認知症高齢者の買い物・金銭管理
ケアプログラムにおける行動特性
町 田 久見子, 内 田 陽 子, 小 谷 弥 生
要 旨 【目 的】 本研究の目的は,認知症高齢者の買い物・金銭管理におけるできる・できない行動特性を明らかに することである. 【対象と方法】 対象は Bグループホーム入所者及び C 認知症専用デイサービス利用者 22 人である.方法は野菜や果物等の実物,魚や肉などのフードモデルを 用して模擬店を開催し,2000円以内で 今晩のおかずの買い物をしてもらった.評価は一連の買い物・金銭管理行動の構成要素を手順化し,チェック リストを作成して観察記録した.チェックリストの項目は『準備』『選択・判断』『支払い』の大項目と,大項 目の行動を 類した合計 30個の小項目から構成されている. 【結 果】 できた行動は, 30項目中 9 項目で 『選択・判断』が最も多かった.できなかった行動は,30項目中 1項目のみで「かごを持ち歩きながら買い物 をする」ことであった. 【結 語】 認知症高齢者ができる買い物・金銭管理行動特性を活かして, 日常生活 で実際に繰り返し実践することが重要である. (Kitakanto Med J 2006;56:225∼230) キーワード:認知症, IADL, 買い物, 金銭管理, 行動評価 は じ め に 認知症高齢者に対するケアは,「本人主体に人として当 たりまえに暮らす」ことを目指している.現在,地域でケ ア提供者の支援を受けながら, 認知症高齢者達自身が主 体的に助け合って共同生活するグループホームは急増し ている. 認知症をもつ高齢者について, 和田は生活の支 援策 (手助け)があれば,主体的に生活を営むことができ るとし,「生活力」を維持・回復するケアの重要性を述べ ている. また,三好は「生活行為に勝る訓練なし」と述べ, 自発的な生活行為を引き出し生活の中で繰り返すことで 機能をよくするケアを提唱している. このように認知症 をもつ高齢者のケアは, 認知症があっても世話をされる 受身の存在でなく, 地域で主体的な日常生活を人として 当たり前に送れるよう支援する「生活ケア」が重要であ る. 日常生活行為の中で, 買い物, 食事の支度, 洗濯, 金銭 管理, 外出等は, IADL (Instrumental Activities of Daily Living, 手段的日常生活動作能力) とよばれ, 地域で独立した生活を営む上で不可欠の能力とされる. 日常生活を 基本的な身体的動作として測定する ADL (Activities of Daily Living, 日常生活動作) に対し, IADL は「社会的 ADL」ともいわれている. 高齢者においては, 一人ひと りにとっての社会的な意味を え, 自立に向けて支援す ることが特に重要である. そのため,ケア提供者は ADL だけでなく認知症高齢者の IADL にも目を向け, IADL を高めるケアを生活の中で組み入れて実施すべきであ る. IADL の中で買い物・金銭管理行動は,計算,品物の選 択, 他者との 流を含み, 特に高度な能力を必要とする 行動とされる. そのため現状では, 認知症をもつ高齢者 には「できない」と判断されることが多く,本人自らが買 い物・金銭管理を行う機会は少ない.現在,グループホー ムでは職員が買い物や支払いをすべて行っている所, 品 物の選択の一部のみ入居者が行う所がほとんどである. しかし, 一方では入居者が外出から支払いまですべて主 体的に行うことを目指して実施している所もあり, グ ループホームによってケア方法は様々である. 1 群馬県富岡市富岡2073-1 立富岡 合病院看護部 2 群馬県前橋市昭和町3-39-22 群馬大学医学部保 学科看護学専攻臨 床看護学講座老年看護学 野 3 群馬県渋川市北橘町下箱田779 群馬県立小児医療センター 平成18年5月18日 受付 論文別刷請求先 〒370-2316 群馬県富岡市富岡2073-1 立富岡 合病院第一看護師寮11号室 町田久見子
