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在宅高齢者の自己実現尺度の開発の研究:自己実現尺度開発と自己実現概念の操作的定義

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Academic year: 2021

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2 0 0 8 年 度 博士 論 文

主 査 教 授 江 藤 直 純

副査教授 平山 佳須美

「在宅高齢者の自己実現尺度の開発の研究」

― 自 己 実 現 尺 度 開 発 と 自 己 実 現 概 念 の 操 作 的 定 義 ―

Development of the Self-Actualization Scale for the Elderly Living at Home

ル ー テ ル 学 院 大 学 大 学 院 総 合 人 間 学 研 究 科

社 会 福 祉 学 専 攻博 士 後 期 課 程

04G-D001

清 重 哲 男

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目 次

テ ー マ :「 在 宅 高 齢 者 の 自 己 実 現 尺度 の 開 発 の 研 究 」

は じ め に

序 章

第 1 節 自 己 実 現 を 研 究 の テ ー マ と し て 取 り 上 げ た 背 景 第 2 節 自 己 実 現 研 究 の 目 的

第 1 章 自 己実 現 の 構 成 概 念 の 基本 原 理

第 1 節 カ ン ト の 実 践 哲 学 に つ い て 第 1 項 カ ン ト の 実 践 哲 学 と 自 己 実 現 の 概 念 第 2 項 カ ン ト 哲 学 よ り 取 り 上 げ た 概 念 第 2 節 ニ ー チ ェ の 実 存 主 義 哲 学 に つ い て 第 1 項 ニ ー チ ェ の 実 存 主 義 哲 学 と 自 己 実 現 の 概 念 第 2 項 ニ ー チ ェ の 実 存 主 義 哲 学 よ り 取 り 上 げ た 概 念 第 3 節 マ ス ロ ー の 心 理 学 に つ い て 第 1 項 マ ス ロ ー の 心 理 学 と 自 己 実 現 の 概 念 第 2 項 マ ス ロ ー の 心 理 学 よ り 取 り 上 げ た 概 念 第 4 節 マ ッ ク ス ・ シ ェ ー ラ ー の 価 値 倫 理 学 第 1 項 シ ェ ー ラ ー の 価 値 倫 理 学 と 自 己 実 現 の 概 念 第 2 項 シ ェ ー ラ ー の 価 値 倫 理 学 取 り 上 げ た 概 念 よ り

第 2 章 生 活の 質 ( Q O L ) に 関す る 先 行 研 究

第1節 サ ク セ ス フ ル ・ エ イ ジ ン グ の 理 論 第 2 節 Q O L 尺 度 の 先 行 研 究 第 1 項 生 活 の 質 ( Q O L ) の 理 論 第 2 項 生 活 の 質 ( Q O L ) 尺 度 の 先 行 研 究

第 2 項 の 1 包 括 的 健 康 関 連 QOL 尺 度 Short Form36(SF- 36) 第 2 項 の 2 W H O /Q O L 2 6 尺 度 つ い て 第 2 項 の 3 PGC モ ラ ー ル ( M o r a l e ) ス ケ ー ル ・・・・・・ 1 ・・・・・・ 4 ・・・・・・ 9 ・・・・・・ 10 ・・・・・・ 14 ・・・・・・ 19 ・・・・・・ 23 ・・・・・・ 33 ・・・・・・ 33 ・・・・・・ 35

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第 2 項 の 4 カ ッ ト ナ ー ( Kutner, B .) のモ ラ ー ル ・ ス ケ ー ル 第 2 項 の 5 R D Q 日 本 語 版 マ ニ ュ ア ル に つ い て 第 2 項 の 6 諸 外 国 の Q O L 尺 度 の 先 行 研 究 第 3 項 最 近 の わ が 国 の 高 齢 者 の 生 活 の 質 (Q O L )尺 度 の 先 行 研 究 第 3 節 生 き が い と 自 己 決 定 の 先 行 研 究 第 1 項 「 生 き が い 」 に つ い て 第 2 項 「 自 己 決 定 」 に つ い て

第 3章 予 備 尺 度 の作 成と自 己 実 現の概 念 定 義

第1節 自 己 実 現 の 概 念 定 義 第 2 節 自 己 実 現 の 構 成 概 念 の 操 作 的 な 仮 定 義 第 1 項 自 己 実 現 の 構 成 概 念 の 操 作 的 仮 定 義 の 手 順 第 2 項 自 己 実 現 の 構 成 概 念の 大 項 目 ,中 項 目 ,小項 目 第 3 節 予 備 尺 度 の 完 成 第 1 項 大 項 目 「 他 者 と の 関 係 性 」 に つ い て 第 2 項 大 項 目 「 個 人 の 生 活 」 に つ い て 第 4 節 調 査 票 に 採 用 す る 質 問 項 目 原 案 文

第 4章 プリテストの準 備と実 施

第 1 節 調 査 項 目 の 選 定 準 備 第 2 節 自 己 実 現 尺 度 構 成 の 予 測 第 3 節 質 問 項 目 の 抽 出 第 4 節 プ リ テ ス ト 調 査 票 の 作 成 第 5 節 プ リ テ ス ト の 方 法 第 6 節 基 本 属 性 の 調 査 結 果 第 7 節 質 問 項 目 の 削 減 方 法 第 1 項 選 ワ ー デ ィ ン グ 検 討 会 に よ る 項 目 削 除 第 2 項 選 択 さ れ た 3 2 質 問 項 目 第 8 節 信 頼 性 分 析 に よ る 項 目 選 定 ・・・・・・・ 55 ・・・・・ 68 ・・・・・ 75 ・・・・・ 75 ・・・・・ 76 ・・・・・ 80 ・・・・・ 100 ・・・・・ 103 ・・・・・ 103 ・・・・・ 104 ・・・・・ 106 ・・・・・ 108 ・・・・・ 109 ・・・・・ 100 ・・・・・ 111 ・・・・・ 113

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第 1 項 選 定 の た め の 項 目 分 析 第 2 項 2 5 項 目 か ら の 項 目 分 析 第 9 節 因 子 分 析 に よ る 項 目 選 定 の 確 認

第 5 章 本 調 査 の実 施

第 1 節 本 調 査 の 実 施 の 方 法 第 2 節 本 調 査 に 使 用 し た 自 己 実 現 質 問 項 目 第 3 節 本 調 査 用 基 本 属 性 の 項 目 選 定 第 4 節 サ ン プ ル の 基 本 属 性 第 1 項 1 6 基 本 属 性 の 度 数 分 布 の 分 布 第 2 項 基 本 属 性 の 度 数 分 布 の 分 析 結 果 の 考 察 第 5 節 本 調 査 の デ ー タ に よ る 項 目 分 布 第 6 節 全 項 目 の 度 数 分 布 と ヒ ス ト グ ラ ム 第 7 節 信 頼 性 分 析 に よ る 自 己 実 現 項 目 の 選 定 第 8 節 因 子 分 析 に よ る 項 目 選 定 第 9 節 因 子 分 析 に よ る 項 目 選 定 の 最 終 確 認 第 10 節 項 目 選 定 作 業 の 総 括

第 6章 自己 実 現 尺 度の因 子 分 析 による因 子 構 造の選 定

第 1 節 自 己 実 現 構 成 概 念 の 仮 定 義 第 2 節 因 子 抽 出 の 方 法 第 1 項 主 成 分 分 析 を 採 用 し た 理 由 第 2 項 因 子 抽 出 の 方 法 に つ い て 第 3 項 直 行 回 転 を 採 用 し た 理 由 つ い て 第 3 節 因 子 数 「 7 」 の 因 子 分 析 第 1 項 7 因 子 モ デ ル の 因 子 寄 与 率 及 び 因 子 負 荷 量 第 2 項 7 因 子 モ デ ル の 評 価 第 4 節 因 子 数 「 6 」 の 因 子 分 析 第 1 項 6 因 子 モ デ ル の 因 子 寄 与 率 及 び 因 子 負 荷 量 ・・・・・ 116 ・・・・・ 119 ・・・・・ 119 ・・・・・ 121 ・・・・・ 123 ・・・・・ 125 ・・・・・ 131 ・・・・・ 132 ・・・・・ 137 ・・・・・ 145 ・・・・・ 150 ・・・・・ 157 ・・・・・ 163 ・・・・・ 163 ・・・・・ 164 ・・・・・ 165 ・・・・・ 168

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第 2 項 6 因 子 モ デ ル の 評 価 第 5 節 因 子 数 「 5 」 の 因 子 分 析 第 1 項 5 因 子 モ デ ル の 因 子 寄 与 率 及 び 因 子 負 荷 量 第 2 項 5 因 子 モ デ ル の 評 価 第 6 節 因 子 数 「 4 」 の 因 子 分 析 第 1 項 4 因 子 モ デ ル の 因 子 寄 与 率 及 び 因 子 負 荷 量 第 2 項 4 因 子 モ デ ル の 評 価 第 7 節 5 因 子 モ デ ル の 潜 在 因 子 へ の 命 名 第 1 項 第 1 因 子 へ の 命 名 第 2 項 第 2 因 子 へ の 命 名 第 3 項 第 3 因 子 へ の 命 名 第 4 項 第 4 因 子 へ の 命 名 第 5 項 第 5 因 子 へ の 命 名

第 7章 基 本 属 性 が自 己 実 現トータルスコアと下 位 尺 度 に及ぼす影 響

第 1 節 自 己 実 現ト ー タ ル ス コ アと 下 位 尺 度 ス コ ア の 計 算 第 2 節 自 己 実 現 ト ー タ ル ス コ ア の 分 布 第 3 節 基 本 属 性 が 自 己 実 現ト ー タ ル ス コ アに 及 ぼ す 影 響 第 1 項 基 本 属 性 の 項 目 名 と 内 容 第 2 項 自 己 実 現ト ー タ ル ス コ アと 基 本 属 性 の 一 元 配 置 の 分 散 分 析 第 3 項 自 己 実 現ト ー タ ル ス コ アと 基 本 属 性 の 多 元 配 置 分 散 分 析 第 4 項 一 元 配 置 分 散 分 析 と 多 元 配 置 分 散 分 析 の 結 果 の 比 較 第 4 節 下 位 尺 度 に 及 ぼ す 基 本 属 性 の 影 響 第 1 項 一 元 配 置 分 散 分 析に よ る 下 位 尺 度 に 及 ぼ す基 本 属 性 の 影 響 第 2 項 多 元 配 置 分 散 分 析に よ る 基 本 属 性 の 下 位 尺 度 への 影 響 第 5 節 分 散 分 析に よ る 基 本 属 性 の 影 響 力 の 分 析の 総 合 的 考 察 ・・・・・ 170 ・・・・・ 172 ・・・・・ 175 ・・・・・ 183 ・・・・・ 186 ・・・・・ 187 ・・・・・ 201 ・・・・・ 204 ・・・・・ 208 ・・・・・ 208

