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働く女性のキャリア・トランジション(PDF:644KB)

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 目 次 Ⅰ はじめに Ⅱ 働く女性の離職の現状 Ⅲ 結婚や出産・育児に伴うキャリア・トランジション Ⅳ 結婚や出産・育児と仕事をどのように折り合いをつ けるか Ⅴ 女性特有のキャリア・トランジションをどう乗り越 えるか

Ⅰ は じ め に

 働く女性のキャリア・トランジションのきっか けとしては,さまざま考えられるが,女性の特有 のきっかけとしては,やはり結婚と出産・育児を 取り上げないわけにはいかないだろう。男女共同 参画が謳われる現在,男性にとっては,結婚や子 どもができることはキャリア・トランジションの きっかけとはならないことが通常であり,女性だ けが結婚と出産を機になんらかのキャリア・トラ ンジションを行わなければならないことについて は,別途議論する必要があるが,現状としては, この結婚と出産・育児を,働く女性に「特有の」 トランジションのきっかけとして取り上げる。

Ⅱ 働く女性の離職の現状

 まず,働く女性の離職の現状を見てみよう。   図 1 の 女 性 の 年 齢 階 級 別 労 働 力 率( 内 閣 府  2010)を見てみると,30 歳代で労働力率が低くな る,いわゆる M 字型カーブを描いており,女性 が結婚,子育て期に離職していることがうかがえ る。この 30 歳代における労働力率の低下は年々 解消されつつあるが,スウェーデン,ドイツ,米 国と比較すると,依然として特徴的であることが 本稿では,働く女性特有のキャリア・トランジションとして,結婚や出産・育児をきっか けとしたキャリア・トランジションを取り上げ,現状と問題点を考察した。まず,結婚や 出産・育児をきっかけとしたキャリア・トランジションには,①離職,②仕事を継続,③ 子育て後の再就職の 3 つのパターンが見いだされた。離職においては,両立の難しさか ら,離職する実態が見いだされた。結婚時における仕事の継続は約半数を占めたが,第 1 子誕生時の仕事の継続は 10%にとどまった。いったん離職してもその後の再就職希望が 高いが,両立の難しさから,実現している率が低いことが指摘された。そこで,特に両立 問題に注目して,女性の両立葛藤への対処方略を検討した。両立の問題に対処するための 有効な対処方略として夫婦間役割調整対処,家庭役割充実対処,家庭役割低減対処の 3 つ が見いだされたが,このうち家庭役割充実対処は働く女性の身体上・精神上のリスクをは らむことが指摘された。最後に,結婚や出産・育児をきっかけとしたキャリア・トランジ ションは女性だけでなく,男性についても,ライフ・キャリア上必然であることを指摘 し,両立を可能とする方策,特に長時間労働対策の必要性について論じた。 特集●キャリア・トランジション──キャリアの転機と折り合いの付け方

働く女性のキャリア・トランジション

金井 篤子

(名古屋大学教授)

