• 検索結果がありません。

ドイツ相隣共同体関係理論の現状 : 土地所有権論における土地相隣者間の相互顧慮義務とは

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "ドイツ相隣共同体関係理論の現状 : 土地所有権論における土地相隣者間の相互顧慮義務とは"

Copied!
27
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)ドイツ相隣共同体関係理論の現状 : 土地所有権論 における土地相隣者間の相互顧慮義務とは 著者 雑誌名 巻 号 ページ 発行年 URL. 張 洋介 法と政治 68 2 291(437)-316(462) 2017-08-30 http://hdl.handle.net/10236/00026025.

(2) ドイツ相隣共同体関係理論の現状. 論. 土地所有権論における土地相隣者間の 相互顧慮義務とは 説. 張. 洋. 介. 1. はじめに―本稿の目的 2. 判例における相隣共同体関係理論の概要 (1) 1959年改正による調整請求権の立法化以前 (2) 1959年改正以後の判例 3. 学説上の相隣共同体関係理論の位置付け (1) 信義則と土地所有権規定 (2) 相隣共同体関係理論に関する初期の学説 (3) 相隣共同体関係理論の現状 (4) 相隣共同体関係理論の理論的位置づけ 4. おわりに―土地所有権と信義則. 1. はじめに―本稿の目的 本稿は, ドイツにおける相隣共同体関係理論, とくに相隣共同体関係に 基づいて土地所有者間に課せられる相互顧慮義務というものが, 民法上の 土地所有権概念との関係においてどのように把握されるのかについて分析 することで, わが国における土地利用紛争の新たな解決方法の手がかりと することを目的とする。 ドイツにおける相隣共同体関係理論は, 判例によ (1). り形成され展開されてきたものである。 この相隣共同体関係に関する判例 (1). 相隣共同体関係理論に関してはすでに優れた先行研究が存在する。 代. 表的なものとして, 神戸秀彦 「相隣共同体関係理論と西ドイツ・イミシオー ン法の展開 (一) (二)」 都法26巻2号 (1985年) 573頁以下, 27巻1号 法と政治. 68 巻 2 号. ( 2017 年 8 月) 291( 437 ).

(3) (2). はすでに前稿にて分析紹介した。 前稿ではとくに2000年以降の判例に関 ド イ ツ 相 隣 共 同 体 関 係 理 論 の 現 状. しては紹介だけに終わったため, 本稿では, 判例により展開されている相 隣共同体関係理論が, 学説上どのように受け止められているのか, とくに 相隣共同体関係から導き出される相互顧慮義務という制定法上存在しない 義務が民法上の所有権の自由との関係でどのように位置づけられているの かを中心に分析する。 この分析から得られた示唆をもって, わが国の土地 利用紛争に対して新たなアプローチを提示したいと考えている。 わが国の土地利用紛争に対する新たなアプローチの必要性については, (3). すでに前稿で提起しているが, 本稿でも簡単に触れておきたい。 わが国において近年議論されている主として都市において生じる土地利 用紛争では, 景観利益や平穏生活権といった新たな法益が不法行為法上の 保護法益に該当するかどうかが議論されている。 これは, 問題となった土 地利用によって深刻な影響を受けた者を救済するという視点からの問題で あるが, その原因を考えれば, 問題は, 法令の制限内での土地利用あるい は土地の不利用が周辺の土地利用に深刻な影響をもたらしている点にある ともいえる。 景観利益や平穏生活権の問題, さらには空き家問題にしても 共通するのは, 土地所有者が法令の制限内において自らの権利を行使して いる点にある。 つまり土地所有者は法令の制限内において自由に自らの権 利を行使した結果問題が生じているのである。 この問題に対して, わが国 の現状は, 新たに規制のための法令を制定するか, 事後的救済として709 (1986年) 345頁以下 (以下では 「神戸論文 (一) (二)」 とする) および東 孝行 「ドイツにおける相隣共同体関係の理論の帰趨」 ( 現代民事法学の理 論. 上巻―西原道雄先生古希記念―. 信山社2001年3頁以下) (以下では. 「帰趨」 とする) を参照。 (2). 拙稿 「土地所有者の自由と責任」 法と政治第67巻1号233頁以下。 以. 下では 「自由と責任」 として引用する。 (3). 拙稿 「自由と責任」 233頁∼238頁参照。. 292( 438 ). 法と政治. 68 巻 2 号. ( 2017 年 8 月).

(4) 条に基づく不法行為責任から差止あるいは原状回復を求めるという方法に より対処されている。 適切な土地利用秩序の形成のためには法令による規. 論. 制が最も根本的な解決となることに異論はないだろう。 これに対して, 709条での解決は, そもそも加害者とされる者の土地利用が法令の制限内 で行われているために, 違法な行為であるとすることのハードルは高い。 実際に, 国立景観紛争最高裁判決は, 「景観利益は, これが侵害された場 合に被侵害者の生活妨害や健康被害を生じさせるという性質のものではな いこと, 景観利益の保護は, 一方において当該地域における土地・建物の 財産権に制限を加えることとなり, その範囲・内容等をめぐって周辺の住 民相互間や財産権者との間で意見の対立が生ずることも予想されるのであ るから, 景観利益の保護とこれに伴う財産権等の規制は, 第一次的には, 民主的手続により定められた行政法規や当該地域の条例等によってなされ ることが予定されているものということができることなどからすれば, あ る行為が景観利益に対する違法な侵害に当たるといえるためには, 少なく とも, その侵害行為が刑罰法規や行政法規の規制に違反するものであった り, 公序良俗違反や権利の濫用に該当するものであるなど, 侵害行為の態 様や程度の面において社会的に容認された行為としての相当性を欠くこと (4). が求められると解するのが相当である。」 としている。 すでに述べたよう に, この問題において侵害者の建築行為は, 法令の制限内における土地利 用であり, その土地利用について, 侵害行為の態様, 程度が社会的に容認 された行為としての相当性を欠くという要件を充足しない限り, 保護され (5). ないのであれば, 保護される場面はかなり限られるのではないだろうか。 それならば, 不法行為法によるアプローチとは異なるアプローチによって (4). 最判平成18年3月30日民集60巻3号961頁. (5). この要件をクリアできたとしても, 原則は金銭賠償であり, 差止め・. 原状回復が認められるかという問題が残る。 法と政治. 68 巻 2 号. ( 2017 年 8 月) 293( 439 ). 説.

