九州工業大学研究報告(工学)No.68 1996年3月 31
Si表面の水素定量と水素終端面上での Ag薄膜形成初期過程の研究
(平成7年11月22日 原稿受付)
電気工学科内藤正路
Hydrogen Concentration and Atomic Structure Analyses for the Hydrogen Termination of Si Surfaces and the Ag Thin Film Growth Thereon
by Masamichi NAITOH Satoshi NISHIGAKI
Abstm6t
In this paper, we report results of ERDA, LEED and STM investigations on the effects of hydrogen adsorbed on the Si surfaces. ERDA employing MeV ion beams is one of the most reli.
able experimental techniques for the direct determination of absolute hydrogen concentration at semiconductor surfaces. Results of its application to Si(100)and Si(111)surfaces are described.
Characterization of the growth process of Ag thin films as well as the atomic structure of the subs−
trate is performed by STM.
物をドープしたP型Si結晶において結晶中に侵入した
1・はじめに 水素原子によってアクセプターの電気的活性が失われる
半導体表面上に吸着した水素の挙動は表面科学の最も 現象(2),水素化非晶質Si薄膜における水素の役割(3), Si 基本的な研究対象の一つであって,種々の表面研究手法 窒化膜・酸化膜中の水素含有率(4),金属一半導体界面
を駆使した多くの研究がこれに向けられている。しかし の水素の分布(5)など解明されるべき重要な問題が存在 ながら水素の定量測定が困難なこともあってその存在量 する。
はほとんどの場合測定されておらず,推測した量に基づ 水素を定量する手法の一つとして高エネルギーイオン いて構造や物性などの議論が行われてきた。このような を用いた核反応法があるが,この手法は表面損傷が大き 研究においては,現象をよりよく理解しその応用を図る く測定に長時間を要するので,水素の量が時間的に変化 うえで水素量を具体的に知ることが本質的に重要である するような現象を扱うことは難しい。そこで我々はこれ のは言うまでもない。 まで表面研究へ適用されていなかった弾性反跳粒子検出 一方,実用材料の研究分野でも近年表面水素の定量化 法(ERDA:Elastic Recoil Detection Analysis)をこの表
の必要性が増しつつある。例えば,Si LSIプロセスの 面水素定量化の問題に適用した。ここでは,まず最初に 低温化を実現するための技法の一つとして注目されてい ERDAによるsi(100),(111)清浄表面上の水素吸着
るSi表面不活性化技術(1)においては, Siのダングリン 過程にERDAを応用して得られた結果について報告す グボンドを終端している水素の具体的な値やその経時変 る。さらに水素終端面上の金属薄膜成長初期過程につい 化,あるいは種々の処理における水素の安定性などの検 て調べた結果についても報告する。
討がこの技術を実用化する上で必要不可欠である。 一般に,ある基板結晶の上に別の物質を成長させる場 Si表面最外層における吸着水素の問題のほかに,表 合にどのような構造・形態の膜が得られるかは,両者の 面から数μm程度までの半導体結晶表層や薄膜におい 物質固有の性質により支配される。そのため,結晶性の ても,水素が関与する現象は数多い。ホウ素などの不純 良好な単結晶(エピタキシャル)薄膜が得られる系は,
数多くある組み合わせの中のごく一部に限られている。
_方,いろいろな新機能材料やデバイスへの応用のため 2・実験原理゜装置
新しい界面や多層膜構造を実現するためには,このよう 2.1弾性反跳粒子検出法(ERDA)
な物質固有の性質に起因する制限を取り除き,人工的に 実験に用いられた高エネルギーイオンビームは エピタキシャル過程を制御することにより,所望の特性 1.7MVタンデム型加速器(米国GIC社製)により供給
