見 解 は示 され て お らず,本 件 は この 点(住 民 訴 訟 と権 利 放 棄 の 議 決 の 関 係 性)に. お け る最 高 裁 の 判 断 を 示 した判 決 と し. て 注 目 され る もの で あ る(2)。本 研 究 に お い て は 判 決 の 内 容,争. 点を整理 し. た うえ で,本 件 最 高 裁 判 決 につ いて 検 討 す る。. 2.本. a.事. 件 の概 要及 び判 旨. 実 の 概 要(地 裁 ・高 裁 判 決 まで). 本 件 は神 戸 市 が,平 成17年 度 及 び平 成18年 度 の 間,神 戸 市 の 職 員 を 派 遣 して い る市 の 外 郭 団 体(財 団 法 人,株 式 会 社 等)20団. 体(財 団 法 人 先 端 医. 療 振 興 財 団,財 団 法 人 神 戸 勤 労 福 祉 振 興 財 団,財 団 法 人 神 戸 市 シル バ ー 人 (1)住 民 訴訟 と権 利 放 棄 の 議 決 につ い て,そ う した議 決 を無 効 とす る もの と して, 岩 手 県 玉 串 料 仙 台 高 裁 判 決 平 成3年1月10日 裁 判 決 平 成12年8月31日 27日 判 例 集 未 登 載,さ. 行 集42巻1号1頁,鋸. 判 例 地 方 自治220号38頁,本. 南町千葉地. 件 高 裁 判 決 平 成21年11月. く ら市 東 京 高 裁 判 決 平 成21年12月24日. 判 例 地 方 自治335. 号10頁,議 決 を有 効 とす る もの と して,鋸 南 町東 京 高 裁 判 決 平 成12年12月26日, 判 時1753号35頁,玉. 穂 町 東 京 高 裁 判 決 平 成18年7月20日. 喜 市 東 京 高 裁 判 決 平 成19年3月28日. 判 タ1218号193頁,久. 判 タ1264号206頁 な どが あ る。. (2)吉 村 浩 一 郎 「判 批 」 ジ ュ リス ト1444号(2012年8月)9頁. 110. 。.

(3) 神戸市外郭団体第2次 訴訟 材 セ ン ター,財 団 法 人 神 戸 市 民 文 化 振 興 財 団,財 団 法 人 神 戸 国 財 観 光 コ ン ベ ン シ ョン協 会,財 団 法 人 神 戸 国 際 協 力 交 流 セ ン ター,財 団 法 人 こ うべ 市 民 福 祉 振 興 協 会,財 団 法 人 神 戸 市 障 害 者 ス ポー ツ協 会,財 団 法 人 神 戸 市 地 域 医 療 振 興 財 団,財 団 法 人 神 戸 在 宅 ケ ア研 究 所,社 会 福 祉 法 人 神 戸 市 社 会 福 祉 協 議 会,財 団 法 人 神 戸 市 産 業 振 興 財 団,財 団 法 人 神 戸 み の りの 公 社,. 財団法人神戸市都市整備公社,財 団法人神戸市公園緑化協会,神 戸市住宅 供 給 公 社,社 団 法 人 神 戸 港 振 興 協 会,財 団 法 人 神 戸 市 防 災 安 全 公 社,財 団 法 人 神 戸 市 体 育 協 会,ク. リー ン神 戸 リサ イ クル 株 式 会 社. いず れ も地 裁 訴. え 提 起 時 の 名 称 。)に 対 して 補 助 金 又 は 委 託 料 を支 出 した 行 為 に つ い て, 原 告 住 民 らが,派 遣 法 第6条 第2項 の 手 続 に よ る こ とな く各 団 体 に派 遣 職 員 人 件 費 に充 て る補 助 金 又 は委 託 料 を 支 出す る こ と は脱 法 行 為 と して 違 法 で あ り,地 方 自治 法 第232条 の2(地. 方 公 共 団体 に よ る寄 附又 は 補 助)に. よ って も正 当化 され な い と して,神 戸 市 長 に対 して,平 成17,18年. 度 に神. 戸 市 が 支 出 した補 助 金 又 は委 託 料 に含 まれ る派 遣 職 員 人 件 費 相 当 額 及 び こ れ に対 す る遅 延 損 害 金 につ いて 神 戸 市 長 に対 して 損 害 賠 償 請 求 す る こ とを 求 め る と と も に,補 助 金 又 は委 託 料 を 受 領 した各 団 体 に対 し,上 記 人 件 費 相 当 額 に つ い て不 当利 得 返 還請 求 をす る こ とを 求 め た住 民 訴 訟(4号. 訴 訟). で あ る。 従 前,神 戸 市 に お いて は,派 遣 法 制 定 後 に,公 益 的 法 人 へ の 職 員 の 派 遣 につ いて は,公 益 的 法 人 等 へ の 職 員 の 派 遣 等 に関 す る条 例(平 成13年 神 戸 市 条 例 第49号:平. 成20年 条 例 改 正 前 の 条 例 題 名 は 「公 益 法 人 等 へ の 職 員 の. 派 遣 等 に関 す る条 例 」,以 下 「神 戸 市 派 遣 条 例 」)が 制 定 され て い る。 神 戸 市 の 職 員 が 派 遣 され て い る20の 団 体 につ いて は,派 遣 法 第2条 第1項. にお. け る,職 員 の 派 遣 が で き る 旨の 規 定 を 受 けて 条 例 にお いて,派 遣 法 第2条 第1項 各 号 に掲 げ られ て い る団 体 の う ち,そ の 業 務 の 全 部 又 は一 部 が 市 の 事 務 又 は事 業 と密 接 な 関 係 を 有 す る もの で あ り,か つ,市 が そ の 施 策 の 推 111.

(4) 近畿大学法学. 第60巻 第3・4号. 進 を図 る た め人 的 支 援 を 行 う こ とが 必 要 な もの と して 人 事 委 員 会 規 則 で 定 め る団 体 と して,公 益 的 法 人 等 へ の 職 員 の 派 遣 等 に関 す る条 例 の 施 行 規 則 (平 成14年 神 戸 市 人 事 院 会 規 則 第7号:平. 成21年 規 則 改 正 前 の 条 例 題 名 は. 「公 益 法 人 等 へ の職 員 の派 遣 等 に 関 す る 条 例 の施 行 規 則」)に お い て,ク リー ン神 戸 リサ イ クル 株 式 会 社 を 除 く19団 体 につ いて は指 定 が な され て い た(ク. リー ン神 戸 株 式 会 社 につ いて は派 遣 法 第10条 第1項. 派 遣)。 派 遣 法 第6条 第2項. に基 づ く退 職 者. は,派 遣 職 員 が 派 遣 先 団 体 に お い て従 事 す る. 業 務 が 地 方 公 共 団 体 の 委 託 を 受 けて 行 う業 務 等 で あ って その 実 施 に よ り地 方 公 共 団 体 の 事 務 又 は事 業 の 効 率 的 又 は効 果 的 な 実 施 が 図 られ る と認 め ら れ る もの で あ る場 合 等 に は,地 方 公 共 団 体 は,派 遣 職 員 に対 して,そ の 職 員 派 遣 の 期 間 中,条 例 で 定 め る と こ ろ に よ り給 与 を 支 給 す る こ とが で き る と定 めて お り,こ れ を 受 けて,神 戸 市 派 遣 条 例 は,派 遣 職 員 の う ち派 遣 法 第6条 第2項. に規 定 す る業 務 に従 事 す る者 に は,そ の 職 員 派 遣 の 期 間 中,. 給 料 そ の他 の手 当等 を 支 給 す る こ とが で き る 旨を 規定 して い た。神 戸市 は, 平 成17年 度 及 び平 成18年 度 の 間,神 戸 市 住 宅 供 給 公 社,社 団 法 人 神 戸 港 振 興 協 会,ク. リー ン神 戸 リサ イ クル 株 式 会 社 の3団 体 を 除 く17団 体 に対 して. 補 助 金 の 交 付(又. は交 付 決 定)を 行 い,上 記3団 体 を 含 む8団 体 に委 託 料. を支 出(又 は支 出決 定)し 4月5日. た。 この こ と につ いて 原 告 住 民 らは,平 成18年. 及 び 同月10日 に神 戸 市 監 査 委 員 に対 して,神 戸 市 が 平 成17年 度 に. 各 団 体 に補 助 金 又 は委 託 料 を 支 出 した行 為 は,派 遣 法 が 地 方 公 共 団 体 が 給 与 を負 担 す る外 郭 団 体 へ の 職 員 派 遣 を 原 則 禁 止 し,職 員 派 遣 の 際 は派 遣 先 が 給 与 を 負 担 す る 旨を 定 め た派 遣 法 の 脱 法 行 為 で あ り,各 団 体 の 受 領 した 補 助 金 又 は委 託 料 の 返 還 と,神 戸 市 長 に対 して 上 記 補 助 金 又 は委 託 料 の う ち各 団 体 か ら返 還 され な い額 につ いて の 損 害 賠 償 を 求 め,平 成18年 度 に支 出予 定 の 補 助 金 又 は委 託 料 につ いて は支 出す べ きで な い と い っ た主 張 を 行 い,住 民 監 査 請 求 を 行 っ たが,神 戸 市 監 査 委 員 は この 請 求 に対 して,平 成 112.

