セル間キャリア・アグリゲーション方式の 高度化に関する研究
平成
25
年度修了三 重 大 学 大 学 院 工 学 研 究 科 博 士 前 期 課 程 電 気 電 子 工 学 専 攻 計 算 機 工 学 研 究 室
吉 崎 玄 太
三 重 大 学 大 学 院 工 学 研 究 科
目次
第1章 序 論 1
' 1 4 3 4 3
一成一構
景 的 の 背 目 文 究 究 論 研 研 本
1E
ウ‑1d
第2章 次世代移動通信システム 4
2.1 LTE‑Advancedにおける周波数有効利用のための基礎技術.• • • . • •.• •.• • .• • • .5 2.1.1 周波数繰り返し技術.•. • • . • • • • • •.• • •• • ••. .., • • • •• • • • • .••• • • .. • .• .5 2.1.2 多元接続技術...6 2.1.3 スケジューリング技術...• •• • • .• •.• • • • •• • . •• • •• •..• • •• •• • • • • • . •.• 8 2.2 キャリアアグリゲーション...9 2.3 基地局間協調通信技術.• . • • • . • . • • • • . • • • • . • . • • • • • . . • • • • • • . • • • • • . • • • • • .. 11 2.4 セル領域拡張技術.. • • • . • • • • • . • • • • . • • • • • • • • . • • . • • • . • • • • • • • • • . . • • • • • . •. 13 2.5 スペクトル拡散技術.• • . • • • • • . • . • • . • • • . • • • • • • • . • • • • • • • • • • • • • • • • . • • • . •. 15
第3章 不均一トラヒックとその対策技術 16
3.1 不均一トラヒックの発生要因.• • . • • • • . • • • • . . . • • • • . • • • • • • • . • • • • • . • • • • • .• 16 3.2 不均一トラヒックがシステムに与える影響.• • . . • . • • • • • • . • • • . • . . . . . • • • • •• 17 3.3 セル内通信品質不均一性.• • • • • • • . . • • • . • . • • • • • • . • • • . • • • • • • • • • . • • . • • • . •. 17 3.4 セル内通信品質不均一性に対する対策.• • • . • • • • • • . • • • . • • . . • • • • • • • • • . • . •• 18 3.4.1 セノレ内通信品質不均一性へのCoMPおよびCREによる対策.• . • • • • • • 18 3.4.2 セノレ開通信品質不均一性へのCoMPおよびCREによる対策.• • • • • . • . 18 3.5 セノレ開通信品質不均一性への対策...20 3.5.1 セル問CAの概念...20 3.5.2 1 st通信...23 3.5.3 2nd通信....'...23 3.2 セル間CA法における問題点...26
第4章 可変拡散率
s s
通信を用いたセル間 C A法 284.1 可変拡散率
s s
通信を用いたセル間CA法の概念...i... 28 4.2 SS通信の適用方法......29 4ユ1 狭帯域SS通信...29 4ユ2 広帯域SS通信...30 4.2.3 狭/広帯域SS通信の併用.. • • . • . • • • • • . • • • • • . • • . • . . . • . • •• • . • • . • . . • • 31三 重 大 学 大 学 院 r学 研 究 科
s s
第5章 特性評価モデル 39
5.1 セルモデル...39 5.2 チャネルモデ、ル...40 5.3 伝搬モデ、ル.. • • . • • • • • . • . • . • • . • • • . • • . • • • • . • • • • • • . • • . • • • • • • • • • . • . • • . • •. 41 5.4 トラヒックモデル...42 5.4.1 トラヒック生起モデル....'...42 5.4.2 不均一トラヒック分布モデル...42 5.5 適応変調符号化...43
第6章 評価結果 44
6.1 シミュレーション諸元...44 6.2 評価項目...45 6.3 各種
s s
通信適用法における特性評価...48 6.4 提案セル間 CA法と従来セル間 CA法の比較.• . . • • . • . . . . • • . • . • • • . . • • • • •• 51 6.4.1 平均特性における比較.• • • . . • . • • • . • • . . • • . • • • . • . • • . • • • . • • • • . • • .• 51 6.4.2 異なるトラヒック負荷を持つセル別の特性における比較.• •• • •.• •.• 55 6.4.3 セル開通信の公平性特性における比較...58 6.5 特性評価のまとめ.• • . • • • . • . • • • • • • ; • • • • • • • • • • • • • • . • • . • . • • • • • • . • . • • . • • . 61第7章 結 論 62
7.1 本研究のまとめ....'...62 7.2 今後の課題..'... .'...63
参考文献 64
謝 辞 66
研 究 業 績 67
三 重 大 学 大 学 院 仁 学 研 究 科
第1章
序論
1.1
研究背景現在,移動通信の国際標準化団体である第3世代(3G:3rd Generation)移動通信システ ムの標準化プロジェクト(3GPP:3rd Generation Partnership Project)において,主要携帯電 話 事 業 者 に よ っ て Long Term Evolution(LTE)[1]の 発 展 形 で あ る Long Term Evolution-Advanced(LTE-A)[2][3]の標準化が進められている.LTE-Aは下り最大1[Gbps]
の超高速データ通信と高システム容量を実現するために最大 100[MHz]の広い帯域を用 いた通信が必要となる.さらに,LTE-Aシステムは,LTEシステムからのスムーズなシ ステム移行のために,LTE端末(UE:User Equipment)をシステムに収容する後方互換性 も要求される.これらの要求を実現する技術として,LTE-Aは,キャリアアグリゲーシ ョン(CA:Carrier Aggregation)[4]-[7]を採用する。CAとは,UEが複数のコンポーネント キャリア(CC:Component Carrier)を束ね,ひとつの広帯域チャネルとして利用する技術 である.例えば,LTE-A UEは,CA技術を用いて複数のCCを束ねて広帯域通信を実現 し,LTE UEは,1CCのみを利用して後方互換性を実現する.
