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中国武術研究会の参加者へのアンケート回答から見える太極拳実施に関する意識について

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1. はじめに    本研究は,中国武術研究会講習会参加者を対象に, アンケート調査により,太極拳実施に関する意識に ついて分析を行うことを目的とする。  太極拳は武術の一種であるとともに,健康増進法 として着目されている。その一例として,福島県喜 多方市では,「太極拳のまち」宣言を行い,さまざ まな分野での太極拳の普及を進めている1)。太極拳 普及事業が始まった当時,約 30 名だった太極拳愛 好者も,太極拳推進委員会の努力によって現在では 1000 名を超えた2)。また,大阪市の市民を対象とし た研究では,「今後行ってみたい運動」の種目に 40 代,60 代以上の女性高齢者では,太極拳が比較的 高い割合であった3)  近年の日本の太極拳愛好者人口は,男性 30 万人, 女性 70 万人の計 100 万人,競技者人口は,男性 13,500 人,女性 31,500 人計 45,000 人にのぼる1)と言 われている。愛好者人口,競技者人口共に,女性の 割合が高くなっている。  カルチャー教室が開催されている中で太極拳も健 康増進のために多くの人に親しまれている。徳島市 の,ふれあい健康館でコミュニティカレッジとして, ヨガや社交ダンスなどが開かれている中にも太極拳 がある4)。シェイプアップや整体などとともに,太 極拳が健康を目的としたプログラムに取り入れられ ている。小田らの研究では「太極拳教室に参加した 50 から 70 歳代の男女の 6 カ月にわたる太極拳実施 が,脚筋力および脚バランスに有意な効果を示して いる」とされている5)  また,藤沼ら6)は「太極拳はゆっくりとした動き の運動であり,この動作と協調させることから,呼 吸も遅くゆっくりしたものになる。このため,同一 強度の歩行運動と比較し,呼吸効率が高く,脂質燃 焼の割合も高くなることが示唆された。肺機能の向 上という側面から見ても,太極拳は健康増進のため の運動として適しているものと考えられる」とされ ている。  趙ら7)の研究では,「中年女性を対象に 24 式太極 拳を 6 カ月間実施した結果,対象全員が太極拳を 行った後,血圧が低下し,特に高血圧者にそれが顕 著な傾向が見られた・・・中等度の運動強度の運動

中国武術研究会の参加者へのアンケート回答から見える

太極拳実施に関する意識について

范 永輝

On the Feedback to Tai Chi Practices from the Participant's Questionnaire

Yonghui F

AN ABSTRACT   The aim of this research is studying consciousness of Tai chi chuan and effects of daily life of  Chinese martial arts group's class attendees in the area of  Tokushima and Osaka. The questionnaires were given to class attendees in the area of  Tokushima and Osaka The 90's  respondents accounted for 0.7%, 80's 5.7%, 60's 12.3%, 50's 12.3%, 40's 4.7%, and 30's 1.0%. 64.5%  of all respondents had good feeling after Tai Chi intervention, 18.4% had a feeling tiredness.  79.2% had feeling social effects, 95.7% had a feeling of something good.  99.7% of all respondents  wanted to keep attending Tai Chi intervention class. It was suggested that respondents promote  health and exercise habits, and improve their skills of Tai chi chuan, and that they continue their  exercises of Tai chi chuan. KEYWORDS : Tai chi chuan, Chinese Martial Arts, exercise habit

