Barbara Pym : Excellent Women : 「すばらしい女性」からすばらしい女性へ
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(2) 42. Barbara Pym:E∝ ε. `JJ`η. ι7o筋ι `η. 牧 師館 の 一 部 を フ ラ ッ トにす る こ とに した Julian Malory牧 師 とそ の 姉 の. Winifredが ,Mildredに そ こ に住 まな い か とい って も,今 の 一 人 住 い を捨 I valued my independence very dearly"(p.17)と て る気 はない。“. 思 うの. で あ る。 ただ彼女 は現代 の フェ ミニ ス トと違 って ,そ れ を声高 に主 張 は しな い。“ I was now old enough to become fussy and spinsterish if l wanted tざ. '(p.11-12)と ,自 分 自身 にた い して さえ,な ん とな く弁解 口調 で あ る。. これ は,彼 女が “ cannons'widows,clergymen's sons,Anglo‐ Catholic gent_. lewOmen, church peOple.… an so worthy that they sOunded allnost un‐ pleasanず. (p.17)と い って,自 分 と同類 で,一 緒 に い る と一 番気楽 で くつ. ろ げ る ま じめな人たち を椰楡す るの と同 じで ,彼 女 の,自 分 を も客観 的 に見 る知性 と余裕 を示す言葉であ る。 そ ん な彼女 が第二次世 界大戦直後 の イギ リ スの小 さな社会 の 中 の 人間模様 をどう見 ,ど う考 えたか を読 んでい くこ とに. ,. この小説 のお も しろみ の一つが あ る。 彼女 の周 りの 人 たちが彼女 ほ ど大人で な い ところに,い ろ い ろな喜劇 的場 面 が展 開す る。 た とえば,Winifredは 40歳 をか な り越 えて い るが ,何 か と い う と少女 の よ う に “ exciting"と い う,Forsterの い う ところの,フ ラ ッ ト な人物 で ある。彼 らの フラ ッ トに住 む よ うにな り,や がて弟 の婚約者 になる 美 人 の Allegraに 夢 中になって,ず っと年下 の彼女 に子供扱 い されて も喜 々 と して い る。Mildredは 彼女 をは じめか ら策士 と考 えて用心 して い る ところ が あ るの に,Winifredは まるで彼女 を疑 わ ず , しまい に 自分 が牧 師館 か ら 追 い 出 されそ うにな って は じめて ,彼 女 の本質 を知 るのであ る。 そ もそ も二 人が結婚すれ ば,自 分 が邪魔 な存在 になるか もしれない とい うこ とを考 えた こ とが なか った ので あ る。 また,Sister Blattも 「す ば ら しい女性」 で あ る が ,威 勢 の よい 巨体 の持 ち主 で 自転車 に乗 って元気 よ く走 る姿 が よ く描 かれ helpful advicざ る。Julianが 塗料 を塗 って い る ときの,彼 女 の “. '(p.40)は. ,. 見事 に彼女 の野次馬根性 を表 して い るが ,そ れで彼女 は手伝 って い るつ も り なので あ る。 こ うい う人物 のスケ ッチ を楽 しみ なが ら,読 者 は,そ れ を語 る. Mildredの 冷静 な 目を意識す るのであ る。 まさに Mildredは す ぐれた観 察者.
(3) 岡. 村. 久. 43. 子. で あ る。 彼女 の語 りに,一 層深 み を与 えて い る もの に,彼 女 の あ ま り口に しな い. ,. 老後 の不安が あ る。が ら くた市 に出 された写真立 ての中に写真が入 って い る の を見 て ,Winifredが 人 間 もい らな くなる とが ら くた市 に出 され るみ た い 年 を とる とよけ い そ う思 う よ うにな った と,い う場 面が あ る (p.39)。. ,. Mil‐. dredは ,黙 って い るが ,私 こそ誰 の 人生 の 第 一 の 人 間 で はないのだ と,考 えて い る。 また,後 に親 しくな った人類学者 の Everard Boneが ,学 会 の会 長が最近亡 くな り,未 亡人 は 自由にな って好 きな こ とを して い る,そ れが一 番 だ と,い うの にたい して,そ の年 になって 自由が本 当 に欲 しい か しらと. ,. 答 えて い る (p.178)。 また,友 達 の,独 断的 で気分屋 の Doraと 話 して い て. ,. ふ と 2,30年 後 に一 緒 に住 んで ,つ まらな い こ とで言 い 合 い を して い る 自分 た ち二 人 の老 い の姿 を思 い 浮 かべ る場 面 もあ る. (p。. 105)。. 彼 女 の不 安 を表. す場面 はこれだ けで 数 も少 な くさ りげ ない もので あ るが ,こ ん な思 い や覚1吾 を持 った上で ,一 人暮 しを大切 に し,楽 しんで い ることが ,作 品 の基調 とし て あ るのであ る。彼 女 がセ ンテ ィメ ンタル な Winifredと. ,こ の話 を した く. なか った気持 ち も理解 で きる。 彼女 の,距 離 を置 い た物 の見方 につ い て はす で に述 べ たが ,そ れ力や 1歯 んで い る ときの救 い になる。 た とえば,Julianが 婚約 してか ら,彼 女 は,ふ られ たかわ い そ うな女 とい う役割 をみんなに押 し付 け られ るこ とになる。 い くら 否 定 して も,人 々 はその思 い込 み を改 めて は くれ な い。 当 の Julianも そ の 一 人 だ。婚 約 の こ とを理 解 して くれ て うれ しい。 シ ョックだ っただろ うに と. ,. い う。 いつ もは穏 やか な物言 い をす る彼女 が ,こ の ときはいつ にな くはっ き りと,私 はあなた を愛 して い たので は あ りませ ん,結 婚 してほ しい な どと思 った こ と もあ りませ ん と,い う。 そ れ で も Julianは ,“ YOu are not the kind Of persOn tO expect things as your right even though they may be''. (p.133)と ,い って,自 分 の 思 い違 い に気 づ くこ とはな い。相 手 の気持 ち を思 い や って い る よ うで い て ,実 は 自分 の思 い込 み を押 し付 け る無神経 さに. ,. 彼 女 は うん ざ りして い るに違 い な い 。 しか し彼 女 は,“ I was obviously re¨.