さらに, 高齢者の IADL における課題は, 能力 (でき る)と遂行 (している)が一致しないことが指摘されてい ることから, 認知症をもつ高齢者が持っている IADL 能力をアセスメントし, それを発揮, 遂行することが重 要である.しかし,認知症をもつ高齢者の「できる」買い 物・金銭管理行動特性について明らかにした研究はみら れない. 今回, 認知症をもつ高齢者に対して買い物・金銭管理 のケアプログラムを実施し行動を評価した. 本研究の目 的は, 認知症高齢者の買い物・金銭管理行動におけるで きる・できない行動特性を明らかにすることである. 以 上より, 認知症高齢者の IADL を高めるケアの要点につ いて検討した. 対 象 と 方 法 対象 (表 1) Bグループホーム 3棟に入居している認知症をもつ高 齢者及び隣接している C 認知症専用デイサービス利用 者のなかで施設側及び本人の両者の協力が得られた 22 名とした. その内訳は Bグループホーム入居者が 16名, デイサービス施設利用者が 6名であった. その対象者 22 人の平 年齢は,83.5±6.9 であり,男性が 13.8%,女性が 86.4%を占めた. 介護認定では, 要介護 1が 31.8%, 要介 護 2が 36.4%, 要介護 3が 9.1%, 要介護 4が 22.7%, 要 介護 5が 0%であった. アルツハイマー型認知症を主疾 患にもつ者は 31.8%を占め, 脳血管性認知症, その他の 認知症をもつ者は 68.2%を占めた. また, バーセルイン デックスでの ADL 得点の平 は 69.3±23.7点 (全項 目自立の場合 100点) であった (表 1). 実施期間 2004年 6月 2日から同年 7月 30日までの間で, 施設 側及び利用者に支障がない日を事前に調整して行った. 買い物・金銭管理のケアプログラム実施方法 ケアプログラムの内容は研究者らが討議して独自に開 発した.これは,野菜・肉・魚介・果物・調味料等の本物 及びフードモデルを多種多数用意し模擬店を開催して行 うものとした. 実施場所として, 対象者が生活している グループホーム・デイサービス施設のテラスを利用した. 品物は長方形のテーブル 2台に, 全体を見渡しやすく手 に取りやすいよう配置した. 本物のお店に近づけるよう, テーブルにはクロスをかけ, 野菜はザルに盛り, 肉は パックし, 魚は氷の入った容器からビニール袋に取り けてもらう等品物の置き方を演出した. 品物の値札は見 やすいよう大きく明記した. 支払いに 用する金銭は本 物と類似した大きさ・デザインの玩具を用意した. 対象者には財布に 2,000円を渡し, チェックリストに って買い物・金銭管理行動を実施してもらった. 対象 者一人に介助者がつき, ケアプログラムについて玩具の お金を った買い物のゲームや訓練だと説明し, 本日の 夕食のおかずを えて買い物するよう誘った. 介助者は, 対象者の表情・言動を見ながらペースに合わせてゆっく り付き添い, 対象者ができない行動については援助を 行った. また職員の方にも付き添ってもらい, 対象者に とってなじみの人とも楽しく行えるよう配慮した. 評価方法 評価は買い物・金銭管理行動の構成要素を手順化した ものを, チェックリストとして独自に作成した. チェッ クリストの項目の妥当性と実施可能性を検討するため, 事前にプレテストを行った. プレテストは認知症のない 老人保 施設の入所者 3名に実施し, チェックリストの 項目, 手順, 必要物品, 介助方法等を再検討した. その結果, 最終的なチェックリストの項目を以下のよ 表1 対象者の背景 n=22 背景条件 内訳 n % 性 別 男 3 13.6 女 19 86.4 年 齢 60歳代 1 4.5 70歳代 4 18.2 80歳代 13 59.1 90歳代 4 18.2 主疾患 アルツハイマー型認知症 7 31.8 脳血管性・その他の認知症 15 68.2 要介護認定 要介護 1 7 31.8 要介護 2 8 36.4 要介護 3 2 9.1 要介護 4 5 22.7 要介護 5 0 0.0 M SD 平 年齢 83.5 ±6.9 要介護認定 2.0 ±1.2 長谷川式簡易知能評価スケール (30点満点) 10.0 ±6.3