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量で中年女性にとって健康づくりに用いることので きる安全な運動であり,その効果は形態及び体力に 有効である可能性が示唆された」とされている。  このように「太極拳は身体へ良い効果をもたらす」 ことが報告されているといっても過言ではない。ま た,「新装版 精説太極拳技法」8)では,「動作が柔 らかくゆっくりであるため,運動量は大きいが,激 しさは少ない。これは,血液の循環をうながし,心 臓機能を強化すると同時に新陳代謝をうながし,胃 腸の消化機能を向上させ,食欲を増加させる。  さらに太極拳の套路を実施する時は心を集中する 必要がある。これは雑念を払い大脳によりよい休息 を与える」と記されている。「太極拳と呼吸の科学」9) では,「膝のバネを有効に使うことができれば,幼 児のような歩き方になるのを防ぐことができ,また 動作によって培われる感覚力や軸の保持能力は,練 習が進むにつれて健康的で安全な動きを作り出し, 日常生活に必要な脚力と転倒しにくいバランス能力 を無理なく身につけていくことにつながる」と記さ れている。また,「太極拳は実施の仕方で運動強度 の調節が可能であり,体力や経験の差を考慮して実 施することができるものと考えられた10)。」と周ら は報告している。  身体面以外でも,橋爪らの研究11)で,「暗算によ るストレス負荷により上昇した CgA レベルが次い で行った立禅及び太極拳により低下」と報告してお り,太極拳が精神的ストレスを軽減する効果を有す る傾向があると考えられる。  中国の朝の公園での太極拳風景は,太極拳関連の 本にもよく掲載されており,中国の人たちにとって 身近なものといえる。もともと武術であった太極拳 は楊露禅(1799~1872)によって,多くの人々に伝 えられた。北京を中心に太極拳を広め,清朝の指南 役にもなるが,皇族の人々の身体が非常に弱かった ため,従来の太極拳の型を従来のものより柔軟なも のに改良し,健康保持と精神修養に重点をおいた太 極拳を築き上げ12)」350 年以上の歴史を有する。健 康法としての太極拳は,中国古代の「吐納」(気功) や「導引」を取り入れ,気持ちを静め,身体をリラッ クスさせ,気を丹田に沈め,意念と気をめぐらして 動くことで,内臓の強化が可能となる13)。」とされ ている。  現在の日本では,太極拳愛好者人口の割合に対し て競技者人口の割合が少ない事や,健康になること を目的とした教則本をよく見かけること,また太極 拳が大衆向けの運動プログラムに含まれていること から考えて,武術としてよりも健康のために太極拳 をしている人が多いことが推測される。中国武術研 究会は,徳島において発足後 20 年を経過し,現在 150 名を超える受講者がいる。また,大阪北部,北 摂地区において,毎年,約 3 回のペースで講習会を 開催しており,こちらにも継続した参加者がいる。 この受講者の協力で,継続的に質問紙調査等による 研究を開始した。その第一報を報告する。 2. 目的  徳島県,大阪府における中国武術研究会の太極拳 講座参加者に対して,太極拳実施に関する意識・効 果についてアンケートによる調査を行い,その解答 数の割合から,太極拳実施に対する意識,効果につ いて知り,太極拳が彼らの生活に与える影響につい て考察することを目的とした。 3. 方法  中国武術研究会が徳島県内で開催している太極拳 教室の参加者,及び,大阪府内で,中国武術研究会 が開催する太極拳講習会の参加者に対して質問紙調 査法を行った。  質問用紙は A4 サイズ用紙 4 枚,両面プリントで 7 ページであった。  質問内容として,対象者の年齢,性別,太極拳に 特化する団体加入と段・級位の取得状況,実施して いる太極拳の種類,武術,及び,中国文化への関心 の有無,指導者による練習会の参加頻度,太極拳の 継続年数,太極拳を始めた理由,太極拳を継続して いる理由,太極拳実施後の気分,太極拳への意識と して,太極拳を行うことによってよかったことの有 無,健康的効果の有無,社会的効果の有無,太極拳