LTE-Aにおける高速・大容量通信の実現には、受信側で高い受信電力が必要となるが,
UEから基地局に対する通信である上り通信において,送信側であるUE の筐体サイズ やバッテリ-容量の制約から,送信電力を制限しなければならない.そのため,上り通 信おいて,受信側である基地局(eNB:eNodeB)での受信電力を増大させるためには,セ ルサイズを縮小しなければならない。しかしセルサイズの縮小は、セル間の収容ユーザ 数の偏りを顕著にし,セル間のトラヒック分布を不均一なもの(セル間不均一トラヒッ ク)とする原因となる。さらに,LTE-A では,音声,メール,動画など通信サービスの 多様化により,UE 間におけるトラヒックの偏りも大きくなる。このような不均一トラ ヒック環境において,高トラヒックセルではチャネル不足,その一方,低トラヒックセ ルではチャネル余剰が生じる.このような状況は,セル間の通信品質の不均一性の原因 となる.さらに,チャネル利用の面で非効率であるため,システム容量の低下も招く.
品質の不均一性の緩和に対してほとんど効果がない.
一方,通信半径(カバレッジ)の異なる複数のeNBを同一エリア内で利用するヘテロジ ニアスネットワーク(HetNet:Heterogeneous Network)[10]は,高密度トラヒック領域であ るホットスポットがセル内にいくつか存在する環境で,トラヒックを分散(オフロード) するために研究がなされている.HetNetにおいて,マクロセル内にピコセルカバレッジ を持つピコ eNB が配置される.これにより,マクロセルからピコセルへホットスポッ トのトラヒックをオフロードすることができる.ピコeNBは,LTE,LTE-Aにおけるチ ャネル資源の基本的な割当単位であるリソースブロック(RB:Resource Block)をホット スポット内で自身付近に位置するUEに集中的に割当てる.このRB割当により,マク ロセル内のシステム特性は改善する.
HeTNet において,トラヒックオフロードを実施する技術の1つであるセル領域拡張
技術(CRE:Cell Range Expansion)[11]は,ピコセルのセルカバレッジの大きさを制御す ることによって,マクロセルからピコセルへオフロードするトラヒック量を調整する.
HetNet環境下におけるCREでは,ピコセルのカバレッジが変化し,UEが接続eNB切
替を行う場合でも,マクロ,ピコ eNB 両方から良い信号品質を得られる.これは,マ クロ,ピコeNBが比較的近い距離に配置されているため,接続eNB切替を行った場合 でも,切替前とUE‐接続 eNB間の距離があまり変化しないためである.したがって,
HetNet環境下においてCREは,適切なトラヒックオフロードを達成する.さらに,こ
のような適切なトラヒックオフロードは,マクロセル内の通信品質の不均一性の緩和に 繋がる.一方,マクロセル eNB のみから構成されるマクロセル・セルラーネットワー クにおけるセル間の通信品質の不均一性に対しては,マクロセルのセルカバレッジ制御 にCRE を適用した場合は適切に動作しないことが予期される.これは,マクロセル・
セルラーネットワークにおいて,各 UE の接続 eNB が各マクロセルでのセルカバレッ ジ制御によって変化するとき,UE‐接続 eNB 間の距離が大きく変化し,UE における 信号品質もまた大きく変化するためである.
マクロセル・セルラーネットワークの通信品質の不均一性に対しては,UEが自eNB と近隣eNBのCCを用いてアグリゲーションを実施するセル間CA法の研究がなされて いる[12].この手法を用いることで,自身の通信要求に対して,自eNBから割当てられ るRBが不足しているUEは,すでにRB割当が完了した近隣の低トラヒックセルeNB の余剰RBを利用することができる.しかし,セル間CAにおいて,近隣eNBとの通信 は距離減衰と干渉電力が大きくなる.そのため,受信信号対干渉電力比(SIR:Signal to Interference power Ratio)が小さくなる傾向がある.この状況は低トラヒックセルにおけ るRB使用率の改善と,セル間不均一トラヒック環境における通信品質の不均一性の緩 和を制限する.この対策として,セル間 CA法では,近隣 eNB との通信時に送信電力
制御(TPC:Transmission Power Control)を適用する.TPCを用いたセル間CAにより,各 eNBは,他のeNBとそのeNBを自eNBとして接続するUEの通信をある程度保証しつ つ,自身を近隣eNBとして接続するUEにおける受信SIRを増加させることができる.
したがって,TPCを用いたセル間CAは,低トラヒックセルにおけるRB使用率とセル 間不均一トラヒック環境における通信品質の不均一性の緩和を達成することができる.
しかし,この手法では,近隣eNBと通信を行う際,他の eNB とそのeNBを近隣eNB として接続するUEの通信を完全に保証することができない.したがって,これまでに 提案されているセル間 CA法における近隣 eNB との通信方式を詳細に検討する必要が ある.
1.2
研究目的本研究では,次世代移動通信システム LTE-A の下り通信を対象とし,マクロセル・
セルラーネットワークにおけるセル間不均一トラヒックによる通信品質の不均一性を 緩和してシステム特性を向上させることを目的とする.通信品質不均一性の緩和手法と してセル間CA 法を研究対象とし,従来法で発生した近隣eNB との通信における問題 の解決を目指し,可変拡散率スペクトル拡散(SS:Spread Spectrum)通信を用いたセル間 CA法を提案する.