(5) 神戸市外郭団体第2次 訴訟 18年6月1日. 付 けの 監 査 結 果 に お いて,各 団 体 へ の 補 助 金 又 は委 託 料 は違. 法 な 公 金 支 出 に 当 た らな い と判 断 した。 これ に対 して 原 告 住 民 ら は平 成18 年6月29日,神. 戸 地 裁 に地 方 自治 法 第242条 の2第1項. 第4号. に基 づ き住. 民 訴 訟 の 提 起 を した。 平 成20年4月24日. 神 戸 地 裁 判 決 に お いて,裁 判 所 は,派 遣 法 は 「職 員 派. 遣 につ いて の統 一 的 な ル ー ル の設 定,派 遣 の 適正 化,派 遣 手 続 きの透 明化 ・ 身 分 の 取 り扱 いの 明 確 化 等 」 を 目的 と して 定 め られ た もの で あ り,派 遣 職 員 の 給 与 は 「派 遣 先 団 体 が 支 給 し,地 方 公 共 団 体 は給 与 を 支 給 しな いが, 派 遣 職 員 が 派 遣 先 団 体 に お いて 従 事 す る業 務 が 給 与 支 給 可 能 業 務 で あ る場 合 又 は給 与 支 給 可 能 業 務 が 派 遣 先 団 体 の 主 た る業 務 で あ る場 合 は地 方 公 共 団 体 の職 務 に従 事 す る こ とと 同様 の 効 果 を もた らす と認 め られ る こ とか ら, その 場 合 に限 り,例 外 的 に,地 方 公 共 団 体 は,条 例 で 定 め る こ とを 条 件 と して,派 遣 職 員 に対 し給 与 を 支 給 す る こ とが で き る」 もの と され る。 一 方 で,一 般 に地 方 自治 法 第232条 の2の 要 件 を満 た す場 合 は,「 地 方 公 共 団 体 が,団 体 に対 し,そ の 人 件 費 を 援 助 す る た め補 助 金 を 支 出す る こ と は許 さ れ る の で あ り,公 益 上 の 必 要 性 の観 点 か らす る と」,人 件 費 を 固 有 ・派 遣 職 員 とで 区 別 す る合 理 的 理 由が あ る と は いえ な い。 派 遣 法 は,派 遣 職 員 の 人 件 費 に充 て る補 助 金 交 付 を 禁 止 す る明 文 規 定 を 置 いて いな い こ と等 を 勘 案 す る と,給 与 の 支 給 対 象 が 派 遣 職 員 で あ る こ との み を 理 由 に,給 与 相 当 額 を補 助 金 に よ って援 助 す る こ とを許 さ な い とす る趣 旨 とは解 され ず,「 地 方 公 共 団 体 が,派 遣 職 員 につ いて,派 遣 先 団 体 の 職 員 と して の 地 位 に基 づ き派 遣 先 団 体 か ら支 給 され る給 与 相 当額 を 援 助 す る趣 旨で 補 助 金 を 支 出す る こ とは,派 遣 法 とは 必 ず し も抵 触 す る もの で は な い と解 す るべ きで あ り, か よ うな 補 助 金 支 出の 適 法 性 は,公 益 上 の 必 要 性 の 有 無 の 問 題 と して,別 途 検 討 さ れ るべ き もの とい うべ きで あ る」 が,「 地 方 公 共 団 体 の職 員 と し て 地 方 公 共 団 体 の 事 務 を 行 って いな い職 員 に対 し,当 該 地 方 公 共 団 体 が 地 113.

(6) 近畿大学法学. 第60巻 第3・4号. 方 公 共 団 体 の 職 員 と して の 給 与 を 支 給 す る こ と は原 則 と して 違 法 で あ り」, 派 遣 法 も この 趣 旨を 踏 まえ て い る もの と解 され る た め,補 助 金 を 充 て る給 与 の支 給 対 象 が 地 方 公 共 団体 か らの 派 遣 職 員 で あ る場 合 に は,「 公 益 上 の 必 要 性 の 判 断 を 経 た上 で の 補 助 金 支 出で はな く,地 方 公 共 団 体 の 職 員 と し て の 給 与 支 給 の 代 替 と して その 人 件 費 相 当額 を 補 助 金 に よ って 支 出す るな ど地 方 公 共 団 体 か らの 給 与 支 給 その もの と 同視 で き る よ うな 補 助 金 の 支 出 は違 法 で あ」 り,ま た,委 託 料 の支 出 に つ い て も,「 地 方 公 共 団体 の 職 員 と して の 給 与 支 給 の 代 替 と して,そ の 人 件 費 相 当額 を 委 託 料 に よ って 支 出 す る 場 合 に は,ノ ー ワー ク ・ノー ペ イ の 原 則 に反 し違 法 と い うべ き で あ る」,と 判 示 す る と と もに,神 戸 市 長 の 過 失 も認 め,神 戸 市 長 と各 団 体(20 の 団 体 の う ち18の 団 体 につ いて 違 法一2団. 体 につ いて は適 法)に 対 して 損. 害 賠 償 等 を 神 戸 市 に支 払 う原 告 らの 訴 え を 一 部 認 容 す る判 決 を 下 した。 地 裁 判 決 に対 して,神 戸 市 長 らは控 訴 を したが,平 成21年1月21日 訴 審 口頭 弁 論 終 結 後 の 同年2月26日,神. の控. 戸 市 議 会 は神 戸 市 派 遣 条 例 の 一 部. を改 正 す る条 例 案 を 可 決 し,改 正 条 例 は即 日公 布,一 部 内容 を 除 き即 日施 行 され た。 この 改 正 条 例 で は,訴 訟 の 対 象 とな って い た団 体 が,派 遣 法 第 6条 第2項 の 規 定 に よ り,市 が 直 接 派 遣 職 員 に給 与 支 給 を 行 う こ との で き る団 体 と して,別 表1,2に. 掲 げ られる とともに,改 正 条 例 附 則 第5項. にお. いて,本 件 訴 訟 に係 る市 の各 請 求 権 と して の,市 が 各 団 体 に支 出 した補 助 金 等 に関 す る,団 体 又 は職 員 に対 す る不 当利 得 返 還 請 求 権,損 害 賠 償 請 求 権 を 放棄 す る旨 を定 め,附 則 につ いて は 平 成21年6月1日. か ら施 行 され た。. 平 成21年11月27日 大 阪 高 裁 判 決 で は,地 裁 で も判 断 され た① 職 員 派 遣 と その 給 与 相 当額 の 派 遣 先 団 体 へ の 補 助 金 等 の 支 出の 違 法 性 に加 え て,② 神 戸 市 議 会 が 条 例 制 定 と い う議 決 権 の 行 使 に よ って 債 権 放 棄 を 行 っ た こ との 効 果 等 につ いて も判 断 され た。 ① 補 助 金 等 の違 法 性 に つ い て は,派 遣 法 は,「 職 員 派 遣 に つ い て,そ 114. の.

(7) 神戸市外郭団体第2次 訴訟 統 一 的 な ル ー ル の 設 定,派 遣 の 適 正 化,派 遣 手 続 の 透 明 化 ・身 分 取 扱 いの 明 確 化 等 及 び行 政 と民 間 との 連 携 協 力 に よ る地 方 公 共 団 体 の 諸 施 策 の 推 進 を 目的 と して 制 定 され た もの で あ」 り,派 遣 職 員 に対 して 地 方 公 共 団 体 は 給 与 を支 給 しな い と され る が,「 派 遣 職 員 が派 遣 先 団 体 に お い て従 事 す る 業 務 が 給 与 支 給 可 能 業 務 で あ る場 合 又 は給 与 支 給 可 能 業 務 が 派 遣 先 団 体 の 主 た る業 務 で あ る場 合 は,地 方 公 共 団 体 の 職 務 に従 事 す る こ と と 同様 の 効 果 を も た らす もの と認 め られ る こ とか ら,そ の 場 合 に限 り,例 外 的 に,地 方 公 共 団 体 は,条 例 で 定 め る こ とを 条 件 と して,派 遣 職 員 に対 し給 与 を 支 給 す る こ とが で き る もの と され て い る」。 「派 遣 法 は,同 法6条2項. の手続. に拠 らず に派 遣 元 が 派 遣 先 に派 遣 職 員 人 件 費 の 相 当 額 を 補 助 金 と して 支 出 し,派 遣 先 が 派 遣 職 員 に派 遣 元 と 同額 の 給 与 を 支 給 す る こ との 可 否 に関 す る規 定 を 設 けて いな いが,派 遣 法 の 運 用 につ いて の 自治 公 第15号 平 成12年 7月12日 付 自治 省 行 政 局 公 務 員 部 長 通 達 は,派 遣 法 は職 員 派 遣 に関 す る統 一 的 な ル ー ル を 定 め る もの で あ る こ とか ら,同 法 の 目的 に合 致 す る もの に つ いて は,そ の 施 行 後 は 同法 規 定 の 職 員 派 遣 制 度 に よ るべ き もの で あ る と して 」 お り,「 派 遣 法 の 規 定,そ. の 制 定 経 緯 ・趣 旨,同 法 の運 用 に 関 す る. 通 達 の 内容 等 を 総 合 考 慮 す る と,同 法 の 目的 に合 致 す る職 員 派 遣 につ いて は,同 法 所 定 の 職 員 派 遣 制 度 に よ るべ き もの で あ り,派 遣 職 員 に対 す る給 与 の 支 給 につ いて も 同法 の 規 定 に準 拠 して 行 うべ きで あ って,同 法6条2 項 以 外 の 方 法 に よ る派 遣 元 に よ る給 与 支 給 は許 され な い と解 す るの が 相 当 で あ」 って,神 戸 市 の 補 助 金 等 の 支 出 に につ いて,派 遣 職 員 の 人 件 費 が 含 まれ て い る場 合 に は,そ の 人 件 費 相 当部 分 につ いて は,派 遣 法 に反 す る も の で あ る。 ② 条 例 改正 に よ る権 利 放 棄 の効 果 につ いて は,地 方 公 共 団体 の 「議 会 は, 独 立 の 立 場 に お いて その 権 限 を 行 使 す る と と も に,執 行 機 関 と相 互 に牽 制 し,均 衡 と調 和 の 関 係 を 保 持 して 地 方 公 共 団 体 の 政 治 ・行 政 を 円滑 に遂 行 115.