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論 文 働く女性のキャリア・トランジション わかる。  図 2 は離職した完全失業者の離職理由を男女別 に調べたもの(総務省 2010)である。平成 21 年 度に離職した完全失業者数は 243 万人で,うち男 性は 155 万人,女性は 88 万人であった。男女で 離職した完全失業者数に差があるため,ここでは これに占める当該離職理由者の割合(%)を示し た。男女とも「人員整理・勧奨退職のため」が離 職理由のもっとも大きな割合を占め,そのほかの 離職理由についても,男女とも同様の離職理由が 100 (%) 0 15∼19 20∼24 25∼29 30∼34 35∼39 40∼44 45∼49 50∼54 55∼59 60∼64 65 以上(歳) 10 8.1 17.3 29.2 38.1 40.2 69.7 70.0 72.6 77.7 67.3 74.4 87.8 76.4 65.8 75.2 80.1 89.9 56.5 68.5 75.9 68.2 76.2 82.4 53.7 58.6 66.6 71.0 77.1 83.6 89.7 65.0 75.2 77.2 88.7 83.9 59.3 72.7 74.879.7 86.5 67.7 67.5 58.6 80.7 29.4 2.5 50.6 63.2 43.9 45.1 48.7 13.2 13.3 8.4 23.3 20 30 40 50 60 70 80 90 注:1)「労働力率」=15 歳以上人口に占める労働人口(就業者+完全失業者)の割合。   2)米国の「15∼19 歳」は,16 から 19 歳。   3)日本は総務省『労働力調査(詳細集計)』(平成 21 年),その他の国は ILO『LABORSTA』より作成。   4)日本は平成 21 年(2009 年),韓国は平成 19 年(2007 年),その他の国は平成 20 年(2008 年)時点の数値。 出所:内閣府(2010) 図1 女性の年齢階級別労働力率(国際比較) 日本 ドイツ スウェーデン 韓国 米国 離職理由別割合 % 25 20 15 10 5 0 人員整理・勧奨退職のた め 定年または雇用契約の満了 より良い条件の仕事を探すため会社倒産・事業所閉鎖のため事業不振や先行き不安のため 結婚・出産・育児のため 介護・看護のため 家事・通学・健康上の理由のため その他 男 女 図2 男女別の離職理由別完全失業者割合 出所:総務省(2010)より作成

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並ぶことが示されたが,「結婚・出産・育児のた め」だけは女性のみの離職理由であり,女性の離 職理由の 4.7%(4 万人)を占めた。また,「家事・ 通学・健康上の理由のため(14.1%,14 万人)」も 男性と比較して割合が多くなった。  ところで,完全失業者は(1)「仕事についてい ない」,(2)「仕事があればすぐつくことができ る」,(3)「仕事を探す活動をしていた」の 3 つの 条件を満たしていることが必要であり,たとえば 現在子育て中で,仕事があってもすぐつくことが できない場合は,完全失業者とならず,その意味 から,これらがいわゆる女性の離職者の実態であ るということができないことが考えられる。そこ で,平成 21 年の調査結果は,本稿執筆時にはま だ発表されていないので,平成 20 年『雇用動向 調査』(厚生労働省 2009)を見てみると,この年 の離職者数は 659 万人で,うち女性の離職者 337 万人,このうち,結婚のために離職したものは 12.8 万人,出産・育児のために離職したものは 13.6 万 人 で, 合 わ せ て 全 体 の 7.8 % を 占 め た。 1996 年時点には,この数字が 13.8%であったの で,その割合が年々低下していることは指摘でき る。