提案法は,近隣eNBとの通信にSS通信を導入することで,他の端末の通信を完全に 保証しながら,近隣eNBとの通信における受信SIRを向上させる.SS通信導入にあた り,本研究では,その各種適用法と,各適用法におけるチャネル割当法を検討する.提 案法を計算機シミュレーションにより評価し,従来法と比較し,提案法の有効性を示す.
1.3
本論文の構成本論文は,以下のように構成される.第2章では,次世代移動通信システムを構成す る基礎技術,主要技術について説明する.第3章では,本論文で問題としている不均一 トラヒック,それに伴う通信品質の不均一性について説明した後に,通信品質の不均一 性への従来の対策法について説明する.第4章では,可変拡散率SS通信を用いたセル 間CA法を提案する.第5章では,計算機シミュレーションにおける評価モデルを示す.
第6章では,計算機シミュレーションによる特性評価を示し,提案法の有効性を示す.
第7章では,本論文のまとめを行う.
第2章
次世代移動通信システム
この章では,本研究の対象システムであるLong Term Evolution-Advanced(LTE-A)の基 礎的な構成技術,関連技術を説明する.2.1節では,LTE-Aにおける周波数有効利用の ための基礎技術ついて述べる.2.2節,2.3節,2.4節では,LTE-Aにおける本研究に関 する主要技術として,キャリアアグリゲーション,基地局間協調通信技術,セル領域拡 張技術について述べる.2.5 節では,本研究で適用するスペクトル拡散技術について述 べる.
2.1 LTE-Advanced
における周波数有効利用のための基礎技術LTE-Aのような移動通信システムおいて,限りある周波数資源を有効利用することは,
システム特性の向上に繋がるため非常に重要である.以下で,本研究でも導入する,
LTE-Aにおける周波数の有効利用のための基本的な技術について詳述する.
2.1.1 周波数繰り返し技術
LTE-Aでは,サービスエリアを複数の無線エリアによって構成する.一般的に1つの
基地局によってカバーできる無線エリアをセルと呼ぶ.周波数繰り返し技術は,各セル に同一周波数を割当てることで,周波数を再利用する技術である.これにより,サービ スエリア内の周波数利用効率が向上し,システム特性を向上させることができる.
しかし,図2.1のように1つの周波数をサービスエリア内で繰り返す場合,セル内だ けに電波をとどめることは,不可能であるため,近隣のセルに干渉を及ぼしてしまう.
これをセル間干渉と呼ぶ.また,伝送速度を向上させるため基地局(eNB:eNodeB)の送 信電力を増大させると,それだけセル間干渉が増大してしまう.したがって,LTE-Aに おいてセル間干渉制御は,大きな検討課題である.
セル間干渉を抑制する技術のひとつとして,セクタ化がある.セクタ化とは,特定の 方向だけに電波が送信される指向性アンテナを利用し,ひとつのセルの中を3つあるい は6つ程度のセクタに分割する方式である.このセクタ化では,特定の方向にしか干渉 波が及ばないのでセル間干渉の低減を実現できる.
従って分割して使用する技術である.この技術を用いることでセル内における不必要な ユーザ間干渉を防ぐことが可能となる.
LTE-A は,多元接続方式として,直交周波数分割多元接続(OFDMA:Orthogonal
Frequency Division Multiple Access)を採用する[13].LTE-AにおけるOFDMAでは,図2.3 に示すような,周波数軸上の複数のサブキャリアと時間スロット(シンボル)の組み合わ せから構成される基本チャネル単位(これをリソースブロックRB:Resource Blockと定 義する)を各端末(UE)に割り当てる[14].ここで,複数のRBによって構成される周波数 ブロックは,コンポーネントキャリア(CC:Component Carrier)と呼ばれ,RB とは,図 2.4で示すような関係性がある.OFDMAでは,伝搬環境に応じて各UEにRBを最小単 位としたチャネル割当を行うことで,RB ごとに伝搬環境が良好なUEへの割当てが可 能となり,無線周波数の有効利用を実現できる.
図2.2 時間,周波数軸におけるRB配置
図2.3 CCとRBの周波数軸上の関係
応的に割当てる制御を行う.この制御を行う技術をスケジューリング技術という.スケ ジューリング技術は,システムにどんな利益もたらしたいのかによって,制御方法が変 化する.以下に代表的な3つのスケジューリングアルゴリズムについて詳述する.
(1) ラウンドロビン(Round Robin)[15]
各eNBが自身に接続するUEに対して,決まった順番でRBを割当てるアルゴリズム である.この方式は,UE間の通信品質に公平性を与えることができると思われがちだ が,必ずしも公平性を与えられるわけではない.これは,各RBを各UEに割当てる際 の通信品質を考慮していないためである.
(2) 最大搬送波対干渉電力比(Maximum CIR:Maximum Carrier to Interference Ratio)[16]
各eNBが各RBを瞬時のデータ伝送速度が最も高いUEへ割当てるアルゴリズムであ る.この方式により,高いシステム特性が得られる.しかし,同一UEへの割当てが増 加し,RBが全く割当てられないUEが多数発生するため,UE間の通信品質の公平性は ほとんど与えられない.
(3) プロポーショナルフェア(PF:Proportional Fair)[17]
各eNBが割当対象RBにおいて,各UEの平均データ伝送速度に対する,そのRBで 伝送できる瞬時のデータ伝送速度の比を計算し,その値が最大となるUEへ割当てるア ルゴリズムである.この方式により,高いUE間の通信品質の公平性が得られる.