(4) 44. Barbara Pym:E″. ε. `JJ`η. ιИろπ `η. garded in the parish as the chief of the reieCted ones and l must lll the. position with as much dignity as l could"(p.170)と. ,考 え るので あ る。. 自分 を客観 的 に眺め,お もしろが って しまうの は,彼 女 の特徴 で ,そ れが苦 境 にお い て彼女 の救 い となった と,自 分 で い って い るが ,そ れ は また,彼 女 の語 りを明 る く,軽 快 な もの に して い るのであ る。. Mildredは. ,下 の フ ラ ッ トに引 っ越 して きた,人 類 学者 の Helenaと ,夫. の ハ ンサ ム で魅 力 的 な Rockyと の 出会 い をつ う じて変 身す る。 イ タ リア駐 在 の 海軍 士官 だ った彼 が ,Helenaの 留 守 に帰 って きた ときか ら,彼 女 は い つ もの 彼女 で はな い。 あ ま リハ ンサ ム な の で ,失 礼 なほ ど見 つ めて い た し. (p.30),そ の夜彼 らの フ ラ ッ トで飲 んだ ワイ ンのせ い か といい なが ら,そ の夜 は熱 に浮か された よ うにな って い て ,い つ ものお祈 りを忘 れて寝 て しま うので ある。 た しか に Rockyは. ,ハ ンサ ム なだけ で はな く,感. じが いい。. 社交 的 で ,お 世辞 も嫌 みが な い。 エ プ ロ ンを とった り,髪 を撫で付 け た りし なが ら,こ ん な格 好 で す み ませ ん とい う彼 女 に,す て きで す よ と,“ such a almost" way that he could almost have meant iず (p.34)に い った。 この “ は ,“ rather"perhaps"と と もに断 定 的 な表 現 を避 け たが る彼 女 の 口癖 で. ,. 頻 繁 に使 わ れ て い る もので はあ るが ,こ こで はの ぼせ る 自分 を抑 え る気 持 ち を表 す もの で あ る。 また ,彼 女 は イ タ リアで. Rockyが 海 軍 婦 人 部 隊 の士 官. た ち相 手 に あ の 魅 力 を振 りまい て い た こ とを,思 い だ して ,た だ調 子 の い い. だ け の人 よ と,自 分 に言 い 聞 かせ た り,牧 師 や教 会 の 人 た ち の よ うな. worthwhir'と ぃ ぅ worthwhir'な 人ではない と,思 って もみる。 しか し“ “ virtue"と 同 じように,そ れだけで はお も のは,“ excellenず や,後 で述べ る “. しろ くない と,彼 女 は思 うのであ る。. ,Rockyに のぼせてい る自分の気持 ちをかな リオープ ンに話 し てい る。Julianは , まるで恋で もしたみたいですね と,か らかいはす るが Mildredは. ,.
(5) 岡. 村. 久. 45. 子. ,あ なた は け っ して 間違 った こ と,馬 鹿 な こ とをす る人 じゃない わね と,い い,Mildredも ,悲 しい こ とに まった く. 本気 には して い な い。 Winifredは. Virtue is an excellent thing and we should そ の とお りだ と,思 う。しか し “ all strive after it,but it can sometimes be a little depressing"(p.44)と. 考 えて, 自他 と もに認 め る 身持 ち の 堅 い Mildredは. ,. ,い ま気持 ち の うえで. ,. そ こか ら脱皮 しよ う と して い るのであ る。. DOraの 兄 の Williamは ,昔 は結 婚す る こ とにな るか も しれ な い と思 った こ ともあ る人で はあ るが ,今 で は毎年春 に一 度 一 緒 に食事 をす るだ けの仲 に な って い る。 彼 は まった くの独 身 主義 者 な ので あ る。 彼 との食事 中 に Mil‐. dredが Rockyは 私 の タイプだ とい う と,Williamは 驚 い て絶句 す る。 しか し ROckyの こ とを本気 に したわ けで はな い。結婚 な んて考 えち ゃい けな い. ,. I always think Of yOu as being sO very balanced and sensible, such an “ excellent wOmar'(p・ 69),わ れわれ は人生 の “ observer"だ ,結 婚 は他 の人. に任せておけばいいのだと,い う。彼女 の揺れる心 を察知 して,そ れに異議 unpleasant observer"だ なんて,私 はそんな “ をとなえているのである。“. in‐. human sOrt Of persOn"に 見えるのか しらと,彼 女 は思 うが,そ れに して も ,. 彼 の言葉 には うれ しくない言葉が並 んでい る。 しか し,そ れが今 まで彼女 に 与 えられた役割であ り,そ れにはまってい るか ぎり,彼 女 も周囲の もの も安 心だったのである。Williamの 言葉 には,自 分 は結婚す る気 はまるでないの に,Mildredを 他 の人 とも結婚 させず に,自 分 の仲間に とどめておこう とす るエゴイズムが,表 れてい る。彼 のこんな偏狭 さ,気 むずか しさは,明 る く 屈託 の ない Rockyと 比べ ると,一 層 うっ とう しい。彼女 は,こ んなきれい な春の 日にこんな人 とここに座 っていた くない と,思 うのである。. ROckyと お茶 を飲 み に行 った場面 は,対 照 的 で あ る。“ He was so gay and amusing and he made me feel that l was gay and amusing too and some of the things l said was reany quite witty"(p.75)と. ,. い うように. ,. 彼女 の話 し方 までいつ もと違 う。そ して,い つ もは調子 にの りそ うになると ,. 海軍婦人部隊の士官 を思 い出す ことに してい るのに,こ の 日は,家 に帰 って.
