高等部第○学年 特別活動学習指導案 1 単元名 「他校生徒との進路に関する協働学習」 2 指導観 ○実態観 本学級は肢体不自由の単一障がいの生徒○名で構成されており、高等学校に準ずる教育課程を履 修している。生徒はどちらも学校内では電動車椅子での移動を行っている。生徒Bは学習プリント などへの記入量を限定している。高等部第○学年時の進路学習の際に記入した「進路希望確認シー ト」からは、○名とも職種等の具体的な検討には至っていないものの、自身の体調を踏まえて在宅 勤務や通信制大学等に興味を示していることをうかがうことができた。 生徒たちは、登校から下校までの学校生活の大部分を、高等部教員と○名の生徒の人間関係の中 で過ごしており、学級生徒の構成は中学部から同じである。休日は家族と過ごす時間が多く、生徒 たちの周囲の人間関係の構成は、長期間にわたって、学校の教員、家族、同じ学級の生徒で固定さ れている。生徒たちは、授業において教員からの発問に自分なりの考えを述べたり、休み時間や放 課後において自分の興味・関心のある話題について雑談を行ったりしている。一方、自他の意見が 対立しそうな場合や支援を求めたいが周囲が慌ただしそうな場合には、自分の意見や要求を控える 様子が見られる。また、自分と考えの異なる他者と意見交換を行う機会が少ないため、相手の考え について深く考察したり、自分の考えに新たな視点を取り入れたりすることは少ない。 自宅ではスマートフォンやタブレット型コンピュータ等を使い、動画やS N Sの視聴、ゲーム等を 行うことが多い。高等部第○学年からは、授業においてコンピュータ(以下、PCと表記する。)の基 本的な操作の技術向上に取り組んでいる。○名ともにキーボードを使って両手全指でのローマ字入 力が可能で、現在の入力速度は1分間に30文字程度である。その際、生徒Bについては、キーボー ドとマウスの間の腕の移動による疲労を軽減するため、タッチパッド付のキーボードを活用してい る。 ○単元観 本単元は、ホームルーム活動の内容「(3)一人一人のキャリア形成と自己実現」の「ア 学校生 活と社会的・職業的自立の意義の理解」において、「就職先を決める際に大切にすること」を題材 とする。ここでは、題材に関する他校生徒との協働学習を通して、働くことについて自身の考えを 深めたり広げたりするとともに、自他の考えの違いを尊重した豊かな人間関係を築こうとする態度 を養うことを目指す。 就職先を決める際は、仕事内容や雇用形態、勤務地、就業時間、福利厚生等、様々な要素につい て検討を行う。大切にする要素は人によって異なるものであり、自身が大切にする要素を検討する ことは、職業生活や社会生活における自身の在り方生き方を検討することにもつながる。しかし、 多様な考えに触れる機会等が限られていたり、疾患等から多様な選択が困難であると自身が考えた りした場合は、様々な要素について検討が行われにくいことがある。そこで本単元では、他校の肢 体不自由教育部門高等部で学ぶ生徒を交えた題材についての意見交換や話合い等の協働学習を実施 し、自分にはない他者の視点により自分の考えを広げたり、他者の具体性をもった意見により自分 の考えを深めたりすることを目指す。また、生徒たちが協働学習により、自身の将来の在り方生き 方について様々な選択肢があることに気付くことで、意見や考えの違いを価値あるものと考え、自 他の違いを尊重する態度を示すことができるようにする。このような態度は、高等部卒業後、進学 や就労などによって、新たな人間関係を形成する生徒たちにとって、意義がある。 他校生徒との協働学習の際は、遠隔地との通信による同時双方向のやり取りが可能となるw e b会 議システム「Zoom」(以下、Zoomと表記する。)を活用する。Zoomは生徒たちにとって関心の高い 勤労形態の一つであるテレワークにおいて、近年活用される機会が増加したI C Tである。Zoomを安 全安心に活用するためには、パスワード管理等の情報セキュリティや自他の情報を外部に出さない 等の情報モラルが求められる。生徒がZoomの活用方法や様々な機能について学ぶ中で、情報セキュ
