システムレベルデザイン:1.システムレベルデザインに向けて
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(2) 特集 システムレベルデザイン. 応用分野 通信・放送 運輸. 健康・福祉. セキュリティ. 家庭. システム例. 技術的要請. インターネット,ディジタル放送. 高速通信技術,データ圧縮・伸張技術. 高度交通システム(ITS). 高信頼性,耐故障性. 遠隔医療診断・治療. マルチメディア情報処理,プライバシー保護(暗号化・復号技術), 高信頼性,耐故障性. ビル管理,ホーム・セキュリティ,極限作業ロボット. 高信頼性,耐故障性,実時間応答性. マルチメディア情報の高速処理,インテリジェント情報処理(画 ビデオ・オン・デマンド,セット・トップ・ボックス, 像・音声の理解と合成),低コスト化,小サイズ化,高性能化, PC ,PDA ,携帯電話 高機能化,低消費電力化. 表 -1 システム LSI の応用分野. ����������������. ��. ��������������. �� �. ��������������. ���� ���. �� ��������������������. ����. ����������������������. ���. ��. ��. ���� ��������������������. ��� �� ����. ������������������������. ����. ����. ����. �����������������. ����. ���. ��� �� ����. ����������������. 図 -2 設計生産性危機. 21% にとどまっているとのことである.図 -2 に,集積. 設計手法におけるパラダイム・シフト. 度の伸びと設計生産性の伸びを比較して示す.同図で, 横軸は年を表しており,左側の縦軸は集積度(チップあ. 設計生産性を向上させる最も効果的な方策の 1 つは,. たりの論理トランジスタ数)を表し,右側の縦軸は設計. 設計記述の抽象度(設計記述レベル)を高めることであ. 生産性(設計者 1 人月あたりのトランジスタ数) を表して. る.半導体集積回路の設計と製造は 1960 年代から行わ. いる.また,図中の実線は集積度の傾向を表し,破線は. れてきたが,図 -3 に示すように,最先端の設計手法の. 設計生産性の傾向を表している.. パラダイム・シフト(paradigm shift)がほぼ 10 年ごと. この図から,集積度の伸びと設計生産性の伸びの間に. 起きてきた.これらの変化の内容を見ると,設計記述の. は,約 30%(=1.58/1.21) のギャップがあることが分かる.. 抽象度の変化がパラダイム・シフトを引き起こしたこと. 集積度の伸びと設計生産性の伸びの間の約 30% のギャッ. が分かる.表 -2 に,それぞれの時代における最先端の. プは,次のような問題を提示している.まず,その時々. 設計手法での設計記述レベルと主要な CAD ツールおよ. の技術水準で製造可能な最大規模のシステム LSI の設計. びライブラリの種類を示す.. 工数は, 年率 30% の勢いで増加することになる.したがっ て,このままの状態が続くと設計プロジェクトは規模が. ■マスクパターン・レベルでの設計. 大きくなり過ぎていずれは破綻をきたす.この問題は,. 半導体集積回路が製造され始めた 1960 年代の設計手. 設計生産性危機(design productivity crisis)と呼ばれて. 法は,マスクパターン・レベルでの設計であった.すな. いる.この問題を解決するためには,設計生産性を大幅. わち,設計者は個々のトランジスタや配線を製造するた. に改善する新しい設計手法を開発し続ける必要がある.. めのマスクパターンを図形として記述していた.. 452. 45 巻 5 号 情報処理 2004 年 5 月.
