部分撥水型スラスト軸受での圧力発生の確認
メディカル・トライボロジー研究室 山地貴士 1. 緒言
本研究で用いられる撥水処理型軸受では,撥水処理を 施してスリップ流れを発生しやすくした部分と,スリッ プが生じ難い親水処理の部分をすべり方向に交互に配置 した軸受構造により,せん断流量の不連続性を生み,圧 力流れを発生させて荷重を支持している.
本軸受構造は,図1に示すような平坦で平滑な平行摺 動面をもつ軸受の製作を可能にする.その作動原理は従 来の軸受に近いものと考えられており,摩擦特性や膜厚 の観測から実際に軸受として十分に機能する可能性が高 いことが分かっている.しかしこれまで,実側による圧 力発生の確認は行われていなかった.そこでここでは,
微小圧力計を用いて圧力の測定を行った.
2. 実験装置および方法
実験装置は図
2の概略図に示されるように,回転する 水槽に設置された回転試験片に,固定試験片を押しつけ る,平坦な端面接触型のスラスト軸受試験機である.軸 受材には,固体接触により損傷を発生し易いソーダガラ ス(外径
40mm,厚さ5mmで,表面の粗さが
Ra=0.01μm)を用い,軸受が流体潤滑領域で運転されることを 確認しながら実験を行った.固定片には,撥水部と親水 部の境界の
2箇所にφ1.5mmの光ファイバ型超小型 圧力センサの挿入用の穴を設けた試験片を用いた.そし て,実験では,
RE=13.3mmでのすべり速度をV=0.15m/sに設定し,荷重を
5~15Nまで,5分ごとに増加させて圧 力の測定を行った.
3. 圧力の測定例
図
4は撥水部から親水部への境界①と,親水部から撥 水部への境界②の計
2箇所での圧力を測定した結果を 示してある.前者①での圧力は荷重を負荷させることに より増加しているが,このときの②の圧力はほとんど変 化せず,ほぼ大気圧のままである.この傾向は図
2中に 示した①と②の位置での理論圧力分布と一致している.
同時に測定された摩擦係数と,圧力センサを取付てい ない試験片で測定した摩擦係数は,ほぼ一致しており,
圧力センサの取付による試験片の傾き等は発生してい ないと判断される.等価半径
REで測定された圧力を正 圧発生部での平均圧力として推定した軸受の支持荷重 と実際の負荷荷重との誤差は
20%程度であった.4. 結言
部分撥水型スラスト軸受での発生圧力を,光ファイバ 超小型圧力センサを用いて測定した結果,撥水部から親 水部への境界で正圧が発生し,それは負荷荷重の増加に 伴って上昇するが,親水部から撥水部への境界での圧力 は,ほとんど大気圧のまま変化しない等の基礎特性が明 らかになった.
図 1 三扇撥水軸受
図 2 実験装置概略
図 3 センサ取付位置
図 4 圧力測定例
Non treatment sectionWater-repellent section (a) Three section water-repellent test piece (3-W-R)
Non treatment section
Water-repellent section Non treatment section
Water-repellent section (a) Three section water-repellent test piece (3-W-R)
親水部
撥水部
接触角θ=110°
接触角
θ=10°
W
ロードセル 固定試験片
回転試験片 バランス
ウェイト
プーリ 精製水
光ファイバー超小型圧力センサ アンプ
測定・解析用パソコン
実験条件 荷重:5~15(N) 速度:0.15(m/s) 計測時間:5分間
L
回転 固定
v pmax
①
圧力p
気泡性キャビテーション センサ
①
撥水部 親水部
v
撥水 親水
② RE= 13.3mm
センサ
②
-5 0 5 10 15 20
発生圧力p[kPa]
V=0.15m/s
0 0.01 0.02
摩擦係数μ
5 10 15
0
時間t [min]
センサ①(撥水→親水)
センサ②(親水→撥水)
センサなし センサあり
5N 10N 15N
静止