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小学校算数のコンピュータ使用型調査におけるモードエフェクトに関する研究

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Academic year: 2021

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小学校算数のコンピュータ使用型調査におけるモー

ドエフェクトに関する研究

著者

銀島 文

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学位授与機関

Tohoku University

学位授与番号

教情博第48号

URL

http://hdl.handle.net/10097/00128568

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教情 8 ぎん しま ふみ

銀 島 文

学 位 の 種 類 博士(教育情報学) 学 位 記 番 号 教情博 第 48 号 学位授与年月日 令和 2 年 3 月 25 日 学位授与の要件 学位規則第 4 条 1 項該当 研 究 科 ・ 専 攻 東北大学大学院教育情報学教育部(博士課程後期3年の課程) 教育情報学専攻 学 位 論 文 題 目 小学校算数のコンピュータ使用型調査におけるモードエフェクト に関する研究 論 文 審 査 委 員 (主査) 教 授 倉 元 直 樹 准教授 宮 本 友 弘 准教授 熊 谷 龍 一

< 論 文 内 容 の 要 旨 >

本研究は全 7 章の構成となっている。 第1章序論は研究の意義について論じている。最初に「モードエフェクト」とは「紙 筆型調査をコンピュータ使用型調査へと調査モードを変更した場合の解答への影響」で あり,本研究ではデバイスの種類と文字入力スキルを分析対象とすることが示された。 次に,国際的教育調査で急速に普及しているコンピュータ使用型調査の動向を概観し, 情報社会の進展とわが国の学齢前の子どもたちのコンピュータリテラシーの現況に言 及した。一方,初中等教育における日本語表記と文字入力技術の学習が,家庭で自然習 得される文字入力スキルと不整合な状況が示され,文字入力方式から見たわが国のコン ピュータ使用型調査をめぐる問題点が示された。以上の観点から,本研究の研究課題が 提示された。 第2章は研究方法についてまとめた章である。本研究で用いられたデータは TIMSS

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(Trends in International Mathematics and Science Study, 国際理科教育・動向調査) の 2019 年調査に関連してわが国で実施されたプレパイロット調査,パイロット調査で 取得されたものである。小学校4年生の文字入力スキル(第3,4,6章),中学校2年 生の文字入力スキル(第4章),小学校4年生の TIMSS パイロット調査数学問題の一部 (第5,6章)で,紙筆形式と3種類のコンピュータ形式の合計4種類の実施形式が含 まれている。 第3章ではタブレット端末を用いた小学校4年生の日本語文字入力スキル調査が行 われた。入力デバイスのキー配列について,物理キーボードの標準である QWERTY 配 列と日本語スマートフォンの標準であるケータイ配列の2水準,入力ツールにはタッチ ペンと指の2水準が設定された。課題は予め提示されている文章を5分間で入力するも のである。44 名分の結果に対して2要因配置の分散分析を行ったところ,キー配列の主 効果のみが有意であり,ケータイ配列が QWERTY 配列を上回った。以後,キー配列の 効果が検討の対象となった。 第4章ではタブレット端末と PC 端末の文字入力スキルについて,小学校4年生と中 学校 2 年生のデータが比較された。学年は2水準,文字入力方式は「PC-QWERTY」「タ ブレット-QWERTY」「タブレット-ケータイ」の3水準で 1,167 名分の結果に対して2 要因配置の分散分析が行われた。その結果,交互作用,2つの主効果の全てが有意であ った。中学2年生は小学校4年生よりも入力文字数が多かった。学年ごとに単純主効果 を求めたところ,いずれも成績順に「タブレット-ケータイ」,「PC-QWERTY」,「タブレ ット-QWERTY」となった。 第5章では小学校4年生の PBA(紙筆調査)と CBA(コンピュータ調査)の算数得 点が比較された。TIMSS パイロット調査の「算数ブロック M08」が利用された。問題 形式は選択式5問,短答式5問,記述式1問の計 11 問,記述式のみ2点満点の計 12 点 満点,解答時間はもう一つのブロックと合わせて 36 分間であった。解答者数は PBA が 136 名,CBA3水準がそれぞれ 42~43 名であった。結果は PBA が平均 6.91,「タブレ ット-ケータイ」が 5.93,「PC-QWERTY」が 5.35,「タブレット-QWERTY」が 4.95 で あった。1 要因配置の分散分析の結果,PBA と QWERTY 配列の2つの群に差が見られ た。項目ごとに正答率を比較した結果も,ほとんど PBA が CBA を上回っていた。 第6章では算数得点と文字入力スキルを合わせることで,文字入力スキルの違いが算 数得点に直接的に与える影響について分析を行った。対象者とデータは第5章と同一で ある。その結果,文字入力スキルと算数得点には中程度の相関が見られた。また, QWERTY 配列の2水準では PBA と比較して文字入力スキルと算数得点との相関が高 かったが,有意な違いは見られなかった。ケータイ配列と算数得点との相関は PBA を 下回った。総じて文字入力スキルの習熟度が CBA の算数得点に直接影響している可能 性が示唆されたものの,明確な影響は検出されなかった。 第7章では,以上の成果を受けて総合的な考察が行われた。第3章から,わが国の児 童生徒がコンピュータリテラシーで抱える課題の中心が日本語表記の複雑さに由来す る入力スキルの問題であることが明らかとなった。第4章では中学校段階では入力スピ