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第 8章 自 己 実 現 スケールの確 認 的 因 子 分 析 による検 証

第 1 節 1 次 因 子 モ デ ル の 確 認 的 因 子 分 析 第 2 節 2 次 の 確 認 的 因 子 分 析 第 1 項 2 次 因 子 の 確認 的 因 子 分 析 の 潜 在 変 数 と 観測 変 数 第 2 項 2 次 因 子 の 仮 設 モ デ ル の 確 認 的 因 子 分 析

第 9章 要 約と結 論

第1節 自 己 実 現 概 念 の 構 築 第 1 項 カ ン ト 他 4 人 の 思 想 家 の 理 念 と 自 己 実 現 の 基 礎 理 念 第 2 項 自 己 実 現 の 概 念 的 定 義 第 3 項 構 成 概 念 の 操 作 的 定 義 第 2 節 自 己 実 現 尺 度 ( SAT-17) の 開 発 第 1 項 自 己 実 現 尺 度 開 発 の プ ロ セ ス 第 1 項 の 1 キ ー ワ ー ド プ ー ル の 作 成 第 1 項 の 2 調 査 項 目 7 6 原 案 文 の ス テ ー ト メ ン ト 第 1 項 の 3 プ リ テ ス ト 用 50 項 目 の 作 成 第 1 項 の 4 本 尺 度 24 項 目 の 観 測 変 数 の 選 定 と 本 調 査 第 2 項 尺 度 の 検 証 第 2 項 の 1 確 認 的 因 子 分 析 に よ る 検 証 第 2 項 の 1 自 己 実 現 尺 度 の 信 頼 性 第 3 項 尺 度 の 特 性 第 3 節 結 論 第 1 項 自 己 実 現 尺 度 ( SAT-17) の 構 成 第 2 項 自 己 実 現 の 操 作 的 定 義 の 確 定 第 4 節 残 さ れ た 課 題 ・ 謝 辞 ・ 巻 末 資 料 ・・・・・ 211 ・・・・・ 217 ・・・・・ 217 ・・・・・ 220 ・・・・・ 228 ・・・・・ 229 ・・・・・ 230

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はじめに

本 論 文 は 、 在 宅 高 齢 者 の 自 己 実 現 尺 度 を 開 発 し 、 自 己 実 現 概 念 の 因 子 構 造 を 明 ら か に す る こ と に よ り 、 自 己 実 現 の 概 念 を 操 作 的 に 定 義 す る こ と を 目 的 と し て い る 。 自 己 実 現 は 、 各 人 が そ れ ぞ れ 独 自 の 概 念 で 多 様 な 意 味 に 定 義 す る こ と が で き る 。 た と え ば 、 健 康 や 社 会 的 な 成 功 、 経 済 力 の 獲 得 、 ま た 生 き が い や 才 能 を 発 揮 す る こ と な ど 、 い わ ば 生 き て い く 上 で 個 人 や 社 会 か ら 承 認 さ れ て い る あ ら ゆ る 良 い と い わ れ て い る こ と を 、 自 己 実 現 の 概 念 に 組 み 入 れ る こ と が で き る 。 社 会 福 祉 制 度 の 中 で も 同 様 な 傾 向 が 見 ら れ る 。 平 成 14 年に 公布 された 、障 害 者 基 本 計 画 の 中 で は 、「 基 本 的 な 方 針 」 と し て 、「 自 己 選 択 」 と 「 自 己 決 定 」 に 並 び 、「 自 ら の 能 力 を 最 大 限 発 揮 し 自 己 実 現 で き る よ う 支 援 す る 」こ と が 規 定 さ れ て い る 。 し か し 、 そ の 具 体 的 な 内 容 は 明 示 さ れ て い な い 。 ま た 、 平 成 17 年に 改定 さ れ た 社 団 法 人 日 本 社 会 福 祉 士 会 の 倫 理 綱 領 の 前 文 の 中 に 、 社 会 福 祉 士 は 「 サ ー ビ ス 利 用 者 の 自 己 実 現 を め ざ す 専 門 職 で あ る 」 こ と が 規 定 さ れ て い る 。 し か し 、 自 己 実 現 に つ い て の 内 容 は 明 確 に 提 示 さ れ て い な い 。 こ の よ う に 、 自 己 実 現 と い う こ と ば が 法 律 の 理 念 や 目 標 に 組 み 込 ま れ て き て い る が 、 自 己 実 現 の 重 要 性 を 取 り 上 げ る 程 度 で 止 ま っ て い る の で あ る 。 心 理 学 の 分 野 で は 、自 己 実 現 は ゴ ー ル ド シ ュ タ イ ン が 1939 年 に『The Organism』 ( Goldstein 1939 ) の 中 で 最 初 に 使 用 し た 概 念 で あ る と い わ れ て い る (Maslow =1992:72)。そ の 後 、マ ス ロ ー が「 欠 乏 欲 求 理 論 」の 中 で 最 上 位 概 念 と し て 自 己 実 現 を 理 論 化 し 、 自 己 実 現 に 関 す る 概 念 を 論 証 し て い る (Maslow= 1992:55-71)。 ま た 、 ロ ジ ャ ー ス は 「 完 全 に 機 能 す る 人 間 」1)(Maslow =1973:89 )と い う 表 現 で 、 マ ス ロ ー の 自 己 実 現 の 理 論 を 継 承 し て い る 。 こ れ ら の 心 理 学 分 野 で の 研 究 の 業 績 は 、 心 理 学 の 視 点 を 通 じ て 心 理 療 法 の 範 疇 で 人 間 を 捉 え て い る と 解 釈 す る こ と が で き る 。 ま た 、 こ れ ら の ア メ リ カ の 心 理 学 は 、 歴 史 的 に ニ ー チ ェ 及 び 他 の ヨ ー ロ ッ パ の 実 存 主 義 哲 学 の 思 想 か ら 、 人 間 に 関 す る 哲 学 的 思 考 の 影 響 を 受 け 、 心 理 学 の 基 礎 哲 学 と し て 進 化 し て き て い る (Maslow= 1964:27-8)。 心 理 学 や 医 学 、 お よ び 社 会 福 祉 学 の 分 野 で 、 生 活 の 質 :Quality of Life(以 下 Q O L ) 及 び 満 足 度 に 関 す る 研 究 が 多 く の 研 究 者 に よ り 行 わ れ 、 そ の 成 果 が 多 数

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- 2 - 報 告 さ れ て き て い る 。 し か し 、 自 己 実 現 に 関 す る 社 会 福 祉 学 分 野 で の 研 究 は 、 ほ と ん ど 行 わ れ て き て い な い 。 介 護 保 険 制 度 が 実 施 さ れ 、 権 利 擁 護 が 特 に 強 く 求 め ら れ て き て い る 今 日 、 ソ ー シ ャ ル ワ ー ク の 援 助 目 標 や 社 会 福 祉 の 支 援 方 法 の 領 域 で は 、 Q O L の 理 念 を 越 え た 支 援 目 標 の 到 達 の 把 握 の 方 法 の 基 準 に 、 利 用 者 の 日 常 の 生 活 の 在 り 方 を 中 心 に 捉 え 、 そ の 生 活 を 評 価 す る 自 己 実 現 尺 度 の 開 発 が 非 常 に 重 要 に な っ て き て い る 。 さ ら に い え ば 、 自 己 実 現 尺 度 の 開 発 は 、 こ れ か ら の 新 た な 国 民 的 課 題 で あ る と 同 時 に 、 社 会 福 祉 政 策 に お け る 、 重 要 な 目 標 の 一 つ に な る と い え る 。 研 究 に 先 立 ち 、 福 祉 先 進 国 で あ る デ ン マ ー ク に お い て 、 在 宅 高 齢 者 の 自 己 実 現 に 取 り 組 ん で い る 生 活 支 援 の 実 践 モ デ ル の 先 行 予 備 調 査 を 行 っ た 。 そ の こ と を 契 機 と し て 、 本 研 究 で は 、 哲 学 、 心 理 学 、 価 値 倫 理 学 、 及 び 社 会 福 祉 学 の 自 己 実 現 に 隣 接 す る Q O L な ど の 先 行 研 究 を 行 い 、 そ れ を 基 礎 と し た 自 己 実 現 の 尺 度 開 発 の 研 究 を 行 っ た 。 以 下 の 各 章 に お い て 、 そ の 結 果 に つ い て 報 告 す る 。

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目 次

序 章 社 会福 祉 の サ ー ビ ス 支 援に お け る 自 己 実 現 の意 義

第 1 節 自 己 実 現 を 研 究 テ ー マ に 取 り 上 げ た 背 景 ・・・・・・・ 4 第 2 節 自 己 実 現 研 究 の 目 的 ・・・・・・・ 6

第 1 章 自 己実 現 の 構 成 概 念 の 基本 原 理

・・・・・・・ 9 第 1 節 カ ン ト の 実 践 哲 学 ・・・・・・・10 第 1 項 カ ン ト の 実 践 哲 学 と 自 己 実 現 の 概 念 第 2 項 カ ン ト 哲 学 よ り 取 り 上 げ た 概 念 第 2 節 ニ ー チ ェ の 実 存 主 義 哲 学 ・・・・・・・14 第 1 項 ニ ー チ ェ の 実 存 主 義 哲 学 と 自 己 実 現 の 概 念 第 2 項 ニ ー チ ェ の 実 存 主 義 哲 学 よ り 取 り 上 げ た 概 念 第 3 節 マ ス ロ ー の 心 理 学 ・・・・・・・19 第 1 項 マ ス ロ ー の 心 理 学 と 自 己 実 現 の 概 念 第 2 項 マ ス ロ ー の 心 理 学 よ り 取 り 上 げ た 概 念 第 4 節 マ ッ ク ス ・ シ ェ ー ラ ー の 価 値 倫 理 学 ・・・・・・・23 第 1 項 シ ェ ー ラ ー の 価 値 倫 理 学 と 自 己 実 現 の 概 念 第 2 項 シ ェ ー ラ ー の 価 値 倫 理 学 よ り 取 り 上 げ た 概 念