リティや情報モラルについて実践的に学ぶことは、将来テレワーク等の在宅勤務を検討している生 徒たちにとって、意義がある。 ○指導観 指導に当たっては、生徒たちの主体的な学習活動が行われるよう、「問題の発見・確認」、「解 決方法の話合い」、「解決方法の決定」、「決めたことの実践」、「振り返り」という過程に沿っ て単元を構成する。 第1次では、初めに学校でも一部活用されているZoomの活用を体験する。その体験やニュース等 の知識から、Zoom等のw e b会議システムにより可能となる、オンラインでの会議や授業、余暇での 交流などの具体的な活用用途を生徒たちから引き出していく。学校における生徒自身の活用用途を 考える際に、Zoomを活用した活動の内容や接続する相手等について具体的に検討する。生徒自身が 取り組む活動を具体的に検討する中で、高等部第○学年という時期に際して、進路についての多様 な情報や意見の不足という「問題の発見・確認」に至るようにし、その問題を解決すべき課題とし て設定する。「解決方法の話合い」では、進路についての多様な情報や意見の不足という課題を解 決するための、具体的な活動内容を検討する。「解決方法の話合い」により、Zoomで接続する相手 や活動内容等の概要が定まったら、教員は他校の肢体不自由教育部門高等部で学ぶ生徒との進路に 関する協働学習を行うことを提案し、「解決方法の決定」を行う。協働学習に際しては、正しい知 識なしにZoomを活用した場合は通信内容が第三者に漏れる可能性があることや自他の顔や名前が画 面に映ること等について、その是非を考える機会を設定することで、パスワードの管理等の情報セ キュリティや情報モラルの基本的な知識を身に付けることができるようにする。 第2次では「決めたことの実践」として、他校の肢体不自由教育部門高等部で学ぶ生徒とのZoom を活用した遠隔合同授業を行う。初めは自己紹介を交えながら交流を深め、「就職先を決める際に 大切にすること」を題材に意見交換や話合い活動を行うことを2校の生徒たちが共通確認し、題材 についての自分の意見をまとめる。正解が一つではない題材であることを踏まえ、生徒が他者の意 見の正否に固執するのではなく、他者の意見を理解しようとする姿を引き出せるよう、協働活動が 自身の課題を解決するための取組であるという活動の目的を改めて確認する。協働活動では、題材 について互いの意見を発表した後、その意見を生徒たちが話し合いながら仕事内容や雇用形態、勤 務地、就業時間、福利厚生等の要素に分類する。特定の要素への自分の意見の偏りや他者の自分に はない要素、他者の具体的な意見等に気付くことで、自身の考えを深めたり広げたりできるように する。「振り返り」では自分の考えが深まったり広がったりしたことは、意見や考えの違う他者に よるものであることを確認し、自他の意見や考えの違いを尊重して豊かな人間関係を築くことの大 切さに気付くことができるようにする。 単元全体を通して、生徒一人一人がPCを操作しながら授業を展開する。ノートや学習プリントの 代わりに、WordやE x c e l等のPCのデータ上に生徒が学習記録を入力していくことで、筆記用具で行 う「書く」、「消す」等の動作による身体面での負担を減らすようにする。また、PCのモニターが大 きいものを活用することで、姿勢を変えずに細かな文字等を見ることができるようにする。Zoomを 活用する際は、同じ教室内で教員と生徒の○名がZoomを活用するため、ハウリング対策としてヘッ ドフォンとマイクが一体となったヘッドセットをPCに接続する。ヘッドセットは、軽量タイプのも のを使用し、身体面の負担にならないようにする。 3 単元目標 ○ 課題解決のために必要な活動とその活動における自他の役割を理解し、集団の中での自身の役 割を果たすことができる。 【知識及び技能】 ○ 自分と意見の異なる他者を尊重して、他者の考えを基に、自分の考えを深めたり広げたりする ことができる。 【思考力・判断力・表現力等】 ○ 自他の考えの違いを肯定的に捉えて、豊かな人間関係を築こうとする態度を身に付けることが できる。 【学びに向かう力、人間性等】
4 指導計画 第一次 社会での新たなコミュニケーションツール・・・・・・・・・・2時間 1 Zoomを活用した離れた場所にいる人とコミュニケーション・・・1時間 2 Zoomを活用した学習活動決めと活動に必要な機能の習得・・・・1時間 第二次 Zoomを活用した他校生徒を交えた協働学習・・・・・・・・・・2時間 1 福岡県立C特別支援学校生徒との交流・・・・・・・・・・・・1時間 2 福岡県立C特別支援学校生徒を交えた協働学習・・・・・・・・1時間(本時) 5 本時 (1) 本時指導の考え方 前時までに、生徒はZoomの基本的な機能及びミーティングID等の管理、自他の情報の取扱い等の 情報セキュリティ、情報モラルについて学習し、福岡県立C特別支援学校生徒(以下、生徒Cと表 記する。)と自己紹介を含めた交流を行っている。また、「就職先を決める際に大切にすること」を 本時の協働学習の題材とすることを共通確認し、題材についての意見をE x c e lのワークシートに入 力している。