奈良教育大学学術リポジトリNEAR
助言の受け入れ可能性評定に及ぼすカウンセラーの 指示性の効果
著者 玉瀬 耕治, 乾 信一郎
雑誌名 奈良教育大学教育研究所紀要
巻 36
ページ 77‑85
発行年 2000‑03‑01
その他のタイトル The Effect of Counselor's Directivity on Advice Acceptability Rating
URL http://hdl.handle.net/10105/7026
助言の受け入れ可能性評定に及ぼす カウンセラーの指示性の効果‡
玉瀬耕治・乾信一郎..
(心理学教室)
要旨: カウンセラーの指示性の効果を調べるために、2つの実験を行っ た。効果の測定には受け入れ可能性評定尺度を用いた。実験計画は2要因 計画で、話題の親密値に関する2条件(高・低)と、カウンセラーの指示 性に関する2条件(指示・非指示)を設定した。カウンセラー役とクライ エント役にはそれぞれの条件に従って役割を演じさせ、ビデオ録画した。
実験Iでは同一の評定者に4つの実験条件のすべてのビデオを視聴させ助 言の受け入れ可能性評定を行わせた。実験IIでは、条件ごとに別々の評定 者に評定させた。その結果、行動的、認知的、感情的側面のうち、行動的 側面では指示的応答の評定値が高くなり(実験I,I1とも)、認知的側面 では非指示的応答の評定値が高くなった(実験I)。これらの結果は、カ ウンセラーの指示性がクライエントの異なる側面に異なる影響を与える可 能性を示唆している。
キーワード:カウンセラーの指示性、受け入れ可能性、印象評定
カウンセリングは、カウンセラーのクライエントに対する意図的な関わりによって成り立つも のである(Ivey,1994)。カウンセラーが何に焦点をあて、何を目的としてクライエントと接す るかによって、カウンセリングの質や方向が決定づけられる。一方、カウンセラーの意図とは別 に、クライエントはカウンセラーの関わり方に対して、さまざまな受け取り方をしている。クラ イエントがカウンセラーの関わりをカウンセラーの意図するところに沿って受け入れようとする かどうかが、カウンセリングの成功・失敗を決定づける重要な鍵であるといえる。本研究では、
玉瀬・上松による先の研究(玉瀬・上松,1996.1997.1999;上松・玉瀬,1998)の枠組みに従っ て、カウンセラーの関わり方に対する受け入れ可能性の問題を検討した。
受け入れ可能性(a㏄eptabi1ity)の問題は、主に行動療法の枠組みの中で、クライエントの認 知を定量的に捉える方法として研究されてきた(玉瀬・上松,1996;佐藤,1998)。玉瀬・上松に
よる先の研究では、不登校の事例に焦点をあてて、どのようなカウンセリングがクライエントの 行動、認知、および感情のどの側面にどの程度受け入れられているかを調べた。しかし、研究の 方法は紙筆法によるものであり、実際事例を見せたり、演じさせたりしたものではなかった。カ ウンセリングの実験的研究の進め方にはさまざまな手法があるが(玉瀬,1998a)、現実に近づ
The Effect of Counse1or s Directivity on Advice Acceptabi1ity Rating
Koji TAMASE(Dψαr棚e枕。!P8ツ。ん。Zogツ,Mαrασπ三リer8め。∫〃ucα亡{oπ,Nαrα630−
8528) and Shinichiro INUI(Grαdμα亡e Sωde航 oゾPsツ。ん。jogツ,Nαrα ση〃εr8比ツ o/
〃砒Cα亡三〇π)
ける意味では、少しでも臨場的な方法を工夫する必要があるといえる。このことに関連して、マ イクロカウンセリングに関する研究ではメディアを用いたさまざまな実験が行われてきている
(Baker,Gree1ey,&Danie1s,1988;Ivey,1973)。
