韓国保険業界の現況と課題
⎜⎜ 損保社の資産運用を中心に ⎜⎜
徐 胤 碩
■アブストラクト
韓国の損保社は保険営業利益の改善を2008年度の最優先の課題として策定 している。しかし競争の激化は保険料の引下競争につながっている。従って 今後の保険営業利益は低下するだろう。保険営業により利益の改善が容易で はなければ,資産運用利益を上げることに関心を高める必要がある。損保社 がこのような問題を解決し,激しい競争の環境下で生き残るためには,資金 調達と資金支出を同時に考える総合的な資産運用システムを構築する必要が ある。実務的には資産運用プロセスで全社的な目標一致が必要となる。資産 別投資方策としては,低評価になっている国内株式の投資を増やす必要があ る。韓国企業の財務健全性は改善されたので会社債の投資比重を高めるのも 望ましい。海外の株式や不動産投資なとも投資運用利益を高める一つの方策 として考えられる。
■キーワード
資産運用,投資運用利益,期待利益
はじめに
保険事業は,社会経済環境の変化の影響を受けやすい業種といえる。とり わけ,損保社は,若干タイムラグはあるといえるが,景気の動向を敏感に受
*平成19年10月27日の日本保険学会大会(桃山学院大学)報告による。
/平成21年1月14日原稿受領。
けている。特に,近年の韓国の保険業界にとり,金融市場の動きは重視すべ き要因となっている。そこで,本稿では,損保社における資産運用に焦点を あて,以下,現在の状況と課題について考察することにしたい。
1.損害保険市場の環境
損保社の利益は大きく保険営業利益と資産運用利益に区別される。損保社 は2008年に損害率の上昇を抑制し,事業費を減らして事業構造を改善すると いう戦略を最優先の課題として挙げた。すなわち,2008年度は2007年度に引 き続き保険営業利益の改善を経営目標として策定している。
しかし
AXA
など外資系保険会社の市場進入,そしてオンライン保険会社 との競争激化は保険料の引下競争につながった。従って今後の保険営業の利 益性が良くなると見る人は多くないだろう 。図1は損保社の利益の現況を現わしている。図1によれば,現在まで損保 社の利益構造は保険営業で発生する損失を資産運用利益で補う様相を把握す ることができる。ところで,韓国の生保社の場合には2000年以後から保険営 業で持続的に利益を生み出しており,その規模も徐々にではあるが増加して いる状況に鑑みれば,損保社の持続的な保険営業損失は憂慮される部分であ る 。なお,年度別利益構造の推移を見れば,保険営業利益は2002年度に一 時的に保険営業によりプラスの利益が発生したが,当該期間以外は持続的な マイナスになっている。結局のところ, 損保社は保険営業利益の損失を資 産運用利益で補わなければならないのである。しかし,低金利と金融市場の 変動性が大きくなる金融環境などを考慮すれば,容易い事ではないだろう。
一方,資産運用利益は2002年度以後,持続的に上昇している。この背景に は損保社の運営資産が増えた結果が反映されたのである。
1) 2007年に保険営業利益の減少した理由は一時的に自動車保険の損害率が改善 されたからである(図2参照)。
2) 徐胤碩 最近保険市場の経営環境変化と示唆点
HANA
金融 2月号,HANA
金融経営研究所,2006年,p.35。現時点で損保社の主な関心は保険営業損失を減らして利益を生み出すこと であるが,政府の規制 と損保社の認識不足 を背景に相対的に資産運用利 益を決める資産運用には関心が減っている。特に,保険営業利益については 経済環境の変化によるリスクをヘッジする方法がさほどなく,経済環境の変 化も激しいので統制しにくい。 一方,資産運用利益は多様な資産に分散し て投資する方法でリスクを減らすことができる。また,近年開発されてきて いる進んだ金融技法を利用することができるし,戦略的な資産配分により利 益率の上昇も可能となる。
従って損保社の激しい競争によって保険営業により利益の改善をはかるこ とが難しければ,資産運用利益の増加により対応することが考えられる。本 稿では損保社の資産運用の過去ならびに現況に見る問題点の考察を通じて,
損保社が解決しなければならない資産運用の今後の課題について若干論じる ことにする。
3) 政府は韓国保険業法により保険会社が投資可能な資産,資産別の投資範囲な どを決めている。保険会社はこの規制を守らなければならないし,違反すると 制裁が課せられる。
