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奈良教育大学学術リポジトリNEAR

地域素材を活かした身近な歴史学習の授業構成―中 学校社会科歴史的分野「日本の近世」を事例として

著者 中尾 賢

雑誌名 高円史学

巻 21

ページ 29‑50

発行年 2005‑10‑01

その他のタイトル Class Organization for Historical Learning Utilizing Local Materials ―Teaching "Early Modern Japan" in Junior High School Classes as a Case Study―

URL http://hdl.handle.net/10105/8835

(2)

地域素材を活かした身近な歴史学習の授業構成

− 中学校社会科歴史的分野﹁日本の近世﹂ を事例として

中     尾

一 はじ め に

中学校における歴史学習は︑過去に起こった事象を網羅的に暗記する教科として見られがちである︒このことが学習者の

意欲を低下させ︑﹁歴史離れ﹂を助長している︒﹁歴史離れ﹂ の原因として︑﹁歴史を身近に感じることができない﹂という

理由をあげる学習者は少なくない︒これは︑教科書が政権所在地︑いわゆる﹁中央﹂中心の記述で構成されている点に起因

していると考えられる︒学習者が﹁歴史を身近に感じる﹂歴史学習を模索する時︑その有効な方策として﹁地域史﹂学習の

果たす役割は大きい︒

しかし︑従来の ﹁地域史﹂学習では︑﹁地域﹂に埋没し︑﹁中央﹂とのつながりに欠けていたり︑特定の単元のみで断片的

に行われる傾向が強かった︒また︑学習指導要領の改訂に伴い︑フィールドワークや博物館・歴史資料館を活用する歴史学

習が提唱されている︒

本稿では︑これらの諸課題を踏まえ︑今後の ﹁地域史﹂学習の視点を明らかにする︒そして︑現在に伝わる街並み︑古地

29

(3)

図︑史跡などの ﹁地域素材﹂︵歴史遺産︶活かして︑学習者が主体的に受け止めることのできる教材を開発する︒さらに︑

地域の歴史を通して︑学習者なりの歴史像を描き︑歴史の﹁見方・考え方﹂を養うことのできる﹁身近な歴史学習﹂の授業

構 成 を 提 起 す る ︒

二 先行研究の概観

﹁地域史﹂学習の歴史は古く︑これまでも様々な研究がなされている︒特に歴史教育者協議会は︑﹁地域に根ざす歴史教

育﹂を掲げ︑研究を重ねてきた︒その中でも︑地域の民衆の立場から歴史を捉え直しをしたのが安井俊夫である︒安井は︑

地域の教材における︑学習者がすぐに飛び込んでこられる﹁入りやすさ﹂と︑どうしても真剣に考えざるをえない﹁切実さ﹂︑

︵ 1

つまり﹁共感﹂に注目した︒さらに︑民衆の立場に立ち︑教材に﹁共感﹂する場面こそ︑学習者が歴史に自らかかわってく

る場面であると指摘した︒そして︑歴史を外側から客観的に見るのではなく︑歴史の中に一歩踏み込んで内側から捉える授

︵ 2

︶ 業 を 展 開 し た

また︑従来の﹁地域史﹂学習における課題の克服を目指したものでは︑鹿毛敏夫の実践がある︒鹿毛は︑まず︑授業全体

に系統性を持たせるために︑地域素材を﹁古代国家の起源﹂から﹁近現代社会の日本﹂までの年間計画に位置づけた︒その

際︑﹁中央史﹂との関連性にも留意している︒そして︑選び出された地域素材と︑授業の主体である一人ひとりの学習者と

の関連づけを行い︑生徒の理解を深めている︒さらに︑学習者が地域の歴史事象を科学的に探求し︑より高次な歴史の概念

.・J︑

形成にたどりつけるように︑﹁概念探求型教授・学習活動﹂を展開している︒

30

(4)

安井の実践は︑子どもに主体的な歴史学習を保障するうえで成果をあげた︒しかし︑民衆の立場という視点を切り口とし

たために︑取り扱う単元に偏りが見られたり︑歴史の多面的な見方を保障する点で課題を残していた︒

また︑鹿毛の実践は︑授業における系統性の欠如や﹁地域史﹂と﹁中央史﹂との連携を意図した点で︑従来の課題を克服す

る成果をあげている︒しかし︑﹁歴史事象の科学的な分析﹂を重視する学習活動は︑学習者が学習者なりの感情を駆使して

歴史像を描く余地を与えない固定化された歴史像の注入に傾倒する可能性がある︒この点で︑地域素材と学習活動を結びつ

ける︑つまり学習者の思考を誘発する歴史学習が不十分だと筆者は考える︒

三 中学校社会科歴史的分野の現状

中学校における︑﹁地域史﹂ に関わる歴史学習の現状はどうであろうか︒まず︑筆者が勤務する葛城市立新庄中学校にお

いて︑学習者の意識を把握するために︑﹁身近な地域の歴史﹂ に対するアンケートを実施した︒対象者は当校に在籍する二

年生の一四三人で︑中学校では歴史を学習していない生徒である︒奈良県の中で︑﹁歴史を身近に感じるもの・こと﹂を可

能な限り書かせてみた︒学習者の回答で最も多かったのが︑﹁奈良の大仏﹂ の六五人であった︒ついで東大寺や法隆寺など

の寺院︑古墳︑そして︑飛鳥という地名等に回答が集中した︒いずれの歴史遺産も古代のものが中心になっており︑学習者

は﹁奈良=古代﹂ のイメージを強くもっている︒﹁新庄﹂ についても同様の質問をした︒結果は﹁屋敷山古墳︵公園︶﹂が

二一人で最も多く︑無回答が全体の約半数近くもあった︒学習者は︑最も身近な地域についての歴史像を描けていないので

あ る

(5)

