チタン酸アルミニウム(Al2Tio5)
耐火物の分解挙動
(昭和55年9月18日 原稿受理)
金属加工教室芦塚正博
京都セラミ・クス三好正法 公文数学研究所堀川正道
Kinetic Studies on the Decomposition Behavior of Aluminium Titanate(Al2TiO5)
by Masahiro ASHIZUKA Masanori MIYOSHI Masamichi HORIKAWA
Abstract
The decomposition behavior by isothemlal heating of sintered Al2TiO5 was studied.
The results obtained are as follows:
(1)The decomposition behaviors of Al2TiO5 were expressed by Johnson−Mehl・Avrami equation(J. M. A.
eq.).
(2)Index n of J.M. A. eq. was about 2 when Al2TiO5 was decomposed isothe㎜ally after it was reac・
tion・sintered at 1480℃and was quenched rapidly to room temperature(Heat treatment 1). Decomposi・
tion isotherms were characterized by sigmoidal shape with the maximum rate at 1200℃.
(3)Index n was 3 to 4 when the sample(Al2TiO5)was transferred immediately to the furnace maintained at decomposition temperature after reaction−sintering at 1480℃and it was decomposed isothermally (Heat treatment 2).
(4)Isothe㎜al decomposition rate in Heat treatment 2 was very slower than that in Heat treatment 1.
る。しかしながら,機械的強度が小さく,緻密に焼結せ 1.緒 言
ず,900°から1300℃の温度領域でアルミナとルチルに チタン酸アルミニウム(AI2Tio5)は, Langら1)が報告 分解するという欠点をもっている。
したAl203・TiO2系状態図によると,この二成分系で生 AI203−TiO2系状態図1),チタン酸アルミニウムの結晶学 じる唯一の化合物で,1860℃の高い融点をもつ耐火物材 的性質2),低熱膨張の原因や機構3),さらに雰囲気4)〜6)な 料である。このチタン酸アルミニウムは熱膨張が非常に らびに添加物η等のチタシ酸アルミニウムの分解挙動に 小さく,室温から800℃附近までの温度範囲で負の熱膨 対する影響,分解挙動の速度論的研究8)〜1°)など,いくつ 張性を有し,これが他の耐火物に比べて特徴となってい かみうけられる。
本研究では,チタン酸アルミニウム焼結体の分解挙動 に保持した電気炉中に,再び白金線でつるし,一定時間 を速度論的に解析し,分解速度におよぼす焼成時間の影 等温熱処理した。このような熱処理過程をHeat treat・
響,熱履歴の影響等について調べた。 ment 1と呼ぶ。
第2の実験は,成形体を白金線で電気炉中につるし,
2.実験方法
1480℃で12時間保持し,チタン酸アルミニウムを合成 出発原料として市販の酸化アルミニウム(特級)およ するところまでは同じであるが,それを室温まで下げず,
び二酸化チタン(特級)を使用した。これらより,Al203 1480℃の焼成温度から所定の等温分解温度まで電気炉 とTiO2が1:1になるように秤量し,アルミナ製 の温度を急変(約5分)させ,その温度に一定時間保持 ボールミル(SSA素地)で湿式混合した。この混合粉末 して等温分解反応を行わせる。このような熱処理過程を に5%PVA水溶液をバインダーとして加え,2、4 t/c㎡ Heat treatment 2と呼ぶ。
の成形圧で直径16.5㎜,厚さ7.5㎜の円板状試料を作 このようにして得られたペレット状の分解試料を粉砕 成した。 し,粉末X線回析により,その分解率を測定した。なお このような成形体を1480℃で2〜18時間焼成したと 内部標準物質としてCaF2を用いた。
ころ,5時間以後の密度は一定値を示した。またX線回
3. 実験結果および考察 析の結果,2〜18時間焼成した全ての試料について
βAl2TiO5であることが確i認された。 3.1等温分解曲線(Heat treatment 1)
以上の予備実験をもとにして焼成時間を12時間と定 熱処理方法としてHeat treatment 1を用いた場合の め,Fig.1に示すような熱処理方法の異なる二種類の実 チタン酸アルミニウム焼結体の等温分解曲線をFig.2,
験を行った。 Fig.3に示す。また分解率がo.4とo.8になる時間と温
;15。。
茎1。。。
1,。。
ξ。
P
㌃1500
旨
蔓1000
9E500
巴
6㊦0 6 8
Time(hr) 苫
10
(a) Heat treatment 1
0
0 5 10 15 Time(h)