4) 損保社は資産運用の安全性(safety)を利益性(profitability)より優先し て考えているので積極的に資産運用する必要性をまだ認識していない。
<図1>損保社の利益構成現況
出所: 損害保険 第477号,韓国損害保険協会,2008年8月,p.73。
2.損害保険の資産運用の現況
次に,韓国における損保社の資産運用の現状について考察しておくことに する。
⑴ 損保社の資産運用の現況及び原則
図1と次の図3を見れば分かるように,最近2005〜2007年の損保社資産運 用利益の成長率(13.1
%) は,資産の成長率(16.1 %)に及ばない。その
原因は2000年度以後,低金利が持続しながら損保社運用資産で重要な割合を 占めている国公債の運用利益率が低くなったからである。国債(5年)の場 合,2000〜2005年の間4.2%低くなった(図7参照)。
5)
FY06年資産運用利益の前年比成長率(7.1 %)と FY07年資産運用利益の前
年比成長率(19.1%)の平均である。
<図2>自動車保険の損害率現況
出 所: 保 険 動 向 2008年 季 刊 秋 号,KIRI(Korea Insurance Research Insti-
tute
),2008年10月,p.71。運用資産の利益率を高めるために期待利益率が高い投資資産の割合を拡大 する必要性が要求されている。しかし,保険社の資産は他の金融機関の資産 とは区別される特性があるから資産運用時,保険業法で決められている原則 を守らなければならない。
すなわち,韓国における保険会社は,韓国保険業法104条にしたがい,そ の資産を運用するに際し安全性・流動性・利益性及び公益性が確保されるよ うにしなければならないし,善良な管理者として資産を運用するように規定 されている。運用資産の利益率を高めるために期待利益率が高い投資資産の 割合を拡大する必要性が要求されている。
このような資産運用の原則の中で安全性と利益性は相反する関係にあるし,
現在までは安全性が優先になっており,国公債のようなローリスク資産への 投資が多かった。そして国公債の金利下落は損保社の運用利益率の下落につ ながることになる。損保社の資産構成は事故のリスクをカバーする一般保険 資産と積立保険料に対する給付を保障する長期保険資産や年金保険資産で構 成されている。現在,約40
%が長期や年金保険資産で,約60 %は自動車保険
<図3>損保社の資産と成長率
出所: 損害保険 第477号,韓国損害保険協会,2008年8月,p.73。
のような一般保険資産で構成されている。長期や年金保険資産の割合が高く なっている。
⑵ 損保社の資産運用の現況及び成果分析
損保社の資産運用の構成の割合は,図4に示されているように,債券・株 式に代表される有価証券が全体運用資産の中で一番高い割合(64.1
%)を占
めている。次に貸出債券が21.5%の割合を占めている。不動産は7.4 %であ
るが,徐々に投資割合を減らしている。特徴的なのは現金及び預金の割合は最も低い水準となっていることである。
しかし,ここではデータを示していないが,生保社の割合が2.3
%であるこ
とから約2倍の高い水準にある。これは,損保社の場合,取り扱う保険種目 の特性から生保社とは違って短期的に支払う資金が多いからである。なお,不動産は流動性が低い資産という側面があり低い割合を占めており,投資比 重も徐々に減少している。
損保社の資産運用の一番高い割合を占めている有価証券の構成割合は,国 債と債券であり,64
%以上となっている。ところで,2000年度以降金利が下
落し,低金利が持続しているにも係わらず,むしろ債券の投資は増えている。<図4>損保社の資産運用の構成
出所: 損害保険 第477号,韓国損害保険協会,2008年8月,p.91。
この結果,既述のように損保社の資産運用利益の平均成長率は資産の平均成 長率を下まわることになった。
危険資産の投資を増やす時,相関関係を考慮して分散投資をすると,リス クを低くしながら期待利益も高めるポートフォリオを構成することができ る とされている。しかし,業種の性格から損保社は安全資産への割合が非 常に高く,株式投資の割合は銀行の約18%よりも低い約12.9
%となっている
(図5参照)。