(6) 46. θ Jル η ι Barbara Pym:Eα ε. zι η. "ろ. か ら夜 になってや っと彼女 たち を思 い 出す のだ。 ところで ,ひ との言葉 を紹 介す る ときの,Mildredの 表現 には,副 詞が付 くこ とが 多 く,彼 女 の,口 に は出 さな い批判 の 気持 ち を表 して い る。 ところが ,Rockyの こ ととな る と. ,. この批判精神が眠 って い るのか,こ んな副詞が ほ とん ど付 か な い。 ただ,こ gay",“ amusing"と い う形容詞 に,語 り手 ではな く の引用 で繰 り返 される “. て作者 が,Rockyは 明 る く調子 はいいが,深 みのない人間である ことをに おわせているように思える。お茶に出かける前 に二人は家の前 でばった り出 会 うが,こ の とき彼女 が持 っていた ミモザの花 を見て,感 嘆 の声 をあげ,イ タリアを思 い出す とい うの も,彼 らしくあ りきた りだ。一方,Mildredは. ,. It's just that it seemed such a lovely day and l wanted it"(p.74) と “ ,. い って,慎 ましくささやかなものに喜 びを見いだす彼女 の人柄が表れてい る。 この花 の半分 を,彼 女 は Rockyに 分けてや り,そ れを両方 とも Rockyの 家 に置 いて,お 茶 に行 った。それを,夜 になって思 い出すが,下 で Helenaと. Rockyの 笑 い声 が聞 こえて,取 りに行 けない。 二 人は, 日頃口論が絶 えな いの に,こ の 日にか ぎって,な ごやかそ うなの も皮肉である。 こうして彼女 は“ disturbed feeling which was most unlike me"(p。 74)を 味 わ う。 この 悩 ましさは嫉妬 の混 じった淋 しさであろう。翌 日返 して もらった ミモザ は昨 日の,春 らしいふ わふわと した美 しさを失 っていた。彼女 の恋 の将来 を暗示 してい るようである。 この ように心 を揺す られ,高 揚 した気分 と,悩 ましい気持ち とを味わう彼 女 は,ま さに恋 をしているのである。ほとんど誰 にもそれ と気づ かれないが。 ただ何人かの人が彼女 の外見 の変化 に気 づいて い る。Helenaと Everardの 学会 での発表 をみんなで一緒 に聞 きに行 くのに,彼 女 は コー トに合 う新 しい 帽子 をかぶ って い る。Rockyが すか さず それ を褒めて,彼 女 を喜 ばせて い る。 また,久 しぶ りに遊 びにきた Doraが ,彼 女 の変 わったのに驚 いてい る。 彼女 はお化粧 も少 し濃 く,髪 型 に気 を付 け,服 も以前 よ り少 ししゃれた もの を着 るようになってい るのである。そ して30過 ぎたらもう駄 目ね とい って. ,. 色気 をな くして しまった Doraの 着 るものが気 にな り,二 人で しゃれた レス.
(7) 岡. 村. 久. 子. トラ ンヘ 行 って も,ロ マ ンテ ィ ックなその場 の 雰囲気 に合 わ な い Doraと い るの を化 しい と思 う の で あ る。 と きに は 苦 し くて,“ Love was rather a terrible thing。. …。Not perhaps my cup of tea"(p.100)と , 思 うこと もあ. るが ,彼 女 は Doraの よ うな,夢 の な い生活 に もう納 まって はい られな いの で あ る。. Helenaは 物語 の初 めか ら Rockyが 帰 って くるの を喜 んで い なか った。 一 緒 に研 究 して い る Everardに 惚 れて い たか らで あ る。 Rockyも 家事 や料 理 が下 手 で や る気 の な い Helenaに い らい ら して い て,二 人 はあ ま りしっ くり い って い ない 。 そ してあ る 日 Helenaが 家 出 をす る。 ここか ら Mildredは 彼 らに巻 き込 まれ,振 り回 され る こ とにな る。 妻 に逃 げ られて動転 して い る. Rockyを 慰 め,食 事 を作 ってや り,Helenaの 荷物 を届 け,田 舎 へ 引 きこ も った Rockyの 家 具 の送 りだ しを し, 自分 の 家 具 まで持 って行 か れた と怒 る. Helenaの 代 わ りに手紙 を書 き,挙 げ句 の果 て に,夫 との よ りを もど した い Helenaの ため に Rockyに 手紙 を書 い た りと,二 人 にいい よ うに不U用 されて い る。 そ して得 た もの は,Helenaが 戻 って くる の を喜 んだ Rockyが 持 って きた菊 の花東 だ けで あ る。 それ も出が け に庭 か ら乱暴 に切 り取 って結 わ えて も い な い 花 束 だ った。 Mildredは. ..。 why itis that we can never stop “. trying to analyse the motives of people who have no personal interest in. us, in the vain hOpe Of inding that perhaps they may have just a little. after alr'(p.221)と. ,思 う。本当 には自分 に関心 を もってい ない Rocky. を恋す る悲 しさを,今 までにも感 じてい るはずであるが,こ こまでそれを述 べ ることはなかった。“ We"を 使 って一般論 として語るのが,彼 女 の特徴 の 一つであるが,今 まではこのように距離 を置 いた見方がで きなかったのでは なかろうか。. Mildredが Rockyと 別れる場面が三 つ ある。初 めは,彼 が送 って もらう べ き家具 の リス トを一方的 に預 けて,田 舎へ去 って行 くときである。彼女 は 彼 のタクシーが見えな くなるまで見送 り,そ の後,何 も食べ る気 もせず,教 会へ行 って一人座 ってい る。たまたま入 って きた人 に病気 じゃないか と, き.