うに決定した.この内容は買い物・金銭管理行動を,『準 備』『選択・判断』『支払い』に 類した大項目と,大項目 に必要な一つ一つの行動を 類した小項目から成る (表 2).『準備』は主に事前のお金の準備,『選択・判断』は 買う品物を選び, 買い物時の社会的・常識的な判断をす ること,『支払い』は会計や品物の袋詰め等の行動である. 小項目数は,『準備』8項目,『選択・判断』10項目,『支 払い』12項目で, 合計 30項目とした. 小項目は対象者の 行動を「(介助なしに自 で)できた」「一部介助を得てで きた」「できない」,「不明 (判定が不明確なもの)」,「未実 施 (実施しなかった)」の 5段階で評価した. さらに対象 者 22名のうち, 過半数の 12名以上の人ができた行動・ できなかった行動について 類した. また年齢, 性別, 主疾患, 要介護度, 改定版長谷川式簡 易知能評価スケールによる評価得点 (30点満点で得点が 高いほど正常である. 20点以下で痴呆と判定される), バーセルインデックスによる ADL 得点 (100点満点で 点数が高いほど自立している) 等を含む背景条件の調査 票を添付した. さらに必要物品, 買った品物, 合計金額, 支払い金額, おつり, 実施時間, 実施後の感想等記入でき る欄を設けた. 倫理的配慮 施設側及び利用者双方に研究目的と方法を説明し同意 を得た. また, ケア実施中は職員及び研究者, 共同研究者 が観察に努め, 安全を 慮するように配慮した. 対象者 が途中で拒否した場合, ただちに中断するなど, 本人の 意思に従うよう配慮した. また, データは連結不可能な ように匿名化した. 結 果 過半数の人ができた行動 (表 3) 行動特性をわかりやすくするために「できた行動」を 上位順に表 3に示した. 対象者 22人のうち, 過半数の 12 人以上の人ができた行動は, チェックリストの 30項目 表2 買い物・金銭管理の行動チェックリストの項目 n=22 大項目 小 項 目 できるn 一部介助n できないn 不明n 未実施n 準備 1 ケアプログラムの意図理解 7 5 10 0 0 2 お金を財布から取り出す 8 2 11 1 0 3 お金の種類がわかる 5 3 3 2 9 4 お金の枚数を数える 4 9 7 2 0 5 お金の合計金額がわかる 3 1 10 1 7 6 お金をお財布にしまう 9 1 11 1 0 7 買い物の目的を決める 10 5 6 1 0 8 お金を所持する 8 2 11 1 0 合計平 6.7 3.3 8.4 1.3 2.0 選択・判断 9 買い物かごを 用目的どおりに 用する 9 1 11 1 0 10 買い物かごを持ち, 歩いて買い物する 6 1 13 2 0 11 シルバーカー・車椅子利用で買い物かごを う 1 0 1 20 0 12 品物を見渡す, 店内全体を見て回る 13 2 5 2 0 13 所持金の範囲内で品物の種類・数を選択する 15 0 6 1 0 14 お店の人とコミュニケーションをとる 16 3 2 1 0 15 買いたいものを決め, 意思表示する 13 3 5 1 0 16 自 が言ったものと同じ種類・数を選択する 13 2 6 1 0 17 買う品物をレジまで持って行く, 会計を頼む 15 0 5 2 0 18 品物を持ち出さない, 袋を開けない, 食べない 19 0 1 2 0 合計平 12.0 1.2 5.5 3.3 0.0 支払い 19 会計している間, 待つ 16 0 0 6 0 20 お金を財布から取り出す 10 2 4 6 0 21 レジで合計金額を満たす金額を出す 13 2 1 6 0 22 小銭を って正しい金額を支払う 8 3 5 6 0 23 おつりを受け取る 1 1 1 19 0 24 おつりの金額を数える 1 0 2 19 0 25 おつりを財布にしまう 2 1 1 18 0 26 品物を受け取る 13 1 2 6 0 27 台まで, 自 で品物の入ったかごを運ぶ 7 1 7 7 0 28 台まで, シルバーカーを ってかごを運ぶ 1 0 0 21 0 29 買い物かごから袋に品物を入れ換える 11 3 2 6 0 30 調理方法や献立を簡単に説明する 11 3 1 7 0 合計平 7.8 1.4 2.2 10.6 0.0 注 : 不明は「できる」「一部介助」「できない」の評価判定不明を示す. 未実施は実施していないことを示す.