筆者は︑アンケートの結果が政権所在地中心の構成に起因すると考え︑現行の教科書八社を比較分析した︒︵表1︶その

結果︑奈良県の地名が古代に集中しており︑中世・近世になると極端に減少していることが明らかであった︒これでは︑学

習者が︑﹁歴史学習者が進むにつれて︑歴史を身近に感じることができない﹂︑あるいは﹁奈良県の歴史は古代で終わってし

まう﹂と思っても不思議ではない︒いうまでもなく︑それぞれの身近な地域にも歴史は必ずある︒例えば近世の学習におい

ては︑江戸が中心となる︒江戸から遠く離れた奈良県の地域の歴史と︑幕藩体制とが結びつけば︑学習者は歴史を身近に感

じるだけでなく︑その理解は一層深まり︑地域に対する関心も高まるはずである︒この点を明らかにするために︑本研究で

は︑﹁日本の近世﹂を学習事例として取り上げている︒

︵ 4

次に︑平成一二年に改訂された現行の学習指導要領において︑﹁地域史﹂学習の位置づけを検討した︒歴史的分野の目標

において︑学習を具体的に理解させる必要から︑歴史上で重要な役割を果たした人物や各時代の特色を示す文化遺産を取り

上げることが大切だとしている︒また︑従前の ﹁具体的な事象﹂に加えて﹁身近な地域の歴史﹂が学習対象として新たに盛

り込まれた︒地域の歴史を取り上げることは︑従前から﹁内容の取り扱い﹂などにおいて示されてはきた︒今回の改訂では︑

地域の歴史に関心をもたせることにより︑地域への関心を育て︑我が国の歴史により具体性と親近性を持たせて理解を深め

ることが﹁一層重視する﹂ように意図されたのである︒つまり︑学習者の興味関心を喚起し︑より主体的な学習を促すうえ

で︑﹁地域史﹂学習への期待がこれまで以上に高まっているのである︒

しかし︑﹁地域史﹂学習を進めるには︑課題も多い︒今回の改訂には︑﹁学び方を学ぶ学習の充実﹂を図るねらいがある︒

つまり︑地域の歴史の学習過程において︑調べ方や学び方を身につけるための工夫が求められているのである︒これを受け︑

﹁学び方を学ぶ﹂という学習方法の一面性のみが強調されていないだろうか︒安易に地域や博物館に出かけてはならない︒

32

(6)
(7)

学習者の地域の歴史に対する興味や関心︑または﹁何のために調べるのか﹂という問題意識の育成が大切なのである︒

さらに︑今回の改訂では︑完全学校週五日制の導入により︑第一︑第二学年の社会科授業時数が大幅に削減された︒これ

に伴い︑これまで以上に限られた時間内で学習することが余儀なくされている︒このような状況で︑﹁地域史﹂学習が︑あ

る単元のみのテーマ学習的に扱われている現状はないだろうか︒先に指摘したように︑﹁地域史﹂学習には︑学習者に主体

的な学習を促す魅力がある︒この魅力を最大限に引き出す工夫を考えなければならない︒

以上のことから︑筆者は学習者が継続的により多くの機会で地域の素材に出会う場を保障するよう留意した︒そのことが︑

主体的な学習を促し︑地域への関心を育てることにつながると考えるからである︒その結果︑学習者自らが地域の史跡や博

物館に出かけて行きたくなるような﹁地域史﹂学習に発展すると確信している︒

四 今後の ﹁地域史﹂学習のあ日ソ方

︵5︶

﹁歴史は現在と過去との対話である﹂というE・H・カーの言葉がある︒先に指摘した諸課題を踏まえ︑今後の﹁地域史﹂

︵ 6 し

学習のあり方を模索する時︑この言糞を引用した田渕︵一九八八︶ の指摘に注目した︒田渕は︑E・H・カーの言葉を歴史

研究における問題意識の重要性を指摘したものだと捉えている︒歴史学習もまた︑現代への鋭い問いかけが出発点であり︑

その原因を過去の歴史事象に求めるものとしている︒そして︑その学習を通して︑事象と事象との相互関係・因果関係を考

察する歴史的思考力の育成と︑学習者なりに歴史像を描く﹁歴史する喜び﹂の獲得が目指されるのだというのである︒田渕

は︑学習者に﹁現代との対話﹂や﹁歴史する喜び﹂が保障されていない実情が︑知識詰め込み型授業の原因であり︑歴史嫌

(8)