(8) 48. Barbara Pylm:E∝. ε η θJル ηι"bzι ι. かれ るほ どに,彼 女 は落 ち込 んで い たのであ る。 そ うは い って も,何 百年 の 敬虔 な祈 りの こ もった この場所 が私 の心 を慰 めて くれ る と,思 い,ま たす ぐ にこの教会 は まだで きて70年 だ ったわ と,考 える茶 目っけ は,健 在 で あ る。 次 の 別 れ は,前 述 の 菊 の花 束 を もらった後 で あ る。 Helenaと 落 ち合 うため に出て行 く Rockyの 乗 った タクシ ー を,今 度 も彼 女 は,見 えな くな る まで 見送 る。 そ して前 回 の別 れ と比 較 して,前 の方 が 憂欝 だ ったけ ど,ど こか楽 しい ところ もあ った と,思 う。 こん どは,が っ くりと気落 ち した とい う。前 回 は, もう会 えな い とい う悲 しみ とともに,ひ ょっとす る と…… とい う,か すか な望 み もあ った のだろ う。 三 度 目の別 れで ,彼 女 は完 全 に夢 を砕 かれ るが ,か え ってそれで吹 っ切 れ た のか ,そ の 後 は少 な くと も表 面 的 には 普 通 の 日常 に戻 り,す ぐ Everard の こ とを考 えは じめ る。最後 の別 れは,彼 ら二人が フラ ッ トを引 き払 って. ,. 田舎 へ 行 くときであ る。今度 は別 れ るの は楽 だ った と,い うだ けでその場面 の描写 はない。前夜 ,下 の フラ ッ トに招 かれて い る場面 で も彼女 は非常 に さ な くな った らどうす るの とい う Hele_ めて い る。 た とえば,わ た した ち力れ ヽ. naの 問 い に,Rockyが , もとか ら彼女 には彼 女 の生 活 が あ ったんだ よ と. ,. 答 えた の を皮切 りに,二 人で彼女 の これか らをあれ これ話 し合 って い るの を 聞 い て ,彼 女 は, まるで私が ここに い な い みた い と,心 の 中で皮 肉 って い る。 また,Everardが 彼女 をあち こ ちへ 連 れ 出 して ,彼 女 の視野 を広 げ て くれ る か も しれ な い と,Helena力 れ ヽった の にた い して,“ `Yes,it might/1 sald. humbly frOm my narrowness"(p.238)と ,応 じて い る。冷静で皮 肉 で. ,. 自分 を も笑 える Mildredで あ る。 ..I have so far missed not Rockyと 出会 って しば ら く して,彼 女 は “。 Only the experience of marriage, but the perhaps even greater and more. ennObling one of having loved and lost''(p.449). と, い って い 大三が. ,. Rockyを 恋す る華 や ぎと,報 わ れ な い悲 しみ を,彼 女 は知 って,い ま成 長 して い る。美 しさの あせ た ミモザ を返 されて ,“ I must nOt a1low myself to have feelings,but lnust only observe the efects of other people's"(p.76).
(9) 岡. 村. 久. 子. と,思 った こ ともあ るが ,“ Perhaps it's better to be unhappy than nOt to. feel anything at all"(p.115)な ので あ る。「す ば ら しい女性」 とい う枠 の normal feelings"(p.190)を 中で ,抑 え られて い た “. ,彼 女 は解放す る こと. 宙rtuOuぎ 'だ が お も しろ くな く化 し い 人 か ら Excellenず で “ が で きた。 “. ,. observe"す るだ け sensible"で あ ってか わ いい女 にな った ので あ る。 ただ “ “ で な く,参 加 す る人 に な った の で あ る。 なお 「す ば ら しい 女 性」 の 中 の 夕 normal feelingゞ を最初 に認識 し言及す るの は Everardで あ った。 “. Rockyの ドラマ で は,彼 女 はや は りわ き役 で あ ったが ,Everardの ドラマ で は い よい よ主 役 にな る。 もっ と も,彼 女 の Everardに た い す る表現 は屈 折 して い て,そ れが分 か りに くいが。初 めて Helenaの フ ラ ッ トで 会 った頃 は,本 当 に彼 にいい 印象 を もって い ない。 つ ん と尖 った高 い鼻 は近 寄 りが た い 印象 だ し,無 愛想 で話 しに くい 人 で あ る。 しか し, しば ら くして彼女 が と きどき出か け る ロ ン ドンの教 会 で彼 を見か け た ときか ら,彼 女 は彼 に興味 を 持 つ よ うになる。彼 は会衆 の 中で一 際 目だつ ハ ンサ ム だ と,認 め,“ I felt I cOuld ahnost understand the attraction he nlight have for the kind of person who is drawn to the diJttcult, the unusual, even the unpleasant". (p.50)と い う。 この持 って回 った表現 ,ひ と事 の よ うな表現 が ,か え って 彼女 の,彼 にた いす る拘 りを示 して い る よ うで あ る。 た しか に,一 般受 けの す る Rockyに 今 くび ったけの彼 女 に とって , この よ うな男 はお よびで な い のか もしれな いが。 しか し,彼 女 は本質的 には こ うい う難 しい人 に もよい と ころ を見 つ け られ る大人の観察者 だ った はず で あ る。 彼 女 は Everardが 本 当 に信 者 か ど うか知 りた くて,Helenaの ところへ 出 か けて行 く。が ら くた市 に出す ものが あ るか尋 ねがて らとい うが ,さ っそ く そ の 日に行 くあた り,ど ち らが本 当 の 目的カン 1蚤 しい 。 Everardの ことを切 り. what l hoped was a casual tone"(p.53)で 出す ときの調子 は “. ,や は り非.