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に対するイメージの有無,今後も太極拳を継続した いという希望の有無を,問うた。年齢は 10 代毎に 区切り,経験年数は 20 年以上,15 ~ 19 年,10 ~ 14 年,5 ~ 9 年,3 ~ 4 年,2 ~ 3 年,1 年,1 年未 満,の様に分類した。  経験した太極拳14),15),16),17),18),19),20),21),22),23),24),25),26),27),28),29),30) ,31),32),33)の種類については,「8 式太極拳26),簡化 24 式太極拳22),42 式太極拳,48 式太極拳,陳式太極拳 (規定・伝統套路18),19),23),24),27),楊式太極拳(規定・伝 統套路)18),19),呉式太極拳(規定・伝統套路)18),19),武 式太極拳(規定・伝統套路)18),19),和式太極拳(規定・ 伝統套路,器械(剣,刀,棍,扇),推手」の文言 をアンケート用紙に記し回答者には丸印等により選 択する方法をとった。  アンケート調査は,指導者による通常練習時間の 前後を利用した。指導者により,アンケート用紙を 対象者に配布し,無記名,自己記入による回答後, その場で指導者が回収した。  アンケート実施場所は,徳島県内では,徳島市, 鳴門市,穴吹市,板野郡北島町,板野郡松茂町,大 阪府では,吹田市,茨木市,高槻市であった。それ ぞれ,平成 30 年 8 月~ 9 月の間に開催された教室 にて質問用紙を配布し,その場で回答記入を依頼し, 回答を集計した。未回答は,無効とせずに未回答群 として集計処理を行った。 4.結果 1 )回答者の男女比,年齢  全回答者数は 299 人で,男性 44 名(14.7%),女 性 255 名(85.3%)であった。地域による回答者数 は徳島 142 名,大阪 157 名。また,年齢は 90 歳代  0.7%,80 歳代 5.7%,70 歳代 35.8%,60 歳代 39.8%, 50 歳代 12.3%,40 歳代 4.7%,30 歳代 1.0% であっ た(図 1)。 2 )経験している太極拳の種類  実施経験のある太極拳に関しては,複数回答可と 設定した。経験している太極拳においては,簡化 24 式は全員が実施していた。以下に,全回答者に 対 す る 割 合 の 数 値 を 示 し た。8 式 34.4 %,42 式 42.1%,48 式 20.4%,陳式 17.4%,楊式 23.7%,呉 式 2.7%,孫式 37.1%,武式 2.3%,器械を用いた太 極拳では,太極剣 38.1%,刀,太極刀 17.0%,拳 太槍 1.0%,太極棍 1.3%,太極扇 51%の回答者に 経験があった。また,二人で組んで練習を行う推手 は,23.7%の回答者が経験を持っていた(図 2)。 3 )太極拳関係団体への所属  太極拳団体に加入率と,その級段位を保持してい る割合は,加入者は 53.1%,未加入者 43.1%であっ た。さらに段,級位の保持者は全体の 39.1%であっ た(図 3)。  以上,1)から 3)の質問には,未回答は存在し なかった。しかしながら,4)以降の質問の回答では, 未記入が存在した。そこで,未記入というカテゴリー を設けて全体を 100%として結果を表した。 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 90代 80代 70代 60代 50代 40代 30代 男性 女性 % 図 1.参加者の年齢と性別 0 50 100 150 200 250 300 350 8ૄ 24ૄ 42ૄ 48ૄ ༚ૄ ᆢૄ ၆ૄ ཚૄ ૱ૄ ਮૄ Έૄ ஓ༊ ໐ ླ ዯ ᦥ ႍ ௓ু 図 2.したことのある太極拳 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 団体加入 未加入 未記入 段・級 無 % 図 3.太極拳団体加入 ・ 段級保持の状況