Ⅲ 結婚や出産・育児に伴うキャリア・

トランジション

 このように,結婚や出産・育児に伴う離職自体 は年々低下しているものの,依然として,結婚と 出産・育児は,女性にとって大きなトランジショ ンのきっかけである。そこで,これまで女性たち が結婚や出産・育児をきっかけに,キャリア・ト ランジションをどのように経験してきたのかにつ いて見てみたい。  結婚や出産・育児による,キャリア・トランジ ションには,結婚や出産・育児をきっかけとし て,すでに見てきた,①仕事を辞める,のほか に,②働き方を変える,が考えられる。これは, そのまま結婚や出産・育児前の仕事を継続する場 合である。たとえ,仕事を辞めなかったとして も,家庭責任との関係を調整する上で,全く同じ 働き方は難しく,何らかの変化を必要とすると考 えられるからである。また,結婚や出産・育児の 際に離職した場合には,③あらためて仕事に就く という,トランジションが考えられる。以下,調 査データを参照しながら,順に検討する。  内閣府が 2006 年に実施した『女性のライフプ ランニング支援に関する調査』(内閣府 2007)は 30 代,40 代の女性を対象にインターネット上で のモニター調査で実施されたもので,3100 人が 参加した。対象者は 2006 年時点で 30 代,40 代 であるので,1957 年から 1976 年生まれであり, 70 年代後半から 90 年代後半に成人している。日 本は高度経済成長時代に突入し,女性の労働力が 期待され,女性の労働力率が 1977 年の 46.6%か ら 1991 年,1992 年の 50.7%までほぼ順調に増加 したが,その後バブル経済が崩壊し,1996 年の 労働力率は 50.0%となった(厚生労働省 2009)。 ちなみに 2008 年時点では,女性の労働力率は 48.4%とさらに減少している。  また,大学への進学率は,49 歳の対象者が 18 歳時である 1975 年時点では,男性が 41.0%に対 して,女性は 12.7%,短大への進学率は 20.2%で あった。30 歳の対象者が 18 歳時である 1994 年 時点では,男性が 38.9%に対し,女性は 21.0%, 短大への進学率は 24.9%であった(文部科学省  2009)。ちなみに 2009 年時点では,女性の大学へ の進学率は 44.2%,短大への進学率は 11.1%と なっている。  こういった背景のある対象者のうち,結婚と出 産・育児を経験している人は 1740 人(56.1%),結 婚しているが子どものない人は 595 人(19.2%), 結婚していないが子どものある人は 8 人(0.2%) であった。 1 結婚や出産・育児時の離職  この調査において,それぞれ結婚,第 1 子出産 を経験している人を対象に調べたところ,結婚で 仕事を辞めた人の割合は,38.9%であり,第 1 子 出産時に仕事を辞めた人は 46.6%であった。  こういった結婚,出産・育児時の離職につい て,本人の希望が実現しているかどうかを見てみ る(図 3)と,結婚時には 26.7%が,第 1 子誕生 時には 34.0%が,希望通りに辞めたとしている。

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論 文 働く女性のキャリア・トランジション また,これまでどおりもしくは負担を減らすこと を希望したが,結局辞めた割合は,結婚時が 10.9%,第 1 子誕生時は 10.6%であった。一方, 仕事について,これまでどおりを希望し,実現し た割合は,結婚時には 35.1%であり,第 1 子誕生 時には 8.2%であった。結婚や出産・育児をきっ かけに辞めている人のうち,7 割は希望通りに辞 めていることがわかる。  しかし,こういった希望通りに辞めた場合も, その理由を見てみる(図 4)と,結婚時は,体力・ 時間的に厳しかった(27.0%),次いで,辞めるの が当たり前と思った(24.2%),家事・育児に時間 を取りたかった(20.6%)の順であった。第 1 子 誕生時では,家事・育児に時間を取りたかった (53.3%),次いで,体力・時間的に厳しかった (38.9%),辞めるのが当たり前だと思った(19.2%) の順であった。これらの結果から,家事・育児が 体力的にも時間的にもかなり負担になることが認 識されていることと,辞めるという慣習が存在し ていたことがわかる。このほかに,職場の理解や 支援制度が欠けていることが辞める理由となった ことも少なからず指摘されている。 2 結婚や出産・育児時の仕事の継続  一方,結婚や出産・育児の際に仕事を継続した 人の割合は,結婚時においては,仕事をこれまで と同じように続けた人が 40.9%,働き方を変えて 仕事の負担を減らした人が 13.4%,働き方を変え て仕事の負担を増やした人が 1.0%であった。ま た,第 1 子出産時には,仕事をこれまでと同じよ うに続けた人が 11.0%,働き方を変えて仕事の負 担を減らした人が 10.1%,働き方を変えて仕事の 負担を増やした人が 0.6%であった。結婚では半 数以上が仕事を継続しているが,出産時には 20%が仕事を継続した。既に半数が結婚時に仕事 を辞めていることを考えると,出産時の仕事の継 続は全体の 10%ほどにとどまると考えられる。  仕事を辞めなかった理由(図 5)を見てみると, 結婚時においては,続けるのが当たり前だと思っ たからが 56.6%で最も多かった。次いで,経済的 図3 働き方の希望と現実(結婚時 n=2,335,第1子誕生時 n=1,748) 出所:内閣府(2007)より作成 結婚時 これまでどおりを希望し,実現した 第1子誕生時 0 10 20 30 40% 「これまでどおり」もしくは「負担を減 らす」を希望したが,辞めた     負担を減らすことを希望したが,その まま,もしくは増えた        働いておらず仕事をしないことを希望 し,実現した        負担を減らすことを希望し,実現した 仕事を辞めたくて,実現した 仕事を辞めたかったが,働き続けた その他