(10) Barbara Pym:E″ εθJル ″′"ろ πι″ 常 に意 識 して い る こ とは明 かで あ る。 いつ も Everardの 話 にな る と 目が輝 く Helenaは ,あ なた の よ うな人 が上 に住 んでいて うれ しい と,い った の を 聞 い て,彼 女 は Everardに 会 った だ けで 私 の株 が 上が った と,お も しろが る の は い い と して ,“ For Helena's sake,if not fOr my Own,I ought perhaps to nlake sOHle friendly overture if he were there next week"(p.. 56)と ,い うの は,や りす ぎで はな い だ ろ うか。格 好 をつ け る Mildredが われわれ にはほほえ ま しく滑稽 で あ る。 数週 間後 ,教 会 で 会 った Everardが ,そ の 日の 説教 につ い て 率 直 に話 す ので ,彼 女 は彼 が少 し気 に入 った とい う。 ここで も “ I felt l had made a slight advance,that an ininitesilnal amount of virtue had gOne out of lne, and although l did nOt reany like hirn l did not feel sO actively hostile tO. him as l had befOre"(p。 80)と. ,先 の引用 を受 けて,. まるで義務 で も果 た. した よ うな こ とをいい,本 当 は好 き じゃな い とい うの も, まともには受 け取 りに くい。非常 に彼 に 関心 が あ り,意 識 して い るのだか ら。美 しい春 の 日に. ,. それ に ワイ ンで も飲 め ば,Rockyの こ とを思 うの もいい が ,今 日の よ うな 暗 い 日に は,最 後 の 審判 の 日や Everardの こ とで も考 え るのが いい と,い うの もわ ざとら しい。 しか し,こ の言葉 には一 面 の真実 が あ る。美 しい春 の ヽ を浮 き立 たせ る Rockyの 魅 力 は Everardに はない。彼 は 日の よ うに人 の′ と ま じめで少 し暗 いの で あ る。 .… there was nO warmth Or charm about his Everardに つ い て,彼 女 は “. personality"(p.92)と. ,珍 し く断定 的 に い って い たが ,Everardは ,魅 力. は ともか く,心 配 りのいい暖か い 人間であ ることが 分 か って くる。そ の うえ. ,. 彼女 に関心が あ り,好 意 を もって い る様子 もよ く分 か るの に,Mildredは そ れ を素 直 に認 め な い し,他 の 人 には愛想 のいい彼 女 が Everardに た い して は妙 に不機嫌 な様子 を見せ るのであ る。 まず ,前 述 の学会 で ,発 表 が終 わ り 人 々 があち こ ちにか た まって話 あ って い る中で ,Mildredは 一 人手持 ち無沙 汰 に立 って い た。 この とき,や って きて彼女 の相手 を して,気 まず い思 い か ら救 って くれ たの は Everardで あ った。 もっ と も会話 は はず まず ,義 理 で.
(11) 岡. 村. 久. 子. 来 たのだ と,彼 女 は思 ってい る。その後四人で食事 をしてい る うちに,ク リ スチ ャンについての話 にな り,Mildredと Everardが 組 んで議論 をす ること になるが,成 行 き上やむを得 なかったんだ と,彼 女 は思 う。帰 りも,二 人が 並 んで歩 くことに な り,“ almost as if he had arranged it that way"(p。. 98)と は感 じるが,私 と歩 きたかったか らじゃない と,い う。 なぜなら会話 がはず まなかったか らだ。彼女 はいつ も会話が スムーズにいかない とい うだ けで,彼 は 自分 に関心 が ない と決 めつ けて い る よ うで あ る。 この前後 に. Helenaが 彼女 をか らか うよ うに,Everardは あなたが好 きな よ うね と,い った り,彼 と仲良 く話 して いたけ ど,告 白で もされたのなどと,い う。Mil‐ Her tone was rather light and cruel as if it dredは ,こ の口調 について “. were the most impossible thing in the world"(p.99)と. , い うだけで この. 発言 の内容 について何 もいわない。無神経 なところはあるが,意 地悪 ではな い Helenaに こん な言 い方 をさせ る雰囲気 が二人 の間 にあったはずで,彼 女 は 自分 の気持ち を読者 に隠 してい るのである。 その うち,次 第 に Everardは. ,積 極的 に彼女 を誘 うよ うになる。彼 に誘. われて行 ったパ ブで,彼 女 はよ く分か らないで ビターを注文する。 また もや 会話 は ぎくしゃくして うまくいかない。彼女がほとんど飲 んでいないのに気 がつい た Everardが , ビター は嫌 なんで しょうと,い って他 の飲物 を買 っ less withdrawn"(p。 142)だ った と,彼 女がい うと て くる。 この とき彼 が “. ころを見れば,彼 はいつ も彼女 と話す とき,か た くなって遠慮 していたので はない だろ うか。 また,Rockyと 行 ったパ ブで も彼女 はビター を注文 し ,. ほ とん ど口をつ けてい なか ったのに,Rockyは これに気 づ かず Julianの こ とで彼女 をか らかっていたのを,わ れわれは思 い出す。 このようにして,作 者 はさ りげな くRockyと Everardを 読者 に比較 させて い るのである。Mil‐ dred自 身 は何 もい わないが。飲み慣 れてな くて, よ く分か らなかった と ,. い う彼女 に,Everardは ,あ なた はそのままでいいんです と,い い,な かな か いい雰囲気 で ある。 しか し,彼 女 はこの時 も,Helenaの 話が した くて誘 It was not for the pleasure of my com‐ ったんだわと,考 えるのである。“.
(12) 52. Barbara Pyln:E■ ε. `JJ`″. ι"bη2`η. pany that Everard Bone had asked me Out this evening―. or rather not. even asked me and given me the chance Of appearing better dressed and withOut my string bag,but had waylaid me in the street"(p.142)と. , 1艮. み が ま しい 。 事 実 ,そ の 日は Everardが 彼 女 の オ フ ィス の 前 で 待 って い て. ,. た また ま所 帯 じみ た 袋 を持 ち ,古 い 服 を着 た彼 女 を誘 った の で あ る。 もっ と 、も分 か るが ,わ ざ とひね ち ゃ ん と した格 好 で 来 たか った とい う,彼 女 の 女 ′ と くれ て い る感 じもす る。. この 日は さらに,彼 の母親 の ところでの夕食 に誘 われ,彼 女 はため らい も な くつ い て行 く。 け っ こ う Everardを に くか らず 思 って い るの だ。 こ こで. Mrs.Boneと い う喜劇 的 で 印象 的 な人物が登場 す る。気 むず か しい上流 婦人 の彼女 は,ユ ニ ー クな話題 の持 ち主 で,家 具 につ く虫 の新 しい 防除方法 を話 した り,イ ギ リスが鳥 たちの領土 になる恐 れがあ るか ら,一 生 懸命 ,敵 で あ る鳥 をハ ロ ッズ か ら取 り寄 せ て食 べ て い るのだ と,い う。 また,固 有 の宗教 を もって い た アフ リカの人 々 を改宗 させ たの は宣教 師 の横 暴 だ とい うの も彼 女 の 持 論 で あ る。 この 晩 Mildredは. ,一 人で彼 女 のお 相手 を引受 け させ ら. れて疲 れた と,怒 って い るが ,Everardは ,あ なたは母 に気 に入 られ ま した ね,た い て いの 人 は母 と会 話が続 け られ ない で す ,“ I admired the way you. did it"(p.150)と ,い う。 これ にたい して彼女 は,牧 師 の娘 です か ら人 に platitudざ 合 わせ るの は慣 れて い るんです と,答 える。 しか し彼 女 の い う “. '. で Mrs.Boneの 相手 は勤 まらな い。 また,Mildredは ,お かあ さまはい ろ い ろな こ とに興味が おあ りで ,す て きです ,お 年寄 りは 自分 の こ とと病気 の こ と しか考 え な い 人 が 多 い の に と,い う とこ ろか らみ れ ば,彼 女 が 本 当 に. Mrso Boneと い う人 に興味 を もち,お ざな りで な い会話 を交 わ した ことが 分 か る。 そ して Everardは ,Mildredの そ うい う ところに感心 し,彼 女 の 暖か い聡 明 さ,読 者 には分 か って い るが ,周 囲 の 人 々には分 か って い なか った聡 明 さ,を 理解 して い ることも分 か るのであ る。 人 々 に理 解 されて い な い こ とが淋 し く,Rockyに 相 手 に され て い な い こ とが悲 しか った Mildredは ,Everardの 中 に良 き理解者 を得 て い るのであ る。.