(8) 近畿大学法学. 第60巻 第3・4号. す る もの と され て い る」 が,地 方 自治 法 「96条1項10号 は,一 定 の 場 合 の 権 利 の放 棄 を議 会 の 議 決 事 項 と定 め る一 方,同. 法149条1項6号. は,財 産. を管 理 し,処 分 す る こ とを 普 通 地 方 公 共 団 体 の 長 が 担 任 す る事 務 と定 めて い る。 上 記 は,財 産 の 処 分 の う ちで も権 利 の 放 棄 は地 方 公 共 団 体 の 財 産 を 対 価 な く消 滅 させ る もの で あ るか ら,特 に議 会 の 議 決 を 経 た上 で,こ れ を 長 に担 任 させ るの が 相 当 との 考 慮 に基 づ くもの と解 され る。 そ うす る と, 議 会 が 権 利 の 放 棄 を 決 議 した と して も,ま た,そ れ が 条 例 の 形 式 で され た 場 合 で あ って も,執 行 機 関 に よ る放 棄 の 行 為 を 待 たず に,当 該 決 議 に よ っ て 直 ち に その 対 象 とな っ た権 利 につ いて,放 棄 の 効 果 が 生 じ,同 権 利 が 消 滅 す る と い う こ と はで きな い と こ ろ,神 戸 市 長 に お いて,上 記 議 会 の 決 議 に基 づ き,本 件 権 利 の放 棄 の手 続 を した こ とを認 め る に足 りる証 拠 は な い」 と して,改 正 条 例 の 成 立 に よ り損 害 賠 償 請 求 権 等 の 権 利 が 消 滅 した と は い え な い と し,住 民 訴 訟 制 度 が 設 け られ た趣 旨等 に照 らせ ば,損 害 賠 償 請 求 権 等 の 「権 利 を 放 棄 す る議 会 の 決 議 は,地 方 公 共 団 体 の 執 行 機 関(市 長) が 行 っ た違 法 な 財 務 会 計 上 の 行 為 を 放 置 し,損 害 の 回 復 を 含 め,そ の 是 正 の 機 会 を 放 棄 す る に等 し く,ま た,本 件 住 民 訴 訟 を 無 に帰 せ しめ る もの で あ って 」,地 方 自治 法 に お け る 「住 民 訴 訟 の制 度 を 根 底 か ら否 定 す る もの と い わ ざ る を 得 ず 」,議 会 に よ る損 害 賠 償 請 求 権 等 の 権 利 を放 棄 す る 旨の 決 議 は,「 議 決 権 の 濫 用 に 当 た り,そ の効 力 を 有 しな い もの とい うべ きで あ」 り,損 害 賠 償 請 求 権 等 の 権 利 を 放 棄 す る議 会 の 決 議 は効 力 を 有 さず, 改 正 条 例 に お いて 権 利 の 放 棄 を 定 め た部 分 は その 効 果 を 生 じな い。 ③ 神 戸 市 長 の 故 意 又 は過 失 の 有 無 につ いて は,こ れ まで,様. 々な 職 員 の. 派 遣 が あ っ た と こ ろ派 遣 法 に よ って 統 一 的 ル ー ル を 定 め た もの で あ り,同 法 第6条 第2項. は,例 外 的 な 場 合 に限 って 条 例 で 定 め る こ とを 条 件 と して. 派 遣 職 員 へ の 給 与 支 給 を 認 め た もの で あ るが,神 戸 市 の 職 務 に従 事 して い な い職 員 に給 与 の 支 給 を 行 う こ とが で きな いの は 当然 で あ り,同 法 の 制 定 116.

(9) 神戸市外郭団体第2次 訴訟 を 受 け その 施 行 前 に,同 法 第6条 第2項. に係 る条 例 と して 神 戸 市 派 遣 条 例. を 制 定 して い る こ とか ら,神 戸 市 長 も派 遣 法 の 趣 旨 につ いて は,補 助 金 等 の 交 付 時 まで に承 知 して い た と推 認 で き,補 助 金 等 の 支 出交 付 決 定 等 の 時 点 で 派 遣 職 員 の 人 件 費 相 当額 の 多 くを 補 助 金 等 の 交 付 か ら あて られ る こ と が 当然 に予 定 され て い た と認 め られ る こ と等 を 考 慮 す る と,神 戸 市 長 に は 補 助 金 等 交 付 決 定 時 に過 失 が あ る と し,各 団 体 の 不 当 利 得 返 還 義 務 につ い て は,補 助 金 等 が 派 遣 法 に違 反 す る もの で あ って,公 序 良 俗 に違 反 す る も の と して 私 法 上 も無 効 で あ り,給 与 相 当額 につ いて の 返 還 義 務 を 有 す る と す る判 決 を 下 した。 高 裁 判 決 を 受 けて,神 戸 市 長 らが 最 高 裁 に上 告 した 。. b.判. 旨(破 棄 自判). 最 高 裁 は,地 裁,高 裁 と 同様 に,① 職 員 派 遣 とそ の 給 与 相 当 額 の 派 遣 先 団 体 へ の 補 助 金 等 の 支 出の 違 法 性 につ いて,派 遣 法 に定 め られ た 手 続 き に よ らず 補 助 金 等 の 交 付 を 行 っ た こ と につ いて は,手 続 的 な 違 法 が あ り,無 効 で あ る とす る もの の,② 神 戸 市 長 の 過 失 につ い て は,「 派 遣 法 は,… … 地 方 公 共 団 体 の 事 務 又 は事 業 の 効 率 的 又 は効 果 的 な 実 施 が 図 られ る と認 め られ る もの で あ る場 合 等 に は,条 例 で 定 め る と こ ろ に よ り,派 遣 職 員 に給 与 を 支 給 す る こ とが で き る 旨を 規 定 して い るが,地 方 公 共 団 体 が 派 遣 先 団 体 等 に支 出 した補 助 金 等 が 派 遣 職 員 等 の 給 与 に充 て られ る こ とを 禁 止 す る 旨の 明 文 の 規 定 は置 いて 」 お らず,ま. た,派 遣 法 制 定 時 の 国 会 審 議 にお い. て,派 遣 職 員 の 給 与 の 支 給 につ いて は,公 益 上 の 必 要 性 等 に係 る地 方 公 共 団 体 の 判 断 に よ る と し,裁 判 例 も派 遣 職 員 に対 す る給 与 支 給 を 適 法,違 法 とす る もの に分 か れ て い た こ と等 を 考 慮 す る と,本 件 補 助 金 等 の 交 付 の 時 点 に お いて,神 戸 市 長 が 「派 遣 法6条2項. の 規 定 との 関 係 で,本 件 各 団 体. に対 す る本 件 補 助 金 等 の 支 出の 適 法 性 につ いて 疑 義 が あ る と して 調 査 を し な か っ た こ とが その 注 意 義 務 に違 反 す る もの と まで は いえ ず,そ の 支 出を 117.

(10) 近畿大学法学. 第60巻 第3・4号. す る こ とが 同項 の 規 定 又 は その 趣 旨 に反 す る もの で あ る との 認 識 に容 易 に 至 る こ とが で き た と は い い難 い」 と して,市 長 の 過 失 を 認 めず,神 戸 市 長 に対 す る損 害 賠 償 請 求 につ いて は理 由が な い と して 棄 却 した。 ③ 議 決 に よ る権 利 放 棄 の有 効 性 につ い て は,「 普 通 地 方 公 共 団体 に よ る 債 権 の放 棄 は,条 例 に よ る場 合 を 除 い て は,地 方 自治 法149条6号. 所定の. 財 産 の 処 分 と して その 長 の 担 任 事 務 に含 まれ る と と も に,債 権 者 の 一 方 的 な 行 為 の み に よ って 債 務 を 消 滅 させ る と い う点 に お いて 債 務 の 免 除 の 法 的 性 質 を有 す る もの と解 され るか ら,そ の 議 会 が 債 権 の 放 棄 の 議 決 を しただ けで は放 棄 の 効 力 は生 ぜ ず,そ の 効 力 が 生 ず る に は,そ の 長 に よ る執 行 行 為 と して の 放 棄 の 意 思 表 示 を 要 す る もの とい うべ きで あ る」 が,「 本 件 改 正 条 例 の よ う に,条 例 に よ る債 権 の 放 棄 の 場 合 に は,条 例 と い う法 規 範 そ れ 自体 に よ って 債 権 の 処 分 が 決 定 され,そ の 消 滅 と い う効 果 が 生 ず る もの で あ るか ら,そ の 長 に よ る公 布 を 経 た 当該 条 例 の 施 行 に よ り放 棄 の 効 力 が 生 ず る もの と い うべ きで あ り,そ の 長 に よ る別 途 の 意 思 表 示 を 要 しな い も の と解 され る」。 「地 方 自治 法 に お いて は,普 通 地 方 公 共 団 体 が その 債 権 の 放 棄 をす る に 当 た って,そ の 議 会 の 議 決 及 び長 の 執 行 行 為 と い う手 続 的 要 件 を満 た して い る限 り,そ の 適 否 の 実 体 的 判 断 につ いて は,住 民 に よ る直 接 の 選 挙 を 通 じて 選 出 され た議 員 に よ り構 成 され る普 通 地 方 公 共 団 体 の 議 決 機 関 で あ る議 会 の 裁 量 権 に基 本 的 に委 ね られ て い る もの と い うべ きで あ る。 … … 住 民 訴 訟 の 対 象 と され て い る損 害 賠 償 請 求 権 又 は不 当利 得 返 還 請 求 権 を放 棄 す る 旨の 議 決 が され た場 合 につ いて み る と,こ の よ うな 請 求 権 が 認 め られ る場 合 は様 々で あ り,個 々の 事 案 ご と に,当 該 請 求 権 の 発 生 原 因 で あ る財 務 会 計 行 為 等 の 性 質,内 容,原 因,経 緯 及 び影 響,当 該 議 決 の 趣 旨及 び経 緯,当 該 請 求 権 の 放 棄 又 は行 使 の 影 響,住 民 訴 訟 の 係 属 の 有 無 及 び経 緯,事 後 の 状 況 その 他 の 諸 般 の 事 情 を 総 合 考 慮 して,こ れ を 放 棄 す る こ とが 普 通 地 方 公 共 団 体 の 民 主 的 か つ 実 効 的 な 行 政 運 営 の 確 保 を 旨 とす 118.