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27.0 38.9 出所:内閣府(2007) 24.2 19.2 体力・時間的に厳しかったから 0 10 20 30 40 50 60% 20.6 53.3 17.5 15.8 13.2 8.0 9.7 8.4 8.9 13.1 8.8 11.4 6.5 6.3 4.1 28.0 8.5 辞めるのが当たり前だと思ったから 家事・育児に時間をとりたかったから 両立の努力をしてまで続けたいと思える仕事ではなかったから 配偶者・パートナーが希望したから 子どもが欲しかったから 職場に仕事と家庭の両立を支援する制度がなかったから 同じような状況で仕事を続けている人が職場にいなかったから 職場に仕事と家庭の両立に対する理解がなかったから 配偶者・パートナーの親や自分の親など親族の意向だったから その他 結婚時 第1子出産・子育て時 3.2 図5 仕事を辞めなかった理由(3つまで選択,結婚時 n=1,294,第1子誕生時 n=381) 56.6 34.4 出所:内閣府(2007) 43.4 44.4 続けるのが当たり前だと思ったから 0 10 20 30 40 50 60% 25.4 25.2 13.5 10.0 11.3 17.8 8.0 8.1 4.9 3.4 2.2 9.2 10.9 14.7 経済的に必要だったから 仕事にやりがいを感じていたから まわりの女性も続けていたから 職場に仕事と家庭の両立に対する理解があったから 将来的な目標があったから 上司や同僚が引き止めてくれたから 職場に両立を支援する制度があったから その他 結婚時 第1子出産・子育て時

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論 文 働く女性のキャリア・トランジション に必要だったから(43.4%),仕事にやりがいを感 じていたから(25.4%)の順であった。一方,第 1 子出産時には,経済的に必要だったからが 44.4%で最も多くなった。結婚時に最も多かっ た,続けるのが当たり前だと思ったからは 34.4% にとどまった。結婚時と第 1 子出産時で比較する と,職場に仕事と家庭の両立に対する理解があっ たから(結婚時 11.3%,第 1 子出産時 17.8%),職場 に両立を支援する制度があったから(結婚時 2.2%,第 1 子出産時 9.2%)で差が見られ,第 1 子 出産時において職場についての言及が多くなっ た。次項でも取り上げるように,この結果は育児 と仕事の両立の際には,特に職場の受け入れ体制 が重要になってくることを示すものと考えられ た。 3 結婚や出産・育児後の再就職  結婚や出産・育児をきっかけに離職した場合 も,その後の再就職の希望は多い。ライフステー ジ別に,女性がどのような働き方を望んでいるか について,図 6(内閣府 2010)を見てみると,最 も就業希望の少ない,子どもが 3 歳以下の場合に おいても,42.4%がなんらかの形で仕事をしたい と考えており,ライフステージを通じて就業希望 が高いことがわかる。しかし,図 6 からもわかる ように,そのような希望は現実的には十分実現し ていない。希望と現実との差がもっとも顕著なの は,既婚で子どもが 6~11 歳の場合で,何らか働 きたい希望が 90.6%あるのに対し,現実には 44.1%しか働いていない。  こういった希望と現実との差は,少なからず再 就職の難しさを反映していると考えられる。実際 のところ,結婚や出産・育児を経て,再就職し, 仕事をするためには,家庭責任への配慮のない職 場では難しい。名古屋市男女平等参画推進セン ターが 2007 年に実施した,子育てしながら働き たい女性のためのアンケート(女性労働に関する 支援策研究会 2008)で,勤務先決定の際に重視す 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 子どもが 3 歳以下 結婚していない 場合 いない場合 結婚しても子どもが 子どもが 子どもが小学生 4 歳∼ 小学校 入学 子どもが 中学生以上 働いていない 家でできる 仕事 フルタイムだが 残業のない 仕事 残業もある フルタイムの 仕事 働きたくない 短時間勤務 契約・派遣等 正社員 その他 パート・アルバイト 在宅・内職 100 (%) 現実 (%) 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 未婚 既婚・子どもなし 3 既婚・子どもが 歳以下 4, 既婚・子どもが 5 歳 既婚・子どもが 6 ∼ 11歳 既婚・子どもが 12歳以上 自営・家族従業等 注:1)内閣府(2009)より作成。   2)「自営・家族従業等」には,「自ら企業・自営業」「自営の家族従業者」を含み,「契約・派遣等」には,「有期契約社員,     委託職員」「派遣社員」を含む。   3)調査対象は,30∼40 歳代の女性である。 出所:内閣府(2010) 希望 図6 女性のライフステージに応じた働き方の希望と現実