(5) 問題解決にたどり着けないだろうか。 筆者はこのように考え, そして, 新 ド イ ツ 相 隣 共 同 体 関 係 理 論 の 現 状. たなアプローチとして土地所有者間の権限・利益の調整という視点から問 題の解決に至ることができると考えている。 具体的には, 前稿において次 のようなアプローチを提示した。 民主的な手続きにおいて土地利用秩序が形成されることが前提であるが, その形成された土地利用秩序内においては, 土地所有者間では, 同一条件 である 「法令の制限内」 での土地利用をする際には, 他の土地所有者の利 用を害さないよう土地利用を行う信義則上の顧慮義務があり, この義務違 反に対しては, その利用を害された土地所有者からの土地所有権に基づく 妨害排除・妨害予防請求権を認めるというものである。 この考えの基礎に あるものがドイツにおける相隣共同体関係理論である。 この理論が, どの ような法制度の下でどのような法の欠缺が存在したために形成・発展した のか, さらに, より具体的にどのような紛争においてこの理論が適用され ているのかを明らかにすることが前稿の目的であった。 しかし, 相隣共同体関係に基づく相互顧慮義務という制定法上存在しな い義務が, 判例上確立したものであるとしても, それが, 民法上の土地所 有権概念との関係においてどのように位置づけられうるのか, とくに所有 権の自由との関係においてどのように説明するのかを明らかにする必要が あろう。 この点について明確にしなければ, 筆者の提示する上記解決アプ ローチについても, なぜ, 相隣関係にある土地所有者間に信義則が適用さ れ, 制定法上規定のない義務が課されるのかについて不明瞭のままになる。 そこで, 本稿では, まずは判例の相隣共同体関係に基づく相互顧慮義務 というものの簡単に確認した上で, 学説上は, 土地所有権, 特に所有権の 自由との関係でどのような議論がなされているのかを確認し, 最後にこの ドイツにおける相隣共同体関係理論に関する議論から, 我が国の土地利用 紛争にとって示唆を得ることが可能かどうかを検討したい。 294( 440 ). 法と政治. 68 巻 2 号. ( 2017 年 8 月).

(6) 2. 判例における相隣共同体関係理論の概要 論. 相隣共同体関係理論に関する判例は, 前稿や先行業績も含めてすでに紹 介・分析がなされているが, 学説による理論的位置づけについての議論の 前提として必要な範囲で取り上げる。 その際, 1959年の改正により調整 請求権が規定される以前と以後では, 相隣共同体関係理論の役割も変化す るため, 1959年改正以前における相隣共同体関係理論の役割と1960年以 降の役割とを分けて確認しよう。. (1) 1959年改正による調整請求権の立法化以前 周知の通り, 相隣共同体関係理論の起源は, ナチス期のライヒ裁判所 (6). (以下では, RG とする) の1937年3月10日判決 である。 この判決では 「民族共同体の思想」 とともに 「相隣共同体関係に基づく相互顧慮義務」 が論じられ, したがってナチス期の国家社会主義的思想の影響が色濃く見 られる。 しかし, その後, RG は相隣共同体関係についてそれが物権法へ (7). の信義則の適用と位置づける。 連邦通常裁判所 (以下, BGH とする) も, この相隣共同体関係理論について, これはナチス的思想とは無関係の物権 (8). 法の信義則への適用と位置づけ, そしてこれを継受する。 1959年改正に (9). より調整請求権が挿入される以前の土地所有権規定は, 903条が定める所. (6). RGZ 154, 161. この判決については, 拙稿 「ドイツ民法第906条2項. 2文に基づく調整請求権について―土地所有権論の再考に向けて―」 法と 政治第59巻第4号 (2009年) 41頁以下 (以下では 「調整請求権について」 として引用する) を参照。 (7). RGZ 155, 154. (8). 1959年改正過程に関しては拙稿 「調整請求権について」 を参照。. (9). BGB 903条 (所有権の内容). 物の所有者は, 法律及び第三者の権利と対立しない限りにおいて, 物を自 法と政治. 68 巻 2 号. ( 2017 年 8 月) 295( 441 ). 説.

(7) (10). 有者の排他的権限を具体化したものとして1004条が規定されており, 原 ド イ ツ 相 隣 共 同 体 関 係 理 論 の 現 状. 則として, 自己の土地に及ぶ他者からの作用はすべて排除しうるとされて (11). いた。 そして, その例外として906条に規定するいわゆるイミッシオーン 由に取り扱い, そして, 第三者のあらゆる影響を排除することができる。 動物の所有者は, その権限の行使に際して, 動物を保護するための特別規 定を遵守しなければならない。 (10). BGB 1004条 (侵害の排除請求権および差止請求権). (1) 所有権が占有の剥奪又は留置以外の方法により侵害されたときは, 所 有者は妨害者に対してその侵害の排除を請求することができる。 引き続き 侵害される恐れがあるときは, その侵害行為の差止めを訴求することがで きる。 (2) 所有者が忍容する義務を負う場合には, 前項の請求をすることができ ない。 なお, 1004条1項所定の排除請求権と差止請求権の双方を合わせて防御請 求権 (Abwehranspruch) と呼ばれるため, 本稿ではこの名称を用いる。 (11). BGB 施行当初の第906条. 「土地の所有者は, ガス, 蒸気, 臭気, 煙, 煤, 熱, 騒音, 振動の侵入お よび他の土地から来る類似の諸作用を, 作用が彼の土地の利用を侵害しな いか, または, 非本質的にしか侵害しないか, あるいは, この状態の土地 における場所的な諸関係によれば通常の他の土地の利用によって引き起こ されるときには, これを禁止することができない。 特別の誘導による侵入 は許されない。」 現行の BGB 906条 (不可量物の侵入) (1) 土地の所有者は, ガス, 蒸気, 臭気, 煙, 煤, 熱, 騒音, 振動および 他の土地から来る類似の作用が, 自己の土地の利用を侵害していないか, あるいは, 非本質的に侵害しているにすぎない限りでは, これらの作用を 禁止することができない。 法律あるいは法規命令により調査され評価され る作用がこれらの諸規定により定められた限界値あるいは基準値を越えて いない場合には, 通常は非本質的な侵害が存在する。 連邦イミッシオーン 防止法48条に基づいて発せられかつ技術水準を表す一般行政規則の値につ いても, 同じことが妥当する。 (2) 本質的な侵害が, 他の土地の場所的に慣行的な利用によって引き起こ され, かつ, この種の土地利用者に経済的に期待しうる措置によって防止 296( 442 ). 法と政治. 68 巻 2 号. ( 2017 年 8 月).