(3) 1. システムレベルデザインに向けて. 設計記述レベル ビヘイビア. 動作合成. レジスタ・トランスファ. 論理合成 論理シミュ レーション. マイクロ・アーキテクチャ トランジスタ/ゲート. セルライブラリ. マスクパターン. 図形エディタ. 1960. 1970. 1980. 1990. 2000. 2010 年代. 図 -3 設計記述レベルとキーテクノロジの変化. 標準のライブラリとして用意しておき,トランジスタ間 年代. 1960 年代. 設計記述レベル マスクパターン. 主要な CAD ツールとライブラリ 図形エディタ デバイス・シミュレータ 回路図エディタ. 1970 年代. トランジスタ・レベル. 回路シミュレータ. の配線をマスクパターンのインスタンスの端子間の配線 に対応づけるというような方法で実現できる. この時代の新しい CAD ツールは,トランジスタ回路 のエディタとシミュレータである.. セルライブラリ 自動レイアウトツール. 1980 年代. 論理ゲート・レベル. 論理シミュレータ マクロブロック・ライブラリ 機能 ( 協調 ) シミュレータ. 1990 年代. 2000 年代. レジスタ・トランスファ. ビヘイビア. ■論理ゲート・レベルでの設計 その次のパラダイム・シフトは,1980 年代に起きた 論理ゲート・レベルへの移行であった.この設計手法で. 論理合成系. は,あらかじめ用意された論理ゲートに対応するトラン. 大規模機能ブロック・ライブラリ. ジスタ回路のライブラリを用いて,論理ゲート・レベル. 動作合成系. の設計記述をトランジスタ・レベルの設計記述に変換し. 設計検証系 設計品質見積り系. た.また,論理ゲート回路レベルでの設計を容易にする ため,単純な論理ゲートだけでなく,複合ゲートや大規. 表 -2 半導体集積回路の設計手法におけるパラダイム・シフト. 模な論理機能ブロック(マクロ・ブロック),メモリ・ ブロックなども用意された.これにより,同じレベルで の設計ではあるが,設計に用いる部品(機能ブロックや レジスタ,メモリなどの記憶素子)の回路規模が大きく. し た が っ て, 半 導 体 集 積 回 路 用 の 最 初 の CAD (Computer Aided Design)ツールは,マスクパターン. なったために,設計の記述量はトランジスタ・レベルと 比較すると大幅に削減された.. 中に現れる図形のエディタとトランジスタや配線の特性. 設計に用いる CAD ツールは,回路シミュレータ,論. を解析するためのデバイス・シミュレータであった.. 理シミュレータ,自動レイアウトツールなどが中心と. ■トランジスタ・レベルでの設計. なっていた.. 1970 年代に起きた最初のパラダイム・シフトは,マ. ■レジスタ・トランスファ・レベルでの設計. スクパターンという図形レベルでの設計から,トランジ. 1990 年 代 に な る と レ ジ ス タ・ ト ラ ン ス フ ァ(RT:. スタ回路という回路レベルでの設計への移行である.ト. Register Transfer)レベルの設計記述から論理ゲート回路. ランジスタ・レベルの記述は,トランジスタ回路の接続. 情報を自動生成する論理合成(logic synthesis)技術が実. 関係(トポロジ)についての情報は持っているが,チッ. 用化された.RT レベルでの設計では,レジスタからの. プ上での位置(レイアウト)についての情報は持ってい. データの読み出し,データの演算,およびレジスタへの. ない.したがって,トランジスタ・レベルの記述からマ. 書き込みという一連の処理を記述する.この場合,レジ. スクパターン・レベルの記述を,何らかの方法で生成す. スタに対するデータの読み出しと書き込みは,あらかじ. る必要がある.これはたとえば,トランジスタを系統的. め準備されたクロックに同期して実行することを想定し. に分類して,その種類ごとに対応するマスクパターンを. ている. IPSJ Magazine Vol.45 No.5 May 2004. 453.