(11) 神戸市外郭団体第2次 訴訟 る 同法 の 趣 旨等 に照 ら して 不 合 理 で あ って 上 記 の 裁 量 権 の 範 囲 の 逸 脱 又 は その 濫 用 に 当 た る と認 め られ る と き は,そ の 議 決 は違 法 とな り,当 該 放 棄 は無 効 とな る もの と解 す るの が 相 当で あ る。 そ して,当 該 公 金 の 支 出等 の 財 務 会 計 行 為 等 の 性 質,内 容 等 につ いて は,そ の 違 法 事 由の 性 格 や 当 該 職 員 又 は 当該 支 出等 を 受 け た者 の 帰 責 性 等 が 考 慮 の 対 象 と され るべ き もの と 解 され る」。 「本 件 補 助 金 等 の支 出 の 性 質 及 び 内 容 に 関 して は,… … 市 長 は も と よ り 本 件 各 団 体 に お いて も その 支 出の 当時 これ が 派 遣 法 の 規 定 又 はそ の 趣 旨 に 違 反 す る もの で あ る との 認 識 に容 易 に至 る こ とが で き る状 況 に はな か った と い うべ きで あ って,市 か らその 交 付 を 受 けて 本 件 派 遣 職 員 等 の 給 与 等 の 人 件 費 に充 て た本 件 各 団 体 の 側 に帰 責 性 が あ る と は考 え 難 い。 次 に,本 件 補 助 金 等 の 支 出の 原 因 及 び経 緯 に関 して は,本 件 各 団 体 が 不 法 な 利 得 を 図 るな どの 目的 に よ る もの で はな く,派 遣 職 員 等 の 給 与 等 の 支 給 方 法 につ い て 市 の側 が補 助 金 等 の支 出 と い う方法 を選 択 した こ とに よ る もの で あ って, 本 件 各 団 体 が その 支 給 方 法 の 選 択 に 自 ら関 与 したな どの 事 情 も うか が わ れ な い。 ま た,本 件 補 助 金 等 の 支 出の 影 響 に関 して は,… … 派 遣 職 員 等 の 給 与 等 の 人 件 費 と い う必 要 経 費 に 充 て られ て お り,こ れ らの派 遣 職 員 等 に よ って 補 強,拡 充 され た本 件 各 団 体 の 活 動 を 通 じて 医 療,福 祉,文 化,産 業 振 興,防. 災 対 策,住. 宅 供 給,都. 市 環 境 整 備,高. 齢者失業 対策等 の各種. サ ー ビスの 提 供 と い う形 で 住 民 に相 応 の 利 益 が 還 元 され て い る もの と解 さ れ,本 件 各 団 体 が 不 法 な 利 益 を 得 た もの と い う こ と はで きな い」。 そ して, 改 正 条 例 の議 決 の趣 旨,経 緯 に つ い て は,「 改 正 条 例 全 体 の 趣 旨 は,派 遣 職 員 の 給 与 につ いて は,市 が 派 遣 先 団 体 に支 出す る補 助 金 等 を これ に充 て る方 法 を 採 らず に,派 遣 法6条2項. を 根 拠 に定 め る条 例 の 規 定 に基 づ き市. が 派 遣 職 員 に直 接 支 給 す る方 法 を 採 る こ とを 明 らか に した もの で あ り,前 者 の 方 法 を 違 法 と した第1審 判 決 の 判 断 を 尊 重 し,派 遣 法 の 趣 旨 に沿 った 119.

(12) 近畿大学法学. 第60巻 第3・4号. 透 明 性 の 高 い 給 与 の 支 給 方 法 を採 択 した もの とい う こ とが で き」,補 助 金 等 を直 ち に返 還 す る こ と とな っ た場 合 に は,各 団 体 の 財 政 運 営 に支 障 が 生 じる可 能 性 が あ り,市 議 会 の 審 議 に お い て,「 これ に よ り公 益 的事 業 の 利 用 者 た る住 民 一 般 が 被 る不 利 益 等 を 勘 案 した議 論 が され て い る こ と等 に鑑 み る と,本 件 附 則 に係 る議 決 は,公 益 の 増 進 に寄 与 す る派 遣 先 団 体 等 と し て 住 民 に対 す る医 療,福 祉,文 化,産 業 振 興,防 災 対 策,住 宅 供 給,都 市 環 境 整 備,高 齢 者 失 業 対 策 等 の 各 種 サ ー ビスの 提 供 を 行 って い る本 件 各 団 体 につ いて その よ うな 事 態 が 生 ず る こ とを 回 避 す べ き要 請 も考 慮 して され た もの で あ る と い う こ とが で き る」。 「そ して,本. 件 補 助 金 等 に係 る不 当 利 得 返 還 請 求 権 の 放 棄 又 は行 使 の 影. 響 につ いて み る に,… … 既 に本 件 派 遣 職 員 等 の 給 与 等 の 人 件 費 に充 て られ た本 件 補 助 金 等 につ き上 記 請 求 権 の 行 使 に よ り直 ち に その 返 還 の 徴 求 が さ れ た場 合,実 際 に本 件 各 団 体 の 財 政 運 営 に支 障 を 来 して 上 記 の 各 種 サ ー ビ スの 十 分 な 提 供 が 困 難 にな るな どの 市 に お け る不 利 益 が 生 ず る お それ が あ り,そ の 返 還 義 務 につ き上 記 の 要 請 を 考 慮 して 議 会 の 議 決 を 経 て 免 責 が さ れ る こ と は,そ の 給 与 等 の 大 半 につ いて は返 還 と再 度 の 支 給 の 手 続 を 行 っ た もの と実 質 的 に 同視 し得 る もの と も いえ る上,そ の よ うな 市 に お け る不 利 益 を 回避 す る こ と に資 す る もの と い う こ と もで き」,改 正 条 例 の 制 定 と い う議 決 行 為 が 住 民 訴 訟 制 度 の 趣 旨を 没 却 す る濫 用 的 な もの とす る観 点 に お いて,高 裁 は 「議 決 が され た時 期 と原 審 に お け る住 民 訴 訟 の 審 理 の 状 況 との 関 係 等 を も理 由 と して,市 の 本 件 各 団 体 に対 す る不 当利 得 返 還 請 求 権 を放 棄 す る 旨の 本 件 附 則 に係 る市 議 会 の 議 決 は地 方 自治 法 の 定 め る住 民 訴 訟 制 度 を根 本 か ら否 定 す る もの で あ る」 とす る が,「 本 件 附則 に係 る議 決 の 適 法 性 に関 して は,住 民 訴 訟 の 経 緯 や 当該 議 決 の 趣 旨及 び経 緯 等 を 含 む 諸 般 の 事 情 を 総 合 考 慮 す る上 記 の 判 断 枠 組 み の 下 で,裁 判 所 が その 審 査 及 び判 断 を 行 うの で あ る か ら,上 記 請 求 権 の放 棄 を 内 容 とす る上 記 議 決 を 120.

(13) 神戸市外郭団体第2次 訴訟 も って,住 民 訴 訟 制 度 を 根 底 か ら否 定 す る もの で あ る とい うこ とは で き ず, 住 民 訴 訟 制 度 の 趣 旨を 没 却 す る濫 用 的 な もの に 当た る と い う こ と はで き」 ず,「 市 が本 件 各 団 体 に対 す る上 記 不 当利 得 返 還 請 求 権 を 放 棄 す る こ とが 普 通 地 方 公 共 団 体 の 民 主 的 か つ 実 効 的 な 行 政 運 営 の 確 保 を 旨 とす る地 方 自 治 法 の 趣 旨等 に照 ら して 不 合 理 で あ る と は認 め難 い と い うべ きで あ り,そ の 放 棄 を 内容 とす る本 件 附 則 に係 る市 議 会 の 議 決 が そ の 裁 量 権 の 範 囲 の 逸 脱 又 は その 濫 用 に 当 た る と は いえ ず,そ の 議 決 は適 法 で あ る と解 す るの が 相 当で あ る」 と して,神 戸 市 長 らの 賠 償 を 認 め た地 裁,高 裁 の 判 断 に対 し て,神 戸 市 長 らの 主 張 を 認 め た住 民 側 敗 訴 の 判 決 を 下 した 。 ま た本 判 決 に は 千 葉 勝 美 裁 判 官 の補 足 意 見 が あ り,こ こ で は,「 権 利 の 放 棄 の 議 決 が,主. と して 住 民 訴 訟 制 度 に お け る地 方 公 共 団 体 の 財 務 会 計 行. 為 の 適 否 等 の 審 査 を 回 避 し,制 度 の 機 能 を 否 定 す る 目的 で され た と認 め ら れ る よ うな 例 外 的 な 場 合(例 え ば,長 の 損 害 賠 償 責 任 を 認 め る裁 判 所 の 判 断 自体 が 法 的 に誤 りで あ る こ とを 議 会 と して 宣 言 す る こ とを 議 決 の 理 由 と した り,そ も そ も一 部 の 住 民 が 選 挙 で 選 ばれ た長 の 個 人 責 任 を 追 及 す る こ と 自体 が不 当 で あ る と して 議 決 を した よ うな 場 合 が考 え られ る。)に は, その よ うな 議 会 の 裁 量 権 の 行 使 は,住 民 訴 訟 制 度 の 趣 旨を 没 却 す る もの で あ り,そ の こ とだ けで 裁 量 権 の 逸 脱 ・濫 用 とな り,放 棄 等 の 議 決 は違 法 と な る もの と いえ 」 る,と. して,住 民 訴 訟 と議 会 の 放 棄 の 議 決 の 関 係 につ い. て,住 民 訴 訟 制 度 の 機 能 を 否 定 す る よ うな 例 外 的 な 場 合 に は権 利 放 棄 の 議 決 につ いて,そ の 裁 量 権 の 逸 脱 ・濫 用 が 認 め られ る と して い る。. 3.本. a.本. 件 の整 理 と主 な 争 点. 件の整理. 本 件 は,神 戸 市 の 補 助 金 交 付 に関 す る監 査 結 果 に対 して そ れ を 不 服 と し 121.

(14) 近畿大学法学. 第60巻 第3・4号. て 提 起 され た住 民 訴 訟 で あ る。 神 戸 地 裁 で の 主 な 争 点 は,派 遣 法 との 関 係 に お け る補 助 金 交 付 の 違 法 性(有 効 性)と 神 戸 市 長 の 補 助 金 交 付 時 に お け る過 失 責 任 で あ っ たが,こ. こで は,補 助 金 の 交 付 関 して の 「公 益 上 の 必 要. 性 」 の 判 断 が 行 わ れ て い る こ と は いえ な い こ と等 に よ り補 助 金 交 付 の 違 法 性 を認 め る と と も に,神 戸 市 長 の 過 失 につ いて は,派 遣 法 成 立 か ら数 年 の 時 を経 て 職 員 派 遣 や 補 助 金 交 付 に関 す る要 綱 等 に よ って 補 助 金 交 付 等 が 行 わ れ た こ とか ら,派 遣 法 に よ り派 遣 職 員 へ の 給 与 支 給 を 行 う こ とが で きな い こ と等 の 認 識 が あ っ た と され る こ と に照 ら して,過 失 を 認 め,補 助 金 等 の 一 部 につ いて 神 戸 市 が(神 戸 市 長 らに対 して)損 害 賠 償 請 求 等 を 行 わ な けれ ば な らな い 旨 の判 決 を 下 した(平 成20年4月24日)。. 大阪高裁 にお い. て 審 理 が な され て い た途 中 に,神 戸 市 議 会 に お いて,本 件 に お け る損 害 賠 償 請 求 権 等 を 含 む 権 利 放 棄 を 内容 とす る条 例 案 が 可 決 され た(平 成21年2 月26日)。 こ の た め,大. 阪 高 裁 で は,神 戸 地 裁 で 争 点 とな って い た 派 遣 法. との 関 係 に お け る補 助 金 交 付 の 違 法 性(有 効 性)と 神 戸 市 長 の 過 失 責 任 に 加 え て,市 議 会 で 可 決 され た条 例 の 形 態 を と る権 利 放 棄 の 議 決 の 有 効 性 に つ いて も争 点 とな っ た。 大 阪 高 裁 判 決 で は,補 助 金 交 付 の 違 法 性,神 戸 市 長 の 過 失 責 任 を 認 め た上 で,神 戸 市 議 会 に お け る権 利 放 棄 の 有 効 性 につ い て は,議 会 の 権 利 放 棄 の 議 決 は,議 会 の 議 決 の み に よ って 効 力 を 生 じるの で はな く,長(執. 行 機 関)に. よ って 権 利 放 棄 が 行 わ れ な けれ ばな らず,本. 件 に お いて は長 に よ る権 利 放 棄 が な され た と いえ る証 拠 が な い こ と,議 会 の 議 決 に よ って 本 件 訴 訟 に お け る損 害 賠 償 請 求 権 等 を 放 棄 す る こ と は住 民 訴 訟 を無 にす る もの で,議 会 の 権 利 濫 用 と して その 効 力 を 有 しな い とす る 判 決 を下 した(平 成21年11月27日)。. 最 高 裁 に お いて は,こ. の3点 の 争 点. につ いて,補 助 金 の 違 法 性 につ いて は,派 遣 法 に照 ら して 公 益 上 の 必 要 性 が 認 め られ る と はで きな い と しな が らも,市 長 の 過 失 責 任 につ いて は,補 助 金 交 付 当時,神 戸 市 長 が 補 助 金 交 付 の 違 法 性 を 認 識 して い た とす る こ と 122.

