• 検索結果がありません。

ニューヨーク在住の日本人・日系人の エイジングに関する定量的調査の経年的比較

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "ニューヨーク在住の日本人・日系人の エイジングに関する定量的調査の経年的比較"

Copied!
13
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

ニューヨーク在住の日本人・日系人の

エイジングに関する定量的調査の経年的比較

金本(遠山)伊津子

1 はじめに:アメリカ多文化社会の高齢化の過程 移民の国・アメリカは,先進国の中でも珍しく,緩やかな高齢化の様相を呈している。 2020年における高齢化率(総人口に占める65歳以上の高齢者の割合)は16.6%で,数年ほど 前に高齢社会1)に突入した段階にある。他の先進国は 例えば,2020年における高齢化率 を比較すると,イギリスは18.7%,ドイツは21.7%,日本は28.4% で,すでに高齢社会, あるいは,超高齢社会に達している状況にある。アメリカが,この超高齢社会の段階に到達 するのは,約15年後の2035年頃と推定されている。(国立社会保障・人口問題 研 究 所, 2020 ; United Nations, 2019)(Figure 1)。

一方で,近年においては“Baby Boomer Age(1946年から1964年までに生まれたベビー

ブーム世代)”と言われる世代が高齢者になり,アメリカ社会全体の高齢化が加速している

ことが指摘されており(U.S. Census Bureau, 2020),加えて,高齢化は,エスニック・コミュ ニティごとにまだら現象のように起こっていることも明らかとなってきている。2004年にア メリカ合衆国国勢調査局が発表した “American Community” シリーズ(U.S. Census Bureau, 2007a, 2007b, 2007c, 2007d)においては,Table 1 が示すように,各エスニック・コミュニ ティが,それぞれ違った老いの過程を歩んでいることが明示されている。例えば,日本人・ 日系人のコミュニティの高齢化率は21.5%とアジア系のエスニック・グループの中でも抜き んでており,1970年代から急激に進んだ高齢化によって,アメリカ社会において唯一「超高 齢エスニック・コミュニティ」となっていたことがわかる(Kanamoto, 2000)。しかしなが ら,歴史的にアメリカにおいては,日系コミュニティ2)はモデル・マイノリティ(規範とな この論文は JSPS 科研費 JP15K03068 の助成を受けたものである。その他,公益財団法人 在宅医 療助成 勇美記念財団 2017年度(後期)一般公募「在宅医療研究への助成」「在ニューヨークの日 本人・日系人の高齢化に関する意識調査 訪問介護の在り方を探る 」(研究代表者:遠山(金 本)伊津子),および,桃山学院大学2019年度特別個人研究費(研究代表者:金本伊津子)からの助 成を受けたものである。 1)65歳以上の人口が全体に占める割合である高齢化率に基づいて,7%以上14%未満を「高齢化社会」, 14%以上21%未満を「高齢社会」,21%以上を「超高齢社会」と分類して高齢化の段階を示している。 2)本稿においては,日本人もしくは日系人で構成されるコミュニティを総称して「日系コミュニティ」 と呼ぶ。 キーワード:エイジング,老い,在外日本人,日系アメリカ人,ニューヨーク

(2)

































るマイノリティ)3)と認識されていたこともあり,日本人・日系人高齢者は,アジア人であ ること(人種差別)に高齢者であること(エイジズム)を加えた“doble jeopardy(二重の 危機)”の状況(Dowd & Bengston, 1975 ; Norman, 1985 ; Mutchler & Burr, 2011)にあった にもかかわらず,長らくその老いの実態を学術的に解明されることはなかった。 この日本人・日系人のエスニック・エルダリーの問題は,エスニック・コミュニティの問 題として認識され始める(金本,2003, 2014, 2015 ; Kanamoto, 2013)。西海岸の日系コミュ ニティは,戦前からの移民とその家族らがコミュニティの核となって歴史的に形成されてき 3)「敵性外国人」であった日本人・日系人に対する社会的評価は,日系二世が中心となった第442連隊 戦闘団が第2次世界大戦においてアメリカに忠誠を誓い,活躍を遂げたことにより一変したと分析さ れている。 Table 1 2004年におけるエスニック・グループ別の高齢化と年齢の中央値 白人系 黒人系 ヒスパニック系 パシフィック・ アイランダー 高齢化率(%) 14.5 8.1 5.1 5.4 中央値(歳) 40.1 31.2 26.9 29.2 アジア系 インド系 中国系 フィリピン系 日系 韓国系 ベトナム系 高齢化率(%) 4.5 9.9 9.4 21.5 7.6 6.7 中央値(歳) 31.7 37 37.8 44.1 35.0 33.5 42 35 28 21 14 7 0 日本 超高齢社会 ドイツ 高齢化率 (%) イギリス アメリカ 高齢社会 高齢化社会 1950 1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020 2025 2030 2035 2040 2045 2050 2055 2060 Figure 1 世界の高齢化率の推移