(13) 岡 村. 久 子. そ してそれに気 づ い て い ない わ けで もない。 皮女 をか らか い, Everardが こ 前述 の Rockyと 行 ったパ Iブ で Rockyが , イ こにいて ,手 を握 って くれ る といい ね と,い った とき,彼 女 は「一 瞬 の こ と だが」彼 が い て くれ た らと,思 う。彼 な ら,か らかわず に,Julianと. Alleg‐. raが 公 園 で手 を握 り合 って い たの を見 て心 配 して い る彼 女 の気持 ち を理解 He was quiet and sensible and a して くれ る と,思 っ た か らで あ る。 “ Sensible"は , 後 で Everardが Mildredに church_goer"(p.107)だ か ら。 “ つ い て い う形容詞 で ,二 人が 同質 の 人 間で あ ることを表 して い る。 三 度 目のデ ー トで も二 人 は ぎ くしゃ くして い る。今 度 も Everardが 勝手 にオフ ィスの前 に立 って い て,彼 女 は知 らん顔 を して歩 き過 ぎる。追 い か け ungracefully"(p。 186)に す る。 お昼 を一 緒 に て きた彼 にた い す る挨拶 も “. と誘 われて も,ど う して さきに連絡 しないの と怒 って い る。 だか ら, レス ト. You haven't said in so many ラ ンの 近 くへ 来 て Everardは こ う い う。 “ words that you win have lunch with rne.… but as we seeHl to be going in the right direction l assume that you will"(p.187)と い。 社 交 的 な. Rockyに 比 べ て 見 劣. ,な ん と も理 屈 っぽ. りす る と こ ろ だ。 Mildredも 調 子 を合 わ. せ て ,“ Oh,well,I suppose"と ,“ indiferently"に 答 え る。 しか し彼 女 は さ. すがに自分で もあまりだと思ったのだろう,“ You must think me very im_ polite。. …but the wOrst side of rne seerns to be conling out today"(p.187. -88)と ,い うが ,こ れ もまた理屈 っぼ くまわ りくど くて,Everardと いい 勝負 だ。 二 人が行 った レス トラ ンは Williamの とき と同 じで ,二 人 の注 文 の仕 方 な どが 対比 され る。Everardも こだわ りは あ るが ,Williamほ ど うる さ くな い。 ワイ ンのせ い か気分 もほ ぐれ て い る。 しか し,Mildredが ,オ ー ヴ ンク ロス はいつ もオ ー ヴ ンの そ ばにか けてあ る と,い った こ とか ら,Everardが wen, yOu're a sensible persOn. It's iust the kind of thing you would “. have"(p.189)と. Oh,dear,one was to be for ever , い うと, 4皮 女 は, “. cast down"(p.189)と ,彼 にまで「すばらしい女性」扱 い をされた と思 っ.
(14) Barbara Pym:E″ ε ιη″ `J′. zθ η. "ろ. てが っか りす る。 本 当 は冗 談 めか して い るだ けか と も思 え るが。 そ の 後. Helenaの. ,. sensiblざ 'な 人が いい と よ うな人 は好 みで はな く,結 婚相手 には “. ,. Everardが い う。会話 の流 れか らい って,こ れ は愛 の告 白に近 い と,読 者 は vaguelノ 思 うが ,Mildredの 受 け止 め 方 は分 か らな い 。 た だ彼 の 言 い方 を “ .… wOmen like me really expected very little― 一 と,い うだ け で あ る。“. nOthing almOst"(p.37)と ,考 えて生 きて きた彼女 と して は,慎 重 にな る の も自然 か も しれ な い。 あ る い は,Rockyに た い す る報 われ な い愛 の 悲 し み もほ とん ど口にせ ず ,少 し表現 した ときには一 般論 と してであ った こ とを 考 える と,な まの喜 びや悲 しみ は,そ れが強 い ほ ど,胸 に しまって い るので はな い か とも思 われ る。. Mildredの Everardへ の思 い は,彼 につ い て彼女 が め ぐらせ る様 々 な想像 に よって 間接 的 に表 されて い る と,思 われ る。Allegraに 牧 師館 を出て は と. ,. い われ た Winifredが. ,泣 きなが ら雨 に濡 れて飛 び込 んで来 た り,そ れ を知. った Julianが ,Allegraと 喧嘩 し姉 を探 してや って きた りと,す った もんだ の一 夜 が 明 け て 疲 れ きった Mildredの ところへ 電 話が かか って くる。 Eve‐. rardだ が ,は じめて フ ァース ト・ ネ ーム で 呼 びか け られて,彼 女 は用心 す る。 そ の うえ,夕 食 に誘 われたの はいいの だが ,肉 があ る とい うの にひっか か って,自 分が 肉 を焼 き,野 菜 を料理 して い る姿 を想像 し,腰 が痛 くなるの まで感 じて しまう。疲 れて い てその気 になれ なか った のだろ う,誘 い を断 わ る。 だが ,電 話 を切 るな り,Everardが ,料 理 ブ ック片手 に慣 れない料 理 を して い る姿 をあれ これ想像 し, しまい には涙が 出そ うになるのであ る。. Napier夫 妻 が よ りを もど して か らは,Everardの た め に肉 を焼 い て あげ た い とか ,彼 が 属 して い る先史学会 に入 って発掘 の仕事 を して い る ところ を 想像 したあげ く,こ の 頃連絡 の な い Everardは 病気 で一 人寝 て い るので は な い か と思 う始末 で あ る。 そ して今度 は彼女 が人類学会 の建物 の前 で彼 を待 ち伏せ ,一 緒 に食事 を し ,. 次 の デ ィナ ーの約束 までで きる。 この帰 り道 ,Everardの フ ラ ッ トで のデ ィ ナ ー の様子 や,自 分 も人類学会 に入 って発 表会 で とて もいい質問 を して い る.