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4 )武術・中国文化に対する興味の変化   武術・中国文化への興味について,太極拳を始め る前と,継続中において,の 2 時点においての質問 を行ったところ,武術に対して,太極拳を始める前 は 41.5%であったが,太極拳を始めた後は 63.5%に 増加した。中国文化に対して 45.5%であったが, 63.9%に増加した(図 4)。 5 )指導のもと太極拳を実施する頻度,自習の有無  指導のもと太極拳を実施する頻度に対する回答 は, 週 3 回 以 上 18.4 %, 週 2 回 35.1 %, 週 1 回 37.1%,月~ 3 回 8.4%,月 1 回 1.7%,であった。  自習の有無に関しては,自習をする 41.8%,自習 しない 52.2%,未回答 5.4%であった(図 5)。 6 )太極拳経験年数   太 極 拳 経 験 年 数 に 関 す る 回 答 は,20 年 以 上 14.0 %,10 年 か ら 19 年 39.8 %,5 年 か ら 9 年 28.4%,3 年から 4 年 8.7%,1 から 2 年 3.4%,1 年 未満 5.4%,未記入 0.3%であった (図 6)。 7 )きっかけ  太極拳を始めたきっかけについて質問に対する回 答は,複数回答可と設定した。そのため,以下の数 値は,各回答を選択し多人数の全回答者数に対する 割合であった。  健康のため 76.3%,運動のため 68.9%,武術を学 びたいから 31.8%,ストレス解消のため 23.7%,勧 誘 を 受 け た た め 23.1 %, 交 友 関 係 拡 大 の た め 20.1%,近所で開催のため 20.1%,交通手段がある から 9.0%,護身のため 4.3%,その他 10.0%であっ た(図 7)。 8 )継続している理由  継続している理由を問う質問も,複数回答可と設 定した。そのため,同様に,以下の数値は,各回答 を選択し多人数の全回答者数に対する割合を示し た。  健康のため 77.9%,運動のため 54.2%,太極拳を 学びたいから 53.5%,よい交友関係があるから 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 % 図 4 武術・中国文化に対する興味の度合いの変化 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 % 図 5.練習参加頻度・自習 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 20年以上 10∼19年 5∼9年 3∼4年 1∼2年 1年未満 未記入 % 図 6.経験年数 0 50 100 150 200 250 図 7.太極拳を始めたきっかけ

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39.8%,ストレス解消のため 27.1%,交友関係拡大 のため 20.1%,交通手段があるから 39.8%,強くな りたいからその他 10.0%,護身のため 6.7%,勧誘 を受けたため 4.0%,その他 4.0%であった(図 8)。 9 )太極拳実施後の気分  太極拳実施後の気分に関する質問に対する回答 は,気分爽快 55.2%,まあまあよかった 18.7%,少 し疲れた 16.7%,とても疲れた 16.7%,特に感じな い 1.3%,その他 2.3%,未記入 4.0%であった(図 9)。 10)太極拳に対する意識  太極拳に対する意識としては,今後の継続希望, 太極拳を始めてよかったことの有無,自覚的な健康 上の変化の有無,社会的変化の有無,自分なりの太 極拳へのイメージの有無を有・無の 2 項目選択形式 で質問した。継続希望有は 96.2%,太極拳を始めて よかったこと有は 95.7%,自覚的な健康上の向上感 有は 86.7%,社会的変化有は 79.3%,自分なりの太 極拳へのイメージ有が 63.2%であった(図 10)。 5.考察  今回のアンケートでは設問に対する未回答があっ た。ページ全体が未回答の状態であるものもあった。 このような結果は文字サイズを大きくしたため解答 用紙の枚数が多くなったことが一因と推測された。 精度良い回答率を得るためには,回答時に質問に応 じる等の配慮だけでなく,回答者の年齢に応じ,回 答し易さにたいしてより深く考慮した工夫を重ねな ければならないことが示唆された。  回答者らの年齢は 60 代以上の割合が 80%を超え ていた。このことからも太極拳が年齢の高い人に取 り組みやすい運動である特徴を持っていることが示 唆された。2014 年 4 月現在,日本における太極拳 愛好者人口は約 150 万人,内女性 7 割,男性 3 割, 競技者人口は全都道府県合わせて約 7 万人といわれ ている34)。本回答者でも割合は高いが女性が多く男 性が少ないことがわかった。  簡化 24 式太極拳は中国体育委員会が各式の長所 を取り入れて編集したもので比較的やさしく,一般 大衆向けのスタイルとして初心者や高齢者に利用者 が多い。簡化(24 式)太極拳は最初の制定拳とし て 1956 年に発表された。楊式太極拳の主要な 24 の 動作から構成されている。全世界で練習され,健康 運動としての太極拳の普及に大きく貢献している35) といわれ太極拳を学ぶ際に,簡化(24 式)太極拳 が基本的なものであると認識されていることがわか る。太極器械は,剣,刀,槍,棍などの道具を用い て行う太極拳である。推手は,太極拳の基本的な練 0 50 100 150 200 250 健 康 運動 太極 拳 研 鑽 交 友 関 係 ス ト レ ス 解 消 交 通 手 段 有 護 身 勧誘 強く な り た い そ の 他 未 記 入 図 8. 太極拳を継続している理由 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 % 図 9.太極拳実施後の気分 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 % 図 10.太極拳に対する意識