(8) 作用については, 906条の要件である場所的慣行性に適合した作用に該当 すれば排除し得ず受忍しなければならないというものであった。 そうする. 論. と, 紛争の解決としては, 問題となった作用が906条の要件に該当せず, したがって, 1004条に基づきイミッシオーンの差止めが認められるか, あるいは, 906条の要件に該当し受忍するかのどちらかしか選択し得なかっ た。 このことは, 1004条に基づく差止めが認められれば, 場合によって は相手方の操業停止につながる可能性へとつながり, 反対に, 906条に基 づき受忍しなければならないとすると, 受忍を義務づけられた者の土地利 用が成り立たない可能性へとつながることになる。 このような条文構造の 下で, 相隣共同体関係が用いられ, とくに金銭による調整的補償を認めて より柔軟な解決が図られたのである。 したがって, 1959年改正による調 整請求権の挿入まで相隣共同体関係は, 主として調整請求権という制定法 (12). 上存在しない金銭請求権を認めるための役割を果たしたといえる。 実際に, 1959年改正過程において, 改正草案の段階では 「相隣共同体関係から生 (13). じる利益・不利益を考慮すれば」 という文言が存在していたが, 審議の段 されえないときも, また同じ。 これに従って所有者が作用を受忍しなけれ ばならない場合に, 当該作用がこの所有者の土地における場所的に慣行的 な利用または収益を期待しうる程度を越えて侵害している場合には, この 所有者は, 他の土地の利用者に対して, 金銭による適切な調整を請求する ことができる。 (3) 特別な誘導による侵入は許されない。 (12). 相隣共同体関係自体が金銭請求権の直接の根拠であるかについては,. RG と BGH で立場が異なる。 この点については, 拙稿 「調整請求権」 参 照。 (13). 906条2項草案 「本質的な侵害が, 他の土地の場所的慣行利用によっ. て引き起こされ, かつ, この種の利用者に経済的に期待しうる措置によっ て防止されえないときも, また同じ。 これに従って所有者が作用を受忍し なければならない場合に, 当該作用が, この所有者の土地における場所的 に慣行的な利用または収益を, 相隣共同体関係から生じる利益・不利益を 法と政治. 68 巻 2 号. ( 2017 年 8 月) 297( 443 ). 説.

(9) 階で, 実際の裁判で裁判官が当然行うことであるので不要とされ削除され ド イ ツ 相 隣 共 同 体 関 係 理 論 の 現 状. た。 いずれにせよ, 相隣共同体関係は調整請求権の挿入に大きな役割を果 たしたといえる。 しかし, 相隣共同体関係が果たした役割はそれだけにと どまらない。 ここまでの判例において相隣共同体関係に基づく相互顧慮義 務から, ①本来は906条が適用されるため受忍義務が課される作用に対し て1004条の防御請求権が認められる可能性, ②本来は1004条に基づく防 御請求権が認められる作用に対する受忍義務の可能性, ③土地所有者に一 定の積極的義務が課される可能性, ④相隣共同体関係から直接金銭請求権 (14). が認められる可能性, の4つの類型の端緒が見られる。 ④が1959年改正 により調整請求権として挿入された。. (2) 1959年改正以後の判例 1959年改正により調整請求権が挿入されたことで, BGH も相隣共同体 (15). 関係を用いて金銭的解決を図る必要がないとしていた。 しかし, 1970年 代以降, 相隣共同体関係を根拠に906条2項文の調整請求権を拡大適用す る判例をはじめとして, 様々な相隣紛争において制定法上の規律では結果 の妥当性が得られない場合に, 相隣共同体関係が用いられ柔軟な解決が図 られるようになる。 上で挙げた4つの類型のうち①類型および②類型は, 土地利用に伴う何らかの作用が前提とされている。 ①類型は, 相隣共同体 関係理論の出発点である RGZ 154, 161 が典型であるし, 採石場の爆破に 考慮すればこの所有者に期待しうる程度を越えて侵害している場合には, この所有者は, 他の土地の利用者に対して, 金銭の形で, 相当の調整を請 求 す る こ と が で き る 。 」 Verhandlungen des Deutschen Bundestages, 3. Wahlperiode, Anlagen-Band 64, Drucksache 1343. (14). 詳細は, 拙稿 「自由と責任」 243頁∼246頁。. (15). BGHZ 38, 61 参照。 なお, この点に関しては, 神戸論文 (二) 355頁. 以下が詳しい。 298( 444 ). 法と政治. 68 巻 2 号. ( 2017 年 8 月).

(10) よる石片の飛来に対する受忍義務とその代わりの金銭調整が認められた判 (16). (17). 決は②類型の典型である。 その他に, もともと一筆の土地が分筆され, そ. 論. の一方の土地の地下に配水管が設置されていたが, 分筆後の両所有者の合 (18). 意がなかったため, この撤去を請求した事案なども, 本来は1004条が認 められるところ相隣共同体関係を理由に受忍義務が課された事案である。 1960年以降は, 上記事案のような土地利用に伴う何らかの作用が問題 となるケースではなく, 土地利用に伴う作用がない紛争にも相隣共同体関 係が適用されていくようになる点に特徴がある。 たとえば, 隣地の地盤に (19). 多大な影響を与える違法な土地の掘削を禁じた BGB 909条が問題となっ (20). た事案や, 境界紛争において係争地の占有事実を作り出さないようにする (21). 義務が認められた事案などである。 これら一連の判決において, BGH は相隣共同体関係の適用に際して繰 り返し次のことを述べる。 それは, 土地相隣者間の権利義務は, 原則とし て制定法上の相隣関係規定に規律されているが, 制定法上の諸規定を越え て矛盾する利益の適切な調整が必要とされる場合には, 例外的に相隣共同 体関係に基づく相互顧慮義務が適用される。 その機能は, 本来的には, 制. (16). BGH v. 08. 10. 1958=BGHZ 28, 225. いわゆる Grobimmission といわ. れる作用類型である。 (17). その他に, BGH v. 06. 07. 2001=BGHZ 148, 261 などもある。. (18). BGH v. 31. 01. 2003=NJW 2003, 1392. 拙稿 「自由と責任」 263頁以下. 参照。 (19) BGB 909条 (土地の掘削) 隣地の地盤が必要なる支持を失うような土地の掘削はしてはならない。 ただ し, 他に十分な防御工事をしたときはこの限りではない。 (20). BGH. (5. ZR.) v. 10. 7. 1987. BGHZ 101, 290.. 詳細は拙稿 「自由と責. 任」 251頁以下参照。 (21). BGH v. 24. 01. 2008=NJW-RR 2008, 610. 拙稿 「自由と責任」 267頁. 参照。 法と政治. 68 巻 2 号. ( 2017 年 8 月) 299( 445 ). 説.

