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理科授業における探究の過程の重点化に関する研究―解決方法の立案に着目して―

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理科授業における探究の過程の重点化に関する研究

―解決方法の立案に着目して―

山 内 宗 治・益 田 裕 充・上 原 永 次

日 暮 利 明・倉 林 凌 佑

群馬大学教育実践研究 別刷

第38号 75~82頁 2021

群馬大学共同教育学部 附属教育実践センター

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理科授業における探究の過程の重点化に関する研究

―解決方法の立案に着目して―

山 内 宗 治

1)

・益 田 裕 充

2)

・上 原 永 次

3)

日 暮 利 明

3)

・倉 林 凌 佑

4) 1)広島県立黒瀬特別支援学校 2)群馬大学共同教育学部理科教育講座 3)群馬大学共同教育学部附属教育実践センター 4)群馬県太田市立毛里田小学校 理科授業における探究の過程の重点化に関する研究 山内宗治・益田裕充・上原永次・日暮利明・倉林凌佑

A Study on process of the research of the science class

Souji YAMAUCHI

1)

, Hiromitsu MASUDA

2)

, Eiji UEHARA

3)

Toshiaki HIGURE

3)

, Ryosuke KURAHAYASHI

4) 1)Hiroshima Prefectural Kurose Special Support School

2)Department of Science Education, Cooperative Faculty of Education, Gunma University 3)Center of Educational Research and Practice, Cooperative Faculty of Education, Gunma University

4)Morita Elementary School, Gunma キーワード:探究の過程 Keywords : Process of the research

(2020年10月30日受理) 1 はじめに  『中学校学習指導要領(平成29年告示)解説理科編』 において,指導の重点化が学年ごとに示された1)。中 学校では,3年間を通じて計画的に,科学的に探究す るのに必要な資質・能力を育成するために,各学年で 重視する探究の学習過程の例が,次のとおり示された。 中学校 第1学年 自然の事物現象に進んで関わり,その中から問題を見出す。 中学校 第2学年 解決する方法を立案し,その結果を分析して解釈する。 中学校 第3学年 探究の過程を振り返る。  また,この学習指導要領改訂では,小学校段階,中 学校段階をそれぞれ別に考えるのではなく,学習指導 要領の一貫性を配慮するとあるため,その相互のつな がりについても考えることが重要である。小学校にお いて,各学年ごとに示された指導の重点化は次のとお りである2) 小学校 第3学年 差異点や共通点を基に,問題を見いだす力。 小学校 第4年生 既習の内容や生活経験を基に,根拠のある予想や仮説を発想する力。 小学校 第5学年 予想や仮説を基に,解決の方法を発想する力。 小学校 第6学年 より妥当な考えをつくりだす力  これらの中で,解決方法の立案に関して見てみる 群馬大学教育実践研究 第38号 75~82頁 2021