注)資料は,U.N. World Population Prospects : The 2019 Revision(中位推計による)。日本は,2015年まで は総務省「国勢調査」。2020年以降は国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年 推計)」の出生中位・死亡中位仮定による推計結果による。

(3)

ているが,終戦直後から一世の高齢化の問題を認知し,1970年代頃から具体的に取り組みを 始めた。ロサンゼルスの日系コミュニティは,戦後,アメリカ政府より返還された日系病院 をもとにして,ユダヤ系高齢者施設跡地に日系高齢者(主に一世)のための高齢者福祉施設 を設立している。同様の問題を抱えるサンフランシスコやシアトルの日系コミュニティは, この動きに追随したかたちでコミュニティの高齢者福祉を充実させてきている4)。現在に 至っては,西海岸に限らず,二世,三世や戦後に移住してきた新移民と言われる人々,ある いは戦後のインターマリッジによってアメリカに移住した人々が高齢期に達し,高齢化の問 題はコミュニティの長期にわたる憂いとなっている。 戦前の移民の系譜を踏む日本人・日系人人口が集中している西海岸の日系コミュニティに 対して,東海岸にあるニューヨークの日系コミュニティの高齢化の過程は違った状況にある。 もともと日本人・日系人の人口が少ないことから, 1940年の高齢者実数が68名(高齢化 率:2.9%)(U.S. Census Bureau, 1940),1970年は1.954名(高齢化率:9.8%)(U.S Census Bureau, 1970), 2000年 は2,430名(高 齢 化 率:5.3%)(U.S. Census Bureau, 2000) 高 齢 化率は抑えられている状況にあった。 しかしながら,高齢者数が確実に増加する状況を鑑み,日系コミュニティは,日本的サー ビスを提供できる日系高齢者福祉施設の設立を念頭において,2006年に「在米邦人・日系人 の『高齢者問題に対する意識調査』」(ニューヨーク日系人会,2006)を実施した。この調査 後の日系コミュニティにおける議論においては,設立資金のみならず運用資金や人材確保の 厳しさが強く認知されるようになり,最終的には日系高齢者福祉施設の建設は見送られるこ ととなる5)。その後,約12年後の経年調査として,ニューヨークおよびその近郊に散住する 日本人・日系人高齢者の状況を把握するため「在ニューヨークの日本人・日系人の高齢化に 関する意識調査 訪問介護の在り方を探る」(遠山(金本)・中島,2019)が実施された。 本論文においては,この2つの定量的調査の経年的比較を行い,ニューヨークおよびその近 郊に居住する日本人・日系人高齢者コミュニティの変遷とアメリカにおけるエスニック・マ イノリティのエイジングの通時的分析を行う6) 2 ニューヨークの日本人・日系人コミュニティの歴史 ニューヨークの日系コミュニティは,Inouye(2018)によると,日本からの外交官やビジ ネスマンなどを含むいわゆる日本(あるいは日本に帰国する予定)の “elites”(p. 33)を頂点 4)ロサンゼルスにおいては “Keiro” が,シアトルにおいても名前は同じであるが別団体である “Keiro” が,サンフランシスコにおいては “Kimochi” が,高齢者福祉施設や高齢者向けのサービスを提供して いる。シアトルの Keiro は,日系高齢者に対する文化的ケアの提供というコミュニティに対する使命 を完結したとして,2020年3月にて施設を閉所している。 5)しかしながら,日本人・日系人高齢者問題に対応するため,現地の福祉施設と連携を強め,日本人・ 日系人高齢者が集住できるようにコミュニティで工夫をしている。 6)筆者は,経年的比較を目的として,ニューヨーク日系人会から2006年度に実施した質的調査のデー タ提供を受けている。

(4)