一方,間接投資である受益 権 証 書(beneficiary certificate)の 割 合 は 2006年から再び高くなっている。特に三星,現代,LIG,東部の大手4社の 場合,全体資産運用で受益権証書が占めている割合は3%である。なお,大 手損保社では資産の大部分を直接運用している。
ところで,資産運用の実態を見ると,2006年度まで,収益率(revenue
ratio
)は横ばいないし微減しているが,2007年度には株価上昇で前年度に比べ高くなって。収益から費用を差引いた利益率(profit ratio)は,2004 年度に比べ2007年度には0.4ポイント減少しているものの,2002年度以降概
6)
Brinson
,G., L
.Hood, and G. Beebower
,“Determinants of Portfo- lio Performance”
,Financial Analyst Journal Vol
.42, 1986,p
.39.<図5>損保社の有価証券の構成
出所: 2008年韓国の損害保険 韓国損害保険協会,2008年12月,p.48。
して上昇傾向にあるといえる。これは資産運用費用の大部分を占める管理費 用が減っているからである。したがって,資産運用の效率性が徐々に改善し ていることが分かる(図6参照)。
図7は,損保社の資産運用利益率,国債の利回り ,そして仮想ファンド の収益率の比較を通じて損保社の資産運用成果を示した図である。損保社の 場合,資産運用利益など全般的な統計データは報告されているが,株式など 運用資産別の成果に関する統計資料は公表しない 。従って本稿では損保社 の各資産の割合で仮想ファンドを構成し,市場指数に投資して
buy&hold
戦略による収益率と損保社の実際収益率と比べてみた。<図6>資産運用の収益率(revenue ratio)と利益率(profit ratio)
出所: 2008年韓国の損害保険 韓国損害保険協会,2008年12月,p.51。
7) 国債の利回りは代表的な市場金利指標となるため運用成果比較の際に多く使 われている。
8) 損保社は監督機関に運用資産別の成果を報告しているが,監督機関は公表し ない。理由としては運用資産別の成果を公表することにより,公正競争を阻害 し,投機行為を引き起こす恐れがあるためである。
仮想ファンド収益率は,株式(総合株価指数),債券(国庫債5年),不動 産,貸出債券,収益証券の市場収益率に損保社の資産構成割合で加重平均し た結果である。不動産,貸出債券と収益証券の市場収益率は計算しにくく,
損保社の平均収益率を使っている。
図7を見れば分かるように,2003年以前は国債の利回りが相対的に高くな っているが,2003年からは損保社の利益率が国債の利回りが上回っている。
しかし,リスクが少ない国債の利回りとリスクが含まれている損保社の資産 運用利益率の差はわずかであるので,二つのインデックスの比較適正性に対 しては今後の動向分析が必要だろう。
損保社の利益率と仮想収益率を比べて見ると,損保社は平均とリスク(標 準偏差)はそれぞれ5.59
%(FY
99〜FY07の損保社利益率の平均)と1.56%
(FY99〜FY07の損保社利益率の標準偏差)で仮想ファンドの平均とリスク は そ れ ぞ れ6.41
%(FY99〜FY07の 仮 想 フ ァ ン ド の 平 均)と3.56 %
(FY99〜FY07の仮想ファンドの標準偏差)になっている 。損保社の利益 率は低いがリスクも低いことになる。従って損保社は安全性を最優先の目標 で運用した結果だと判断できるだろう。
9) 仮想ファンドの収益率が2000年の13.1
%から2001年の0.1 %へと急落した理
由は金利の下落により,資産運用の一番高い割合を占めている債券の利回りも 下落したからである。ここで,会社別に資産運用利益率を比べてみる。図8は,損保社別に見た 資産運用の利益率を示したもので,縦軸に利益率,横軸に資産運用の規模を 表している。韓国の損保市場構造は売上高で三星をトップに東部,現代,
LIG,メリツが 2 nd Tier Groupを形成している。グリーン,大韓,大韓
教育保険AXA,韓国火薬,興国双竜が 3 rd Tier Groupを形成している
(図7参照)。
一方,小型社であるグリーンは,売上高など規模は大きくはないが,資産 運用利益は高い。この原因は運用資産の中で占める株式の投資割合の高さが 関係し(32