中, 9 項目であった. 小項目別 類で最もできた人数が多 かったのは,「品物を持ち出さない,袋を開けない,食べな い」19 人であった.次いで「お店の人とコミュニケーショ ンをとる」「会計している間,待つ」16人,「所持金の範囲 内で品物の種類・数を選択する」「買う品物をレジまで 持っていく,会計を頼む」15人と続いた.大項目別 類で 最も項目数が多かったのは,『選択・判断』で,10項目中 6項目であった. 次いで『支払い』が 12項目中 3項目で あった. 『準備』はなかった. 過半数の人ができなかった行動 (表 4) 「できなかった行動」を,上位順に表 4に示した.そのう ち, 過半数の 12人以上の人ができなかった行動は, 基本 ケアの 30項目中,1項目であった.小項目別 類では「買 い物かごを持ち,歩いて買い物する」であり,13人であっ た. 大項目別 類では『選択・判断』であった. 対象者の感想・会話 (表 5) ケアプログラム終了後の対象者の感想を表 5に示し た.肯定的な感想として「楽しかった」が 12人,「勉強に なった」4人であった.否定的な感想として「あまり買い 物に慣れていない」が 3人,「私のお金でないからできな い」2人であった.参加中には,「今日は煮魚にする.魚と 調味料もいるわね.」,「いい桃だね.」,「大きい方が得よね.」, 「皆さんはどれがいい?」「 (他者を見て) 上手に買うわ ね.」等や「どちらの野菜を選べばいいかしら教えて.」等, 職員や入居者同士で意見 換した場面が多々見られた. また, 対象者全員が 2,000円を超える買い物はしなかっ た. 察 過半数の人ができた行動の特性 本研究の対象者の改訂版長谷川式簡易知能評価スケー ルでの合計平 値は 10.0±6.3点であり, やや痴呆が高 度と判定される点数は 10.7±5.4点とされることから, 対象者は認知症の程度が軽いとはいえない. しかし, 過 半数の人ができた行動は小項目 30項目中 9 項目であっ た. 反対に過半数の人ができなかった行動は 30項目中 1 項目であり, できた行動のほうが多かった. 今回の対象 者はグループホーム入所者及びデイサービス利用者であ り, 多少なりとも地域とのつながりをもつ高齢者であっ たため, 買い物・金銭管理のできる行動が維持できてい たといえる.また買い物における『選択・判断』の項目で できる人が多かった.「食」は本能であり, 認知症をもつ 高齢者が食べるものを『選択・判断』することは比較的 できる行動であるといえる. できる行動を活かした IADLを高めるケアの要点 本研究で得られたできる行動の結果より, 研究者らが 検討し明確になったケアの要点を表 6にまとめた. この なかで,「①認知症をもっていても買い物時の常識的なマ ナーを守ることができるという肯定的認識のもとに, 認 知症をもつ高齢者が買い物に行くよう支援する」,「②買 い物を通して他者とのコミュニケーションを図り, 社会 性を広げる機会となるよう支援する」について説明する. 対象者は買い物時の常識的なマナーを守り, 会計を頼 む・会計している間,待つ・支払い後品物を受け取ること ができた. また, お店の人との挨拶や受け答え, 品物に関 連する話や世間話等をしていた. 対象者が人生で培った 表3 できた行動の上位項目 n=22 大項目 小 項 目 n 選択・判断 品物を持ち出さない,袋を開けない,食 べない 19 選択・判断 お店の人とコミュニケーションをとる 16 支払い 会計している間, 待つ 16 選択・判断 所持金の範囲内で品物の種類・数を選 択する 15 選択・判断 買う品物をレジまで持って行く, 会計 を頼む 15 選択・判断 買いたいものを決め, 意思表示する 13 選択・判断 自 が言ったものと同じ種類・数を選 択する 13 支払い レジで合計金額を満たす金額を出す 13 支払い 品物を受け取る 13 表4 できなかった行動の上位項目 n=22 大項目 小 項 目 n 選択・判断 買い物かごを持ち, 歩いて買い物する 13 表5 感想・会話 n=22 内 容 n 肯定的感想 楽しかった」 12 勉強になった」 4 否定的感想 あまり買い物に慣れてない」 3 私のお金でないからできない」 2 会話 品物に関連する話 9 例 :「今日は煮魚にする.