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76 山内宗治・益田裕充・上原永次・日暮利明・倉林凌佑 と,小学校第5学年で「予想や仮説を基に,解決の方 法を発想する力」として,中学校第2学年で「解決す る方法を立案し,その結果を分析して解釈する」とし て,それぞれ記述がなされている。このように小学校 段階においても,中学校段階においても,解決方法の 立案に関しての記述がなされており,身につけさせた い資質・能力であることがわかる。中央教育審議会答 申(幼稚園,小学校,中学校,高等学校及び特別支援 学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等につい て)から一部修正され,資質・能力を育むために重視 する探究の過程のイメージが『中学校学習指導要領 (平成29年告示)解説理科編』に示された3)。それが 図1である。図1の探究の過程を通して,見通しや振 り返りを行うこととしている。  先に述べた各学年での重点化と探究の過程を照らし 合わせると,中学校第1学年では課題の設定につい て,重点化が示されている。中学校第2学年では解決 方法の立案について,重点化が示されている。中学校 第3学年では考察について示されている。このことか ら,学年が上がるごとに,それぞれ探究の過程をたど るようにして重点化が行われていることがわかる。  この探究の過程については,『中学校学習指導要領 (平成20年告示)解説理科編』では,探究する学習とし て探究の過程を行うように促していた。特に学年ごと に重点化はされておらず,中学校の学習では,小学校 との関連から観察・実験を「分析・解釈」することと 位置づけるようになっていた4)。それに対し,『中学校 学習指導要領(平成29年告示)解説理科編』では,学年 ごとに指導過程が重点化されていることに特徴がある。 2 平成27・30年度の全国学力・学習状況調査から   読み取ることができる子どもたちの課題  全国学力・学習状況調査理科において,解決方法の 立案に関する問題は,平成27年度では全25問中4問, 平成30年度では全27問中4問であった。これらの問題 番号と全国正答率を表1に示す。 表1 平成27・30年度全国学力・学習状況調査における解 決方法の立案に関する問題番号と全国正答率 平成27年度5) 平成30年度6) 問題番号 全国正答率 問題番号 全国正答率 大問1(5) 52.5% 大問2(4) 61.9% 大問2(4) 62.7% 大問4(2) 44.5% 大問3(2) 39.6% 大問5(2) 63.4% 大問6(2) 30.4% 大問9(2) 19.8% 理科の 全設問の平均 53.5% 全設問の平均理科の 66.5%  全設問についての全国の平均正答率が平成27年度は 53.5%,平成30年度は66.5%であり,これらと比べて低 く,解決方法の立案に関して課題があることがわかる。  これらの課題に対して,平成27・30年度の同報告書 によると,解決方法の立案にあたっては,対照実験を 考え,正しく条件を制御することや,実験が困難な場 合モデルを扱って対応させること,はじめに『変化す ること(従属変数)』と『原因として考えられる要因』 を全て挙げ,それらの妥当性を検討する。次にそれら の要因を『変える条件(独立変数)』と『変えない条 件』に整理して,実験を計画する学習場面を設定する ことなどを行うことが重要であるとしている7)8) また,全体としては,課題に正対した実験を計画す ることや考察することに課題がある(H27)9),自然 の事物・現象に含まれる要因を抽出して整理し,条 件を制御して実験を計画することに課題がある(H 図1 資質・能力を育むために重視する探究の過程のイ メージ