島本(1996)は、カウンセラー役とクライエント役の声をオーディオテープに録音し、カウン セラーの指示性の効果を実験的に検討している。彼女は、クライエントの心的状態が感情的であ る場合と理性的である場合を設定した。さらに、それぞれの条件に対応してカウンセラーの応答 が指示的である場合と非指示的である場合を設定した。これらの4つの条件に対して、第3者か ら見たカウンセリングの満足度評定にどのような違いが見られるかを検討した。その結果、感情 的なクライエントには感情を受容するカウンセラーの非指示的な応答がより高く評定され、理性 的なクライエントには適切な認知的枠組みを提供する指示的な応答がより高く評定されているこ
とが分かった。
この研究は、感情の処理がまだできていないようなクライエントに対して非指示的なカウンセ リングが有効であり、感情の高揚がおさまって次になすべき課題に取り組もうとしているクライ エントに対しては指示的なカウンセリングが有効であることを示唆している。指示的な技法につ いては、わが国では来談者中心的カウンセリングが受け入れられやすい土壌があり、なかなか定 着しにくいのが実情である。
本研究では、クライエントの悩みを2種類設定し、話しやすい話題(親密使低)の場合と話し にくい話題(親密植高)の場合について、カウンセラーの指示性が助言の受け入れ可能性評定に どのような影響を及ぼすかを検討する。カウンセラーは、指示的であるか非指示的にであるかに 関わらず、意図的に面接を行わなければならない(Ivey,1983)。なぜなら、カウンセリングの 責任は常にカウンセラーの側にあるからである。重要なことは、いかに効果的な指示を与えるこ とができるかである。ただし、これはあくまでもカウンセラーの側に立っての論理であって、ク ライエントがその指示をどのように受け取っているかは別の問題である。受け入れ可能性評定は このような受け取る側の問題に焦点を当てている。
島本(1996)の場合はオーディオテープを用いているが、本研究では、実験をより臨場的なも のにするためにビデオを使用し㍍ビデオを用いた実験的研究ではIvey,Normi㎎ton,Mi11er,
Morri11,&Haase(1968)がもっとも初期のものであり、マイクロカウンセリング研究の端緒 となったものである。その後、数多くのマイクロ技法研究が行われてきているが、これらについ ては玉瀬(1998a)や玉瀬・田中(1988)に紹介されている。オーディオモデルとビデオモデル を比較した研究としては玉瀬(ユ998b)のものがあげられるが、応答のどの側面を問題にするか によって、意味づけは自ずから異なってくる。すなわち、言語的側面のみを問題にするのであれ ばオーディオでもビデオでも大差はないが、言語、非言語の両面を問題にする場合は効果が異なっ たものになる可能性がある。
実 噴 I
実験Iでは、実験計画として2×2の被験者内2要因計画を用いた。これは同一被験者に4つ の実験条件のすべてを提示し、条件による違いを直接比較することをねらったものである。
方 法 実験計画
2×2の要因計画を用いた。第1の要因はクライエントの話題の親密値(高、低)、第2の要 因はカウンセラーの応答の指示性(指示、非指示)であり、いずれも被験者内要因であった。
被験者
教員養成系大学の学生1〜3回生、15名(男3名、女12名)が被験者として参加した。
材 料
①面接場面を撮影したビデオテープ
面接における話題の親密値(話しやすさの程度)について予備調査を行い・次に示す悩みがど の程度話しやすい内容であるか調べた。調査に用いた悩みは、学業、就職、対人関係、家族、性 格、恋愛、身体の7分野であり、調査用紙には各分野の悩みに2種類すっ、計14種類の悩みを提 示した。調査用紙に提示した悩みはクライエントの訴えを簡略化したものであり、 親しい人に しか話せない悩みだと思う かどうかについて、1(全くそう思わない)〜6(非常にそう思 う)の6段階で評定させるものであっれ評定者は短大生96名であっれ評定の結果は、家族
(M=4.76,SD=1.12)、恋愛(M:4.06,SD=1.23)、対人関係(M=4.02,8D=1.19)、性格
(M=3.60,Sり=1.22)、身体(M=3.13,8D=1.22)、就職(M=2.71,SD=1.13)、学業(M=