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序章 社会福祉のサービス支援における自己実現の意義

本 章 で は 、 自 己 実 現 を 研 究 の テ ー マ と し て 取 り 上 げ た 背 景 及 び 本 研 究 の 目 的 に つ い て 述 べ る 。

第 1 節 「自己実現」を研究テーマに取り上げた背景

高 齢 化 が 進 む 中 で 、 医 療 制 度 や 保 健 衛 生 の 充 実 及 び 食 生 活 の 向 上 な ど に よ り 平 均 寿 命 が 延 び て き た こ と か ら 、 現 役 引 退 後 の 長 期 化 し た 人 間 の 生 活 の 過 ご し 方 が 大 き な 問 題 と な っ て き て い る 。 元 気 な 高 齢 者 が 生 活 に 目 的 を 持 た ず に 日 々 を 過 ご し 、 加 齢 に と も な い 生 じ る 疾 病 の 治 療 の た め に 、 高 度 医 療 や 延 命 処 置 を 一 方 的 に 受 け 、 医 療 中 心 の 生 活 を 送 る こ と に 疑 問 を 感 じ て い る 。 そ れ よ り も 、 住 み 慣 れ た 地 域 で 社 会 参 加 し 、 他 者 か ら の 介 護 支 援 を 受 け な が ら も 、 生 き 生 き と 元 気 で 人 的 交 流 の 中 で 生 き る こ と の 方 が 重 要 で あ る 。 そ し て そ れ を 支 援 す る こ と の 方 が 社 会 福 祉 の 本 来 の 目 的 で あ る と 考 え ら れ る 。 日 常 生 活 の 活 動 性 を 評 価 す る 概 念 と し て 、1945 年 、リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン 医 療 の 分 野 か ら 日 常 生 活 動 作 能 力 : Activities of Daily Living( 以 下 A D L ) が 論 じ ら れ る よ う に な っ た ( 江 藤 1995: 12-22)。 次 い で 、 1960 年 代 に リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン 医 学 の 領 域 で 、 生 活 目 的 の 手 段 と し て 活 用 す る 新 し い A D L 概 念 で あ る 手 段 的 A D L :Instrumental Activities of Daily Living (以 下 I A D L )が 開 発 さ れ た( 江 藤 1995: 23-32)。生 活 全 体 の 質 を 捉 え る 概 念 の Q O L は 、が ん 治 療 の 分 野 で 1970 年 代 に 始 ま り 、1980 年 代 に 様 々 な 分 野 に 波 及 し 広 め ら れ た( 高 橋 1995)。

田 崎 ・ 中 根 (1997)は 、 世 界 保 健 機 構 : World Health Organization (以 下 W H O ) が 、 主 観 的 幸 福 感 の 測 定 を 主 眼 と し た Q O L の 定 義 お よ び Q O L 測 定 尺 度 の 研 究 を 報 告 し た こ と を 契 機 に 、 世 界 各 国 で 急 速 に Q O L 研 究 が 盛 ん に な っ た こ と を 報 告 し て い る 。 こ の よ う に 社 会 福 祉 サ ー ビ ス の 評 価 方 法 で あ る Q O L は 、 リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン 医 学 中 心 の A D L 概 念 か ら 出 発 し 、 日 常 生 活 の 具 体 的 内 容 に 関 連 し た I A D L へ と 移 行 し た 。 さ ら に 、 生 き が い や 人 生 の 幸 福 感 及 び 生 活 満 足 度 を 追 求 す る 時 代 へ と 移 行 し て き て い る 。 人 生 の 幸 福 感 や 生 活 満 足 度 に 関 連 し た Q O L 研 究 の 1 つ と

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し て 、久 保 田・ほ か( 2006)は 、Lawton(1991)の「 Well-Being」に 基 づ い た Q O L 概 念 を 紹 介 し て い る 。

ま た 、 池 上 ・ ほ か ( 2001) は 、 人 間 が 経 験 を 通 し て 獲 得 す る 達 成 感 の 程 度 や 幸 福 の 程 度 を ポ ジ テ ィ ブ に 測 定 す る W H O の 主 観 的 幸 福 感 尺 度 ( W H O Subjective Well-Being Inventory)( Sell 1992) に つ い て 述 べ る と と も に 、 家 族 、 友 人 や 人 と の つ き 合 い を 含 め た Short-Form Survey(SF-36)(Ware,et al 1992)の 36 項 目 8 下 位 尺 度 か ら 構 成 さ れ る プ ロ フ ァ イ ル 型 Q O L 尺 度 に つ い て 報 告 し て い る 。 人 間 の 幸 福 感 や 満 足 度 に つ い て 、米 国 で は Lawton(1975)ら が 老 年 学 の 立 場 か ら 主 観 的 幸 福 感 の 測 定 尺 度 P G C モ ラ ー ル ・ ス ケ ー ル2 )を 開 発 し て い る 。 わ が 国 で は 、 前 田 ・ ほ か ( 1979) が P G C モ ラ ー ル ・ ス ケ ー ル の 2 2 項 目 の 日 本 語 版 に よ る 『 老 人 の 主 観 的 幸 福 感 の 研 究 』 を 報 告 し て い る 。 ま た 、 古 谷 野 ( 1983) は 「 生 活 満 足 度 尺 度 お よ び 幸 福 度 尺 度 の 共 通 次 元 と 尺 度 間 の 関 連 性 」 の 研 究 を 報 告 し て い る 。 W H O の 新 し く 改 訂 さ れ た 国 際 生 活 機 能 分 類 : International Classification of Function( 以 下 I C F ) は 、 従 来 の A D L 評 価 か ら 「 生 活 機 能 」 を 「 参 加 」 ( Participation) と 「 活 動 」( Activities) な ど の 肯 定 的 な 表 現 で 概 念 化 を し て い る( 障 害 者 福 祉 研 究 会 2002)。この ように 、一 人ひ とりが 社会 参 加や活 動を 通 し て 、 生 活 の 満 足 や 生 き が い を 求 め 、 大 切 に す る こ と が 正 当 に 社 会 評 価 さ れ る 時 代 に な っ て き て い る 。 わ が 国 で は 、 団 塊 の 世 代 が 65 歳 を 迎 え る 2015 年 に は 、 介 護 保 険 制 度 の サ ー ビ ス 利 用 量 が 大 幅 に 増 大 す る こ と が 予 測 さ れ る 。 そ の た め 、 高 齢 者 が 健 康 で 、 地 域 で 自 立 生 活 を 継 続 し 、 い つ ま で も 元 気 に 社 会 参 加 し な が ら 生 き 生 き と し た 人 生 が 送 ら れ る よ う 支 援 す る 方 法 が 論 議 さ れ 、 社 会 福 祉 政 策 の 重 要 な 今 日 的 課 題 と な っ て き て い る 。 す で に こ の こ と は 、「 ゴ ー ル ド プ ラ ン 21」の 社 会 参 加 や「 2015 年 の 高 齢 者 介 護 」 報 告 書 の 地 域 で の 包 括 的 支 援 と し て 具 体 的 施 策 に 組 み 込 ま れ て い る 。( 表 1 ) こ う し た 時 代 の 変 化 に と も な い 、 ソ ー シ ャ ル ワ ー ク の 基 本 的 な 考 え 方 は 、 治 療 的 な 考 え 方 か ら 、 個 性 を 尊 重 し た 生 き が い や 社 会 活 動 を 目 標 と す る 生 活 中 心 の 新 し い 考 え 方 へ と 移 行 し て き て い る 。 筆 者 は 、 利 用 者 の 側 に 立 っ て 、 生 き が い や 自

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- 6 - 己 実 現 の 程 度 を 評 価 す る 尺 度 が 現 実 に 必 要 と さ れ て き て い る こ と を 強 く 感 じ て い る 。 社 会 的 な 生 活 や 家 庭 の 中 心 と し て の 主 婦 の 役 割 を 退 い た 後 の 長 い 高 齢 期 を 、 元 気 で 目 標 を 持 ち 、 新 た に 潜 在 能 力 を 開 拓 し 社 会 活 用 を す る な ど 、 自 己 実 現 に 向 け て そ の 人 ら し い 生 き が い の あ る 人 生 を 送 る こ と を 、 高 齢 期 の 個 人 の 人 生 の 過 ご し 方 の 問 題 と し て だ け 捉 え る の で な く 、 社 会 福 祉 全 体 の 重 要 な 目 標 と し て 捉 え る 必 要 が あ る 。 表 1 近 年 の 各 種 指 針 に よ る 自 己 実 現 関 連 表 記 内 容 指 針 の 理 念 自 己 実 現 に 関 連 す る 表 記 ゴ ー ル ド プ ラ ン 21 自 ら の 意 思 に 基 づ く 高 齢 者 の 尊 厳 社 会 参 加 若 々 し い 高 齢 者 生 き が い 2015 年の高 齢者 介護 自 ら 選 択 ・ 決 定 生 活 を 自 ら 組 み 立 て 尊 厳 の 保 持 潜 在 能 力 活 動 能 力 充 実 し た 生 活 個 別 ケ ア 一 人 ひ と り の 個 性 社 会 と の か か わ り ICF 活 動 参 加 環 境 因 子 個 人 因 子 健 康 状 態 心 身 機 能 日 本 社 会 福 祉 士 会 ウェル ビ ー イ ン グ 解 放 社 会 正 義 自 己 実 現 倫 理 綱 領 エ ン パ ワ ー メ ン ト

第2節 自己実現研究の目的

社 会 福 祉 学 の 分 野 で 、「 自 己 実 現 」に 関 す る 実 証 的 研 究 及 び 概 念 の 理 論 化 の 研 究 は ほ と ん ど さ れ て き て い な い 。従 っ て 、「 自 己 実 現 」を 測 定 す る 尺 度 の 開 発 は 、こ れ か ら の 課 題 で あ る 。本 研 究 で は 、自 己 実 現 を 概 念 化 し 、「 自 己 実 現 」の 評 価 尺 度 を 開 発 す る こ と に よ り 、因 子 構 造 を 明 ら か に し 、「 自 己 実 現 」の 構 成 概 念 を 操 作 的 に 定 義 す る こ と を 目 的 と し て い る 。 本 論 文 は 、カ ン ト 哲 学 の「 行 為 と 意 志 」、ニ ー チ ェ の 実 存 主 義 哲 学 の「 権 力 へ の 意 志 」、マ ス ロ ー 心 理 学 の「 欠 乏 と 欲 求 」、マ ッ ク ス・シ ェ ー ラ ー の「 価 値 倫 理 学 」 な ど の 人 間 の 本 質 論 か ら 出 発 し て い る 。 高 齢 者 は 社 会 福 祉 サ ー ビ ス 利 用 者 で あ る 以 前 に 人 間 で あ る こ と に 重 点 を 置 き 、 在 宅 高 齢 者 の 自 己 実 現 尺 度 の 開 発 を 行 う 。