%),株式市場の上昇によって投資利益が高くなったことにある。
<図7>資産運用の成果比較
出所:
Annual Report
2007 韓国銀行,2008年7月,p.29。2008年韓国の損害保険 韓国損害保険協会,2008年12月,p.51。
3.損害保険資産運用の問題点及び課題
これまで損保社の資産運用の現状を考察する中で,いくつかの問題点なら びに課題が見えてきたといえる。そこで,これらについて検討を進めていく ことにしたい。
⑴ 資産運用の問題点
損保社の資産運用の問題点を整理して見ると,少なくとも以下の点が問題 として浮かび上がってきた。
まず第一に,資産の平均成長率(16.15
%)に資産運用利益の平均成長率
(13.1
%)が付いて行けない状況がある。したがって,損保社は投資活動に
より利益性を高める努力が必要になる。第二に,運用の目標を安全性に置いているため運用資産の大部分を国債,
債権のように安定性は高いが利益性が低い資産に投資している。しかし,今 後低金利が持続すればこのような運用戦略では投資の利益性を改善しにくい。
<図8>損保社別資産運用の利益率(2007年)
出所: 2008年韓国の損害保険 韓国損害保険協会,2008年12月,p.50。
したがって期待利益が高い資産に投資を拡大する必要がある。
第三には,投資対象が限定されていることがあげられる。財務理論におけ る投資の第一原則は期待利益とリスクが異なる多様な資産への分散投資であ る。分散投資によってリスクが等しければ期待利益が高い資産を,期待利益 が等しければ,リスクが低い資産を構成することになる 。
特に海外有価証券の投資は極めて少ない。三星火災の場合,2008年3月現 在,全体運用資産の2.5
%でしかない 。
一方,サブプライムローンを組み込んだ金融派生商品等への投資に対する リスクもあるため,海外市場を持続的にモニタリングする必要がある 。
⑵ 資産運用の課題
今後の資産運用の課題としては以下のことがあげられる。
① 総合的資産管理システムの構築
最近,韓国生保社の場合,金利下落により資産運用利益率が下落した。そ の影響で運用利益率と予定利率間の差も小さくなった。今後の低金利基調が 持続して,現在の資産運用構造に変化がなければ,逆ザヤが発生する可能性 が高くなる。
一方,損保社は現在の資産フポートフォリオの再構成に適切な代替投資手 段を模索する必要がある。資産運用戦略を樹立する場合,資金調 と資金支 出を同時に考慮する総合的資産運用戦略を樹立しなければならない。
こ の た め に,現 状 で は,損 保 社 の
ALM
(Asset Liability M anage-10)
Lehmann, B., A. Timmermann, “Asset allocation dynamics and Pension Fund Performance”
,Journal of Business Vol
.72, 1999,p
.429.11) 三星火災,
Business Report FY2007,p
.29。12) 米財務省と連邦準備理事会(FRB)は08年7月,住宅ローン債務者救済や 政府系住宅金融会社の連邦住宅抵当金庫(ファニーメイ),連邦住宅貸付抵当 公社(フレディマック)支援策を内容とするプランを決定した。両社支援策と して政府融資枠拡大のほか,必要な場合は公的資金による株式買い取り等も計 画している。
ment
)を強化する必要性がある。ALMと言うのは投資対象資産が資金源 泉別に差別化されなければならないことを意味する。すなわち借入金利・予 想満期日・引き当て金の積立規模など保有契約の性格によって資産を再構成 しなければならない。なお,貯蓄性保険については,様々な金利商品があるのでそれぞれの満期 日(duration)を考えて貸し出しおよび債権資産として保有し,緩衝資本の 自己資本は利益性資産に投資するのが望ましい。支払引き当て金と未経過保 険料積立金などは最小限の流動性を勘案しながら流動資産に投資する必要が ある 。
損保社の資産運用利益率を高めるためには期待利益が高い資産に投資をし なければならない。これは資産運用の安全性追求の原則に合わない可能性も ある。しかし,資産運用戦略は基本的に予定利率を考慮した目標利益達成に 重点を置かなければならない。そこで,保障性保険商品の販売を増やして配 当の縮小を通じて調 金利の負担を減らしたり,市中金利を考慮した適切な 予定利率の調整を通じて資金支出を抑制する方法を同時に使うことも一案で ある。