入力した各生徒の意見は、本時のワークシートに教員が転記している。 本時は本学級生徒と生徒CをZoomで接続し、意見交換や話合い活動等の協働学習を通して、自分 にはない他者の意見により自分の考えを広げたり、他者の具体性をもった意見により自分の考えを 深めたりするとともに、自他の考えの違いを価値あるものと捉え、豊かな人間関係を築こうとする 態度を養うことを目指す。 授業の展開は、①題材に関する意見交換、②話合い活動による意見の分類、③協働学習から考え たことの発表の流れで行う。 ①では、自分が考える「就職先を決める際に大切にすること」について、それぞれが意見を発表 する。発表者は、意見を入力したセルに色を付け画面共有によりワークシートを提示することで、 他者が自分の意見に注目しやすいようにする。発表者に対して質問を行う際は、画面上で実際に手 を挙げたり、反応機能を活用したりする。 ②では、①で生徒が発表した全ての意見について話し合いながら、「職種」、「仕事内容①(やり がいや自己の成長に関すること)」、「仕事内容②(自分にできそうなこと)」、「就業場所」、「就業時 間」、「職場環境」、「賃金」、「福利厚生」、「その他」の9個のカテゴリへの分類を行う。話合い活動 では、生徒が「司会」、「操作・記録」、「計時」の三つの役割を分担し、役割を担いながら話合いを 進める。「司会」は、全員が話合い活動に参加し、意見を述べることができるよう進行を行う。「操 作・記録」は、自らのワークシートを画面共有で他の生徒に提示し、話合いにより決まっていく分 類に係るPCの操作を自身のワークシート上で行うことで、記録を作成する。その際、生徒の意見が 入力されたセルに①で各生徒が決めた色を付けることで、分類される意見が誰の意見であるか分か りやすいようにする。「計時」は、話合い活動の経過及び終了時間を確認し、活動の進捗管理を行 う。三つの役割については、E x c e lのワークシートの別シートに説明を掲載し、役割を決める際や 進行方法を確認する際に活用できるようにする。また、話合い活動においては、参考にしたい他者 の意見を互いに挙げるよう促し、「操作・記録」の生徒がその意見をフォントの色を変えて表示する ことで挙げられた意見を視覚的に捉えやすいようにする。 ③では、意見の分類から考えたことをまとめることができるように、完成した意見の分類を教員 が画面共有で提示し、セルの色の違いによる自他の意見の分類傾向や文字の色の違いによって示さ れた参考にしたい他者の意見に着目させる。生徒がまとめを発表した後、教員は発表者にまとめに おいて参考にした点を問うことで、他者への価値付けを促していく。最後に協働学習の感想を述べ る機会を設定し、他者との意見交換や話合いの意義を改めて確認する。 授業は、教員と生徒が一人一台のPCを活用し、それぞれのモニターの左半分にはZoomの画面を、 右半分には自身のワークシートを映す。Zoomの画面には画面共有により、ワークシートを提示し、 授業の進行に合わせてめあてや生徒の発表した意見等を入力することで、授業の展開が生徒に分か りやすいようにする。また、他校生徒との通信を行っている間は、生徒の氏名という個人情報を保 護する目的から、前時と同様に互いの呼名はニックネームを使用する。
授業全体を通して、生徒の支援を行う教員を配置することで、Zoomの機能の活用やPCの操作等に 関して、生徒が対処しにくい問題を即時に対処し、授業が円滑に進行するようにする。また、必要 に応じて生徒が装着したヘッドセットの位置や姿勢の調整を支援する。 (2) 本時の目標 ○ 話合い活動における自身の役割を理解して、役割を果たすことができる。 【知識及び技能】 ○ 他者の意見から自分の考えを広げたり深めたりすることができる。 【思考力・判断力・表現力等】 ○ 多様な考えをもつ他者との意見交換や話合い活動を価値あるものと捉えることができる。 【学びに向かう力、人間性等】 (3) 準備 ア Zoomに関する準備 前日までに指導者用PCで、Zoomのミーティングのスケジュールに授業の日時を登録する。その 際、詳細オプションから「待合室の有効」、「全参加者の画面共有」の設定を行う。スケジュール の登録により発行されたミーティングIDとパスワードは、授業担当者が遠隔合同授業の相手校の 学級担任宛に校務用PCのメールで送信する。 授業開始15分前までに、教員はミーティングのホストとして先に入室し、音声テストを完了し ておく。生徒用PCは名前をニックネームに変更した後、待合室まで入室し、音声テストを完了し ておく。 