に関する研究
著者
加勢田 健志
学位授与機関
Tohoku University
修士学位論文
<論文題目>
流通式超臨界水熱合成法による
KNbO
3
微粒子の合成に関する研究
提出者
東北大学大学院環境科学研究科
環境化学・生態学コース
学籍番号 A8GM1308
氏名
加勢田健志
指導教員
Richard Lee Smith Jr. 教授
研究指導教員 渡邉賢 准教授
審査委員
○Richard Lee Smith Jr. 教授
1. 垣花眞人 教授 2. 滝沢博胤 教授
提出者 略歴
か せ だ け ん じ氏名 加勢田 健志
昭和 60 年 4 月 23 日生
本籍 福岡県
略歴事項
平 成 16 年 4 月 1 日 東 北 大 学 工 学 部 化 学 ・ バ イ オ 工 学 科 入 学
平 成 20 年 3 月 25 日
同
卒 業
平 成 20 年 4 月 1 日 東 北 大 学 大 学 院 環 境 科 学 研 究 科 入 学
平 成 22 年 3 月 25 日
同
卒 業
目 次
第 1 章 緒 論 1.1 本 研 究 の 背 景 1 1.2 本 研 究 の 目 的 3 1.3 本 論 文 の 構 成 4 第 2 章 既 往 の 研 究 2.1 緒 言 5 2.2 水 熱 合 成 法 に よ る KNbO3微 粒 子 の 合 成 5 2.2.1 反 応 条 件 5 2.2.2 結 晶 構 造 7 2.3 超 臨 界 水 を 反 応 場 と し た 水 熱 合 成 法 に よ る KNbO3微 粒 子 の 合 成 9 2.4 超 臨 界 水 11 2.4.1 超 臨 界 水 の 物 性 11 2.4.2 超 臨 界 水 中 に お け る 金 属 酸 化 物 の 溶 解 度 12 2.5 流 通 式 超 臨 界 水 熱 合 成 法 13 2.5.1 流 通 式 装 置 13 2.5.2 反 応 速 度 15 2.6 結 言 16 第 3 章 流 通 式 超 臨 界 水 熱 合 成 法 に お け る 合 成 条 件 の 探 索 3.1 緒 言 17 3.2 実 験 17 3.2.1 試 料 17 3.2.2 流 通 式 装 置 17 3.2.3 実 験 方 法 18 3.2.4 実 験 条 件 19 3.2.5 分 析 20 3.3 KNbO3の 合 成 に 適 し た 反 応 条 件 の 探 索 213.4 生 成 物 に 与 え る KOH 濃 度 の 影 響 23 3.5 生 成 物 に 与 え る 反 応 温 度 の 影 響 25 3.5.1 目 的 25 3.5.2 実 験 方 法 25 3.5.3 実 験 結 果 26 3.5.4 KOH 濃 度 お よ び 反 応 温 度 依 存 性 に 関 す る 総 括 26 3.6 粒 子 の 粒 径 ・ 形 状 の 制 御 性 の 評 価 27 3.7 結 言 29 第 4 章 生 成 物 の 純 度 お よ び 粒 子 形 状 に 与 え る 各 操 作 因 子 の 影 響 31 4.1 緒 言 29 4.2 実 験 29 4.2.1 実 験 装 置 ・ 試 料 29 4.2.2 実 験 方 法 お よ び 条 件 30 4.2.3 分 析 30 4.3 反 応 器 の 材 質 お よ び 出 発 物 質 が 生 成 物 の 純 度 に 与 え る 33 4.4 各 操 作 因 子 が 粒 子 の 粒 径 ・ 形 状 の 制 御 性 に 与 え る 影 響 35 4.5 結 言 37 第 5 章 流 通 式 装 置 の 反 応 管 構 造 の 検 討 39 5.1 緒 言 39 5.2 実 験 方 法 39 5.2.1 試 料 39 5.2.2 流 通 式 装 置 39 5.2.3 実 験 方 法 40 5.2.4 実 験 条 件 40 5.2.3 分 析 方 法 40 5.3 実 験 結 果 41 5.4 結 言 42
第 6 章 総 括 43 6.1 結 言 43 6.2 今 後 の 検 討 44 Appendices 45 Appendix1 Nb2O5ゾ ル 45 Appendix2 流 通 式 装 置 の 混 合 部 47 Appendix3 XRD 回 折 ピ ー ク の 帰 属 詳 細 48 Appendix4 臨 界 点 近 傍 の 温 度 依 存 性 50
Appendix5 生 成 物 の TEM 像 お よ び SEM 像 51
Appendix6 生 成 物 の 結 晶 相 に 与 え る 反 応 時 間 の 影 響 54
Appendix7 今 後 の 展 望 : DAC に よ る 結 晶 成 長 の 観 察 55
Reference 57
第 1 章 緒 論
1.1 本 研 究 の 背 景 圧 電 材 料 は 機 械 エ ネ ル ギ ー と 電 気 エ ネ ル ギ ー の 相 互 変 換 素 子 で あ り 、マ イ ク ロ フ ォ ン や ス ピ ー カ ー な ど の 身 近 な 電 子 機 器 か ら 圧 電 ア ク チ ュ エ ー タ ー や 表 面 弾 性 波( SAW)フ ィ ル タ ー な ど の 複 雑 な デ バ イ ス に 至 る ま で 幅 広 く 用 い ら れ て い る 。 現 在 、 圧 電 材 料 と し て 最 も 普 及 し て い る も の の 一 つ と し て PbTiO3と PbZrO3の 固 溶 体 で あ る ジ ル コ ン 酸 チ タ ン 酸 鉛( PZT)の セ ラ ミ ッ ク ス が 挙 げ ら れ る 。PZT系 圧 電 セ ラ ミ ッ ク ス は 有 害 物 質 で あ る 鉛 成 分 を 重 量 比 で 60%以 上 含 有 し て お り 、使 用 後 に 埋 め 立 て 廃 棄 さ れ た 電 子 機 器 か ら 酸 性 雨 の 影 響 で 鉛 が 溶 出 し 、最 終 的 に 地 下 水 を 汚 染 す る こ と が 懸 念 さ れ て い る 。そ の た め 、鉛 フ リ ー 圧 電 セ ラ ミ ッ ク ス の 開 発 が 積 極 的 に 実 施 さ れ て お り 、候 補 材 料 の 一 つ と し て ニ オ ブ 酸 カ リ ウ ム( KNbO3)が 注 目 さ れ て い る 。KNbO3は ペ ロ ブ ス カ イ ト 型 構 造 の 強 誘 電 体 物 質 で あ り 、 単 結 晶 が 優 れ た 電 気 機 械 結 合 定 数 を 示 す1 , 2 )こ と が 報 告 さ れ て い る 。ま た 、キ ュ リ ー 点 も 450℃ と 高 く 動 作 温 度 範 囲 が 広 い こ と か ら 、 KNbO3は 鉛 フ リ ー 圧 電 セ ラ ミ ッ ク ス の 有 力 候 補 と し て 注 目 さ れ て い る3 )。 KNbO3圧 電 セ ラ ミ ッ ク ス の 作 成 方 法 と し て 、KNbO3の 合 成 、粉 砕 、焼 結 工 程 を 経 る プ ロ セ ス が 考 え ら れ る 。KNbO3は 五 酸 化 ニ オ ブ( Nb2O5)と 炭 酸 カ リ ウ ム( K2CO3)を 高 温 下 で 焼 成 す る 固 相 合 成 法 に よ っ て 合 成 可 能 で あ る が 、KNbO3 は 不 一 致 溶 融 化 合 物 で あ る こ と に 加 え 、高 温 下 に お い て K2Oが 揮 発 し や す い た め 生 成 物 の 組 成 制 御 が 非 常 に 難 し い 物 質 で あ る 。ま た 、粉 砕 工 程 に お い て 不 純 物 が 混 入 し や す く 、 粉 砕 後 の 粒 子 は 粒 径 ・ 形 状 と も 不 揃 い と な る 。 高 性 能 の KNbO3圧 電 セ ラ ミ ッ ク ス 作 成 の た め に は 、生 成 物 の 純 度 お よ び 組 成 の 厳 密 な 制 御 ( K/Nb = 1) と 、 粒 径 ・ 形 状 が 均 一 な 微 粒 子 の 使 用 が 重 要 と な る 。 固 相 合 成 法 で は こ れ ら の 要 求 を 満 た す こ と は 困 難 で あ る た め 、生 成 物 の 組 成 や 粒 径 の 制 御 性 に 優 れ た 水 熱 合 成 法 に よ る KNbO3粉 末 の 合 成 が 提 案 さ れ て い る 。 KNbO3の 水 熱 合 成 は 回 分 式 反 応 器 を 用 い 、反 応 温 度 を 200℃ 前 後 と し て 五 酸 化 ニ オ ブ( Nb2O5)を 高 濃 度 の 水 酸 化 カ リ ウ ム( KOH)水 溶 液 と 反 応 さ せ る 手 法 を と る4 ~ 9 )。 水 熱 合 成 法 は 固 相 合 成 法 に 比 べ て 低 温 で の 合 成 が 可 能 、 生 成 物 の 組 成 や 粒 径 の 制 御 性 が 良 好 、結 晶 性 の 高 い 微 粒 子 が 析 出 す る と い っ た 特 徴 を 有 し て い る た め 、セ ラ ミ ッ ク ス の 原 料 粉 末 の 合 成 に 適 し た 手 法 で あ る 。既 往 の 研 究 に お い て も 、回 分 式 の 水 熱 合 成 法 に よ り 微 細 で 化 学 量 論 比 の KNbO3粉 末 を合 成 し 、 そ の 粉 末 を 焼 結 さ せ る こ と で 高 性 能 セ ラ ミ ッ ク ス 試 料 の 作 成 が 報 告4 , 5 )さ れ て い る 。 し か し 、 低 濃 度 の 水 酸 化 カ リ ウ ム 水 溶 液 中 で は 反 応 が 進 行 し な い6 )た め 、濃 度 が 10 M前 後 の 水 酸 化 カ リ ウ ム 水 溶 液 を 使 用 し て お り 、環 境 負 荷 が 非 常 に 大 き い と い う 課 題 が あ る 。ま た 、回 分 式 反 応 器 の 使 用 は 昇 温 時 に 核 発 生 が 起 き や す く 、数 時 間 に も 及 ぶ 反 応 中 に 結 晶 成 長 が 進 む た め 生 成 物 の 粒 径 を マ イ ク ロ メ ー ト ル 以 下 に 制 御 す る こ と が 困 難 と な っ て い る 。圧 電 セ ラ ミ ッ ク ス 等 の 電 子 部 品 は 更 な る 小 型 化 や 高 性 能 化 が 求 め ら れ て い る た め 、セ ラ ミ ッ ク ス 原 料 粉 末 の 更 な る 微 粒 子 化 、 す な わ ち ナ ノ 粒 子 化 も 重 要 な 課 題 と な る 。 こ れ ら の 課 題 に 対 し て 、当 研 究 室 で は 水 熱 合 成 の 反 応 場 と し て 超 臨 界 水 を 用 い る こ と が 有 効 だ と 考 え て い る 。超 臨 界 水 と は 、温 度・ 圧 力 が 水 の 臨 界 点( 温 度 374℃ 、飽 和 蒸 気 圧 22.1 MPa)を 超 え た 状 態 の 水 の こ と で あ る 。超 臨 界 水 は 、 酸 や ア ル カ リ 、有 機 溶 媒 を 添 加 す る こ と な く 、温 度 お よ び 圧 力 の 操 作 の み で 系 内 の 反 応 平 衡 お よ び 反 応 速 度 を 厳 密 に 制 御 す る こ と が 出 来 る た め 、環 境 調 和 型 の 反 応 晶 析 溶 媒 と し て の 利 用 が 期 待 さ れ て い る 。