に,一世の中小規模貿易商,一世労働者,そして学生・留学生という流動性の高い階層を内 包することから,西海岸の日本人町のような可視的なエスニック・コミュニティの核を現在 に至っても形成していない。これは,ニューヨーク州,ニュージャージー州,ペンシルベニ ア州,コネチカット州を含むニューヨーク・エリアには,1891年の段階で約600名の日本人 (ビジネスマン,官吏,学生を合わせて50名,家庭労働者が250名,その他300名)がいたが, アメリカ人家庭に居住しており,散住している者が多かったことに起因する(ニューヨーク 日系人会,2006)。 ニューヨークにおける日系コミュニティの発展は,1907年に始まる。ニューヨーク在住の 医師・高見豊彦氏が,病気で死亡する日本人のための日本人墓地(クイーンズ区のマウン ト・オリベット)の購入と日本人の相互扶助を呼びかけ,「日本人共済会」を創設し,1914 年には「紐育日本人会」に発展していく。日本総領事館の調査によると,1925年には,約4,000 人(ビジネスマン,官吏,学生が900人,家庭労働者が3,100人,その他は不明)に拡大する と共にキリスト教の教会を中心とした日系コミュニティの活動が生まれるが,1941年の日米 開戦で日系コミュニティは米国政府よって解体・凍結されてしまう(The Japanese American Association, 2007, 2008;ニューヨーク日系人会,2006;よみタイム,2018)。

終戦直後,「日本救護準備委員会」が設立され,1946年に「日本救援紐育委員会」が発足

する。「故国同胞を金品を以って救護す」のスローガンのもと,粉ミルク,粉卵,綿布など

の物資を,当時の価格で16万ドル相当分を5年間にわたって日本に送るという活動を続けた。 1950年には「ニューヨーク日系人会(The Japanese American Association of New York)」に

改名し,「祖国救援」から「紐育在住日系人・日本人の福祉向上と相互扶助」へとその活動 の目的が変更され現在に至る。 戦後のニューヨークの日系コミュニティは,戦前から居住している一世,ニューヨーク生 まれの二世,そして,戦後日本経済の発展とともに日本からやってきた新一世(ビジネスマ ンや留学生に加え,音楽家や芸術家,デザイナーなど)で構成されるようになる。この間に 日本人とアメリカ人のインターマリッジも増加し,日系コミュニティ内の多様性も豊かに なってきている。 3 エイジング調査の概要 2006年にニューヨーク日本国総領事館の委託により,ニューヨーク・エリアに居住する日 本人・日系人高齢者(高齢者予備軍も含む)の生活状態や老後に対する意識や準備状態を把 握するために,ニューヨーク日系人会の下部組織である邦人・日系人高齢者問題協議会が中 心となってアンケート調査を実施した。この調査の結果,日本的サービスを提供できる高齢 者福祉施設の設立に対するニーズが確認され設立計画が検討されるが,施設の維持費および 日本的サービスを担う人材確保が非常に難しいことから持続可能性が低いとして,最終的に は見送られることとなる7)。これ以降,アメリカ社会の高齢化が進み,高齢者に対するケア

(5)

の個別文化化8)が要望されるなか,日系コミュニティは,答えなき高齢化の問題に対してど のように対応するかを具体的に模索する必要が出てきたことから,その12年後の2017年に勇 美記念財団の研究助成を受けて,同様のアンケート調査を実施した。この2つの定量的調査 の概要は,次のとおりである。 2018年度の調査においては,人的資源の制限により対象者を絞らざるを得なかったが,郵 送に加えて手渡しによる配布と回収が実施されたことから,比較的高い回収率となっている。 なお,近年においては,老いの問題は高齢者当事者だけの問題だけでなく介護者としての問 題であるという認識も強まり,対称年齢を引き下げることとした。 なお,2018年度の調査票は,通時的比較検討を可能とするため,部分的に2006年度の調査 の質問を採択しており,また,選択肢を再分類できるような工夫を施した。以下の Table 3・ 4 の数字は,筆者によって再分類されたカテゴリーに基づいて再計算された数字も含まれて いる。 4 経年的比較分析 4.1 日本人・日系人高齢者コミュニティの変容 まず,経年的比較が可能な10項目を選定し日系コミュニティの経年的比較分析をした結果 7)シカゴやコロラドなど日本人・日系人人口が少ないコミュニティでは,日本人・日系人高齢者用の アパートを建築しても継続して入居者を確保し運営することが難しい状況にあり,施設の運用をあき らめている。 8)それぞれのエスニック・コミュニティ(例えば,中国系やヒスパニックなど)において,それぞれ の高齢者向けのサービス(例えば,言語や食事など)が活発となる。ニューヨークにおいては,日本 人・日系人高齢者問題に対応するため,現地の福祉施設と連携を強め,日本人・日系人高齢者が集住 して日本的サービスが受けられるような工夫をしている。 Table 2 2006年および2018年に実施したアンケート調査の概略 2006年 2018年 調査対象 ニューヨーク州,ニュージャージー州, コネチカット州,ペンシルベニア州に在住する 日本人・日系人で,50歳以上の者 (8,196名) ニューヨーク州,ニュージャージー州, コネチカット州,ペンシルベニア州に在住する 日本人・日系人で,40歳以上の者 (2,057名) 調査方法 配布:郵送 回収:郵送 配布:郵送,手渡し,メール 回収:郵送,手渡し,メール 調査期間 2006年1月22日~2月16日 2018年9月上旬~10月7日 使用言語 日本語・英語 日本語・英語 回収率 2,026名 30.3% 611名 29.7% (郵送,手渡しでの配布・回収:41.6% メールでの配布・回収:0.9%) その他 ニューヨーク日本国領事館の委託 勇美記念財団の研究助成 科研費および桃山学院大学特別個人研究費