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77 理科授業における探究の過程の重点化に関する研究 30)10),ことを指摘している。  小学校における同調査でも同様に,予想が一致した 場合に得られる結果を見通して実験を構想したり,実 験結果をもとに自分の考えを改善したりすることに課 題がある(H27)11),予想が確かめられた場合に得ら れる結果を見通して実験を構想したり,実験結果を基 により妥当な考えに改善し,その内容を記述すること に課題がある(H30)12)と指摘している。  また,同調査と並行して行われた質問紙調査によっ て,実際の教育現場における実態として,次のような ことがわかった。表2に「平成24・27・30年度全国学 力・学習状況調査における学校質問紙調査結果(探究 の過程に関すること)」,表3に「平成24・27・30年度 全国学力・学習状況調査における探究の過程に関する 生徒質問紙調査結果」を示す13)14)15)。いずれも中学 校における調査結果である。 表2 平成24・27・30年度全国学力・学習状況調査におけ る学校質問紙調査結果(探究の過程に関すること) 学校質問(中学校) 肯定的回答の割合 自ら考えた仮説をもとに観察,実験 の計画を立てさせる指導を行いまし たか。 (H30)72.8% (H27)65.8% (H24)61.8% 観察や実験の結果を分析し解釈する 指導を行いましたか。 (H30)94.0% (H27)91.1% (H24)88.4% 表3 平成24・27・30年度全国学力・学習状況調査におけ る探究の過程に関する学校質問紙調査結果 生徒質問(中学校) 肯定的回答の割合 理科の授業で,自分の予想をもとに 観察や実験の計画を立てています か。 (H30)58.4% (H27)54.9% (H24)46.2% 理科の授業で,観察や実験の結果を もとに考察していますか。 (H30)72.3% (H27)67.3% (H24)56.7% 理科の授業で,観察や実験の進め方 や考え方が間違っていないかを振り 返って考えていますか。 (H30)58.9% (H27)54.9% (H24)49.8%  表2・3を見ると,調査するごとに高い数値が得ら れていることから,教育現場において,探究の過程が 意識されつつあることを示していると考えられる。し かしながら,観察や実験の結果を分析し解釈すること については表2・3とも高い割合を示しているが,観 察や実験の計画を立てることについては,学校質問 紙,生徒質問紙のいずれにおいてもその結果はまだ十 分とはいえない。  以上,全国学力・学習状況調査の結果から,解決方 法の立案に関しては未だに課題があり,指導や学習の 方法に関して改善の余地があることを示唆している。 3 研究の背景  平成18年,国立教育政策研究所が行った,特定の課 題に関する調査(理科)では,小学校第5学年と中学 校第2学年を対象として,「観察・実験に関する調査」 が実施された16)。予想や推論を立て,それを確かめる ための観察や実験方法を考察し,観察や実験の結果か ら実際の結論を導き出す力を把握するものである。そ の結果から,問題を解決するための実験方法を考える ことに課題があることがわかった。また,この調査で は観察・実験の結果や提示されたデータに基づいて考 察することに課題があること,質量保存などの概念理 解に課題があることも明らかになった。これらを受け て,指導改善の具体策として生徒自身が実験方法を考 え,結果を予想するための時間を確保することや既習 事項との関連を踏まえた計画的な指導やモデル等を利 用した指導の工夫が考えられることを示していた。   解決方法の立案に関する先行研究として,益田 (2015)は,「課題を設定する過程で推論した大づかみな 要因を,条件として整え,条件から変数を設定させるこ とで課題,予想・仮説と連動した実験の計画の立てる ことが可能である。」としている17)。解決方法の立案に は,要因から変数を捉えることの重要性が述べられた。  藤本・半田・益田・馬場(2016)では,検証計画の 立案の過程は,課題が問いとして機能し,課題に対し て生徒が立てた予想を検証するための計画がなされる 過程である,と指摘している18)。この研究では,解決 方法の立案と課題の設定は密接な関係にあることの重 要性が述べられている。  益田・山内・鈴木・半田(2020)では,「導入で示 した原因として考えられる要因(独立変数)と変化す ること(従属変数)の関係を捉えられるようにするこ とが重要であり,学習過程で見通しと振り返りを行っ たり,促したりすることで立案を行っていた。」とし ている19)。見通しと振り返りによる解決方法の立案に は,独立変数と従属変数の設定が重要であると明らか