魚と調味料も いるわね」 いい桃だね」 大きい方が得よね」 その他 9 例 :「皆さんはどれがいい?」 上手に買うわね」 どちらの野菜を選べばいいかし ら教えて」 表6 ケアの要点 ①認知症をもっていても買い物時の常識的なマナーを守る ことができるという肯定的認識のもとに, 認知症をもつ 高齢者が買い物に行くよう支援する. ②買い物を通して他者とのコミュニケーションを図り, 社 会性を広げる機会となるよう支援する. ③他者との 流より, 買いたいものを決め意思表示できる よう支援する. ④買う金額を所持金の範囲内に収めることは比較的できる ので, お金を持たせ本人が支払えるよう支援する.
社 性,社会的ルールや礼儀等の社会的感覚・能力は,認 知症をもっていても残存しやすいことが示唆された. 木 下 は老人ケアについて, 生活空間が限定された変化の 乏しい環境の中で, 日常的に社会的刺激を提供すること が「生活」の課題であると述べている.また認知症をもつ 高齢者への心理学的アプローチとして, 老人は環境に反 応し, 環境を操作することで老人の機能にプラスの変化 を与え, その変化を維持できるという え方もある. 買 い物に行くことは社会的刺激や環境の変化となり, 認知 症をもつ高齢者が持つ社会的感覚や能力を発揮する場に なる. ケア提供者は地域の店へ買い物に行き, 買い物を 通じて地域の人とも 流する機会とつくるようにすべき である. 次に,「③他者との 流より, 買いたいものを決め意思 表示できるよう支援する」について説明する. 買いたい ものは, 職員や介助者と相談しながら自 で品物を決め た人が多かった. 三好 は自己決定について, 人間は相互 の関係の中で成り立つ関係的存在であり特に高齢者にお いては他者の関わり方によって自己決定が変化すると 言っている. また相手を主体とすると同時に介助者も主 体として働きかけ, 相互的な関係の場を作ることが, 本 当に相手を主体として捉えることであると述べている. また和田 は認知症をもつ高齢者が「何を食べたいか」他 者と話し合って決める過程こそが大切と言っている. ケ ア提供者は認知症高齢者が入居者等他者の支援を受けな がらも, 何を買いたいか自己決定できる機会を多く設定 することが重要である. 「④買う金額を所持金の範囲内に収めることは比較的 できるので, お金を持たせて本人が支払えるよう支援す る.」について説明する.「お金足りるかな.」「あといくら 残っている?」との言葉が聞かれ, 対象者は所持金額を 越えないよう意識していた. 対象者は戦前から戦後の しい時代にものやお金を大切に扱い節約する生活をして きた経験があるため, 買う金額を所持金の範囲内に収め ることは比較的できる行動である. ケア提供者は所持金 額を事前にきちんと伝え, 所持金の範囲内に収まるよう 本人と一緒に確認しながら品物を選ぶことを支援すると よい. また所持金の範囲内で収められれば会計ができる ため, お金を持たせて会計時に本人が支払えるよう身守 りや声かけをすることが大切である. 過半数の人ができなかった行動の特徴と支援策 最もできなかった人数が多かったのは,「買い物かご (スーパーなどにあるプラスチック製の四角形のかご) を持ち,歩いて買い物する」13人であったが,買い物かご を おうとしない人が多かった. 買い物かごを利用する スーパーマーケットが戦後の高度成長に合わせて勢力拡 大するまでは, 自動車等の 通手段も少なく, 近所の八 百屋, 食料雑貨商, 魚屋等, 個人経営の小さな商店に行き 店員に品物を包んでもらい, それを自 の手提げかごに 入れる買い物が多かったため, 買い物かごを利用する習 慣はあまりなかったことが要因として えられる. また, 「買い物かごを持ち,歩いて買い物する」ことは,かごを 持つ行動と, 歩くという複合的な運動機能を要する行動 といえる. 13人のうち多くが歩行できる人であったが, 前傾姿勢で重いものを持つと歩行バランスが不安定にな る人もいたため, かごを持ちながら歩くという動作は困 難であったと えられる. 以上より, できない行動につ いての支援策として, 買い物かごの 用目的を伝える, 持てない場合は代わりに持つことが必要である. 