(15) 岡. 村. 久. 子. 55. ところを想像 してい る うちに帰 りついて しまうのである。 もう読者 には彼女 の気持 ち は明 らかである。想像が先走 ってはい るが,Rockyの ときの よ う にただ一緒にい ることを楽 しむのではな く,二 人での暮 しを,そ の将来 を考 sensiblざ 'な 人が い えてい るのである。そ う考 えれば,前 回の食事 の ときの “. い とい う Everardの 言葉 もそれな りに受 け止 めてい るのであろ うと思われ る。 こ う して待 っていたデ ィナーの 日,彼 女 は新調 の ドレス を着てい る。お し ゃれになった とい って も日だたない服装 だった彼女が,Helenaが よ く着 て いた黒の ドレス を着てい るのだ。髪 も後ろにきっち りとなでつ けた。途中で 出会 った,無 頓着な Miss Stathamが 驚 き,Williamが 見違えた とい うほど だか ら,相 当なイメージ・チェ ンジをしたようであ る。 さきにあげた彼女 の 想像 の場面か らも分かるのだが,彼 女 は自分 の将来 の姿 として,家 事 をし ,. 病気 の夫 の看病 をす るとい った伝統的な女 の役割 とともに,Helenaに 触発 されて,知 的に夫 とかかわれる女 を思 い描 いてい る。それが この 日の服装 に も表れてい るとい えよう。 二人 のデ ィナ ーは,お い しい鳥が もうで きてい るし (彼 女の料理が当てにさ れていないのである),ほ どよ く温 まったワイ ンがあ り,会 話 も楽 しい。珍 し pleasant and cosy"(p.254)な 雰囲気 だ とい う。彼女 も今 日は素 く彼女が “ 直 になってい る。 い よい よハ ッピー 。ェ ン ドだとい うところなのであるが ,. 作者 はそれをはっき りさせ ない。 い ま書 いてい る本の校正やイ ンデ ックス作 りをして くれないか と,Everardは とて も遠慮がちにいい だす。そ して彼女 が引 き受けると,こ んなところを見た ことがない と,彼 女が思 うほどに喜 ぶ。 ただ単純 に仕事 を引 き受ける人がで きてうれ しいのだろ うか。かな り無愛想 な Everardが それだけの ことで それほど感情 を表す よ うには思 えない し ,. ここまでの成行 きもそれだけでないこ とを示 してい る。 ただ作者 は,そ れを 曖味 なままに して い るのである。 このあ との Mildredの “ … befOre long I shOuld be certain tO ind myself at his sink peeling potatoes and washing. up; that wOuld be a nice change when both prOofreading and indexing.
(16) 56. Barbara Pym:E“ ε ι JJ`η ′"ら銘 ι `η. began tO pall"(p.255)と い う言葉 も,次 々仕 事 を押 し付 け られて報 われ ない 「す ば ら しい女性」 の皮 肉 ともとれ る し,素 直 に彼女 の夢 がかない そ う だ と思 って い る ともとれる。状 況的 には後者 で あ るが ,た だ女 に与 え られ る 役割 にた いす る作 者 の皮 肉 はここにあ る と思 う。 .… what with my duty there and the wOrk l was going to do 小説 は, “. for]Everard,it seemed as if l nlight be going to have what Helena caned `a full life'after all"(p.256)と い う Mildredの 言葉 で 終 わ る。 これ もまた. 曖 味 で あ る。Allegraと の 婚約 を解 消 して ,Mildredを 訪 ねて きたあ の夜. ,. Julianは ,今 まで遠 くばか りを見 て い たが 身近 な ところにいい 人が い たんだ と,こ れ もまた求婚 に近 い こ とをい う。 この 時 も,Mildredは ,い つ もと同 じくそれ につ い て読者 に も何 もい わず ,た だ電 気 ス トー ヴの火 を見 つ めて こ れが本物 の石炭 な らいいの に と,い うだ けで あ る。大 事 な場面 で彼女 は思 っ て い るこ とを口に しな いの で あ る。 しか し,そ のの ち「す ば ら しい女性」 が 二 人 ,牧 師館 に住 む こ とにな った と聞 い て ,こ れで Julianは ,Allegraの よ う な女 か ら は 安 全 だ け ど,そ れ もか わ い そ う だ と い っ て,“ Perhaps it Πlight after all be my duty to marry hirrl,if only tO save hirn from being. too well protected"(p.217)と. ,考 え るの で あ る。 先 の 引用 の “my duty". は ,こ れ を受 け て の 言 葉 で ,Julianと 結 婚 す る こ とを意 味 して い る。彼 女 は 自分 の 結 婚 の こ とを口 にす るの は こ こだ け なの で あ るが ,そ れ を義務 と言 い 表 す ところ は ,い か に も彼 女 ら しい 。 また Helenaの い う “fu11 life"と は 教 会 の 仕 事 な ど す る の は ,“ women accepted. whOル ごηし have. ,. a full life in the. sensざ '(p.238)だ と,い ったの をうけてい る。その意味か らも ,. 小説 は彼女 の二 つ の結婚 の 可能性 を示唆 して終 わ って い るこ とになる。 Everardの ための仕事 とは,結 婚 して彼 を支えることなのである。 二つ の可能性があげ られてい るが,彼 女が どちらを選 ぶかはい うまで もな い。Julianが Mildredを 適当な結婚相手 と認めたとはい って も,彼 は彼女 を 愛 してい るわけで もない し,そ の心 を理解 してい るわけで もない。相変 わら ず,自 分が求めさえすれば,彼 女が喜 んで結婚 し,自 分 の仕事 を助け,姉 と.