2.2
キャリアアグリゲーションLTE-Aは,下り最大1[Gbps]を達成するための広帯域通信,システムにLTE UEを収
容する後方互換性を提供しなければならない.そこで LTE-A は,キャリアアグリゲー ション(CA:Carrier Aggregation)という技術を採用する.CAとは,LTEで使われている 搬送波であるコンポーネントキャリア(CC:Component Carrier)を複数束ねることで,ひ とつの広帯域伝送チャネルとして利用する技術である.この CA 技術を LTE-A システ ムに適用することで,図2.5に示すようにLTE-A UEは,CAにより複数の束ねたCCを 用いて通信を行い,広帯域通信を実現する.その一方LTE UEは,複数あるCCの内1 つを用いて低速データ通信を行うことが可能となるので,広帯域伝送と LTE との後方 互換性を同時実現することが可能となる.
CAは図2.6に示すようなCCの周波数配置により3つに分類される.
(1) バンド内連続CA(Intra-band contiguous CA)
同じ周波数バンド内のCCを用いて通信する方式である.通信には,20[MHz]より も大きい連続する帯域を用いる.例えば,最大200MHz幅まで利用することが可能な,
3.5GHz帯の中の,連続したCCを複数用いて通信が行われる場合に適用される.
(2) バンド内不連続CA(Intra-band Non-contiguous CA)
同じ周波数バンド内のCCを用いるが、周波数軸上で不連続なCCを用いて通信を 行う方式である。例えば,最大200MHz幅まで利用可能な,3.5GHz帯の中の,不連 続なCCを複数用いて通信が行われる場合に適用される.この方式は,ヨーロッパや アメリカなどにおいて,事業者への周波数帯域の割当が断片的である場合や,複数の 事業者でネットワークシェアリングを行う場合に適用される.
(3) バンド間不連続CA(Inter-band Non-contiguous CA)
異なる周波数バンドのCCを複数用いて通信を行う方式である.例えば、最大
100MHz幅まで利用可能な800MHz帯の一部と,最大30MHz幅まで利用可能な2.5GHz
帯の一部の2つのCCを用いて通信を行う場合に適用される.この方式では、2つの CCを用いて通信を行うことによるスループットの向上に加えて、伝搬環境が異なる 複数のキャリアを用いることによる通信の安定性の向上が実現できるかもしれない というメリットがある。
図2.5 Carrier Aggregation
(1)Intra-band contiguous CA
(3)Intra-band Non-contiguous CA
(2)Inter-band Non-contiguous CA 図2.6 CCの周波数配置
2.3
基地局間協調通信技術LTE-Aでは,平均スループットの向上だけでなく,大きな距離減衰と他セルからの
干渉電力のためにスループットが著しく低下するセル端のUE(セルエッジUE)におけ るスループットの向上が要求されている.この要求を達成するために,LTE-Aは,基 地局間協調通信技術(CoMP:Cooperative Multi-Point transmission)技術を導入する.
CoMP技術において,近隣セルeNBは,自セルeNBと協調してセルエッジUEに対 して信号を送信する.したがってセルエッジUEは,受信SIRを向上させることが可 能となり,通信品質を改善する.さらにセルエッジ UEにおける特性改善は,UE 間 の通信品質のばらつき低減するため,セル内のUE間における通信品質の公平性の改 善に繋がる.
下りリンク CoMP 通信は,セルエッジUE への干渉を低減するための Coordinated Scheduling/ Coordinated Beamforming (CS/ CB)およびセルエッジUEのスループットを 増大させるためのJoint Processing(JP)の2つに大別される.
CS/CBでは,図2.7(a)に示すように,各eNBは,自身に接続するUEに対して,近
隣セルと協調したスケジューリングと指向性のある信号の送信(ビームフォーミン グ)を行う. これにより各eNBは,近隣eNBへ干渉を及ぼさないような制御が可能 となるので,近隣eNBに接続するセルエッジUEへの干渉を低減することができる.
一方,JPでは,システム全体のスループットを下げることなくセルエッジUEのス ループットを向上させるために,各eNBは任意のRBにおいて通信を行うUEを近隣 eNBと協調して決定する.Joint Transmission(JT)とDynamic Cell Selection(DCS)は,JP で実施される制御である.JTでは,図2.7(b-1)に示すように,セルエッジUEに対し て複数eNB から同一RBを用いた信号の同時送信が行われる.JTは,任意のRBに おいてJTを実施するときのUE1(セルエッジUE)におけるスループットが,実施しな
いときの UE1,UE2 におけるスループットの合計値よりも高い場合に適用される.
一方,DCSでは,図2.7(b-2)に示すように,セルエッジUEに対して,最適なeNBの
みが任意のRBにおけるデータ送信を行う.DCSは,任意のRBにおいてJTを実施 しないときのUE1,UE2におけるスループットの合計値が,実施するときのUE1に おけるスループットよりも高い場合に適用される.これらの制御を併用することで,
システム全体のスループットを下げることなく,セルエッジUEのスループットを向 上させることができる.
(a) Coordinate Beamforming/ Coordinate Scheduling
(b-1) Joint transmission
(b-2) Dynamic cell selection 図2.7 下り通信CoMP送信法
2.4
セル領域拡張技術LTE-Aでは,従来のセルラ環境に加え,高密度トラヒック領域であるホットスポッ
トがセル内にいくつか存在する環境が想定されている.このため,従来のマクロセル に加え,マクロセルよりカバレッジの小さいピコセルや極小のカバレッジを持つフェ ムトセルなどの小セルの重要性が増している.LTE-Aにおいては,こうした様々な種 類のセルを用いて構成される無線アクセスネットワークをヘテロジニアスネットワ ーク(HetNet:Heterogeneous Network)と呼んでいる.ホットスポットにピコセルやフ ェムトセルを配置する HetNet を導入することにより,ホットスポットにおけるトラ ヒックをマクロセルからピコセルやフェムトセルへオフロードすることが可能とな り.ホットスポットトラヒックの効率的な収容を実現する.