さ ら に 、超 臨 界 域 で は 通 常 の 水 熱 合 成 条 件 に 比 べ 、金 属 酸 化 物 の 溶 解 度 を 極 め て 低 い 値 に 設 定 す る こ と が 可 能 で あ る こ と に 加 え 、水 熱 反 応 速 度 が 著 し く 上 昇 す る こ と か ら 、ナ ノ サ イ ズ 金 属 酸 化 物 微 粒 子 の 高 速 合 成 に 適 し た 反 応 場 と 言 え る 。こ の よ う な 超 臨 界 水 の 特 性 を 最 大 限 に 引 き 出 す た め に は 、温 度 、圧 力 お よ び 反 応 時 間 の 厳 密 な 設 定 が 必 要 で あ り 、原 料 金 属 塩 水 溶 液 の 急 速 昇 温・反 応 液 の 急 速 冷 却 が 可 能 な 装 置 設 計 が 不 可 欠 と な る 。そ こ で 、流 通 式 装 置 を 用 い 、常 温 の 原 料 金 属 塩 水 溶 液 と 予 熱 し た 超 臨 界 水 を 混 合 す る こ と に よ り 原 料 を 急 速 に 昇 温 し 、瞬 時 に 高 い 過 飽 和 度 を 与 え ナ ノ サ イ ズ 金 属 酸 化 物 を 合 成 さ せ 、 反 応 液 を 冷 却 水 に よ り 間 接 冷 却 し 、 反 応 を 停 止 さ せ る こ と が 可 能 で あ る 流 通 式 超 臨 界 水 熱 合 成 法 に よ る 検 討 を 行 っ て い る 。本 手 法 は 、急 速 昇 温 に よ る 瞬 時 の 高 過 飽 和 度 の 付 与 に よ り 、均 一 核 発 生 を 起 こ さ せ る こ と が 可 能 で あ り 、 原 理 的 に は 生 成 粒 子 の 粒 径 、 結 晶 構 造 、 組 成 お よ び 形 態 を 高 次 元 で 制 御 が 可 能 で あ る 。 こ れ ま で に 本 手 法 に よ っ て 、KNbO3と 同 じ ペ ロ ブ ス カ イ ト 型 構 造 の 強 誘 電 体 物 質 で あ る チ タ ン 酸 バ リ ウ ム( BaTiO3)に 関 し て 、一 次 粒 子 径 11 nmの 粒 子 の 高 速 合 成 が 報 告1 0 )さ れ て い る 。ま た KNbO 3の 回 分 式 水 熱 合 成 に 関 し て 、超 臨 界 水 を 反 応 場 と す れ ば 濃 度 が 0.25~0.50 Mの 水 酸 化 カ リ ウ ム 水 溶 液 中 で も KNbO3 が 合 成 で き る こ と が 報 告11 )さ れ て い る 。こ れ ら の こ と か ら 、流 通 式 超 臨 界 水 熱
合 成 法 な ら ば 、「 使 用 す る ア ル カ リ 濃 度 の 低 減 」「 反 応 時 間 の 大 幅 短 縮 」「 KNbO3 の ナ ノ 粒 子 化 」の 同 時 達 成 が 期 待 さ れ る 。し か し 、本 法 に よ る KNbO3の 合 成 に 関 す る 知 見 は 僅 少 で あ る た め 、本 手 法 を 用 い た 合 成 に お い て 出 発 物 質 、反 応 温 度 、圧 力 な ど の 操 作 因 子 が 生 成 す る 結 晶 相 に 与 え る 影 響 に つ い て 検 討 を 行 う こ と は 重 要 で あ る 。ま た 、本 研 究 に お け る 目 的 物 質 で あ る KNbO3は セ ラ ミ ッ ク ス と し て の 応 用 が 期 待 さ れ て い る た め 、結 晶 相 だ け で は な く 、粒 子 の 粒 径・形 状 、 純 度 な ど の 特 性 に つ い て も 操 作 因 子 に よ る 影 響 を 検 討 す る 必 要 が あ る 。 1.2 本 研 究 の 目 的 本 研 究 で は 、流 通 式 超 臨 界 水 熱 合 成 法 に よ る KNbO3の 合 成 を 行 い 、従 来 の 回 分 式 反 応 器 を 用 い た 亜 臨 界 水 中 で の 水 熱 合 成 法 に 比 べ て「 使 用 す る ア ル カ リ 濃 度 の 低 減 」「 反 応 時 間 の 大 幅 短 縮 」「 KNbO3の ナ ノ 粒 子 化 」 を 目 的 と し て い る 。 ま た 、 KNbO3は 他 の ア ル カ リ ニ オ ブ 酸 系 素 材 で あ る ニ オ ブ 酸 ナ ト リ ウ ム ( NaNbO3) や ニ オ ブ 酸 リ チ ウ ム ( LiNbO3) と 固 溶 化 さ せ る こ と で 、 圧 電 セ ラ ミ ッ ク ス と し て の 機 能 を 高 め る 研 究 も 行 わ れ て い る1 2 , 1 3 )。そ の た め 、本 研 究 で 得 ら れ た 知 見 を 応 用 す る こ と で 他 の ア ル カ リ ニ オ ブ 酸 系 素 材 ( NaNbO3,
LiNbO3, etc ) の ナ ノ 粒 子 化 と 、 そ れ に 伴 う KNbO3系 セ ラ ミ ッ ク ス の 高 機 能 化
が 期 待 で き る 。
具 体 的 に は ま ず 、流 通 式 装 置 を 用 い た 合 成 に よ り KNbO3を 単 相 で 合 成 可 能 な
条 件 の 選 定 を 行 う 。次 に 、反 応 条 件 を 最 適 化 す る こ と に よ っ て 生 成 物 の 粒 子 径 の 制 御 や 純 度 の 向 上 を 目 指 す 。最 後 に 本 合 成 手 法 に よ る KNbO3合 成 に 関 す る 方
1.3 本 論 文 の 構 成 本 論 分 は 以 下 の 章 に よ り 構 成 さ れ る 。 第 1 章 の 緒 論 で は 本 研 究 の 背 景 と 目 的 を 述 べ た 。 第 2 章 で は 、本 研 究 を 進 め る う え で 参 考 に し た 既 往 の 研 究 に つ い て 整 理 し た 。 第 3 章 で は 、ま ず KNbO3を 単 相 で 合 成 可 能 な 条 件 を 探 索 す る た め 、反 応 温 度 や 圧 力 、KOH濃 度 が 生 成 物 の 結 晶 相 や 純 度 、粒 径 に 与 え る 影 響 に つ い て 検 討 を 行 っ た 。 第 4 章 で は 、 装 置 配 管 か ら の Fe 溶 出 の 抑 制 を 目 的 と し 、 回 分 式 装 置 を 用 い た 実 験 を 行 っ た 。そ し て 、各 操 作 因 子 が 生 成 物 の 純 度 や 粒 子 の 粒 径・形 状 の 制 御 性 に 与 え る 影 響 を 検 討 し た 。 第 5 章 で は 、装 置 配 管 内 に お け る 粒 子 堆 積 の 緩 和 を 目 的 と し 、流 通 式 装 置 の 反 応 管 構 造 を 変 更 し た 。ま た 第 4 章 の 結 果 を 受 け 、出 発 物 質 の 影 響 を 検 討 し た 。 第 6 章 は 本 研 究 の 総 括 で あ り 、本 研 究 で 得 ら れ た 結 果 お よ び 知 見 を ま と め た 。 そ し て 、 そ れ を ふ ま え 今 後 の 展 望 を 述 べ た 。
第 2 章 既 往 の 研 究
2.1 緒 言 本 章 で は 本 研 究 の 背 景 と な る 既 往 の 研 究 に つ い て 整 理 す る 。ま ず 2.2 節 に お い て 報 告 例 の 多 い 亜 臨 界 水 中 で の 回 分 式 水 熱 合 成 法 に よ るKNbO3の 合 成 に 関 し て ま と め 、 そ の 特 徴 を 明 ら か と し た 。2.3 節 で は 超 臨 界 水 中 で の 回 分 式 水 熱 合 成 法 に 関 し て ま と め 、 超 臨 界 水 を 反 応 場 と し た 場 合 の 特 徴 を 確 認 し た 。2.4 節 で は 本 研 究 に お け る 反 応 場 と な る 超 臨 界 水 の 物 性 や 金 属 酸 化 物 の 溶 解 度 な ど の 特 性 に 関 し て ま と め た 。2.5 節 で は 本 研 究 で 用 い る 流 通 式 超 臨 界 水 熱 合 成 法 の 特 徴 に つ い て ま と め た 。 2.2 水 熱 合 成 法 に よ る KNbO3微 粒 子 の 合 成 第 1 章 で も 述 べ た よ う に 、セ ラ ミ ッ ク ス の 原 料 粉 末 用 の KNbO3微 粒 子 の 合 成 法 と し て 水 熱 合 成 法 が 提 案 さ れ て い る 。 そ の ほ と ん ど の 報 告 は 反 応 温 度 を 200℃ 前 後 と し て お り 、 臨 界 点 ( 温 度 374℃ 、 飽 和 蒸 気 圧 22.1 MPa) に 達 し て い な い 状 態 の 水 、 す な わ ち 亜 臨 界 水 を 反 応 場 と し て い る 。2.2 節 で は そ の 幾 つ か の 報 告 を 紹 介 す る こ と に よ っ て 、亜 臨 界 水 中 で の 水 熱 合 成 法 の 特 徴 を 明 ら か と す る 。 2.2.1 反 応 条 件 C.H. Luら6)はKNbO3の 水 熱 合 成 に 関 し て 、原 料 で あ る 水 酸 化 カ リ ウ ム 濃 度 と 生 成 物 の 関 係 を 調 べ て い る 。 KNbO3の 水 熱 合 成 は 出 発 物 質 と し て 五 酸 化 ニ オ ブ(Nb2O5)と 水 酸 化 カ リ ウ ム 水 溶 液 (KOH(aq)) を 、 実 験 装 置 と し て テ フ ロ ン 加 工 を 施 し た オ ー ト ク レ ー ブ を 用 い て 行 わ れ た 。分 析 はXRDを 用 い て 生 成 物 の 定 性 を 、SEMを 用 い て 生 成 物 の 結 晶 形 態 の 観 察 を 行 っ た 。表 2.1 に 実 験 条 件 と 生 成 物 の 関 係 を 示 す 。表 2.1 よ りKOH濃 度 が 0.02~0.25 Mと 低 い 場 合 、 反 応 温 度 ・ 反 応 時 間 に 関 わ ら ず 原 料 で あ るNb2O5の み が 得 ら れ た 。こ れ よ り 、KOH濃 度 が 低 い 場 合 は 反 応 が 全 く 進 行 し な い こ と が 示 さ れ た 。 ま たKOH濃 度 を 4 Mと し た 場 合 、 Nb2O5は 溶 液 中 に 全 て 溶 解 し た が 沈 殿 物 は 得 ら れ な か っ た 。そ れ に 対 し 、KOH濃 度 が 上 昇 す る に つ れ てKNbO3の 生 成 量 が 増 加 し た 。こ の 結 果 はXiangyunら14)が 報 告 し たKNbO3Medium alkaline : 3Nb2O5 + 4OH- = Nb6O174- + 2H2O (2.1)
4K+ + Nb6O174- = K4Nb6O17( 中 間 生 成 物 ) (2.2)
Strong alkaline: Nb6O174- + 2OH- = 6NbO3- + H2O (2.3)