(4) 特集 システムレベルデザイン. マイクロ・アーキテクチャ・レベルでの設計記述は,. ハードウェア・リソースである演算器に割り付ける方法. データパスの記述とステートマシンの記述の 2 つの部分. に自由度が存在する.そのため,同一のビヘイビア・レ. から構成される.論理合成システムは,論理式として記. ベルの設計記述から,ハードウェア量と処理時間の異な. 述されたデータの読み出しと演算,代入として記述され. る複数のマイクロ・アーキテクチャを生成できる.. たデータの書き込みなどの記述を解析し,対応するデー. この特徴を利用すると,与えられた制約条件(たとえ. タパスの構造を生成する.それと同時に,データの読み. ば処理時間の上限)のもとで,最小のハードウェア量を. 出し,演算の種類,書き込みのタイミングなどを制御す. 持つアーキテクチャを選択する,というような設計の最. るためのステートマシンの記述を生成する.記述を生成. 適化が行える.従来はこのようなアーキテクチャ・レベ. するときに,論理合成システムは入力された論理式に対. ルでの最適化は設計者(アーキテクト)が勘と経験に基. して,論理回路の簡単化(回路規模の縮小) と高速化(遅. づいて行っていた.しかし,ハードウェア・リソースの. 延時間の短縮)の両方の最適化を行う.. 適切なデータベースを用意し,適切な最適化アルゴリズ. RT レベルでの設計を支援するためのキーとなる CAD. ムを開発すれば,このようなアーキテクチャ・レベルで. ツールは論理合成系である.この技術の特徴は次の点に. の設計の最適化を自動的あるいは半自動的に行うことが. ある.すなわち,それ以前の設計手法では図形や回路図. 可能になる.. などの 2 次元的な情報表現を扱っていたが,RT レベル での設計記述は,1 次元的な情報表現であるテキスト形. システムレベル設計手法. 式で表現できる.一般にコンピュータでのテキスト処理 は図形やグラフの処理よりも容易に行えるので,コン. 先に述べたように,システム LSI の構成要素にはマイ. ピュータでの処理に向いている.また,テキスト形式は. クロ・プロセッサ(命令セット・プロセッサ)も含まれ. 図形情報よりも一般にポータビリティが高いので,設計. ている.しかし,先に述べた集積回路の設計手法では,. 資産の再利用などもより容易に行える.. 設計対象は電子システム全体ではなく,そのハードウェ. ■ビヘイビア・レベルでの設計. ア(LSI)の部分だけであった.システム LSI の設計を効 率よく行うためには,動作合成技術だけでは不十分であ. 21 世紀に入って注目を集めている設計手法は,RT レ. り,ソフトウェアも含めたシステム LSI 全体の最適化設. ベルよりも高い抽象度を持つ,ビヘイビア・レベルで. 計が効率よく行えるような設計手法が必要である.. の設計記述である.ビヘイビア・レベルでの設計記述. このような条件を満たす設計手法をとりあえず「シス. は,ソフトウェア・プログラミング言語である C 言語や. テムレベル設計手法」と呼ぶことにしよう.万人が納得. Pascal などでの記述と同様に,処理手順を逐次的に表現. する,システムレベル設計手法の定義を与えることは難. した記述である.先に述べた RT レベルでの記述はハー. しいかもしれないが,この設計手法が完成した場合に満. ドウェアの特質である処理の並列性を前提として記述さ. たすべき要件は次の項目を含んでいると考えてよいで. れるのに対し,ビヘイビア・レベルでの設計記述は逐次. あろう.. 的な記述であるという点が大きく異なっている. ビヘイビア・レベルでの設計記述から RT レベルでの. (1)システム LSI の構成要素である,命令セットプロ. 記述への変換を行う技術がいわゆる動作合成(behavior. セ ッ サ, そ の 上 で 実 行 さ れ る ソ フ ト ウ ェ ア・ プ ロ. ☆1. synthesis)技術である. .動作合成技術では,ビヘイビ. グ ラ ム, 専 用 デ ィ ジ タ ル 回 路(ASIC: Application. ア・レベルでの設計記述を解析し,演算とデータ転送の. Specific Integrated Circuit),(低周波の)アナログ回. 依存性(データ依存性) と処理順序の依存性(制御依存性). 路,高周波回路などの記述(モデリング) が行える.. などを考慮して RT レベルの設計記述を生成する.その 際,ビヘイビア・レベルの設計記述中に現れる演算子を. ☆1. (2)上記の記述を用いた機能シミュレーションまたは フォーマルな方法を用いた機能検証が行える.. ビヘイビア・レベルの設計記述からレジスタ・トランスファ・レベルの設計記述を生成する技術は一般に「ビヘイビア合成(behavior synthesis) 」 , 「動 作合成(behavior synthesis) 」または「高位合成(high-level synthesis)」という言葉で表現されているが,論理合成という言葉の使い方と比較すると, これらの表現は適切ではないように思われる.論理合成の場合には,レジスタ・トランスファ・レベルの記述から論理ゲートレベルの設計記述が生 成されるので,出力の記述レベルを中心にして「論理合成」 という名称が使われているからである.同じ表現方法を採用するのであれば,このような 技術は, 「レジスタ・トランスファ合成」 または「マイクロ・アーキテクチャ合成」 と呼ぶべきであろう.また,「高位」 という言葉は設計記述の抽象度 のレベルを表しているが,これは相対的な表現なので,将来,より高い抽象度について述べる場合にも説明がすっきりしないことになりそうである. 本稿では,読者の混乱を避けるために,あえて従来通りの「動作合成」 という表現を用いることにする.. 454. 45 巻 5 号 情報処理 2004 年 5 月.