HetNet システムにおけるトラヒックオフロードを実現する技術のひとつとしてセ
ル領域拡張技術(CRE:Cell Range Expansion)がある.CREは,図2.12に示すように,
ピコeNBで収容するトラヒック量を調整するためにピコセルeNBのセルカバレッジ を制御する.この制御を行うことによって,変動するホットスポットトラヒックへ適 切なトラヒックオフローディングを提供することができる.実際には,CRE は,以 下のような制御を行う.
一般的なセルラシステムでは,図2.13に示すように,各UEが,参照信号の受信電 力(RSRP:Reference Signal Received Power)が最大のeNBに接続するが,図2.14,2.15 に示すように,CREにおいて各UEは,ピコセルeNBからのRSRPに正または負の バイアスを加え,バイアス値を含む最大のRSRPを与える eNBに接続する.図2.15 に示すように,トラヒック状況によってバイアス値を制御することによってセル境界 の位置を移動させ,マクロセルからピコセルへオフロードするトラヒック量を調整す ることができる.適切なバイアスを与えることで,各セルに接続するUE数は,適切 に調整される.そして,適切なオフロ-ディングは,トラヒック状況に応じて達成さ れる.
図2.13 一般的な接続eNBの決定方法
図2.14 CRE適用時の接続eNBの決定方法
図2.15 バイアス値の制御によるピコセルカバレッジの調整
2.5
スペクトル拡散技術本研究では,スペクトル拡散(SS:Spread Spectrum)技術[18][19]を導入する.SS 技 術を用いた通信(SS通信)では,情報伝送に必要な帯域よりもはるかに広い帯域幅に信 号のエネルギーを拡散して通信を行う.SS通信において送信側では,例えば,図2.15 に示すように,あるデータを送信するのに1MHzの周波数帯域が必要な場合,情報信 号に雑音状の拡散信号を乗算(拡散変調)し,帯域を10MHzに広げて信号を送信する.
その後,受信側では拡散した10MHzの信号に送信側と同じ拡散信号を乗算(拡散復調) し,1MHzに逆拡散する.
受信側で加わる干渉は拡散信号と相関がないため,拡散復調のときに除去される.
これによる拡散復調前後のSIRの改善を処理利得(PG:Process Gain)という.これは,
一般に拡散後の帯域幅と拡散前の帯域幅の比で定義される拡散率(SF:Spreading
Factor)と同値となる.例えば図2.16の場合だと,1MHzから10MHzに伝送帯域を拡
散しているので,SFは10となる.したがって,PGは10となる.
図2.16 スペクトル拡散技術
第3章
不均一トラヒックとその対策技術
本研究では,次世代移動通信システムにおけるセル間不均一トラヒックによる通信品 質の不均一性への対応を課題としている.したがって,この章では,次世代移動通信シ ステムで発生する不均一トラヒック,これに伴う通信品質の不均一性,さらにセル内の 通信品質の不均一性について述べ,最後に通信品質の不均一性への従来の対策法につい て述べる.3.1節では,不均一トラヒックの発生要因,3.2節では,不均一トラヒックが システムにもたらす影響,3.3節では,セル内の通信品質の不均一性,3.4節では,セル 内の通信品質の不均一性への対策法,3.5 節では,セル間の通信品質の不均一性への従 来の対策法,3.6節で従来の対策法における問題点を詳述する.
3.1
不均一トラヒックの発生要因次世代移動通信システムでは,従来の移動通信システムと比較し,より大容量・高速 通信を実現する必要がある.高速通信を行うためには,下り通信では端末(UE:User Equipment)で,上り通信では基地局(eNodeB:eNB)で,受信時の電波強度を高くする必 要がある.電波強度は距離に反比例して弱くなるため,eNBとUEの距離が離れている 場合,送信電力を高くする必要がある.このとき,下り通信における eNB 側での送信 電力増加は,設備面で容易である.一方,上り通信におけるUE側での送信電力の増加 は,UEの筐体サイズやバッテリー等の面から制限される.そのため,次世代移動通信 システムでは,受信時の電波強度を高くするために,送信電力を高くする代わりに,通 信距離を短くする必要がある.したがって,セルサイズを縮小する必要がある.このセ ルサイズ縮小は,セルごとの収容UE数を減少させる.また,あるセルでは収容UE数 が多いのに対し,別のセルでは,少ないといった現象が顕著に現れる.
さらに,次世代移動通信システムにおけるUEの利用目的は音声,メール,動画など 多様である.音声,メールに関する通信は,比較的小さな情報量のデータを扱うが,動 画に関する通信では,大容量のデータを扱う.そのため,利用目的により瞬時的に発生 するトラヒック量は,大きく異なることとなる.従来システムでは個々のトラヒックに
差異が発生しても,セルサイズが大きいためセル内のユーザで平均化されてきた.しか し次世代システムでは,前述のセルサイズ縮小によりセルごとの収容UE数は減少する ため,個々のトラヒック差異はそのままセル間のトラヒック量の差異として現れ,セル 間のトラヒック分布を不均一なものとする.
3.2
不均一トラヒックがシステムに与える影響不均一トラヒック分布がシステムに与える影響として,一つ目にセル間の通信品質の 不均一性が挙げられる.不均一トラヒック環境下で,トラヒックが集中した高トラヒッ クセルのUEは,その通信要求に対し通信資源(具体的には,LTE,LTE-Aシステムでは
RB:Resource Block)不足となり通信品質が劣化する.一方でトラヒックが疎になる低ト
ラヒックセルのUEは,多数のRBを使用し通信することが可能であり,十分な通信品 質を確保できる.その結果,セル間でユーザの通信品質に大きく差異が生じる.