(15) 神戸市外郭団体第2次 訴訟 はで きな い と し,権 利 放 棄 の 議 決 の 有 効 性 につ いて は,高 裁 にお いて 満 た され て い な い と され た長(執 行 機 関)に よ る権 利 放 棄 の 手 続 きに つ い て は, 条 例 に よ る権 利 放 棄 の 場 合 は 「長 に よ る公 布 を 経 た 当 該 条 例 の 施 行 に よ り 放 棄 の 効 力 が 生 ず る」 と し,本 件 議 決 が 住 民 訴 訟 を 無 にす る よ うな 議 会 に よ る議 決 の 権 利 濫 用 と は認 め られ ず,議 決 は適 法(有 効)な (平成24年4月20日)。. もの と され た. 各 裁 判 所 の 判 断 につ いて は,次 表 参 照 。. 補助金の違法性. 市長の過失責任. 議決の無効. 住民側勝訴. 神戸地裁. ○. 0. 一. 0. 大 阪高裁. ○. 0. ○(無 効). 0. 最高裁. ○. ×. ×(有 効). ×. b.本. 件 にお け る争 点. 本 件 に お け る争 点 と して,以 下 ① 職 員 の 派 遣 と補 助 金,② 住 民 訴 訟,⑧ 議 会 の 議 決,に つ いて 概 観 して お く。. 争点①. 職 員 の 派 遣 と補 助 金. 補 助 金 とは,「 国 か ら地 方 公 共 団体 若 し くは民 間 に対 し,又 は地 方 公 共 団 体 か ら他 の地 方 公 共 団 体 若 し くは民 間 に対 し,各 種 の 行 政 上 の 目的 を も って 交 付 され る現 金 給 付 を い」 い(3),地 方 に お い て の 補 助 金 は,地 方 公 共 団 体 が 各 種 団 体 等 の 申請 に基 づ き(そ の 団 体 の 目的 等 の 公 共 性 を 考 慮 し て 補 助 金 交 付 を)行. う もの で あ って,地. 方 自治 法 第232条 の2「 寄 附 又 は. 補 助 」 に お い て,「 普 通 地 方 公 共 団体 は,そ. の 公 益 上 必 要 が あ る場 合 にお. いて は,寄 附 又 は補 助 を す る こ とが で き る」 と され,補 助 金 の 交 付 に際 し て は 「公 益 上 の 必 要 性 」 を 求 めて い る。 (3)『 新 自治 用 語 辞 典(改 訂 版)」846頁 。 123.

(16) 近畿大学法学. 第60巻 第3・4号. な お,国 の 行 う補 助 金 につ いて は,そ の 交 付 につ いて,補 助 金 等 に係 わ る予 算 の執 行 の 適 正 化 に 関す る法 律 第3条. に よ り,「 補 助 金 等 が 国民 か ら. 徴 収 され た税 金 その 他 の 貴 重 な 財 源 で まか な わ れ る もの で あ る こ と に留 意 し,補 助 金 な どが 法 令 お よ び予 算 で 定 め る と こ ろ に従 って 公 正 か つ 効 率 的 に使 用 され る よ う努 めな けれ ばな らな い」 との 規 定 を 設 けて い るが,地 方 自治 体 の 補 助 金 につ いて(前 記 地 方 自治 法 の 規 定 以 外 に)こ の よ うな 一 般 規 定 は設 け られ て お らず,各 法 に よ り個 別 に規 定 が な され,又. は条 例 等 に. よ って 規 定 が 置 か れ て い る。 本 件 に お け る,職 員 の 派 遣 と その 派 遣 職 員 の 給 与 相 当額 を 補 助 金 に よ っ て 交 付 す る こ とに つ い て は,派 遣 法 第6条 第1項. に,「 派 遣 職 員 に は,そ. の 職 員 派 遣 の 期 間 中,給 与 を 支 給 しな い」 とす る規 定 を 設 けて お り,こ の こ とか ら外 郭 団 体(公 益 法 人)等 へ の 派 遣 職 員 に対 して 地 方 公 共 団 体 が 直 接 給 与 支 給 を 行 う こ とが 禁 止 され て お り,給 与 を 直 接 支 給 で きな い代 わ り に地 方 自治 法 第232条 の2の 規 定 に よ る補 助 金 と して 給 与 相 当額 を外 郭 団 体 等 に交 付 す る こ と は 「公 益 上 の 必 要 性 」 を 有 す るか ど うか につ いて 検 討 され な けれ ばな らな いが,地 裁 判 決 に お いて,給 与 相 当額 を 補 助 金 で 賄 う こ と 自体 は その 公 益 性 の 判 断 に よ って 適 法 とな る可 能 性 を 示 し(補 助 金 の 一 部 に つ い て は 適 法 な交 付 と して 認 め)な が ら も,「 公 益 上 の必 要 性 の 判 断 を経 た上 で の 補 助 金 支 出で はな く,地 方 公 共 団 体 の 職 員 と して の 給 与 支 給 の 代 替 と して その 人 件 費 相 当額 を 補 助 金 に よ って 支 出す るな ど地 方 公 共 団 体 か らの 給 与 支 給 その もの と 同視 で き る よ うな 補 助 金 の 支 出 は違 法 で あ る」,と した よ う に,補 助 金 交 付 の手 続 き にお い て 「公 益 上 の必 要 性 」 の 検 討 を行 っ た結 果 と して 外 郭 団 体 に派 遣 職 員 の 人 件 費 相 当額 を 補 助 金 と し て 交 付 す る場 合 は適 法 の 余 地 が あ る もの の,単 純 に補 助 金 制 度 を 使 い,派 遣 職 員 の 人 件 費 相 当額 を 外 郭 団 体 に交 付 す る こ と は,派 遣 法 第6条 第1項 に お い て,「 給 与 を 支 給 しな い」 とす る規 定 に照 ら して 違 法 で あ る と い う 124.

(17) 神戸市外郭団体第2次 訴訟 こ とが で き る と して い る もの と解 され る(高 裁,最 高 裁 も 同様 の 立 場)。 こ う した,派 遣 法 第6条 第1項 の 立 場 は,地 方 公 務 員 法 第24条 第1項 の ノー ワー ク ・ノー ペ イ の原 則(「 職 員 の 給 与 は,そ も の で な け れ ばな らな い。」)や,同. の職 務 と責 任 に応 ず る. 法 第35条 に お け る職 務 専 念 義 務(「 職. 員 は,法 律 又 は条 例 に特 別 の 定 が あ る場 合 を 除 く外,そ の 勤 務 時 間 及 び職 務 上 の 注 意 力 の す べ て を その 職 責 遂 行 の た め に用 い,当 該 地 方 公 共 団 体 が な す べ き責 を 有 す る職 務 にの み 従 事 しな けれ ばな らな い。」)等 の 規 定 を 考 慮 した もの で あ り,地 方 公 務 員 人 事 に お け る原 則 と も いえ るだ ろ う。 た だ し,派 遣 法 は第6条 第1項. の 例 外 規 定 を 同法 第6条 第2項. に設 け,「 派 遣. 職 員 が 派 遣 先 団 体 に お いて 従 事 す る業 務 が 地 方 公 共 団 体 の 委 託 を 受 けて 行 う業 務,地 方 公 共 団 体 と共 同 して 行 う業 務 若 し くは地 方 公 共 団 体 の 事 務 若 し くは事 業 を 補 完 し若 し くは支 援 す る と認 め られ る業 務 で あ って そ の 実 施 に よ り地 方 公 共 団 体 の 事 務 若 し くは事 業 の 効 率 的 若 し くは効 果 的 な 実 施 が 図 られ る と認 め られ る もの で あ る場 合 又 は これ らの 業 務 が 派 遣 先 団 体 の 主 た る業 務 で あ る場 合 に は,地 方 公 共 団 体 は,前 項 の 規 定 にか か わ らず,派 遣 職 員 に対 して,そ の 職 員 派 遣 の 期 間 中,条 例 で 定 め る と こ ろ に よ り,給 与 を 支 給 す る こ とが で き る」 と規 定 し,特 定 の 場 合 に は給 与 の 直 接 支 給 を 認 めて い る と され るが,こ. こで の 規 定 は,地 方 公 共 団 体 にお いて 職 員 が 職. 務 遂 行 を す る こ と に よ って 事 業 等 に及 ぼす 効 果 と派 遣 先 にお いて 職 務 遂 行 を す る こ と に よ り同様(又. は それ 以 上)の 効 果 を 及 ぼ す 場 合 に は,直 接 給. 与 支 給 を 行 う こ とが 可 能 で あ る と され る もの で あ り,直 接 給 与 支 給 を 行 う こ とが可 能 で あ る時 に直 接 支給 せ ず に派 遣 先 に対 して(給 与 相 当 額 を含 む) 補 助 金 の 交 付 を 行 う こ と は可 能 な の か(直 接 支 給 が 認 め られ て い る以 上, そ の よ うな非 効 率 な 方 法 に よ る給 与 支 給 を行 う とは 考 え に くい が),こ. の. 場 合(職 員 の 派 遣 先 業 務 へ の 従 事 に よ り同等 又 はそ れ 以 上 の 効 果 が 見 込 め る よ うな場 合)に お いて,「 公 益 上 の 必 要 性 」 の判 断 を 適 切 に行 わ ず に補 125.

