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電気生理学でわかること

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Academic year: 2021

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電気生理学でわかること

安田 浩樹

1 群馬県前橋市昭和町3-39-22 群馬大学大学院医学系研究科教育研究支援センター ついこないだ始まったばかりの平成 28年も今日は 2月 18日と, ほぼ 50日も終わってしまいました, 時の経つのは 速いものです. 阪大から群馬大に来てほぼ 10年になりま した, こちらに来てただ年を取っただけだなと反省してい る今日この頃です. 私は神経生理学を専門にしておりまして, シナプス可塑 性や神経興奮メカニズムの解析を行ってきました. ここで は神経発達に関わるシナプス可塑性メカニズムと, 最近 行っておりますストレスによる神経興奮の制御についてご 紹介させていただきます. 神経発達に特異的なシナプス可塑性メカニズム シナプス可塑性とは一言で言えば「活動に依存したシナ プス応答の変化」であり, 高いシナプス活動によってシナ プス伝達がよくなる長期増強 (図 1B),逆に低い活動によっ て低下する長期抑圧といった現象を指します. これらは ① 記憶・学習のメカニズム, あるいは ②幼若期シナプス発達 メカニズムと えられておりますが, 私が注目しましたの は出生直後の発達期シナプス可塑性メカニズムでした. 成 熟動物で起きる海馬シナプス長期増強は, シナプス後部の カルシウム・カルモジュリン依存性タンパクキナーゼ II (CaMKII) によって誘発されますが, 出生直後の発現は弱 いこともあり, 誘発メカニズムは不明でした. 私は, 出生直 後から急激に発現が増加するタンパクキナーゼ A (PKA) ―167― 文献情報 投稿履歴: 受付 平成28年2月25日 修正 平成28年3月9日 採択 平成28年3月10日 論文別刷請求先: 安田浩樹 〒371-8511 群馬県前橋市昭和町3-39-22 群馬大学大学院医学系研究科教育研究支援 センター 電話:027-220-8298 E-mail:yasuda@gunma-u.ac.jp

流 れ

2016;66:167∼168 図1 A 海馬スライスでのシナプス応答記録の様子. B 発達期海馬 PKA 依存性長期増強 (上) と, 同時に 生じるカンナビノイド依存性長期抑圧 (下).

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が, 生後 1週海馬の長期増強を誘発することを明らかにし て論文報告しました. 発達期シナプス長期増強における PKA の役割は当時のトピックでして, 私の所属していた ラボを含めていくつかの有力ラボが競合していて, 結局 3 報がこの Nature Neuroscienceに掲載されたのですが, 私 の論文が一番早く掲載されたのは非常にラッキーでした. ところで発達期特異的の PKA 依存性長期増強は, 成熟 海馬と同様に高頻度刺激で誘発されますが, この高頻度入 力を受けなかった近傍のシナプスに, シナプス伝達長期抑 圧が誘発されることに気付きました. 図 1A の刺激電極を もう一つ海馬スライスに刺入して高頻度刺激を受けないシ ナプス応答を記録すると高頻度刺激後にシナプス応答が 徐々に減少し, かつこの長期抑圧は, カンナビノイド受容 体依存性であることがわかりました (図 2). 発達期には 抑制性シナプスの発達が不完全であることから, 回路全体 の興奮性上昇を抑えつつ, 活動の高いシナプスを長期増強 によって発達させていくメカニズムであると えられま す. 中枢ストレス反応メカニズム 最近は神経細胞の興奮性制御メカニズムのリサーチをし ております. 特に注目してますのは, ストレスによる海馬 神経細胞の興奮性亢進のメカニズムです. 中枢神経系には 気 や不安を制御している領域がいくつかあり, (特に腹 側) 海馬もその一つですが, 海馬歯状回顆粒細胞は水泳ス トレスを負荷した際に興奮性が上昇します. このストレス による興奮性亢進メカニズムを電気生理学的に調べたとこ ろ, 代謝型グルタミン酸受容体依存性興奮が上昇しており, グルタミン酸トランスポーター機能の異常がその原因であ ることが示唆されました (図 2). 現在はこの海馬歯状回の 興奮亢進が動物の行動に及ぼす影響を検討しております. 以上私の以前の仕事と現在行っておりますリサーチをご く簡単にご紹介させていただきました. みなさまには今後 ともよろしくご指導いただければと思いますとともに, 何 か電気生理学的知見に関しまして, ご質問等有りましたら お尋ねいただければ幸いです. 参 文献

1. Yasuda H, Barth AL, Stellwagen D, Malenka RC. A developmental switch in the signaling cascades for LTP induction. Nat Neurosci 2003;6:15-16.

2. Yasuda H, Huang Y, Tsumoto T. Regulation of ex-citability and plasticity by endocannabinoids and PKA in developing hippocampus. Proc Natl Acad Sci USA 2008; 105:3106-3111.

3. Huang H, Yasuda H, Sarihi A, Tsumoto T. Roles of endocannabinoids in heterosynaptic long-term depression of excitatory synaptic transmission in visual cortex of young mice. J Neurosci 2008;28:7074-7083.

電気生理学でわかること

図2 正常時の細胞と (左), ストレスによって代謝型グルタミ ン酸受容体が活性化された細胞 (右).

参照

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