K+ + NbO3- = KNbO3 (2.4) 総 括 反 応 : Nb2O5 + 2KOH = 2KNbO3 + H2O (2.5) 原 料 で あ るNb2O5は 酸 に 難 溶 で あ る が 、KOH水 溶 液 に 微 溶 で あ る 。従 っ て KOH 濃 度 が 低 い 場 合 は (2.1)式 の 反 応 が 進 行 せ ず 、 未 溶 解 の Nb2O5が 得 ら れ た と 考 え る( 表 2.1 生 成 物 A)。そ し て KOH濃 度 の 増 加 に 伴 い Nb2O5の 溶 解 量 が 増 加 、 OH-イ オ ン と の 反 応 が 進 行 しKNbO3が 生 成 し た と 考 え る 。 以 上 よ り 、KOH濃 度 は KNbO3の 水 熱 合 成 に お い て 重 要 な 操 作 因 子 で あ り 、 KNbO3の 合 成 に は 高 濃 度 のKOH水 溶 液 の 使 用 が 必 須 で あ る こ と が 示 さ れ た 。し か し 、高 濃 度 の ア ル カ リ の 使 用 は 環 境 負 荷 が 大 き く 、ま た 反 応 器 の 腐 食 と そ れ に 伴 う 廃 液 処 理 が 問 題 と な る た め 、使 用 す る ア ル カ リ 濃 度 の 低 減 は 重 要 な 課 題 で あ る と 考 え る 。 表2.1 実験条件と生成物の関係 反応物質 Nb2O5[g] KOH(aq) [M] 0.53 0.02 反応温度 生成物 200 250 [℃] A 反応時間 [h] 2 0.53 0.02 2 A 1.05 0.04 250 2 A 1.32 0.25 220 6 A 1.32 0.25 200 11 A 4 4 0.33 3.32 200 200 2 2 2 B B 200 200 2 2 2 2 200 200 200 6 6 8 8 8 C C D D D 0.33 3.32 0.33 1.66 3.32 反応物質 Nb2O5[g] KOH(aq) [M] 0.53 0.02 反応温度 生成物 200 250 [℃] A 反応時間 [h] 2 0.53 0.02 2 A 1.05 0.04 250 2 A 1.32 0.25 220 6 A 1.32 0.25 200 11 A 4 4 0.33 3.32 200 200 2 2 2 B B 200 200 2 2 2 2 200 200 200 6 6 8 8 8 C C D D D 0.33 3.32 0.33 1.66 3.32
2.2.2 結 晶 構 造 Kumadaら9) は 立 方 晶 ・ 正 方 晶 ・ 斜 方 晶 のKNbO3を 水 熱 合 成 法 に よ っ て 合 成 し 、 各 結 晶 構 造 の 詳 細 を 解 析 し て い る 。 KNbO3の 水 熱 合 成 は 原 料 と し てNb2O5 5 gと KOH(aq) 40 mlを 用 い 、内 容 積 70 mlの テ フ ロ ン 加 工 を 施 し た オ ー ト ク レ ー ブ 内 で 反 応 さ せ て 行 っ た 。反 応 温 度 は 160~200℃ 、 反 応 時 間 は 12 hと し た 。 ま た KOH濃 度 は 6.7~11.3 Mと し 、 反 応 器 内 のKOH/Nb2O5モ ル 比 を 25~40 に 調 整 し た 。分 析 は 結 晶 構 造 の 解 析 に XRDを 、 熱 安 定 性 の 解 析 にTG-DTAを 、 生 成 物 中 の K, Nb 元 素 の 定 量 に ICP-AESを 、 結 晶 中 の 水 分 子 の 有 無 の 確 認 にIRス ペ ク ト ル を 、生 成 物 の 形 態 観 察 に SEMを そ れ ぞ れ 用 い た 。な おICPに よ る 分 析 は 、生 成 物 を 180℃ の HF + HNO3混 合 溶 液 中 で 2 時 間 水 熱 処 理 を し 、 完 全 に 溶 解 さ せ て か ら 行 っ た 。 図 2.1 に 反 応 温 度 お よ び KOH/Nb2O5モ ル 比 と 生 成 物 の 関 係 を 示 す 。な お 、KNbO3は 反 応 温 度 140℃ 以 上 か つKOH/Nb2O5モ ル 比 が 25 以 上 の 場 合 に の み 得 ら れ た 。 120 140 160 180 200 25 30 35 40 120 140 160 180 200 25 30 35 40 反応温度[℃] △ 斜方晶, ○ 正方晶, ● 正方晶+ a small amout of Nb2O5 ■ 立方晶, ☆ unknown phase 図2.1 反応温度およびKOH/Nb2O5 モル比と生成物の関係 KOH / Nb 2 O5 モル 比 図 2.1 よ り 、 生 成 物 の 結 晶 構 造 は 反 応 温 度 と KOH/Nb2O5モ ル 比 の 両 方 に 依 存 す る こ と が 示 さ れ た 。立 方 晶 は 反 応 温 度 に 関 わ ら ず 、KOH/Nb2O5 = 25 の 条 件 下 に お い て の み 得 ら れ た の に 対 し 、 斜 方 晶 は 反 応 温 度 200℃ か つ KOH/Nb2O5 ≧35 の 条 件 に お い て 得 ら れ た 。 ま た 、 そ れ ら 以 外 の 条 件 で は 正 方 晶 が 得 ら れ た 。 こ れ ら の 結 果 よ り 、 反 応 温 度 とKOH/Nb2O5モ ル 比 が 上 昇 す る に つ れ て 生 成 物 の 結 晶 構 造 が 立 方 晶 → 正 方 晶 → 斜 方 晶 と 変 化 す る 相 関 関 係 が 見 ら れ た 。 ICP-AESに よ る 化 学 組 成 の 分 析 の 結 果 、 立 方 晶 と 正 方 晶 の K/Nb モ ル 比 は そ れ ぞ れ 0.91, 0.94 で あ っ た の に 対 し 、 斜 方 晶 の K/Nb モ ル 比 は 0.98 に 達 し た 。 ま た 、 立 方 晶 お よ び 正 方 晶 と 斜 方 晶 と の 差 異 はTG曲 線 の 重 量 変 化 と IRス ペ ク ト ル に も 見 ら れ た 。 す な わ ち 、 立 方 晶 お よ び 正 方 晶 のTG曲 線 の 重 量 変 化 は 斜 方 晶 よ り も 大 き く ( 図 2.2)、 か つ 立 方 晶 お よ び 正 方 晶 の IRス ペ ク ト ル か ら は 3500 cm-1付 近 にH2Oと OH-由 来 の 伸 縮 振 動 が 確 認 さ れ た の に 対 し 、斜 方 晶 か ら は 確 認 さ れ な か っ た 。こ れ ら よ り 、立 方 晶 お よ び 正 方 晶 中 のK+イ オ ン の 一 部 が
プ ロ ト ン に よ り 置 換 さ れ 、結 晶 格 子 内 に 水 分 子 を 取 り 込 ん で い る こ と が 示 さ れ た 。こ れ は 、G.K.L. Gohら15)が 水 熱 合 成 に よ っ て 生 成 し たKNbO3中 に 水 分 子 や OH-イ オ ン が 含 ま れ て い た の と 同 様 の 結 果 だ っ た 。 SEMに よ る 粒 子 の 観 察 の 結 果 、 生 成 物 の 形 状 も 結 晶 構 造 毎 に 異 な る こ と が 分 か っ た 。図 2.3(a)~(c) に 生 成 物 の 結 晶 構 造 毎 のSEM像 を 示 す 。 図 2.3 よ り 、 粒 子 径 は 立 方 晶 、 正 方 晶 、 斜 方 晶 の 順 に 増 大 し 、 斜 方 晶 の 粒 子 径 は 1 µm程 度 と な っ た 。 ま た 、 正 方 晶 の 結 晶 形 態 は 細 長 い 形(elongated shape)だ っ た の に 対 し 、 立 方 晶 の 粒 子 径 は 不 均 一 だ っ た 。 こ こ で 、KNbO3は 高 温 か ら 室 温 に 向 か っ て 立 方 晶 → 正 方 晶 → 斜 方 晶 の 順 に 相 転 移 す る 。相 転 移 温 度 は そ れ ぞ れ435℃ と 225℃ で あ る と 報 告 さ れ て お り16, 17)、 室 温 で は 斜 方 晶 が 安 定 相 と な る 。 高 温 下 で 安 定 な 立 方 晶 と 正 方 晶 が 室 温 下 で 得 ら れ 、 か つ 結 晶 構 造 毎 にKNbO3の 粒 子 形 状 が 異 な っ た の は 、 プ ロ ト ン に よ るK+イ オ ン の 置 換 や 水 分 子 の 吸 着 な ど の 格 子 欠 陥 が 原 因 で あ る 。 こ れ は 、KNbO3と 同 じ ペ ロ ブ ス カ イ ト 型 構 造 のBaTiO3の 水 熱 合 成 に お い て も 同 様 の 現 象 が 報 告 さ れ て い る18~20)。 (a) 立方晶 (b) 正方晶 (c) 斜方晶 温度 図2. 図2.3 生成物の結晶構造毎のSEM像 2 各結晶構造のTG曲線 [℃] 重量 変 化 [wt % ] 以 上 よ り 、 反 応 温 度 とKOH/Nb2O5モ ル 比 が 上 昇 す る に つ れ て 生 成 物 の 結 晶 構 造 が 立 方 晶 → 正 方 晶 → 斜 方 晶 と 変 化 す る 相 関 関 係 が 見 ら れ た 。 特 に 斜 方 晶 は 生 成 物 の 化 学 組 成(K/Nb ratio)が 0.98 と 理 論 値 に 近 く 、 ま た 格 子 欠 陥 が 少 な い 結 晶 性 の 高 い 粒 子 だ っ た こ と か ら 、 水 熱 合 成 法 の 化 学 組 成 の 制 御 性 が 優 れ て い る こ と が 確 認 さ れ た 。 し か し 、 斜 方 晶 の 粒 子 径 が 1 µmに 達 し た こ と か ら 、 回 分 式 水 熱 合 成 法 で は 結 晶 性 の 高 いKNbO3の ナ ノ 粒 子 の 合 成 は 困 難 で あ る こ と が 示 さ れ た 。
2.3 超 臨 界 水 を 反 応 場 と し た 水 熱 合 成 法 に よ る KNbO 3微 粒 子 の 合 成
2.2 節 で も 述 べ た よ う に 、 KNbO3の 水 熱 合 成 に 関 す る ほ と ん ど の 研 究 が 亜 臨
界 水 を 反 応 場 と し て い る の に 対 し 、Bo Liら11)は 超 臨 界 水 を 反 応 場 と し た 水 熱 合 成 法 に よ っ てKNbO3を 合 成 し て い る 。
KNbO3の 水 熱 合 成 は 原 料 と し てNb2O5 と KOH(aq) 250 mlを 用 い 、オ ー ト ク レ