(5) 1. システムレベルデザインに向けて. (3)設計記述を用いて,システムが実装された場合の. ない, 言語ごとにトランスレータを用意する必要がある,. ハードウェア量,性能,消費電力などの設計品質の見. シミュレーションやトランスレーションなどの設計作業. 積りが可能である.. にオーバーヘッドが生じやすい, などの限界も存在する.. (4)設計記述から,より下位のコンポーネントを用いた. 次に,単一の言語を用いる(2)のアプローチは,単一. 設計記述を生成できる.生成に際しては,ハードウェ. の言語だけを用いて設計を一貫して行えるという大きな. ア量,性能,消費電力などを考慮した設計の最適化が. 利点を持っている.しかし,既存の HDL あるいは SPL. 可能である.. はシステムレベルでの設計を行うのに十分な記述能力を 持っていないので,言語の拡張が避けられない.. システムレベル設計手法と設計記述言語. HDL をベースにしたシステムレベル設計言語の代表 は SystemVerilog である.また,SPL をベースにしたシ. 先に述べたシステムレベル設計手法で使われる設計言 語がどのような性質を持つべきかについて考えてみる.. ステムレベル設計言語としては,SystemC ,SpecC な どの C または C++ 系の言語が多数提案されている.. まず,システム LSI の構成要素である,命令セットプロ セッサ,ソフトウェア・プログラム,専用ハードウェア,. 今後の展望. アナログ回路,高周波回路などのモデル化を行うために は,従来のソフトウェア・プログラミング言語(SPL:. 現在提案されているシステムレベル設計言語の多くは. Software Programming Language)と同程度の記述能. システムのモデリングと機能検証に重点を置いている.. 力が要求される. ☆2. .. システムレベル設計手法を実用化するためには,システ. 先に述べたビヘイビア・レベルの設計記述からの動作. ムレベル記述からの実装可能なハードウェアおよびソフ. 合成技術は次のような利点を持っている.まず,ビヘイ. トウェア記述の生成や設計品質(ハードウェア量,性能,. ビア・レベルの設計記述は逐次的な動作の記述なので,. 消費電力など)の見積り方法についてのさらなる研究が. SPL との類似点が多い.したがって,ビヘイビア記述か. 必要であろう.しかし,これらの問題が解決できれば,. らの動作合成は,ディジタル部品で構成される電子シス. 従来よりも設計生産性がはるかに高い,新しい設計方法. テムを対象とするシステムレベル設計手法の基本技術に. が確立することになると期待される.. なると考えてよいであろう. システムレベル設計言語の標準化の動きは,1990 年 代の後半に開始された.システムレベル設計言語を開発 するためのアプローチは次の 3 通りに分類できる.. 参考文献 1 ) S E M AT E C H : I n t e r n a t i o n a l Te c h n o l o g y R o a d m a p f o r Semiconductors(2003). (平成 16 年 4 月 9 日受付). (1)複数の言語を組み合わせる方法 (2)単一の言語を用いる方法 (2.1)HDL を拡張する方法 (2.2)SPL を拡張する方法 (1)のアプローチは,複数の言語の間での情報の共有 を行うために,意味を記述するための核となる言語を定 義する方法である.この場合,核言語とそれぞれの設計 言語の間のトランスレータを用意して設計を行うことに なる.この方法の利点は,それぞれの応用分野に適し た設計言語を選択して用いることができるという点であ る.しかし,この方法では,すべての言語のセマンティ クスを記述できるような言語を規定することが容易では. ☆2. SPL は,あまり耳慣れない言葉かもしれないが,いわゆる「プログラミング言語」と同じ意味である.ハードウェア(特に FPGA)を「プログラム」す る言語(HDL)も存在するので,プロセッサ上で動作するソフトウェアであるということを強調するときには,SPL という言葉を使うことがある.こ こでは,HDL と対比する意味であえて SPL という言葉を使った.. IPSJ Magazine Vol.45 No.5 May 2004. 455.
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