を持った材料を必要に応じて自由に作成することが重要 された。図1にタンデム型加速器の概略を示す。タンデ な課題となる。 ム方式ではまず負イオンを発生させる。この負イオンは 薄膜の成長様式は3つの型,すなわち基板の上に薄膜 コッククロフト・ウォルトン方式により得られる高電圧 が島状に成長するVolmer−Weber型,1原子層ずつ層状 まで加速された後,ストリッピングガス(Ar)中を通 に成長するFrank−van der Merwe型,2次元層が形成 ることで正イオンに電荷変換される。この高エネルギー された後に島状成長するStranski−Krastanov型に分類さ の正イオンは同じ電圧で加速されることによってさらに れている。一般的に,薄膜物質の表面自由エネルギーが 高エネルギーのイオンビームとなる。ここでn価イオン 基板のそれよりも大きい場合にはVolmer−Weber型,逆 を用いればターミナル電圧のn+1倍に相当するエネル の場合はFrank−van der Merwe型で成長するものと考 ギーを持ったイオンを得ることができる。
えられる。Stranski−Krastanov型はやや複雑で,1〜数 半導体表面水素の定量は,図2に示すような装置によ 原子層の吸着により2つの物質の中間的なものが形成さ りおこなった。6MeV−1g F 3+をイオンを直径1mmの れる場合に相当するが,Ag/Si系をはじめかなり多くの コリメータを通過させて超高真空(〜2×10−8Pa)
系でこの成長様式となることが知られている。 チェンバー内に導き,試料表面に当てる。イオン照射に そこで基板の表面自由エネルギー,換言すれば表面原 よって試料表面から放出される反跳粒子や散乱粒子のう
子の結合状態を何らかの方法により変化させることがで ち,弾性的に反跳された水素原子のみを半導体検出器 きれば,薄膜の成長様式を制御でき,ひいてはこれまで (SSD)で検出する。この際,水素以外の反跳重粒子 実現できなかった系についても良好なエピタキシーが実 (例えばSi)や散乱粒子(F)を取り除くために,検 現可能となろう・本研究ではそのモジュレータとして吸 出器の前に厚さ5.7μmのアルミニウムフィルターを設 着水素の利用によって水素終端Si(111)面上のAg薄 けている。実験では,試料に対し照射角20°でイオン 膜成長初期過程が清浄表面の場合と大きく異なること,
及びAg(111)のエピタキシーが大幅に改善されるこ とを見いだした。このときの水素吸着量の変化を
ロサ ロ
。Y1
諺 そΦ s,。
⑥電荷変換カナル(ガス導入型)
⑦ピーム集束レンズ僧電Qポール型)
① 図2 表面水素研究用ERDA実験装置
図1 タンデム型加速器
Si表面の水素定量と水素終端面上でのAg薄膜形成初期過程の研究 33
ビームを入射させ,反跳角40°で反跳水素を検出した。 探針と試料表面との間に流れるトンネル電流(Jt:0.1 このような実験条件のもとで,表面水素濃度Nを次式, 〜2nA程度)がこの距離に極めて敏感であることを巧 Y.sinα みに利用して,針と表面との相対的な距離を0.01nm以
N= (1) 上の精度で測定する。探針はピエゾ素子に取りつけられ
Q器△Ω ていて,・y・それぞれの方向}働かすことができる。
から求めた。ここでYは検出される反跳水素粒子数,Q トンネル電流をフィードバック系でコントロールし,こ は入射粒子数,(dσ/dΩ)は微分反跳断面積,△Ωは れを一定値にして探針を試料表面に沿って走査すれば,
検出器の立体角,αは照射角である。なお(1)式において 試料表面の凹凸像が得られる。このトンネル電流は,探
(dσ/dΩ)の値はラザフォードの散乱公式からかな 針一試料間の距離が0.1nm増すと約1桁減少する。ま り正確に求められる。さらにこのチャンバーではラザ たトンネル電流は探針先端の試料表面に最も近い1個の フォード後方散乱分光法(RBS)と低速電子線回折 原子に集中的に流れ込み,空間的に絞り込まれる。その
(LEED)がおこなえるようになっている。 Si基板の清 ため, STMの分解能は試料に垂直方向には0.01nm程 浄化は通電加熱法により行い,2×1あるいは7×7 度,水平方向には0.1nm程度と実空間の原子レベルで LEED像が出現することでその清浄性の確認をした。Si試 表面を観察することが可能である。