イ 準備物 ①指導者用PC及び生徒用PC ②学習プリント ③キーボード ④タッチパッド付キーボード ⑤マウス ⑥24インチテレビモニター ⑦両耳用ヘッドセット ⑧片耳用ヘッドセット ⑨生徒用PCの固定スタンド (4) 展開 配時 学習活動・内容 指導支援・留意点 教材 教具 評価 導 入 5 分 1 本時の目標を知る。 ○ 前時のワークシートから、協 働学習の三つのルールを確認す る。 ○ 学習プリントに本時のめあて を入力する。 ○ 本時の流れを知る。 ・ヘッドセットやキーボード、モニ ターの位置を整えることで、生徒 がPCを操作しやすいようにする。 ・前時のワークシートを画面共有で 提示することでルールを振り返る ことができるようにする。 ・T2、T3の教員は、必要に応じ て入力操作の支援を行う。 ・学習活動の概要を説明し、本時の 活動の見通しをもつことができる ようにする。 ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ 「就職先を決める際に大切にすること」の分類を行い、考えたことを発 表しよう。
展 開 ① 10 分 2 題材について意見交換を行う。 ○ 自分の意見のセルに色を付け たワークシートを画面共有で提 示し、意見を発表する。 ○ 他者の意見を聞く。 ○ 分からない言葉や疑問に感じ た点について質問を行う。 ・自分の意見のセルに付ける色は、 他者に意見の文字が見えやすいよ うに淡色を選択するよう言葉掛け を行う。 ・質問を行う際は挙手だけでなく反 応機能の活用が可能であることを 伝え、質問を行いやすいようにす る。 ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ 2 展 開 ② 20 分 3 話合い活動を行いながら意見を 分類する。 (1) 話合い活動における役割を決め る。 (2) すべての意見を9個のカテゴリ に分類する。 ○ 司会:全員が話合いに参加で きるよう発言していない生徒に 意見を求めたり、発表された意 見をまとめたりする。 ○ 操作・記録:画面共有で自分 のワークシートを提示し、意見 の入力されたセルを移動したり 参考にしたい意見のフォントの 色を変えたりする。 ○ 計時:5分前の確認を行う。 ・「話合いの進め方」のシートで各 役割の行うことを確認する。 ・各カテゴリの概要を説明する。 ・T2、T3の教員は、必要に応じ て意見のカテゴリへの分類を支援 する。 ・話合い活動で行われた意見の分類 は、適時指導者用PCのワークシー トに入力する。 ・必要に応じて意見の分類に係るPC の操作を支援する。 ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ 1 2 展 開 ③ 10 分 4 意見交換や話合い活動から考え たことを発表する。 ○ 自分の意見を入力する。 ○ 自分のワークシートを画面共 有で提示し、考えたことを発表 する。 ○ 他者の意見を聞く。 ・生徒が意見をまとめることができ るように、教員はカテゴリ分けの 結果を画面共有で提示する。 ・まとめの際に参考にした点を問う ことで、他者への価値付けを促し ていく。 ・指導者用PCのワークシートに発表 された意見を入力することで、生 徒が視覚的に意見を確認できるよ うにする。 ・個別の疲れの状態や入力速度に配 慮して、可能な範囲での入力を求 める。 ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ 2 2 3
ま と め 5 分 5 本時の学習を振り返る。 ○ 本時の学習を振り返る。 ○ 本時の学習の感想を述べる。 ○ ミーティングを終了する。 ・遠隔での協働学習を設定した理由 を再確認する。 ・ギャラリービュー設定を行うこと で、互いの顔が大きく映るように する。 ・ミーティング終了後、生徒にヘッ ドセットを外すよう促す。 ① ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ 2 3 (5) 配置図 (福岡県立D特別支援学校) (福岡県立C特別支援学校) (6) 本時の評価 活動 評価項目 評価方法 評価 1 話合い活動における自身の役割を理解して、役割を果たすこ とができる。 様相観察 4 - 3 - 2 - 1 2 他者の意見から自分の考えを広げたり深めたりすることがで きる。 様相観察・発表 学習プリント 4 - 3 - 2 - 1 3 多様な考えをもつ他者との意見交換や話合い活動を価値ある ものと捉えることができる。 様相観察 発表 4 - 3 - 2 - 1 評価:4(できた)-3(だいたいできた)-2(ほとんどできていない)-1(できなかった)