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習法の一つである。推手を学ぶには,まず太極拳の 姿勢や重心移動などの基礎技術を学んでおかなけれ ばならない35)。」と記されている。  中国武術研究会における日常の練習では,ほぼ毎 回簡化 24 式太極拳を行っている。今回の回答は, その結果を反映した回答となったと考えられる。本 研究会で簡化 24 式太極拳を行う要因の一つは,他 の太極拳よりも,簡単で初心者でも親しみやすい動 作で成り立っているからと考えている。それ以外の 太極拳に対する回答は,競技としての必要性,経験 年数に応じて興味の成熟と,武術としての太極拳極 める,等の理由に応じて,他の太極拳を実施してい ることが反映されたものであったと考えている。  段・級位を獲得するためには,各種の段・級位を 授与する団体に所属して経験を積み,それぞれの団 体で定めた試験に合格しなければならない。大阪地 区の回答者では,団体に所属し,段・級位の割合は 多く,徳島地域では少なかったが,それぞれの参加 者の目的に応じた太極拳への取り組み方が異なるた めと推定している。  経験年数の回答では 10 ~ 19 年の経験者が多い結 果となった。本アンケート回答者の 80%以上が 60 代以上であることから,40 ~ 50 代だった頃に太極 拳を開始し,60 ~ 70 代という現在に至り,その結 果 10 ~ 19 年の経験者が多い,と推測している。こ のような結果は,太極拳が年配の人が始めやすく継 続しやすい運動であることも示唆していると考えら れるので,さらに追跡調査等の研究を進め,実態を 解明していきたい。  武術,中国文化に対する興味の度合いに関しては, いずれも,太極拳を始める前よりも,始めてからの 方が,興味を持っている回答者の割合は増加してい た。このことから,太極拳実施により,体を動かす だけでなく同時に,精神的にも武術や,太極拳が生 まれた中国文化に対しても興味が増す傾向があるこ とが示唆された。  参加頻度について,他の調査結果と比較してみた ところ,全国的な調査において,60 歳以上の『運動・ スポーツの日常的な実施者』の中,1 日以上運動を 行っている人の割合は74.9%35),という報告がある。 本報告における 60 歳以上の回答者 245 人のうち 222 人が週 1 回以上と回答し 91.0%となり,参考に した全国の割合より多い結果となった。  自主練習の有無に対する回答は,自主的に自宅な どで太極拳をしている人は 41.5%であった。自主練 習をするためには,指導された内容をある程度理解 して自分のものにする必要があると考えられる。今 回は,自主練習の内容について,制限を設けなかっ たため,練習内容は回答者により異なることが予想 された。今後,取り組みの状況に関しては,様々な 条件を設定して追跡していきたい。  太極拳を始めたきっかけ,理由として,「健康」,「運 動欲求」,「太極拳そのものへの興味」,勧誘,等の 交流」が明らかになった。この結果は,太極拳は自 主的に始めるのではなく,誘われても始め易く,そ のまま続け易い運動であるような特徴を持つことも 示唆されており,今後,武術としての太極拳の本質 的特徴を考察する際にとても興味深い特徴である。  太極拳を継続している理由は,太極拳を始めた きっかけと同様,「健康」,「運動欲求」,「太極拳そ のものへの興味,勧誘,等の交流」が存在すること が明らかになった。総理府の調査において,運動・ スポーツを行った理由を調査したところ,60 歳以 上の回答者の内の約 75.3%は「健康・体力づくり」 と回答し,『健康』を意識して運動を行っているこ とがわかった35)という報告がある。これは,本報告 の回答の傾向とよく似ている。  本報告では,これに加えて,太極拳が上達したい というような,太極拳の持つ本質的内容に対する興 味,武術としての技術を向上したいという意欲が育 まれていた。さらに,太極拳実施を複数人数で行う ことは,よい交流の場となっていると考えられた。 これらの結果から,太極拳は武術という側面だけで なく,一緒に楽しむというような,精神的安定状態 を得ることにも効果をあげていることが示唆された。  一般的に,指導を伴う太極拳実施に参加する条件 は,経験年数よりも,参加者の都合の良い時間,ま たは,開催教室の場所と生活の拠点までの距離,等 の日常生活を営むための要因が強い決定条件になる と予想された。そのため,受講者の経験年数により