料表面上への水素吸着は,試料に対向して設置しているタ 図4は本研究で用いた超高真空STM装置(日本電子 ングステン製フィラメントを水素雰囲気中(2×10−4Pa) 製・JSTM−4500XT)の概略図で,メインチャンバー,
で約1700℃に加熱し,水素分子を原子状に解離させてお 試料処理チャンバー,試料(探針)交換チャンバーの3 こなった。また,Agの蒸着はタングステン製バスケッ つのチャンバーから構成されている。メインチャンバー
トを用いておこなった。蒸着レートは約0.5原子層/分で にはSTM測定装置が設置されていて,コントロールユ ある。試料の清浄化,水素吸着方法,Ag蒸着方法は以 ニットと接続されている。試料処理チャンバーには,背 下共通である。 面型LEED装置, Ag蒸着源,水素アンプル,水素解離 2.2走査トンネル顕微鏡(STM) 用及び探針加熱用フィラメントが設置されている。ここ 走査トンネル顕微鏡は,G. BinnigとH. Rohrer等(6) で作成した試料はトランスファーロッドを用いてメイン
によって開発されて以来,表面構造を原子レベルで観察 チャンバーに移動させてSTM観察に用いられる。探針 することのできる顕微鏡として広く応用されている。こ は最大3本まで保持されることができ,試料と同様にト の顕微鏡では,従来の顕微鏡のような特殊な光源や電子 ランスファーロッドでメインチャンバーに移動させて 線源を必要とせず,従ってレンズも必要としない。試料 STM観察に用いられる。本研究に用いたSTM装置の と探針との間に流れる量子力学的なトンネル電流をプ 性能は,スキャン範囲2〜200nm,試料バイアス電圧0 ローブとする,全く異なる原理に基づいた近視野顕微鏡 〜±10V,トンネル電流30pA〜1μA,観察温度室温〜
である。 700℃である。装置全体は空気バネ除振台上に据え付け 図3にSTMの原理図を示す。非常に細い探針を試料 られており,外部からの振動を遮断している。
表面に近づけ(探針一試料間の距離Sが1nm以下),
㎏Evap°「at°「
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Specimen!t ip Parki㎎
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輌STM Unit
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図4 超高真空STM実験装置
図3 STMの動作原理
のとき,吸着速度に関する議論を可能にするために,水
3・結果及び考察 素吸着中は常に試料の向きを一定にし,試料からみた
3.1Si(100)面上の水素吸着 フィラメントの立体角を同じになるようにした。
まず最初に,6MeVのFイオンによるERDAによっ 基板温度が室温の場合,原子状水素の曝露にともない て得られたエネルギースペクトルを図5に示す。横軸は 水素吸着量は1ML程度まで(水素曝露量では25 L)ほ 検出エネルギー,縦軸は検出された水素粒子数を表して とんど直線的に急速に増加している。そして1MLを越 いる。本実験条件において二体弾性衝突モデルを用いて えた後はかなりゆっくりと水素吸着量が増加する。最終 表面水素の反跳エネルギーを計算すれば,669eVになる。 的に水素曝露量が1000 L以上で吸着水素は飽和し,飽和 図5では300eV付近にピークが現れている。これは反跳 水素吸着量は1.9MLであることがわかった。また,図 水素粒子が検出器前のフィルターを通過する際にエネル 中の各点(a,b,c)でのLEED像を図7に示す。清 ギー損失を受けるからである。このスペクトルを積分し, 浄なSi(100)のLEED像は図7aのような2×1を示 その値をYとして(1)式に代入すれば水素吸着量が求めら し,ここに1ML程度水素が吸着してもなおLEED像 れる。 は図7bに示すように2×1のままであった。しかし,
Si(100)面上の基板温度室温及び400℃における水素 さらに水素を曝露していくに従ってしだいに2×1のス 吸着過程について調べた結果を図6に示す。図の縦軸は ポットが弱くなり,ほぼ2MLの水素が吸着して飽和し 試料表面の水素濃度である。左側は表面水素吸着量で, たときには,図7cに示すように1×1となった。この 右側はsi(100)面での被覆率に換算してある(1ML LEED像の変化は, si(100)清浄表面が水素の吸着に