(18) 近畿大学法学. 第60巻 第3・4号. 助 金 の 交 付 が な され た と して も,直 接 の 支 給 と 同等 の 効 果 と して 補 助 金 交 付 が 認 め られ う るの か,検 討 され る余 地 が あ る と思 わ れ る。 この 点 の 検 討 につ いて は,派 遣 法 が 原 則 と して 派 遣 職 員 へ の 給 与 支 給 を 禁 止 して い る こ とか ら補 助 金 交 付 を も含 む 実 体 と して 給 与 支 給 を 行 う こ と 自体 が 禁 止 され て い る と い う立 場 と,補 助 金 に よ る給 与 の 代 替 支 給 につ いて の 定 めが な い こ と か ら,(派 遣 法 の立 法 時 の 趣 旨説 明等 か ら)派 遣 法 や 補 助 金 の交 付 に つ いて は各 地 方 自治 体 の 判 断 に よ る と い う立 場 の 間 で 議 論 の 分 か れ る と こ ろで あ ろ う。. 争点②. 住民訴訟. 住 民 訴 訟 とは,「 住 民 か らの請 求 に基 づ いて,地. 方 公 共 団体 の執 行 機 関. 又 は職 員 の 行 う違 法 ・不 当な 行 為 又 は怠 る事 実 の 発 生 を 防 止 し,又 は これ らに よ って 生 じる損 害 の 賠 償 等 を 求 め る こ とを 通 じて,地 方 公 共 団 体 の 財 務 の 適 正 を 確 保 し,住 民 全 体 の 利 益 を 保 護 す る こ とを 目的 とす る制 度 」④ と され て い る。 こ の制 度 は,地 方 自治 法 第242条 の2に 定 め られ て お り,こ こで は,「 普 通 地 方 公 共 団体 の住 民 は,前 条 第一 項(監 査 請 求 制 度(5))の 規 定 に よ る請 求 を した場 合 に お いて,… … 裁 判 所 に対 し,同 条 第 一 項 の 請 求. (4)http://www.soumu.go.jp/main (5)地 方 自治 法 第242条 第1項. _content/000071219.pdfQ 「普 通 地 方 公 共 団 体 の 住 民 は,当 該 普 通 地 方 公 共. 団 体 の 長 若 し くは委 員 会 若 し くは委 員 又 は 当 該 普 通 地 方 公 共 団 体 の 職 員 につ い て,違 法 若 し くは不 当 な 公 金 の 支 出,財 産 の 取 得,管 理 若 し くは処 分,契 約 の 締 結 若 し くは履 行 若 し くは 債 務 そ の 他 の 義 務 の 負 担 が あ る(当 該 行 為 が な され る こ と が相 当 の確 実 さを もつ て 予測 され る場 合 を含 む。)と 認 あ る と き,又 は 違 法 若 し くは不 当 に公 金 の 賦 課 若 し く は徴 収 若 し くは 財 産 の管 理 を 怠 る事 実 (以下 「怠 る事 実 」 とい う。)が あ る と認 め る と き は,こ れ らを 証 す る書 面 を 添 え,監 査 委 員 に対 し,監 査 を 求 め,当 該 行 為 を 防 止 し,若 し くは是 正 し,若 くは当 該 怠 る事 実 を 改 め,又. し. は当 該 行 為 若 し くは怠 る事 実 に よつ て 当 該 普 通 地. 方 公 共 団 体 の こ うむ つ た 損 害 を 補 填 す るた め に必 要 な 措 置 を 講 ず べ き こ とを 請 求 す る こ とが で き る」。. 126.

(19) 神戸市外郭団体第2次 訴訟 に係 る違 法 な 行 為 又 は怠 る事 実 につ き,訴 え を もつ て 次 に掲 げ る請 求 を す る こ とが で き る」 と定 め,1号 住 民 訴 訟 制 度 は,本 来,i住. か ら4号 まで の請 求 を定 めて い る(6)。 ま た, 民 の 直 接 参 加 の 手 段,ii地. 方公共の利益の擁. 護,iii財 務 会 計 の 管 理 ・運 用 に対 す る司 法 統 制 の 手 段 と して の 意 義 を 有 す る も の と して考 え られ て い た(7)。本 件 で は,こ. の 中 で4号. にあ た る請 求 に. よ り訴 訟 提 起 され た もの で あ る。 住 民 訴 訟 の 提 起 は,条 文 の 通 り監 査 請 求 に お いて な され た請 求 に対 して 監 査 結 果 に不 服 が あ る場 合 に,違 法 な 財 務 会 計 行 為 につ いて 行 う こ とが で き る もの(監 査 請 求 前 置 主 義)で. あ る。. 本 件 に お いて 問 題 とな って い る4号 請 求 につ いて は,2002(平. 成14)年. の 地 方 自治 法 改 正(同 年9月1日. 施 行)に. よ って 従 来 の 「違 法 な 財 務 会 計. 行 為 を 行 っ た原 因 者(職 員 等)に 直 接(損 害 賠 償,不 当 利 得 返 還)請 求 す る」 と され て い た もの(旧4号. 請 求)が,新4号. 請 求 にお いて は,住 民 が. 原 告 と して行 う訴 訟 は,地 方 自治 体 等 に 対 して,「 職 員 等 の行 った違 法 な 財 務 会計 行 為 につ いて,地 方 自治 体 等 が そ の 損害 請 求 す る こ とを 請 求 す る」 もの とな り,訴 訟 に勝 訴 した場 合 は,地 方 公 共 団 体 等 が 違 法 な 財 務 会 計 行 為 の 原 因 者 に対 して 損 害 賠 償 等 の 請 求 を す る こ と と され て い る。 この 改 正 は,住 民 に よ る直 接 請 求 が 首 長 を は じめ とす る職 員 の 負 担 にな る と い う第. (6)地 方 自治 法 第242条 の2 1当. 該 執 行 機 関 又 は 職 員 に対 す る当 該 行 為 の 全 部 又 は一・ 部の差止めの請求。. 2行. 政 処 分 た る当 該 行 為 の 取 消 し又 は無 効 確 認 の 請 求 。. 3当. 該 執 行 機 関 又 は 職 員 に対 す る当 該 怠 る事 実 の 違 法 確 認 の 請 求 。. 4当. 該 職 員 又 は 当 該 行 為 若 し くは怠 る事 実 に係 る相 手 方 に損 害 賠 償 又 は 不 当. 利 得 返 還 の 請 求 を す る こ とを 当 該 普 通 地 方 公 共 団 体 の 執 行 機 関 又 は 職 員 に対 して 求 め る請 求 。 た だ し,当 該 職 員 又 は 当 該 行 為 若 し くは怠 る事 実 に係 る相 手 方 が 第243条 の2第3項. の 規 定 に よ る賠 償 の命 令 の 対 象 と な る者 で あ る場. 合 にあ つ て は,当 該 賠 償 の 命 令 を す る こ とを 求 め る請 求 。 (7)成. 田頼 明 「 地 方 自治 の保 障 《著 作 集 》」(第 一 法 規,2011年)458頁(成[H頼. 明 「住 民 訴 訟(納 税 者 訴 訟)」 『行 政 法 講 座3」 掲 載 分)。. 127.

(20) 近畿大学法学. 第60巻 第3・4号. 26次 地 方 制 度 調 査 会 の 答 申(8)にお いて 指 摘 され て い る点 等 が 考 慮 され た も の で は あ るが,今. まで の 違 法 な 財 務 会 計 行 為 の 原 因 た る個 人 に対 す る訴 訟. か ら,そ の原 因 た る個 人 に賠 償 請 求 等 を(地 方 公 共 団 体 や そ の 執行 機 関等) す る こ との 請 求 と して の 訴 訟(相 手 方 が 地 方 公 共 団 体 や その 執 行 機 関 等) に変 わ っ た こ とか ら,地 方 公 共 団 体 が 訴 訟 対 策 を す る こ と等,住 民 に と っ て は改 悪 とな っ た との 批 判 も あ る(9)。 本 件 高 裁 判 決 に お い て は,「 住 民 訴 訟 の 制 度 は,執 行 機 関 又 は職 員 の 財 務 会 計 上 の 行 為 又 は怠 る事 実 の 適 否 な い しその 是 正 の 要 否 につ いて,地 方 公 共 団 体 の 判 断 と住 民 の 判 断 が 相 反 して 対 立 し,当 該 地 方 公 共 団 体 が その 回 復 の 措 置 を 講 じな い場 合(即. ち,執 行. 機 関,議 会 が その 与 え られ た職 責 を 十 分 果 た さな い場 合 に生 ず る もの で あ る。)に,住. 民 が これ に代 わ って 提 訴 して,自. らの 手 に よ り違 法 の 防 止 又. は回 復 を 図 る こ とを 目的 とす る もの で あ り,違 法 な 財 務 会 計 上 の 行 為 又 は 怠 る事 実 につ いて,最 終 的 に は裁 判 所 の 判 断 に委 ね て 判 断 の 客 観 性 と措 置 の 実 効 性 を 確 保 しよう とす る ものであ る」 として,そ の趣 旨 を重 視 してい る。 本 件 に お いて は,議 会 の 議 決 との 関 係 で,住 民 訴 訟 制 度 の 意 義 等 と議 会 の 議 決 の ど ち らを 優 先 す るべ きか 等 が 問 題 とな る と こ ろで あ るが,こ の 点 につ いて は後 述 す る。. 争点③. 議会の議決. 地 方 議 会 に お け る議 決 権 は議 事 機 関 た る議 会 の 本 来 的 な 権 限 で あ り,議. (8)平 成12年10月25日. 第26次 地 方 制 度 調 査 会 答 申 「地 方 分 権 時 代 の 住 民 自治 制. 度 の あ り方 及 び地 方 税 財 源 の 充 実 確 保 に関 す る答 申」 第1自 己 決 定 ・自己 責 任 の 原 則 を 踏 まえ た 地 方 分 権 時 代 の 住 民 自治 制 度 の あ り方,1住. 民 自治 の 更 な る. 充 実 方 策,(3)住 民 監 査 請 求 制 度 ・住 民 訴 訟 制 度,③ 住 民 訴 訟 にお け る訴 訟 類 型 の再構成。 (9)阿 部 泰 隆. 白藤 博 行 「住 民 訴 訟 と議 会 と首 長 一 議 会 の 損 害 賠 償 請 求 権 放 棄 の. 論 点 と首 長 の 責 務 一 」(地 域 科 学 研 究 会,2011年)2頁 128. 。.