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78 山内宗治・益田裕充・上原永次・日暮利明・倉林凌佑 になった。  全国学力学習状況調査や特定の課題に関する調査か ら,解決方法の立案は長年にわたる課題であり,解決方 法の立案に関する多くの先行研究があることから,解決 方法の立案の重要性から,本研究を進めることとした。 4 研究の目的  解決方法の立案の過程に着目して生徒の思考がどの ように変容するのかを明らかにする。 5 調査方法  解決方法の立案の重点化を経る前の中学校1年生の 理科授業と,解決方法の立案の重点化を経た後の中学 校3年生の理科授業を比較することで,それぞれの授 業で,教師が生徒に解決方法の立案を成立させるため に,どのような方略を用いていたかを抽出し,授業プ ロトコルをもとに分析する。 6 研究対象  研究対象①は,静岡県内公立A中学校で学年は中学 校1年生である。実施された授業は平成25年度7月に 行われたものである。授業の内容は「大地の成り立ち と変化(地学分野)」である。  研究対象②は,千葉県内公立B中学校で学年は中学 校3年生である。実施された授業は平成25年度9月に 行われたものである。授業の内容は「自然と人間(生 物分野)」である。 7 結果・考察 7.1 研究対象①の授業内容と調査結果  研究対象①の授業の概要・詳細と,調査結果は表4 のとおりである。 表4 A中学校で行なわれた授業の概要 行われた授業の概要 導入 近所の砂や石を見た上で気付いたことを発表し た。教師が地質図を配布した。 課題 「砂A,砂Bはそれぞれ大井川と狩野川のどち らのものだろうか。」という課題を設定した。 予想 教師が用意した2種類の砂について,どちらの 川のものかを,近所の砂や石の観察や教師から 配布された川周辺の地質図をもとに予想した。 実験 予想をもとにグループごとに実験を考え,それ ぞれの班ごとに観察・実験を行った。 結果 砂の粒の形・大きさの違いについての観察や, 磁石につくかなどの結果を表出した。 考察 各々が立案した実験結果から,砂Aは大井川の 砂,砂Bは狩野川の砂ということを生徒全員が 導くことができた。次時の授業の導入として, ハワイの黒浜(溶岩からできた黒い砂浜)につい て考えた。  実際に行われた授業は,静岡県に流れる様々な川の うち,A中学校の近くを流れる大井川と火山地帯が広 がる狩野川の2つの川について,川辺にある砂の違い から考える地学分野の授業である。初めにこの授業で は導入の自然事象に対する気付きとして,宿題で出さ れた近所の砂や石を観察して,気付いたことを発表す るものであった。次に,教師が静岡県の川と地質図に ついて記された資料を配布した。その後,教師が2種 類の砂を提示し,大井川と狩野川のどちらの川で採取 した砂かを判断するものであった。課題は「砂A,砂 Bはそれぞれ大井川と狩野川のどちらのものだろう か。」が設定された。生徒はこの課題に対して砂の大 きさや形,色,成分について考えながら,予想し,実 験計画を立案した。実際に立案された実験は3つであ る。1つ目は顕微鏡やルーペで砂を観察すること,2 つ目は塩酸を砂にかけて溶けるかどうかを見るもの, 3つ目は磁石を近づけて砂がつくかどうかを見るとい う実験が構想された。これらのうち各班で立案した実 験を行い,結果から砂Aは大井川の砂,砂Bは狩野川 の砂であるということを生徒全員が考察として導くこ とができていた。 7.2 研究対象①についての考察  導入の局面の最後に教師が2つの砂を提示し,課題 として「砂A,砂Bはそれぞれ大井川と狩野川のどち らのものだろうか。」というものが設定された。Aと Bの砂がどちらの川で採れた砂かについて明らかにす る二者択一的な課題であったため,生徒はそれぞれの 砂についてどちらの川で採れた砂かを明らかにしよう としていた。解決方法の立案に関しては,3つの実験 を構想し,どちらが大井川か狩野川の砂かを判断する 基準として挙げられた要因は砂の大きさ,形,色,成