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る点を尋ねたところ,図 7 のようになった。最も 重視する割合が多かったのは,休日出勤を減らし てもらえること(68.1%)で,次いで,残業時間 を減らしてもらえること(64.8%)であった。こ れらから,休日出勤や残業時間などの時間外労働 の存在が子育て中の女性を働きにくくしているこ とがわかる。そのほか,看護休暇,有給休暇,短 時間勤務,繰り上げ・繰り下げ勤務など,同じく 休暇や勤務時間に関する要望が多かった。これら の結果は,正規従業員の勤務時間が長時間化して いる日本の働き方では,子育てしながら働くこと が難しいことを明確にしていると考えられる。 4 キャリア・トランジション選択の満足度  以上,結婚や出産・育児時の各選択における キャリア・トランジションの現状を見てきたが, 再び「女性のライフプランニング支援に関する調 査」(内閣府 2007)でこういった選択への満足度 を見てみると,結婚と出産・育児を経験している 人のうち,満足している,やや満足していると回 答した割合は,離職している人が 60.1%に対し, 仕事を継続している人は 69.6%であった。また, 転職をした人については,52.6%でやや低めで あった。しかし,どの選択においても半数以上が 満足と回答していることがわかる。 2.3 7.1 13.9 29.2 38.9 8.6 2.8 5.5 18.8 34.5 30.3 8.2 6.4 5.1 15.7 32.3 30.7 9.8 3.5 6.2 20.9 38.5 21.6 9.4 4.8 6.6 21.3 31.2 27.2 8.8 3.4 7.2 23.7 35.8 20.8 9.1 8.4 7.9 24.1 26.5 23.1 9.9 9.2 9.8 21.8 31.0 18.5 9.7 6.4 9.0 26.3 24.9 23.9 9.5 4.7 8.4 32.3 26.7 18.0 9.9 8.8 8.3 28.4 24.8 19.7 9.9 11.1 8.2 26.4 22.7 21.6 10.1 9.4 8.0 29.1 24.3 19.3 9.9 9.0 9.0 28.7 25.3 18.0 10.1 9.7 12.5 31.0 25.1 11.8 10.1 0 9 休日出勤を減らして もらえること まったく 重視しない(1) 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100% 8 残業時間を減らして もらえること 3 病気の子どものための法定内 の看護休暇がとりやすいこと 4 有給休暇を半日単位で 使えること 5 短時間勤務ができること 7 始業・就業時刻の繰り上げ や繰り下げができること 15 出産・育児で退職した 従業員が正社員として 再雇用してもらえること 1 法定内の育児休業 が利用しやすいこと 10 家族手当や児童手当 があること 6 フレックスタイム勤務 ができること 11 産前産後休業や育児休業中の 給与や手当て(法定給付以外)が 支給されること 13 事業所内託児施設が 利用できること 14 育児休業復帰後のキャリア継続 のための支援策があること 12 育児サービス費用を 補助してもらえること 2 法定を超える育児 休業が利用できること あまり 重視しない(2) どちらともいえない(3) やや重視する(4) ひじょうに重視する(5) 回答なし 出所:女性労働に関する支援政策研究会(2008) 図7 勤務先決定の際に重視する点 n=746