ー ブ 内 のgold tubeで 反 応 を 行 っ た 。 KOH濃 度 は 0.1, 0.25, 0.5 M、 反 応 時 間 は 2, 8, 24 h、 反 応 温 度 は 400℃ と し た 。 ま た 、 反 応 圧 力 は 本 条 件 下 で の 飽 和 蒸 気 圧 で あ る 24 MPaと し た 。 分 析 は 結 晶 構 造 の 解 析 に XRDを 、 生 成 物 の 形 態 観 察 に SEMを 、 生 成 物 の 化 学 組 成 の 解 析 に EDS (Energy Dispersive Spectroscopy) を そ れ ぞ れ 用 い た 。 表 2.2 に 実 験 条 件 と 分 析 結 果 の 関 係 を 示 す 。 実験条件 Nb2O5[g] KOH [M] 2 0.1 反応時間[h] 8 2 0.1 24 5 0.25 2 5 0.25 8 5 0.25 24 0.5 0.5 5 5 2 8 24 0.5 5 生成物 KNbO3, Nb2O5, K4Nb6O17 KNbO3, Nb2O5, K4Nb6O17 KNbO3(三方晶), Nb2O5, K4Nb6O17 KNbO3(斜方晶) KNbO3(斜方晶) KNbO3(斜方晶) KNbO3(三方晶), trace of K4Nb6O17 KNbO3(三方晶), trace of K4Nb6O17 K/Nb ratio ― 0.75 0.69 0.95 0.93 0.93 0.95 0.93 実験条件 Nb2O5[g] KOH [M] 2 0.1 反応時間[h] 8 2 0.1 24 5 0.25 2 5 0.25 8 5 0.25 24 0.5 0.5 5 5 2 8 24 0.5 5 生成物 KNbO3, Nb2O5, K4Nb6O17 KNbO3, Nb2O5, K4Nb6O17 KNbO3(三方晶), Nb2O5, K4Nb6O17 KNbO3(斜方晶) KNbO3(斜方晶) KNbO3(斜方晶) KNbO3(三方晶), trace of K4Nb6O17 KNbO3(三方晶), trace of K4Nb6O17 K/Nb ratio ― 0.75 0.69 0.95 0.93 0.93 0.95 0.93 表2.2 実験条件と分析結果( 温度:400℃, 圧力:24 MPa ) 表 2.2 よ り 、 0.1 Mの KOHを 用 い た 場 合 は 反 応 時 間 を 24 hと し て も 未 溶 解 の Nb2O5と 中 間 生 成 物 で あ るK4Nb6O17が 不 純 物 と し て 得 ら れ た 。一 方 、0.25 Mの KOHを 用 い た 場 合 は 反 応 時 間 の 増 加 に 伴 い Nb2O5の 溶 解 が 進 行 し 、24 hの 反 応 後 に はKNbO3以 外 の 不 純 物 はK4Nb6O17が わ ず か に 存 在 す る だ け と な っ た 。 こ れ ら に 対 し 、0.5 Mの KOHを 用 い た 場 合 は 2 hの 反 応 で 斜 方 晶 の KNbO3が 得 ら れ 、 不 純 物 は 存 在 し な か っ た 。 ま た 、0.1, 0.25 Mの KOHを 用 い た 場 合 は 三 方 晶 の KNbO3が 得 ら れ た の に 対 し 、0.5 Mの KOHを 用 い た 場 合 の み 室 温 安 定 相 で あ る 斜 方 晶 が 得 ら れ た 。こ れ よ り 、KOH濃 度 が 一 定 の 条 件 で は 反 応 時 間 を 増 加 さ せ て もKNbO3の 結 晶 構 造 は 変 化 し な い こ と が 確 認 さ れ た 。 超 臨 界 水 を 反 応 場 と す る こ と で 使 用 す るKOH濃 度 を 大 幅 に 低 減 で き た 理 由 に 関 し て 、筆 者 ら は 超 臨 界 水 に 対 す るKOHの 溶 解 度 と 反 応 場 の 相 状 態 か ら 説 明
し て い る 。Woffordら21)の 水 に 対 す る 溶 解 度 の 推 算 式 よ り 、本 反 応 条 件(400℃ , 24 MPa) に お け る KOHの 溶 解 度 は 1100 mg/kgと 推 算 さ れ る 。 こ の 値 は 本 反 応 に 用 い たKOHの 初 期 濃 度 ( 0.1~0.5 M) よ り も ず っ と 低 い こ と か ら 、 KOHの 一 部 は 溶 融 相 と し て 沈 殿 し 、不 均 一 相 が 形 成 さ れ る 。そ のKOH溶 融 相 中 に お い て Nb2O5と の 反 応 が 進 行 し た た めKNbO3が 生 成 し た と し て い る 。 次 に 図 2.4 (a)~(c)に 生 成 物 の SEM像 を 示 す 。 図 2.4 (a)よ り 、 KOH濃 度 を 0.25 M、 反 応 時 間 を 24 h と し た 場 合 の 生 成 物 は ピ ラ ミ ッ ド に 近 い 形 を し て い た 。 ピ ラ ミ ッ ド 型 粒 子 の 平 均 粒 径 は 約 10 µmで あ り 、 結 晶 の 表 面 は 粗 く 、 形 態 は 不 定 形 だ っ た 。 XRD分 析 よ り 結 晶 構 造 は 三 方 晶 で あ り 、 亜 臨 界 水 中 で 合 成 さ れ た 三 方 晶 のKNbO3 6, 22)と 比 較 す る と 、 超 臨 界 水 中 で 合 成 し たKNbO3の 粒 子 径 は 大 き く 形 態 も 異 な っ て い た 。0.5 Mの KOHを 用 い た 場 合 、反 応 時 間 を 2 hと し た 生 成 物 の 形 態 は 不 定 形 だ っ た ( 図 2.4 (b)) の に 対 し 、 反 応 時 間 を 24 hと し た 生 成 物 は 4~5 µmの 平 行 六 面 体 と な っ た( 図 2.4 (c))。 こ れ は 、 反 応 時 間 の 増 加 に 伴 い 生 成 物 の 再 結 晶 と 結 晶 成 長 が 進 行 し た た め で あ る 。 ま た 、Gohら15) が 亜 臨 界 水 中 で 合 成 し たKNbO3と 比 較 す る と 、 超 臨 界 水 中 で 合 成 さ れ たKNbO3の 粒 径 は 大 き く 、 結 晶 構 造 ・ 形 態 と も 異 な っ て い た 。 従 っ て 、 超 臨 界 水 中 に お け るKNbO3の 相 形 成 ・ 結 晶 成 長 機 構 は 亜 臨 界 水 中 と は 異 な る 可 能 性 が 示 唆 さ れ た 。 (a) (b) (c) KNbO3のSEM像 図2.4 超臨界水中で合成した (a) KOH濃度:0.25 M, 反応時間:24 h (b) KOH濃度:0.5 M, 反応時間: 2 h (c) KOH濃度:0.5 M, 反応時間:24 h 以 上 よ り 、2.2 節 で 述 べ た 亜 臨 界 水 を 反 応 場 と し た 合 成 例 と 比 較 す る と 、 超 臨 界 水 を 反 応 場 と す れ ば ア ル カ リ 濃 度 お よ び 反 応 時 間 が 大 幅 に 低 減 ・ 短 縮 さ れ る こ と が 明 ら か と な っ た 。 し か し 、 亜 臨 界 水 中 で の 水 熱 合 成 法 と 比 べ る と 、 粗 大 で 不 定 形 な 粒 子 が 生 成 し や す い と い う 課 題 が 残 っ て い る 。
2.4 超 臨 界 水 2.4.1 超 臨 界 水 の 物 性 超 臨 界 水 は 、 水 の 臨 界 点(臨 界 温 度 Tc = 374oC、 臨 界 圧 力 Pc = 22.1 MPa)を 超 え た 非 圧 縮 性 の 高 密 度 水 蒸 気 で あ り 、気 体 に 近 い 拡 散 係 数 お よ び 液 体 に 近 い 溶 解 力 を 有 す る 。温 度 及 び 圧 力 を 操 作 す る こ と に よ り 、水 密 度 、誘 電 率 、イ オ ン 積 な ど の 溶 媒 物 性 を 大 幅 か つ 連 続 的 に 変 化 さ せ る こ と が 可 能 で あ る 。特 に 臨 界 点 近 傍 で は 、図 2.5 (a)に 示 す よ う に 、温 度 一 定 下 で の 圧 力 の わ ず か な 変 化 で 水 密 度 が 急 激 か つ 大 幅 に 変 化 す る 。微 粒 子 合 成 の 析 出 に は 溶 解 度 の 制 御 が 必 要 で あ り 、そ の 溶 解 度 に 最 も 影 響 す る の は 密 度 で あ る 。図 の よ う に 温 度 、圧 力 操 作 に よ り 密 度 を 大 き く か つ 連 続 的 に 変 え る こ と が で き る 点 が 超 臨 界 流 体 を 晶 析 場 と し て 使 う 最 大 の 利 点 で あ る と 言 え る23)。図 2.5(b)に 水 の 誘 電 率 の 温 度・圧 力 依 存 性 を 示 す 。誘 電 率 も 水 密 度 と 同 様 、水 の 誘 電 率 は 臨 界 点 近 傍 で の わ ず か な 温 度 、圧 力 の 操 作 に よ り 、大 き く 変 化 さ せ る こ と が 可 能 で あ る 。一 般 に 誘 電 率 は そ の 物 質 の 極 性 の 指 標 と し て 用 い ら れ 、 室 温 の 水 は 約 80 で あ る 。 こ の た め 、 電 解 質 等 の 無 機 物 は 水 に よ く 溶 解 す る が 、 有 機 物 は ほ と ん ど 溶 解 し な い 。 し か し な が ら 、水 の 温 度 を 上 げ て い く と 誘 電 率 は 徐 々 に 低 下 し 、超 臨 界 水 で は 2~10 程 度 と な り 、 極 性 有 機 溶 媒 と 同 程 度 の 値 を 示 す よ う に な る 。 水 熱 合 成 反 応 に は 、加 水 分 解 反 応 や 脱 水 反 応 な ど の 化 学 反 応 が 関 係 し て い る 。そ し て 、化 学 反 応 に は 溶 媒 の 特 性 と し て の 誘 電 率 が 大 き く 影 響 し て い る 。誘 電 率 の 変 化 に よ り 、反 応 速 度 や 反 応 経 路 が 変 わ り 、目 的 で あ る 微 粒 子 の サ イ ズ や 形 状 も 大 き く 変 わ っ て く る こ と が 期 待 で き る 。 図2.5 (a) 水のP-ρ-T線図 図2.5 (b) 水の比誘電率の温度・圧力依存 圧力[MPa] 0 10 20 30 40 5 0 5 10 15 20 25 0 500℃ 450℃ 400℃ 380℃ 374℃ 350℃ 325℃ 300℃ 0 10 20 30 40 5 0 5 10 15 20 25 0 500℃ 450℃ 400℃ 380℃ 374℃ 350℃ 325℃ 300℃ 圧力 [M Pa ] 比誘電 率 [-] 0 200 400 600 800 1000 0 10 20 30 40 50 60 50 0℃ 400℃ 374℃ 3 0 0℃ 20 0 ℃ 10 0 ℃ 25 0 ℃ 35 0℃ Psat= 16.53 MPa Psat= 8.59 MPa Psat= 3.98 MPa 0 200 400 600 800 1000 0 10 20 30 40 50 60 50 0℃ 400℃ 374℃ 3 0 0℃ 20 0 ℃ 10 0 ℃ 25 0 ℃ 35 0℃ Psat= 16.53 MPa Psat= 8.59 MPa Psat= 3.98 MPa 水密度[kg/m3] 性
2.4.2 超 臨 界 水 中 に お け る 金 属 酸 化 物 の 溶 解 度 超 臨 界 水 反 応 場 で は 2.4.1 で 述 べ た よ う に 密 度 お よ び 誘 電 率 は 臨 界 点 近 傍 で 温 度 上 昇 と と も に 減 少 し 、 そ れ に 伴 い 金 属 酸 化 物 の 溶 解 度 も 急 激 に 減 少 す る 。 図 2.6 (a), (b) 24, 25)に そ れ ぞ れ 酸 化 銅 の 溶 解 度 お よ び 酸 化 鉛 の 溶 解 度 を 示 す 。 図 よ り 、定 圧 下 に お い て 金 属 酸 化 物 の 溶 解 度 は 低 温 領 域 か ら 温 度 上 昇 と と も に 増 加 す る が 、臨 界 点 近 傍 か ら 超 臨 界 領 域 に か け て 1 桁 程 度 急 激 に 減 少 す る こ と が わ か る 。 ま た 、 図 2.6(b)に 示 し た よ う に 溶 解 度 は 圧 力 の 上 昇 に と も な い 増 加 す る 。こ れ は 、2.5.1 で 述 べ た よ う に 誘 電 率 や 密 度 の 増 加 に 起 因 す る 。さ ら に 、 両 図 か ら 、金 属 酸 化 物 で あ っ て も 金 属 種 に よ っ て 、溶 解 度 が 数 桁 程 度 も 異 な る こ と が わ か る 。溶 解 度 は 、反 応 場 に 溶 存 し て い る 金 属 種 の 総 濃 度 と し て 定 義 さ れ 、反 応 晶 析 に お い て 非 常 に 重 要 な パ ラ メ ー タ で あ る 、そ の た め 、微 粒 子 の 生 成 機 構 を 解 析 す る 上 で 、反 応 場 に お け る 溶 存 化 学 種 濃 度 お よ び 溶 解 度 の 把 握 が 非 常 に 重 要 で あ る 。 200 300 400 500 600 0 2 4 6 8 Hearn et al.(saturation) Hearn et al.(28 MPa) Sue et al.(28 MPa)
