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(1)

スマートフォンに関する研究

著者 長谷川 達人

著者別表示 Hasegawa Tatsuhito

雑誌名 博士論文本文Full

学位授与番号 13301甲第4320号

学位名 博士(工学)

学位授与年月日 2015‑09‑28

URL http://hdl.handle.net/2297/43867

Creative Commons : 表示 ‑ 非営利 ‑ 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by‑nc‑nd/3.0/deed.ja

(2)

操作性や利用者行動改善のための インテリジェントスマートフォン

に関する研究

金沢大学大学院 自然科学研究科 電子情報科学専攻 知能情報・数理 講座

学  籍  番  号 1323112005 氏      名 長谷川 達人 主任指導教官氏名 木村 春彦

提  出  年  月 平成 27 7

(3)

1

章 序論

1

2

章 近接センサによるスマートフォンの画面ロック手法

3

2.1 ロック手法 . . . . 3

2.1.1 従来のロック手法 . . . . 3

2.1.2 近接センサを用いたロック手法 . . . . 4

2.2 近接ロックの改良 . . . . 4

2.2.1 動作中画面との関連性 . . . . 5

2.2.2 動作ログを用いた誤判断率改善手法 . . . . 7

2.2.3 Naive Bayes による学習 . . . . 7

2.3 評価 . . . . 9

2.3.1 評価指標 . . . . 9

2.3.2 実験結果 . . . . 9

2.4 おわりに . . . . 10

2.4.1 まとめ . . . . 10

2.4.2 今後の課題 . . . . 11

3

章 定期行動を学習するスマートフォンの音量自動設定手法

12 3.1 スマートフォンの音量設定 . . . . 12

3.2 関連研究 . . . . 14

i

(4)

3.2.2 マナーモードの自動切り替え . . . . 15

3.2.3 コンテキストアウェアネス . . . . 17

3.3 提案手法 . . . . 17

3.3.1 アプリ音量の自動設定 . . . . 17

3.3.2 前処理 . . . . 19

3.3.3 学習データ . . . . 22

3.4 評価実験 1 . . . . 22

3.4.1 識別手法 . . . . 24

3.4.2 評価基準 . . . . 25

3.4.3 実験結果 . . . . 26

3.4.4 評価実験 1 の残課題と発展 . . . . 27

3.5 評価実験 2 . . . . 27

3.5.1 提案手法の修正 . . . . 27

3.5.2 実験概要 . . . . 29

3.5.3 考察 1 (本研究の対象となる利用者の比率) . . . . 30

3.5.4 考察 2 (マナーモード設定と曜日・時刻の関係性) . . . . 30

3.5.5 考察 3 (アプリ音量とアプリの種類の関係性) . . . . 33

3.5.6 考察 4 (修正した提案手法の有効性) . . . . 35

3.6 おわりに . . . . 39

4

章 スマートフォンの所在状況推定システム

41 4.1 はじめに . . . . 41

4.2 提案手法 . . . . 43

4.2.1 State Magic . . . . 43

ii

(5)

4.2.3 重力加速度成分と加速度成分 . . . . 45

4.2.4 特徴量 . . . . 46

4.3 評価実験と考察 . . . . 48

4.3.1 実験概要 . . . . 48

4.3.2 評価指標 . . . . 49

4.3.3 新規特徴量による精度変化の考察 . . . . 50

4.3.4 利用者の動作に対する頑健性の考察 . . . . 51

4.3.5 6 状態識別課題における推定精度の考察 . . . . 53

4.4 おわりに . . . . 53

5

章 子供のスマートフォン依存を抑止する画面ロックアプリケーション

55 5.1 はじめに . . . . 55

5.2 関連動向 . . . . 56

5.3 提案手法 . . . . 57

5.3.1 利用者層の定義 . . . . 58

5.3.2 システム概要 . . . . 58

5.3.3 関連製品 . . . . 59

5.3.4 利用シーンの提案 . . . . 62

5.3.5 期待される効果 . . . . 63

5.4 評価と考察 . . . . 64

5.4.1 評価アンケート . . . . 64

5.4.2 利用者属性に関する分析 . . . . 64

5.4.3 TIMER LOCK の効果 . . . . 66

5.5 まとめ . . . . 69

iii

(6)

謝辞

77

参考文献

79

.1 付録 . . . . 85

iv

(7)

2.1 近接ロック動作イメージ . . . . 5

2.2 誤判断パターン例 . . . . 5

2.3 Sensitivity , Specificity , Accuracy の比較 . . . . 10

3.1 事前設定条件によるマナーモード自動切り替え . . . . 15

3.2 ライフログの検出と利用者サポートへの応用 . . . . 18

3.3 システム構成図 . . . . 19

3.4 GPS 異常値,欠損値の補完 . . . . 21

3.5 本システムで採用している木構造識別器の概要 . . . . 24

3.6 利用者がアプリ音量を決定する際の思考フロー . . . . 29

3.7 一日に一回以上音量変更を行う確率のヒストグラム . . . . 31

3.8 時刻別の平均マナーモード設定時間の例 . . . . 31

3.9 User1 の時刻・曜日別の平均マナーモード設定時間 . . . . 31

3.10 User4 の時刻・曜日別の平均マナーモード設定時間 . . . . 31

4.1 State Magic のシステム概要 . . . . 42

4.2 センサー値の処理方法 . . . . 43

4.3 Android における加速度センサの軸方向 . . . . 46

4.4 スマートフォンの格納場所一覧 . . . . 47

5.1 TIMER LOCK の動作フロー . . . . 60

v

(8)

中のホーム画面 . . . . 61 5.3 導入者別の利用者年齢分布 . . . . 65

vi

(9)

2.1 画面ごとの誤判断率 . . . . 6

2.2 評価指標の定義 . . . . 9

3.1 Android と iOS におけるマナーモード設定と音量設定の関係 . . . . 14

3.2 蓄積するデータの種類 . . . . 20

3.3 データ取得タイミング . . . . 21

3.4 記録データサンプル . . . . 23

3.5 評価指標 . . . . 25

3.6 提案手法とマナーモード連動手法における予測精度比較 . . . . 26

3.7 取得する情報の一覧 . . . . 29

3.8 アプリ毎のアプリ音量をオンで利用する比率の例 . . . . 34

3.9 被験者 107 名の平均推定精度 . . . . 36

3.10 代表的な利用者に対する推定精度 . . . . 36

3.11 U1 の初期音量と正解音量のクロス表 . . . . 37

3.12 U1 のマナーモードと正解音量のクロス表 . . . . 37

3.13 U1 の SVM 予測結果と正解音量のクロス表 . . . . 37

3.14 U2 の初期音量と正解音量のクロス表 . . . . 37

3.15 U2 のマナーモードと正解音量のクロス表 . . . . 37

3.16 U2 の RF 予測結果と正解音量のクロス表 . . . . 37

3.17 U3 の初期音量と正解音量のクロス表 . . . . 38

vii

(10)