二つ目の影響として,システム容量の低下が挙げられる.高トラヒックセルで余剰 RBが存在する一方で,低トラヒックセルで RB余剰が存在する状況は,システム全体 で見ると,RB利用の面で非効率であり,本来システムが持つシステム容量を低下させ る.
3.3
セル内の通信品質の不均一性次世代移動通信システムでは,前述したセル間の通信品質の不均一性に加え,セル内 の通信品質の不均一性も発生する.セル内の通信品質の不均一性とは,同一セル内にお いて,セル中心に位置するUEとセル端に位置するUE(セルエッジUE)間で通信品質の 差異が大きくなる現象である.これは,セル中心に位置する UE は,接続 eNB との距 離が短く,距離減衰が小さいこと,また近隣セル eNB との距離が長くセル間干渉の影 響を受けにくいことに起因して良好な通信品質が得られる一方で,セルエッジ UE は,
接続eNBとの距離が遠く距離減衰が大きいこと,また近隣セルeNBとの距離が短くセ ル間干渉の影響を受けやすいことに起因して劣悪な通信品質となるためである.
調通信技術(CoMP:Cooperative Multi-Point transmission)やセル領域拡張技術(CRE:Cell
Range Expansion)に代表されるような様々な技術の研究がなされている.以下でCoMP,
CRE技術をセル内,セル間の通信品質の不均一へ導入した場合の効果を詳述する.
3.4.1 セル内通信品質不均一性へのCoMPおよびCREによる対策
CoMP 技術をセル内で通信品質が不均一となる環境に導入した場合,2.3 節で前述し たように,近隣セルeNBが,自セルeNBと協調して各UEに対して信号送信を行う.
これによりセルエッジUEの特性を改善し,同一セル内のUE間の通信品質の差異を低 減させる.したがって,セル内のUE間における通信品質の不均一性を緩和することが できる.
一方,セル内で通信品質が不均一となるネットワークにCRE技術をHetNetと共に導 入した場合,2.4節で前述したように,CREはマクロセルからピコセルへ分散(オフロー ド)するトラヒック量を調整する.この技術を用いて適切にトラヒックオフロ-ディン グを行うことにより,高密度トラヒック領域であるホットスポットにおけるトラヒック の効率的な収容が可能となり,セル内の通信品質の不均一性の緩和に繋がる.HetNet 環境下においてCREが適切に働く理由として,マクロセルeNB‐ピコセルeNB間の距 離が十分に短く,UEが接続eNBの切替を行ったとしても,良好な信号品質が得られる ことが挙げられる.したがって,CREはHetNetにおけるホットスポットにおける適切 な負荷分散を達成する.
3.4.2 セル間通信品質不均一性へのCoMPおよびCREによる対策
セル間不均一トラヒック環境において,低トラヒックセルに比べ高トラヒックセルで は,セルエッジ UE だけでなくセル内全体で通信品質が低くなる.この状況に対して,
CoMPは,セル間の通信品質不均一性緩和のための高トラヒックセル全体の通信品質改 善という観点で見ると,適切に動作しない. これは,セル間の通信品質の不均一性は,
低,高トラヒックセルのセルエッジ領域間だけでなく,低,高トラヒックセル全体領域 間で発生しているためである.したがって,CoMPはセル間の通信品質不均一性に対し ては,効果が期待できない.
一方,CREはHetNetにおいてマクロ-ピコセル間での適切なトラヒックオフロードが
可能なため,マクロセル・セルラーネットワークにおいてもマクロセル間の適切なトラ ヒックオフロードによるセル間の通信品質不均一性の緩和が可能であるように思われ る.しかし,CRE も CoMP と同様に,セル間の通信品質不均一性に対しては,適切に 対応することができない.これは,各マクロ eNB のセルカバレッジ制御よって UE の 接続するeNBが変更されるとき,UEの受信信号品質が大幅に変化するからである.こ
のような状況では,CREによって接続eNBが高トラヒックセルeNBから低トラヒック セルeNBに変化したUEは,遠距離通信のために低い信号品質となる傾向がある一方,
CRE導入後も接続eNBが高トラヒックセルeNBのままであるUEは,近距離通信のた めに高い信号品質となる傾向があり,セル間の通信品質の不均一性を増大させる.
は,従来法であるセル間キャリアアグリゲーション(CA:Carrier Aggregation)法がある.
セル間CAにおいて,UEは,自eNBと近隣eNBの複数のコンポーネントキャリア(CC: Component Carrier)を1つの広帯域通信チャネルとして束ねることができる.この手法を 用いることで,通信要求に対して,自eNBのRB割当が不足しているUEは,近隣の低 トラヒックセルeNB における余剰 RB を利用することができる.したがって,セル間 CAは低トラヒックセルにおけるRB使用率を改善し,セル間の通信品質の不均一性を 緩和する.
3.5.1 セル間CAの概念
セル間CAにおいて,各UEは,自eNBだけでなく近隣eNBからの信号も受信可能 となるので,図3.1に示すように,それらeNBのCC内のRBを用いて通信をすること ができる.したがって,セル間CAにおけるRB割当は,自eNBからの割当と近隣eNB からの割当ての2段階で実施される.