(6)

(Table 3),回答者グループの属性に関して,以下の10点が明らかとなった。 (1) 年齢分布:平均年齢が若干上昇した (2) 性別:回答者のマジョリティは女性であることには変化がないが,BGLT の 高齢者の存在が明らかとなった (3) 居住区:ニューヨーク・エリアにおける散住傾向は変わらないが,マンハッ タンへの集住傾向が認められる (4) ステータス:アメリカ市民の割合が増え,永住権保持者が減少した (5) 婚姻暦:未婚者が微増,既婚者が微減した (6) 居住暦と居住形態:長い居住暦には変化はないが,一人暮らしの者が微増し た (7) 学歴:高等教育(大学・大学院卒)を受けた者が増加した (8) 使用言語:日本語が依然として日常的に使用されている (9) 英語運用能力:英語運用能力が高いと認識している者が増加した (10) 収入:年金受給者(アメリカ,および日本)が増加した 2006年の調査では質問項目にないことから経年的比較はできないが,2018年の調査で明ら かになった日系コミュニティの特徴を付記しておく。 (1) 経済状況:回答者の過半数の収入が,$60,000(日本円で約660万円/$1= ¥110 で換算)以上であることから,また,ニューヨークの物価などから鑑 みても,経済的には比較的恵まれているエスニック・グループであるといえ る。ただ,このようなエスニック・グループの状況において,約5%の者は, アメリカの貧困線9)以下と重なる $20,000(日本円で約220万円)以下である ことは特筆すべきであろう。 (2) 国際結婚:アメリカ人を配偶者としている者が回答者の約40%を占めており, 日本人を配偶者としている者(約35%)を上回っていることから,インター マリッジの比率は高い状況にある。 Table 3 属性に関する経年的比較 回答者の属性 2006年 2018年 経年的比較分析 平均年齢 63.0歳 66.4歳 ・平均年齢が3歳上昇 性別 男性 39.3% 27.2% ・女性増加 女性 60.7% 69.3% ・BGLT の存在が明らかとなる その他(BGLT) ― 0.8% 9)2020年のニューヨーク州の貧困線は以下のとおりである。単身世帯:$12,760,2人世帯:$17,240, 3人世帯:$21,720,4人世帯:$26,200(US. Department of Health and Human Services, Office of the Assistant Secretary for Planning and Evaluation, 2020)。2004年 度 の 国 勢 調 査(U.S. Census Bureau. (2007a)では,日本人・日系人高齢者の貧困率を5.9%と算出している。

(7)

