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新刊紹介

著者 植物地理・分類学会

雑誌名 植物地理・分類研究 = The journal of phytogeography and toxonomy

51

1

ページ 80‑84

発行年 2003‑06‑25

URL http://hdl.handle.net/2297/48544

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新刊紹介

○ 沖津 進:北方植生の生態学 A 5判,212頁.20021216日.古今書院.3,200円(税別) 北海道そして極東ロシアをフィールドとして,これまで多くの論文を発表してきた著者の北方植生について の一応のまとめである。本書では,沿海州シホテ−アリニ山脈,サハリン,東シベリアマガダン州,カムチャ ツカ半島,北千島パラムシル島および北海道(大雪山)の各地域において,チョウセンゴヨウ−落葉広葉樹林,

エゾマツ−トドマツ林,エゾマツ林,グイマツ林,高山ツンドラなどの各地域での一般的な植生が扱われてい る。著者は,これらはごくありふれた植生景観であるが, それぞれが,時・空間的にスケールの大きな,固 有の,かけがえのない生い立ちを持っているのだ。 と北方植生に対する想いを語り,その分布と成立機構の 解明について植生地理学的に展開してゆく。

その手法は,グローバルな視野と現地踏査による植生の全体像の把握,周到な観察・洞察に基づいた解析と 仮説,およびそれらを裏づける実例の紹介による検証,と一貫している。特にその解析方法は,樹冠面積や成 長量,耐陰性など樹種の基本的特性に基づいた種間関係や群落構造の考察が中心であり,最近盛んなコンピュ ータ・プログラムによる解析は登場しない。また,川を150 kmもゴムボートで下りながら両岸の植生を観察

・記録する大胆な手法は,沖津氏ならではのものであろう。植物社会学を専攻する評者には,各植生の種組成 的な紹介や比較が少なく,物足りない点もある。しかし,読み進めるうちに,北方植生をよく知らないもので もその情景が頭に浮かび,納得させられるものになっている。また,宮部金吾をはじめとする先達の業績紹介 と評価など,文献についても充実している。

著者は,本書を 野帳と折れ尺を用いた,洞察力を原動力とするローテクノロジーによる研究の試み とし て,ハイテク技術での解析に偏り,フィールドワークが軽視されがちな最近の研究動向に対して暗に警鐘を鳴 らしているが,けだし共感するところである。植生学や植生地理学を志す学生をはじめ,若い方々には是非一 読してほしい一冊である。

なお,冒頭で 一応のまとめ としたのは,著者は,さらに旺盛に広域的,発展的な北方植生研究を続けて

いるからである。 (鈴木伸一)

○ 清水建美(編):日本の帰化植物 B 5判,500頁.2003325日.平凡社.13,000円.

地方の植物フロラ研究で最も厄介な問題は,帰化植物,特にイネ科植物の正確な同定であろう。長田武正著

『日本帰化植物図鑑』(北隆館),保育社『原色日本帰化植物図鑑』(保育社)は帰化植物同定の座右の書である が,残念ながら初版から25年以上経過した現在,新しい帰化種には対応しきれていない。記載の原典にあた れない多くの研究家は,最新の情報が掲載され,イネ科で鍵となる小穂の形態が図示されている『神奈川県植

物誌2001』を図鑑がわりに用いているのが現状である。このような中で『日本の野生植物』シリーズの姉妹

編として出版された本書は,まさに待望の一冊といえる。

本書では全部で691,032種が取り上げられ,執筆は20名の分類学者が分担している。記載文の『染色 体数』『原産地』『渡来』『メモ』の各項目は,「正確な情報の提供」という編集方針が凝縮したもので,簡 潔に書かれているが労作である。イネ科についていえば約160種が扱われ,白黒ながら小穂または小穂群の 写真が136点もあるのは画期的であり,同定を容易にしている。ただ解像度を考えると,写真が良かったの か線画が良かったのかは評価が分かれるかも知れない。カラー図版は160頁で,約650種類820点の写真が 収められており,このシリーズの他書同様,生態的な特徴が写し込まれた素晴らしいものである。

図鑑として秀でているだけでなく,「帰化植物とは」と題した約40頁の総論では,帰化植物の定義,日本 における現状,外来種問題,研究史,帰化植物論が最新の情報に基づいて述べられていて,まさに帰化植物と は何かを総合的に解説した文献になっている。関係者必携の書である。 (中田政司)

○ 愛媛県貴重野生動植物検討委員会(編):愛媛県レッドデータブック 愛媛県の絶滅のおそれのある野 生生物 A 4判,447頁.20033月. 愛媛県.非売品.

1999年度から2002年度の4年間(実地調査は2000年春から2002年秋まで)の調査結果をまとめた愛媛 県版レッドデータブックが発行された。

各論9の高等植物は愛媛植物研究会が調査メンバーとなり,松井宏光松山東雲短期大学教授と相原英二愛 媛植物研究会会長が編集委員としてとりまとめたものである。愛媛県に自生する約3,200種のうち,絶滅およ び野生絶滅が10種,絶滅危惧種が555種,準絶滅危惧種が75種,情報不足が186種,合計826種(約26

%)がレッドデータブックに記載されたことになる。27頁にわたって217種のカラー写真が掲載され,記載 80

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113頁と,動植混成の本誌の1/4を占める。記載は特徴,分布,生育状況・選定理由と簡潔で,とかく問 題となる分布図は掲載されてない.