RB割当前に各UEは,図 3.2(a)に示すように伝搬損失に基づいて周囲のeNBの中で,
自身にRB割当を行う2つのeNBを選択する.これらのeNBは,そのUEに対し最も 低い伝搬損失を持ち,伝搬損失が小さい順に,それぞれ1st eNB,2nd eNBと呼ぶ.各 UEによるeNB選択後,各eNBは,図3.2(b)に示すように,最初に自身を1st eNBとし て接続するUEにRBを割当てる.この割当を1st RB割当,そしてこの割当で割当てら れたRB を用いた通信を1st 通信と呼ぶ.その後,各eNB は,図 3.2(c)に示すように,
自身を2nd eNBとして接続するUEに1st RB割当で未割当のRBを追加で割当てる.こ
の割当を2nd RB割当,そしてこの割当で割当てられたRBを用いた通信を2nd 通信と
呼ぶ.
ところで,2nd 通信は,1st 通信と比べ遠距離通信となり,伝搬損失が大きくなる.
さらに加えて,2nd通信を行うUEは,セル端に位置することが多いので干渉電力も大 きくなる.このような状況で1st通信と同一の送信電力を用いた場合,低受信SIRによ って低い信号品質をもたらす.そのため,セル間CAは2nd通信において送信電力制御 (TPC:Transmission Power Control)を採用する.このTPCにおいて,2nd eNBは近隣で同 一のRBを用いて実施される1st 通信を保障しながら2nd 通信を行うUEの受信SIRを 向上するための送信電力増加を行う.これにより,セル間CAは2nd通信から生じる追 加のセル間干渉を可能な限り抑制しながら,2nd 通信での受信SIRを改善することがで きる.
図3.1 セル間キャリア・アグリゲーション
(a) 接続eNB選択
(b) 1st RB割当
(c) 2nd RB割当
図3.2 セル間キャリア・アグリゲーションの流れ
3.5.2 1st 通信
セル間CAにおける1st通信は,同一セル内のCAにおける通信と同様である.1st通 信に使用するRBは,1st RB割当によって1st eNBから割当てられる.
1st RB割当において,セル間CAは,RB割当基準として,プロポーショナルフェア
(PF:Proportional Fair)基準を採用する.各RBは,以下で定義されるPF基準の優先度の 最大値𝑃𝑘,𝑛を持つUEへRB毎に割当てられる.
𝑃𝑘,𝑛 = 𝑅𝑘,𝑛/𝑆𝑘,𝑛 (3.1) 𝑆𝑘,𝑛 = (1 −1
𝛼) 𝑆𝑘,𝑛−1+1
𝛼𝑅𝑘,𝑛−1, 𝑆𝑘,0= 1
𝛼 (3.2)
ここで,𝑘と𝑛はUE番号とフレーム番号であり,𝑅𝑘,𝑛と𝑆𝑘,𝑛は,瞬時伝送レートと平均 ユーザスループットであり,𝛼は,平均ユーザスループットを計算する際に,1フレー ム前の瞬時伝送レートをどれだけ考慮するか決定するために定義された重み付け係数 である.
式(3.1)において,各RBに対する𝑅𝑘,𝑛は,推定SIR 𝑆𝐼𝑅est,1st𝑘,𝑛 が適応変調符号化(AMC:
Adaptive Modulation Coding)伝送[20]を採用した際の所要SIR 𝑆𝐼𝑅reqを満足する最大の 伝送レートに設定される.𝑆𝐼𝑅est,1st𝑘,𝑛 は,次式で計算される.
𝑆𝐼𝑅est,1st𝑘,𝑛 =𝑃∙𝑙𝑜𝑠𝑠1st𝑘,𝑛
𝑖𝑛𝑓max𝑘,𝑛 (3.3)
ここで,𝑃は,1st eNBにおける送信電力,𝑙𝑜𝑠𝑠1st𝑘,𝑛は,任意のRBにおけるUEとその1st eNB間の伝搬損失,𝑖𝑛𝑓max𝑘,𝑛は,システムの全eNBが任意のRBを用いて,同一の送信電 力𝑃で信号を送信すると仮定した際に,UEが任意のRBの信号で受ける干渉電力である.
一度,優先度最大のRBの割当てが完了したら,次のRBに対する割当に向けて1st eNB は,現在のRB割当のスループット増加を考慮して割当UEにおける各RBの𝑃𝑘,𝑛を更 新する.その後,1st eNBは,割当可能RBもしくは割当要求UEがなくなるまで,PF 基準を用いたRB割当を繰り返す.
3.5.3 2nd通信
セル間CAにおける2nd通信は各UEと近隣eNBが行う通信である.2nd通信は,1st 通信と比べ伝搬損失と干渉電力が大きく,受信SIRが低くなる. そのため,2nd通信 における送信電力は,大きな伝搬損失を補償するために,1st 通信より大きく設定する 必要がある.しかし,2nd通信に対する過度な送信電力の増加は,近隣で同一RBを用 いて1st 通信や2nd通信を行う他のUE(被干渉UE)に追加の干渉をもたらす.その結果,
2nd 通信における,具体的な送信電力の設定方法,RB 割当方法については以下で詳 述する.
3.5.3.1 2nd通信における送信電力設定
具体的には以下のように2nd通信における送信電力の増加量を決定する.まず各eNB は,自身から半径𝑇ℎdist以内の被干渉UE1stにおける,自身が2nd通信を行うときに許容 可能な干渉電力の増加量∆𝑖𝑛𝑓1st𝑘,𝑛を計算する.∆𝑖𝑛𝑓1st𝑘,𝑛はこの研究において次式で与えら れる.
∆𝑖𝑛𝑓1st𝑘,𝑛=𝑃∙𝑙𝑜𝑠𝑠1st𝑘,𝑛
𝑆𝐼𝑅req − 𝑖𝑛𝑓max𝑘,𝑛 (3.4)
ここで,1st通信における送信電力 𝑃,伝播損失 𝑙𝑜𝑠𝑠1st𝑘,𝑛,所要SIR 𝑆𝐼𝑅req,干渉電力 𝑖𝑛𝑓max𝑘,𝑛は,3.5.2節で前述した変数と同じである.