3.19 U3 の RF 予測結果と正解音量のクロス表 . . . . 38

4.1 実験時の作業パターン一覧 . . . . 48

4.2 評価指標の定義 . . . . 49

4.3 全特徴量を利用したデータセット A と加速度のみを利用したデータセット B における LOSO-CV の F 値比較 . . . . 51

4.4 提案手法採用時の利用者状態別推定精度 . . . . 52

4.5 提案手法による 6 状態識別結果 . . . . 53

5.1 TIMER LOCK の利用者層と特徴 . . . . 57

5.2 アンケートの内容 . . . . 71

5.3 利用者層別の回答者数と平均年齢 . . . . 72

5.4 利用者層別の Q11(スマホを使い始めて,健康や精神的な弊害が出たと思い ますか)の “ はい ” の回答率 . . . . 72

5.5 利用者層別の Q7(TIMER LOCK を利用してみてよかったと思いますか) の “ はい ” の回答率 . . . . 72

5.6 利用者属性別の TIMER LOCK 導入前後でスマートフォンの利用時間が減 少した回答者の比率 . . . . 73

5.7 TIMER LOCK 導入後の実際の行動に関するロック中の行動 [ 回答者数(比 率) ] . . . . 73

5.8 TIMER LOCK 導入後の一日の勉強時間の増加 [ 回答者数(比率) ] . . . . . 73

1 1 フレームから抽出する特徴ベクトル . . . . 85

viii

(11)

1 序論

総務省の携帯電話の利用率に関する調査 [1] によると,2012 年の調査段階において,日本 の総人口に対する携帯電話契約比率がついに 100%を超過した.中でもスマートフォンの シェアは国内外問わず急速に拡大しており [2],日常生活をサポートする身近な情報機器と なっている.スマートフォンは通話やメール,カメラ,ゲーム,音楽プレイヤー,カレン ダー,アラームなど様々な機能があり,小型の PC と同程度の性能を備えている.

一般的に Android スマートフォンでは,照度センサやマイク,加速度センサ,ジャイロ

スコープ,地磁気センサなど多くのセンサを搭載している.また,利用者が常に持ち歩き,

PC と同程度の処理能力を備えていることから,ライフログを記録することに適している.

ライフログとはライフとログを組み合わせた言葉である.本研究ではライフログとは個人 の行動や情報などを記録したものと定義して利用する.ライフログアプリケーションの例 として,堀ら [3] や Sellen[4] らは,利用者の思い出やイベント,経験を動画として記録する システムを開発している.それにより利用者は容易に生活の物語を動画として作成するこ とができる. Jawbone 社の UP

1

は利用者の日々の運動や睡眠のパターンを,リストバンド 型デバイスに搭載された加速度センサを用いて測定・記録している.利用者はそれらの記 録された情報を健康維持に用いることができる. Adami ら [5] はライフログを用いて生活 の質を向上させることができるシステムを開発している.ライフログは多くの場合利用者 が手動で記録するが,通常は自動で記録できることが望ましい.この目的のため,利用者 はカメラやセンサなど多くのデバイスを持ち運ぶ必要があるが,それは非常に手間である.

それに対し,スマートフォンは負荷なく容易に様々なセンサを利用することができ,利用 者らは常にそれを持ち歩くことからライフログを自動で記録することに適している.これ

1

[Up by Jawbone] https://jawbone.com/up

(12)

らの利用者情報からスマートフォンが自律的に利用者をサポートすることができれば,利 用者はより快適に日常生活を送れることであろう.

本論文では,スマートフォンの標準搭載センサや機能から得られる多大なる情報を活用

することで,スマートフォンの操作性改善や,さらには利用者自身の行動改善への応用を

行う.まず, 2 章では,近接センサを用いた自動画面ロックシステムを実現し,過去の誤

動作を学習することでインテリジェントに誤動作防止を行うシステム [6] を説明する.次

に, 3 章では,スマートフォンのアプリ音量設定に着目し,日々の行動を学習しインテリ

ジェントに自動でアプリ音量を切り替えるシステムを説明する. 4 章では,コンシューマ

サポートに応用するための,スマートフォンの状況推定システム [7] を説明する.最後に 5

章では,子供のスマートフォン依存を改善するための画面ロックシステム [8] を説明する.

(13)

2

近接センサによるスマートフォンの画面 ロック手法

2.1 ロック手法

2.1.1 従来のロック手法

スマートフォンの画面ロック手法は現在標準で以下の2つの方法がある.

方法1:電源ボタンを押すことによる手動ロック 方法2:タイムアウトによる時間ロック

手動ロックは電源ボタンを押すことで画面ロックを行う方法である.時間ロックでは,利

用者が端末設定された一定時間操作を行わないことでロック状態となる.利用者は 2 つの

手法を併用し,ロックを意識しない利用者は方法2のみを用いることが多い.しかし,時

間ロックだけでは電池の消耗を早めるだけでなく,利用者が端末から目を話した隙に他者

に個人情報を盗み見られるリスクが高まる.したがって,端末の利用後は電源ボタンを押

下してロック状態にしておくことが理想である.ただ,電源ボタンを押す動作は利用者の

手間であり,さらに端末によっては押し辛い場所に電源ボタンがあることから,利用者に

より使いやすいロック手法の提案が必要とされる.

(14)

2.1.2 近接センサを用いたロック手法

本章では近接センサを用いる手法(近接ロック)を提案する.近接センサは多くのスマー トフォンに標準搭載されている制御機器であり,端末上部のスピーカー横に搭載されてい ることが多い.近接センサは何かに覆われている際に反応するため,センサが反応すると いうことは利用者は画面を見ていない可能性が高いと推測できる.近接ロックを実現する ことで,端末をポケットに入れた時,机に裏向きで置いた時,手をかざした時やカバーを した時(図 2.1 )など様々なシーンで端末が自動的にロックされるような体感をえることが できる.近接ロックは利用者の操作の負荷を軽減するだけでなく,他者からの盗み見防止 の観点からセキュリティ向上にもつながる.

近接ロックを実現し利用した結果から,利点と欠点を従来のロック手法と比較する.利 点はロックが容易になる点と,ロック忘れが減る点である.電源ボタンを押下することに 比べ,ポケットに入れる,センサに手をかざすなどの常日頃から行う動作で意識すること なく容易にロックができる.欠点は電池消費が少々増える点と,誤判断が起こりやすいと いう点である.近接ロックは近接センサを動作させるため何も使っていない状態より少々 電力を消費する.また,近接ロックでは近接センサ反応時にロックを行うため,利用者が意 図しないタイミングで近接センサが何に触れてロックされてしまうことがある(近接ロッ クの誤判断).誤判断の動作パターンは例えば図 2.2 が考えられる.