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論 文 働く女性のキャリア・トランジション  一方,不満であると回答した人のうち未婚者を のぞく既婚者 743 名の不満の理由は,図 8 のよう になった。「自分が面白いあるいはやりがいがあ ると思える仕事がしたかった」が 40.5%でもっと も多く,次いで,「仕事をずっと続けたかった」 が 31.1%,「仕事を一時中断しても再就職した かった」が 28.8%であった。「仕事で正当な評価 を得たかった(16.3%)」「もっと責任ある仕事を したかった(12.7%)」の回答もあった。  不満であると回答した割合は満足であると回答 した割合よりも低くなったものの,その理由に は,仕事を続けたかった,再就職したかったとい う理由のほかに,仕事にやりがいを見いだした かった,責任のある仕事をしたかったといったよ うに,不本意な働き方に言及した理由も少なから ず見られた。不満の程度については,特に転職者 の不満の割合が高かったが,この不本意な働き方 に関しては,現状として初職時が正規従業員で あっても,再就職時にはパート・アルバイトや派 遣社員となる場合が多いことが影響しているとも 考えられた。

Ⅳ 結婚や出産・育児と仕事をどのよう

に折り合いをつけるか

 働く女性が結婚や出産・育児により,キャリ ア・トランジションを経験することを見てきた が,結婚や出産・育児と仕事との両立を目指す場 合,仕事と家庭との間でなんらか折り合いをつけ ていくことが必要になる。ここでは,働く女性が どのように両立に対処しているかについて見てみ たい。  加藤・金井(2006)は,加藤(2002)の共働き 女性を対象とした面接調査の結果をもとに,夫婦 間役割調整対処,家庭役割低減対処,家庭役割充 実対処,仕事役割低減対処の 4 つの両立への対処 行動の尺度を作成している(表 1)。夫婦間役割調 整は夫婦間で家事の分担等を調整しようとする対 処である。家庭役割低減は家事を完璧にやろうと 思わないようにし,できるだけ手を抜こうとする 対処で,逆に,家庭役割充実は仕事も家庭も充実 させて乗り越えようとする対処である。仕事役割 低減は仕事領域で仕事量を調整しようとする対処 である。  このうち,夫婦間役割調整対処,家庭役割低減 対処,家庭役割充実対処の 3 つの対処について, 働く女性 211 人に実施した調査結果を分析したと ころ,夫婦間役割調整対処は全般的な抑うつ感や 家庭における抑うつ感を低減し,結婚満足感を高 めた。また,家庭役割充実対処は家庭や職場にお ける抑うつ感を低減することが示された。一方, 家庭役割低減対処がよく用いられていると,両立 の際の葛藤であるワーク・ファミリー・コンフリ クトが高くなっても,抑うつ傾向や不安傾向が高 図8 これまでの働き方に不満がある場合の理由 n=743 出所:内閣府(2007)より作成 自分が面白いあるいはやりがいがあると思える仕事がしたかった 40.5 31.1 28.8 28.8 16.3 13.2 13.2 12.7 12.7 9.6 7.9 7.9 4.3 3.9 仕事をずっと続けたかった 仕事を一時中断しても再就職したかった 仕事で正当な評価を得たかった もっと責任ある仕事をしたかった 家事・育児を重視したため,仕事に十分時間をとれなかった 仕事の負担を減らしたかった 仕事を重視したため,家事・育児に十分時間がとれなかった 仕事を辞めたかった 仕事を重視したため,結婚・出産について納得のいく 選択ができなかった 3.4 3.9 3.4 7.4 家事・育児を重視したため,昇進・昇格等のチャンスを逃した その他 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45%