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- 7 - 契 約 制 度 に と も な い 社 会 福 祉 理 念 を 実 践 す る 地 域 に お け る 各 機 関 や 社 会 福 祉 現 場 で は 、社 会 福 祉 サ ー ビ ス 情 報 の 開 示 、自 己 決 定 権 、Q O L( 生 活 の 質 )の 向 上 、 さ ら に 、 最 近 は 自 己 実 現 が 強 く 求 め ら れ て き て い る 。 ま た 、 高 齢 者 が 社 会 的 な 場 に 自 由 に 出 て 、 社 会 参 加 が で き る よ う 「 自 己 実 現 」 理 念 と 高 齢 者 の 自 律 に 基 づ く 新 し い 生 き 方 が 社 会 に 浸 透 し 、 高 齢 者 の 自 己 実 現 に 向 け た 社 会 福 祉 支 援 シ ス テ ム の 構 築 が 求 め ら れ て い る と い え る 。 こ の よ う な こ と か ら 、 本 研 究 で は 、 研 究 の 成 果 が 高 齢 期 の 人 間 の 生 き 方 の 本 質 を 高 め 、 相 談 支 援 方 法 や 社 会 福 祉 サ ー ビ ス の 評 価 方 法 の 有 効 な 道 具 に な る こ と を 最 終 的 な 目 的 と し て い る 。 (注 ) 1)ロジ ャース:心理 学 者でマ スロ ーの欲 求説 に理解 を示 し , 人間 を 成長と 自己 実 現 に む か う 健 康 な 人 間 と 捉 え て い る 。; Decarvalho,R.J.(1991) The Growth Hypothesis in Psychology., Roy Jose Decarvalho.(= 1994 伊藤 博訳 『ヒュ ーマ ニ ス テ ィ ッ ク 心 理 学 ― マ ズ ロ ー と ロ ジ ャ ー ス ー 』 新 水 社,152-53.)

2)PGC モ ラー ルス ケー ル:Philadelphia Geriatric Center モ ラー ル スケー ル( ロ ー ト ン が 開 発 し た モ ラ ー ル ス ケ ー ル で あ る 。); 前 田 ・ ほ か ( 1975) 【引 用 文 献 】 池 上 直 己 ・ 福 原 俊 一 ・ 下 妻 晃 二 郎 ・ 池 田 俊 也 編 (2001)『 臨 床 の た め の QOL 評 価 ハ ン ド ブ ッ ク 』 医 学 書 院 . 江 藤 文 夫 ( 1995)「 ADL の 評 価 方 法 」『 高 齢 者 の 生 活 機 能 評 価 ガ イ ド 』 医 歯 薬 出 版 ,12-22v .

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第1章 自己実現の構成概念の基本原理

自 己 実 現 の 尺 度 開 発 を 行 う に は 、 自 己 実 現 の 基 本 概 念 の 構 築 が 重 要 と な る 。 自 己 実 現 の 基 本 概 念 の 構 築 を 行 う に あ た り 、 カ ン ト 、 ニ ー チ ェ 、 マ ス ロ ー 、 シ ェ ー ラ ー の 4 人 の 哲 学 者 や 心 理 学 者 の 思 想 を 参 考 と し た 。 以 下 に 、4 人 の思想 家を 参 考 と し た 理 由 に つ い て 述 べ る 。 カ ン ト は 近 代 倫 理 学 の 実 践 哲 学 を 確 立 し 、 人 間 が 行 う 行 為 と 行 為 を 実 際 に 行 う 主 体 の 人 間 の 善 い 意 志 の あ り 方 の 関 係 に 論 及 し て い る 。 ニ ー チ ェ は 、 実 存 主 義 哲 学 を 確 立 し 、 生 き る こ と の 本 質 に つ い て 論 及 し 、 自 己 否 定 し 虚 無 に 陥 っ た 人 間 の 生 き て い る 存 在 の 意 義 の 大 切 さ と < 生 > き る 意 欲 の 重 要 性 を 述 べ て い る 。 マ ス ロ ー は 、 自 己 実 現 を ゴ ー ル ド シ ュ タ イ ン か ら 受 け 継 ぎ 、 自 己 実 現 の 概 念 を 欲 求 5 段 階 説 の 最 上 位 に 自 己 実 現 の 欲 求 と し て 位 置 付 け た 初 め て の 心 理 学 者 で あ る 。 シ ェ ー ラ ー は 、 人 間 の 行 為 の 善 と 悪 及 び 「 財 」 に 関 す る 価 値 を 4 段 階 の 序 列 と し て 定 義 し 、 最 上 位 の 聖 な る 価 値 の 中 に 「 愛 の 作 用 」 を 位 置 づ け 、 世 界 と の 関 わ り と 他 者 へ の か か わ り の 重 要 性 を 論 述 し て い る 。 こ れ ら は 、 筆 者 が 4 人 の 思 想 家 を 自 己 実 現 概 念 の 根 拠 と し て 選 択 し た 概 要 で あ る 。 以 下 、 こ れ ら の 4 人 を 自 己 実 現 の 概 念 化 に 選 択 し た 理 由 を 、 一 人 ひ と り に つ い て さ ら に 詳 し く 論 述 す る 。 カ ン ト は 、人 間 が 行 為 を 行 う 場 合 に 、本 人 が 自 分 の 意 志 で 自 由 に 行 為 を 選 択 し 、 本 人 の 意 思 で 主 体 的 に 自 己 決 定 を す る こ と を 基 本 理 念 と し 、 こ の こ と が 人 格 の 自 律 で あ る と 論 じ て い る 。ま た 、人 間 の 人 格 は 現 に 存 在 す る こ と 自 体 に 目 的 が あ り 、 人 間 を 手 段 や 道 具 と し て 利 用 し て は な ら な い と 主 張 し て い る 。 こ の 思 想 を 提 唱 し た こ と か ら 、 筆 者 は カ ン ト を 自 己 実 現 の 概 念 の 思 想 家 と し て 選 択 し た 。 ニ ー チ ェ は 実 存 主 義 哲 学 を 確 立 し 、 人 間 の 存 在 は 、 意 志 が 真 に < 生 > き る こ と を 意 欲 す る こ と で あ り 、 <生 >き る と は 「 理 性 を 持 ち 、 一 定 の 方 向 を 目 指 し 新 し い 自 分 を 生 成 し て い く 」こ と で あ る と 論 及 し て い る 。こ の 思 想 を 提 唱 し た こ と か ら 、 筆 者 は ニ ー チ ェ を 自 己 実 現 の 概 念 の 思 想 家 と し て 選 択 し た 。 5 段 階 の 「 欠 乏 欲 求 理 論 」 を 提 唱 し 、 自 己 実 現 を 最 初 に 理 論 化 し た の が マ ス ロ ー で あ る 。自 己 実 現(Self-actualization)の欲 求を高 次欲 求の最 上位 に位置 づけ 、 低 次 欲 求 で あ る 食 欲 や 睡 眠 な ど の 基 本 的 欲 求 は 、 生 命 維 持 の た め 、 高 次 欲 求 で あ

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- 10 - る 自 己 実 現 の 欲 求 や 他 の 欲 求 に 先 行 し て 充 足 さ せ る 必 要 が あ る 。 し か し 、 低 次 欲 求 を 犠 牲 に し て 、 高 次 欲 求 を 充 足 さ せ た い と い う 欲 求 も あ る と マ ス ロ ー は 論 じ て い る 。 こ の 思 想 を 提 唱 し た こ と か ら 、 筆 者 は マ ス ロ ー を 自 己 実 現 の 概 念 の 思 想 家 と し て 選 択 し た 。 シ ェ ー ラ ー は 、「 人 間 と は 何 か 」と い う 命 題 に 、人 間 は「 い つ も 世 界 と の 関 わ り に お い て 存 在 し て い る 」 と 答 え 、 世 界 と の 関 わ り が 人 間 の 存 在 の 根 拠 で あ る と 論 じ て い る 。 ま た 、 4 段 階 の 価 値 序 列 を 唱 え 、 最 高 位 に 聖 価 値 を 位 置 付 け 、 現 実 的 な 自 己 成 長 を 目 指 し 、「 愛 の 作 用 」に よ り 他 者 に 関 わ り 合 い 、世 界 平 和 や 人 類 の 幸 せ を 絶 対 者 に 祈 る 普 遍 妥 当 性 の 必 要 性 を 説 い て い る 。 こ の 思 想 を 提 唱 し た こ と か ら 、 筆 者 は シ ェ ー ラ ー を 自 己 実 現 の 概 念 の 思 想 家 と し て 選 択 し た 。 こ れ ら の 4 人の 思想 に共通 した 理念は 、「 人間と はな にか」 そし て「生 きる こ と と は 何 か 」 に つ い て 論 じ 、 生 き る と い う 行 為 の 主 体 は 個 人 の 人 間 で あ る と の 本 質 論 を 出 発 点 と し て 、 人 間 の 人 格 の 主 体 的 行 為 と 人 間 の 自 己 の 成 長 を 基 本 理 念 と し て 展 開 し て い る 。

第 1 節 カントの実践哲学

第 1項 カントの実 践 哲 学と自 己 実 現 概 念

カ ン ト は 近 代 倫 理 学 の 原 理 の 確 立 者 で あ り 、 人 間 が 行 う 行 為 と 行 為 を 行 う 主 体 で あ る 人 間 の 善 い 意 志 の あ り 方 の 関 係 を 論 述 し て い る 。 カ ン ト は 、 行 為 を 実 際 に 行 う 場 合 の 意 志 の あ り 方 と 人 間 が 幸 福 を 求 め る こ と に つ い て の 妥 当 性 は 、 人 間 が 生 き て い く 上 で の 核 心 的 原 理 で あ る と 論 じ て い る 。 カ ン ト は こ の 理 念 を 痛 風 の 患 者 の 例 、「 足 指 の 痛 風 に 苦 し む 患 者 は 、好 き な も の を 満 喫 で き れ ば 、 苦 し み は で き る だ け 我 慢 す る ほ う が ま し だ と 思 う か も し れ な い ・ ・ ・ そ の 患 者 は 健 康 に な れ ば 得 ら れ る は ず の 幸 運 な ん て あ て に で き そ う も な い と 考 え 、目 前 の 楽 し み を 奪 わ れ た く な い・・・」を 取 り 上 げ て 説 明 し て い る( Kant = 2000:21)。こ の 原 理 は 、自 己 実 現 の 本 質 に 直 接 的 に 関 連 し て い る と 、筆 者 は 考 え て い る 。 ま た 、 カ ン ト は こ の 患 者 の 幸 福 を 求 め る 普 遍 的 な 意 志 の 決 定 の あ り 方 に つ い て