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79 理科授業における探究の過程の重点化に関する研究 分の4つであった。これらの4つの要因から顕微鏡や ルーペで砂の大きさや形の違いを観察すること,磁 鉄鉱の含有率の違いに気付いて磁石に近付けること, チャートの砂の有無により砂に塩酸をかけて判断する ことという3つの実験が構想された。しかし,班に よって考えた要因の違いから顕微鏡やルーペで観察す るという同じ実験を行っても観察のポイントが大きく 違い,判断する基準が異なっていた。これらのことか ら,課題を設定した際に考えられる要因こそが解決方 法を立案する際に大きく関わっていることがわかった。  今回の授業では,この要因に気付かせている場面が 課題を設定する前の導入の局面で行なわれていた。以 下に,生徒が要因を形成した局面を示す。  ( T は 教 師 の 発 話,SB,SC,SD,SE,SF,SG, SQはそれぞれ異なる学習者の発話である。教師・学 習者の後につけた数字は発話順を示している) T1:近くの,近所の砂とか,石とかをちょっと見て きてって言ったんですけども,どんなことに気 付きましたかね。どうですか。気付いたことを 言ってみてください。はい,どうぞ。 SB1:天竜川の石について調べたんですけど,角がと れていて,丸くなっていて,天竜川のつくりだ なと思ったんですけど,中に灰色の斑点があっ て,まぁ,面白かったです。 T3:そのほか調べてくれた人,はいどうぞ。 SC1:えっと,色はなんか,こないだもいったんです けど,緑色のよもぎ石じゃなくて,えっと,な んだっけ? T4:よもぎ石ね。 SC2:よもぎ石と,普通のなんか灰色の石があって, でまぁ,だいたい大きさはげんこつか,この大 きさくらいの石(指で輪をつくる)がだいたいた くさん転がっていました。 T5:なるほどなるほど。えー,それ何川ですか? SC3:瀬戸川です。(一部省略)  教師は予め宿題として,近所の砂や石を観察するこ とを生徒に与えていた。それに対し,生徒はその宿題 から気付いたことを発表していた。SBの発話から「角 が取とれていて,丸くなっていて」という砂の形に気 付いていた。また,同じくSBの発話では「中に灰色 の斑点があって」ということから砂の色に気付いてい た。SCの発話では「だいたい大きさはげんこつ」と いう部分から粒の大きさについて気付いている。これ らの要因を使って解決方法の立案を行っていた。ここ までで,生徒が気付いた要因は砂の形と色,大きさが 挙げられる。  その後,導入の局面の最後に教師が地質図を配布し た。この地質図には授業が行われた静岡県のどこに何 の砂がどのくらいあるのかを示した図である。この資 料を教師が配布したことにより,生徒は新たに砂の成 分という要因に気付くことができていた。実際に解決 方法の立案について考える時に,教師が配布した地質 図の資料から実験を構想していた。それが読み取れる 部分の発話プロトコルを以下に示す。 SD : 双眼実態顕微鏡で粒の大きさとか色のちがい をみる。 T13:まず顕微鏡で見る。そういうふうに書けた人い ますか?顕微鏡で見るよーって人。あ,結構い ますねー。はい,そのほかどうですか?ほかに もあるよーって人いますか?はいどうぞ。 SE1:大井川は最初のほうになんかチャートの砂が あって,大井川の砂のほうに塩酸をたらせば, なんか白くばぁーっとなるかなぁと。 T14:それは何でわかるの? SE2:塩酸で。 T15:塩酸ね。塩酸をかけて。それもいい。そのほか ある人いますか?はいどうぞ。 SG1:狩野川のほうは,火成岩が入っている可能性が あるので,鉱物があるかどうかを調べればいい と思います。 T16:どういう実験?どうやって調べる? SG2:顕微鏡。 T17:顕微鏡ね。そこをみるわけね。  発話プロトコルから,粒の大きさの違いや鉱物の有 無を観察するということについて,地質図から砂の成 分に気付き,解決方法の立案をしていることがわか る。今回,解決方法の立案を行う際に必要な要因を形 成させるため,近所の砂を観察させたり,地質図など のヒントを与えたりすることにより,砂についての知 識を予め持たせ,事象を帰納的に捉えさせることを教 師が生徒に行っていた。解決方法の立案を行う際に必 要な要因の形成は,課題設定の前の導入の局面で,教 師が生徒に全て気付かせていた。  考察の場面を一部抜粋した発話プロトコルを以下に 示す。 SQ:僕たちもAが大井川で,Bが狩野川だと思います。 僕たちは顕微鏡で調べた結果なんか,こちら側は 鉱物の割合が少なかったんですよ。少しあったん ですけど,色が黒とか灰色とかが多くて,火山系 の要素が少なかった。Bの方は,顕微鏡で見た結 果,赤とか黄色とか灰色とか白とか透明とか,色々 な色がありました。透明なの,キラキラしてるの は普通の砂じゃなくて鉱物なので,通ってるとこ