いの学習者に共通するのは﹁事件と事件の平板な羅列で︑思考の深まりがない﹂からだと指摘している︒したがって︑歴史

思考力を育成する観点から︑歴史学習の授業に思考活動・思考場面である﹁歴史する場面﹂を組み込むことの必要性を指摘

している︒さらに︑それを一つの単元にとどまらず︑一時間︑一時間の授業においても求められるべき工夫だと述べている︒

このような田渕の指摘を踏まえ︑筆者が重視したいことは︑以下の二点である︒

第一は︑現代の地域社会に残された歴史遺産に向き合い︑問いかけることを誘う教材の開発で︑田渕のいう﹁現代との対

話 ﹂

  で

あ る

第二は︑歴史像を学習者なりに多面的に描かせるために︑思考場面や思考活動を学習過程に組み込むことで︑田渕の言葉

を借りると︑﹁歴史する場面﹂を授業に組み込み︑﹁歴史する喜び﹂を学習者に保障することである︒

この二点の実現を目指す上で︑﹁授業のネタ﹂が参考になる︒授業は﹁子ども﹂と﹁教材﹂と﹁教師﹂が一体となって創

り出すものである︒﹁授業のネタ﹂とは︑その三者を結びつける接点で重要な役割を担うものとして︑﹁授業のネタ研究会﹂

︑ 1

が重視しているものである︒﹃中学﹁授業のネタ﹂歴史﹄において︑﹁ネタ﹂について以下のように述べられている︒第一は︑

ネタは授業の核になる点である︒教師にとって新鮮な驚きから醸成されたネタは︑姿を変えて子ども達に新鮮なインパクト

を与える︒そしてネタを核にしながら子ども達の思考を一気に飛躍させ︑視野を拡張するという︒第二は︑ネタはおもしろ

い授業を創るという点である︒子ども達にとって︑本質的で学ぶ価値のあるものであっても︑教師がそのままの形で持ち込

めば︑おもしろい授業にはならないと指摘している︒意外な導入や子ども達の興味に沿った題材などが必要だというのであ

る︒

﹁授業のネタ研究会﹂の理事である河原和之は︑ネタ開発の視点を次のように述べている︒﹁一枚の絵・写真・地図﹂は︑

35

(9)

図1「地域素材を活かした身近な歴史学習」のモデル

提示するだけで︑子ども達は視線をそこに集中させる︒しかし︑ただの絵や写真で

はなく︑﹁アッと驚く︑知的好奇心をくすぐる﹂︑﹁社会や歴史の仕組みへと導く﹂

ものでなければ︑視線はすぐに離れてしまうという︒また︑日常生活で﹁あたりま

え﹂と患っているものや身近な﹁もの・こと﹂から社会の仕組みが見えてくるもの︑

さらに﹁子どもの認識を揺さぶる﹂ものがネタとして望ましいという︒

以上︑ネタ開発の視点は︑﹁地域史﹂学習に新たな展開をもたらしてくれる︒ネ

タ開発の視点を取り入れる理由を以下に二点示す︒

第一は︑地域素材をより活かすうえで有効である︒ネタは一時間︑一時間の授業

において︑学習者に興味や関心を喚起させ︑知的な好奇心を刺激することができる︒ 36

これらの要素が地域素材に加わると︑学習者にとってより魅力的な教材となる︒

第二は︑学習者を思考場面や思考活動に導くうえで有効である︒歴史学習におい

て︑身近な地域の歴史を取り上げれば︑学習者が主体的になれるというものではな

い︒思考場面や思考活動である﹁歴史する場面﹂が必要である︒ネタは学習者を

﹁歴史する場面﹂ へと誘う︑つまり恩考を誘発させる要因をもっている︒

このようにネタ開発の視点を︑﹁地域史﹂学習に取り入れることで︑学習者によ

り主体的な歴史学習を保障することが可能である︒そして︑本研究の ﹁地域素地を

活かした身近な歴史学習﹂ の創造につながると考える︒︵図1︶

(10)

五 地域素材を活かした身近な歴史学習︵日本の近世︶

授業を考えるうえで︑まず︑地域素材の選択︑つまり地域素材の掘り起こしを行った︒筆者は﹁新庄町史﹂をはじめ︑そ

︑く︑

の他の ﹁地域史﹂関連の文献をもとに︑中学校の歴史学習で教材化できる可能性のある地域素材を選択した︒選択に際して

は︑学習者が﹁身近な地域﹂と感じることのできる︑新庄地域を含む葛城市︵二〇〇四年一〇月に新庄町と嘗麻町が合併︶

を中心にし︑それを奈良県で補う形をとった︒そして︑選択した地域素材を﹁日本の近世﹂ の各単元に当てはめた︒その一

部が表2である︒

次に︑教材化するうえで︑地域素材をさらに絞り込んだ︒この際︑筆者が留意した点を以下に示す︒

第一は︑﹁地域史﹂と﹁中央史﹂との関連に配慮したことである︒授業において︑﹁地域史﹂に哩没することなく︑﹁地域﹂

︵新庄を含む葛城市や奈良県︶から﹁中央﹂︵教科書︶︑﹁中央﹂から﹁地域﹂ の双方から学んではしいと考えた︒

第二は︑実際の一時間の授業に一つ以上の地域素材を選択したことである︒これはネタ開発の視点に基づいており︑一時

間一時間の授業で︑学習者に興味や関心を喚起させ︑知的な好奇心を刺激するためである︒

第三は︑地域素材は新庄地域を含む葛城市を中心に選択したことである︒けれども︑第一︑第二の点考慮し︑必要に応じ

て奈良県からも選択した︒

以上の三点をもとに地域素材を選択し︑一時間の授業に位置づけたものを︑﹁ネタ﹂とともに表した一部が表3である︒

ここでは︑限られた時間の中でどの地域素材を用いるかがポイントとなった︒つまり︑学習展開において︑より有効な地

域素材を選ぶ必要があったのである︒

37

(11)