250 300 350 400 450 500 0 1000 2000 3000 4000 5000 26 MPa 30 MPa 34 MPa S( PbO) [ μ mo l/ kg -H2 O] S( CuO) [ μ mo l/ kg -H2 O] 温度 温度
図2.6(a) CuO溶解度の温度依存性 図2.6 (b) PbO溶解度の温度依存性
[℃] [℃]
2.5 流 通 式 超 臨 界 水 熱 合 成 法 2.5.1 流 通 式 装 置 超 臨 界 水 を 水 熱 合 成 の 反 応・晶 析 溶 媒 と し て 用 い れ ば 、水 熱 合 成 反 応 に お け る 核 発 生 ・ 成 長 の 場 を わ ず か な 温 度 ・ 圧 力 操 作 で 大 幅 に 制 御 可 能 と な る た め 、 新 規 反 応 晶 析 場 と し て 期 待 で き る 。し か し 、従 来 広 く 用 い ら れ て き た 回 分 式 手 法 で は 昇 温 に 長 時 間 を 要 し 、そ の 間 に 核 発 生・成 長 が 進 行 し 、微 小 な 粒 子 の 合 成 が 困 難 で あ る 。そ の た め 、高 温 高 圧 水 反 応 場 の 特 性 を 十 分 に 活 か し た 材 料 創 製 法 と は 言 い 難 く 、副 生 成 物 の 生 成 や 粒 径 の 制 御 性 に 関 し て 課 題 が あ っ た 。そ こ でT. Adschiriら26)は 図 2.7 に 示 す よ う な 流 通 式 装 置 を 開 発 し て い る 。 常 温 で 供 給 し た 原 料 金 属 塩 溶 液 と 別 ラ イ ン で 供 給 し た 超 臨 界 水 を 混 合 す る こ と に よ り 、原 料 溶 液 を 急 速 に 超 臨 界 状 態 ま で 昇 温 し 、反 応 晶 析 を 開 始 さ せ る こ と が 可 能 と な る 。 T. Adschiriら26) は 原 料 溶 液 と し て 10 種 類 の 金 属 塩 水 溶 液 を 用 い 、図 2.7 に 示 し た 装 置 を 用 い て 水 熱 合 成 を 行 い 、生 成 物 の 粒 径・形 状 の 観 察 を 行 っ た 。反 応 温 度 は 400℃ 、 反 応 圧 力 が 30~35 MPaで あ る 。 反 応 炉 の 設 定 温 度 は 400℃ も し く は 反 応 流 体 以 上 の 温 度 と し 、反 応 流 体 を 保 温 ま た は 加 熱 し た 。分 析 は 結 晶 構 造 の 解 析 にXRDを 、 生 成 物 の 形 態 観 察 に SEMお よ び TEMを 用 い た 。 表 2.3 に 実 験 条 件 と 生 成 物 の 関 係 を 示 す 。 Adschiriら は 、 原 料 溶 液 に よ っ て 粒 子 径 が 異 な る も の の 、い ず れ の 条 件 に お い て も 粒 径 分 布 が 比 較 的 狭 い 粒 子 が 得 ら れ た と 報 告 し て い る 。ま た 、XRD解 析 よ り 、一 部 の 条 件 を 除 き 生 成 物 は 結 晶 化 度 の 高 い 金 属 酸 化 物 で あ っ た 。ZrOCl2とTiCl4に つ い て 、反 応 炉 を 400℃ と し て 反 応 流 体 を 保 温 し た 場 合 の 生 成 物 は 非 晶 質 だ っ た の に 対 し 、反 応 炉 中 で 反 応 流 体 を 加 熱 し た 場 合 の 生 成 物 はTiO2 (anatase) と ZrO2が 得 ら れ た 。 ま た 、
Al(NO3)3を 原 料 と し て 反 応 炉 中 で 反 応 流 体 を 加 熱 し た 場 合 、反 応 炉 の 温 度 を 上
昇 さ せ る に つ れ て 生 成 物 (AlOOH) の 結 晶 化 度 が 上 昇 し た 。
以 上 よ り 、流 通 式 装 置 を 用 い 超 臨 界 水 を 反 応 場 と す る こ と で 、各 種 金 属 酸 化 物 の ナ ノ 粒 子 が 合 成 可 能 で あ る こ と が 示 さ れ た 。
電気炉 反応管 図2.7 流通式装置の概略図 表2.3 実験条件と生成物の関係 Al(NO3) Fe(NO3) Fe2(SO4)3 FeCl2 Fe(NH4)2H(C6H5O7)2 Co(NO3) Ni(NO3) ZrOCl2 TiSO4 TiCl4 原料溶液 濃度[mol/l] 温度[℃] 圧力 [MPa] 反応条件 化学組成 粒径[nm] 形状 生成物 0.05 0.16 0.16 0.16 0.0066 0.0094 0.0066 0.038 0.038 0.038 400~490 400~490 400~500 400 400 400 400 400 400 400 35 35 35 35 35 35 35 35 30 30 AlOOH α – Fe2O3 α – Fe2O3 α – Fe2O3 Fe3O4 Co3O4 NiO ZrO2(cubic) TiO2 TiO2 (anatase) ~ 600 ~ 50 ~ 50 ~ 50 ~ 50 ~ 100 ~ 200 ~ 10 ~ 20 ~ 20 Hexagonal, rhombic, needle Spherical Spherical Spherical Spherical Spherical Octahedral Rodlike Prismatic Prismatic
2.5.2 反 応 速 度 ま た 、T. Adschiriら27) は 流 通 式 装 置 を 用 い 、硝 酸 ア ル ミ ニ ウ ム を 原 料 と し て ベ ー マ イ ト(AlOOH)微 粒 子 の 連 続 合 成 を 行 い 、原 料 中 の Al3+の 減 少 量 か ら 水 熱 反 応 速 度 を 評 価 し て い る 。 反 応 温 度 は 100~400oC、 圧 力 は 30 MPaで あ る 。 回 収 液 のICP分 析 か ら 原 料 Al3+の 転 化 率xを 算 出 し 、-ln(1-x)と 反 応 時 間 の 関 係 を 整 理 し た 結 果 、一 次 で 記 述 で き る こ と を 確 認 し た 。そ こ で 、そ の 傾 き か ら 各 温 度 の 擬 一 次 反 応 の 速 度 定 数 を 評 価 し た 。得 ら れ た 速 度 定 数 と 温 度 の 関 係 を プ ロ ッ ト し た も の を 図 2.8 に 示 す 。図 よ り 、速 度 定 数 は 超 臨 界 域 で は ア レ ニ ウ ス プ ロ ッ ト の 温 度 上 昇 に 伴 う 速 度 定 数 の 外 挿 値 よ り 数 桁 程 度 高 い 値 を 示 し た 。こ の よ う に 、超 臨 界 条 件 で は 水 熱 反 応 速 度 が 亜 臨 界 領 域 と 比 較 し て 極 め て 速 く な る 。 こ れ は 超 臨 界 水 中 に お い て 温 度 の 上 昇 に よ る 反 応 速 度 の 上 昇 に 加 え 、密 度 や 誘 電 率 の 急 激 な 減 少 、 ま た 、 そ れ に と も な うAlOOHの 溶 解 度 の 減 少 に 起 因 す る 。 0.0015 0.0020 0.0025 0.0030 -6 -4 -2 0 2 4 CeO2 AlO(OH) NiO 1/T [K-1] ln K [s -1] 図2.8 各生成物のアレニウスプロット
2.6 結 言
本 章 で は 、ま ず 亜 臨 界 水 お よ び 超 臨 界 水 を 反 応 場 と し たKNbO3の 回 分 式 水 熱
合 成 法 に 関 し て ま と め 、 そ れ ぞ れ の 特 徴 と 課 題 を 確 認 し た 。 次 に 2.4 節 で は 超 臨 界 水 の 特 性 に 関 し て ま と め た 。
第 3 章 流 通 式 超 臨 界 水 熱 合 成 法 に お け る 合 成 条 件 の 探 索
3.1 緒 言 第 1 章 で も 述 べ た よ う に 流 通 式 超 臨 界 水 熱 合 成 法 に よ る KNbO3の 合 成 に 関 す る 知 見 は 非 常 に 僅 少 で あ る 。そ の た め 、目 的 生 成 物 で あ るKNbO3を 合 成 可 能 な 条 件 探 索 を 行 う 必 要 が あ る 。そ こ で 、本 章 で は 、操 作 条 件 と し て 反 応 温 度 ・ 圧 力 お よ び 出 発 物 質 で あ るKOH(aq)濃 度 が 生 成 物 に 与 え る 影 響 に 関 し て 検 討 を 行 っ た 。 3.2 実 験 3.2.1 試 料 試 料 は 以 下 の も の を 用 い た 。・
Nb2O5コ ロ イ ド 溶 液 ( 多 木 化 学 株 式 会 社 品 名 : バ イ ラ ー ルNb-X10, Nb2O5 10 wt%, pH 3.5 詳 細 は Appendixに 示 す )・