(21) 神戸市外郭団体第2次 訴訟 会 の 権 限 の 中心 に位 置 付 け られ て い る もの で あ る。 地 方 公 共 団 体(地 方 公 共 団 体 の 住 民)の 意 思 の す べ て を 決 定 す る権 限 が 議 会 に存 在 す るわ けで は な いが,現 在 の 地 方 自治 の あ り方 に お いて は条 例 制 定 権 や 予 算 議 決 権,そ して これ らの 権 限 を 背 景 と した議 会 と首 長 との 利 害 調 整 等 に よ り地 方 公 共 団 体 の 基 本 的 な 方 向 性 が 議 会 に お いて 決 定 され て い るた め,議 会 の 議 決 権 は地 方 公 共 団 体 の 運 営 に欠 か せ な い もの の 一 つ で あ る。 地 方 自治 法 で は第 96条 第1項 各 号 に議 決事 件 に か か る議 会 の議 決 権 が列 挙 され て い る⑩。 こ. ⑩. 地 方 自治 法 第96条 第1項. に は,議 会 の 議 決 事 件 と して 以 下 の15項 目を 制 限 列. 挙 して い る。(ま た,第2項. にお いて,条. 例 で 議 決 事 件 を追 加 す る こ とが で き. る と され て い る)。 1条. 例 を 設 け又 は改 廃 す る こ と。. 2予. 算 を 定 あ る こ と。. 3決. 算 を 認 定 す る こ と。. 4法. 律 又 は これ に基 づ く政 令 に規 定 す る もの を 除 くほか,地 方 税 の 賦 課 徴 収. 又 は分 担 金,使 用 料,加 入 金 若 し くは手 数 料 の 徴 収 に関 す る こ と。 5そ. の 種 類 及 び 金 額 につ い て 政 令 で 定 め る基 準 に従 い条 例 で 定 め る契 約 を 締. 結 す る こ と。 6条. 例 で 定 あ る場 合 を 除 くほか,財 産 を 交 換 し,出 資 の 目的 と し,若. し くは. 支 払 手 段 と して 使 用 し,又 は適 正 な 対 価 な く して これ を 譲 渡 し,若 し くは貸 し付 け る こ と。 7不. 動 産 を 信 託 す る こ と。. 8前2号. に定 め る もの を 除 くほか,そ の 種 類 及 び金 額 につ い て 政 令 で 定 め る. 基 準 に従 い 条 例 で 定 め る財 産 の 取 得 又 は 処 分 を す る こ と。 9負. 担 付 きの 寄 附 又 は贈 与 を 受 け る こ と。. 10法. 律 若 し くは これ に基 づ く政 令 又 は条 例 に特 別 の 定 め が あ る場 合 を 除 くほ. か,権 利 を 放 棄 す る こ と。 11条. 例 で 定 あ る重 要 な 公 の 施 設 につ き条 例 で 定 あ る長 期 か つ 独 占的 な 利 用 を. させ る こ と。 12普. 通 地 方 公 共 団 体 が そ の 当 事 者 で あ る審 査 請 求 そ の 他 の 不 服 申立 て,訴 え. の 提 起,和 解),あ. っせ ん,調 停 及 び 仲 裁 に関 す る こ と。. 13法. 律 上 そ の 義 務 に属 す る損 害 賠 償 の 額 を 定 あ る こ と。. 14普. 通 地 方 公共 団体 の 区域 内の 公 共 的 団体 等 の活 動 の 総 合調 整 に関 す る こ と。. 15そ. の 他 法 律 又 は これ に基 づ く政 令(こ れ らに 基 づ く条 例 を含 む。)に よ り. 議 会 の 権 限 に属 す る事 項 。 129.

(22) 近畿大学法学. 第60巻 第3・4号. こで は,条 例,予 算,決 算 と い っ た立 法 機 関 と して 当然 の 機 能(1号 号)に 加 え て,個 別 の 法 政 決 定 につ いて も議 決 権 限 を 与 え て い る(4号. ∼3 以. 下)(ID。本 件 で は,条 例 改 正 と い う手 続 き に よ って な さ れ た 権 利 放 棄 議 決 (第10号 議 決)に あ た る た め,条 例 制 定 権,債. 権 放 棄 議 決 につ い て説 明 す. る。 憲 法 第94条 は地 方 公 共 団 体 が 法 律 の 範 囲 内で 条 例 を 制 定 す る こ とが で き る 旨 を規 定 して い る。 そ して,地 方 自治 法 第96条 第1項 第1号. に は 「条 例. を設 け ま た は改 廃 す る こ と」 は,議 会 の 権 限 と して い る。 条 例 は,地 方 自 治 体 が 制 定 す る法 令 の 一 形 態 で あ り,住 民 の 直 接 選 挙 に よ り選 出 さ れ た (住 民 の 代 表 者 た る)議 員 に よ って 構 成 さ れ る議 会 で 定 め られ る。 条 例 制 定 権 に関 して は大 日本 帝 国 憲 法 下 に お いて も府 県,市 町 村 に認 め られ,そ れ ぞれ 条 例 や 規 則 を 制 定 す る こ とが で き た。 しか し,こ の 時 の 府 県 等 の 条 例 制 定 権 は,地 方 公 共 団 体 が 処 理 す る事 務 の 範 囲 が 限 定 され,条 例 や 規 則 で 規 定 で き る事 項 の 範 囲 も限 られ て お り罰 則(の 規 定)を 設 け る こ と は認 め られ て いな か っ た。 一 方,日 本 国 憲 法 下 で は,地 方 公 共 団 体 の 条 例 制 定 権 に関 して 憲 法 に規 定 が 置 か れ,ま. た地 方 公 共 団 体 の 処 理 す る事 務 の 範 囲. の 拡 大 が な され る こ と に よ り,憲 法 や 国 の 法 令 に違 反 しな い限 り条 例 を 制 定 す る こ とが 認 め られ た⑫。 Gl)飯 島 淳 子 「議 会 の 議 決 権 限 か らみ た 地 方 自治 の 現 状 」 論 究 ジ ュ リス ト2012年 秋 号131頁 。 ⑫. 条 例 と同 じ く地 方 公 共 団 体 の 規 範 の 一 つ に首 長 に よ る規 則 の 制 定 が あ る。 首 長 が 制 定 す る規 則 には,条 例 の 委 任 を 受 けて 制 定 され る もの,条 例 を 執 行 す る た あ に制 定 され る もの,地 方 公 共 団 体 の 内 部 的 な 事 項 の 管 理 運 営 に関 す る もの 等 が あ り,条 例 と規 則 の 関 係 は国 にお け る法 律 と政 省 令 との 関 係 と は異 な る。 規 則 の 制 定 は首 長 の 権 限 の 範 囲 内 の 事 項 につ き定 め る こ とが で き るが,首 長 の 権 限 が地 方 公 共 団 体 の 事務 の広 範 囲 に及 ぶ た め規 則 の制 定 事 項 も広 範 囲 とな る。 地 方 分 権 一 括 法 の 制 定 や 分 権 改 革 の 推 進 に伴 い 自治 体 の 事 務 権 限 は さ ら に広 範 囲 に渡 る今 日,首 長 に よ る規 則 の 制 定 は議 会 に よ る条 例 の 制 定 と同 じ く自治 体 の 運 営 に欠 か せ な い もの とな って い る。. 130.

(23) 神戸市外郭団体第2次 訴訟 条 例 に は必 要 的 条 例 事 項 が あ り,地 方 自治 法 第14条 第2項. にお いて 「義. 務 を 課 し,又 は 権 利 を 制 限 す る事 項 で,法 令 に特 別 の定 め が な い もの」⑬ と 定 めて い るが,こ れ 以 外 の 事 項 につ いて 条 例 で 定 め る こ とを 禁 止 して い る もの で はな い。 必 要 的 条 例 事 項 につ いて は,地 方 自治 法 以 外 の 法 令⑭ に よ る定 め も あ るが,地 方 自治 法 に お いて は,例 え ば議 会 議 員 の 定 数 に関 す る 条 例 ⑮,議 会 の議 決 を要 す る事 項 に 関 す る条 例 ⑯,議 会 の 委 員 会 に関 す る条 例 ⑰ 等 数 多 く存 在 す る。 ま た,地 方 自治 法 第14条 第3項. にお いて,条 例 に. よ り刑 罰 を 科 す こ と も可 能 とな って い る⑱。 条 例 の 制 定 につ いて は,そ の 手 続 に関 して,提 案 権 につ いて は一 般 的 に 首 長 と議 会 双 方 が 有 す る もの で,条 例 に よ って はそ れ ぞ れ 専 属 す る提 案 権 が 存 在 す る。 首 長 に専 属 す る もの と して は,行 政 機 関 の 設 置 に関 す る条 例 等 ⑲ 地 方 公 共 団 体 の 執 行 機 関 に関 す る もの が 挙 げ られ る。 議 会 に専 属 す る もの と して は,常 任 委 員 会,議 会 運 営 委 員 会 等 の 設 置 に関 す る条 例⑳ 等 議 会 の 運 営 に関 す る もの が 挙 げ られ る。 次 に,条 例 案 の 議 決 につ いて は,条 ⑬. 地 方 自治 法 第14条 第2項 。. ⑭. 警 察 法,地 方 公 務 員 法,地 方 公 営 企 業 法,消 防 組 織 法 等 。. ⑮. 地 方 自治 法 第90条,第91条. ⑯. 地 方 自治 法 第96条 第1項 第5号,第6号,第8号,第11号,第96条. ⑰. 地 方 自治 法 第109条 第1項 一 第3項,第109条 第1項,第3項,第111条. 。 第2項 。. の2第1項,第2項,第110条. 。. q8)地 方 自治 法 第14条 第3項 普 通 地 方 公 共 団 体 は,法 令 に特 別 の 定 め が あ る もの を 除 くほか,そ の 条 例 中 に,条 例 に違 反 した者 に対 し,2年. 以 下 の 懲 役 若 し くは禁 鋼,100万. 円以下の. 罰 金,拘 留,科 料 若 し くは没 収 の 刑 又 は5万 円以 下 の 過 料 を 科 す る 旨の 規 定 を 設 け る こ とが で き る。 ⑲. 地 方 自治 法 第156条 第1項,第2項,こ. の ほ か,地 方 公 共 団体 の長 の 直 近 下. 位 の 内 部 組 織 の 設 置 及 び そ の 分 掌 す る事 務 に関 す る条 例(同 法 第158条 第1項) 等 が あ る。 ⑫ ① 地 方 自治 法 第109条 第1項 一 第3項,第109条 第1項,第3項,第111条,こ 例(同 法138条 第2項)等. の ほ か,市 が あ る。. 131. の2第1項. 一 第3項,第110条. 町村 の議 会 事 務 局 の 設 置 に 関 す る条.