(a) 大きく指を滑らせる場合

(b) 端末を横向きにして操作する場合

(c) センサに接触しやすい状態で利用する場合

2.2 近接ロックの改良

既存のアプリケーションとして近接オートロック

1

がある.これは誤判断の対策として,

ディレイ(数秒間継続して近接反応がある場合ロックする)などの手法を用いている.ディ レイは誤判断率を低下させる可能性はあるが操作性は低下する.例えば即座にロックした い場合でも必ず数秒間継続して近接センサに触れなければロックできない.本研究では過

1

[近接オートロック] https://play.google.com/store/apps/details?id=com.nuts.autolock

(15)

図 2.1: 近接ロック動作イメージ

図 2.2: 誤判断パターン例

去の動作ログから利用者が端末を利用中かどうかを学習し,近接反応時にロック判定を行 う手法を提案し,操作性を低下させず誤判断率を低下させる.

2.2.1 動作中画面との関連性

図 2.2(a) , (b) より誤判断は動作中の画面に相関がある可能性を考え,とある被験者一名

の動作ログを 12 日間記録し表 2.1 にデータをまとめた.動作ログは近接センサ反応時に,

動作中のアプリケーション画面と,近接ロックが正常判断であるか誤判断であるかの記録

とする.誤判断の判定に関しては,近接ロック発生後即座( 5 秒以内)に画面の再点灯が

行われた場合は利用者が意図しないタイミングで近接ロックが反応したものと仮定して誤

(16)

表 2.1: 画面ごとの誤判断率

動作中の画面名 ロック回数 失敗回数 誤判断率

ナビ 7 7 100.0%

ブラウザタブ画面 7 7 100.0%

ジョブマネージャ 3 3 100.0%

着信歴 1 1 100.0%

クイック検索 1 1 100.0%

パズドラ 354 271 76.6%

ブラウザ 134 91 67.9%

Twitter 16 9 56.3%

緊急ダイアル 11 6 54.5%

電話帳 2 1 50.0%

フェイスブック 2 1 50.0%

LINE 39 17 43.6%

ホーム 547 165 30.2%

電話 37 8 21.6%

通話中 26 1 3.8%

その他 5 0 0.0%

全画面合計 1192 589 49.4%

判断とする.例えば,ゲームで遊んでいた際に意図せず近接センサに触れロックされたが,

即座に画面を再点灯しゲームを再開した場合などが誤判断となる.なお, 5 秒という数値 は経験則から仮定している.

表 2.1 より動作中の画面によって,近接センサ誤判断の起こりやすさに傾向があることが

わかる.例えば,ナビであれば 7 回のロック動作のうち 7 回が誤判断であることから,ナビ

利用時には何らかの動作を行う際に,意図せず近接センサに触れていることが推測できる.

(17)

2.2.2 動作ログを用いた誤判断率改善手法

誤判断率を低下させるため,過去の動作ログを学習し近接ロックを行うタイミングでロッ クの可否を判断する手法を提案する.動作ログは動作中の画面と画面表示の向きの情報を 利用する.画面表示の向きに関しては図 2.2(b) より動作中の画面同様,誤判断に影響があ ると考えられることから追加するものとした.動作ログの取得タイミングは近接センサ反 応時とする.誤判断の判定に関しては近接ロック発生後即座( 5 秒以内)に画面の再点灯が 行われた場合と,見過ごしも誤判断として記録を行う.見過ごしとは「本アプリケーション がロックしないと判断したが,本来利用者がロックしたかった場合」のことと定義する.近 接センサーが反応したタイミングから,画面が自動で消えるまでの間( 2.1.1 節の時間ロッ クにて利用者の設定しているタイムアウト時間以内)にロックが行われた場合に見過ごし と判定する.例えば,タイムアウト時間を 1 分に設定している利用者が,意図して近接セ ンサに触ったが近接ロックされなかったので, 1 分以内に端末標準の手動ロックもしくは 時間ロックを行った場合を見過ごしとして誤判断に含めている.

2.2.3 Naive Bayes による学習

動作ログの学習には Naive Bayes [9] [10] を用いる.モバイル端末上での実装のため分類 精度が高いことに加え,リアルタイム処理のための処理速度が実現できること,電池消費 量を抑えるため計算量が少ないことを加味した.

Naive Bayes

Naive Bayes は事象の事後確率を用いてカテゴリ分類を行う手法である.属性 D からカ

テゴリ C に分類する場合,事後確率は以下の式を用いて計算する.

P (C | D) = P (C)P (D | C)

P (D) (2.1)

式 (2.1) の P (C) は既知の学習データから導出する事前確率, P (D | C) は尤度である.本 来属性間の独立性は容易に仮定できないが Naive Bayes ではあえて独立性を仮定すること で次式が得られる.

P (D | C) = P (D

1

, ..., D

n

| C)

n

i=1

P (D

i

| C) (2.2)

(18)

分類カテゴリを求めることが目的のため,最大事後確率( MAP) 推定にてカテゴリを推 定する. MAP 推定では分母 P (D) は C に依存しないことから,分母が最大となるカテゴ リを選択する.実装上は式 (2.2) の積算でアンダーフローが起こりうるため,対数の加算と して計算する.大小関係は対数をとることに影響はない. MAP 推定により推定されたカ テゴリを C

M AP

とすると,分類されるカテゴリは式 (2.1) , (2.2) より次式にて計算できる.

C

M AP

= arg max

C

{ log P (C) +

n

i=1

log P (D

i

| C) } (2.3)

Naive Bayes

を用いた誤判断率の改善

誤判断率の改善に対して,カテゴリ C はロックを行うか否か,属性 D は利用者の動作 であり,アプリ画面と画面の向きとなる.近接反応時に最適なカテゴリ C を判別する.

C = { C

l

| ロックする , C

n

| ロックしない }D = { D

1

| アプリ画面 , D

2

| 画面の向き }D

1

D

p1

= { 全アプリ画面 }

D

2

D

p2

= { 縦, 横 }

T (x) を x が発生した回数と定義すると,式 (2.3) の事前確率 P (C) は,動作ログより次 のように計算できる.

P (C = C

l

) = T (C

l

)

CC

T (C

)

= ロックした回数

動作ログ数 (2.4)

尤度は属性毎の積で算出するため,動作ログに現れなかった属性が含まれた場合,尤度 が 0 となり精度に大きく影響を与えてしまうことがある(ゼロ頻度問題).これに対応す るため加算スムージングを採用し,スムージングパラメータ α を適用すると尤度は次のよ うに計算できる.

n

i=1

P (D

i

| C = C

l

) =

n

i=1

T (C

l

, D

i

) + α

DDpi

T (C

l

, D

) + | D

pi

| α

(2.5)

なお,今回 α = 1 としている.