=6.78×1014atoms/cm2)。横軸は試料表面へ入射した よって明かに構造変化していることを示している。水素 水素原子の量にするべきであるが,それを測ることがで 曝露中の基板温度が室温の場合,ほぼ2MLで水素が飽 きないので,水素分子の曝露量をラングミュア単位(L 和するのに対し,400℃のときは,ほぼ1MLで飽和し
=10−6Torr・s=1.33×10−4Pa・s)で表している。こ ているのがわかる。このときのLEED像は,2×1の
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ENERGY IkeV] = EXP。SURE I1・166T。rr・sec】
図5 ERDAのスペクトル例 図6 si(100)面の水素吸着量の変化
図7 水素吸着によるSi(100)面のLEED像の変化。(a)清浄表面,(b)モノ ハイドライド表面,(c)ダイハイドライド表面:図6の3点(a,b,c)
に対応。
Si表面の水素定量と水素終端面上でのAg薄膜形成初期過程の研究 35
ままで,1×1に変化することはなかった。 イド相のそれより約35倍大きいということがわかっ 以上ERDAによって測定された水素吸着量の変化と た(8)。
LEED像の変化を併せると, Si(100)−2×1表面へ 3.2 Si(111)面上の水素吸着
の水素吸着に関して多くの研究者の間でほぼ認められて 図9に室温のSi(111)表面への水素曝露量に対する いる桜井等のモデル(7)を以下のように検証することが 水素吸着量の変化を示す。図の縦軸は,左側は表面水素 できる。図8に示すように,Si(100)−2×1清浄表 濃度で,右側はSi(111)面での被覆率に換算した量で 面(図8a)は再配列してダイマーを形成していると考 ある(1ML=7.83×1014atoms/cm2)。先のSi(100)
えられており,これが図7aのLEED像を与える。こ 面とは異なり,水素吸着量は水素曝露量とともに緩やか の表面にはSi原子1個当り1本のダングリングボンド に増加し,1000 L程度の曝露量で吸着水素は飽和した。
があるために,そこに水素が1ML程度まではモノハイ そのときの飽和水素吸着量は,1.5MLであることがわ ドライド相(図8b)をつくって吸着する。ただし, Si かった。
原子どうしによるダイマー結合はそのままであるために, Si(111)−7×7清浄表面の構造については,高柳 LEED像は2×1のままである。実験では,基板温度 等(9)により提案されたDAS(Dimer Adatom Stacking.
が400℃のときはモノハイドライド相が形成されるとそ fault)モデル(図10)が有力とされている。このモデル れ以上反応は進まないが,室温の場合にはさらに水素吸 では,表面のダングリングボンドは7×7単位格子当り 着量は増加し,約2MLで飽和した。またLEED像は
一2×1から1×1に徐々に変化した。これは原子状水素 N∈ 1.5 む
にさらに曝露されることによってSi原子どうしのダイ き
マー結合が肱そこに水素が吸着することで表面Si 亀m
原子1個当り2つの吸着水素を持つダイハイドライド相 又 ロ
(図8c)が形成されるためであると考えられる。 Z o ERDAによって得られた結果は・このモデノレを支持す 5°・5
るものであった。このことは,ERDAは表面水素の定 告 量に適用できるということを示している・さらに室温で 馳・
コ1.5芝 岩 1・o歪
9 0.58
0.0 の水素吸着過程についてシミュレーションをおこなった Z O 200 400 600 800 1000
ところ,モノ,、イドライド相の形成速度はダイハイドラ 8 ExP・suRE【L=1ぴ6T。rr.sec]
工
図9 Si(111)面の水素吸着量の変化 ダイマー結合 ダングリングボンド
(a)
H
、/
Si
⑧Adatom TOP VIEW Olst layer Si
SmE VIEW
・ 02nd 。3rd 図8 Si(100)面の水素吸着モデル。(a) °4th 清浄表面,(b)モノハイドライド表
面,(c)ダイハイドライド表面。 図10 DASモデル
19本あるが,ここに水素が吸着したと仮定するとそのと した場合と比べてはっきり異なった。
きの水素吸着量は19/49ニ0.39MLとなって,測定値よ Si(111)−7×7清浄表面では, LEED像は図12 a りもかなり小さい。したがって飽和水素吸着表面では, のような7×7を示すが,この表面に水素を飽和吸着さ si H 2やsi H 3の結合状態を持つ表面si原子がある程度 せると図12 bのようなsiの1×1スポットのまわりの 存在していなければならない。その場合,原子状の水素 1/7スポットだけが見えるδ7×7パターンを示す。