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- 11 - 論 じ て い る( Kant= 2000:21)。こ の 例 の 患 者 の 意 志 の 決 定 の あ り 方 は 、福 祉 サ ー ビ ス 利 用 者 が 日 々 の 生 活 の 中 で 実 践 す る 行 為 ( 動 作 ) に 関 す る 意 志 の 決 定 の あ り 方 の 原 理 の 具 体 的 例 と し て 考 え る こ と が で き る 。 倫 理 学 的 に 行 為 の 主 体 で あ る 「 人 格 」 の 概 念 を 明 確 に 確 立 し た の は 、 カ ン ト で あ る 。 カ ン ト の 実 践 哲 学 の 論 理 の 中 心 課 題 で あ る 人 間 が 行 為 を 行 う 場 合 に 、 行 為 の 主 体 で あ る 本 人 の 意 志 が 自 由 で あ る こ と を 前 提 に 、 意 志 が 自 分 で 選 択 し 行 為 を 行 う と い う 意 志 の あ り 方 は 、 自 己 実 現 を 構 成 す る 意 志 の 自 律 の 基 本 概 念 の 重 要 な 要 因 に な る と 筆 者 は 考 え て い る 。

第 2項 カント哲 学 より取り上 げた概 念

カ ン ト の 実 践 哲 学 ( 倫 理 学 ) の 本 質 が 集 約 的 に 論 じ ら れ て い る 『 人 倫 の 形 而 上 学 の 基 礎 づ け 』及 び『 実 践 理 性 批 判 』、そ し て『 人 倫 の 形 而 上 学 』の こ れ ら の 著 作 の 中 で カ ン ト が 論 述 し て い る 、 行 為 へ の 意 志 の 働 き に 関 す る 理 念 は 、 自 己 実 現 の 重 要 な 基 本 理 念 で あ る と 考 え ら れ る 。 カ ン ト の 倫 理 学 を 理 解 す る に あ た り 、 小 倉 (1989)の『倫 理学 概 論』及び 山崎( 1986)の『 倫理 学基本 』に記 述され てい る 論 述 は 非 常 に 有 用 で あ っ た 。 こ れ ら の 論 述 を 参 考 と し 、 主 に 、 個 人 の 主 体 的 行 為 と 人 間 的 成 長 を 基 本 に 据 え て 、 筆 者 の 観 点 か ら 、 社 会 福 祉 サ ー ビ ス 支 援 に 関 す る 理 念 に 関 連 性 が あ る と 思 わ れ る カ ン ト 哲 学 の 7 つ の 概 念 を 取 り 上 げ る 。 そ れ ら の 7 つ の 概 念 は 、主 に カ ン ト 哲 学 の 意 志 の 自 律 と 自 由 、選 択 意 志 、幸 福 、 人 格 の 本 質 な ど 人 間 の 行 為 に 関 す る 思 考 の 基 本 部 分 で あ る 。 カ ン ト 哲 学 の 人 間 に 対 す る 考 え の 原 則 は 、 人 間 の 存 在 は 目 的 自 体 と し て 実 在 し 、 人 間 を 手 段 と し て 、 ま た 道 具 と し て 、別 の 目 的 に 利 用 し て は な ら な い と い う 論 理 で あ る と い え る( Kant = 2000: 64)。 第 1 の 概 念 に 、「 意 志 は 、 す べ て の 行 為 に お い て 自 分 自 身 が 1 個 の 法 則 で あ る 」 ( Kant= 2000: 91) と い う 理 念 を 取 り 上 げ る 。 つ ま り 、 意 志 は 他 律 ( 他 者 へ の 依 存 や 強 制 ) に よ る の で は な く 自 律 を 前 提 と し て い る 。 つ ま り 、 わ れ わ れ が 行 為 を 行 う 場 合 に 、 行 為 の 主 体 の 意 志 が 自 由 で あ る こ と は 、 行 為 を 行 う 主 体 み ず か ら が

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- 12 - 1 つ の 法 則 と な り 、 主 体 が 行 う 行 為 を 決 定 す る 基 準 に な る と い う こ と で あ る 。 第 2 の 概 念 に 、「 意 志 の 自 己 決 定 の 客 観 的 根 拠 と し て 、意 志 に 用 い ら れ る の が 目 的 で あ る 」( Kant= 2000:63)と 述 べ ら れ て い る 理 念 を 取 り 上 げ る 。人 間 は 自 分 の 意 志 で 、 行 う 行 為 を 決 定 す る こ と が 重 要 で あ る 。 そ の 根 拠 は 、 そ の 行 為 が 自 分 自 身 に 向 け ら れ る 場 合 に お い て も 、 他 者 に 向 け ら れ る 場 合 に お い て も 、 意 志 が 行 為 を 行 う 目 的 を 設 定 す る こ と 自 体 が 、 行 為 を 行 う こ と と 同 時 に 目 的 で あ る と い う こ と を 意 味 し て い る 。 つ ま り 、 意 志 が 主 役 と な り 行 為 の 結 果 で あ る 、 何 の た め に と い う 目 的 を 設 定 す る と い う 、 こ の 意 思 決 定 の 過 程 自 体 が 行 為 を 行 う こ と の 目 的 で あ る 。 第 3 の 概 念 に 、 カ ン ト が 、 人 格 に つ い て 「 人 格 は 客 体 的 な 目 的 で あ り 、 現 に 存 在 す る こ と 自 体 が 目 的 で あ る 」( Kant= 2000:64)と 述 べ て い る 理 念 と 、カ ン ト が 自 由 に つ い て 「 選 択 意 志 の 自 由 と は 、 感 性 的 衝 動 に よ る 規 定 か ら の 独 立 と い う こ と 」( Kant= 2002:26)で あ る と 述 べ て い る 理 念 を 取 り 上 げ る 。こ の こ と に つ い て 山 崎( 1986:190)は 、カ ン ト の い う 人 格 と 選 択 意 志 の 自 由 に つ い て 、人 間 の 行 為 へ の「 選 択 意 志 が 自 由 で あ る こ と は 、人 格 の 本 質 で あ る 」と 簡 潔 に 説 明 し て い る 。 つ ま り 、 人 間 の 人 格 は 手 段 と さ れ る も の で な く 、 人 間 の 存 在 自 体 が 目 的 で あ り 、 す べ て の 条 件 づ け ら れ た 傾 向 性 や 感 性 か ら 人 格 は 自 由 で 独 立 し た 絶 対 的 価 値 を 持 つ 存 在 自 体 で あ る と い う こ と で あ る 。 第 4 の 概 念 に 、 カ ン ト が 自 律 に つ い て 「 純 粋 実 践 理 性 の 自 律 は す な わ ち 自 由 に 他 な ら な い 」( Kant= 2000: 170) と 述 べ て い る 理 念 を 取 り 上 げ る 。 こ の こ と は 、 意 志 の 「 自 律 こ そ が 真 の 自 由 で あ る 」( カ ン ト 研 究 会 1997: 65) と い う 概 念 と 同 一 の 解 釈 で あ る と い え る 。 意 志 が 意 志 以 外 の ど こ に も 法 則 を 求 め る こ と が な い こ と 、 即 ち 自 律 と は 別 の 外 的 原 因 か ら 独 立 し て い る と い う こ と 、 つ ま り 自 由 で あ る と い う こ と に 他 な ら な い の で あ る ( Kant= 2000: 90)。 第 5 の 概 念 に 、「 人 間 は 物 件 で は な く 、単 に 手 段 と し て の み 必 要 と さ れ る の で な く 、 人 間 は 、 自 分 の す べ て の 行 為 の 実 践 に 際 し て 、 い つ で も そ れ 自 身 が 目 的 自 体 だ と 見 な さ れ な け れ ば な ら な い 」( Kant= 2000:66)と 述 べ ら れ て い る 理 念 を 取 り 上 げ る 。 こ こ で い う 物 件 と は 、 存 在 し て い る こ と が 本 人 の 意 志 で は な く 、 ま た 本 性 に 基 づ く 目 的 と し て で は な く 、 手 段 と し て 相 対 的 な 価 値 を 持 つ に す ぎ な い 、 理 性 を 待 た な い 存 在 者 を 物 件 と 呼 ん で い る ( Kant= 2000: 64)。