(19)

表 2.2: 評価指標の定義

利用者の想定動作

(単位:回) ロックする ロックしない アプリ ロックする TP FP の動作 ロックしない FN TN

2.3 評価

2.3.1 評価指標

実際の利用データを用いて誤判断率の評価を行う.本アプリケーションは現在 Android 端 末にて実装後,GooglePlay

2

にて「マジック★スクリーンβ版」として公開し,動作ログと 各手法による結果の記録を行っている.結果とは 1. 対策なし , 2. ディレイ(3 秒),3.Naive

Bayes でのロックか否かの判断である.ディレイの設定秒数は既存のアプリケーションの

標準設定を採用し 3 秒とした.分類精度の評価は一般的な分類器は Recall と Precision の 調和平均である F 値で評価するが,本件では,利用者が想定しないタイミングでロックさ れてしまうと利用者の操作を邪魔してしまうことから,表 4.2 の TP と同様に TN も重要 な評価尺度とし,Sensitivity(

T P

T P+F N

),Specificity(

T N

T N+F P

),Accuracy(

T P+T N

T P+T N+F P+F N

) で 評価を行う [11].ここで TP は利用者がロックすると想定した時にロックした回数であり,

同様に FP(ロックしない想定でロックした回数),FN(ロックする想定でロックしなかった

回数),TN(ロックしない想定でロックしなかった回数) と定義している.

2.3.2 実験結果

利用データから誤判断率を集計したものを図 4.2 に示す.データは被験者 8 名が 7 〜 14 日 間利用したものの平均値である.利用端末は 2013 年現在発売されている Android 端末の 内,近接センサを搭載したものとしており,特に Galaxy S2, AQUOS PHONE f SH-13C にて動作確認を行っている.実験の結果,近接反応時に必ずロックする “ 対策なし ” は当 然 Sensitivity が 100% , Specificity が 0% となり, Accuracy は 38% となった.ディレイ( 3 秒)では Sensitivity は 49% になるものの, Specificity が 77% に向上したことで, Accuracy

2

GooglePlay: https://play.google.com/store

(20)

図 2.3: Sensitivity,Specificity,Accuracy の比較

が 66% に向上している.同様に提案手法である Naive Bayes でも Sensitivity は 46% となる ものの, Specificity が 86% に大幅向上し, Accuracy が 71% とディレイよりもさらに向上し ている. Naive Bayes はディレイに比べても Accuracy を 5% 向上させ,さらに意図したタ イミングで即座に画面ロックが行えることから操作性も良い.

2.4 おわりに

2.4.1 まとめ

本研究では端末から得られる利用情報を基に携帯電話が自律的に利用者をサポートする 第一段階として,利用者が意識せずとも端末が自動的にロック判断を行うアプリを Android スマートフォンにて開発を行った.近接ロック単体では誤判断が多かったことから,新し い誤判断率の低下手法を提案し,アプリ画面と近接ロックに相関がある可能性から Naive

Bayes を用いた推定を行うことで誤判断率の改善を実現した.実際の利用実験の結果,既

存の手法以上に誤判断率の改善が行えることを示し,さらには既存の手法よりも操作性が

良いことから近接ロックをより実用的なものを実現した.

(21)

2.4.2 今後の課題

本研究では近接ロックをより実用的に改良したが,更なる課題として以下 2 点を記述する.

ほかの利用情報を用いた精度改善:

時系列情報や,その他標準装備されている各種センサ値を利用することで,精度改善が行 えると考えている.

電池消費量低下に対する取り組み:

近接ロックは無駄な画面点灯を減らすため,近接ロックに必要な電力を抑えることで省電

力化に繋がると考えている.

(22)

3

定期行動を学習するスマートフォンの音量 自動設定手法

3.1 スマートフォンの音量設定

スマートフォンは生活の中で非常に便利で有用なデバイスであるが,マナーや使い方が 問題となることがある.例えば,公共の図書館で大音量でゲームをプレイしている人がい た場合,周囲の人らは迷惑に感じるだろう.図書館や映画館などの公共機関において,ス マートフォンの音量設定は非常に重要な設定である.また,学校や会社などの社会環境に おいても,最適な音量設定は求められる.しかしながら現状では,利用者は手動で音量ボ タンを押して音量を切り替える必要がある.そのため,一部の利用者は自分の意思で音量 を変えなかったり,変えることを忘れてしまったりすることがある.これらは利用者の周 囲に迷惑をかけるだけでなく,利用者自身のパフォーマンスにも悪影響を与える [12] .も し,利用者がマナーモードに設定することを忘れ,授業中に大きな音がなってしまった場 合,授業を困惑させるだけでなく,授業を中断させることもある.利用者自身の評価に悪 影響を与えることもある.仕事中の意図しない着信音は利用者の処理能力に悪影響を与え,

ストレスや仕事の失敗を増加させるともいわれている [13].

音量設定は非常に重要な設定にもかかわらず,利用者は自身の状況に応じて手動で調整

しなければならない.したがって,自動で音量を調整するシステムが望まれている.本研

究では,利用者の過去の設定情報を機械学習にて学習し,Android スマートフォンにおけ

るアプリ音量のオンとオフを自動で切り替えるシステムを提案する.本研究がアプリ音量

に着目した理由は 2 つある.1 つは着信音量がマナーモード設定と連動しているのに対し,

(23)

アプリ音量はマナーモード設定と連動していないことである.即ち,アプリ音量がゼロに なっていなければ,スマートフォンがマナーモードに設定されていたとしても音が鳴って しまう. 2 つ目はマナーモードは変更しないがアプリ音量を定期的に変更する利用者層が 存在することである.実験にて, 9 人中 5 人の利用者が定期的にアプリ音量を切り替えて いたが,マナーモードを定期的に切り替えていたのはただ 1 人であった.被験者数が多く ないため,必ずしもスマートフォン利用者全体がマナーモード設定を定期的に切り替えて いないとはいえないが,マナーモード設定を市内利用者が定期的にアプリ音量を切り替え ている場合があることがわかる.本研究では,スマートフォンの音量設定に着目し,日々 の利用者の音量設定パターンを学習し,インテリジェントに最適なアプリ音量を調整する システムを開発する.本システムは Android スマートフォンのバックグラウンドにて定期 的に操作ログを記録し,それらのログを学習する.使用しているアプリを切り替えたタイ ミングで,最適なアプリ音量を推定し自動で切り替える.本研究の目的は不意な音による 悪影響を防止することである.そのため,一般的にアプリ音量は 16 段階で設定できるが,

本研究では基礎研究としてアプリ音量がオンかオフかという点を推定する.

スマートフォンにはマナーモード設定や,着信音量,アプリ音量など様々な種類の音量設 定がある.一般的なスマートフォンはマナーモードに,サウンド,バイブレーション,サイ レントなどの設定が可能である.バイブレートモードは着信時に音を鳴らさずバイブレー トするモードである.サイレントモードはバイブレーションも着信音も鳴らない.着信音 量は着信時の音量レベルのことであり,アプリ音量はゲームや動画,音楽などを利用する 際の音量設定である.有名な OS 毎の設定は表 3.1 にまとめる.

マナーモード設定をサウンドに設定していた場合,着信やメールの受信時には着信音量

によって音が変わるが,マナーモード設定をバイブレーションやサイレントにしていた場

合,着信やメールの受信時には音が鳴らない.したがって,着信音量はマナーモード設定

に応じて変わる.一方,ゲームや動画などのアプリは,バイブレーションやサイレントに

設定していようとも,アプリ音量に応じて音がなる.本研究ではこれらの問題を改善する

目的も含めて,アプリ音量の自動設定に取り組む.