2.64,8D=1.07)の1順であった。家族に関する悩みにおいて、親密値が最も高く、学業に関する 悩みにおいて最も低かっれ分散分析を行った結果・悩みの種類の主効果が有意であったので、
誤差項を用いて下位検定を行った結果、家庭に関する悩みは他のどの種類の悩みよりも評定値が 有意に高く、学業に関する悩みは、就職に関する悩みとの有意差はなかったものの、その他の種 類の悩みと較べて有意に低かった。
以上の結果から、親密値の低い話題として、学業の悩みについて相談している面接場面、親密 値の高い話題として、家庭での悩みについて相談している面接場面を使用した。この2種類の悩 みに対してカウンセラー応答の指示性の条件を組み合わせ、親密植高・指示、親密植高・非指示、
親密使低・指示、親密植低・非指示の4条件のビデオテープを作成しれビデオの内容は、役割 演技によってカウンセラーとクライエントの1対1の面接場面を録画したものである。カウンセ
ラー役は第2著者(男性)が行い・クライエント役は学部学生(女性)が行っ㍍面接は初回面 接とし、初対面の挨拶から始め、クライエントとカウンセラーのやり取りは5夕一ンずっとした。
面接内容は『実践カウンセリング・ワークブック』(日精研心理臨床センター,1992)を参考に して原案を作成し、実際のロールプレイで数度にわたり練習し、修正したものを使用した。
ビデオの撮影は、プレイルームで行った。カウンセラー役は自然でリラックスした状態で椅子 に座り、クライエント役はカウンセラー役と1メートル程度の距離を置き、やや斜めの位置で向 かい合わせに座つれビデオカメラの位置は、クライエント役の後方から、カウンセラー役が中 心に写るように設定した。表1は、面接場面の一例(親密植高・指示群)を示したものである。
表1 面接場面の一例(親密植高・指示群)
Co.1:はじめまして一一です。一一さんですね・
C1.1:はい。
Co.21今日はどのような事でおいでになりましたか。
C1.2:あの一…家族のことで(はい)… わたしの父のことなんですけど(あなたのお父さんのこ とですか)…。はい、わたしの父はとても優しくて、わたしが小さいころは、休みの日にはいっもどこか に連れていってくれる自慢の父親だったんです。(うなずき)でも一年ぐらい前にリストラで会社を首に なってしまって(リストラですか〕…。家族の仲は何となくぎくしゃくして、ほとんど会話という会話が なくなってしまいました。(ん一)生活状況は苦しく、母のパートで切り盛りしている状態で・わたしも 贅沢を言ったことはありません…。母やわたしは何となく父に気をっかってしまって、(うん)父を責め たことはない…いえ、もしかしたら無意識のうちに責めているのかもしれません。文もわたしたちに気を っかっているんだと思います。もしかしたら責められているんだと感じているかもしれません。お互いに 言いたいことが言えないというか(お互いに言いたいことが言えない)…、最近父はお酒を飲んで母に暴 力をふるうようになって(う一ん)…。わたしは一人っ子だからいっしょに考えてくれる兄弟もいないし、
一体どうしたらいいんでしょう。
Co,3:あなたはとても仲の良かった家族が急にぎくしゃくするようになってどうしたらよいのか分か らずに戸惑っているのですね。
C113:はい。こんな風になってしまうとは…考えてもみませんでしれ C o.4:あなたの御両親の様子をもう少し詳しく教えてくれませんか。
C1.4=はい。さっきも言ったように生活上必要な会話以外はすることがありません。家族全員がそろ う晩御飯の時も、食べおわるとすぐに自分の部屋に閉じこもってしまっていつも忙しそうにしています。
もともと夫婦の会話は少なかったんですけど以前とは雰囲気が全く違うように思います。重苦しい雰囲気 です。
C o,5:そうですか・・、あなたの家族のなかに話合いをする場面が無いということが問題の一つである ようですね。今の雰囲気を少しでも変えるために勇気を出して家族会議の場を作ってみてはどうですか。
C1.5:…o
②助言の受け入れ可能性評定項目