(11) 定法上認められた所有者の権利行使の一部あるいは全部を許容されないも ド イ ツ 相 隣 共 同 体 関 係 理 論 の 現 状. のとすることにあるというものである。 具体的には②類型が典型であろう。 しかし, 相隣共同体関係により土地所有者に課される相互顧慮義務から導 き出されるものは, 本来認められた権利行使の否定のみではなく, 例外的 には土地所有者に積極的な行為を義務づける可能性も認めている。 たとえ ば, ブドウ畑の休耕地から発生した害虫により隣のブドウ畑に損害が発生 した事案では, 害虫駆除を講じる前提として, 害虫の襲来が差し迫ってい ることを休耕地の所有者が隣地のブドウ畑所有者に告知する義務が242条 (22). に基づき認められるとした事案や, もともと一人の所有者が所有していた 文化財に指定されていたお城の一部を他人に売却した後に, その売却され た建物の増改築により元々の所有者の建物の窓の日照が遮られた事案で, 242条から相隣者間の相互顧慮義務を導き出し, 自己の土地利用を害さな (23). いように配慮することを相隣者に求めうるとしたものもある。 その他にも (24). 相隣共同体関係から通知義務を認めた判決もある。 以上, BGH は相隣共同体関係に基づく相互顧慮義務から, 一定の権利 行使を制限するだけでなく, 一定の積極的義務をも導き出している。 この ような権利が制限されるだけでなく, 義務まで導き出していることに対し て, 民法典の土地所有権規定との関係でどのように位置づけられているの であろうか, この点を以下で確認しよう。. (22). BGH v. 16. 02. 2001=MDR 2001, 628. (23). BGH v. 11. 07. 2003=NJW-RR 2003, 1313. 拙稿 「自由と責任」 259頁参照。 拙稿 「自由と責任」 265頁. 以下参照。 (24). BGH v. 29. 06. 2012=NJW-RR 2012, 1160. 参照。 300( 446 ). 法と政治. 68 巻 2 号. ( 2017 年 8 月). 拙稿 「自由と責任」 271頁.

(12) 3. 学説上の相隣共同体関係理論の位置付け 論. (1) 信義則と土地所有権規定 まず確認しておかなければならない点は, わが国の信義則規定と異なり, (25). BGB では信義則を定める242条が債務法の規定であるという点である。 (26). BGB 241条が, 債権関係において, 債権者が給付を求める権利を有するこ とおよび債務関係において各当事者は相手方の権利・法益・利益を考慮す ることを義務づけており, これを受けて242条において, 債務者は取引慣 行を考慮し信義誠実にかなった給付を行う義務を負うとなっている。 したがって, 242条が適用されるためには債務関係の存在を要件とし, 土地相隣者間に債権債務関係が存在しない限り, 原則上は, 242条の直接 適用はできないことになる。 よって, 相隣共同体関係理論の理論的位置づ けの議論においても, まずはこの点が論点となる。. (2) 相隣共同体関係理論に関する初期の学説 相隣共同体関係理論についての学説を検討する際にも, 判例の分析と同 様に BGB 906条の1959年改正に関する議論とそれ以降の議論を区別する 必要がある。 1959年改正前後の初期の学説は, やはり RG およびそれを継 承した BGH が認めた調整請求権という金銭請求権を認めるかどうかが議. (25) BGB 242条 (信義誠実による給付) 債務者は, 取引の慣行を考慮して, 信義誠実に適うように給付を行う義務 を負う。 (26). BGB 241条 (債務関係に基づく諸義務). (1) 債務関係に基づき, 債権者は, 債務者から給付を求める権利を有する。 給付は不作為でも可能である。 (2) 債務関係は, その内容に従い, 相手方の権利, 法益および利益を考慮 することを各当事者に義務づける。 法と政治. 68 巻 2 号. ( 2017 年 8 月) 301( 447 ). 説.

(13) 論の焦点であった。 1959年改正による調整請求権の挿入に関する学説に (27). ド イ ツ 相 隣 共 同 体 関 係 理 論 の 現 状. ついては, すでに分析紹介されており, また, 調整請求権の性質に関する 議論が中心となるため, ごく簡単に紹介しよう。 (28). (29). 相隣共同体関係に対して否定的な立場は, Hubmann や Pleyer である。 両者ともに, RG の判例を分析し, 調整請求権を認めるためには相隣共同 体関係を持ち出さずとも同じ結果が得られるとして, 相隣共同体関係によ る裁判官の柔軟な解決に対して否定的である。 これに対して, は, 相隣共同体関係を信義則の適用と解し, 相隣紛争を柔軟に解決することに (30). 積極的に評価する。 その他, コンメンタール等でも肯定的立場と否定的立 (31). 場が分かれるが, 結局のところ, 両者の立場の違いは, 調整請求権の性質 についての議論であり, 906条2項2文の調整請求権が, 犠牲責任に基づ く犠牲請求権として位置づけられるのか, それとも公平責任に基づく公平 請求権として位置づけるのかの対立に収斂される。 犠牲請求権とする立場 は, 本来認められる1004条に基づく防御請求権が制限されることを所有 権の権限の制限と捉え, その制限部分を金銭にて補償するという考え方で あり, BGB の体系性と一致する立場である。 したがって, 相隣共同体関 係自体必要としない考え方である。 これに対して, 公平請求権とする立場 は, 相隣共同体関係に基づく相互顧慮義務を積極的に評価し, 硬直した物 権法体系において柔軟な解決を導き出すために調整請求権を位置づける立. (27). 神戸論文 (一) 616頁以下参照。. (28). Hubmann, Der     . 

(14) Aufopferungsanspruch, JZ 1958, 489ff.. (29). Pleyer, 1004 BGB und das “nachbarliche 

(15) 

(16). .     

(17)     .   JZ. 1959, 305ff. (30).  Treu und Glauben im Sachenrecht, NJW 1956, 1657ff.; ders,. Grundlage und Grenzen des nachbarlichen 

(18) 

(19). .     

(20)     .  

(21)  NJW 1960, 1133ff. (31). 諸コンメンタール, 物権法の教科書については, 後に取り上げる。. 302( 448 ). 法と政治. 68 巻 2 号. ( 2017 年 8 月).

(22) (32). 場である。 906条2項2文の調整請求権の法的性質についての両説の対立は, 未だ. 論. 決着がついていない問題であり, どちらが一方的に正しいというものでは ないだろう。 いずれにせよ, ここで指摘すべき点は, この1959年改正前 後の相隣共同体関係に関する議論においては, 相隣共同体関係自体を否定 する立場が存在していたことである。 そして, この段階においては相隣共 同体関係理論と土地所有権規定との関係はあまり注目されていなかったと いうことである。. (3) 相隣共同体関係理論の現状 BGH が発展させてきた相隣共同体関係について, 学説上はどのように 位置づけられているのか。 まずは, 代表的なコンメンタールや教科書など での説明を見てみよう。 (33). Althammer は以下のように説明する。 「制定法による私法上の制限のほかに, 相隣共同体関係に関する問題の ある理論に注意が必要である。 これにより, 土地相隣者の不可欠な共同生 活から, 242条を根拠とする相互顧慮義務が生じ, そして所有権制限とな る。 けれども, 905条以下および各ラントの相隣法が個別的に特別規定を 規律しているのであるから, 裁判上の相隣共同体関係の原則は, 制定法上 の諸規定を超えて矛盾する利益を適切に調整する必要がある場合に限定さ れるべきである。 個別の事件において認められるべきなのは, 所有権の一. (32). 906条2項2文の調整請求権の法的性質についての議論は, 拙稿 「調. 整請求権について」 を参照。 (33) Althammer :. J.. von. Staudingers. Kommentar. zum.      . . Gesetzbuch mit

(23)          und Nebengesetzen, Buch 3, Sachenrecht,  903924. (2016), 903 (以下では Staudinger / Althammer と引用する) 法と政治. 68 巻 2 号. ( 2017 年 8 月) 303( 449 ). 説.