表2 近世における新庄(葛城市)及び奈良県の地域素材

単  元 新庄 (葛城市) 奈   良   県

◎ 新庄藩

・奈良奉行所跡 【奈良市】

・龍 田城跡 【斑鳩 町】 (片桐且元)

・高取城跡 【高取 町】(植村氏)

・桑山氏 ・柳 生藩 【奈 良市 】 (柳生 氏、 兵 法

全 国支配 ・陣屋跡 指南役)

の しくみ ・古地 図 ・小泉 藩 【大和郡 山市】 ( 片桐氏)

・領主 の分 布 と ・芝村 藩 【桜井 市】 ( 織 田氏)

変遷 ・柳本藩 【天理市】 (織田氏)

・櫛羅 藩 【御所市】 (桑山氏)

・二見 藩 【五僚市】 (松倉氏)

鎖 国  と 隣 国 との

関   係

◎宗 門改帳 ・宣教 師 アル メイ ダ 【奈 良市 】 (奈

◎ 各寺 院の宗派 良見学)

江戸時代 の百姓 と

町   人

◎村井家住宅

・環濠集落 と請堤 【大和郡 山市】

・保津環濠集落 【田原本 町】

・「箱 本」 【大和郡 山市】 (自治組織)

・庄屋 の家 ・専立寺 【大和高 田市】 (寺内町)

・国の重要文 ・今井 【橿 原 市 】・松 山 【大 宇 陀

化財 町】 ( 商業都市)

・「奈 良 の庭 竃」 【奈良 市 】 (除 夜 の 風習)

次に︑地域素材を教材

化するうえでの意義を︑

﹁江戸幕府の成立〜全国

支配のしくみ〜﹂を例に

して述べてみたい︒先述

のアンケートからもわか

るように︑ほとんどの学

習者が新庄における近世

の 歴 史 像 を 描 け て い な い ︒

そこで﹁新庄中学校は︑

かつての武家屋敷の跡に

建っている?﹂というネ

タは︑学習者にとって意

外なことであり︑教材に

対して驚きや疑問を抱か

せる︒そして︑学習者を

主体的な学習に誘い︑遠

38

(12)

表3 近世における新庄(葛城市)及び奈良県の地域素材とネタ

単  元 地 域素 材 とネタ

〜 工 全国支配

の しくみ

新庄 中学校 は、かつての武家屋敷の跡 に建 って いる?!

【新庄】

・新庄 藩

( 桑 山氏 ・陣屋町 ・古地 図 ・領 主の分布 と変遷)

戸 【奈良県】

・大和国の領主 ( 郡 山 ・柳生 ・小 泉 ・芝村 ・柳本な ど)

幕 府

・奈良奉行 〔 奈良市〕

鎖 国  と 隣 国 との

関   係

宗 旨御 改帳 ってどんな ものだろ う?

【新庄 】 の

成 立

・宗 旨御改 帳

・各寺 院の宗派

江戸時代

村井邸 にはどんな人 が住 んでいたのだ ろう ?I

【新庄】

の百姓 と ・村井邸 ( 元禄期 の庄屋 ・国の重要文化財)

町   人 【奈良県】

・今井 町 〔 橿原市〕

くはなれた江戸で幕府が開かれるという歴史 事象を身近な歴史学習にすることをねらいと

し て

い る

q・

﹁新庄城図﹂は︑新庄藩の藩政確立期に描

かれたと考えられる地図で︑武家屋敷地内に

住む二〇二名に及ぶ家臣らの屋敷配置を知る

ことができる︒現代との関わりを知る手がか

りとして︑地図中に﹁慶雲寺﹂が描かれてい

る︒現存する﹁慶雲寺﹂と中学校の位置関係

から︑中学校が地図中の武家屋敷の場所に建

てられていることを推察するのは︑学習者に

とっても容易である︒また︑地図の中でひと

際 広 い 敷 地 が ︑ 現 代 の   ﹁ 屋 敷 山 公 園 ﹂   で あ る

こ と も 想 像 か つ く ︒

さらに︑﹁慶雲寺﹂から中学校︑そして︑

﹁屋敷山公園﹂ へと抜ける道筋を︑VTRで

視聴させる︒これによって︑﹁慶雲寺﹂ の存

39

(13)