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クラスを分けて太極拳を実施することはとても難し いこととなると考えられる。そのため,指導の見地 から考察すると,経験年数 1 年未満の人に対する基 本的な指導が大変難しくなることが問題となること が多い。同様に,指導内容を経験者向けに設定する と,経験年数 1 年未満の人が練習内容の難しさのた め辞めてしまうことも経験的に指摘されている。  しかしながら,実際の太極拳教室には経験年数の 長い参加者も,まだ始めたばかりの参加者も混在し ていることが多い。そのような差があるにも関わら ず,多くの参加者がそれぞれの希望や興味,生活状 況に応じて,太極拳を楽しむ様子が見られる。この ような現象が継続する理由が回答として現れたと考 察している。  一般的に太極拳は,各動作間に連系を持つ連続的 な運動であるため,短期間で習得しにくいという報 告がある36)。このような太極拳の本質的な難しさが あるにもかかわらず,実施後の体調の向上,太極拳 に対する興味,日常の健康増進,運動習慣定着,生 活習慣の活性化,等,様々な理由の混在によって太 極拳への取り組みが持続できていることが示唆され た。  太極拳実施後の気分について,質問を行ったとこ ろ,本アンケートで行った太極拳実施後の気分に関 する回答に着目すると,「気分爽快」の回答が,半 数を超えていた。「太極拳 ―理論と基礎技法の教 程―」では,「柔らかく連貫性のある動作を行うこ とにより,硬直した筋肉や関節を和らげゆるめて, 疲労を回復し,肩こりなどの解消をはかることがで きる。姿勢を中正に保ち,肩を沈めリラックスして 動くことから,背骨の曲がりや,腰の歪み,首の傾 き,いかり肩などの姿勢の体癖を自然のうちに無理 なく矯正する37)」と記されている。太極拳を実施し ている人が感じている太極拳実施による気分は身体 的要因と精神的要因が混在していると推測している が,これらの要因についても,今後継続して研究を 進めていきたい。  太極拳への意識に関しては,継続の希望,社会的 効果,健康効果,個々の太極拳に対するイメージに ついて,等,の側面から質問設定を試みた。参加者 の 63%が各自の太極拳に対するイメージを短時間 のアンケートにおいて回答できることは非常に興味 深い。  また,継続希望の有無の質問では,99%以上の割 合で継続を希望することが明らかとなった。回答者 らは自覚的ではあるが,太極拳実施直後に体調及び 気持ちがよく,その後の日常において精神的安定感 が得られ,健康的効果を感じ,友人関係が充実する というような社会的効果を得ていることが示唆され た。 6.結論  以上より,本アンケート回答者らは,健康維持, 運動習慣,の向上法を探しながら,太極拳に興味を 持ち,指導者の下で,太極拳を学びはじめる。自覚 的ではあるが,実施後の疲労感も少なく,過半数が 気分爽快となった。太極拳が習慣となるのに伴い, 武術,及び,中国文化への関心を深める傾向が見ら れた。彼らは,健康を維持し,運動習慣を持ち続け るとともに,太極拳の技術を学ぶことに興味を持ち ながら,太極拳実施を習慣化している。自身が健康 になったと感じ,健康状態,運動習慣を維持しなが らも太極拳の技術を磨き,友好的な関係の仲間と時 間を共有することを楽しみにしている。そして, 99%以上の回答者が,今後も太極拳の練習を継続し ていきたいと希望している,ということがアンケー ト調査より明らかとなった。 参考文献 1. 社団法人日本武術太極拳連盟 http://www.jwtf. or.jp/about/about06.html 2. 松崎裕美:「太極拳を取り入れた体操」で介護予 防を , 保健師ジャーナル ,161,1200-1203,2005  3. 大阪市:大阪市民のスポーツと健康に関する実態 調査報書 , http://www.city.osaka.jp/Yutoritomidori/ sport/pdf/sport_report.May 9 2006 4.徳島市ホームページ