水 酸 化 カ リ ウ ム (KOH 和 光 純 薬 工 業 株 式 会 社 特 級 純 度 85.0%以 上 ) 本 研 究 で は 流 通 式 の 装 置 を 使 用 す る た め 、ハ ン ド リ ン グ の 観 点 か ら 原 料 に は 常 温 の 水 に 溶 解 す る 物 質 が 望 ま し い 。K 源 に つ い て は 既 往 の 研 究 と 同 様 に 水 酸 化 カ リ ウ ム を 用 い た 。一 方 、Nb 源 に 関 し て は 水 に 溶 解 す る 物 質 が 少 な い た め 、 ア モ ル フ ァ ス の 五 酸 化 ニ オ ブ の 分 散 溶 液 で あ る コ ロ イ ド 溶 液 を 水 で 希 釈 し て 用 い た 。 3.2.2 流 通 式 装 置 実 験 は 図 3.1 に 示 す 流 通 式 装 置 を 用 い て 行 っ た 。装 置 は 送 液 ポ ン プ 、予 熱 炉 、 外 部 冷 却 管 お よ び 背 圧 弁 か ら な る 。配 管 に は SUS316 製 1/8 イ ン チ チ ュ ー ブ (i.d. 1.78 mm)、 SUS316 製 1/16 イ ン チ チ ュ ー ブ (i.d. 0.59 mm)、 イ ン コ ネ ル 600 製 1/8 イ ン チ チ ュ ー ブ (i.d. 1.78 mm)、お よ び SUS316 製 高 圧 チ ュ ー ブ 継 手 (Swagelok 社 製) を 用 い た 。 送 液 ポ ン プ は 高 流 量 ポ ン プ ( 日 本 精 密 科 学 株 式 会 社 製 、 NP-KX-500)を 用 い た 。 予 熱 部 の 加 熱 に は マ ッ フ ル 炉 (ヤ マ ト 科 学 株 式 会 社 製 、 FO810、 FO300、 FO200)を 使 用 し た 。 装 置 の 系 内 の 温 度 は K type 熱 電 対 に よ り 測 定 し た 。反 応 管 出 口 に お い て 反 応 を 速 や か に 停 止 さ せ る た め に 、反 応 直 後 に 冷 却 水 循 環 装 置 (EYELA 製 CA-2600) を 用 い た 外 部 冷 却 管 に よ り 急 速 冷 却 を 行 っ た 。 反 応 系 内 の 圧 力 は 背 圧 弁(TESCOM 社 製 )に よ り 調 整 し た 。P1 : 予熱水供給圧力 P2 : 原料供給圧力(K源) P3 : 原料供給圧力(Nb源) P4 : 反応圧力 T1 : 超臨界水供給温度 T2 : 反応温度 T3 : 反応炉設定温度 T4 : 加熱後の流体温度 蒸留水 T K源 背圧弁 冷却管 Nb源 予熱炉 FO810 送液 ポンプ 送液 ポンプ T T T1 P1 P2 P3 T2 T4 反応炉FO200 (設定温度T3) P4 予熱炉 FO300 蒸留水 T T K源 背圧弁 冷却管 Nb源 予熱炉 FO810 送液 ポンプ 送液 ポンプ T T TT T1 P1 P2 P3 T2 T4 反応炉FO200 (設定温度T3) P4 予熱炉 FO300 図3.1 流通式装置の概略図 3.2.3 実 験 方 法 ま ず 、原 料KOH水 溶 液 送 液 ポ ン プ 、原 料 Nb2O5分 散 溶 液 送 液 ポ ン プ 、予 熱 水
用 純 水 送 液 ポ ン プ か ら 蒸 留 水 を そ れ ぞ れ 5 g/min、5 g/min、40 g/minで 送 液 し た 。 次 に 背 圧 弁 に よ り 反 応 圧 力(P4)を 所 定 圧 力 に 昇 圧 し た 。そ の 後 、予 熱 部 の ヒ ー タ ー に 通 電 し 、予 熱 水( 超 臨 界 水 )の 供 給 温 度(T1)が 所 定 温 度 に な る よ う に 各 ヒ ー タ ー の 出 力 を 調 整 し た 。ま た 、ヒ ー タ ー に 通 電 す る と 同 時 に 外 部 冷 却 用 水 を 流 通 さ せ た 。予 熱 水 供 給 温 度(T1)が 安 定 し 、反 応 温 度( T2)が 所 定 温 度 に 達 し た の を 確 認 し た 後 、 原 料KOH水 溶 液 と 原 料 Nbゾ ル 分 散 溶 液 に 切 り 替 え 原 料 溶 液 の 送 液 を 開 始 し た 。原 料 溶 液 を 予 熱 水 と 混 合 す る こ と で 反 応 温 度 ま で 急 速 昇 温 さ せ 、内 径 1.78 mm、長 さ 4.6 mの SUS316 製 の 反 応 管 で 水 熱 反 応 を 行 い 、そ の 後 、間 接 冷 却 に よ り 反 応 を 停 止 さ せ 、ス ラ リ ー 状 の 反 応 溶 液 を 回 収 し た 。 実 験 終 了 後 、原 料KOH水 溶 液 と 原 料 Nb2O5コ ロ イ ド 溶 液 を そ れ ぞ れ 蒸 留 水 に 切 り 替 え 送 液 し た 。ま た 、蒸 留 水 を 送 液 す る と 同 時 に 各 ヒ ー タ ー の 通 電 を 終 了 し 、装 置 の 立 ち 下 げ を 開 始 し た 。装 置 の 立 ち 下 げ 中 に 装 置 配 管 の 出 口 よ り 流 出 し た 溶 液 を 「 立 ち 下 げ 溶 液 」 と 定 義 し 、 反 応 溶 液 と は 別 に 回 収 し た 。
3.2.4 実 験 条 件
本 章 で 行 っ た 実 験 の 合 成 条 件 を 表 3.1 に 示 す 。 合 成 条 件 は 反 応 温 度 T2 が 350~410℃ 、反 応 圧 力 P4 を 25~30 MPa、反 応 炉 の 設 定 温 度 T3 は 350~500℃ と し た 。原 料 濃 度 はNb元 素 濃 度 を 0.01 mol/l( 超 臨 界 水 と の 混 合 後:1.0×10-3 mol/l)、 KOH水 溶 液 濃 度 を 0.05~0.15 mol/l( 超 臨 界 水 と の 混 合 後 : 0.5~1.5×10-2 mol/l) と し た 。 反 応 流 体 の 平 均 滞 在 時 間 τ は 式(3.1)に よ り 算 出 し た 。 (3.1) Q ρ l r π τ 2 = こ こ で 、rは 反 応 管 の 内 径 [m]、lは 反 応 管 長 さ [m]、ρは 反 応 温 度 条 件 で の 水 密 度 [kg/m3]、 Qは 質 量 流 量 [kg/s]で あ る 。 本 合 成 条 件 で は τ = 2.0~8.6 s で あ る 。 し か し 、反 応 条 件 に よ っ て は 生 成 し た 粒 子 は 装 置 配 管 内 に 堆 積 し た た め 、厳 密 な 反 応 時 間 の 決 定 は 困 難 で あ る 。 ま た 、装 置 配 管 内 に 粒 子 の 堆 積 が 生 じ た 場 合 は 反 応 溶 液 を ろ 過 し て も 粒 子 が ほ と ん ど 得 ら れ な か っ た 。し か し 、流 通 式 装 置 の 立 ち 下 げ が 進 む に つ れ て 系 内 の 水 密 度 が 増 加 す る た め 、 堆 積 し た 粒 子 は 立 ち 下 げ 溶 液 に よ っ て 回 収 さ れ た 。 そ こ で 、 立 ち 下 げ 溶 液 を ろ 過 す る こ と で 生 成 し た 粒 子 を 得 た 。 表3.1 合成条件と粒子の回収溶液の関係 反応温度 T2 [℃] 反応圧力 P4 [MPa]
350
25
400
25
400
30
反応炉温度 T3 [℃]350
400
400
滞在時間 τ[s]8.6
2.3
4.9
400
500
25
−
a)410
410
25
2.0
KOH濃度 [M]400
400
25
400
400
25
Run No0.10
0.10
0.10
0.05
0.15
0.10
0.12
1
2
3
4
5
6
7
2.3
2.3
粒子の 回収溶液 反応溶液 反応溶液 反応溶液 反応溶液 立ち下げ溶液 立ち下げ溶液 立ち下げ溶液 a) 流体の加熱により水密度が変化するため算出不能3.2.5 分 析
実 験 終 了 後 、ス ラ リ ー と し て 回 収 し た 反 応 溶 液 と 立 ち 下 げ 溶 液 を そ れ ぞ れ 孔 径0.025 µmの メ ン ブ レ ン フ ィ ル タ ー (Millipore社 製 、VSWP9025)に よ り ろ 過 し 、 生 成 粒 子 を 回 収 し た 。 回 収 し た 粒 子 は 60 oCに 設 定 し た オ ー ブ ン 内 で 一 昼 夜 乾 燥 さ せ た 。 生 成 物 の 同 定 は 粉 末X線 回 折 分 析 ( XRD)( 理 学 電 気 株 式 会 社 製 、 RINT-2200VK/PC、X線 源 :CuKα(1.541841Å )、管 電 圧 :40 kV、管 電 流 :30 mA)で 行 っ た 。生 成 粒 子 の 形 状 観 察 に は 透 過 型 電 子 顕 微 鏡(TEM)(FEI社 製 、TECNAI20、 光 源 :LaB6) と 走 査 型 電 子 顕 微 鏡 (SEM)( JEOL社 製 、 JSM-5600LV) を 用 い
た 。TEM用 サ ン プ ル は 生 成 粒 子 を エ タ ノ ー ル で 希 釈 、分 散 さ せ 、ピ ペ ッ ト に よ り マ イ ク ロ グ リ ッ ト(応 研 商 事 株 式 会 社 製 、 マ イ ク ロ グ リ ッ ド タ イ プ B)に 滴 下 、 乾 燥 さ せ る こ と に よ っ て 作 製 し た 。 ま た 、SEM-EDS ( JEOL社 製 、 JEOL JED-2200、 検 出 器 : SUPER Mini Cup) に よ っ て 生 成 物 の 元 素 組 成 の 解 析 を 行 っ た 。
3.3 KNbO3の 合 成 に 適 し た 反 応 条 件 の 探 索 流 通 式 装 置 を 用 い たKNbO3の 合 成 に 関 す る 知 見 は 僅 少 な た め 、 ま ず 原 料KOH水 溶 液 の 濃 度 を 0.1 Mと し 、 KNbO3 単 一 相 の 合 成 に 適 し た 温 度・圧 力 条 件 の 探 索 を 行 っ た 。表 3.2 に 反 応 温 度 ・ 圧 力 と 生 成 物 の 結 晶 相 の 関 係 を 、 図 3.2 に 各 生 成 物 の XRD パ タ ー ン を 示 す 。 初 め に 反 応 温 度(T2)350℃ 、反 応 圧 力(P4)25 MPaと し て 亜 臨 界 条 件 下 で 反 応 を 行 っ た 。SEM-EDSに よ る 元 素 分 析 よ り 、 こ の と き の 生 成 物 の 化 学 組 成 は お よ そK : Nb = 35 : 65 mol%で あ っ た が 、生 成 物 の 結 晶 相 の 同 定 は で き な か っ た( 図 3.2 (a))。ま た 、 同 温 度 ・ 圧 力 条 件 下 で は 原 料 KOH水 溶 液 の 濃 度 を 0.5 Mと し た 場 合 で も 同 様 の XRDパ タ ー ン し か 得 ら れ ず 、 KNbO3由 来 の 回 折 パ タ ー ン は 確 認 さ れ な か っ た こ と よ り 、 亜 臨 界 条 件 下 は KNbO3の 合 成 に 適 さ な い こ と が 明 ら か と な っ た 。 結晶相の関係(KOH : 0.1 M) 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 K4Nb6O17 KNbO3 (a) (b) (c) 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 K4Nb6O17 K4Nb6O17 KNbO3 KNbO3 (a) (b) (c) 図3.2 各生成物のXRDパターン 2θ 反応温度 T2 [℃] 反応圧力 P4 [MPa] 350 25 400 25 生成物 定性不能 KNbO3/ K4Nb6O17 表3.2 反応温度・圧力と生成物の 400 30 K4Nb6O17 / 不明物 反応炉温度 T3 [℃] 350 400 400 Run No 1 2 3 反応温度 T2 [℃] 反応圧力 P4 [MPa] 350 25 400 25 生成物 定性不能 KNbO3/ K4Nb6O17 400 30 K4Nb6O17 / 不明物 反応炉温度 T3 [℃] 350 400 400 1 2 3 Run No