Fig.2E鉦ect of temperature on the decomp・si・
tio皿of A12TiO5.(Heat treatment 1)
LO 6 16 24
Time(hr)
(b)Heat treatment 2
呂 Fi忌田。。t t,,atm,。t、。h斑。1。 9。5 ∈ 8 む 第一の実験は,Al、03とTio2の混合圧粉体を白金線 o でシリコニット電気炉中につるし,約4.5時間で1480
0
.//
●1225°C
℃まで昇温し,その温度で12時間保持しチタン酸アル 0 5 10 15 Time(h)
ミニウムを合成した後,炉外へ取り出し,室温まで空中 . 急冷した.それを予め9。ぴ一13。。℃の間の所定の雌 F邸悪cl〜1罐「a{豆:。:職::灘゜s1
1300
合 二1200
ξ き11・・
巴
1000
o ● 、 む コ コ\ \
\\
む
〜肴\、\
香 1−1.0 言
0 5 10 15 盲〒 Time(h) 一 一2.0 Fig.4 Time・temperature tran8formation
curves.(heat treatment 1)
(1):Decomposition ntio=0.4
(2>:Decomposition ratio=0・8 −aO
Time(h)
2 4 68101215
乏/1:1
/〆//・
ジ/
tO 2.o ao 度の関係を示したのがFig.4である。これらの図より明 ln t
らかなように,チタン酸アル・ニウム焼結体は9・ぴ一 F 忌5会::a認瓢゜「(農=
1300℃の温度範囲で分解し,その分解速度は温度の上昇 ment 1)
に伴って増加し,1200℃附近で最大となり,さらに温度
縞くなると馴、齢する∴うした分解速度の温度 12。。11;;惚u「議『)1。。。
−2.0 依存性や反応曲線がS字型であることから核生成一成長
反応が律速であると考えられる。
このような反応の解析には,一般にJohnson・Mehl・
Avramiの式11)が用いられる。 −40
ん1」α=〃〆 (1) ぷ
に ここでαは反応率, は時間に依存しない定数,tは反 一 一60 応時間,nは反応機構に関係する定数である。(1)式の両
辺を対数にとると
ん( 11η1一α)=⌒r (・) 丑
となる。
70 75 ao 粒界では,核生成速度が核の成長速度に比べて非常に 11TX10−4(1ぐ1)
大きいときに1主初期に核生成可能な活性位置は核で飽 Fi苦6Arrheniu, plot for decom.
和し,核生成速度は0となるので,主反応部分で,その po8ition of A1・Tio・・
核の成長が律速となる・・.。の場合,式(1)および式(、)のn (Heat t「eatment 1)
は核の成長の次元に等しく,核生成位置が粒界面,特定
の刃状部分および粒子の特定のコーナーであるかによっ ある。この勾配よりn=2が得られた。
て,それぞれ1,2および3となる。また核生成速度が この値は亀山,山口の結果8)と一致している。ここで用 核の成長速度に比べて著しく小さけれぽ,核生成速度は いたチタン酸アルミニウム焼結体は,合成温度1480℃
反応の進行中は,ほぼ一定と考えることができるから, より室温まで急冷し,ついで分解実験にさいしては所定 式(1)のnは核の成長の次元に1を加えた値となる9)。式 の実験温度まで急熱されるため,試料の粒界に多数のマ
(2)にFig・2, Fig・3の結果を入れ整理したのがFig 5で イクロクラックが生じる。急熱,急冷により,このマイ
クロクラヅク部分に多数の核が発生するため,核生成速 24時間焼成し,空中急冷することにより合成時間の異な 度は核の成長速度に比べて非常に大きくなり,分解反応 る3種類の試料を作成した。これらの試料を1150℃で は核の成長速度によって支配されることになる。得られ 等温熱処理し,チタン酸アルミニウムの分解速度におよ た次数がnき2であることは,核生成位置がマイクロク ぽす合成時間の影響を調べた。それをFig.7に示す。図 ラック部分に刃状に配列したことを意味している9)。 より明らかなように焼成時間が長くなるほど分解速度は Fig.6は反応速度定数んと温度の関係を示したもので 減少している。
ある。これより活性化エネルギーとして98Kcal/molの Fig.8はFig.7の結果をAvrami plotしたものであ 値が得られた。 る。3本の直線はほぼ平行しており,焼成時間が変化し 3.2分解速度におよぼす合成時間の影響 ても次数nは一定で,n=2であった。
Al203とTiO2混合成形体を1480℃で3,12および 一般に分解核は粒子内部より粒界に生じやすい。した がって焼成時間が長くなると緻密化と同時に粒成長が起
1.0
量
§°5
8
/8>°
グ1ζ
ソ
●
/
口 O
°,。_。一。〆°
0 5 10 15 0 Time(h) すような方法であった。この場合の試料は,所定の温度 F』7Dec。mp。siti㎝is。therm、 at 1150・C で分解実験を行う前に,急冷,急熱を受けるため,その
蒜漂盟1㌔監。siご鑑。驚 熱履歴が辮速度に影響撤る可自旨性がある・それで,、
(Heat treatment 1) ここでは試料を1480℃で焼成したのち,室温まで急冷 することなく,焼成温度から1150℃および1100℃まで 丁ime(h) 急激(約5分)に変化させ,それぞれの温度で等温分解 2 4 6 81012 .