Cono1ey,Cono1ey,Ivey,&Schee1(1991)、玉瀬・上松(1996)を参考にして評定項目を作成 した。評定項目は、行動的側面に関する3項目、認知的側面に関する3項目、感情的側面に関す る3項目の言十9項目からなっており、 全くそう思わない から 非常にそう思う までの6段 階で評定させるものである。
表2 クライエント受け入れ可能性評定項目 行動
①このカウンセリングは問題を直接的に改善するのに役立ってい乱
②このカウンセリングは短期問で問題を解決するのに役立ってい乱
③このカウンセリングはクライエントの行動に変化を与えるのに役立ちそうだ。
認知
④このカウンセリングはクライエントとの偏った考えを改善するのに役立ちそうだ。
⑤このカウンセリングはクライエントの混乱した考えを整理するのに役立ちそうだ。
⑥このカウンセリングはクライエントが自分の可能性に気づくのに役立ちそうだ。
感情
⑦このカウンセリングはクライエントの感情を安定させるのに役立ちそうだ。
⑧このカウンセリングはクラインとの自発性を引き出すのに役立ちそうだ。
⑨このカウンセリングはクライエントに自分を見直すゆとりを持たせるのに役立ちそうだ。
手続き
実験は小集団ごと.に実施した。被験者(評定者)はテレビが設置された実験室に通され、決め られた席に着くように求められた。実験者は、被験者が全員着席するのを見計らって、評定用紙 を配布した。次に、 これから皆さんにカウンセリング場面のビデオをお見せします。全部で4 シーンありますが、1シーンごとにお手元の評定用紙に評定を行っていただきます。結果は統計 的に処理し、個人の結果について公表することはありません と教示した後、評定方法を確認
し、実験を開始した。1シーン終了ごとにビデオを停止し、評定用紙への記入を求めた。ビデオ の提示1順序については小集団ごとに1順序を変えてカウンターバランスをとった。
結果と考察 助言の受け入れ可能性評定
受け入れ可能性評定の各項目で、1(全くそう患わない)〜6(非常にそう思う)までの6段 階め評定に対して、それぞれ1点〜6点を与えた。行動、認知、および感情の各尺度の合計得点 について、各条件ごとに平均値と標準偏差を算出した。表3はこれらの数値を示したものである。
これらの値について、行動、認知、感情の各尺度ごとに2×2の分散分析を行ったところ、行動 において指示性の主効果が1%水準(F=61.13、ψ:1,14)で有意であった。これは指示条件の 方が非指示条件よりも評定値が高かったことを示している。親密値の高低による差は有意ではな かった。認知および感情尺度に関しては、いずれの要因でも有意差は認められなかった。従って、
カウンセラーの指示的応答は行動的側面において特に受け入れられやすいといえる。
表3 実験条件ごとの受け入れ可能性評定の平均値と標準偏差 行 動 認 知 感 情
親密植高・指示 12.80 親密植高・非指示 6.66 親密植低・指示 13.20 親密植低・非指示 7.20
2.43 11,00 2.2ユ 9,66 2.87 10,47 2,51 9.87
2,94 2,75 1,67 2.39
10.07 2.14 ユO.93 2.74 10,47 3.05 11,40 2.55
実験Iでは・カウンセラーの助言を・クライエントが受け入れる際の 受け入れ可能性 に影 響する要因が、クライエントの悩み(話題)の違いによって異なるのかどうかを調べた。助言の 受け入れ可能性に影響する要因として、話題の親密値(話しにくさの程度)とカウンセラーの指 示性という2つの要因を取り上げた。結果的には、話題の親密値による影響は認められなかった。
これは、話題の捉え方には個人差が大きく、同じ悩みでもさまざまな捉え方がなされているため かもしれない。予備調査による親密値の測定法にっいてもさらに検討する必要があるといえる。
次に、指示性については、実験Iの結果から、行動を変えるためには、カウンセラーの非指示 的な応答よりも、指示的な応答の方が効果的であることが示唆された。行動論的な立場からすれ ば当然の結果であるといえる。
実 験 n
実験nでは、2×2の被験者間2要因計画を用いた。これは実験材料等をそのままにして、条 件ごとに被験者を変えて4つの条件を比較し、実験Iの結果と合わせて検討することを意図した