(24)

表 3.1: Android と iOS におけるマナーモード設定と音量設定の関係

Android iOS

着信 アプリケーション 着信 アプリケーション

サウンドモード ○ ○ ○ ○

マナーモード × ○ × ○ ※ 1

○: 音が鳴る × : 音が鳴らない

※ 1: 使用中のアプリによって鳴るか鳴らないかが変わる

3.2 関連研究

マナーモードを自動で切り替える研究や,着信音による意図せぬ妨害を防止するシステ ムなども含め,関連する研究を調査した.

3.2.1 ライフログ

ライフログとは利用者の行動や情報を記録したものである.本研究では特にスマートフォ ンで観測したものとする.スマートフォンにてライフログを観測する研究は多い [14, 15, 16] . これらの研究ではシステムが利用者の動作状態を 3 軸加速度センサの値を解析し分類する ことで記録している.小林ら [14] は歩行や走行,自転車走行,停止,車の運転,バスの乗 車,電車の乗車などの様々な利用者の移動方法を推定することに成功している.また,我々 は Google の Android 上の行動認識 API を用いることで容易に知ることができる.これら の研究は利用者がどのように移動し,行動したのかということをライフログとして記録す ることを可能にする.その他の研究においても,様々な利用者のライフログ情報を記録す ることを可能としている.大内ら [17] は屋内の行動認識に着目し,掃除や歯磨きなどの行 動識別を行っている. Chen ら [18] や Hao ら [19] はスマートフォンの 3 軸加速度センサ値を 用いて利用者の睡眠間隔を推定している.これらのようにスマートフォンや各種センサを 用いて,学習者の周囲環境を測定,識別する研究が盛んに行われている.本研究では, 

これらのように観測できる利用者の周囲環境と,日々の設定の組み合わせによる自動設定

(25)

図 3.1: 事前設定条件によるマナーモード自動切り替え

を模索する.

3.2.2 マナーモードの自動切り替え

アプリ音量の自動設定に関して,マナーモード設定を自動化する研究を含め調査した.

Android アプリとして Google Play

1

において公開されているアプリでは「オートマナー Plus+ 」

2

や「 silence 」

3

がある.目覚ましアラームを模した手法で,これらは図 3.1 のよう に予め利用者が設定しておいたタイミング(曜日・時間)をトリガーとしてマナーモード やアプリ音量を変更することができるアプリである.トリガーは時刻情報だけでなく,位 置情報を利用したものもあり,予め利用者が設定しておいた領域内に入るとマナーモード の設定を変更する HexRinger

4

などのアプリも存在する.各アプリの DL 数から,自動で端 末設定を変更するアプリの需要はあると考えられる.一方,現状ではこれらのアプリはト リガーや設定内容を利用者自身で指定する必要があり利用者に手間がかかるという課題が ある.

トリガー設定以外の手法を用いた研究がいくつかある.1つは位置ベースの自動設定 HexRinger に Default Silent Zones という概念を提案するものである [20] .これは自分でト リガーとなる位置を設定しなくても,予め Default Silent Zones として定義されている病

1

[Google Play] https://play.google.com/store

2

[AutoManner+] https://play.google.com/store/apps/details?id=jp.chau2chaun2.mannerstimer

3

[Silence] https://play.google.com/store/apps/details?id=net.epsilonlabs.silence.ads

4

[HexRinger] https://play.google.com/store/apps/details?id=com.amay077.android.hexringer

(26)

院や大学のようなキーワードを含む場所にいる場合,自動でマナーモードを設定している.

当研究では Default Silent Zones が予め定義されている分利用者がトリガーを設定する必要 が減少する点は評価できるが, Default Silent Zones の定義を正確に行うのは難しい.また 論文内にも記載されているように,大学と名のつく場所ではマナーモードと定義していた 時に「大学前通り」なども対象としてしまう問題点がある.論文では Road を含む場合は 除外しているようであるが, 「大学前店」など様々なパターンをすべて回避できていないこ とや,会社などのマナーモードオンオフが混在しうる場所において効果を発揮できないと いう課題がある.

ほかにも,周囲の端末との協調を利用したオートマナー手法が提案されている [21] .当手 法は自分のいる位置周辺にいる端末のマナーモードである比率を元に自身の端末のマナー モードを自動で設定する手法である.論文内ではサーバ上にデータを集約する手法と端末

間で Bluetooth 通信を行う手法が紹介されている.はじめて行く映画館や公共機関において

同様のアプリ利用者がいた場合に有用であると考えられる.ただ,論文内では多数のアプ リ利用者が集まる場所において,協調的な自動設定が行えるという点を意識しており,人 が少ない場所や利用者が習慣的に行っている設定に関しては触れられていない.また,前 提として周りの人々が対象のシステムを導入している必要性があるが,これは現実的では なく,導入コストが高いといえる.

その他,カレンダ情報を元にマナーモードの自動設定を行う手法も提案されている [22] . この手法は端末のカレンダに登録されているミーティングや昼食,買い物などの予定を元 にマナーモードの自動設定を行っている.論文内では PDA 端末内で携帯電話のシミュレー タを動作させ実験を行っており,カレンダ情報とマナーモードの関係性を実験している.

結果,カレンダ情報からマナーモードを自動設定でき,利用者からは携帯端末に実装され

た際には利用したいとのアンケートは得られたが,利用者間で一貫性が薄かったとしてい

る.この手法はカレンダの予定単位で細かくマナーモードを変更するような人が対象であ

り,かつカレンダ情報を事細かに入力でき,さらにそれを最新状態に保つことができる利

用者には向いている.しかし,一般的な利用者としては負担が大きい.

(27)

3.2.3 コンテキストアウェアネス

コンテキストアウェアネスは本研究と関連する研究分野の一つであり,コンピュータが 利用者の行動や周囲の環境,状況などを観測するというコンセプトや技術と定義されてい

る. Abowd ら [23] によると,コンテキストアウェアネスでは,一般的に利用者の入力なし

に自動でコンテキストを観測し適切なサービスを提供するシステムであるとしている.利 用者のその時の状況や環境を観測し提供するため,利用者が日々持ち歩くモバイル端末と 並列で研究されることが多い.従来は,モバイル端末におけるセンシング技術が発展して いなかったことから,コンテキストを収集するためにコンピュータをほかのセンシングデ バイスと接続して利用する必要があった [24, 25] .しかし,近年の Android や iPhone を代 表とするスマートフォンは標準で様々なセンサを搭載しており,ほかのデバイスを用いず とも容易に周囲の情報を収集することが可能となった.

本研究では,利用者がアプリ音量の設定忘れの際に,周囲への迷惑や利用者自身の集中 を妨げることを防止することを目的としている.したがって,我々はコンテキストアウェア な技術を応用し,周囲の状況から音量設定を自動化するシステムを開発する.上述したよ うに,関連研究では様々なマナーモード自動化の研究がなされてはいるものの,ほとんど において利用者は自身で時間や場所などの変更条件や,詳細なカレンダーを入力する必要 があり手間である.それに対し,本研究ではスマートフォンで収集するコンテキストを学 習し自動で音量設定を行うシステムを提案する.そのため利用者は事前に自身で変更条件 などを入力する必要がない.さらに関連研究とは異なり,正しい音量設定の正解値を日々 の利用者自身の設定から徐々に学習していく.したがって,利用者は正解データを予めシ ステムに教えておく必要もない.