/
こり,粒界面積が粒径に反比例して減少する。そのため 界面に生じるマイクロクラックも相対的に減少し,分解 速度が低くなると考えられる。この粒成長は走査型電子 顕微鏡による自由表面観察から確かめられた。
3.3 分解速度におよぼす熱履歴の影響(Heat treatm飽t 2)
これまでにのべたチタン酸アルミニウム焼成体を熱分 解する熱処理方法は,Fig.1(a)のHeat treatment 1に示
1.0
0
菅.1.
と 亭 三 一2.0
一ao
させた。その熱処理方法を図で示したのがFlg.1(b)の 0.g Heat treatment 2である。その実験結果をFig.9に示 σ8 す。Heat treatment 2の方が分解速度が非常に遅い。
Fig.10はHeat treatment 2の場合の1100℃での実 06 験結果のAvrami Plotである。この勾配より次数n=3.3
.4
5 1.0 0
(1 1100°C )1100・C
1ρ 20
1nt o
∠ 8づ
0 10 20 30 40 F 苦8 wごi』1°蒜;t霊d鴛謬㌃ ・・m・(・)
which were sintered at 1480℃ Fig.9Decompo8ition isotherms of A12TiO5 for time pe亘ods indicated. (1):Heat treatment 1
(Heat treatment 1) (2),(3):Heat treatment 2
1.0
0
エ亨
=−1.0
5↓
5
一2,0
一3C
1.0 2.0 30 ,
mt 持した後,15時間以上経過してはじめて顕著な分解を Fig.10 Avrami plots for decomposi・ 開始した。
tion of A12Tio5
Time(h) 4.結言
2 4 6 81012 1620 30
Al2Tio5焼結体の等温分解挙動を研究し,次のような 結論を得た。
1)A12TiO5焼結体の分解挙動の解析にはJohnson・
Mehl・Avramiの式(J. M. A. eq.)が適用できた。
2)1480℃で焼成した試料を室温まで急冷した後,等温
/巾婦。 ㌫㌶霊鷲三鑑憲:㌶
n=1.8 ,
速度を示した。
3) 1480℃で焼成した試料を,直ちに等温分解温度まで
\, :耀16巖:慧鷲:eatment2)のエ
4)Heat treatment 2の場合の分解速度は, Heat treatment 1の場合に比し非常に遅く 分解温度に保
文 献
を得た。この図には,比較のためにHeat treatment 1の 1)SMLan島CLFillmo「e and L H・Maxwell:J・Resea「ch NatL Bur. Standards 48(1952),298.
実験結果も同時に示した。 2)C.EHolocombe Jr. and A L.Co旋y Jt:J. Am. Ceram.
Heat treatment 2での分解試料はHeat treatment l Soc.,56(1973),220.
の場合に比し,急冷,急熱過程を経ていないため,界面 3)WRBuessem NR Thielke and R V Sa「akauskas:Ce ramic Age 60(1952),38.
でのマイクロクラックの生成は非常に少なくなる。その 4)永廣彰夫,御代健次郎:旭硝子研究報告3(1953),148.
ため,粒界での核生成数も減少し,分解速度も低下した 5)永廣彰夫,御代健次郎:旭硝子研究報告4(1954),133.
ものと考えられる。また核生成位置は粒子界面の特定の 6)功刀雅長・小西昭夫佐藤鳳高橋克明:材料12(1963)・656・
7)浜野健也:耐火物27(1975),520.
コーナーに限定され,それを起点にして3次元核成長が 8)亀山次彦,山口喬:窯業協会誌84(1976),589.
おこるため,次数nは3〜4に増加したものと考えられ 9)加藤悦既大門啓志,小林雄一:窯業協会誌86(1978),626.
る・ ilぽ㌦1鑑訳當灘謙1;霊1脇,
48,192.