居住区 ニュ―ヨーク州 NY 市マンハッタン 24.8% 32.6% ・マンハッタンに集住傾向 NY 市ブルックリン 3.1% 5.9% ・散住傾向が若干強くなる NY 市クイーンズ 11.6% 15.7% NY 市ブロンクス 1.2% 1.1% NY 市スタテンアイランド 0.5% 0.5% ウエストチェスター 9.9% 8.4% ロングアイランド 7.2% 3.1% ニュージャージー州 22.8% 20.7% ペンシルベニア州 4.7% 7.4% コネチカット州 2.4% 1.8% ステータス アメリカ市民 23.8% 36.2% ・アメリカ市民が増加 永住権 74.9% 59.2% ・永住権保持者が減少 ビザ保持者 1.1% 2.5% ビザなし 0.2% 0.3% 婚姻暦 未婚 10.3% 15.9% ・未婚の微増 既婚 69.0% 57.9% 離別・離婚 10.5% 11.8% 死別 9.6% 12.5% 居住暦 10年未満 1.4% 3.0% ・居住暦に大きな変化なし 10~19年 8.7% 8.2% ・30年以上が過半数 20~29年 23.1% 23.4% ・選択肢のスケールに基づいて調整 30年以上 66.9% 63.8% 居住形態 一人暮らし 25.3% 27.7% ・一人暮らしが微増 同居人あり 74.5% 70.8% 学歴 中卒(高校中退を含む) 5.3% 2.1% ・中卒と高卒が減少 高卒 19.2% 12.6% ・大学院修了が増加 (高等教育を受けた者が約60%と高い 割合を示す) 短大・専門学校 22.4% 20.8% 大卒 35.5% 36.9% 大学院修了 16.7% 25.6% 話しやすい言語 英語 10.1% 22.0% ・日本語が日常的に使用されている 家庭内言語 日本語 50.4% 48.2% ・英語を日常的な使用が増加傾向 日本語と英語 39.5% 26.9% 英語運用能力 よくできる(ネイティブなみ) 4.9% 34.4% ・英語が「よくできる」「まあまあでき る」が増加 ・選択肢の表現に基づいて調整 まあまあできる(ビジネス程度) 44.7% 20.8% 普通(日常生活に支障なし) 31.8% 28.0% あまりできない(挨拶程度) 15.0% 10.3% ほとんどできない 3.2% 1.8% 収入源 年金(アメリカ) 35.5% 48.2% ・アメリカの公的年金と個人年金が増 加 ・日本の年金受給者も増加 個人年金(アメリカ) 16.5% 23.8% 年金(日本) 10.0% 18.5% 個人年金(日本) 1.2% 4.4% 給与 38.3% 32.6% 自営業 20.9% 18.2% 不動産・投資収入 15.0% 17.4% 配偶者・パートナーの収入 26.6% 27.4% 家族からの援助 2.3% 1.6% 遺産収入 4.5% 3.8% 4.2 エイジングに関する比較分析 次に,エイジングに関わる8項目から日系コミュニティの経年的比較分析をした結果 (Table 4),以下の7点が明らかとなった。この12年間で,老後に対する不安を感じる項目

(8)

に大きな変化はなく,それに備える準備・方策にも大きな変化は認められない。一定の割合 で,日本人の多い高齢者専用住宅やナーシングホームや,在宅の場合は日本文化を理解して いる介護者に対するニーズが,日系コミュニティの中にあることが判明している。 (1) 老後の不安と老後の準備: ・病気や身体障害,収入・経済状況,収入・経済状態が主な不安の原因であ ることから,大きな経年変化は認められない ・これらに対する備えとして考えられている計画内容にも変化は認められな い (2) 医療保険: ・メディケア(アメリカ連邦政府による65歳以上の高齢者と身体障害者を対 象とした健康保険)加入が増加した ・メディケイド(州政府によって運営されている低所得者層を対象とした健 康保険)の割合に変化はないことから,一定の日本人・日系人の低所得者 がいることが明らかとなった ・いわゆるオバマケアによって,医療保険がない者の割合は減少した (3) 希望する介護形態:在宅介護を希望するものが多いが,日系人の多い高齢者 用住宅やナーシングホームでの介護を希望するものが一定数存在している (4) 在宅で希望する介護サービス: ・2006年の調査では,「家事援助」「医療・看護」「身体介護」の3つの選択 肢しかなかったため,2008年の調査にある選択肢をこの3項目に再分類した ・「家事援助」に分類されるサービスが上位を占めており,次に「身体介護」 に関するサービスに対するニーズが高かった (5) 希望する介護者像:日本文化を理解している専門家を強く希望している傾向 が続いていることに変化はない (6) 介護の自己負担金:自己負担額が増額してもよいと考える人が増加するが, 一方で,介護の自己負担ができない人($500 以下)が増加した (7) 終の棲家:一定数(全体の約16%)が日本への帰国を決めており,高齢者に よる日本へのリターン・マイグレーションが起こる(あるいは,起こってい る)可能性を示しており,日系コミュニティの流動性を示唆している(ちな みに2006年の調査においては,約40%の者が日本の介護保険制度を知ってお り,2018年の調査において日本に帰国する理由として,「日本の方が安心し た老後が送れる」というのが圧倒的であった)

(9)