3.3 提案手法

3.3.1 アプリ音量の自動設定

本研究では,スマートフォンから観測されるコンテキストを機械学習により学習し,自動

で最適な音量を設定する手法を提案する.スマートフォンは常時利用者のコンテキストを

観測し,利用者の特徴を学習する.そして,図 3.2 のように利用者の状況に応じた最適な音

量を推定する.具体的には,学校では音量をオフに,自宅ではオンにして利用しているなど

(28)

図 3.2: ライフログの検出と利用者サポートへの応用

の日々の週間を特徴として抽出し,自動で音量を設定する.本システムはバックグラウンド にて収集したコンテキストをもとに最適な音量を自動設定する.図 3.3 は本システムのシス テム概要であり,本システムは Android の標準 API より SensorManager や AudioManager を通じでセンサ値を観測している. Android スマートフォンは大まかに分けて内部環境,外 部環境,設定,時刻の情報を収集することができる.内部環境とはスマートフォンのソフ トウェア的情報であり,表示しているアプリ名や着信履歴, Wi-Fi の接続履歴などの操作ロ グのことである.外部環境とは外的な情報であり,周囲の騒がしさや,位置情報,明るさ,

利用者の動作などの利用者の外部の環境のことである.設定とはマナーモードやアプリ音 量などスマートフォンの設定のことである.時刻とは,曜日や時間など,イベントが発生 した時刻情報のことである.これらのコンテキストは内部のデータベースに記録される.

本システムはオープンソースのデータマイニングツールである Weka[26] を用いて,ス マートフォンの画面がオフになったタイミングでコンテキストを学習する.そして,本シ ステムは表示アプリが変更されたタイミングで最適な音量はオンかオフかを推定し,自動 で設定する.画面がオンの時に学習を行うと,計算処理による負荷がかかってしまうこと から,学習処理は画面がオフのタイミングで実施する.また,突然音量が変更されると利 用者が困惑するであろうことから,音量の変更タイミングは利用しているアプリが切り替 わったタイミングとしている.

本システムはバックグラウンドで定期的に学習データを蓄積している.本システムで今回

(29)

図 3.3: システム構成図

蓄積対象としたデータは表 3.2 のとおりである. 【内部】と記載しているデータは次節以降で 述べる前処理に用いられるデータであり,直接学習の属性として利用するわけではない.こ れらの情報は表 3.3 のイベント発生毎に観測され端末内部の DB に保存される.なお, GPS の計測に関しては Google I/O 2013 にて公表された GooglePlayServices の Fused Location Provider を利用し,優先度設定は, PRIORITY BALANCED POWER ACCURACY とし,

取得インターバルを 1 分とすることで電池消費を抑えて計測するものとした.この設定を 用いたことで稀に精度の低い位置情報が計測されるが,次節の前処理で述べる手法を用い て簡易的に異常値,欠損値を補完している.また, 「 GPS クラスタ」とは,補完後の緯度経 度情報をクラスタリングした結果であり,クラスタリングに関しては次節の前処理にて述 べる.これらの情報を採用した理由は,アプリ音量の設定に関して大きく影響をもたらす 因子であると判断したことからである.

3.3.2 前処理

蓄積したデータを用いてアプリ音量のオンオフを推定する前に,いくつかの前処理を行 う必要がある.一つは GPS データに関する処理で,もう一つは学習における正解データの 生成である.

本システムは GPS の観測に Fused Location Provider を利用し,優先度設定は,PRIOR-

(30)

表 3.2: 蓄積するデータの種類 番号 データ種類 概要

1 画面点灯 画面がオンかオフか

2 画面向き 画面表示が縦向きか横向きか

3 アプリ名 前面に表示されているアプリの名称

4 時刻 時刻

5 曜日 曜日

6 マナー設定 マナーモードの設定状態

7 ヘッドセット ヘッドセットの接続があるかないか 8 GPS クラスタ GPS クラスタリング ID

9 日時 【内部】日時の Long 値

10 緯度 【内部】 GPS にて観測した緯度 11 経度 【内部】GPS にて観測した緯度 12 GPS 精度 【内部】 GPS にて観測した精度 13 アプリ音量 【内部】設定しているアプリ音量

ITY BALANCED POWER ACCURACY を利用すると述べたが,これは消費電力を抑え

るために,GPS による測位を最小限に抑え,センサや Wi-Fi,3G による位置推定を行う ものであり,しばしば低精度の位置情報が観測される.このことから,GPS データに関し ては補完が必要であることがわかる.また,単純な緯度経度の情報はアプリ音量の推定に 関して特徴をえることが難しいことから緯度経度情報をクラスタリングし有意位置を抽出 することで属性値とする.GPS の異常値,欠損値補完は,対象データの前後で観測された 確実なデータを用いて,直線移動を行ったと仮定し,経過時間とユークリッド距離による 補完を行う.T

0

T

n

が正常に GPS を測位し,T

1

から T

n1

までのデータが GPS 異常値ま たは欠損値であったとする.T

n

の属性を { 時刻 (Time), 緯度 (Lat), 経度 (Lng) } とすると,

図 3.4 のように以下の式で異常値,欠損値を補完する.Interval(X, Y) は X と Y の時間差

であり,Distance(X, Y) は X と Y のユークリッド距離を示す.この計算を緯度,経度それ

ぞれで実施する.なお補完対象は,T

0

から T

n

の間隔が 5 分以内もしくは 1 時間以内だが

(31)

表 3.3: データ取得タイミング タイミング

画面オン 画面オフ

ヘッドセットが挿入された ヘッドセットが外された バッテリーが接続された バッテリーが外された 近接反応があった 近接反応がなくなった マナー設定がされた マナー設定が解除された 電話を発信した 着信があった

通話が始まった 通話から待ち受けに戻った

Wi-Fi がオンになった Wi-Fi がオフになった

Volume が変更された 時刻(分)が変化した

バッテリーが変更された ホームボタンが押された

図 3.4: GPS 異常値,欠損値の補完

移動範囲が 50m 以内の場合としており,そのほかは欠損値とする.

T

i

= T

0

+ Interval(T

i

, T

0

)

Interval(T

n

, T

0

) × Distance(T

n

, T

0

) .