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80 山内宗治・益田裕充・上原永次・日暮利明・倉林凌佑   ろに火山があるじゃないですか。狩野川の方って この資料を見ればわかるとおり火成岩とか凝灰岩 とかを通って凝灰岩らしきものも見られたので僕 たちは,Aは大井川,Bは狩野川だと思いました。 (一部省略)  このSQの発話から,生徒が顕微鏡で観察する際 に,色や砂の成分について考えながら実験を行ってい たことがわかる。また,「この資料を見ればわかると おり」という発話から,教師が提示した地質図を基に 実験が構想され,結果の場面に影響を与えていること がわかる。考察としては,課題が「砂A,砂Bはそれ ぞれ大井川と狩野川のどちらのものだろうか。」とい うものであったため,「Aは大井川,Bは狩野川だと 思います。」という考察が生徒全員から導かれた。  以上,研究対象①の分析より,中学校1年生の解決 方法の立案にせまる理科授業の流れは,導入の局面で 要因を全て抽出し,二者を比べるという過程から二者 択一的な課題を設定していた。そのような二者択一的 課題に対し,考察が一つに収束していた。 7.3 研究対象②の授業内容と調査結果  研究対象②の授業概要・詳細と,結果は表5のとお りである。 表5 B中学校で行なわれた授業の概要 行われた授業の概要 導入 授業当時使っていた新しい堆肥場と,その一年 前に使われていた古い堆肥場について,外で実 際に観察し,気付いたことを発表した。 課題 「どのような場所にたくさんの生物がいるのだ ろうか。」という課題を設定した。 予想 導入の場面における観察で気付いたことから, 生物がたくさんいそうな場所とそうではなさそ う場所を対比しながら予想した。 実験 生物がいそうな土といなさそうな土を採取し, ハンドソーティングとツルグレン装置を使って 実験を行った。 結果 確認できた生物の種類や数の違いによって予想 の妥当性について確認した。 考察 生物がたくさん生息している場所がわかったこ とから,生物が有機物を利用していることに触 れ,次時の学習へとつなげていた。  授業の詳細は次のとおりである。千葉県内公立B中 学校で平成24年度に使っていた古い堆肥場と,平成25 年度の授業当時に使っていた新しい堆肥場の2つの堆 肥場を外でそれぞれ観察させ,比較をさせる活動か ら行われた。その中で,生徒は堆肥場の土の様子や 葉の様子について,湿り具合やかさの違いなどを確認 した。また,どちらの堆肥場にも生物がいることを観 察し,課題を立てていた。課題は「どのような場所に たくさんの生物がいるのだろうか」というものであっ た。どのような場所に生物がいるのかをそれぞれ班ご とに予想し,その予想を確かめるためにどのような土 を採取すればよいのかを対照実験を考えながら立案を 行っていた。結果として,生物の数の違いから予想が あっていたのかをそれぞれ導き出していた。各班の予 想と対照実験として採取した土は,授業映像及び授業 映像を基にして起こした発話プロトコルより以下のと おりとなった。 班 予想 (比較した土AとBについて)立案 1班 新しい土に生物が 多い A:25年度の堆肥場B:24年度の堆肥場 2班 平成25年度の土の 堆肥場に生物が多 い A:25年度の堆肥場 B:24年度の堆肥場 3班 新しい土や葉の堆 積している場所に 生物が多い A:25年度の堆肥場 B:24年度の堆肥場 4班 葉を多く含んだ土 がある場所 A:24年の葉を多く含んだ土B:24年度の葉の含まない土 5班 日 光 の 当 た ら な い,湿っている土 A:25年度の湿った土B:25年度の乾いた土 6班 移動しやすい場所 A:地面から深い土 B:表面から浅い土 7班 湿った場所 A:25年度の湿った土 B:25年度の乾いた土 8班 黒くない生きのい い,葉があるとこ ろ A:生きのいい葉と周辺の土 B:黒い葉と周辺の土 7.4 研究対象②についての考察  今回の授業の課題は,調査対象①の授業であった 「砂A,砂Bはそれぞれ大井川と狩野川のどちらのも のだろうか。」という二者択一的な課題とは違い,「ど のような場所にたくさんの生物がいるのだろうか。」 というように全体を包括した一般化を図ろうとする課 題にしたことである。この課題から調べたいことを予 想し,それについて今回は2種類の土を採取し,比較 することを通して対照実験について考えることで解決 方法の立案を成立させていた。本授業でも,研究対象