Table 4 エイジングに関する経年的比較 老いに関する質問項目 2006年 2018年 経年的比較分析 老後の不安 上位1位 自立できなくなる 高額医療費 ・経年的に大きな変化はない が,日本のように国民皆保 険制度がないことから,医 療費が高額になることが不 安 (複数回答) 上位2位 病気・身体障害 病気・身体障害 上位3位 収入・経済状態 収入・経済的状態 上位4位 認知症 配偶者が要介護 上位5位 遺言・遺産 認知症 老後の準備 上位1位 遺言 医療委任状の作成 ・経年的変化はなし (複数回答) 上位2位 ファイナンシャル・プラン 財産委任状の作成 上位3位 医療委任状の作成 ファイナンシャル・プラン 上位4位 高齢者福祉施設の調査 高齢者福祉施設の調査 上位5位 アメリカの介護保険に加入 アメリカの介護保険に加入 医療保険 メディケア 34.2% 50.3% ・メディケア(アメリカ連邦 政府による65歳以上の高齢 者と身体障害者を対象とし た健康保険)加入が増加 ・メ デ ィ ケ イ ド(州 政 府 に よって運営されている低所 得者層を対象とした健康保 険)の割合は変化なし ・医療保険がない者の割合が 減少 勤務先加入の医療 保険 48.5% 38.2% 個人加入の医療保 険 21.3% 24.4% 個人加入の米国介 護保険 ― 7.5% メディケイド 4.3% 4.4% 医療保険なし 8.5% 3.8% 希望する生活環境・ 介護形態 在宅 57.3% 40.0% ・在宅を希望者が多い ・日系人の多い高齢者住宅や ナーシングホームで介護を 希望する割合が一定数ある 日系人の多い高齢 者施設 24.5% 26.1% 高齢者施設であれ ばどこでもいい 9.4% 20.3% 在宅で希望する介護 サービス (複数回答) 上位1位 家事援助 掃除 ・2018年の調査では家事援助 に分類されるサービス上位 を占めており,次の身体介 護に関するサービスと続く。 上位2位 医療・看護 病院の付き添い 上位3位 身体介護 食事作り 上位4位 ― 散歩・買い物の同行 上位5位 ― 住環境の整備 上位6位 ― 日本語の話し相手 上位7位 ― 認知症のケア 上位8位 ― 銀行や年金の手続き 上位9位 ― 入浴介助 上位10位 ― ケアマネジメント 希望する介護者像 (複数回答) 有 資 格 者 ( ト レ ー ニングと経験あり) 46.9% 49.0% ・経年的変化はなし 日本の文化・生活 習慣を理解してい る人 30.3% 34.6% 日本食の準備がで きる人 31.4% 33.8% 日本語を理解する 人 26.5% 32.8% 日本人 20.9% 21.6% 英語を理解する人 ― 14.4% 介護の自己負担可 $0-$500 24.8% 35.8% ・全体として介護の自己負担 額が増額してもよいと考え る人が増加 ・介護の自己負担ができない 人($500以下)も増加 能額 $500-$1000 17.6% 18.9% $1000 以上 17.8% 26.4% 終の棲家 アメリカ 28.5% 37.5% ・未決定の者が大多数 ・アメリカを選択した者の割 合が増加 ・一定数の割合で(15~16%) 日本への帰国を決めている 日本 15.9% 16.6% 決めていない 54.2% 43.1% 注)表中の「―」は,2018年の調査票において新規に採用された選択肢であることから,2006年の調査票にはないこ とを意味している。

(10)

5 ま と め 本稿は,2006年および2018年に実施した,ニューヨークの日系コミュニティにおけるエイ ジングに関する定量的調査の単純集計を経年的に比較することにより,マクロの視点から, 日系コミュニティの経年的変化と日本人・日系人高齢者の恒常的ニーズを明らかにした。こ の12年の間に様々な変化 高学歴化,英語運用能力の向上,アメリカ市民権を持つ者・一 人暮らしの者・年金受給者の増加,国際結婚の広がりなど とともに,エスニック・グ ループという共助の力によって老後という暗雲に立ち向かおうとしている日本人・日系人高 齢者の変わらない姿が浮き彫りとなった。これで,ニューヨークにおける日系コミュニティ の老いの俯瞰図が描けたといえよう。 2006年には実施していないが,2018年における定量的調査は,フィールドワークとインタ ビューを中心とした定性的調査も同時に実施した。収集できた老いと介護のストーリーは, 海外で過ごす老いの厳しさを象徴していた。この厳しさは,日本人高齢者を「あなたの夢を 叶えるオーダーメイドの日本帰国支援」「ソーシャル・セキュリティー,健康保険,介護保 険などの諸手続きなどの手伝いをする専任コンシェルジェを配置」などの文句で日本へのリ ターン・マイグレーションへと誘う日本帰国ビジネスへと誘う。今後の課題として,マクロ の視点からの分析に加えて,このような個々の老いの経験を踏まえたミクロの視点からの データ分析を行い,アメリカ多文化社会のエスニック・エルダリーの実態に迫りたい。 なお,2020年以降の COVID!19 によるパンデミックの世界的影響は,ニューヨークに居 住する日本人・日系人のコミュニティにも大きな変化をもたらすと考えられる。今後の継続 的な研究が必要となろう。 謝辞 本研究を遂行する上で,ニューヨークに在住する日本人・日系人の皆様には,多大なるご協力をいた だいた。邦人・日系人高齢者問題協議会の共同研究の方々,特に日本とニューヨークのメンバーの調整 役を引き受けてくださったニューヨーク日本人会・会長・Susan Onuma 氏,ならびに事務局長・野田 美千代氏には,格別のご尽力を賜り,心から感謝申し上げます。