在に気づいていない学習者も︑地図が中学校周辺を表していることが理解できる︒﹁屋敷山公園﹂ では︑学習者は﹁新庄城

︵陣屋︶跡﹂という石碑に出会う︒そして︑石碑の説明から︑公園が﹁桑山氏﹂ の屋敷跡であったことに気づき︑新庄にも

大名がいたことを知るようになる︒学習者の興味や関心を十分に高めた上で︑藩や大名についての学習に移ることが可能で

ある︒なお︑VTRによるフィールドワークの疑似体験は︑時間の限られた場合に有効である︒

︵ 1

0 ︶

﹁近世大和国における藩の領主・石高変遷﹂は︑新庄藩の存在を示すとともに︑近世における大和国は︑小さな藩領が錯

綜する地域であったことを示す資料でもある︒大和国は︑加賀の前田氏のような大きな大名が一国支配するのとは異なって

いる︒学習者は︑自らが生活する大和という地域の特殊性に気づくとともに︑﹁なぜ︑大和国は小さな藩が数多く存在する

のか﹂という疑問を抱くであろう︒

︼㈲ 円

﹁新庄の領主の変遷と分布﹂ では︑近世において︑新庄の各大字の領主がわかる︒ハ〇八年ごろ︑新庄には外様大名桑

山氏の領地や幕府領が存在した︒学習者は︑自らの大字が︑﹁誰によって治められていたのか﹂と興味をもつであろう︒ま

た︑新庄に幕府領があったという史実は︑学習者にとって新鮮であるに違いない︒そして︑そこから幕府領についての学習

を展開させることで︑江戸幕府のしくみや経済力についての理解を深めることができる︒その結果として︑大阪に近い大和

国が江戸幕府にとって重要な都市であったため︑小さな藩が錯綜し︑幕府領や遠国奉行︵奈良奉行︶が存在したという︑先

の疑問についての答えも浮かび上がってくるのではないだろうか︒

同じ資料から︑一七〇〇年に移ると︑桑山氏の領地が消え︑幕府領に代わっていることがわかる︒この史実には︑多数の

学習者が疑問を感じ︑様々な想像をめぐらせることであろう︒一六八二年に起きた︑四代藩主桑山一伊の改易という事件を

もとに︑武家諸法度や参勤交代という幕府の大名に対する統制についての学習を展開し︑理解を深めることができる︒

40

(14)

以上のように︑地域素材を教材化することは︑遠く離れた江戸で開かれた幕府の学習を︑学習者にとって身近なものにし︑

理解を深めるうえで非常に効果があると筆者は考える︒つまり︑学習者は︑言葉だけの表面的な歴史学習に留まらず︑貝体

的な事例を通して歴史の内側に入り込むことができるのである︒その結果として︑﹁身近な地域﹂ である新庄や奈良県にお

ける近世の歴史像を描くことも可能になる︒そして︑近世の新庄では︑桑山氏によって陣屋町が形成され︑その遺構が現在

も残っていることを学び︑自らが生活する地域への関心を高めることにつながる︑と筆者は考える︒

最後に︑筆者は︑選び出された地域素材をもとにして︑先に指摘した教材化の意義に則した授業案を構成した︒その際︑

筆者が留意した点は以下の五点である︒

第一は︑導入における﹁ネタ﹂開発である︒一時間に一つ以上の貝体的な地域素材を組み込んで授業を展開することであ

る︒学習の導入で︑学習者が﹁エッ︑ほんと?﹂という驚きや︑﹁何だろう?﹂という疑問を抱くような地域素材で︑学習

者に問いを投げかけるのである︒

第二は︑学習展開において︑思考場面を設定することである︒地域素材についての問いを投げかけることで︑学習者の田心

考を誘発し︑学習者が自ら歴史事象を主体的に学習できるようにする︒

第三は︑﹁地域﹂から﹁中央﹂を考え︑﹁中央﹂から﹁地域﹂を考えることで︑﹁地域史﹂学習に埋没しない学習展開を図

る︒つまり︑﹁地域﹂と﹁中央﹂ の往復思考活動である︒例えば︑﹁新庄﹂や﹁奈良県﹂という﹁地域史﹂から﹁中央史﹂ の

幕藩体制について考えさせる︒また︑江戸時代の幕藩体制における︑﹁新庄﹂を含む﹁大和国﹂ の位置づけについても考え

さ せ る の で あ る ︒

第四は︑学習者の歴史的な問題意識を育てることである︒学習者は︑身近な地域の事例を通して︑教科書の歴史事象をよ

41

(15)