(24) 部の権限の行使が全部あるいは一部排除されうることである。 ……中 ド イ ツ 相 隣 共 同 体 関 係 理 論 の 現 状. 略……結果として, 制定法上の諸規定が優越するのであるから, 相隣共同 体関係を根拠とする受忍義務は, 例外的にのみ考えられうる。 しかし, 受 忍義務および調整義務と並んで, 相隣的顧慮義務からさらなる請求権も導 き出されうる。 たとえば, 適切な時期に通知する請求権あるいは, 生け垣 を一定の高さまで刈り込む請求権などである。 その限りで, 相隣共同体関 係は, BGB の相隣法規定の内容を超える相隣者間の一般的な顧慮義務と いう内容を含んでいる。 906条以外でも, 相隣共同体関係とそれを根拠とする顧慮義務は, 1004 条2項の意味での受忍義務としての意義を発揮する。 しかし, 個々の事件 においてどのような法的結果および法的義務がこの一般的な義務から生じ るかは, 今後も議論のある問題である。 BGH は, 相隣共同体関係理論に ついてはこれまで非常に慎重にのみ言及しており, 例外的事例においての (34). みその適用が可能であるとしている。」 BGH が判決において用いる相隣共同体関係の定義がほぼ同じように挙 げられている。 この相隣共同体関係理論に対する Althammer の態度ははっ きりしないが, 肯定的とはいえない説明の仕方である。 (35). 次に, Fritzsche も一般的な説明にとどまる。 「制定法上の規律以外に, 通説は, いわゆる相隣共同体関係から相隣者 に対する土地所有者の排他的権限の制限および拡大が可能であるとしてい る。 この法形式は, 信義則が土地相隣者の共同生活に特別に適用されたも のであり, 公法上においても承認されている。 相隣共同体関係は, 特殊事. (34). Staudinger / Althammer, Rn. 15.. (35). Fritsche,: BeckOK BGB, Bamberger / Roth,      .  Gesetzbuch, 42.. Ed. 1. 2. 2017, BGB

(25) 903 Rn. 3541 (以下では, Bamberger / Roth / Fritzsche として引用) 304( 450 ). 法と政治. 68 巻 2 号. ( 2017 年 8 月).

(26) 例において例外的に, 制定法上の相隣法を超えた隣地からの作用に対する 受忍義務あるいは自らの土地利用の制限を根拠づける。 判例によると, 土. 論. 地所有者は土地相隣者の権利義務に関しては, 905条以下の規定および各 ラントの相隣法典によって規定されている。 BGH は, これらの諸規定を 超えて, 差し迫った利益調整が必要である場合には, 相隣共同体関係から 特別の義務を非常に慎重にではあるが導き出す。 この相隣共同体関係は, (36). 直接に隣接している土地所有者間だけでなくほかの関係にも適用される。」 (37). Lemke も一般的な説明で認められた判例, 否定された判例を列挙する が, 相隣共同体関係理論に対しては抑制的な態度である。 「相隣法上の諸規定のほかに, 個別事例においては相隣共同体関係に基 づき私法上の所有権制限が行われる。 この判例により発展させられた法制 度は, 信義則に基づき相互に配慮することを義務づけ権利行使を制限する。 このような顧慮義務は, 確かに相隣法上の諸規定を考えれば例外であり, 適用が可能となるのは制定法上の規律を超えた適切な調整が不可欠と思わ れる場合のみである。 しかし, この要件が満たされるとき, 1004条に基 づく請求権の行使が侵害者の優先する利益への配慮のために許されないも のとされる。 相隣共同体関係は, あらゆる相隣関係の利益紛争を解決するための万能 薬として誤解されてはならない。 ……中略……相隣共同体関係という考え 方は, 裁判官に対して現行法を無視して良いとするものではないことは, すでに RG の時から指摘されている。 同じようなことは, BGH も多くの 判決で指摘しており, 相隣共同体関係は, 通常何ら請求権を根拠づけるも のではなく, 信義則から導かれる考え方はもっぱら権利行使の制限として (36) Bamberger / Roth / Fritzsche, Rn. 35. (37). Lemke :      Wegen / Weinreich, BGB-Kommentar, 9. Aufl. 2014.. (以下では, PWW / Lemke として引用) 法と政治. 68 巻 2 号. ( 2017 年 8 月) 305( 451 ). 説.

(27) のみ作用するのであって, それを超えた相隣者間の相互顧慮義務命令は, ド イ ツ 相 隣 共 同 体 関 係 理 論 の 現 状. 1004条の満たすべき要件およびそれを補う請求根拠を簡単に補うことは できない。 ほかの判決においては, なお限定的に, 相隣法諸規定と並んで (38). 相隣共同体関係も権利義務の特別の根拠となり得ないことを述べている。」 (39). Ring は相隣共同体関係理論にかなり肯定的である。 少し長いが相隣共 同体関係に関する記述をそのまま引用する。 「さらに重要な相隣者の受忍義務および, それに伴う所有権の制限は, い わゆる相隣共同体関係から生じる。 この相隣共同体関係のもとでは, 例外 的な事例において242条から導き出された土地相隣者の相互顧慮義務が義 務づけられると理解されている。 この義務づけは場合によっては, 所有者 の権限の (私法上の) 制限となりうるということも理解されている。 一貫 した BGH の判例に基づき, 土地相隣者の権利義務は, 特に905条以下の 諸規定や各ラントの相隣法によって個別の規定となっている。 それと並行 して, 相隣共同体関係の観点から相互顧慮義務という一般的な義務が, 矛 盾する利益の適切な調整のために制定法規を超える必要がある場合に利用 されている。 その場合に該当すると, 所有権者に認められる一定の権利行 使が, 全面的にあるいは部分的に許容されないものとされる。 aa) 原則 所有権 (903条および1004条に基づく排他的権利および禁止権) の無配 慮な擁護は, 相隣者間の有害な紛争へと繋がりうる。 その限りで, この権 限は一定の社会的に適合的な調整を必要とする。 相隣関係は, 多くの法的 関係によって形成され, その全体が相隣共同体関係を形成している。 BGB の制定以前は, 相隣共同体関係から所有権制限が導き出されていた。 それ (38). PWW / Lemke, S. 1929.. (39) Ring : NomosKommentar zum     .  Gesetzbuch, Band 3, 4. Aufl. 2016.

(28) 903. (以下では NK-BGB / Ring と引用する)。 306( 452 ). 法と政治. 68 巻 2 号. ( 2017 年 8 月).