次に各eNBは,各被干渉UE1stが許容可能な2nd通信における送信電力の増加量∆𝑃2nd𝑘,𝑛 を計算する.∆𝑃2nd𝑘,𝑛は,以下によって定義される.
∆𝑃2nd𝑘,𝑛 = ∆𝑖𝑛𝑓1st𝑘,𝑛/𝑙𝑜𝑠𝑠inf𝑘,𝑛 (3.5)
ここで,𝑙𝑜𝑠𝑠inf𝑘,𝑛は,任意のRBにおける被干渉UE1stとその干渉eNB間の伝搬損失であ る.
最後に,各eNBは,自身から半径𝑇ℎdist以内の被干渉UE1stのすべての通信を保障す るために,計算した全∆𝑃2nd𝑘,𝑛の中で最小値を選択する.各eNBは,自身から半径𝑇ℎdist以 内に被干渉UE1stがいない場合,2nd通信間に大きな相互干渉を発生させないために,2nd 通信における送信電力𝑃2nd𝑛 を式(3.6)で与える電力に制限する.
𝑃2nd𝑛 = 𝛽2nd∙ 𝑃 (3.6)
以上のようなTPCにより,近隣の被干渉UE1stの通信を保障しながら2nd 通信における 受信SIRを改善させることが可能となる.
3.5.3.2 2nd RB割当
TPCを行う2nd通信におけるRB割当では,割当基準にPF基準を用いて,1st RB割 当で未割当のRBをRB毎に2nd通信を行うUEに対して順次割当てる.このとき,優
先度は,送信電力の増加量𝑃m,2nd𝑘,𝑛 を考慮した2nd通信における推定SIR 𝑆𝐼𝑅est,2nd𝑘,𝑛 を用い て計算する.他の割当手順は1st RB割当の手順と同じである.
保障しながら2nd 通信における受信SIRを改善させることができる.そのため,2nd 通信へのTPC導入は,セル間の通信品質不均一性の緩和に大きく寄与することができ る.
しかし,このTPCは3.5.3.1節で示したように2nd通信間で大きな相互間干渉を与え ないような制御を行っているが,同一RBを用いて2nd通信を行うUE(被干渉UE2nd)の 通信を被干渉UE1stの通信のように適切に保障することができない.このような状況を 示す指標として,図3.3に2nd通信でTPCを行うセル間CAにおける送信成功率を示す.
図より,2nd通信では成功率が最大10%も低下するという問題が見られる.この問題が 発生する原因として,2nd通信におけるTPCでは,被干渉UE2ndの通信の保障制御を被 干渉UE1stへの制御に比べ厳密に行っていないことが挙げられる.
一方,2nd通信でTPCを行うセル間CA導入後も,図3.4の異なるトラヒック負荷別 で観測したRB使用率で示すように,低トラヒックセルでは他トラヒックセルに比べ RB使用率が低く,依然として多数のRB余剰が発生する問題も見られる.
セル間CAでは以上のような問題が発生するため,2nd通信での通信方式を再検討す る必要がある.
図3.3 セル間CAにおける送信成功率 0.7
0.8 0.9 1.0
0 20 40 60 80 100 120
送信成功率
平均トラヒック [Mbps/sector]
1st通信 2nd通信
0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1.0
0 20 40 60 80 100 120
RB使用率
平均トラヒック [Mbps/sector]
TPC 低負荷セル TPC 中負荷セル TPC 高負荷セル
第4章
可変拡散率 SS 通信を用いたセル間 CA 法
従来のセル間CA法では,2nd通信において多数の通信失敗と低トラヒックセルにお いて多数の余剰RBが存在するという問題がある.したがって本章では,前述の問題を 解決するために可変拡散率スペクトル拡散(SS: Spread Spectrum)通信を用いたセル間キ ャリアアグリゲーション(CA:Carrier Aggregation)法を提案する.4.1節では,可変拡散 率SS通信を用いたセル間CA法の概要,4.2節では,SS通信の適用法,4.3節では,各 適用法におけるRB割当法について述べる.
4.1
可変拡散率SS
通信セル間CA
法の概念前章で述べたように,従来の送信電力制御(TPC:Transmission Power Control)を用いた セル間CA法は,被干渉UEの通信を完全に保証することができない.この問題を解決 するためには,近隣基地局(eNB:eNodeB)から端末(UE:User Equipment)への2nd通信 において送信電力増加を行うことなく,2nd通信を行うUEの通信品質を改善する必要 がある.この要求を達成するために,提案法では2nd通信に可変拡散率SS通信を導入 する.これにより提案法は,2nd通信において送信電力非増加と通信品質改善を同時に 達成する.送信電力非増加は,被干渉UEへの追加の干渉を抑制し,被干渉UEにおけ る通信失敗の可能性を大いに削減する.また,拡散率𝑆𝐹の拡散伝送を適用することで,
非拡散伝送を実施する自eNBからUEへの1st通信と同一の送信電力を用いる場合でさ え,2nd通信における受信SIRを𝑆𝐹倍大きく改善することができる.したがって提案法 は,2nd 通信において送信電力非増加を保ちながら,2nd通信における受信品質を改善 することが可能となる.
SS通信への可変拡散率の導入では,拡散率𝑆𝐹は,UEの所要信号対干渉電力比(SIR:
Signal to Interference power Ratio)を満足する最小値に設定される.提案法は,2nd RBの 使用率を増加させながら,周波数利用効率を改善することが可能となる.