りリアルに認識できる︒そこで培われた﹁歴史の見方・考え方﹂は︑他の地域においても活用される︒つまり︑﹁概念の転

移 ﹂

  で

あ る

第五は︑歴史学習を通じて︑﹁新庄地域を含む葛城市﹂や﹁奈良県﹂という︑学習者が生活している地域への関心を高め︑

地域への愛着心を育成することである︒

以上の五点をもとに︑筆者が作成した学習指導過程の一例が表4である︒

さらに︑筆者は身近な地域の歴史に対する学習者の興味や関心をより一層喚起するために︑学芸員による中学校への ﹁出

前授業﹂を実施した︒授業者は︑葛城市歴史博物館の学芸員である田中慶治氏である︒配当時間は︑通常の授業時間の五〇

分で︑テーマは︑﹁織田信長と新庄﹂についてである︒今回は︑中学校で︑既に織田信長についての学習を終え︑学習者が一

ある程度の知識をもっている上での取り組みであった︒授業では︑田中氏自作の ﹁戦国時代の布施氏・大和国関係年表﹂が 42

活 用 さ れ た ︒

今回の授業では︑ほとんどの学習者が︑講師の話に耳を傾けて︑資料を食い入るように見つめるなど︑普段の授業には無

い集中力を示した︒学習者の大半が︑教科書で学習する織田信長や戦国時代と︑新庄や大和国との関わりに︑驚きや感動を

覚えたようだ︒これは︑新庄や大和国と︑この時代の歴史事象は関連が無いと思っていた学習者の認識を大きく揺さぶった

ことの現れである︒学芸員を招いて行う授業は︑一時間限りのものであった︒それにも関わらず︑学芸員の専門的な知識に

対し敬意を抱き︑歴史学研究の意義を学習者なりに感じたようである︒この反応は︑筆者の予想をはるかに上まわるもので

あった︒従来︑ゲストティーチャーを招く場合︑ゲストに任せきりになる場合が多い︒けれども今回は︑筆者と田中氏が互

い思いを交えた打ち合わせを行い︑いわば共同実践の形をとった︒この綿密な事前の打ち合わせが︑好結果に表われたもの

(16)

表4 江戸時代の成立「全国支配のしくみ」の学習指導過程 匪 覧 授 晶

生徒の学習活動 ・恩考場面 資   料

導 新庄中学校は、かつて武家屋敷の跡に建 っている ! ? 入 【本時の 「ネタ」】

「広い敷地や名 ・江戸時代の古地図に描かれた 『 新庄城図』

前は何を表 して 屋敷跡や武士の名前について 画 いるのだろうか」 予想する。

「古地図はどの 固

辺 りを描 いてい ・現存する 「慶雲寺」や V T R V T R

るのだろうか」 を手がかりに して、桑山氏の  ( 現代の中学

・古地図 を提示 陣屋跡が 「 屋敷山公園」であ  校付近)

し、 V T R を り、武家屋敷の跡 に中学校が  固 展 視聴 させる。 建 っていることを探る。

「新庄藩の桑 回

山氏 は、 なぜ ・教科書を利用 し、藩 ・大名 ・ 『主な大名の 新庄 に屋敷 を 旗本 ・御家人について調べる。 配置図』

構 えたのだろ ・教科書の 『 主な大名の配置図』

う」 か ら大名の種類 ( 御三家 ・親

・新庄藩 の存在 藩 ・譜代 ・外様大名) につい や桑山氏が外 て調べる。

様大名である ・調べた内容をワークシー トに ことを知 らせ

る。

・藩や大名につ いて問 う 開  「大和 はどのよ

まとめる。

・加賀の前田氏等のような大 き  『 近世大和国 うに治め られた な大名が 1 回を支配する場合 における藩の のだろう」 とは異なり、大和は小さな藩 領主 ・石高変

・大和の藩領や 領が錯綜する地域の特殊性を  遷』

新庄の領主を 理解する。 画

示す資料を提 ・新庄において も、多 くの領主 『 新庄の領首 示する。 や幕府領が存在することに気 の変遷と分布』

・各大字の領主 づく。

を問 う。 固

ー43

(17)

「幕府領 とは何 ・教科書 を利用 し、幕府 の経済 固

だろう」

・江戸 幕府 の し

力 につ いてワーク シー トにま とめる。

・幕府領が、全国の 4 分 の 1 の 土地 と重要 な都市 ・鉱 山 ・港 等か らなることを理解す る。

・組織図か ら、江戸幕府 の しく

『 領地の割合』

『 江戸幕府 の

くみ に つ いて みを理解す る。 しくみ』

『新庄の領主

図で確認 させ、 ・奈良奉行が遠国奉行で あるこ

奈 良 奉行 につ とに気づ く。

いて問 う。

「新庄 か ら桑 山 画

・新 庄か ら桑山氏が姿を消す理 由を予 想する。

氏 の領 地が 消 え 圏 の変遷 と分布』

る の はなぜ だ ろ ・1682 年 におきた、4 代藩主桑 固

『 武家諸法度』

う」 山一伊の改易 という事件か ら、

・桑 山 氏 の改易 幕 府によ る大名 統制 の方法 に

につ い て知 ら ついて考える。

せ る。 画

・幕 府 に よ る大 ・教科書 を利用 し、武 家諸 法度

名 の統 制方 法 や参勤交代について調べ、ワー ( 匝 画 は地

について問 う。 ク シー トにまとめる。 域素 材、匝 司

「参勤 交代 は何 ・参勤交 代の目的 について考え は思 考場 面を

の ため に行 われ る。 示す。)

たのだろ う」 固

ま ・江戸幕府 は様 々な方 法で大名 を統制 し、約 260 年間全国

を支配す ることになる。

と ・ 「大和 」 は、 幕府 に と って重 要 な都市 の 1 つ で あ り、

幕府領や奈良奉行が おかれた。

め ・近世の 「 新庄」で は、桑 山氏 によって陣屋町が形成 され、

その当時の遺構が現代 も残 ってい る。

−44−

(18)