その後,補完された緯度経度情報を用いて,重要位置クラスタを生成する.重要位置ク ラスタとは,利用者が一定時間以上滞在していたという,利用者にとって意味のある位置ク ラスタである.例えば,利用者の家や駅,職場などである.クラスタリング手法は様々なも のがある.例えば有名な k 近傍法はデータセットを重心をもとに k 個のクラスタに分類する 手法である.しかし,緯度経度情報にこれらのアルゴリズムを単純に適用するだけでは重 要位置クラスタは抽出することができない.そこで本研究では Kang ら [27] の Time-Based

Clustering の手法を用いる.本手法は緯度経度情報に付帯する時刻情報を用いて,一定以

(32)

上の滞在時間を一定の移動範囲内で測位するときに重要位置としてクラスタリングを行う 手法である.本システムはアルゴリズムがシンプルであり,かつ逐次的にクラスタリング を行うことができるため,本システムに適していることから採用した.特にシンプルであ るという点はモバイル上での実装において電力消費が少ないこと, CPU 資源を消費しない ことから重要であるといえる.なお,最小滞在時間と範囲のパラメータは標準値である 5 分と 50m としている.

3.3.3 学習データ

機械学習を行うにあたり学習の正解となる正解データを生成する必要がある.理想的に は,利用者が逐一正解となる情報を入力することが望ましいが,現実的ではない.そこで 本システムではアプリの利用単位という概念を提案し利用単位ごとで,アプリ音量がオン かオフかを判定し正解データとして利用する.利用単位とは利用者の一回のアプリ利用を 定義するものである.利用者がホーム画面→ゲーム→ホーム画面と遷移して利用した場合,

それぞれの画面で取得したインスタンスを一括して利用単位として考える.利用単位を区 切る条件はアプリ名か画面点灯が変化するか,例外として前回のデータから(欠損値など の都合で) 5 分以上経過した場合としている.表 3.4 は蓄積データのサンプルである.紙 面の都合から一部を抜粋して記載しているが,特に重要なのは画面点灯,アプリ名,時刻,

アプリ音量である.このデータにおいて利用単位を分類すると区切り線が入っている位置

( 2 行目, 10 行目, 14 行目)で利用単位が区切られている.また,利用単位ごとで,アプリ 音量がオンかオフかの判断基準は多数決とする.表 3.4 において利用単位 2 つ目の Puzzle は,初期値としてアプリ音量がオンであるが,利用単位内ではオフが多数となるため,正解 データはオフとする.したがって, 3 行目, 4 行目の Correct Data がオフ( False )になる.

3.4 評価実験 1

関連研究とは異なり,本システムはアプリ音量の推定に着目しており,かつ利用者から

の正解情報や設定条件の事前入力を必要としない.したがって,単純に提案手法とマナー

モードを自動設定する関連研究を比較することは難しい.したがって,本研究では本シス

テムがどのくらい利用者の負担を減らすことができているかを,推定精度を考察すること

で評価する.本システムによるアプリ音量の推定精度を評価するため,スマートフォンの

(33)

表 3.4: 記録データサンプル Screen Application

Time

GPS Volume Correct

On or Off Name Cluster On or Off Data

1 ON Home 1323 Place1 ON True

2 ON Home 1324 Place1 ON True

3 ON Puzzle 1325 Place1 ON False

4 ON Puzzle 1326 Place1 ON False

5 ON Puzzle 1327 Place1 OFF False

6 ON Puzzle 1328 Place1 OFF False

7 ON Puzzle 1329 Place1 OFF False

8 ON Puzzle 1330 Place1 OFF False

9 ON Puzzle 1331 Place1 OFF False

10 ON Puzzle 1332 Place1 OFF False

11 ON Home 1333 Place1 OFF False

12 ON Home 1334 Place1 OFF False

13 ON Home 1335 Missing OFF False

14 ON Home 1336 Missing OFF False

15 OFF Home 1337 Missing OFF False

16 OFF Home 1338 Missing OFF False

日々の操作ログを取得する実験を行った.実験用アプリは表 3.2 のコンテキストを表 3.3 の

イベントが発生したタイミングで記録し,定期的にサーバにログを送信する.観測したコ

ンテキストと利用者が実際に使っていた設定を利用することで利用者の状況を推定するこ

とができるため,利用者が手動で音量を変更した回数,即ち本システムが軽減できるであ

ろう利用者の負担を分析することができる.本システムは定期的に様々なコンテキストを

記録することから,消費電力が増加することが懸念される.そのため,長期間被験者を募

ることが難しい.今回大学生や大学院生,会社員など 9 名の被験者にて,7 日から 79 日の

動作ログを取得した.平均観測日数は 30 日間である.また,この中でアプリ音量を逐次切

り替えて利用している利用者は 5 名であり,5 名の利用期間は 13 日〜79 日間で,平均 41

日間/人である.精度評価には,アプリ音量を逐次変更していた 5 名のデータを用いる.

(34)

図 3.5: 本システムで採用している木構造識別器の概要

実験は次のステップで実施する.まず, 3.3.1 節にて述べたステップにて正解データを生 成する.次に,実際の利用環境と同じ状況においてシミュレーションを行い,本提案手法に よる予測結果を求める.そして,正解データと予測結果を比較する.シミュレーションと は,時系列に従って学習データを読み込み,時系列に従って学習を進める方式である.こ れを行うことにより,実環境で利用した場合の推定結果と同様の結果をえることができる.

3.4.1 識別手法

本システムはデータマイニングツール Weka による機械学習を用いてアプリ音量を推定 する.特徴ベクトルは表 3.2 のから内部処理用の属性を除く 8 属性であり,前述した前処 理にて計測される.アプリ音量は推定時の初期音量と表示している画面に強く依存すると 考え,本研究では図 3.5 の構造の識別器を用いて推定を行う.

図 3.5 の葉に位置する最適な識別器を求めるために,様々な識別器を用いてシミュレー ションを行い推定精度の比較を行った.利用した識別器は有名な 4 種類であり,Random

Forest(RF),サポートベクターマシン(SVM),ナイーブベイズ(NB),PART である.

RF[28] は決定木を弱識別器としたバギングの手法であり,多数の決定木をランダムサンプ

リングと特徴のランダム抽出によって生成し多数決により推定を行う手法である. SVM[29]

はカーネルトリックと呼ばれる手法を用いて,非線形文理問題に対しても効果的に識別が

行える学習モデルである.NB[9] はベイズの定理をもとにしたシンプルな確率分類モデル

である.PART[30] はルールベースの識別器であり,部分決定木を繰り返し作成することで

ルールを生成する手法である.パラメータは基本的に Weka の標準パラメータを用いてい

る. RF では木の深さと特徴量数は無制限,木の数は 10 としている. SVM では RBF カーネ

(35)

表 3.5: 評価指標 User adjusted

True False

System adjusted

True TP(True Positive) FP(False Positive) PPV False FN(False Negative) TN(True Negative) NPV

Sensitivity Specificity Accuracy ルをコスト 1 ,ガンマ 0 にて利用している. NB ではカーネル推定は利用していない. PART ではルール作成の最小オブジェクト数は 2 としている.

3.4.2 評価基準

本研究では [11] を参考に表 4.2 の評価指標を用いた.表中の True はアプリ音量がオンの

ことを, False はオフのことを示している.