はSiどうしの結合を切って吸着すると考えられる。実 この上にAgを蒸着したところ,まずδ7×7の1/7 際,高分解能電子エネルギー損失分光法(HREELS) スポットがなくなり,さらにAgを蒸着すると図12 dに によってsiH2やsiH3の存在が確認されている(10)。 示すようにsiの1×1の外側にAgの1×1スポット この表面についてSTM観察をおこなった。得られた が鋭く現れた。これは,基板と結晶方位の揃ったAgの 結果を図11に示す。7倍周期のsi層とそれを覆うよう エピタキシャル成長(si(111)[112]//Ag(111)
に存在する直径2nm程度のクラスタが観察された。7 [112])が促進されていることを示すものである。基
×7ユニットの中にはDASモデルから12個のadatom 板温度が室温の場合にも同様の傾向が見られた(11)。
が取れたrestlayerが鮮明に観察され,7倍周期は保存 このときの表面水素の変化をERDAによって調べた。
されていることがわかった。このrestlayerが水素に 結果を図13に示す。横軸はAg蒸着時間(蒸着量)を示 よって終端されているとすれば,水素吸着量は43/49 し,縦軸は表面水素量を示す。基板温度が室温及び
(=0.88)MLとなりERDAにより求めた値(1.5ML) 350℃のどちらの場合にも最初飽和吸着していた水素が,
とはかなり異なる。そこでDASモデルに水素が吸着し Agを蒸着するにしたがって減少することがわかった。
た際にadatomが下地との結合を切ってrestlayer上にク 本研究で用いたERDAは高エネルギーイオンを入射粒 ラスタを形成すると考え,そのクラスタ表面或いは内部 子として用いるため,シャドーコーン(表面原子の影と に水素が存在しSiH2及びSiH3を形成するとすれば, なって入射粒子が入り込めない領域)がきわめて小さく ERDAやHREELSによる結果と矛盾しない。 (〜0.01nm),水素がAg原子によってシャドーされる 3.3 水素終端Si(111)面上のAg薄膜成 ことはない。このことは, Ag膜と基板の間に水素が存 長初期過程 在していても検出できることを意味する。しかし,分解 si(111)−7×7清浄表面上に基板温度350℃でAg 能があまりよくないため, Ag膜の上かAg膜と基板の
を蒸着した場合,LEED像は図12 cに示すような鮮明 な力×力を示した。しかし基板を水素終端した後に Agを蒸着すると, LEED像は清浄表面上にAgを蒸着
図12 水素終端面上にAgを蒸着したときの LEED像の変化。
(a)清浄表面,(b)水素終端面,
図11水素吸着si(111)面のSTM像・試 (c)清浄表面上に基板温度350℃で 料バイアスは一2V・トンネル電流は Agを5ML蒸着,(d)水素終端面上 0・3nA・観察領域は20×20 nm2。 に基板温度350℃でAgを5ML蒸着。
Si表面の水素定量と水素終端面上でのAg薄膜形成初期過程の研究 37
Ag COVERAGE 【ML]
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図13水素終端面上にAgを蒸着したときの 水素吸着量の変化
コ1.5Σ 訂 1.02 缶 >o・58
0.0
間に水素が存在するかを区別できない。Ag蒸着によっ て表面水素が明らかに減少しているが,これは表面から 水素が脱離していることを意味する。基板温度が高い場 合,表面水素の減少が明らかに急速であるが,これは基 板から水素が熱脱離するためであると考えられる。
この表面についてSTM観察をおこなった。図14は水 素終端表面に基板温度350℃でAgを蒸着して得られた STM像である。半導体表面原子を区別して観察できて
いることが特に図14aからわかる・Agを゜・2ML鯖し 図14水素終端面上 こ基板温度35。℃でAg た場合(図14a), DASモデルにおけるrestlayerの7 を(a)0.2ML(b)2ML蒸着した
倍周期が解消されていることがわかった・基板温度 錨91喋:遼詣蕊篇蛋
370℃で水素を吸着させた場合に同じ様なSTM像が観 域は(a)20×10nm2,(b)36×36 察されていることから(12),この構造変化はAg蒸着に nm°
よって引き起こされたのではなく,基板温度の影響であ
SiヱHy cluster ると考えられる・図11で見られたadat°mクラスタの大
きさや数がAg鯖により減少しているのカぎ図14 aで明 (a)祇蟻W㌦犠祇㌔㌦W