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   https://www1.city.tokushima.lg.jp/application/ kyouiku_shougaigakushuu/fureaikenkokan/koza/ community/index.html 5. 太極拳実施が中高年者の脚筋力および脚バラン ス,夜間睡眠に及ぼす影響」   小田史郎,笹田直里,曽田美佳ら 浅井学園大 学生涯学習システム学部研究記要 6,   43-50 2006-03-20 6. 「太極拳実施時の呼吸特性,歩行運動との比較(生 活,健康,一般公演,第 63 回日本体力医学会大 会)」   藤沼宏彰,河村真,和田勝 体力科学 57(6), 859,2008-12-0 7. 「中年女性における 24 式太極拳トレーニングの 効果」   趙曼,三村寛一 体力科学 45(3),406,1996-06-01 8. 「新装版 精説太極拳技法」(編集者 笠尾恭二  東京書籍 平成 8 年 6 月 10 日) 9. 「太極拳と呼吸の科学」(楊進 , 雨宮隆太 , 橘逸郎  株式会社ベースボール・マガジン社 2003.7.18) 10. 「高齢者の太極拳運動前の大腿四頭筋振動刺激が 呼吸循環系におよぼす影響について」   「簡化 24 式太極拳の運動強度 第 2 報 - 意識的 な負担増加の影響 -」    周英男 太極拳の医療効用 , 養生 , 世界養生学会 会誌 , 83 ~ 85 1995 11. 「太極拳はストレスを改善するか」「太極拳が精 神的ストレスを軽減する効果を有するか」<ミ ニ・シンポジウム>太極拳の科学的解明試み , 第 25 回生命情報科学シンポジウム 橋爪秀一 , 河野貴美子 , 桂川秀嗣 12. 「太極拳」(楊名時,渋谷麻紗 講談社 昭和 57 年 12 月 5 日) 13. 「太極拳基礎講座」(李徳印 株式会社ベースボー ル・マガジン社 1987.6.20) 14. 「中国太極拳辞典」 (余功保 著  人民体育出 版社 2006.1) 15. 「太極拳論譚」 (沈寿 著  人民体育出版社  1997.10) 16. 「中国武術実用大全」 (康戈武 著  今日中国 出版社 1990.8) 17. 「習武練功 500 問」    (弓雲武 著  北京 体育大学出版社 2000.8) 18. 「競技用規定太極拳」  (中国武術研究院審査・ 認定 (社)日本武術太極拳連盟 日本語版監修   ベースボール・マガジン社 2001.7.20) 19. 「競技用規定武術」   (中国武術研究院審査・ 認定 (社)日本武術太極拳連盟 日本語版監修   ベースボール・マガジン社 1990.9.30) 20. 「近体中国における武術の発展」 (林伯原  不 味堂出版 平成 11 年 9 月 13 日) 21. 「虎を抱いて山に帰る 太極拳の本質」 ツォン リャン・アルファン著 櫛田浩平 訳 ベース ボール・マガジン社 1991.7.20) 22. わかりやすさにこだわった太極拳 24 式」(大畑 祐史 愛隆堂 平成 16 年 10 月 1 日) 23. 「新版陳式太極拳」 (陳正雷 著 何琳訳 丸尾 尚代監修 ベースボール・マガジン社 1995.5.31) 25. 「続陳式太極拳老架二路・剣術・刀術」 (陳正雷  著 大西智之訳 丸尾尚代監修 ベースボール・ マガジン社 1998.8.30) 26. 「 中 国 武 術 史 大 観 」( 笠 尾 恭 二  著  福 昌 堂  1994.7.20) 27. 「かんたん太極拳 広播太極拳」(張文広 著  天野隆司・姜馳 訳 ベースボール・マガジン 社 1996.8.20) 28. 「陳式太極拳の真相解明」(余鳳翔 著 ベース ボール・マガジン社 1990.6.30) 29. 「気功と中国武術」(上野彰 著 ベースボール・ マガジン社 1993.11.20) 30. 「太極拳が身体に良い理由」(雨宮隆太 橋逸郎  著 楊進 監修 ベースボール・マガジン社 2007.4.27) 31. 「太極拳理論の要諦 王宗岳と武禹襄の理論文章 を学ぶ」(銭育才 著 福昌堂 2006.7.15) 32. 「太極拳 - 理論と基礎技法の教程 -」(増田勝  前野書店 ) 33. ウィキペディア 太極拳 http://wpedia.goo.ne.jp/ wiki/%E5%A4%AA%E6%A5%B5%E6%8B%B3/?f rom=websearch