本研究は,2020年3月20日に予定されていたシンポジウム “Global Migration and Aging : Toward Successful Aging in the Japanese Elderly Community in Greater New York(グローバル・マイグレーショ ン(国際移動)と老い:ニューヨークにおける日本人高齢者コミュニティのサクセスフル・エイジング にむけて)」にて発表予定であった内容を論文にまとめたものです。残念ながら,2020年1月に発生し たパンデミックによって中止せざるを得なくなりましたが,このシンポジウムへ協賛いただいた在 ニューヨーク日本国総領事館,ニューヨーク日系人会,Department of Health and Nutrition Sciences (Brooklyn College, City University of New York), Asian American /Asian Research Institute of CUNY, 桃山学院大学の皆様に心より御礼申し上げます。キーノート・スピーカとして招聘させていただいた Jeanette Takamura 氏, パ ネ リ ス ト の Yoko Yuge 氏, Yoko Tajimi 氏, Mizue Katayama 氏, Yuichiro Kuwama 氏,Keiko Shiozaki 氏,Reiko Takikawa 氏にもご協力いただきました。特に City University of New York との交渉役をお引き受けいただいた Kiyoka Koizumi 氏には,幅広くご尽力いただきました。

(11)

あらためて感謝の意をここに表します。

引 用 文 献

Dowd, James J. & Bengston, Vern L.(1975). Social interaction, age, and ethnicity : An examination of the “double jeopardy” hypotheses(unpublished paper).

Inouye, Daniel. H.(2018). Distant islands : The Japanese American Community in New York City, 1876! 1930s. Louisville, Colorado : University of Press of Colorado.

The Japanese American Association(2007). 助け合って100年 : 100 years of community service. New York : The Japanese American Association.(DVD)

The Japanese American Association(2008). The history of Japanese and Japanese-American life in New York : 1907!2007. New York: The Japanese American Association.(DVD)

Kanamoto, Itsuko(2000). Activating ethnicity : An anthropological study of aging among Japanese immigrants in the United States. Eugene, OR : University of Oregon.

Kanamoto, Itsuko(2013). The role of active aging in the well-being of elderly Japanese in Brazil. In Suzuki, N.(ed.), The anthropology of aging and well-being : Searching for the space and time to cultivate life together. Senri Ethnological Studies 80, National Museum of Ethnology, 97!108.

Mutchler, J. & Burr, J.(2011). Race, ethnicity and aging. In Setternsten, R. & Angel, J., eds. Handbook of sociology of aging, pp. 83!102. New York: Springer.

Norman, Alison(1985). Triple jeopardy : Growing old in a second homeland. London : Centre for Policy on Ageing.

United Nations(2019). World population prospects :The 2019 prevision. Retrieved from World Population Prospects - Population Division - United Nations(2020年11月23日)

U.S. Census Bureau(1940). 1940 Census of population : Characteristics of the nonwhite population. Re-trieved from 1940 Census of Population : Characteristics of the Nonwhite Population(2020年11月23日) U.S. Census Bureau(1970). Japanese Population by Sex and Urban and Rural Residence : 1970 Retrieved

from 42043783v2p1d1gch5.pdf(census.gov)(2020年11月14日)

U.S. Census Bureau(2007a). The American Community—Asians :2004. American Community Survey Re-ports. Retrieved from The American Community—Asians : 2004(census.gov)(2020年11月14日) U.S. Census Bureau(2007b). The American Community—Hispanics :2004. American Community Survey

Reports. Retrieved from The American Community—Hispanics : 2004(census.gov)(2020年11月14日) U.S. Census Bureau(2007c). The American Community—Blacks :2004. American Community Survey

Re-ports. Retrieved from The American Community—Blacks : 2004(census.gov)(2020年11月14日) U.S. Census Bureau(2007d). The American Community—Pacific Islanders :2004. American Community

Survey Reports. Retrieved from The American Community—Pacific Islanders : 2004(census.gov)(2020 年11月14日)

U.S. Census Bureau(2000). Profile of general. Demographic characteristics 2000. Retrieved from DP!1. Profiles of General Demographic Characteristics(census.gov)(2020年11月14日)