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81 理科授業における探究の過程の重点化に関する研究 ①と同じように,要因を全て抽出したうえで課題を設 定していた。要因を抽出している部分の発話プロトコ ルを以下に示す。 SC : はい。24年度は,全体的に土の色が黒くまたしっ とりしていました。25年度は,葉の色が黄色や 緑が多く,葉がふんわりしている感じがしまし た。 T15:黒くてしっとりしているんね。こっちはまだそ のままというか,パリパリということですね。 他にどうですか?どんどんお願いします。似た ようなことでも結構です。はい,はい,じゃぁ お願いします。返事お願いします。 SD1:はい。えっと僕は25年度の堆肥場より24年度の 堆肥場の方が,えっと,しっとりしていなかっ たと思います。 T16:しっとりしていなかった。 SD2:はい。 T17:乾いていた。 SD3:はい。 T18:はい,わかりました。はい,他にどうですか? はいはい,じゃぁちょっと聞き方なんだけど, 量的なことはどう?えー草や葉っぱの量的な感 じはどうでしょうか?はい,じゃぁお願いしま す。はい。 SE : 25年度なんですけど24年度の方が草や葉っぱは 多かったと思います。 T19:こっちの方が多いんね。葉っぱのね,量的とか ね。はい,じゃぁお願いします。はい。 SF 1:はい。25年度の堆肥場の方は量は多かったです。 で,24年度の方は量は少なかったんですけど凝 縮されている感じ。 SG2:はい。えっとこっちの24年度の堆肥場の方は葉 が腐ったというか,そういう風に変化して,色 とかが変わっているのだと思います。それで, こっちの25年度の方はそこに集まって時間が 経っていないから,あまり変わっていないのだ と思います。 T27:はい,なるほどね。はいはい。要するに腐ったっ て話だよね。じゃぁちょっと君に聞きましょう。 腐ったって言うのは誰がやるの?誰がやるの? SG3:微生物。(一部省略)  発話プロトコルより,2つの堆肥場を観察する中 で,堆肥場の土の様子や色,葉の色などの違いについ て気付き,要因を抽出していることが読み取れる。ま た,それらの違いはなぜ起こっているのかと教師が発 問を行うことで,生物が引き起こしているのかもしれ ないと新たな要因に気付かせていた。これらの要因 は,課題設定する前の導入の局面で形成させていた。 課題は「どのような場所にたくさんの生物がいるのだ ろうか」というものだった。研究対象①と同様に二者 を比べることから始めていたが,二者択一的な課題は 設定せず,一般化を図ろうとする課題を設定してい た。  考察の場面では,2つの班を例にとる。子どもたち は得られた結果をもとに様々な考察を導いていた。 SQ:4班は虫がたくさんいるのは,葉を多く含んだ 土がある場所だと予想しました。その予想を確か めるために,平成24年の葉を多く含んだ土と同じ く平成24年の葉のあまり含まない土を比べまし た。結果は葉を多く含んだ土はサイズが大きく, 活発な虫が20匹ほどいました。葉が少ない土は, あまり動かない小さな虫が3,4匹いてまた死骸 も確認されました。このことから葉を多く含んだ 土の方がたくさんの生物がいるということがわか りました。ということで,予想とおり葉を多く含 んだ土の方が多くの生物が発見されました。これ は,葉を多く含んだ土の方が栄養価が高く,生物 がよく集まるという言葉で考えることができまし た。(一部省略)  実験結果から,わかることは生物が堆肥場のどこに 多かったのかという事実だけであるが,中学校3年生 は更に,考察から導いたことから,推論するという過 程を行っていることがプロトコルの発話から読み取れ る。今回の授業では,なぜその場所に生物が多かった のかについて,土に含まれていた葉っぱと栄養価と関 連させて考えていた。 8 まとめ  解決方法の立案の重点化を経る前の中学校第1学年 では,課題を二者択一的な課題を設定することで解決 方法の立案を成立させる方略が抽出できた。考察の局 面では,課題が二者択一的なものであるため,考察が 一つに収束していた。  一方,解決方法の立案の重点化を経た後の中学校第 3学年では,二者を比較するという過程をたどりなが らも,あえて二者を比べるような課題を設定せずに, 一般化を図ろうとする課題を設定していた。そこか ら,対照実験を考えられるように調べることについて 考え,整理する活動を取り入れることで,解決方法の 立案を成立させる方略が抽出できた。考察の局面で は,一般化を図ろうとする課題であるため,考察が多 様化しており,実験結果からさらに推論することが行 われていた。  また,解決方法の立案を行う際,導入の局面で課題