また,実務的には資産運用プロセスで損保社の全体の目標一致が必要とな る。このためには運用と評価の明確な基準を定立して確かな業務区分を通じ て非效率性をとり除かなければならない。
この外にも資産運用のための専門人材の育成も必要である。しかし,この ような環境造成が難しい中小型保険社の場合には間接投資商品の效果的な活 用と規模の経済を実現するための共同のアウトソーシングと子会社設立など も考慮してみる必要がある。
総合的な資産運用システムの構築は未来の金融環境の変化を予測して資産 運用の危険性資産運用の割合などを決めなければならない。保険社別に資産 運用の規模,販売商品の種類,加入顧客の特性そして営業戦略などを考慮し
13) リュゴンシック, 生命保険会社
RBC
制度に関する研究 ,韓国保険開発院,2002年,p.32。
て資産運用の戦略を樹立するのが必要である。
② 資産別投資方法
資産別の投資策には種々の方策があるが,ここでは以下のことを指摘して おきたい。
■国内株式の投資
国内株式に対する投資を増やす必要がある。株式市場は最近の株高で 2008年3月末基準で
PER(Price Earnings Ratio
)が10.2倍で2000年以 後,初めて10倍を上回った。しかし,シンガポール,インド,台湾,中国 の平均PER
が16倍が超えることを考慮したら現在の株価はまだ低評価さ れており,上昇余力があるという見方もある。なお,総合株価指数の日間変動率は2008年に入り1.1
%以下に落ちたが,
中国上海
A
指数(2.43%),香港ハンセン指数(1.38 %)より低いのであ
る。韓国の株式市場が低評価になっている重要な理由の一つはコーポレー ト・ガバナンス・リスク(Corporate Governance Risk)が大きいという のである。しかし,今後の韓国企業のコーポレート・ガバナンス・リスク が低い水準 まで改善するようになれる場合,韓国企業の透明性と信頼性 が高くなるため株式も上昇する可能性が高くなるだろう 。したがって株 式投資の割合を高めるのが望ましいと判断される。
しかし,株式は変動率が高いから株式投資を増やす場合,資産規模の変 動性も大きくなるため,これを緩衝することができる自己資本がより多く 必要になる。現在,損保社の資本金の規模は増加する危険資産を収容する ほど大きくない。そこで,株式投資規模を増やすためには資本構造の根本
14) 低い水準と言うのはあいまいな表現であるが,日本の
JCGR(Japan Cor- porate Governance Research Institute
)ではJCG Indexが35以下を低い水
準と呼んでいる。15) 2007年
JCGR
コーポレート・ガバナンス調査 報告によるとJCG Index
が高い企業のほうが企業実績を表すROAや ROE
が高し,株式投資利益率も 高い。的な再調整が必要である 。この場合,単純な個別危険資産の変動性のみ を考慮するのではなく,危険資産間の相関関係を考慮しなければならない と思う。
またコーポレート・ガバナンス・リスクを減らすためには保険会社のよ うな機関投資家が積極的な議決権(voting right)の行使 を通じて投資 対象企業のコーポレート・ガバナンス・リスクを改善して,コーポレート・
ガバナンス・リスクを減らし投資対象企業の期待利益を高めなければなら ない 。損保社も積極的な議決権行使などを通じて株式投資の期待利益率 を高める必要がある。
■国内債券の投資方法
2008年3月末基準で損保社の全体運用資産の中で債券が占める割合は 64.4
%と2007年(67.2 %)より高くなった。IMF
経済危機以後,韓国企 業の財務健全性は改善されたので会社債の投資比重を高めるのが望ましい。最近,資産担保付証券(Asset Backed Securities:ABS)市場が急速に 拡大している。その中で住宅抵当証券(Mortgage Backed Securities:
MBS)のような利益性が高い債券が活発に取り引きされている。従って,
債券をポートフォリオに含ませなければならない。
■海外証券の投資方法
損保社の資産規模を考慮すると,韓国株式市場における規模はさほど大 きくない。従って,買入時価格が上昇するリスクがあるし,売渡時に値下 がりするリスクもある。この点を考えると海外株式に投資する国際分散投