(24) 近畿大学法学. 第60巻 第3・4号. 例 案 の 議 決 は,他 の 議 案 と 同様 「出席 議 員 の 過 半 数 で これ を 決 す る⑳ と さ れ るが,首 長 が 条 例 案 を 再 議 に付 した場 合 等 につ いて は,出 席 議 員 の3分 の2以 上 の 多 数 の 同意 が 必 要 にな る。 条 例 は,こ の よ う に議 会 の 議 決 に よ り成 立 す るの で あ るが,議 会(の 定 足 数)が 成 立 しな い時,議 会 を 招 集 す る暇 が な い時 等 は,首 長 は その 権 限 に よ り議 決 す べ き事 件 を 処 分(専 決 処 分)す. る こ と が で き⑳。 こ の専 決 処 分 に よ る時 は,事 後 に議 会 に報 告 し,. その 承 認 を 求 めな けれ ばな らな い。 この 後,条 例 は公 布 及 び施 行 等 の 順 序 に よ り,効 力 を 有 す る㈱。 本 件 に お いて 争 点 とな って い る,地 方 自治 法 第96条 第1項 第10号 に規 定 され て い る権 利 放 棄 の 議 決(法 律 若 し くは これ に基 づ く政 令 又 は条 例 に特 別 の 定 めが あ る場 合 を 除 くほか,権 利 を放 棄 す る こ と。⑳)に つ い て は,第 29次 地 方 制 度 調 査 会 答 申 に お い て,「4号. 訴 訟 で 紛 争 の 対 象 とな って い る. 損 害 賠償 又 は不 当 利 得返 還 の請 求 権 を 当該 訴 訟 の 係 属 中 に放 棄 す る こ とは, 住 民 に対 し裁 判 所 へ の 出訴 を 認 め た住 民 訴 訟 制 度 の 趣 旨を 損 な う こ と とな りか ね な い。 こ の た め,4号. 訴 訟 の 係 属 中 は,当 該 訴 訟 で紛 争 の 対 象 と. な って い る損 害 賠 償 又 は不 当利 得 返 還 の 請 求 権 の 放 棄 を 制 限 す る よ うな 措. ⑳. 地 方 自治 法 第116条 第1項 。. ⑳. 地 方 自治 法 第179条 。. ㈱. 本 件 にお い て は,議 会 議 決 後,条 例 が 効 力 を 生 じ債 権 放 棄 議 決 が 成 立 した か ど うか も争 点 の 一 つ とな って い る。. ⑳. 法 令 に よ って 特 別 の 定 め が あ り個 別 的 に放 棄 の 議 決 を 行 わ な くて よ い場 合 に つ いて は,「 地 方 税 に つ い て 条 例 の 定 あ る と こ ろに よ り減 免 す る場 合(地 方 税 法 第61条,第72条. の62等),分. 担金,使. 用 料,加. 入 金 及 び手 数 料 に 関 す る条 例. で 定 め て 減 免 す る場 合(地 方 自治 法 第228条 第1項),自. 治 法 及 び 地 方 自治 法 施. 行 令 の 規 定 に よ る債 権 に係 る債 権 の 免 除(地 方 自治 法 第240条 第3項,地. 方自. 治 施 行 令 第171条 の7),議. 会 の 同 意 を 得 て 行 う職 員 の 賠 償 責 任 の 免 除(地 方 自. 治 法 第243条 の3第8項)」. 等 が あ る(松 本 英 昭 「 要 説 地 方 自治 法 〔 第7改. 版 〕」(ぎ ょ うせ い,2011年)340頁)。 132. 訂.

(25) 神戸市外郭団体第2次 訴訟 置 を 講 ず るべ きで あ る」㈱と して,議 会 の議 決 権 の制 限 の可 能 性 が 示 され て い る もの の,議 会 の 議 決 権 につ いて は,議 会 が 住 民 を 代 表 して 意 思 表 明 を す る機 関 で あ る こ とか ら,そ の 議 会 が な す 意 思 表 明 と して の 議 決 につ いて は広 く裁 量 を認 め よ う とす る方 向性 が 本件 最 高 裁判 決 等 か ら もみ られ る醐 。. 究. 4.研. a.本. 件 に関 連 す る判 例. 本 件 に関 連 す る判 例 と して は,派 遣 法 制 定 の 契 機 とな った 茅 ヶ崎 市 最 高 裁 判 決(平 成10年4月24日. 判 時1640号115頁),補. 助 金 の 公 益 性 判 断 に関 す. る下 関 第 三 セ ク ター 補 助 金 広 島高 裁 判 決(平 成13年5月29日 頁),派. 判 時1756号66. 遣 職 員 に対 す る給 与 相 当 額 の 補 助 金 交 付 に 関 す る埼 玉 県 久 喜 市 東. 京 高 裁 判 決(平 成19年3月28日. 判 タ1264号206頁),議. 決 の 議 決 と住 民 訴 訟. に関 す る千 葉 県 鋸 南 町 東 京 高 裁 判 決(平 成12年12月26日 判 時1753号35頁), 浄 水 場 用 地 過 大 購 入 に関 す る さ く ら市(旧 氏 家 町)東 京 高 裁 判 決(平 成21 年12月24日 判 自335号10頁),警. ㈱. 平成21年6月16日. 察 法 改 正 無 効 訴 訟(最 大 判 昭 和37年3月7. 第29次 地方 制 度調 査 会 答 申 「今 後 の基 礎 自治 体 及 び監 査 ・. 議 会 制 度 の あ り方 に関 す る答 申」。 ⑫ ③ 下 級 審 の 判 例 にお い て は東 京 高 裁 判 決 平 成12年12月26日(判 東 京 高 裁 判 決 平 成19年3月28日(判. 夕1264号206頁)に. 時1753号35頁),. お い て も同 様 の派 遣 職. 員 の 給 与 相 当 額 分 の 補 助 金 交 付 に関 す る事 件 にお いて 議 会 の 議 決 の 裁 量 を 広 く 解 して い る もの と思 わ れ る。 ⑳. 一 方 で,権 利 放 棄 の 議 決 に つ い て は,こ の議 決 が原 理 的 な 反 「 住 民 訴 訟 」性 ・ 違 法 性 を 有 す る もの で あ る と して,権 利 放 棄 の 議 決 につ い て は 制 限 を 加 え る又 は 廃 止 す る等 の 意 見 もあ る(兼 子 仁 「住 民 訴 訟 請 求 権 の 放 棄 議 決 を め ぐる法 制 問 題 」 自治 総 研 通 巻406号(2012年8月)51頁,斎 会 の 請 求 権 放 棄 」 法 学 教 室353号(2010年2月)3頁,阿. 藤誠 「 住 民 訴 訟 に お け る議 部 泰 隆 「地 方 議 会 に. よ る地 方 公共 団 体 の 賠 償 請 求権 の 放 棄 は首 長 の ウル トラCか(上)」 85巻8号(2009年8月)30頁)。. 133. 自治 研 究.

(26) 近畿大学法学. 第60巻 第3・4号. 日民 集16巻3号445頁)な 3-bに. どが あ る。. 挙 げ た 争 点 ① 職 員 の 派 遣 と補 助 金,②. 住 民 訴 訟,③. 議会 の議決. に照 ら しな が ら以 下 関 連 判 例 等 につ いて 述 べ る。. a-1.①. の点. 職 員 の 派 遣 に関 して,茅. ヶ崎 市 最 高 裁 判 決 に お いて は,地 方 公 務 員 法 第. 35条 に定 め られ た職 務 専 念 義 務 に対 す る特 例 と して の 条 例 に よ る義 務 免 除 と ノ ー ワー ク ・ノー ペ イ原 則 を 定 め た地 方 公 務 員 法 第24条 第1項 等 が 問 題 とな っ たが,最 高 裁 は派 遣 職 員 の 給 与 の 支 給 につ いて は,派 遣 に関 して の 職 務 専 念 義 務 の 免 除 の 適 法 な 承 認 と と も に,地 方 公 共 団 体 の 業 務 で はな く 派 遣 先 の 業 務 に専 念 させ る場 合 に は,派 遣 先 の 業 務 内容 等 と地 方 公 共 団 体 の 業 務 との 関 連 や 派 遣 先 業 務 に従 事 させ る こ と に よ る効 果 等 を 検 討 す る, つ ま り地 方 公 共 団 体 が 職 員 を 派 遣 す る こ と につ いて の 公 益 上 の 必 要 性 の 検 討 が 必 要 とな る こ とを 示 した。 こ こで 示 され た もの は,職 員 派 遣 の 適 法 性 が 認 め られ な けれ ば給 与 の 支 給 が で きな い と い う もの で,換 言 す れ ば派 遣 の 適 法 性 が 認 め られ た場 合 の 職 員 の 給 与 支 給 につ いて は認 め られ る もの と 解 す る こ と が で き る㈱。 こ の点,こ. の最 高 裁 判 決 を契 機 と して 制 定 され た. 派 遣 法 に お いて も,そ の 第6条 第2項. に お いて 派 遣 職 員 の 給 与 の 支 給 につ. いて の 例 外 を 定 め,こ こで 適 法 な 職 員 の 派 遣 につ いて は給 与 を 支 給 す る こ とが で き る と して い る こ とか らも その よ う に解 す る こ とが で き る。 派 遣 法 制 定 まで は,地 方 公 共 団 体 が 各 団 体 に対 して 職 員 の 派 遣 を 行 う場 合 は,各. ⑱. た だ し,茅. ヶ崎 市 最 高 裁 判 決 で は,給 与 支 給 に 関 して,職 員 派 遣 が 適 法 で. あ った 場 合 は無 条 件 で 給 与 支 給 が 可 能 で あ るの か 否 か 検 討 され て い な い。 この 点,給 与 の 支 給 につ い て は 条 例 で 定 め る とす る規 定(地 方 自治 法 第204条 の2, 地 方 公 務 員 法 第24条 第6項)に. 照 ら して そ の 手 続 の 必 要 性 の 問 題 が 指 摘 され る. (地方 自治 判 例 百 選141頁)。. 134.

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