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82 山内宗治・益田裕充・上原永次・日暮利明・倉林凌佑 を設定する前に,必要な要因を全て抽出することが調 査対象の両授業で行なわれていた。その抽出した要因 から,解決方法の立案として,実験が構想されてい た。要因に気付かせる支援としては,教師が要因に関 する発問をすることや,要因を引き出させられる資料 を配布することが有効であることが明らかになった。 引用文献 1)文部科学省:中学校学習指導要領(平成29年告示)解説理 科編,p13,2017. 2)文部科学省:小学校学習指導要領(平成29年告示)解説理 科編,p17,2017. 3)文部科学省:中学校学習指導要領(平成29年告示)解説理 科編,p9,2017. 4)文部科学省:中学校学習指導要領(平成20年告示)解説理 科編,p9,2008. 5)国立教育政策研究所:平成27年度 全国学力・学習状況調 査 報告書 中学校理科,p10,p11,文部科学省,2015. 6)国立教育政策研究所:平成30年度 全国学力・学習状況調 査 報告書 中学校理科,p10,p11,文部科学省,2018. 7)国立教育政策研究所:平成27年度 全国学力・学習状況調 査 報告書 中学校理科,p32,p46,p51,p71,文部科学省, 2015. 8)国立教育政策研究所:平成30年度 全国学力・学習状況調 査 報告書 中学校理科,p36,p50,p57,p87,文部科学省, 2018. 9)国立教育政策研究所:平成27年度 全国学力・学習状況調 査 調査結果のポイント,p3,文部科学省,2015. 10)国立教育政策研究所:平成30年度 全国学力・学習状況調 査結果(概要),p4,文部科学省,2018. 11)国立教育政策研究所:平成27年度 全国学力・学習状況調 査 調査結果のポイント,p3,文部科学省,2015. 12)国立教育政策研究所:平成30年度 全国学力・学習状況調 査結果(概要),p4,文部科学省,2018. 13)国立教育政策研究所:平成24年度 全国学力・学習状況調 査【中学校】集計結果 4.質問紙調査の結果,文部科学 省,2015. 14)国立教育政策研究所:平成27年度 全国学力・学習状況調 査【中学校】調査結果資料 4.質問紙調査の結果,文部科 学省,2015. 15)国立教育政策研究所:平成30年度 全国学力・学習状況調 査【中学校】調査結果資料 4.質問紙調査の結果,文部科 学省,2018. 16)国立教育政策研究所:特定の課題に関する調査(理科)結 果のポイント,p5,文部科学省,2006. 17)益田裕充:全国学力・学習状況調査(中学校理科)のメッ セージを読む―科学的に探究する能力の基礎を育成する過 程―,日本理科教育学会・理科の教育,Vol.65 通巻763 号,東洋館出版社,pp.17-20,2016. 18)藤本義博・半田良廣・益田裕充・馬場祐介:「理科授業に おける「検証計画の立案」に関する研究」,臨床教科教育 学会誌 16(2),2016. 19)益田裕充・山内宗治・鈴木駿・半田良廣:「理科授業にお ける解決方法の立案に関する研究―自然事象の提示から 予想・仮説の設定と検証計画の立案の局面の関係に着目 して―」,群馬大学教育実践研究 別刷 第37号 pp.71-77, 2020. (やまうち そうじ・まつだ ひろみつ・うえはら えいじ・ ひぐれ としあき・くらはやし りょうすけ)       

参照

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