ものである。また、実験nでは助言の受け入れ可能性の他に、態度評定としてのカウンセラー印 象評定についても測定し、合わせて4条件による違いを検討した。このようにして、態度的な要 因と技法的な要因を区別して捉えることを試みた。
方 法 実験計画
2×2の要因言十画が用いられた。第1の要因は話題の親密値(高、低)、第2の要因はカウン セラーの応答の指示性(指示、非指示)であり、いずれも被験者間要因であった。
被験者
実験Iを経験していない教員養成系大学の学生1〜4回生、60名(男11名、女49名)が被験者 として参加した。これらの被験者を、親密偵高・指示群、親密植高・非指示群、親密偵低・指示 群、親密植低・非指示群の4つの実験群に、それぞれ15名ずつ(男女比率は各群一定)割り当て
た。
材 料
①面接場面を撮影したビデオテープ 実験Iで作成したものを使用した。
②助言の受け入れ可能性評定用紙 実験Iと同一ものを使用した。
③カウンセラー印象評定用紙
カウンセラー印象評定には、玉瀬・石田(1996)の評定項目を使用した。これらは共感性、純 粋性、および尊重性に関する各4項目、計12項目からなり、 カウンセラーについてどのように 思うか という質問に対して、 全くそう思わない から 非常にそう思う までの6段階で評 定させるものである。表4は実験nで用いたカウンセラー印象評定項目を示したものである。
表4 カウンセラー印象評定項目 共感性
純粋性
尊重性
①相手と一緒になって考えようとしている。
④相手の話の内容を理解しようとしている。
⑦相手の感情を理解しようとしている。
⑩相手のおかれた状態に合わせて話を進めようとしている。
②自然な態度で接している。
⑤ありのままの自分を出している。
⑧カウンセラーであることを誇示していない。
⑪作為的でない。
③相手を人間として認め、尊重している。
⑥相手の役に立とうとしている。
⑨あたたかく、思いやりをもって接している。
⑫価値判断をせず、相手を受容している。
注1項目番号は実験で用いられた評定用紙での提示順序をあらわす。
手続き
実験は第2著者が実験者となり、実験室で2〜9名の小集団で行われた。被験者(評定者)は ビデオがよく見える位置に座った。実験は手続きに関する教示、ビデオの内容についての説明、
ビデオの視聴、カウンセラー印象評定、助言の受け入れ可能性評定の順に行われた。
教示は以下のとおりであった。 これから皆さんにカウンセリング場面を撮影したビデオテー
プを視聴してもらいます。このカウンセリング場面のビデオを1回見てもらった後にお手元の評 定用紙に記入していただきます。結果は統計的に処理し、個人の結果について公表することはあ
りません。ビデオは5分程度でカウンセラーとクライエントのやり取りが計5回あります。面接 場面はクライエントが初めてカウンセリングを受けにくる初回面接場面であり、カウンセラーと
クライエントの初対面の挨拶から始まります。ビデオに撮影された面接場面はカウンセリングの 途中経過であり、カウンセリングの終結ではありません。それではビデオをご覧ください。 実 験Iでは面接がどの時点のものであるがが必ずしも明確ではなかったので、実験IIではこのよう な説明を加えている。
結果と考察 助言の受け入れ可能性評定
実験Iの場合と同様に、6段階の評定にそれぞれ1点〜6点を与え・行動、認知、および感情 に関する各尺度の合計得点について、各群ごとに平均値と標準偏差を算出した。図1はこれらの 値を図示したものである。これらの値について、行動、認知、感情の各尺度ごとに2×2の分散 分析を行った。
行動尺度では、親密値の主効果が5%水準(F=4.51、ψ=1,56)、指示性の主効果が5%水準
(F=4.51、砂=1,56)で有意であった。これは親密値島群の方が親密値低群よりも評定値が高く、
指示群の方が非指示群よりも評定値が高かったことを示している。
認知尺度では、指示性の主効果が5%水準(F三5.43、ψ=1,56)で有意であった。これは行 動尺度の場合とは逆に、非指示群の方が指示群よりも評定値が高かったことを示している。感情 尺度についてはいずれの要因も有意にはならなかった。