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まらずに済むことが示された。このため,夫婦間 役割調整対処,家庭役割充実対処,家庭役割低減 対処のいずれも,有効な対処方法であることが示 された。  しかし,このうち家庭役割充実対処は,表 1 か らも明らかなように,仕事も家庭もおろそかにし ない,完璧にこなすように努力するという対処な ので,成功すれば,満足感も高くなるが,しか し,個人にかかる負荷も高くなる。このため,そ の負担はかなり大きなものとなり,こういった負 担が将来的に個人の身体的・精神的問題を引き起 こす可能性を無視することはできない。このた め,まずはこういったいわゆるスーパーウーマン 志向から,脱却することが重要ではないかと考え る。

Ⅴ 女性特有のキャリア・トランジショ

ンをどう乗り越えるか

 以上,結婚や出産・育児をきっかけとしたキャ リア・トランジションを女性特有のキャリア・ト ランジションと位置づけ,現状とその問題点を概 観した。これらから,この女性特有のキャリア・ トランジションをどう乗り越えるかについて考え たい。  まず,結婚や出産・育児をきっかけとした,離 職というキャリア・トランジションは年々低下傾 向にあることが指摘された。しかし,結婚や出 産・育児によって,働き方に何らかの変化が求め られることから,結婚や出産・育児は依然とし て,女性にとって重要なキャリア・トランジショ ンのきっかけであると考えられる。  現状を見るに,結婚や出産・育児などのライ フ・イベントを持つ女性にとって,これに伴う キャリア・トランジションはそれほど簡単ではな い。日本においては,多少変化してはきているも のの伝統的性役割観が依然として存在しているた め,これらをきっかけに辞めるというキャリア・ トランジションは,伝統的性役割観に合致し,受 け入れられやすい。すなわち,簡単に辞めること ができる。もともと辞めることを前提とした仕事 の仕組みも整っている。特に景気の後退期には, これらのきっかけで辞めることが推奨,あるいは 強制すらされていることは,労働力率の推移が示 している。  しかし,こういった伝統的性役割観に対抗し て,そのまま就業を継続しようとする場合や,再 就職をしようとした場合には,両立の問題が重く のしかかるのである。両立を前提とした仕事の仕 組みが準備されていないからである。実際のとこ ろ,辞めるという選択の理由として,時間や体力 の問題など,両立にかなりの努力が必要な現状で あることが示されていた。  これらの現状を変化させるには,すでに各領域 で取り組みが始まっている,たとえばファミ リー・フレンドリーやワーク・ライフ・バランス の実現が重要である。まず,長時間労働は過労死 などのリスクが高く(金井 2008),長く働く,あ るいは長く働いた方が評価されるという,日本社 会の働き方に関する慣習を変化させる必要があ る。単位時間で考えれば,子育て女性も男性も全 く遜色はない。評価の方法や仕事の仕組みを工夫 夫婦間役割調整対処  夫婦でスケジュールを調整して,仕事や家事をこなす  家事分担について,配偶者と話し合いをする  夫婦でお互いの都合を調節して,家事や仕事をやりくりする  家事分担の調節をしてもらうように配偶者に頼む  夫婦のうち,そのとき時間の作れるほうが家事をする 家庭役割低減対処  ちゃんとできなくても仕方がないと割り切る  家事を手抜きする  完璧を求めず,適当でも良いと割り切る  家事はなるべく手間がかからないようにする  掃除は何日かまとめてする  食事は外食にしたり買ってきたものにしたりする 家庭役割充実対処  親としての役割を果たそうと努力する  家族の一員としての役割を果たそうと努力する  家にいるときはなるべく家族と一緒にいるようにする  大変でも,仕事と家庭のどちらもおろそかにしない  一日少しの時間でも家族と話をする  仕事も家事もできるだけ完璧にこなすように努力する 仕事役割低減対処  仕事の量を減らす  忙しいときには仕事を休んだり,遅刻や早退をする  仕事では残業をしない  職場の上司や同僚に配慮してもらう  出所:加藤・金井(2006)