16) チェヨンホ, 最近金融環境下の損害保険会社資産運用安全性向上方案 月 刊損害保険7月号,韓国損害保険協会,2006年,p.32。
17) 保険社が積極的な議決権行使を行わせるには,多くの少額株主たちを株主総 会に参加させ経営者の経営活動に意見を反映させる必要がある。
18) ゾンユンモ, 機関投資者の議決権行事活性化 研究報告書,韓国証券研究 院,2001年,p.21。
資は必要となる。
また,海外株式投資の拡大は国内株式市場に対する損保社資産運用の割 合を縮小させ,結果的に国内株式市場の不確実性に対するリスクを軽減し つつ利益拡大の機会になるだろう。海外株式投資は損保社資産運用の新し い領域になる。そして資産運用の範囲の拡大だけではなく先進的な金融技 法を習得する機会にもなる 。
海外債券投資は国内債券市場の不完全性(market incompleteness)に よって派生する資産運用上の限界を乗り越えることができる代案である。
韓国の債券市場の場合,長期債券の供給が不足し,長期債券と言っても長 期である損保社の資産を考慮すれば
ALM
を円滑に遂行することができる 位の長期債市場が存在しない。従って,総合的資産運用システムを構築し にくい状況である。損保社の海外投資の運用原則は,長期的安定を維持し利益を拡大させる 必要があるため,資産運用の基本原則を適用しなければならない。資産運 用利益率目標は投資商品によって変わらなければならない。
また政治的リスクなどによって投資資金の回収に問題がないのかどうか も把握しておくべきである。海外株式投資 の 場 合,Levy and Sarnat
(1970) ,Solnik(1974) ,Longin and Solnik(1995) などの既存実 証研究によれば国際分散投資において産業間分散投資よりは国家間の分散 投資が高い効果を得られる。とりわけ,回収可能性,為替リスク及び流動
19) グザズン, 金融環境変化と損害保険会社経営戦略 月刊損害保険8月号,
韓国損害保険協会,2006年,p.15。
20)
Levy
,H. and Sarnat
,M
.,“International diversification of invest- ment portfolios”
,American Economic Review
, 1970,pp
.668‑675.21)
Solink, B., “Why not diversify internationally rather than domesti- cally?”Financial Analysts Journal
,Vol
.30, 1974,pp
.48‑54.22)
Longin, F. and Solnik, B., “Is the Correlation in International
Equity Returns Constant:1960‑1990 ?”Journal of International M oney
and Finance
,Vol
.14, 1955,pp
.3‑26.性を考慮すれば,アメリカ,ヨーロッパなど証券市場の效率性が高く,政 治的に安定した国に投資をすることが望ましい。
■派生商品投資方法
派生商品については変動性が大きくて韓国の金融システムでは事前的に コントロールすることが出来ないため,派生商品の投資はリスクのヘッジ 目的に使うのが望ましい。派生商品を利用して得ることができる效果は新 しい代替投資手段の效果と資産投資対象の拡大效果がある。
Schneeweisの研究によれば株式,債券,伝統的な代替投資資産たちの
ポートフォリオにヘッジファンドと商品先物取引を組み入れれば,リスク と利益機会の改善がもたらされるという。またヘッジファンドと商品先物 取引の利益率は相関関係が低くて分散投資效果が大きいことも報告されて いる 。損保社も今後はこのような結果を資産運用に積極的に反映させる べきであるといえる。■不動産及びその他資産投資方法
2008年3月末基準で損保社は全体資産の中で7.4
%(3.2兆ウォン)は不
動産の割合である。その大部分が業務用で構成されている。商業用不動産 は安全性,利益性,公共性がある損保社の代替投資分野である。また損保社の投資ポートフォリオにおいて不動産は他の金融資産と相関 関係が少なくて分散投資效果が大きい。インフレーションによる実質利益 率の減少に対するヘッジ機能もある 。