10 14 12
^10
8組点
) 6
4 2 0
■親密値高指示 図親密値高非指示 團親密値低指示 口親密値低非指示
行動 湿知 感情
図1 実験条件ごとの受け入れ可能性評定の平均得点 カウンセラー印象評定
評定結果について、 全くそう思わない から 非常にそう思う の6段階にそれぞれ1点〜
6点を与え、共感性、純粋性、尊重性の各尺度における合計得点について、各群ごとに平均値と 標準偏差を算出した。表5はこれらの値を示したものである。これらの値について、各尺度ごと に2×2の分散分析を行った。
共感性尺度では、親密値の主効果が1%水準(F=7.80、ψ=1,56)で有意であり、親密値の 高い群が親密値の低い郡よりも有意に評定値が高いことが示された。その他の要因は有意ではな かった。また、純粋性尺度でも親密値の主効果のみが5%水準(F=5.27、ψ=1,56)で有意で
あり、同様の傾向が示された。さらに、尊重性尺度でも親密値の主効果のみが5%水準(F=12.35、
ガ=1,56)で有意であり、同様の傾向が示された。したがって、すべての尺度で親密値の高い話 題において、カウンセラーの印象はより高く評定されたといえ乱
表5 カウンセラー印象評定の平均と標準偏差
共感性 純粋性 尊重性
M sD M sD ルτ sD 親密植高・指示 20.OO
親密植高・非指示 21,53 親密植低・指示 18.OO 親密植低・非指示 18.53
2.88 15,20 1.55 16,80 4.52 14,33 4.12 13.67
3,99 2,81 3,52 3.06
19,40 2.6!
19,87 2.67 17,53 3.68 15,73 4.03
カウンセラー印象評定と助言の受け入れ可能性評定との相関
カウンセラー印象評定の各尺度と助言の受け入れ可能性評定の各尺度との間の相関係数を各条 件ごとに算出したところ、r=.51からr=.79の間の相関値が得られた(いずれも5%水準まナこは
1%水準で有意)。
総合的考察
実験IIでは、実験変数として用いた2つの要因を共に被験者間要因とし、助言の受け入れ可能 性評定の他に、カウンセラー印象評定項目を付け加えて検討した。ここではまず、態度評定とし てのカウンセラー印象評定の結果を先に考察する。実験の結果、共感性・純粋性、および尊重性 のいずれの尺度においても、親密値島群の評定値が有意に高いという結果が得られた。これは、
カウンセラーから受ける態度的印象は、カウンセラー側の応答が指示的であるか非指示的である かに関わらず、話されている内容の影響を受けやすいことを示唆している。すなわち、カウンセ ラーがより深刻な話題に関わっている場合の方が、相対的に話しやすい話題に関わっている場合 よりも、カウンセラーの印象がより高く評定される傾向があるといえ私
次に二助言の受け入れ可能性の問題について考えてみよう。受け入れ可能性は、行動、認知、
および感情の各側面について、カウンセラーの面接技法の効果を調べようとするものである。指 示性については、行動尺度で指示群の評定値が非指示群に比べて有意に高く、実験Iの結果を繰
り返すこととなった。これは、行動を促すためにはカウンセラーの非指示的な応答よりも指示的 な応答の方が有効であると評定されたことを意味している。これは、技法としての指示性が、ク ライエントに行動的変化をもたらすのにより効果的であることを示唆している。一方、認知尺度 で非指示群が指示群よりも評定値が有意に高くなったことも興味深い。これは、クライエントの 偏った考えを改善する、混乱した考えを整理する、クライエントが自分の可能性に気付くなどの 認知的側面に関しては、指示的な応答よりも非指示的な応答の方が効果的であるとみられている ことを意味する。感情尺度では、すべての条件で高い評定値が得られているが、今回問題とした 話題の親密値やカウンセラーの指示性による違いは見られない。
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