らかである。さらにAgを蒸着すると,図14 b中に示す H/Si(111)
ようにA〜Eの5つの領域が観察された。領域Aは図14 aと同じrestlayer, BはAg island, Cは微小adatom
Ag cluster
クラスタ・DとEはAg+Siの力×緬配列構造であ .鵠巳t
る。DとEは高さがSiの1原子層分(0.31nm)異なっ ●●●●●●● ●
ている。このことを図15のモデルを用し・て説明する.水 ω納踏謝、鴇㌶
素終端表面(図15a)にAgを蒸着すると大きなada−
tomクラスタは表面から脱離もしくは分解され, rest−
layer上にAgのクラスタが形成される(図15b)。しか ;;誉
1警巖 當欝漂鷲麓 (c)㌦戴i羅㌫
(図15c)。このとき,高さの異なった力×力領域
(DとE)が形成される力鴻×縮域力・広がってい 図15纏禦 にAgを蒸着したときの
く際にadatomクラスタ(C)を取り込むため, Si原子 (a)水素終端面,(b)水素終端面
が過剰になりその結果1原子層高⑭×錨域が優先 轟嬬翫瓢c)表面水
ときのSTM像を図16に示す。明るく見えているのが
Agクラスタで,直径が10〜20nm程度であることがわ ン3 Xβ かる。さらにAgクラスタの形から判断して,基板と結 一
的に成長する。
基一温一端面上にAgを5ML蒸着した
@1x・ノ9(1ぺく1x1
ン散乱法(14)の結果と一致している。
以上のことから,エピタキシャル膜形成機構について
考察してみる。si(111)−7×7清浄表面の飽和水素 Ag(111)
影響を及ぼしていると考えることができる。
一般にSi(111)−7×7清浄表面(基板温度240℃ 図17 Ag薄膜成長モデル(基板温度350℃)。
以上(15))でのAg薄膜の成長様畝St,an、kLK,a,t。. 翌清浄表面上・(b)水素終端面 nov型であることはよく知られている。すなわち,はじ
めに1MLのAgが2次元的な吸着層(ゐ×6構造)
を形成した後に,背の高い3次元的なAg islandが2次 面水素が2次元層(∨5×v5構造)の形成を妨げ,基板 元層上に形成される(図17a参照)。このときLEEDで 表面上にAgが横方向に広がってislandを作り,その結 は2次元層からの回折点だけ観測され,Ag islandから 晶方位が基板の結晶方位と一致していることがわかった の回折点が観測されないのは,本研究で用いたLEED (図17b参照)。
回折のコヒーレンス長〜10nmよりも形成されたAg is一 以上の結果より,表面水素が基板の表面自由エネル landの大きさが小さいためである。 ギーを変化させ,蒸着されたAg原子の凝集効果を抑制 しかし,水素を飽和吸着させた水素終端Si(111)上 し,その結果横方向に広がったエピタキシャル薄膜成長 では同条件でAgを蒸着しているのにも関わらず, を促進することがわかった。
LEED観察においてエピタキシャル成長したAg(111)
結晶からの回折点が強く出現しており,水素終端がエビ 4・むすび
タキシーを促進していることがわかった。すなわち,表 本研究では,表面水素の定量測定に非常に有力な弾性 反跳粒子検出法を確立し,さらに原子レベルで表面の観 察が可能な走査トンネル顕微鏡を用いて,Si清浄表面 における水素吸着過程や,金属薄膜成長初期過程に及ぼ す吸着水素の影響などについて調べ,表面水素による金 属薄膜成長様式の制御を示唆した。しかし,水素終端面 上のエピタキシャル薄膜成長機構や他の金属・基板での 表面水素の振る舞いや薄膜の成長機構などまだ多くが究 明されておらず,この点で更に研究を進める必要がある。
なお,弾性反跳粒子検出法による半導体表面水素の定 量に関する研究については,著者(内藤)が大阪大学大 図16水素終端面上に基板温度室温でAgを 学院在学中におこなったものである。同大学工学部尾浦
勝難と襟緩ワ麟i斗 憲1台郎教授に感謝いたします.
nA・観察領域は80×60 nm2。 走査トンネル顕微鏡の実験において協力していただい
Si表面の水素定量と水素終端面上でのAg薄膜形成初期過程の研究 39
た渡邊晃彦氏,嶋矢博氏及び探針の作製に尽力された電 (8)MNait・h, H. M・ri・ka, F. Sh・ji and K. Oura; C・ad一
気工学科重末貴寿技官に感謝いたします・ :隠謡1蒜ご麟瓢。鴛1:ii}1㍑f芸;1
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