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教情 10 ードが増すものの,入力スキル問題の解消には至っていないことが明らかとなった。第 5章,第6章では入力スキルが CBA の算数得点に影響することが明らかとなった。本 研究には一部に技術的な課題もあるものの,小学校段階で CBT を PBT の代替として用 いるには,その前に日本語表記文字入力の問題が解消される必要があり,それにまつわ る様々な研究課題が存在することが示された。

< 論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨 >

近年,急速に発展しているコンピュータ技術に伴い,大規模調査の CBT(Computer Based Testing,本研究の表現に従えば CBA)化が進んでいる。とりわけ,PISA を代 表とする国際比較調査は既に実用化の段階に入っている。背景には一般社会における ICT 機器の浸透がある。わが国でも家庭にスマートフォンが普及し,学齢前から子ども たちが ICT 機器に親しむ環境ができてきた。その一方で,日本語は表記が複雑で,日本 語入力には他の言語には見られない特有の課題がある。この問題を解決しない限り, CBT を PBT の代替として用いるべきではできない。本研究は,グローバル化とデジタ ル化が進むわが国の教育に潜在しながらも,明確に指摘されてこなかった問題に焦点を 当てたことに社会的には大きな意義がある。 本来,入力スキルの影響は作文や長い文章を記述するようなタイプの課題で顕著に表 れるものである。ところが,本研究は,選択式や短答式,簡単な記述式問題の水準にあ っても,小学校 4 年生の段階では PBT と比較して CBT の成績にはコンピュータ入力ス キルの問題が無視できない影響を及ぼしていることが示された。単純な事実ではあるが, 国際比較調査結果の解釈に加えて,小学校段階の日本語表記の教育やコンピュータリテ ラシー教育にも影響を及ぼす重大な結果である。 本研究の制約は,ひとえに利用したデータの性質に由来する。国際比較調査 TIMSS パイロット調査の企画主体は IEA(International Association for the Evaluation of Educational Assessment,国際教育到達度評価学会)とわが国の代表機関である国立教 育政策研究所であり,プレパイロット調査は国立教育政策研究所であった。本研究は両 機関の許可の下に行われた調査であることから,データの規模と調査デザインにはおの ずから制限があった。その中で得られた成果であることには留意すべきである。 予備審査から本審査に至る過程では,論文の構成や表現に不明瞭な部分が複数個所指 摘されたが,完成稿においては概ね解消された。本研究が提起した課題には,本研究が 抱える技術的な難点をはるかに超えた社会的意義と影響力があり,その点では特筆すべ き成果が得られたと評価される。 よって,本論文は博士(教育情報学)の学位論文として合格と認める。

参照

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