最近,REIT(Real Estate Investment Trusts)市場が活発化され,
23)
Schneeweis
.T., “The Benefits of Managed Future”working paper
,http:
//scholar
.com/ scholar
=The
+Benefits+of+M anaged+Future&btnG= Search
2002年,p.42.24) ホンボンヨン, 損害保険会社のポートフォリオ選択模型 保険学会誌第57 冊,韓国保険学会,2000年,p.39。
不動産商品の短所である流動性が改善された。しかし,不動産に対する投 資の特性の上,個別性と独立性があることから事業別利益性の検討と予測 が金融資産と比べて相対的に難しい。また個別物件の特性と事業別の特殊 性によって運用者の経験に依存する傾向が高い。従って投資手続きの合理 性,投資運用の客観性,投資の専門性の確保が必要である。
一方,最近,市場 の 規 模 が 大 き く な っ て い る
PEF
(Private EquityFund
)に対しても関心を持つ必要性がある。PEFと言うのは少数の投資
者から溜めた資金を株式・債券などに運用するファンドであり,公募ファ ンドとは違い運用に制限がないので自由な運用が可能である。公募ファン ドは全体規模の10
%以上を一種目の株式に投資することができないし,債
券にも一種目に10%以上投資することができないなど制限がある。しかし,
PEF
はこのような制限がなく,利益が発生するのならどんな投資対象に も投資することができる 。韓国金融監督院によれば,2007年10月現在,韓国
PEF
市場の規模は約 8.3兆ウォンである 。PEFはリスクが大きいから損保社の資産運用の方 針と合わないが,市場規模が急速に大きくなってきており,期待利益も高 いことから今後に備えて関心を持つ必要があると判断される。結び
本稿では韓国の損保社の資産運用の現況と問題点を取り上げ,損保社が資 産運用側面で解決しなければならない課題を述べてみた。
韓国の損保社は保険営業利益の改善を2008年度の最優先の課題として策定 している。しかし新しい保険社の市場参入などによる競争の激化は保険料の 引下競争につながっている。従って今後の保険営業利益は低下するだろう。
保険営業により利益の改善が容易ではなければ,資産運用利益を上げること
25) ジョンムンキョン, 株式型ファンドの戦略的資産配分とファンド成果関係 分析
working paper IKSA,2005年,p
.22。26) 韓国金融監督院,
PEF制度導入3年の成果分析 ,報道資料,2007年12月。
に関心を高める必要がある。
しかし,損保社の資産運用の現況を見ると,運用の目標を安全性に置いて いるため運用資産の大部分を安定性が高い資産に投資している。低金利が続 いている現状では国公債の利益率は低くなる。結局,損保社の運用利益率の 下落につながる。
また,投資対象が限定されている。期待利益とリスクが異なる様々な資産 への分散投資が行っていない。特に海外資産への投資は少ない。
損保社がこのような問題を解決し,激しい競争の環境下で生き残るために は,資金調達と資金支出を同時に考える総合的な資産運用システムを構築す る必要がある。
このために,保険社の
ALM
(Asset Liability Management)を強化す る必要性がある。また,実務的には資産運用プロセスで全社的な目標一致が 必要となる。戦略的な資産配分システムによって目標利益率を設定してこれを果たすた めに資産投資に関する意思決定をしなければならない。資産別投資方策とし ては,低評価になっている国内株式の投資を増やす必要がある。韓国企業の 財務健全性は改善されたので会社債の投資比重を高めるのも望ましい。海外 の株式や不動産投資なとも投資運用利益を高める一つの方策として考えられ る。
最後に,本稿では損保社の資産運用に焦点を当てて考察することにしたが,
損保ビジネスにおいて重要なのは本業の保険営業であるという点である。
(筆者は企銀経済研究所勤務,研究委員)
参考 献
Brinson
,G., L
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