(17) 村. 岡. 久. 子. 57. もうまくやって くれると思っているだけである。Everardと Mildredに つい ても,二 人の気持ちが愛 といえるものであるかはよ く分からない。Mildred が Rockyに もったようなロマンティクな気持ちはないのかもしれない。 し かしお互いに好意をもち,理 解 し合っているのは確かであ り,一 緒にうまく sensiblざ 'な 判断が二人を結び付けることになった やっていけそうだとい う“. ηε θで彼 ように思われる。ついでながら,Pymの 次の小説 ルηιaη ごPrπ ごθ 2). ら二人が結婚 した と語 られて い る。 小説 の は じめの方 で ,Mildredは ,自 分 は美 し くない が ,同 じような女性 に希望 を与 えた Jane Eyreで はない と,い った。 しか し,彼 女 は「す ば ら しい女性」 に希望 を与 える “ Jane Eyre"と な った。 ロマ ンテ ィ ックな恋 の St.Johゴ 'も 選 ばず ,彼 女 は Rochesteノ も,内 助 の功 だ け を期待 す る “ 相手 “. 第 三 の人 ,本 当 に心 の通 い合 う人 ,Everardを 選 ぶので あ るが。. この月ヽ 説 には,Helena,Rocky,Julianを は じめ,Mrso Bane,Miss Blatt,. Dora,William,Winifredな どお もしろい 人物 が数 多 く登場 し,Mildredに よって 印象深 く語 られ,そ れぞれ にこの喜劇 の重 要 な登場 人物 となって い る。 この他 に も,Mildredの 家 のお掃 除 をす る Mrs.Morrisに つ い て は,宗 教 に つ い ての少 々偏狭 な考 え方 や ,教 会活動 の ときの彼女 のお しゃべ りや冗談 が. ,. 少 し他 の 人 々 と波長が合 わず ,そ れ にた いす る人 々の反応 に,彼 らとの階級 の違 いが感 じられてお もしろ い。確 か にこ う した人物が小説 を複雑 で奥行 き の あ る もの に して い るが ,そ れ を語 る Mildredが さ らにお も しろ い し,彼 女 の 変化 と成 長 ,そ して賢 明 な夫 選 びが ,こ の小説 の テ ーマ で あ る。 Jane. Austen力 ち思い 出 され る。一 つ の小 さな社 会 を描 い て い る点 も似 て い る。 し か し,第 二次世界大戦直後 の ロ ン ドンの近郊 で は,女 主人公 は, もう親 の家. 2)ル ηιαπグ P″ πノι″ “. (Granada,1953),p.142..
(18) 58. Barbara Pylm:Eκ ε ηι70銘 ι η ι `JJι. に い な い 。仕 事 を持 って 自立 し,老 後 の 不 安 は あ って も,一 人 の 暮 しに満 足 して い る 。 そ して本 当 に理 解 し合 え る人 を見 つ け た と き結 婚 を決 意 す るの で あ る。. Mildredは ,Julianを め ぐって は Allegraと ,Rocky,Everardを め ぐっ て は Helenaと ライ ヴ ァルの 関係 にあ る。Allegraは. ,美 貌 を武 器 に男 を手. 玉 に とる女 で あ り,Helenaは キ ャ リア・ ウ ーマ ンで,家 事 を夫 に任 せ て 平 気 であ る。二人 とも強 く激 しい女 で ある。 しか しAllegraは , うま く男 をつ か まえて生活 の安定 を図ろ う として い るのであ って,男 に依存 して い て , 自 立 した女 で はな い。 Helenaは 経 済 的 には 自立 して い るが ,Rockyと 離 れ る con_ と淋 し くな って デ ヴ ォ ンシ ャ ーの 母 親 の 家 に帰 って しま い,意 外 に “. ventional"(p.185)な 面 を見せ る。 そ の うえ Mildredの 仲 介 で 夫 の もとヘ 戻 って行 く。彼女 は精神 的 には 自立 して い な い,一 人で は暮 らせ ない 人 な の で あ る。一 方 ,Mildredは ,表 面 的 には穏 やかで受 身 で はあ るが ,本 当 は精 神 的 に も,経 済的 に も自立 した強 い 女 な ので あ る。 また,Allegraは カ ー テ ン を Winifredと Mildredに 作 らせ て い る ところで 分 か る よ うに,家 事が で きな い。 Helenaも そ うで あ る。 Mildredだ けが 上 手 に料 理 を し,家 庭 で 夫 を支 え られる女 な ので ある。 この時代 の女性 と して ,主 人公 も作者 もこれが 理想 の女性 の 姿 だ と思 って い たの で あ る。 作者 は,そ の うえ に Mildredを 精神 的 ,経 済的 に 自立 した女性 とす るこ とで ,彼 女 を新 しい理想 の女性 に仕 立てあげたのであ る。 表面的 にはあ ま りに も慎 ま しく地味で 日だたなか った normal feel_ 彼 女 を,Rockyと の 恋 に よ って変 身 させ ,抑 え られ て い た “. ings"を 解放 させ ,“ narrOwness"を 克服 させ て,魅 力 もあ る女性 に変 身 させ たのであ る。 Mildredは 「す ば ら しい女性」 か ら本 当 の す ば ら しい女性 とな って ,Everardを 得 るのであ る。. Excellent Women"で あ る。 だか らこれ は Mildred一 人 の 表題 は複数 の “ こ とをい って い るので はない。作者 は 自分 もそ の一 人であ る,多 くのお と し め られて い る「す ば ら しい女性」 たちの中に,他 に も Mildredが い るのだ と 主張 して い るのであろ う。Winifredや Doraに も主役 になる可 能性 があ る と。.
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