今後の課題 本研究で実践したプログラムは買い物・金銭管理の訓 練の場として有効であるが, 今後は地域にある実際の店 舗における行動観察研究が必要であり, 本研究の課題で ある. また, できなかった行動を向上させるプログラム 開発と実施評価も検討すべき課題である. 謝 辞 本研究に快くご協力いただいた Bグループホームの 職員の皆様, 対象者の皆様に深く感謝いたします. 引 用 文 献 1. 永田久美子.利用者主体の暮らしとケアの実現に向けて : 痴 呆 性 高 齢 者 グ ループ ホーム の 挑 戦. 老年 社 会 科 学 2002; 24: 23-29. 2. 和田行男,宮崎和加子.大逆転の痴呆ケア.中央法規出版, 2003: 15-29. 3. 三好春樹. 介護が上手くなるための 10カ条. 関西看護出 版, 2001: 69-73, 163-175. 4. 山田ゆかり, 石橋智昭, 西村昌記ら. IADL の自立と遂行 (1): 能力と遂行の乖離. 老年社会科学 1998; 20: 61-65. 5. 木下康仁. 老人ケアの社会学. 医学書院, 1989 : 24−26. 56-59, 132, 156. 6. 宮崎和加子,日沼文江.生き返る痴呆老人 : グループホー ム「福さん家」での暮らしと実践. 筑摩書房, 2003: 164, 175.
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Behavior Characteristics in Shopping and
a M oney M anagement of Dementia Senior Citizens
Kumiko Machida,
Yoko Uchida
amd Yayoi Kotani
1 Nursing Department, Tomioka General Hospital
2 School of Health Science Faculty of Medicine Gunma University 3 Gunma Children s Medical Center
Background: This study aimed to examine behavior characteristics of the demented elderly in shopping and financial management. M aterials and M ethods: Subjects were residents in B group home and 22 users in C dementia specialty day services. Participants shopped within 2,000 yen for supper at a mimic shop using real vegetables and fruits, and food models of fishes and meats. We developed a checklist for shopping and financial management procedure and made an observation. The checklist consisted of major items such as preparation , selection and judgment ,and payment as well as 30 minor items. Results: The demented elderly achieved 9 of the 30 items,and selection and judgment was the most common while they failed only one item, do shopping with a basket . Conclusions: It is important to repeatedly practice in daily life by emphasizing what the demented elderly can do with their behavior characteristics in shopping and financial management. (Kitakanto Med J 2006;56: 225∼230)