多職種連携教育の効果を検証する科学的研究の取組
WHO協力センター活動の一環として
渡邊 秀臣
1 群馬県前橋市昭和町3-39-22 群馬大学大学院保 学研究科リハビリテーション学講座 2 群馬県前橋市昭和町3-39-22 群馬大学多職種連携教育研究研修センター 1.はじめに 平成25年7月に群馬大学は世界保 機関 (WHO) より正 式な協力センター (WHO Collaborating Centre:WHO CC) に指定されて,「WHO Collaborating Centre for Research and Training on Interprofessional Education」となった.こ れまで保 学科が培ってきた多職種連携教育/チーム医療 教育/Interprofessional Education (IPE) がこの活動の核と なり, WHOと協力して IPE の研究と研修を行うために, この実行組織として「多職種連携教育研究研修センター」 が設置された. 本学 WHO CC は, 1) IPE 促進のためのシ ンポジウムの開催, 2) IPE の効果の検証研究, 3) アジア 地域での IPE 研修の実施であり, IPE の効果の検証研究は 大きな柱と位置づけられている. 2.多職種連携教育の重要性とその科学的研究の国際的背景 2010年にすべての保 職業人に対する新しい教育を検 討する委員会 Commission on Education of Health Profes-sionals for the 21st Centuryが国際的に組織され,21世紀の 医学保 学教育の指針が示され, 特にチームワーク力の乏 しさが強調されて IPE の重要性が示された. 一方, WHOは良質な保 人材の育成を喫緊の課題とし, 2013年 11月 に保 人材養成ガイドライン, Transforming and Scaling up Health Professional Education and Training: WHO global guidelines 2013を発行した. このガイドラインでは 地域・社会が要請する保 人材を養成するために 11の推奨 項目 (recommendations) を掲げているが, その一つに IPE が挙げられた. しかしながら, ガイドラインでは科学的検 証に基づく IPE の教育効果あるいは成果, つまり研究に基 づくエビデンスが乏しい事が指摘されている. 3.群馬大学の多職種連携教育の教育効果 群馬大学保 学科の IPE は,1年次における講義「全人的 医療論/チームワーク原論」と 3年次の実習科目「チーム ワーク実習」(平成 20年からは 2年生,本年からは 4年生の 医学科学生が参加) で構成されている. IPE といっても, 教 育内容は著しく異なるものなので, 本学の特徴あるいは他 学との共通性を確認するために, IPE で文部科学省から GPに認定された 10の大学の教育内容を比較しながら, そ れぞれの教育内容を詳細に記載した英文書籍を発行した. 学生人数も 75名程度から 1,200名を超える大学もあった. また, 期間も 2日間から 4年間と多様性に富んでいた. い ―231― 文献情報 投稿履歴: 受付 平成27年5月14日 修正 平成27年5月20日 採択 平成27年6月4日 論文別刷請求先: 渡邊秀臣 〒371-8514 群馬県前橋市昭和町3-39-22 群馬大学大学院保 学研究科リハビリテー ション学講座 電話:027-220-8945 E-mail:watanabeh@gunma-u.ac.jp
流 れ
2015;65:231∼232ずれも独自の基準ながら教育効果を認めていた. こうして 教育内容の英文化が実現したので, 学生の理解度を 10項 目で評価させた 9 年間のデータを WHOの協力の下に解 析し, WHOの official journalに報告した. ここで明らか になったことは, 学生が本実習を 4つの因子 (役割と責任, 連携とチームワーク, 専門職の独自性, 実習施設) で理解し ていることで, それぞれの内容を IPE には含める必要があ ることが示唆された. 現在これらの因子ごとの関連性につ いて詳細な検討を行っている.一方,本学の IPE が,学生の 多職種連携そのものに対する態度に及ぼす影響について, Curran 等が報告した質問項目 (Attitudes toward Health Care Team Scale:ATHCTS) を用いて解析した. 興味深い ことに, 3年次の実習では有意な差を持ってポジティブな 変化が見られたが, 1年次の講義では返ってネガテイブに 変化していた. このことは縦型の経時的な研究からも証明 され, 入学時に多職種連携に対して過度に期待することに よると えている. 一方, 卒業して臨床の現場ですでに働 いている卒業生と実習直後の学生の態度を比べると有意差 を持って, 卒業生の多職種連携に対する価値の評価態度は 低下していた. 卒後の臨床現場での IPE の重要性が示唆 されたと えている. 今後は, まだ IPE を取り入れていな い大学との比較や本学と異なる教育内容を実施している大 学との比較から, IPE の共通の効果あるいはそれぞれの教 育の独自性に基づく利点・欠点を明らかにして, 効率的で 有効な教育内容の充実に努めてゆきたいと える. 文献
1. Frenk J,Chen L,Bhutta ZA,et al. Health professionals for a new century:transforming education to strengthen health systems in an interdependent world. Lancet 2010; 376: 1928-1958.
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