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- 13 - つ ま り 人 間 は 、 手 段 と し て 、 た と え ば 単 に 労 働 と し て 利 用 価 値 が あ る 物 件 と し て 存 在 す る の で は な く 、 行 為 を 行 う 存 在 者 と し て 、 存 在 し て い る こ と 自 体 が 目 的 で あ る 存 在 で あ る 。 こ の こ と は 、 高 齢 者 や 障 害 者 が 労 働 力 と し て だ け で は な く 、 存 在 し て い る こ と 自 体 が 目 的 で あ る と い う こ と に つ な が る と 考 え ら れ る 。 第 6 の 概 念 に 、 カ ン ト が 「 幸 福 、 す な わ ち 、 自 分 の 状 態 に つ い て そ の 永 続 を 確 信 す る か ぎ り で 満 足 す る こ と を 希 求 す る と い う こ と は 、 人 間 の 本 性 に と っ て 避 け え ぬ こ と で あ る ・・・・・・幸 福 は 、 同 時 に 義 務 と な る 目 的 で は な い 」( Kant= 2002: 252)と 述 べ て い る 理 念 を 取 り 上 げ る 。こ の こ と は 次 の よ う に 解 釈 で き る 。自 分 の 現 在 の 生 活 の 状 態 が 、 い つ ま で も 続 く こ と は 確 実 で あ る と い う こ と に 満 足 し て い る こ と を 幸 福 と 呼 び 、 幸 福 を 求 め る こ と は 人 間 の 本 性 で あ る 。 し か し 、 自 分 の 幸 福 、 つ ま り 現 在 の 生 活 の 状 態 が 変 化 せ ず 永 遠 に 続 く こ と を 求 め る こ と は 義 務 で は な く 、 ま た そ の こ と を 生 き る 目 的 に し て は な ら な い と 筆 者 は 解 釈 し て い る 。 第 7 の 最 後 の 概 念 と し て 、 カ ン ト の 幸 福 に つ い て の 「 私 の 目 的 と し て 実 現 に 努 め る こ と が 義 務 で あ る よ う な 幸 福 が 問 題 と な る な ら ば 、 そ れ は ほ か の ひ と た ち の 幸 福 で な け れ ば な ら な い 」と 、「 私 の ほ か の ひ と た ち の 許 さ れ た 目 的 を 自 分 の 目 的 と す る こ と で あ る 」( Kant= 2002: 253) の 2 つ の 理 念 を を 取 り 上 げ る 。 他 者 の 幸 福 の 追 求 や 達 成 の た め 、 つ ま り そ の 人 の 現 状 の 生 活 状 態 が 永 遠 に 続 い て 欲 し い と い う こ と の 達 成 の た め に 手 助 け を す る こ と は 、 人 間 の 義 務 で あ り 生 き る こ と の 目 的 と し て よ い 、 と い う 意 味 で あ る 。 小 倉( 1989:44)は 、カ ン ト が 論 じ る 幸 福 に つ い て 、カ ン ト の『 判 断 力 批 判 』( Kant = 2002)の 中 で 、「 幸 福 を 単 に 個 人 的 な こ と で な く 、世 界 福 祉 の こ と と 考 え て 」い る と 論 じ て い る こ と を あ げ て い る 。 つ ま り 、 自 己 実 現 は 、 単 に 個 人 の こ と に 終 始 す る の で は な く 、 社 会 的 な 福 祉 に 貢 献 す る こ と に 関 与 す る べ き で あ る と い う 考 え 方 は 妥 当 で あ る と い え る 。 7 つの カン ト哲 学か ら 抽出し た「 人間が 行為 を行う 場合 は、行 為の 目的を 他者 か ら 独 立 し て 主 体 的 に 自 由 に 自 己 決 定 し 、 自 律 し て い る 」 と い う 理 念 は 重 要 で あ る 。「 人 間 を 手 段 と し て み な す の で は な く 、目 的 自 体 と し て み な し 、自 分 の 幸 福 で は な く 、 他 者 の 幸 福 に 参 与 す る こ と を 自 分 の 人 生 の 目 的 と し て よ い 」 と い う カ ン ト 哲 学 の 理 念 は 、 自 己 実 現 の 概 念 の 操 作 的 定 義 を 担 う 理 念 と し て 参 考 に な り う る と 考 え る 。

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第2節 ニーチェの実存主義哲学

第 1 項 ニーチェの実 存 主 義 哲 学と自 己 実 現の概 念

ニ ー チ ェ は 生 の 哲 学 者 と し て 、 実 存 主 義 哲 学 を 確 立 た 。 特 に 『 権 力 へ の 意 志 』 の 著 作 の 中 で 、 ニ ー チ ェ 哲 学 の 生 き る こ と の 本 質 に 関 し て が 論 及 さ れ て い る ( 木 田 2002)。 ニ ー チ ェ は 、「 何 が 存 在 を 存 在 た ら し め て い る か 」 そ し て 生 き る た め に は 「 何 を 生 成 し な け れ ば な ら な い か 」に つ い て 論 じ 、存 在 に 値 す る 者 は「 権 力 へ の 意 志 」 と し て 把 握 さ れ る と 論 じ て い る 。 ま た ニ ー チ ェ は 、「 意 志 が 意 欲 す る こ と に よ り 、 < 生 > き る こ と 」 を < 権 力 へ の 意 志 > と い う 独 特 の こ と ば を 用 い て 表 現 し て い る ( Nietzsche= 1968)。 こ の 「 意 志 が 意 欲 す る こ と に よ り < 生 > き る 」 こ と は 、 従 来 の 自 分 の 能 力 や 人 間 へ の 世 界 観 か ら 脱 皮 し 、 よ り 大 き な 自 分 の 能 力 や 価 値 観 へ と 高 め 、 自 分 が 持 っ て い な い 能 力 や 人 間 観 、 価 値 観 を 持 っ た 新 し い 自 分 を 創 造 す る こ と を 目 指 し 意 欲 的 に 生 き る と い う こ と で あ る 。 こ れ は 、 自 己 実 現 の 構 成 概 念 の 基 本 原 理 の 1 つ と し て 重 要 で あ る と い え る 。 < 生 > き る こ と と 本 人 の < 意 志 > に 関 す る 思 考 を 、 ニ ー チ ェ は シ ョ ウ ペ ン ハ ウ ア ー の 主 著 『 意 志 と 表 象 と し て の 世 界 』 か ら 多 く を 学 び 、 シ ョ ウ ペ ン ハ ウ ア ー が 意 志 と 呼 ん で い る < 生 > と 明 確 に 区 別 す る た め 、 ニ ー チ ェ は 生 き る こ と を 「 権 力 へ の 意 志 」 と い う 独 特 の 表 現 を 用 い た の で あ る ( 木 田 2002)。 ま た ハ イ デ ッ ガ ー は 、 ニ ー チ ェ 哲 学 の 影 響 を 受 け 、 ハ イ デ ッ ガ ー の 主 著 『 存 在 と 時 間 』 の 創 作 に そ の 影 響 力 を 反 映 し 、 ニ ー チ ェ 哲 学 に 関 す る 論 評 を 著 作 『 ニ ー チ ェ Ⅰ 』 と し て 著 し て い る(Heidegger=2007)(木田 2002: 22)。 <生 >き る こ と に 関 す る 思 考 は 、 シ ョ ウ ペ ン ハ ウ ア ー か ら ニ ー チ ェ へ 、 ニ ー チ ェ か ら ハ イ デ ッ ガ ー へ と 時 代 を 超 え て 影 響 力 を 継 承 し て い る の で あ る 。 ニ ー チ ェ は 、 <生 >き る こ と を 「 理 性 を 持 ち 、 一 定 の 方 向 を 目 指 し 生 成 し て い く 」 も の と ダ ー ウ ィ ン の 進 化 論 の 考 え を 取 り 入 れ て 説 明 し て い る 。 ニ ー チ ェ 特 有 の <生 >を 定 義 し 、 単 な る 自 己 保 存 の 生 と は 異 な り 、 <生 >き る こ と は 生 成 し て い く も の と 論 じ て い る の で あ る ( 木 田 2002:245)。 ま た ニ ー チ ェ は 、 近 代 科 学 で あ る 力 学 や 物 理 学 に よ り 作 ら れ た 合 理 性 が 、 人 間 社 会 に 及 ぼ し た 弊 害 に つ い て 述 べ て い る 。 近 代 科 学 は 人 間 を 虚 無 に し 、 人 々 を ニ

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- 15 - ヒ リ ズ ム へ と 陥 れ る 危 険 性 を 孕 ん で い る と 論 及 し て い る 。 ニ ヒ リ ズ ム ( 虚 無 ) に 陥 っ た 人 間 が ニ ヒ リ ズ ム か ら 脱 却 す る こ と の 重 要 性 を 説 き 、 自 己 が 現 存 し て い る こ と 自 体 の 絶 対 的 価 値 の 重 み を 述 べ 、 真 に 自 己 が <生 >き る こ と の 重 要 性 を 論 じ て い る ( 木 田 2002:255)。 つ ま り 、 ニ ー チ ェ は 近 代 科 学 に よ り 力 学 や 物 理 学 が 生 み 出 さ れ 、 人 間 が 生 き て い る こ と よ り も 合 理 性 が 重 要 で あ り 大 切 で あ る と し て き た こ と は 誤 り で あ る と 述 べ て い る 。 科 学 技 術 よ り も 人 間 が 現 に 生 き て い る こ と を 優 先 し 、 そ こ に 絶 対 的 価 値 が あ る こ と 、つ ま り 、真 に 自 分 が 自 分 ら し く 積 極 的 に 生 き る こ と が 重 要 で あ り 、 そ の こ と に 価 値 が あ る と 論 じ て い る 。 筆 者 が 勤 務 し て い た 特 別 養 護 老 人 ホ ー ム に 、 9 0 歳 近 い 小 柄 な 女 性 で 、 ベ ッ ド 周 り の 歩 行 し か で き ず 、 体 力 も な く 、 趣 味 も な く 、 訪 れ る 人 も な く 、 毎 日 ベ ッ ド の 上 に 正 座 を し て 静 か に 時 を 過 ご す 以 外 に 具 体 的 に 何 も 活 動 を し て い な い 長 期 入 所 者 の 方 が い た 。 尐 し の 食 事 を 食 べ る だ け で 、 老 人 ホ ー ム で 世 話 を 受 け て た だ 生 き て い る こ と だ け の 生 活 か ら 、 生 存 の 意 味 を 失 い 、 社 会 か ら 必 要 と さ れ な く な っ た 自 分 へ の 虚 無 感 か ら 「 は や く 死 ん で し ま い た い 」 と 自 分 に 向 け て 度 々 話 す 自 己 否 定 の こ と ば を 聞 き 、 そ の た び に ニ ー チ ェ の 「 ニ ヒ リ ズ ム か ら の 脱 却 」 の 重 要 性 と 真 に 生 き る こ と へ の 支 援 の あ り 方 に つ い て 考 え て き た 。 社 会 福 祉 の 仕 事 に 従 事 し て 以 来 、 単 に サ ー ビ ス を 利 用 者 に 合 理 的 に 支 給 す る こ と だ け が 社 会 福 祉 の 目 的 で は な く 、 利 用 者 が 生 き て い る こ と の 存 在 の 大 切 さ を 実 感 し 、 施 設 の 閉 鎖 性 な ど の 影 響 か ら 、 自 己 存 在 を 否 定 す る 虚 無 感 に 陥 ら ず に 真 に 生 き る こ と に 希 望 を 持 ち 、 生 き 生 き と し た 日 々 の 生 活 を 送 る こ と が で き る 生 活 の 支 援 を 行 う こ と が 社 会 福 祉 の 目 的 で あ る と 思 い 続 け て き た 。 そ の 1 つ の 方 法 が 高 齢 者 へ の 自 己 実 現 に 向 け た 支 援 で あ る 。 ニ ー チ ェ の い う 「 生 存 は 生 成 す る こ と と し て 把 握 さ れ る 」( Nietzsche= 1968: 187) と い う 実 存 主 義 哲 学 の 思 考 は 自 己 実 現 の 基 本 原 理 と し て 重 要 だ と い え る 。