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論 文 働く女性のキャリア・トランジション することにより,現在の一部の労働力(男性)を 過剰に酷使し,メンタルヘルスの不調者を大量生 産する仕組みよりも,かえって十分な労働力の創 出が可能になると考える。  すなわち,男性においても,働き方としてファ ミリー・フレンドリーやワーク・ライフ・バラン スが重要なことは,すでにメンタルヘルスの視点 から指摘されているとおりである。また,豊かな 人生を送るための当然の権利である。今後,男性 の子育て等家庭責任への関与が高まることを考え れば,男性の,結婚や子どもの誕生・育児をきっ かけとしたキャリア・トランジションも,当然社 会が受け入れなければならないだろう。  以上のことから,女性にとっても,男性にとっ ても,結婚や出産・育児をきっかけとした,キャ リア・トランジションはライフ・キャリア(たと えば,Super 1980;  Schein 1978 など)の視点から, 必然であるとも言えよう。本稿では,これらを女 性特有のキャリア・トランジションとして論じて きたが,今後は両性にとってのキャリア・トラン ジションとして論じていかなければならない。  近年は,それでも女性が結婚や出産・育児の際 にも働き続けることへの社会的理解が高まってお り,それなりの支援施策を整えた職場で,育児中 の女性がことさらに育児に関する権利を主張する ために,ぎくしゃくすることもあると聞く。両立 することがまだ過渡期にあることから生じている 現象であると思われるが,ことさらに権利を主張 しなくても,女性も,もちろん男性もが,自然に 結婚や出産・育児との両立を図ることのできる, 仕事や評価の仕組み作りが期待される。 引用文献 加藤容子(2002)「共働き女性のワーク・ファミリー・コンフリ クトへの対処──夫婦の関係性の観点から」『経営行動科学』 16,pp.75-87. 加藤容子・金井篤子(2006)「共働き家庭における仕事家庭両立 葛藤への対処行動の効果」『心理学研究』76(6),pp.511-518. 金井篤子(2008)「職場の男性──ワーク・ライフ・バランスに 向けて」柏木惠子・高橋惠子編『日本の男性の心理学──も う一つのジェンダー問題』有斐閣,pp.209-226. 厚生労働省(2009)『雇用動向調査』.  http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/9-20-2.html 2010/07/30 ───(2009)『平成 21 年版労働経済の分析』.  http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/09/index.html  2010/07/30 女性労働に関する支援策研究会(2008)『女性労働に関する支援 策研究報告書』名古屋市男女平等参画推進センター. 総務省(2010)『平成 21 年労働力調査年報』.  http://www.stat.go.jp/data/roudou/report/2009/index.htm  2010/07/30 内閣府(2007)『女性のライフプランニング支援に関する調査報 告書』.  http://www.gender.go.jp/research/raifupuran/houkoku19-index.html 2010/07/30 ───(2010)『平成 22 年版男女共同参画白書』.  http://www.gender.go.jp/whitepaper/h22/zentai/pdf/ index.html 2010/07/30 文部科学省(2009)『学校基本調査』.  http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000001015843  &cycode=0 2010/07/30

Schein, E. H.(1978)Career dynamics: Matching individual and organizational needs.  Addison Wesley.(二村敏子・三善勝代 訳(1991)『キャリア・ダイナミクス』白桃書房). Super, D. E. (1980)“A life-span, life-space approach to career 

development.” Journal of Vocational Behavior; 16: 282-298. 

 かない・あつこ 名古屋大学大学院教育発達科学研究科教 授。博士(教育心理学)。臨床心理士。主な著作に “Karoshi (Work to Death) in Japan,” Journal of Business Ethics, 84 (2),209-216. など。キャリア心理学,産業臨床学専攻。

参照

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