Recall

T

= T P

T P + F N

Recall

F

= T N

T N + F P P recision

T

= T P

T P + F P P recision

F

= T N

T N + F N

Accuracy = T P + T N

T P + T N + F P + F N

Recall

T

とは利用者が音量をオンで使った合計回数のうち,システムがオンであると推

定した回数の比率を示している.Recall

F

とは利用者が音量をオフで使った回数のうち,シ ステムがオフであると推定した回数の比率を示している.即ち,どの程度利用者の意図を 予測することができたかである.P recision

T

とはシステムがオンであると推定した回数の うち,利用者がオンで使った回数である.P recision

F

はシステムがオフであると推定した 回数のうち,利用者がオフで使った回数である.即ち,システムの予測がどの程度あたっ たかである.そして全体を通じての正解率は Accuracy である.

さらに,本提案の精度改善の基準として比較対象となるデータを生成する.比較対象と

して「マナーモードとアプリ音量を連動した場合 (マナー連動)」を生成する.これを比較

(36)

表 3.6: 提案手法とマナーモード連動手法における予測精度比較

Recall

T

Recall

F

P recision

T

P recision

F

Accuracy

マナー連動

52.0%( ± 41.9%) 99.9%( ± 0.1%) 99.4%( ± 0.7%) 78.0%( ± 18.6%) 80.1%( ± 17.2%)

RF 88.6%( ± 8.8%) 98.7%( ± 1.0%) 97.4%( ± 2.7%) 92.7%( ± 6.8%) 94.6%( ± 4.5%) SVM 89.4%( ± 8.5%) 99.1%( ± 0.8%) 98.4%( ± 1.2%) 93.2%( ± 6.4%) 95.2%( ± 4.2%) NB 88.6%( ± 9.1%) 98.6%( ± 1.0%) 97.3%( ± 2.7%) 92.8%( ± 6.6%) 94.6%( ± 4.4%) PART 89.3%( ± 8.6%) 98.9%( ± 1.0%) 97.7%( ± 2.6%) 93.1%( ± 6.4%) 95.0%( ± 4.3%) 対象として採用した理由としては,アプリ音量とマナーモードの連動は実装可能な原理で あり,単純なアプリ音量推定となりうると考えたため比較対象とした.

3.4.3 実験結果

表 3.6 は個人ごとにシミュレーションを実施した結果であり,平均値( ± 標準偏差)の 形式で記載されている.マナー連動となっている行はマナーモードに連動して音量を切り 替える手法を採用した場合の推定精度である. RF , SVM , NB , PART の行は本提案手法 をそれぞれの識別器にて実施した場合における推定精度である.なお,被験者 5 名のアプ リ音量がオンとなっていたインスタンスの比率は 59.7%( ± 8.4%) となっている.

まず,マナーモード連動手法と提案手法を比較する. Accuracy に着目すると,マナーモー ド連動手法は 80.1%であるのに対し,提案手法はそれぞれ 94.6%,95.2%, 94.6%,95.0%と なっており,すべてにおいて高い結果となっている.その結果本提案手法はマナーモード と単純に連動する手法に対してより正確に予測ができているといえる.次に Recall に着目 すると,マナーモード連動手法は最も Recall

T

が低く,Recall

F

が高い結果となっている.

これは,マナーモードの設定値がアプリ音量オフと密接に連動していることが原因と考え

られる.しかし,Recall

T

が低いことから,マナーモードであるが,アプリ音量をオンに

して利用したいケースで予測精度が低くなっていることがわかる.また,各識別器による

推定精度の比較を行った結果,全体的に僅差ではあるが,SVM の Accruracy が最も高い結

果となった.

(37)

3.4.4 評価実験 1 の残課題と発展

評価実験 1 では,本システムによる予測結果を示したが,いくつかの課題が残っている.

1 つは,実験に協力してくれたテストユーザが少なく, 9 名中 4 名が定期的にアプリ音量を 変更していなかったという点である.したがって,定期的にアプリ音量を変更する利用者 の比率が不明確であり,本システムのターゲットとなる人々の比率が不明確であった. 2 つ 目は,不均衡データである.分析では,すべてのデータを正解データとして用いていたた め,ほとんどのインスタンスが「利用者がアプリ音量を変更しない」ケースとなった.ほ とんどのデータがアプリ音量を変更しないインスタンスだと仮定すると,利用者が理想と する音量は推定時の初期音量であると,本手法は学習してしまう可能性がある. 3 つ目は 利用者の平均精度に着目した点である.しかし,利用者には本システムが有効に働く利用 者と,そうでない利用者がいることが想像できる.

また,関連研究では逐一被験者に最適な音量を尋ねることで理想の正解データを観測し,

提案手法の検討を行っていた.しかし,被験者は実験時に毎回完璧な音量を選択する必要 がある.この手法では,一般的な利用者に対し実験的な音量設定のモデルを構築すること は可能であるが,個々の利用者の定常的な設定手法は学習できない.一方,我々の提案手 法は実際のスマートフォンログを用いており,利用者は毎回完璧な音量設定を選択する必 要がない.本研究の目的は,利用者に対して汎用的な音量設定のモデルを作ることでなく,

実際のスマートフォンログから,日々利用者の定期的な設定を学習するシステムを構築す ることである.しかし,実際のスマートフォンログには,定期的な設定以外にも例外的な 設定や,利用者の設定忘れなども含まれてしまう.これらをすべて学習させてしまうこと で,正確に定期的な設定を学習する妨げとなる危険性がある.

3.5 評価実験 2

3.5.1 提案手法の修正

評価実験 1 における残課題を解決するために,提案手法の改良を行った.まず,学習に

使用する特徴量を減らした点である.提案手法 1 では GPS により位置情報を観測し, GPS

クラスタを特徴量として含めていた.しかし, GPS を用いると消費電力が上昇することか

ら実用度が劣っていた.そこで, GPS での観測を行わず,ほとんど電力を消費せず観測で

図 2.1: 近接ロック動作イメージ 図 2.2: 誤判断パターン例 去の動作ログから利用者が端末を利用中かどうかを学習し,近接反応時にロック判定を行 う手法を提案し,操作性を低下させず誤判断率を低下させる. 2.2.1 動作中画面との関連性 図 2.2(a) , (b) より誤判断は動作中の画面に相関がある可能性を考え,とある被験者一名 の動作ログを 12 日間記録し表 2.1 にデータをまとめた.動作ログは近接センサ反応時に, 動作中のアプリケーション画面と,近接ロックが正常判断であるか誤判断であるかの
表 2.1: 画面ごとの誤判断率 動作中の画面名 ロック回数 失敗回数 誤判断率 ナビ 7 7 100.0% ブラウザタブ画面 7 7 100.0% ジョブマネージャ 3 3 100.0% 着信歴 1 1 100.0% クイック検索 1 1 100.0% パズドラ 354 271 76.6% ブラウザ 134 91 67.9% Twitter 16 9 56.3% 緊急ダイアル 11 6 54.5% 電話帳 2 1 50.0% フェイスブック 2 1 50.0% LINE 39 17 43.6% ホーム 5
図 2.3: Sensitivity,Specificity,Accuracy の比較
図 3.1: 事前設定条件によるマナーモード自動切り替え
+7

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