と考えられる︒このような実践におけるいわゆる﹁博学連携﹂が︑授業を創り出す上で重要であることを改めて感じた︒

六 授業実践の考察

まず︑﹁江戸幕府の成立〜全国支配のしくみ〜﹂の授業実践について自省を込めて考察したい︒授業を振り返ると︑学習

者の様々な反応が印象的であった︒導入の ﹁新庄中学校は︑かつての武家屋敷の跡に建っているけ⁚﹂という問いかけには︑

﹁エッ︑ほんと?﹂という驚きの声や﹁本当なら︑中学校に武士の亡霊が出るかも﹂といった笑声があがり︑学習者は本時

の教材に敏感にレスポンスした︒

そして︑古地図や資料にも関心を注ぎ︑思考場面では近くの友人と相談する姿もみうけられた︒その結果︑様々な声が聞

こえてきた︒例えば︑古地図から﹁慶雲寺﹂の存在を見つけ出し︑嬉しそうに発表する声︑自分の大字が幕府領であること

に気づいた驚きの声︑桑山氏の改易について︑﹁幕府に逆らったから︑幕府に滅ぼされた﹂という自らの意見を発表する声

などである︒重要なのは︑これらの声が︑決して学習の得意な︑いわゆる﹁できる子﹂の声ばかりではなかったことである︒

むしろ︑普段の授業では学習意欲の乏しい学習者の間に鋭い反応が目立っていたのである︒このことは︑歴史学習における

地域素材の魅力を物語っている︒

授業後の感想を一部紹介する︒

・新庄に外様大名がいたなんてびっくりした︒︵新庄の︶道が整っているわけもわかった︒私の家も学校の近くなので︑

昔はどうなっていたのかなって思った︒

45

(19)

・新庄に幕府領があったなんて︑すごい! 奈良県では︑他にどこに幕府領があったのかな?

・昔の町並みが残っているのはすごいと思う︒他の県でも残っているのかな?

これらの感想からは︑学習者の驚きが十分に窺える︒学習者は︑授業の前半で︑自分の町に大名がいたことを知る︒しか

し︑後半では︑その大名が改易されるという史実も知る︒筆者自身も教材研究において﹁地域史﹂を紐解いた時︑自分の勤

務する地域で︑大名が改易されたことにショックを受けた︒学習者も同様に感じており︑柔山氏に同情する意見が多数みら

れた︒教科書では︑﹁武家諸法度﹂や﹁参勤交代﹂などが記述されている︒したがって︑学習者は︑それらの歴史事象を文

字を通して理解することは可能である︒しかし︑感想からは︑地域の事例に触れることで︑幕府と大名の双方の立場から︑

大 名 統 制 の 実 態 を リ ア ル に 学 ん だ こ と が 窺 え る

︒                                       一

また︑自分が生活する現代の地域︵町並みや公園︶を見つめ直し︑そこに地域の歴史を重ね合わせて︑江戸時代の歴史像 46

を恩い描く学習者もみられる︒さらに︑中学校区の歴史だけに留まらず︑奈良県内の他の地域や他の都道府県の歴史につい

ても︑興味や関心を抱いた学習者もいた︒これは︑筆者が指摘した︑学習者の内面で﹁概念の転移﹂が行われていることを

物 語 っ て い る

次に︑﹁日本の近世﹂における計九時間にわたる授業実践について︑学習者の感想を交えながら考察したい︒なお︑学習

者の感想は︑﹁江戸幕府の成立﹂に始まり︑﹁江戸時代の文化と学問﹂に至る単元を終えてから書かせたものである︒

・奈良県はすごく歴史に関係していて︑ということは知っていたけど︑それは奈良市の東大寺や大仏などしかないと思って

いたし︑奈良時代や飛鳥時代にしか関係してないと思っていた︒でも︑勉強していくうちに︑近くの屋敷山公園や村井

邸も歴史に関係する古いものなんだなと思って︑歴史がすごく身近に感じた︒前より歴史に興味をもてるようになった︒

(20)

歴史が身近になり︑歴史に対する興味や関心を高め︑楽しく学習できた学習者の様子が窺える︒この点は︑本稿の問題認

識の中で指摘したことであり︑筆者の研究のねらいが顕著に表れているといえる︒

・教科書だけだとあまり実感が湧かないけど︑自分の身近な所や物の歴史を勉強すると︑すごくわかりやすくなったし︑

図書館にも足を運ぶようになった︒もっと身近なところの歴史が知りたい!