U.S. Census Bureau(2020). 65 and older population grows rapidly a baby boomers age. Retrieved from https ://www.census.gov/newsroom/press-releases/2020/65-older-population-grows.html.(2020年11月 14日)

U.S. Department of Health and Human Services, Office of the Assistant Secretary for Planning and Evalu-ation(2020). 2020 Poverty Guidelines. Retrieved from 2020 Poverty Guidelines | ASPE(hhs.gov)(2020 年11月20日)

(12)

伯援護協会 金本伊津子(2014).日本人のグローバル・マイグレーションの今:イギリスにおける日本人の高齢化 に関する意識調査(1)桃山学院大学総合研究所紀要,40(1),1!24 金本伊津子(2015)オランダで迎える日本人の老い:在欄日本人の高齢化に関する意識調査 桃山学院 大学総合研究所紀要,41(1),55!80 国立社会保障・人口問題研究所(編)(2020).人口の動向 日本と世界 人口統計資料集2020 一般財団法人 厚生労働統計協会 遠山(金本)伊津子・中島民恵子(監修)(2019).在ニューヨークの日本人・日系人の高齢化に関する 意識調査 訪問介護の在り方を探る ニューヨーク日系人会,邦人・日系人高齢者問題協議会 ニューヨーク日系人会 邦人・日系人高齢者問題協議会(2006).在米邦人・日系人の「高齢者問題に 対する意識調査」ニューヨーク日系人会 邦人・日系人高齢者問題協議会

よみタイム(2018).JAA 恒例墓参会 クイーンズの日本人墓地で(2018年6月15号 vol 327)Retrieved from https://www.yomitime.com/event_061518/1903.html(2020年11月14日)

(13)

A Diachronic Analysis of Two Quantitative Research

Studies on Aging of Japanese and Japanese Americans

Living in Greater New York

TOYAMA(KANAMOTO)Itsuko

This is a diachronic analysis of two quantitative research studies on the aging of Japanese and Japanese Americans living in Greater New York. All the data in this paper are based on the first research study conducted in 2006 and the second conducted in 2018. This paper reveals both the social transitoriness and the cultural immutability of the Japanese elderly community in Greater New York.

The following is a summary of the findings :(1)a growing Japanese American community with US citizenship, higher academic qualification, and better communication competency has been observed.(2)Not only the concerns and anxieties for later lives but also the plans and preparations for aging are much the same.(3)The elderly are provided with culturally specific care(with regard to language, food, and concept of care)— even allowed to live with other Japa-nese people — and the needs of caregivers who can understand JapaJapa-nese culture are satiated. (4)The allowable range of private expense to hire personal caregivers has been widened.(5)

Almost half of those in the community find it difficult to eliminate the possibility of returning to Japan, and some of them have already chosen to migrate back to Japan.

Because of the COVID!19 pandemic in 2020, the vulnerability of the healthcare system in the United States is circumstantially unveiled among certain ethnic groups — particularly the ethnic elderly — who are widely victimized, and their strategy for their later lives may have changed. Additional research is required to find out the interrelationship between aging and culture.

Table 4 エイジングに関する経年的比較 老いに関する質問項目 2006年 2018年 経年的比較分析 老後の不安 上位1位 自立できなくなる 高額医療費 ・経年的に大きな変化はない が,日本のように国民皆保 険制度がないことから,医 療費が高額になることが不 安(複数回答)上位2位病気・身体障害病気・身体障害上位3位収入・経済状態収入・経済的状態上位4位認知症配偶者が要介護上位5位遺言・遺産認知症 老後の準備 上位1位 遺言 医療委任状の作成 ・経年的変化はなし (複数回答) 上位2位 ファイナンシャ

参照

関連したドキュメント

近年、日本のスキー・スノーボード人口は 1998 年の 1800 万人をピークに減少を続け、2020 年には 430 万人にまで減 少し、20 年余りで 4 分の

■詳細については、『環境物品等 の調達に関する基本方針(平成 31年2月)』(P95~96)を参照する こと。

■詳細については、『環境物品等 の調達に関する基本方針(平成 27年2月)』(P90~91)を参照する こと。

■詳細については、『環境物品等 の調達に関する基本方針(平成 30年2月)』(P93~94)を参照する こと。

継続企業の前提に関する注記に記載されているとおり、会社は、×年4月1日から×年3月 31

 2020 年度から 2024 年度の 5 年間使用する, 「日本人の食事摂取基準(2020

本報告書は、日本財団の 2016

本報告書は、日本財団の 2015