(a) T2 = 350℃, P4 = 25 MPa (Run No 1) (b) T2 = 400℃, P4 = 25 MPa (Run No 2) (c) T2 = 400℃, P4 = 30 MPa (Run No 3) 次 に 反 応 温 度 (T2) を 400℃ 、 反 応 圧 力 ( P4) を 25, 30 MPaと し て 超 臨 界 条 件 下 で 反 応 を 行 っ た 。反 応 圧 力(P4)を 25 MPaと し た 場 合 、斜 方 晶 系 の KNbO3 (JCPDS 32-0822) と 中 間 生 成 物 で あ る K4Nb6O17(JCPDS 76-0977) が 得 ら れ た( 図 3.2 (b))。そ れ に 対 し 反 応 圧 力( P4)を 30 MPaと し た 場 合 、生 成 物 の XRD パ タ ー ン か ら は 別 種 のK4Nb6O17の 回 折 パ タ ー ン(JCPDS 53-0780)が 確 認 さ れ た も の の 、KNbO3の 回 折 パ タ ー ン は 確 認 で き ず 帰 属 不 明 の ピ ー ク も 多 数 存 在 し た ( 図 3.2 (c))。 な お 、 各 生 成 物 の 回 折 パ タ ー ン の 帰 属 は Appendixに 記 す 。 こ れ ら よ り 、KNbO3の 合 成 に は 超 臨 界 条 件 下 で も 低 圧 領 域 、す な わ ち 低 密 度 領 域 が 適 し て い る こ と が 示 さ れ た 。ま た 、生 成 物 中 にKNbO3が 存 在 し た 反 応 条 件 は Bo Li11)ら が 回 分 式 反 応 器 を 用 い てKNbO3単 一 相 を 合 成 し た 実 験 と ほ ぼ 同 じ 温 度 ・ 圧 力 条 件 (400℃ , 24 MPa, 2.3 節 参 照 ) で あ っ た 。
こ こ で 、Bo Liら は KNbO3を 合 成 で き た 理 由 を 反 応 系 内 の 相 状 態 か ら 説 明 し て い る 。 す な わ ち 、KOHの 水 に 対 す る 溶 解 度 の 推 算 式3 )よ り 、400℃ , 25 MPa で は 1100 mg/kgの 割 合 で KOHが 溶 解 す る と 推 算 で き る 。 Bo Liら は こ れ 以 上 の KOH濃 度 ( 0.1~0.5 M) で 検 討 し た こ と か ら 、 KOHの 一 部 は 沈 殿 ・ 溶 融 相 と な り 、 そ の 相 中 でNb2O5と の 反 応 が 進 行 しKNbO3が 生 成 し た と し て い る 。 こ れ に 対 し 本 研 究 で は 、 混 合 後KOH濃 度 は 560 mg/kg (0.01 M)と 希 薄 で あ る た め 、KOHの 相 分 離 は 生 じ 得 な い 。こ れ よ り 、本 研 究 に お い て KNbO3が 生 成 し た 理 由 は 相 分 離 に 起 因 す る も の で は な い と 考 え る 。そ こ で こ こ で は 、反 応 場 で あ る 超 臨 界 水 の 密 度 に 起 因 す る 諸 物 性 変 化( イ オ ン 積 や 誘 電 率 な ど )が 関 与 す る も の と 考 え る 。な ぜ な ら ば 、超 臨 界 水 を 反 応 場 と し た 場 合 、等 温 度 条 件 で は 低 圧 に な る ほ ど 反 応 場 の 密 度 は 低 下 し 、そ れ に 派 生 し イ オ ン 積 や 誘 電 率 が 低 下 す る 。 粒 子 生 成 に 関 わ る 水 熱 反 応 ( 核 発 生 お よ び 結 晶 成 長 ) の 反 応 速 度 に は 、 密 度 低 下 に よ る 諸 物 性 が 与 え る 影 響 が 大 き い 。核 発 生 は 密 度 低 下 に 伴 い 溶 解 度 が 低 下 す る こ と か ら 過 飽 和 度 が 増 大 し 、そ の 結 果 速 度 が 増 加 す る 。結 晶 成 長 も 過 飽 和 度 に 大 き く 依 存 す る 。表 3.1 に 示 し た よ う に 、KNbO3が 確 認 さ れ た 反 応 条 件 で は 同 時 にK4Nb6O17が 生 成 し て い た 。 こ の 化 学 種 はKNbO3生 成 反 応 の 中 間 体 で あ る 。す な わ ち 、反 応 温 度 が 高 く 、か つ 密 度 が 低 い 条 件 で は 粒 子 生 成 に 関 わ る 反 応 速 度 が 増 大 し た こ と で 、 よ り 早 い 段 階 でK4Nb6O17が 生 成 し 、 そ の 後KNbO3へ と 変 化 し た 可 能 性 が あ る と 推 察 す る 。 こ の 考 察 が 妥 当 で あ れ ば 、 反 応 圧 力 (P4) を 25 MPaと し た 条 件 で KOH濃 度 も し く は 反 応 温 度 を 上 昇 さ せ る こ と でKNbO3へ の 変 換 反 応 が 促 進 さ れ る 可 能 性 が 高 い 。そ こ で 次 にKOH濃 度 を 高 く す る か も し く は 反 応 温 度 を 上 昇 さ せ る こ と でKNbO3が 得 ら れ る か に つ い て 確 認 し た 。
3.4 生 成 物 に 与 え る KOH 濃 度 の 影 響 3.3 節 の 考 察 の 妥 当 性 を 検 証 す る た め 、反 応 温 度(T2)400℃ 、反 応 圧 力( P4) 25 MPa の 条 件 下 で 原 料 KOH 水 溶 液 の 濃 度 を 変 化 さ せ 、生 成 物 の 結 晶 相 に 与 え る KOH 濃 度 の 影 響 に つ い て 検 討 し た 。 表 3.3 に 合 成 条 件 を 、図 3.3 に 各 KOH 濃 度 に お け る 生 成 物 の XRD パ タ ー ン を 示 す 。 図 3.3 (a)よ り 、KOH濃 度 を 0.05 M( 混 合 後 濃 度 280 mg/kg (5.0×10-3 M)) と さ ら に 希 薄 な 条 件 下 に お い て も 斜 方 晶 系 のKNbO3(JCPDS 32-0822) の 回 折 パ タ ー ン が 確 認 さ れ た 。ま た 、原 料KOH水 溶 液 の 濃 度 が 上 昇 す る に つ れ てK4Nb6O17 (JCPDS 53-0780) の 回 折 パ タ ー ン の 強 度 が 減 少 し 、0.15 Mの KOHを 用 い た 場 合 にKNbO3の 単 一 相 が 得 ら れ た 。こ れ よ り 、 3.3 節 で 述 べ た KNbO3の 生 成 は 相 分 離 に 起 因 す る も の で は な くKNbO3生 成 の 反 応 速 度 の 増 大 が 重 要 だ と し た 考 察 の 妥 当 性 が 支 持 さ れ た 。 図3.3 各KOH濃度における 生成物のXRDパターン 図3.4 K4Nb6O17の結晶構造 Interlayer Ⅱ Interlayer Ⅰ a b NbO6 K Interlayer Ⅱ Interlayer Ⅰ a b a b NbO6 K 0 10 20 30 40 50 60 70 80 9 KOH濃度 [M] Run No 0.10 0.05 0.15 2 4 5 粒子の 回収溶液 反応溶液 反応溶液 立ち下げ溶液 (再掲) 生成物 KNbO3/ K4Nb6O17 K4Nb6O17/ KNbO3 KNbO3
(a) KOH = 0.05 M (Run No 4) (b) KOH = 0.10 M (Run No 2) (c) KOH = 0.15 M (Run No 5) (T2 = T3 = 400℃, P4 = 25 MPa, τ= 2.3 s) 表3.3 合成条件と生成物の関係 0 2θ KNbO3 K4Nb6O17 (c) (b) (a) 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 2θ KNbO3 KNbO3 K4Nb6O17 K4Nb6O17 (c) (b) (a) 一 方 で 、0.15 Mの KOHを 用 い た 場 合 は 合 成 中(T2 = 400℃ , P4 = 25MPa)に 装 置 配 管 内 に 粒 子 の 堆 積 が 生 じ 、生 成 物 の 回 収 量 が 著 し く 減 少 し た 。こ の 理 由 と し て 中 間 生 成 物K4Nb6O17の 性 質 が 関 与 し て い る と 考 え る 。K4Nb6O17は 図 3.4 に 示 す よ う な 層 状 化 合 物 で あ る28)た め 層 間 の 吸 水 性 が 高 い 。 従 っ て 、 生 成 物 中 の K4Nb6O17の 存 在 割 合 が 高 い 場 合(KOH = 0.05~0.10 M)は 水 密 度 が 低 い 条 件 下 で も
生 成 物 は 流 体 中 に 良 好 に 分 散 す る た め 、 装 置 配 管 内 の 粒 子 の 堆 積 は 生 じ な い 。 そ れ に 対 し 、K4Nb6O17の 存 在 割 合 が 低 い 場 合 (KOH = 0.15 M) は 、 生 成 物 は
3.5 生 成 物 に 与 え る 反 応 温 度 の 影 響 3.5.1 目 的 3.3 節 の 考 察 の 妥 当 性 を 検 証 す る た め 、反 応 圧 力 P4 = 25 MPa、原 料 KOH水 溶 液 濃 度 0.1 Mの 条 件 に お い て 反 応 温 度 を 上 昇 さ せ る こ と で 、 KNbO3単 一 相 が 得 ら れ る か 確 認 し た 。こ こ で 、反 応 温 度 を 上 昇 さ せ る た め に 2 通 り の 手 法 を 用 い て 合 成 を 行 っ た 。 3.5.2 実 験 方 法 実 験 装 置 と し て 図 3.1 に 示 し た 装 置 を 用 い 、 表 3.4 に 示 す 反 応 条 件 で 合 成 を 行 っ た 。 ま ず 、 反 応 温 度 (T2) を 400℃ と し た ま ま 、 反 応 炉 の 設 定 温 度 ( T3) を 500℃ と し て 反 応 流 体 を 加 熱 し て 合 成 を 行 っ た( 表 3.4 条 件 (b))。T. Adschiri ら26) は ZrOCl2とTiCl4を 原 料 と し た 流 通 式 装 置 に よ る 水 熱 合 成 に お い て 、同 様 の 手 法 を 用 い る こ と で 水 熱 反 応 が 促 進 さ れ た と 報 告 し て い る 。従 っ て 、本 反 応 系 に お い て も 同 様 に 水 熱 反 応 の 促 進 と そ れ に 伴 うKNbO3の 生 成 が 期 待 さ れ る 。 ま た 、 こ の と き の 加 熱 後 流 体 温 度 (T4)が 410℃ 前 後 だ っ た こ と か ら 、比 較 と し て 反 応 温 度(T2)お よ び 反 応 炉 設 定 温 度( T3)を 410℃ と し て 実 験 を 行 っ た ( 表 3.4 条 件 (c))。 こ の と き 、 装 置 の 耐 熱 限 界 の 問 題 か ら 原 料 KOH水 溶 液 と 原 料Nb2O5分 散 溶 液 の 流 量 を そ れ ぞ れ 5 g/minか ら 4 g/minに 変 更 し た 。 ま た 、 混 合 後 の 原 料 濃 度 は い ず れ の 条 件 に お い て もNb: 1.0×10-3 mol/l, KOH: 1.0×10-2 mol/l と し た 。 410 410 反応温度 T2 [℃] 400 表3.4 反応温度依存性を検討した際の反応条件(P4 = 25 MPa) 400 400 500 反応炉温度 T3 [℃] 原料KOH水溶液 濃度[M] 流量 [g/min] 原料Nb2O5溶液 濃度[M] 流量 [g/min] 0.01 0.01 0.012 0.1 0.1 0.12 5 5 4 5 5 4 Run No 6 2(再掲) 7 粒子の 回収溶液 反応溶液 立ち下げ溶液 立ち下げ溶液 410 410 反応温度 T2 [℃] 400 400 400 500 反応炉温度 T3 [℃] 原料KOH水溶液 濃度[M] 流量 [g/min] 原料Nb2O5溶液 濃度[M] 流量 [g/min] 0.01 0.01 0.012 0.1 0.1 0.12 5 5 4 5 5 4 Run No 6 2(再掲) 7 粒子の 回収溶液 反応溶液 立ち下げ溶液 立ち下げ溶液