地域と中央とを照らし合わせ︑地域素材をもとに︑より具体的に歴史を学習できたことが窺える︒これは︑学習指導要領

でも述べられている︑﹁身近な地域の歴史﹂だからこそ生み出せる学習効果である︒

・新庄なんてあまり歴史に関係したものがないと田心っていました︒でも︑先生のビデオとかを見ていたら︑知っている所

があった︒普段何気なく見ていたものが︑実は歴史のある家だったりしてびっくりしました︒

地域素材によって︑学習者の認識が揺さぶられ︑地域を見つめ直すきっかけになっていることがわかる︒学習者は︑これ

まで見えなかった地域の歴史が見えるようになり︑何気なく見ていたものに歴史を感じるようになったのである︒

・葛城市に住んでいるのに︑こんなに知らないことがあるとは⁝今度︑歴史博物館へ行きたいと思います︒

・色々なところに行ってみたくなったし︑今まで何も感じなかったものに︑何かとても歴史を感じるようになった︒また

色々と探してみたい

授業後︑博物館や市内を歩き︑自分の目で確かめたいと感じた学習者や実際に行動した学習者がいることを示している︒

また︑学習者が﹁歴史の見方・考え方﹂を身につけ︑出かけることに対して︑以前は感じられなかった喜びを見出し︑自ら

の目で探したいという新たな意欲をも感じることができる︒

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(21)

七 おわ日ソに

本稿の冒頭で︑﹁時代が進むにつれて︑歴史が遠い存在に感じる﹂という意見を取り上げた︒これは︑筆者自身が︑学生

時代を通して感じていたことでもある︒それ故に︑筆者は︑教材研究において︑地域に関わる歴史事象を発見する度に︑驚

きと感動を覚えた︒そのような驚きと感動を︑学習者達にも体験させたいという願いが︑本研究の根底にあったのである︒

﹁地域素材を活かした身近な歴史学習﹂は︑歴史学習において︑どのような意義があったのだろうか︒これまでのどの感

想にも︑驚きや感動といった︑学習者の﹁心の揺れ﹂が顕著に表れている︒これは︑地域素材が︑学習者の知的な好奇心を

刺激したからである︒その結果︑学習者は︑歴史学習に対して︑身近でわかりやすいと感じるようになる︒さらに︑それが︑

地域を見つめ直す契機となり︑これまでの地域に対する固定観念や関心といったものに変化が生じる︒そして︑授業という

限られた機会だけではなく︑自ら課題を見つけ主体的に学習する︒つまり︑学習に広がりが生じたのである︒

ただし︑課題もある︒若干ではあるが︑﹁もっと教科書の内容をくわしく教えてほしい﹂という意見もあった︒社会の変

化に伴い︑高校入試制度がますます個別化︑複雑化して塾に通う学習者も年々増加している︒こういった高校受験に対する

対応も︑考えていかねばならない︒また︑今回は︑﹁日本の近世﹂を事例として教材研究を行った︒中世や近世︑近現代に

おける︑地域素材の掘り起こしと授業実践は︑筆者にとって重要な課題となる︒

筆者は︑本研究において︑﹁地域史﹂を教え過ぎないように心がけた︒その理由は︑問題意識には火をつけても︑後に学

習者が主体的に学べる余地を残しておきたかったからである︒学習者が授業において満足してしまっては︑その後の広がり

やつながりは期待できない︒学習者の問題意識に火をつけることこそ︑教師の役割ではないだろうか︒それが︑﹁生きる力﹂

48

(22)

を育てる教育の端緒ではないかと考えるからである︒

﹇ 註

︵1︶安井俊夫﹃子どもと学ぶ歴史の授業﹄地歴社︵一九七七︶ ﹈

︵2︶安井俊夫﹃子どもが動く社会科﹄地歴社︵一九八二︶

︵3︶鹿毛敏夫﹁地域史教育の実践的構成1地域に根ざした﹃日本史﹄の授業−﹂全国社会科教育学会﹃社会科研究﹄第四六﹇一勺︵一九九七︶

︵4︶文部科学省﹃中学校学習指導要領︵平成一〇年一二月︶解説・社会科編﹄大阪書籍︵一九九九︶

︵ 5 ︶   E ・ H ・ カ ー 著 ﹃ 歴 史 と は 何 か ﹄ 清 水 幾 太 郎 訳   岩 波 書 店 ︵ l 一 九 六 二 ︶ 四 〇 貢

︵ 6 ︶   田 渕 五 十 生 ﹃ 新 し い 社 会 科 の 視 点 と 授 業 ﹄ 梓 出 出 版 社 ︵ 一 九 八 八 ︶ 六 l 三 亘

︵7︶河原和之・馬場一博﹃中学授業のネタ 社会5 歴史﹄授業のネタ研究会中学部会編 日本書籍︵二〇C二︶

︵8︶改訂新庄町史編集委員会﹃改訂新庄町史本編﹄新庄町役場︵一九八四︶

新庄町歴史民俗資料館︵現葛城市歴史博物館︶﹃新庄町歴史民俗資料館常設展示録﹄新庄町歴史民俗資料館︵二n100l︶

奈良地理学会﹃天和を歩くーひとあじちがう歴史地理探訪﹄奈良新聞社︵二〇〇〇︶

﹁奈良の歴史﹂編集委員会﹃奈良の歴史﹄奈良市教育委員会︵一九七四︶

木村博一﹃奈良のあゆみ﹄奈良帝︵一九六八︶

︵9︶新庄町歴史民俗資料館 前掲書﹃新庄町歴史民俗資料館常設展示録﹄二九貢

49

(23)

︵10︶奈良地理学会 前掲書﹃大和を歩く−ひとあじちがう歴史地理探訪﹄三八頁

︵11︶新庄町歴史民俗資料館 前掲書﹃新庄町歴史民俗資料館常設展示録﹄三〇頁

参照

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