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第 2項 ニーチェの実 存 主 義 哲 学より取 り上 げた概 念

ニ ー チ ェ の 実 存 主 義 哲 学 の 本 質 は 『 権 力 へ の 意 志 』 上 ・ 下 の 著 作 の 中 に そ の 概 念 が 示 さ れ て い る 。 断 片 的 著 作 『 人 間 的 な 、 あ ま り に 人 間 的 な 』 を 含 め た ニ ー チ ェ の 3 著 作 に 示 さ れ た < 生 > き る こ と に 関 す る 意 志 と 「 ニ ヒ リ ズ ム か ら の 脱 却 」 ( Nietzsche= 1970)へ の 思 考 が 、高 齢 者 の 自 己 実 現 概 念 を 構 成 す る 要 因 と し て 有 用 で あ る と 筆 者 は 考 え て い る 。 ま た 、 ハ イ デ ッ ガ ー の 『 ニ ー チ ェ Ⅰ 』 の 著 作 に 示 さ れ た 「 権 力 へ の 意 志 」 に 関 す る 論 評 は 、 ニ ー チ ェ の 考 え 方 の 理 解 に 有 効 で あ る (Heidegger=2007)。特 にここ では、ニー チェ 哲学に 関す る特徴 的8 つの概 念を 取 り 上 げ る 。 以 下 に 、 筆 者 が 取 り 上 げ た 哲 学 の な 概 念 に つ い て 述 べ る 。 ま ず 第 1 の 概 念 に 、「 無 意 味 な も の が 永 遠 に 、こ れ が ニ ヒ リ ズ ム の 極 限 的 形 式 で あ る 」( Nietzsche= 1970: 62) と 述 べ て い る 理 念 を 取 り 上 げ る 。 こ の こ と は 、 文 明 社 会 は 物 理 学 な ど の 科 学 的 な 合 理 性 が 支 配 し 、 そ れ ま で の 価 値 あ る も の が そ の 価 値 を 失 い 、 結 果 と し て 人 々 は 生 き る 意 欲 を 失 い 、 人 間 性 が 否 定 さ れ 、 真 に 人 間 的 に 生 き る こ と の 価 値 を 見 失 い 、 生 き る こ と に 価 値 が 感 じ ら れ ず 、 無 意 味 と な っ た 生 が 、今 後 も 永 遠 に 続 く と い う こ と を い っ て い る の で あ る 。そ し て ニ ー チ ェ は 、 こ の ニ ヒ リ ズ ム か ら 一 人 ひ と り の 人 間 が 脱 却 す る こ と の 重 要 性 を 論 及 し て い る 。 第 2 の 概 念 に 、「 至 高 の 諸 価 値 が そ の 価 値 を 剥 奪 さ れ る と い う こ と 、目 標 が か け て い る 。『 何 の た め に ? 』へ の 答 え が 欠 け て い る 」( Nietzsche= 1970:22)と 述 べ て い る 理 念 を 取 り 上 げ る 。 こ の こ と は 、 文 明 社 会 は 科 学 に よ り こ れ ま で 続 い て き た 最 高 の 価 値 が そ の 価 値 を 失 い 、人 々 は『 何 の た め に ? 』生 き て い る の か と い う 、 生 き る 目 標 や 価 値 を 見 失 っ て い る 状 態 を 指 し て い る 。 第 3 の 概 念 に 、「 存 在 よ り も 非 存 在 の 方 が ま し で は な い か と い う 問 い は 、そ れ 自 身 す で に 、 一 つ の 衰 退 を 表 す る も の で あ る 」( Nietzsche= 1970: 46) と 述 べ て い る 理 念 と 、「 人 間 に 対 す る 無 力 が 生 存 に 対 す る こ の 上 な く 絶 望 的 な 嫌 悪 を 生 み 出 す 」( Nietzsche = 1970: 64) と 述 べ て い る 理 念 を 取 り 上 げ る 。 最 初 の ニ ー チ ェ の こ と ば は 、「 自 分 が 今 こ こ に 現 実 に 存 在 し て い る よ り も む し ろ い な い 方 が ま し で あ る 、 又 は 死 ん で い な く な っ た 方 が ま し で あ る 」 と 、 そ の よ う に 思 考 を す る こ と 自 体 が 、 す で に 人 間 が 衰 退 し て い る こ と を 示 し て い る と い う 意 味 で あ る 。ま た 、も う 1 つ の こ と ば は 、「 自 分 の 人 間 と し て の 存 在 を 無 力 に 感 じ

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- 17 - る た め に 、 生 き て い く こ と が 絶 望 的 で 嫌 な 気 持 ち に な る 」 と い う 意 味 で あ る 。 第 4 の 概 念 に 、「 高 級 な 人 間 か 低 級 な 人 間 か を 区 別 す る 基 準 は 、恐 怖 を い だ か ず 不 幸 に 挑 戦 す る 点 で あ る 」( Nietzsche= 1970:195)と 述 べ て い る 理 念 を 取 り 上 げ る 。こ の こ と は 、「 人 間 が 高 級 で あ る か 、低 級 で あ る か を 区 別 す る 根 拠 は 、そ の 人 間 が 不 幸 に 陥 っ て い る 場 合 に 、 恐 れ を 抱 か ず 、 不 幸 を 乗 り 越 え る た め に 挑 戦 し て い る か 、 し て い な い か に あ る 」 と い う 意 味 で あ る 。 第 5 の 概 念 に 、 強 さ に つ い て 「 強 さ の 基 準 は 、 逆 の 価 値 評 価 の も と で 生 き る こ と が で き 、 そ れ を 永 遠 に 繰 り 返 し て 生 き る こ と を 意 欲 す る こ と 」( Nietzsche= 1970:404)で あ る と 述 べ て い る 理 念 を 取 り 上 げ る 。こ の こ と は「 人 間 の 強 さ を 決 め る 判 断 基 準 は 、 自 分 が 大 切 に 保 っ て い る 価 値 基 準 に 相 反 す る 別 の 価 値 基 準 の も と で 、い つ ま で も 自 分 の 価 値 基 準 を 保 ち 、生 き 続 け ら れ る こ と で あ る 。」と い う 意 味 で あ る 。つ ま り 、「 効 率 性 や 経 済 力 が 価 値 評 価 の 基 準 で あ る 文 明 社 会 の 中 で 、人 間 の 意 志 や 意 欲 を 価 値 基 準 と し て 保 ち 、 生 き 続 け ら れ る こ と が 強 い 人 間 の 基 準 で あ る 」 と い う 意 味 で あ る 。 第 6 の 概 念 に 、 ニ ー チ ェ が 「 意 志 は そ れ 自 体 力 で あ る 。 そ し て 力 と は 、 そ れ 自 体 に お い て 絶 え る こ と な き 意 欲 で あ る 。 意 志 は 力 で あ り 、 力 は 意 志 で あ る 。」 (Heidegger=2007:57)と述 べて いる理 念を 取り上 げる 。 つ ま り 、 意 志 と は 意 欲 す る こ と に お い て は じ め て 意 志 と な り 、 意 欲 す る こ と に お い て エ ネ ル ギ ー を 生 み 出 し 、 意 欲 し 続 け る こ と に よ り 意 欲 の 連 続 が 力 と な り 、 そ の 結 果 、 意 志 は 力 と な る と い う 意 味 で あ る 。 第 7 の 概 念 に 、 ニ ー チ ェ の 「 願 望 は ま だ 意 欲 で は な い 。 ひ た す ら 純 粋 に 願 望 す る 人 は 、 ま さ に 意 欲 し て い な い の で 、 願 望 さ れ た こ と が 彼 の 干 渉 な し に 生 起 す る こ と を 望 ん で い る・・・意 欲 と は 、自 ら の 命 令 下 に 置 く こ と 、自 己 命 令 へ の 決 断 、 そ れ 自 体 す で に 実 行 で あ る よ う な 決 断 で あ る 。」(Heidegger=2007:54)と 述べ て い る 理 念 を 取 り 上 げ る 。 こ の こ と は 、次 の よ う に 解 釈 で き る 。「 願 望 と 意 欲 は 別 で あ る 。願 望 は 、単 な る 望 み で あ り 、 自 ら の 努 力 に よ り 願 望 を 実 現 す る た め の 行 動 に 踏 み 出 し て い な い 。 自 分 の 行 動 以 外 に 周 り の 他 の 条 件 が 好 転 す る こ と に よ り 願 望 が 実 現 す る こ と を 願 っ て い る に 過 ぎ な い 。し か し 、意 欲 す る こ と は 自 分 自 身 に 行 動 す る こ と を 命 令 し 、 行 動 を 起 こ す こ と を 決 断 し 、 現 在 の 生 活 を 変 更 す る 方 向 へ と 踏 み 出 す こ と か ら 、 意 欲 す る こ と は す で に そ れ 自 体 実 行 で あ る 」 と い う こ と で あ る 。