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34. 公益社団法人日本武術太極拳連盟ホームページ http://www.jwtf.or.jp/about/about06 35. 内閣府広報室:平成 18 年度版 , 高齢社会白書 , 内閣府 , 2-12,2006 36. 「高齢者における太極拳の適合性に関する研究」 金 信 敬 , 楊 進  健 康 科 学 大 学 紀 要(5),131-138, 2009-03-01 37. 内閣府広報室:体力・スポーツに関する世論調査 , 内閣府 ,58-86,2004

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抄 録  本研究は、中国武術研究会太極拳教室に参加者に対して行ったアンケート回答結果をもとに、太極拳実施 者の太極拳実施に関する意識について考察した報告である。アンケートは、徳島県内の中国武術研究会の教 室の受講生、大阪府にて開催している講習会受講生を対象とした。全回答者数は 299 人で、男性 44 名(14.7%)、 女性 255 名(85.3%)であった。地域による回答者数は徳島 142 名、大阪 157 名であった。また、年齢は 90 歳代 0.7%、80 歳代 5.7%、70 歳代 35.8%、60 歳代 39.8%、50 歳代 12.3%、40 歳代 4.7%、30 歳代 1.0% であっ た。各回答者の経験している太極拳は参加教室等により異なっていたが、全員が簡化 24 式の練習経験があっ た。太極拳実施後の気分に関する質問では、気分爽快 64.5%、少し疲れた、とても疲れたと回答した割合は 18.4%であった。友人ができる等の社会的変化があったと回答した割合は 79.2%、健康的変化があったと回 答した割合は 86.6%、よかったことがあったと回答した割合は 95.7%、今後も続けたいと回答した割合は、 99.7%であった。始めるきっかけ、継続する理由は、ともに、第1位より、健康増進、運動習慣、太極拳の 研鑽の順に続いた。以上より、太極拳実施者は自覚的ではあるが、実施後の疲労感も少なく、自身が健康に なったと感じ、健康状態、運動習慣を維持しながらも太極拳の技術を磨き、友好的な関係の仲間と時間を共 有することを楽しみにしていて、今後も太極拳の練習を継続していきたいと希望していることが示唆された。  キーワード 太極拳、中国武術、運動習慣

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