(29) は今日では906条から924条において立法化されているものである。 今日, 相隣共同体関係は, 相隣者間の一般的で包括的な配慮と寛容性を. 論. 示しており, それは, BGB の個別規定をはるかに超えたものである。 矛 盾する相隣者間の利益の適切な調整は, 制定法の諸規定を超えることを必 要とする。 相隣共同体関係から数多くの不作為義務や受忍義務が生じるこ とが可能となっている。 けれども, その場合でもやむを得ない理由により 命じられた例外事例においてのみと限定されている。 判例は, 相隣共同体関係について242条に基づく信義則という一般法原 則を根拠としている。 242条に基づけば, 債務者は債務を履行する場合に 取引慣行に配慮し信義誠実に行動することが義務付けられる。 信義則は, 相隣共同生活という特別の事実への適用とされる。 けれども, 相隣共同体 関係は, 一切の債務関係を創設しない。 異なる所有者の土地が相隣的に併 存しているということだけでは, 当事者間の債務法上の関係, つまり独自 の請求権を認めるためには十分ではない。 それは, もっぱら権利行使の単 なる制限として作用する。 この制限は, 土地所有者に対して相隣者による 一定の利用を受忍することを強制する。 しかし, 顧慮義務は, それだけに とどまらない。 その顧慮義務は, 土地所有者に個別の事例において積極的 な行為をも義務づけうる。 土地所有者に対するそれに対応した請求権は, 相隣共同体関係から生じるが, それは, 制定法上の諸規定を超えて, 矛盾 する利益の適切な調整のためだけに命じられるものである。 相隣者への配 慮という土地所有者の義務は, それに伴い, 受忍あるいは不作為だけでな く一定の積極的行為もその内容となる。 bb) 相隣共同体関係の内容および射程 相隣共同体関係は, 制定法において規定された906条以下の要件では十 分でない場合において, 個別事件における当事者である所有者の利益の適 切な調整をもたらすという目的を追求するものである。 相隣共同体関係は, 法と政治. 68 巻 2 号. ( 2017 年 8 月) 307( 453 ). 説.

(30) したがって, 相隣法の一般条項として表される。 この相隣共同体関係から, ド イ ツ 相 隣 共 同 体 関 係 理 論 の 現 状. 903条に基づき原則的には存在する所有権の支配権についても一定の制限 が帰結される。 たとえば, 1004条に基づく妨害排除請求権の制限あるい は全くの排除などである。 その代わりに, 場合によっては調整請求権が認 められる。 この制限は, しかし, 特別の例外事例に限定されなければなら (40). ない。 その内容と射程を確定することは非常に困難である。」 Ring の説明は, BGH の定義と変わらないが, 全体として Althammer と異なり, 相隣共同体関係についてかなり積極的に肯定する説明である。 そもそも BGB 制定以前から所有権制限の根拠とされていたと述べている (41). 点や, 相隣法の一般条項としている点は注目すべきであろう。 このほか, 物権法の教科書においても似たような記述が多く, 認められ た事例の紹介がなされているほかには, 理論的位置づけの問題として相隣 共同体関係と債務関係あるいはそれに類似する特別関係との関係が簡単に (42). 触れられているのみである。 ただし, 否定的な見解も存在する。 代表的な (43).   である。 Baur /    も, 相隣共同体関係に関す ものは, Baur /  る判例の帰結には反対しないが, 同じ帰結は相隣共同体関係を用いること なく導きうると主張する。 具体的には, 906条や連邦イミッシオーン防止 (44). (45). 法14条の準用・類推適用により解決しうるとする。 Brehm / Berger も, (40). NK-BGB / Ring. S. 322∼324.. (41). その根拠についての引用はない。. (42). た と え ば , K. Vieweg / A. Werner, Sachenrecht, 7. Aufl. (2015),; J.. Wilhelm, Sachenrecht, 5. Aufl. (2016).; Wolf / Wellenhofer, Sachenrecht, 30. Aufl. (2015). Wilhelmi,: Erman, . .

(31)  Gesetzbuch, 14. Aufl. (2014). ( 以 下 , Erman / Wilhelmi); Vieweg / Regenfus, jurisPK 906.;   .   Sachenrecht, 35. Aufl. (2014) S. 144 145. など。 (43). J. F. Baur / R.     Lehrbuch des Sachenrecht, 18 Aufl. 2009. (以下では Baur /     ) 25 Rz. 32. (44). Baur /     S 331332.. 308( 454 ). 法と政治. 68 巻 2 号. ( 2017 年 8 月).

(32) Baur /    の見解に同意している。 相隣共同体関係理論に対して肯定 的・否定的双方の立場があることは確認できたが, その理論的位置づけに. 論. ついては, 判例の説明以上に, 詳しく論じているものは少ない。 そこで, 次にこの点についての議論を確認しよう。 説. (4) 相隣共同体関係理論の理論的位置づけ すでに説明したように, BGB において信義則を規定する242条は債権債 務関係がある当事者間で適用される規定である。 したがって, 相隣共同体 関係理論の理論的位置づけも, まずは土地相隣者間に債権債務関係が存在 するのかという点から出発する。 この点は, わが国の民法典との顕著な違 いであり, この論点を確認することがあまり参考にならないと思われるか もしれない。 しかし, この論点から相隣者間の一定の社会的関係性の議論 へとつながり, その社会的関係性, あるいは社会的接触を根拠に相互顧慮 義務を導き出すという議論の筋道をたどるため, この一連の議論の流れを 確認しておく必要がある。 現在の通説によれば, 土地相隣者間には, 何ら制定法上の債務関係, 債 (46). 務法上の権利義務は存在しないとされる。 立法者の意思によると, 905条 (45) W. Brehm / C. Berger, Sachenrecht, 3. Aufl. (2014). (以下では Brehm / Berger) (46). Soergel / Baur 903 Rn. 55 ; Ermann / Wilheimi 906 Rn. 74 ; RGRK /. Augustin 903 Rn. 30 ; Jauernig / Jauernig 909 Rn. 3 ; Baur /    . Sachenrecht 5 Rn. 16, S. 40 ; Wilhelm, Sachenrecht Rn. 925 ; Brox, Nachbarliche. Interessenkollisionen,. JA. 1984,. 182,. 187 ;.

(33)  . Gefahrengemeinschaft von       

(34)     MDR 1959, 261, 262 ; Heiseke, Das nachbarliche    

(35)     

(36)     und 278 BGB, MDR 1961, 461, 464 ; Schultz, Haftung  fremdes Verschulden im Nachbarrecht ? MDR 1955, 260, 261 ; Deneke, Das nachbarliche     

(37)       

(38)      (1987), S. 75 ; Kleindienst, Der privatrechtliche Immissionsschutz nach 906 法と政治. 68 巻 2 号. ( 2017 年 8 月) 309( 455 ).