図3.5 各反応条件における 生成物のXRDパターン 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 KNbO3 2θ K4Nb6O17 (a) (b) (c) 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 KNbO3 KNbO3 2θ K4Nb6O17 K4Nb6O17 (a) (b) (c) (b) T2 = 400℃, T3 = 500℃ (Run No 6) (c) T2 = 410℃, T3 = 410℃ (Run No 7) , T3 = 400℃ (Run No 2) (a) T2 = 400℃ 3.5.3 実 験 結 果 図 3.5 に 各 反 応 条 件 に お け る 生 成 物 の XRD パ タ ー ン を 示 す 。図 3.5 よ り 、反 応 温 度 を 上 昇 さ せ た 場 合 は い ず れ の 条 件 で も 斜 方 晶 系 の KNbO3(JCPDS 32-0822) の 単 一 相 が 得 ら れ た ( 図 3.5 (b),(c))。し か し な が ら 、反 応 温 度 の 上 昇 に 伴 う 水 密 度 の 低 下 に よ っ て 装 置 配 管 内 に 粒 子 の 堆 積 が 生 じ 、 生 成 物 の 回 収 量 が 減 少 し た 。 3.5.4 KOH 濃 度 お よ び 反 応 温 度 依 存 性 に 関 す る 総 括 3.4, 3.5 節 の 結 果 よ り 、 KOH濃 度 の 増 加 も し く は 反 応 温 度 の 上 昇 に よ っ て KNbO3の 生 成 反 応 速 度 が 増 大 す る こ と が 確 認 さ れ 、3.3 節 で 述 べ た 密 度 低 下 に 伴 う 反 応 速 度 の 増 大 が 重 要 と い う 考 察 の 妥 当 性 が 示 唆 さ れ た 。 し か し な が ら 、 い ず れ の 条 件 に お い て も 結 晶 中 へ のFeの 混 入 ( 表 3.5) と 装 置 配 管 内 に お け る 粒 子 の 堆 積 が 確 認 さ れ た 。こ れ よ り 、KOH濃 度 の 増 加 も し く は 反 応 温 度 の 上 昇 は 反 応 速 度 を 増 大 さ せ る も の の 、装 置 配 管 か ら のFe成 分 の 溶 出 と 装 置 配 管 内 に お け る 粒 子 の 堆 積 を 誘 発 す る こ と が 判 明 し 、流 通 式 装 置 の 改 良( 装 置 配 管 の 材 質 選 定 と 構 造 の 検 討 ) と 合 成 条 件 の 最 適 化 が 必 要 で あ る と の 認 識 を 得 た 。 表3.5 反応条件と生成物の結晶相および 化学組成の関係(P4 = 25 MPa) 反応温度 T2 [℃] 400 結晶相 410 500 410 反応炉温度 T3 [℃] KOH濃度 [M] 0.10 0.10 元素組成 K Nb Fe 47.4 48.7 51.7 49.9 400 400 0.15 KNbO3(斜方晶) 48.2 48.8 3.0 0.95 1.4 KNbO3(斜方晶) KNbO3(斜方晶) Run No 6 5 7 反応温度 T2 [℃] 400 結晶相 410 500 410 反応炉温度 T3 [℃] KOH濃度 [M] 0.10 0.10 元素組成 K Nb Fe 47.4 48.7 51.7 49.9 400 400 0.15 KNbO3(斜方晶) 48.2 48.8 3.0 0.95 1.4 KNbO3(斜方晶) KNbO3(斜方晶) Run No 6 5 7
3.6 粒 子 の 粒 径 ・ 形 状 の 制 御 性 の 評 価 1.1 節 で 述 べ た よ う に KNbO3粉 末 は セ ラ ミ ッ ク ス の 原 料 と し て 使 用 さ れ る た め 、 粒 子 の 粒 径 ・ 形 状 の 制 御 も 重 要 と な る 。 そ こ で 3.4, 3.5 節 に お い て 単 一 相 と し て 得 ら れ たKNbO3の 粒 子 の 観 察 を 行 い 、本 合 成 法 の 粒 子 形 状 の 制 御 性 を 評 価 し た 。 図 3.6 に 各 反 応 条 件 ( 表 3.5) で 得 ら れ た 粒 子 の TEM像 と SEM像 を 示 す 。い ず れ の 条 件 で も 、生 成 物 の 形 態 は 50~100 nmの cubic状 の ナ ノ 粒 子 と 1 µm 前 後 の 六 面 体 粒 子 か ら な っ て い た 。 ま た 、Feの 混 入 量 が 多 い 条 件 ほ ど 5 µmを 超 え る 粗 大 粒 子 が 多 く 、 特 に 0.15 Mの KOHを 用 い た 場 合 は 100 µm近 い 粒 子 も 存 在 し て い た 。こ れ は 反 応 条 件 の 水 密 度 の 低 下 に 伴 い 粒 子 の 沈 降 が 生 じ 、配 管 内 に 滞 留 し た 粒 子 の 結 晶 成 長 が 誘 発 さ れ た た め と 考 え る 。 (a) T2 = 400℃, T3 = 500℃ 倍率:38000倍 (b) T2 = 400℃, T3 = 500℃ 倍率:6000倍 (c) T2 = 410℃, T3 = 410℃ 倍率:4000倍 (d) T2=T3=400℃, KOH=0.15 M 倍率:3000倍 (e) T2=T3=400℃, KOH=0.15 M 倍率:250倍 (e) (e) 図3.6 KNbO3のTEMおよびSEM像 こ こ で 、Bo Liら11)が 合 成 し たKNbO 3は 4~5 µmの 不 定 形 で 結 晶 表 面 が 粗 雑 な 粒 子 だ っ た(2.3 節 , 図 2.4)の に 対 し 、本 法 で 合 成 し た KNbO3は ほ と ん ど が 結 晶 表 面 の 滑 ら か な 六 面 体 だ っ た 。こ れ に つ い て 現 段 階 で は 、用 い たNb源 が 異 な る た めKNbO3の 生 成 機 構 が 変 化 し た た め だ と 考 え て い る 。Bo Liら は Nb源 と し て 粉 末 状 のNb2O5を 使 用 し て い る 。Nb2O5は 難 溶 性 で あ る た め 、KNbO3は 未 溶 解 のNb O 表 面 上 に 不 均 一 核 生 成 に よ っ て 析 出 し 、そ の 後 も 同 様 の 反 応 に よ り
適 析 出 ・ 結 晶 成 長 す る ( 図 3.7 (a))。 そ の た め 、 生 成 物 の 粒 径 お よ び 形 状 の 制 御 性 が 低 か っ た 。そ れ に 対 し 、本 法 で はNb2O5ゾ ル とKOHの 原 料 溶 液 と 予 熱 水 を 混 合 す る 手 法 を と る 。こ れ に よ り 反 応 場 は 均 一 系 と な り 、KNbO3は 均 一 核 生 成 に よ っ て 生 成 す る た め 粒 径 お よ び 形 状 の 制 御 性 が 優 位 と な っ た ( 図 3.7 (b))。 本 法 で は 最 小 で 50~100 nm角 の 粒 子 が 得 ら れ て い る こ と か ら 、合 成 条 件 の 最 化 と 装 置 の 改 良 が 図 ら れ れ ば 、KNbO3ナ ノ 粒 子 を 単 一 相 と し て 得 ら れ る こ と が 期 待 で き る 。従 っ て 、今 後 は 流 通 式 装 置 の 改 良 を 行 う と と も に 合 成 条 件 の 最 適 化 を 図 る 予 定 で あ る 。 (a) 不均一核生成 (b) 均一核生成 図3.7 Nb源と結晶成長機構の関係 Nb2O5 不均一核生成 結晶成長 Nb2O5 Nb(OH)x5-x x Nb(OH)x5-x Nb(OH)x5-x K+ K+ K + K+ OH -OH- OH -H2O H2O H2O H2O 2 H2O Nb(OH)x 5-OH -H O Nb2O5 不均一核生成 結晶成長 Nb2O5 Nb(OH)x5-x x Nb(OH)x5-x Nb(OH)x5-x K+ K+ K + K+ OH -OH- OH -H2O H2O H2O H2O 2 H2O Nb(OH)x 5-OH -H O Nb2O5 Nb(OH)x5-x x Nb(OH)x5-x Nb(OH)x5-x K+ K+ K + K+ OH -OH- OH -H2O H2O H2O H2O 2 H2O KNbO3 KNbO3 配管内に堆積 結晶成長 Nb2O5 (amorphous) K OH -K+ OH- K+ OH -H2O H2O + H2O 均一核生成 Nb2O5 (amorphous) K+ OH -K+ OH- K+ OH -H2O H2O H2O Nb2O5 (amorphous) K+ OH -K+ OH- K+ OH -H2O H2O H2O 均一核生成均一核生成 Nb(OH)x 5-OH -H O (a) 不均一核生成, Nb源:Nb2O5powde
写真:Bo Liら11)(図2.4 (a) 再掲)
r (crystalline)
(b) 均一核生成, Nb源:Nb2O5sol (amorphous)
3.7 結 言 本 章 で は 流 通 式 超 臨 界 水 熱 合 成 法 に お い てKNbO3の 合 成 に 適 し た 反 応 条 件 の 探 索 を 行 っ た 。そ の 結 果 、KNbO3の 合 成 に は 超 臨 界 条 件 下 で も 低 密 度 領 域 が 適 し て お り 、水 密 度 低 下 に 伴 う 反 応 速 度 の 増 大 が 重 要 で あ る こ と が 明 ら か と な っ た 。し か し 、KNbO3の 反 応 速 度 が 増 大 す る 高KOH濃 度 及 び 高 温 条 件 下 は 装 置 配 管 か ら のFe成 分 の 溶 出 も 促 進 す る こ と が 判 明 し た 。 ま た 、KNbO3の 粒 子 の 観 察 を 行 い 、本 合 成 法 の 粒 子 形 状 の 制 御 性 を 評 価 し た 。 そ の 結 果 、 最 小 で 50~100 nm角 の 粒 子 が 得 ら れ る も の の 、装 置 配 管 内 に 堆 積 し た 粒 子 が 結 晶 成 長 す る た め 粒 径 分 布 が 広 く な る こ と が 分 か っ た 。 こ れ ら よ り 、 装 置 配 管 か ら の Fe 成 分 の 溶 出 と 装 置 配 管 内 に お け る 粒 子 の 堆 積 が 起 き る 問 題 を 解 決 す る た め に 、合 成 条 件 の 最 適 化 と 流 通 式 装 置 の 改 良 が 必 要 で あ る と の 認 識 を 得 た 。