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- 18 - 第 8 の 概 念 に 、「 上 昇 は 価 値 の そ れ ぞ れ の 成 長 を 意 味 し 、こ の 段 階 に お け る 下 降 は 価 値 の 低 減 を 意 味 す る 」「 目 標 が 意 識 の 増 大 で は な く 、 権 力 の 上 昇 で あ る 」 (Nietzsche= 1968: 202) と 述 べ て い る 理 念 を 取 り 上 げ る ( 木 田 2002: 243)。 こ の こ と は 、「 生 き る こ と は 、 権 力 ( 生 ) の 上 昇 で あ り 、 意 欲 を 高 め る こ と で あ る 。 自 分 が よ り 大 き く 、 よ り 強 く な ろ う と 成 長 を 意 欲 す る 意 志 だ け が 価 値 を 高 め る 」 と い う 意 味 で あ る 。現 状 維 持 に 甘 ん じ る な ら 、そ れ は す で に 生 で は な い 。つ ま り 、 「 生 」 即 ち 、 ニ ー チ ェ の い う 「 権 力 へ の 意 志 」 と は 、 成 長 す る こ と な の で あ る 。 第 9 の 最 後 の 概 念 に 、「 何 か に 従 属 し て い る こ と を 感 じ な い 間 は 、わ れ わ れ は 自 分 が 独 立 し て い る と 思 う の は 、誤 っ て い る 」( Nietzsche= 1997:228)と い う 理 念 を 取 り 上 げ る 。こ の こ と は 、「 あ る 従 属 関 係 に お い て 、長 い 間 の 慣 れ か ら 、自 分 が 独 立 性 を 失 っ て い る こ と に 気 づ い て い な い に も 関 わ ら ず 、 自 分 は 自 由 だ と 勘 違 い し て い る こ と が 多 い 」 と い う 意 味 で あ る 。 こ れ ら の ニ ー チ ェ の 9 つ の 概 念 か ら 抽 出 し た 「 物 理 学 な ど の 科 学 的 合 理 性 が 支 配 す る 現 代 社 会 で は 、 人 間 性 が 否 定 さ れ 、 自 己 の 存 在 の 価 値 を 見 失 っ た 人 間 は 生 き る 目 標 を 失 い 、 自 分 が い な い 方 が ま し で あ る と 自 己 の 存 在 を 否 定 す る 。 こ の 自 己 否 定 の こ と ば は 人 間 の 衰 退 を 意 味 し て い る 。 生 存 す る と は 生 き る こ と を 意 欲 す る こ と で あ り 、 真 に < 生 > き る こ と と は 意 欲 的 に 自 己 を 成 長 さ せ 高 め る こ と を 求 め 続 け る こ と で あ る 」 と い う ニ ー チ ェ の 実 存 主 義 哲 学 の 理 念 は 、 高 齢 者 や 障 害 者 が 自 己 の 生 存 に 価 値 が あ る も の と 自 覚 し 、 自 己 実 現 に 向 け て 意 欲 的 に 生 き る こ と の 意 義 と 関 連 が あ る と 考 え ら れ る 。 ま た 、 自 己 実 現 尺 度 開 発 の 質 問 項 目 の 作 成 に 参 考 に な る と 思 わ れ る 。

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第3節 マスローの心理学

第 1項 マスローの心 理 学 と自 己 実 現 概 念

マ ス ロ ー は 、 自 己 実 現 に 関 し て 、 最 初 に 「 自 己 実 現 」 の こ と ば を 使 用 し た ゴ ー ル ド シ ュ タ イ ン の 影 響 を 受 け て い る 。マ ス ロ ー の 心 理 学 の 特 徴 は 、人 間 を 消 極 的 、 病 的 側 面 か ら 捉 え る の で は な く 、 健 康 で 正 常 な 心 理 学 的 内 面 生 活 を 科 学 的 に 、 裏 づ け に 基 づ い た 研 究 に よ り 捉 え て い る こ と で あ る 。 そ の 代 表 的 研 究 が 欲 求 理 論 と 自 己 実 現 で あ る 。 マ ス ロ ー は 、 心 理 学 の 側 面 か ら 、 自 己 実 現 に つ い て 論 理 的 な デ ー タ に 基 礎 を 置 い て 研 究 し た 唯 一 の 心 理 学 者 で あ る 。 マ ス ロ ー は 、 自 己 実 現 に 到 達 し て い る と 思 わ れ る 、 人 生 の 大 半 を 終 え た 尊 敬 で き る 20~30 人の 被験 者に質 問を 行って いる 。 欲求 が欠 乏して いる 状態か ら人 間 の 行 動 を 分 析 し 、 そ こ か ら 自 己 実 現 の 性 格 や そ の 特 徴 を 探 索 し 、 自 己 実 現 の 操 作 的 定 義 を 行 っ て い る (Maslow =1991:52)。つ ま り、マ ス ロ ー は、生 理 的 欲 求、安 全 の 欲 求 、 所 属 と 愛 の 欲 求 、 承 認 の 欲 求 、 自 己 実 現 の 欲 求 の 階 層 的 欲 求 説 を 説 い て い る 。つ ま り 、人 間 は 食 欲 や 睡 眠 等 の 低 次 欲 求( 生 理 的 欲 求 )が 満 た さ れ た 後 に 、 そ の 上 位 に あ る 精 神 的 な 高 次 欲 求 ( 人 格 的 欲 求 ) の 充 足 に 向 か っ て 成 長 す る と い う 理 論 を 説 い て い る 。 そ し て 、高 次 欲 求 の 上 位 に 自 己 実 現(Self-actualization)の欲 求を 位置づ けて い る 。 マ ス ロ ー は 、 さ ら に 階 層 的 欲 求 説 の 自 己 実 現 の 上 位 に 、 い わ ば 祈 り や 瞑 想 の よ う な 日 常 性 か ら 離 脱 し た 精 神 的 な 世 界 を 体 験 す る 、 超 越 経 験 、 至 高 経 験 ( self-transcendence) を 位 置 づ け 、 そ こ に 到 達 し た 人 間 を 「 完 全 な る 人 間 」 と 名 づ け て い る (Maslow =1987:444)。そ こ に は「 日 常 生 活 を 維 持 す る 」と い う 現 実 生 活 の 観 点 を 中 心 に 据 え る 社 会 福 祉 学 の 範 疇 を 超 え る 心 理 学 的 な 特 殊 な 一 面 が 感 じ ら れ る 。 一 方 、 欲 求 説 の 中 に は 、 社 会 福 祉 学 に 直 接 的 に 関 連 す る 普 遍 的 な 考 え 方 も 述 べ ら れ て い る (Maslow =1964:121-22 )。 例 え ば 、 食 欲 や 睡 眠 の よ う な 生 活 に 直 結 し て い る 基 本 的 欲 求 は 低 次 欲 求 で あ る が 、他 の 欲 求 に 先 行 し て 充 足 す る 必 要 が あ る 。 生 物 と し て の 人 間 が 生 き る た め に 必 要 な 最 低 限 度 の 生 活 は 、 生 活 保 護 制 度 と し て 優 先 し 充 足 さ れ な け れ ば な ら な い 。 マ ス ロ ー の 思 想 は オ リ ジ ナ ル で は な く 、 カ ン ト 哲 学 や ニ ー チ ェ の 実 存 主 義 哲 学

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- 20 - の 思 想 の 影 響 を 受 け て い る (Maslow =1964:26-36)。ま た 、マ ス ロ ー は ロ ジ ャ ー ス や 彼 の 門 下 生 た ち に 自 分 の 欲 求 理 論 の 影 響 力 を 与 え て い る (Maslow =1964: 149)。

第 2項 マスローの心 理 学 より取り上げた概 念

マ ス ロ ー の 著 作 か ら 本 論 文 に 引 用 し た 諸 概 念 に つ い て 説 明 す る 。 マ ス ロ ー の 心 理 学 の 本 質 が 集 約 的 に 論 じ ら れ て い る『 人 間 性 の 最 高 価 値 』及 び『 完 全 な る 人 間 』 そ し て 『 人 間 性 の 心 理 学 』 の 3 著 作 の 中 で マ ス ロ ー が 述 べ て い る 欲 求 説 と 自 己 実 現 に 関 す る 理 論 を 現 代 に 普 遍 化 で き る 理 念 は 、 自 己 実 現 の 概 念 の 基 本 原 理 と し て 利 用 で き る と 考 え て い る 。 人 間 に 対 す る マ ス ロ ー の 考 え 方 の 根 本 的 な 特 徴 は 、 人 間 そ の も の へ の 受 容 的 態 度 で あ る 。 人 間 は 生 来 善 な る も の と し て 生 ま れ 、「 存 在 」 価 値 「 B 」1 )を 追 求 す る 欲 求 を も つ も の と 捉 え て い る (Maslow =1991)。 本 項 で は 、 主 に 、 マ ス ロ ー が 論 じ て い る 欲 求 説 及 び 自 己 実 現 に 関 す る 論 述 と 社 会 福 祉 サ ー ビ ス の 支 援 と の 関 連 性 に つ い て 、 筆 者 の 考 え 方 を 述 べ る 。 こ こ で は 、 特 に 6 つ の 概 念 を 取 り 上 げ る 。 第 1 の 概 念 に 「 自 己 実 現 と は 、 完 全 に 熱 中 し 、 全 面 的 に 没 頭 し 、 無 欲 に な っ て 十 分 に 生 き い き と 経 験 す る こ と を 意 味 す る 。 こ の 経 験 の 刹 那 に 人 間 は 、 ま っ た く 完 全 に 人 間 に な る の で あ る 。 こ の 瞬 間 に お い て 自 己 が 自 ら 実 現 し つ つ あ る 時 な の で あ る 」(Maslow =1991:56)と「 彼 ら に お い て は 労 働 と 喜 び の 二 分 法 は 消 滅 す る 」 (Maslow =1991: 54 )の 2 つ の 理 念 を 取 り 上 げ る 。 こ の こ と は 、 あ る 仕 事 や 芸 術 作 品 の 製 作 な ど に 、 す べ て の 他 の こ と を 忘 れ 熱 中 し 損 得 も 意 識 せ ず 、 目 を 輝 か せ て 打 ち 込 む 状 態 を 指 し て い る 。 そ の 没 頭 し て い る 瞬 間 に 人 間 は 、 完 全 に そ の 人 ら し い 本 来 の 人 間 に な る の で あ る 。 そ し て そ の 時 が 、 自 己 が 実 現 し つ つ あ る 時 な の で あ る 。 そ の 人 間 に と っ て 、 目 標 の 仕 事 に 従 事 す る 労 働 の 負 担 と そ こ か ら 得 ら れ る 喜 び は 一 体 と な り 、 労 働 と 喜 び を 区 別 し 分 離 す る こ と は で き な い の で あ る 。 第 2 の 概 念 に 、 マ ス ロ ー は あ る 目 標 に つ い て 「 自 己 実 現 し つ つ あ る 人 び と は 一 人 の 例 外 も な く 、 体 外 に あ る 目 標 、 す な わ ち 自 分 自 身 の 外 に あ る 何 か に 従 事 し て

表 4 - 8 - 9   信 頼 性 分 析 2 4 項 目   ( Q 6 5 ・ Q 7 9 選 定 )     R E L I A B I L I T Y   A N A L Y S I S   -   S C A L E   (A L P H A)  Statistics for       Mean   Variance    Std Dev        N of Variables        SCALE       57.8333   138.7550    11.7794
表 5 - 7- 4 A  信 頼 性 分 析   2 1 項 目
表 5 - 9 - 4   信 頼 性 分 析   1 7 項 目

参照

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