(39) 以下の相隣法の規定は, 単に土地所有者間の適切な共同生活を可能にする ド イ ツ 相 隣 共 同 体 関 係 理 論 の 現 状. ために所有権限の制限あるいは拡大を規律しているに過ぎず, これらの規 (47). 定から債務関係のような特別な関係を導き出すことはできないとされる。 また, 相隣法は, 民法典の 「所有権の内容」 という表題の下に規律されて おり, そこから所有権という絶対権の内容に関する規律のみが定められて いると考えられ, 債務法上の特別関係の根拠付けは想定されていないこと が明白であるとされる。 しかし, ほとんどの学説は土地相隣者間には相隣 共同体関係が存在し, 法制度として承認され, 距離の近接性や空間の共同 性に基づき導き出される事実上の特別関係に依拠したものとされる。 BGH の見解では, 相隣共同生活という事実状態への信義則の適用とされ (48). る。 つまり, 土地相隣者間には, 債権債務関係は存在しないが, 相隣共同 生活という事実関係が存在し, そこに信義則が適用されるが, その適用は あくまでも信義則一般からすると特殊適用事例であるという位置づけであ る。 もちろん, 相隣共同体関係理論に対して肯定的な立場か否定的な立場 かでその位置づけは変わる。 肯定的な立場の は, BGB の相隣法全 体が242条の特殊事例として把握しうるとし, 相互顧慮義務は相隣法全体 (49). にわたって成立すると主張しているし, すでに紹介した Ring も同じよう な立場である。 これに対して, BGB 906条の1959年改正の際に議論をリードした H. Westermann は相隣共同体関係について異なる見解を主張している。 H. Westermann は, 相隣共同体関係についてそれが債務法類似の特別関係の BGB S. 23 など。 (47). 判例では RGZ 132, 51, 56 ; BGHZ 42, 374, 377 など。 学説上は,.  . MDR 1959, 261 ; Deneke S. 74 (48). BGHZ 28, 110, 114 ; 42, 374, 377 ; 58, 149, 157 ; 88, 344, 351 ; 101, 290,. 293 (49).  Treu und Glauben im Sachenrecht, NJW 1956, 1657.. 310( 456 ). 法と政治. 68 巻 2 号. ( 2017 年 8 月).

(40) (50). 根拠となるとする。 複数の土地の空間的な特別の関係性から, 相互顧慮義 務および一定の受忍義務の根拠となる利用共同体が生じると主張する。 そ. 論. して, 242条との関係についても, 242条が相隣共同体関係の根拠ではな く, 相隣共同体関係の内容を具体化するとしている。 この Westermann の (51). 見解に対しては, Deneke による以下の検討がなされている。 Westermann の見解では, 土地の空間的な関係性および事実上の空間的 な影響などから債務法類似の関係を承認すべきとするが, Deneke は, 空 間における土地の近接性という事実だけで, 契約類似の特別な関係性を十 分に根拠づけることができるかと問題提起する。 Deneke は, 相隣関係に ある土地所有者間の関係は, 土地が空間的に不変の位置関係に拘束されて いることから, 単に通りを行き交う人々の関係とは異なり, 一定の社会的 接触関係にあることは認める。 そして, また, 動産所有者間には存在しな い土地所有者間に存在する空間共同利用という社会的関係の存在も認め, 相隣関係にある土地所有者間には何らかの特別の関係性が存在することは 認める。 しかし, 結論として, 相隣共同体関係について空間的近接性を理 由とする債務関係類似の関係としては見ることができないとする。 では, Deneke 自身は相隣共同体関係についてどのように捉えるのか。 Deneke は, 相隣法においては, 変化した社会状況, 社会的評価を何らか の方法で考慮に入れる必要があり, その道具として242条を位置づける。 しかし, このような位置づけでは, 結局のところ, 信義則が裁判官の自由 な法創造の足がかりになり, 相隣法に関しては裁判官は制定法に拘束され ずに相隣共同体関係の名の下で自由に判決を下すことになると批判される ことになる。 だが, この問題に対しても, むしろ, 裁判官が242条におい (50) Westermann, Sachenrecht, 5. Aufl. 1966, 63 I 2 ; Westermann / Pinger, Sachenrecht, 79 I 3c (51). Deneke, Das nachbarliche   .

(41).   .  .   1987. S. 87ff. 法と政治. 68 巻 2 号. ( 2017 年 8 月) 311( 457 ). 説.

(42) て明示的に求められている取引の安全を考慮することによって, 判決の際 ド イ ツ 相 隣 共 同 体 関 係 理 論 の 現 状. に個人的な公平性に従って判断するだけでなく社会において支配的な価値 秩序を考慮に入れることになり, また, 相隣共同体関係制度に関しては, 結局は当事者の所有権制限が問題となり, したがって, 相隣共同体関係制 度は, 242条の対象事例として認められている権利濫用事例として位置づ けられるとして, 242条の適用を肯定するのである。 Deneke の主張は, 最終的に, 次のようなものである。 変化した社会的評価を242条により取 り込み, それによって作られた相隣領域における均衡性は, 必然的に903 条に規定された所有権の積極的権能および消極的権能の制限につながる。 土地の近接性という事実は, 所有権内容の積極的側面・消極的側面を当事 者の利益衡量に基づき変更することにつながる。 よって, 相隣共同体関係 は, 相互空間依存性という規範的性質を含む概念となる。 相隣共同体関係 は, 一方では当事者の所有権の (時代に適合した) 典型的内容とみられる ものを確定する機能を有し, 他方では, 非典型的な状況を適切に評価する 可能性も含んでいるものであり, 結局のところ, 相隣共同体関係は土地を 一定の空間的文脈の中で捉え直す役割を有している。 よって, 相隣共同体 (52). 関係の根拠は, 所有権そのものである。 以上のような Deneke の見解に対して, Karsten は, これを開かれた評 価システムとしての相隣共同体関係理論と評し, 土地所有権の空間拘束性 が所有権の積極的権限へ必然的に影響を及ぼしうる点を評価しつつも, 相 隣共同体関係という名の下, あるいは242条への言及の下, 制定法からか (53). なり引き離された利益評価が可能になる点を批判する。 とくに, Deneke の主張は, それが所有権保護の絶対性という基本理念に矛盾し, 所有権保 (52). Deneke, a.a.O., S. 109110.. (53). Karsten, Der nachbarrechtliche Ausgleichsanspruch    906 Abs. 2. Satz 2 BGB analog im System der . . 

(43). .  .    1998, S. 51 53. 312( 458 ). 法と政治. 68 巻 2 号. ( 2017 年 8 月).

(44) 障が偶然の環境要件に左右され, 結果として所有権概念の相対化をもたら してしまうと指摘する。 Karsten は, あくまでも903条に基づく所有者の. 論. 自由原則から出発し, 相隣紛争とは, 原則として土地に関する二つの同じ 権限を有する利用利益が対立しているものと捉えた上で, その解決のため に, 903条に基づく所有者の権限を信義則に基づいて限定することができ るとする。 つまり, 原則としては許容された権利行使の一般的範囲は, 特 殊状況にある個別の事案では修正することができ, その修正のために相隣 共同体関係概念は形成されてきたとする。 以上, Westermann, Deneke, Karsten の主張を取り上げた。 この三者 は, その主張した時期が離れており, したがって時代背景, 社会状況が異 なるため, 3つの主張を並べて優劣をつけるということはできない。 しか し, 判例により形成され発展してきた相隣共同体関係について, 理論的に 位置づけようとするならば, 共通するのは, 土地という客体の平面ではな く, その上空である空間も把握対象に含めて, 土地所有権を論じようとす る姿勢である。 もちろん, これらの理論がドイツ物権法において通説的地 位にはない。 むしろ, 通説的立場はそこまで踏み込むことをせず, 判例に おいて認められた特殊事例として位置づけるにとどめるのが大半である。 しかし, Westermann が主張した60年代, Deneke が主張した80年代, Karsten が主張した90年代と約半世紀を通じて, 土地所有権についてその 土地の上に広がる空間の共通性・共同利用性・相互依存性を包摂して議論 (54). している点は, 非常に注目に値するのではないだろうか。 この点は, 以下 で述べるようにわが国における議論にとっても非常に示唆に富むものであ ると考える。. (54).   . .

(45)          von Gesetzen 最近では, Bergner, . und Rechten Dritter 2013, S. 83ff. にて取り上げられている。 法と政治. 68 巻 2 号. ( 2017 年 8 月) 313( 459 ). 説.

(46) 4. おわりに―土地所有権と信義則 ド イ ツ 相 隣 共 同 体 関 係 理 論 の 現 状. 以上, ドイツにおける相隣共同体関係理論の現状について, 不十分なが ら分析してきた。 そもそも BGB では, 信義則を規定する242条が債務法 上の規定であることから, 相隣共同体関係についての理論的位置づけに関 する議論も, 特別の関係性の有無から出発していたが, しかし, 本稿の冒 頭で述べたように, 筆者が提示する土地利用紛争の解決アプローチについ ても, 土地所有者間でなぜ信義則が適用されるかという点で, やはり特別 の関係性が必要であると考える。 なぜなら, 全く関係性がない場面では民 法上は, 709条の不法行為責任が想定されているからである。 筆者の主張 は, 不法行為責任による解決と異なるアプローチの提示であるから, やは り一定の地域における土地所有者間には何らかの特別の関係性が存在する とすべきであろう。 その際に, 参考となるのが, Westermann や Deneke が主張する土地所 有権の空間の共通性・共同利用性・相互依存性という視点である。 土地と いう客体は必然的に四辺を他者の土地と接しており, そのつながりが地域 となり都市空間となり国土空間となるという特殊性を有している。 そのよ うな特殊性を有する土地所有権の権利行使 (利用あるいは不利用) は, 空 間として把握した場合に必然的に他人の土地所有権へ影響を与えるもので ある。 そうすると, 自己の土地所有権について原則として使用収益処分は 自由としても, その権利の行使は, 信義に従い誠実に行わなければならず, これに反する権利行使に対しては, 影響を被るほかの土地所有者からの妨 害排除, 妨害予防請求が認められても良いのではないか。 わが国では信義 則を規定する1条2項は民法全体の一般条項であるから, ドイツに比べて 適用のハードルは低いと考えられる。 もちろん, 土地所有権の範囲につい て定める207条との関係をどのように説明するかという問題は残るが。 314( 460 ). 法と政治. 68 巻 2 号. ( 2017 年 8 月).

(47) この信義則の適用により土地所有者に本来認められる所有権の権能が制 限されることになるが, これは, 所有権に内在する社会的義務とは異なる。. 論. ここで土地所有者の権能が制限されれば, その周辺の土地所有者の権能が 拡大されるという関係にある。 つまり, 空き家問題を例にとれば, あまり にも荒廃して周辺に多大な影響を与えていると評価された場合に, 当然空 き家所有者の不利用という自由は制限されるが, その代わりに隣地所有者 がその空き家所有者に対して適切に管理せよと請求できる権限が拡大され るのである。 もちろん, その共同利用領域である空間は, 都市であれば都 市空間といったように最終的には国土と連続するものであるから, 空き家 の放置という所有者の自由の制限が, 最終的には公共の福祉につながるが, 公共の福祉を理由として直接制限される訳ではない。 筆者が主張するのは あくまでも権利の調整である。 最後に, 土地所有権論と信義則の関係について触れたい。 Deneke は, 硬直した物権法領域において, 信義則を手段として変化する社会的評価を 取り入れ, 相隣紛争の解決を目指すと主張している。 所有権は, 人と物と の関係の側面において現れる人間と人間との関係であり, 所有権の理論的 把握は, それを, 一定の歴的な社会関係に分析し還元することでなければ ならない, ということは川島 所有権法の理論 がすでに指摘しているこ (55). とである。 そうすると, 社会関係が変化すれば当然所有権の内容も変化す るといえる。 ドイツ相隣共同体関係理論が示唆しているのは, 変化した土 地所有権概念をどのように捉えるかということではないだろうか。 わが国 において, この視点から土地所有権を捉えることが必要ではないかと考え る。 以上. (55). 川島武宜. 所有権法の理論 法と政治. 岩波書店1949年第一章序説参照。 68 巻 2 号. ( 2017 年 8 月) 315( 461 ). 説.

(48) ド イ ツ 相 隣 共 同 体 関 係 理 論 の 現 状. Die aktuelle Analyse der nachbarliche    .

(49)    

(50)      ―Die gegenseitige    

(51) .     

(52) zwischen Nachbarn in der Grundeigentumstheorin― Yousuke HARI 1. Einleitung 2.            das. nachbarliche.     .

(53) .   

(54)   in. Rechtsprechung (1) Bis die Neuregelung des 906 Abs. 2 S. 2 BGB im Jahre 1959. (2) Seit 1959   .

(55) .    

(56)     3. Dogmatische Struktur des nachbarlichen  (1) Der Grundsatz von Treu und Glauben im Sachenrecht (2)         die alt Ansicht (3) Die aktuelle Analyse der nachbarliche     .

(57) .   

(58)     4. Zusammenfassung. 316( 462 ). 法と政治. 68 巻 2 号. ( 2017 年 8 月).

(59)

参照

関連したドキュメント

砂質土に分類して表したものである 。粘性土、砂質土 とも両者の間にはよい相関があることが読みとれる。一 次式による回帰分析を行い,相関係数 R2

この見方とは異なり,飯田隆は,「絵とその絵

熱力学計算によれば、この地下水中において安定なのは FeSe 2 (cr)で、Se 濃度はこの固相の 溶解度である 10 -9 ~10 -8 mol dm

東京都は他の道府県とは値が離れているように見える。相関係数はこう

その目的は,洛中各所にある寺社,武家,公家などの土地所有権を調査したうえ

本案における複数の放送対象地域における放送番組の

3000㎡以上(現に有害物 質特定施設が設置されてい る工場等の敷地にあっては 900㎡以上)の土地の形質 の変更をしようとする時..

このような環境要素は一っの土地の構成要素になるが︑同時に他の上地をも流動し︑又は他の上地にあるそれらと