特筆すべきは各論10のコケ類である。これまでにも宮崎県版レッドデータブックなど各県にゆかりのある 蘚苔類研究者が執筆者として加わったものは内容が充実しているが,愛媛県版では松山市出身の関 太郎広島 大学名誉教授が執筆し,59種が取り上げられた。愛媛県におけるコケ類の研究史やRDB該当種の生態的類 型などが『概要』としてまとめられており,生育状況・選定理由の記述は具体的で特記事項には異名も紹介さ れるなど,オリジナリティが高い。

本書は非売品であるが,印刷所の岡田印刷株式会社(〒790―0012 松山市湊町7丁目1―8, TEL 089―941―

9111)に申し込めば12,310円(税込,送料別)で入手することができる。ただし,残部は僅少とのこと

である。 (中田政司)

○ 藤原陸夫・松田義徳・阿部裕紀子:秋田県植物目録 第 10 版 A 4判,155頁.20021130日.秋 田植生研究会.非売品.

目録は,学名と和名に加えて,第10版で初めて掲載された場合はその植物の出ている文献番号,10段階分 布密度評価,生育起源(自生植物の場合は空白),秋田県絶滅危惧種のカテゴリー(秋田県版レッドデータブ

ック2002)が示されている。このことから,この本は秋田県のレッドデータブック改訂版作成の基礎資料と

して行政的にも利用されるかもしれない。

秋田県植物目録は,望月陸夫(望月は藤原の旧姓)氏によって1972年に本学会(旧名 北陸の植物の会)

より出版された。その後,第2版(1989年),3版(1991年),4版(1992年),5版(1993年),6版(1994 年),7版(1995年),8版(1996年),と改訂されてきた。第9版(2000年)になってはじめて著者は3 になり,本のサイズもB 5判からA 4判と大型になり,オーサーネームの省略も国際植物命名規約の勧告の 付記に従っている。新分類群一覧として56頁に18分類群(2新品種と16新雑種)の学名が出ている。これ らのうち12分類群の和名は新称である。裸名はできるだけ早く学術雑誌にて記載発表されることを希望しま す。

本書は,第9版発行後2年経過した間の現地調査と既存の標本の再検討の結果が掲載されている。

注文は,〒012―0804 秋田県湯沢市杉沢字森道上239 松田方 秋田植生研究会まで。 (鳴橋直弘)

○「京都西山の自然」編集委員会:京都西山の自然 A 4判,165頁.2002122日.京都西ライオンズ クラブ.非売品.

京都西山の自然と自然保護活動のカラー写真集である。平野,山麓,秋の七草,山野の実り,山地,帰化植 物,乙訓の竹,乙訓の動物,乙訓のきのこ,乙訓の自然を守る会,光明寺の蝶の保護,カタクリの保護活動,

植物調査の活動,希少植物の保護と繁殖,普及啓発の活動,京都西ライオンズクラブ観察会,西山地域の社寺 林のタイトルのもと,すばらしい写真が掲載されている。末尾に自然保護活動の紹介と京都西山の植物リスト が出ている。

本書は,京都西山地域で見ることのできる自然の美しさを知ってもらうことと同時に,この地域で自然を保 護しようと活動する人たちの姿も知ってもらうために,編纂されたという。1頁大や半頁大の写真は迫力があ り,綺麗で,芸術的でさえある。この地域が特にフローラの上から特色のある場所とは思わないが,自然が豊 かで,珍しい植物もあり,この地域の自然を守ろうとする人々の活動もうなずける。残部はわずかにあるとい う。

入手希望者は「京都西山の自然」編集事務局(〒617―0824京都府長岡京市天神3―14―5 宮崎俊一方)へ

問い合わせること。 (鳴橋直弘)

○ 中込司郎・中込ゆま子・中込あづさ:モンゴルの身近かな植物 モンゴル植物ミニ図鑑 B 4判,

260頁.20021226日.モンゴル友好協会ナイラムダル発行.6,000円(送料込み) 本書は,モンゴルに自生する高等植物の写真を中心とした植物図鑑である。

この本は,第1章モンゴルの植生概要,第2章モンゴルの植物からなる。第1章では,地勢と植生が簡単 に紹介され,7〜18頁の写真がその植生の雰囲気を我々に示してくれる。第2章では,ほとんどの頁はB 5 大のカラー写真があり,その植物の名前は日本名,学名,モンゴル名,及びロシア名で示されている。また,

数行の形態の記載と分布,及び植物の利用や生育地等のノートが付記されている。写真は大きいため分りやす 81

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い。エゾヌカボ,フトイ,アサツキ,ネジバナ,カラフトダイオウ,ムカゴトラノオ,ウラジロアカザ,エゾ カワラナデシコ,リュウキンカ,ウマノアシガタ,グンバイナズナ,エゾハタザオ,ウメバチソウ,ホザキシ モツケ,キンロバイ,ワレモコウ,クサフジ,ヤナギラン,ベニバナイチヤクソウ,コケモモ,ハナイカリ,

トウテイラン,ヒレアザミ,チシマキンレイカ,イワギク等日本との共通種も多く,見ていて楽しい本である。

購入希望者は,〒400―0125 山梨県中巨摩郡敷島町長塚246 中込司郎氏(TEL & FAX 055―277―3663)

へ直接申込まれるとよい。 (鳴橋直弘)

○ 中池敏之:アジアにおけるシダ植物分布図の索引誌 第 2 版 A 4判,151頁.2002年.自費出版.(英 文タイトルはIndex to Distribution Maps of Pteridophytes in Asia)

この本は,アジア地域のシダ植物の分布図が出ている文献を集めたものである。

本書は,日本シダの会会報第3巻別冊第1号で,日本シダの会企画『日本のシダ図鑑』1〜8(1979―1997 年,東京大学出版会発行)の完成を記念して編集,出版された全第1版の補遺にあたるものである。アルフ ァベット順に学名で分類群が記載され,各植物毎に分布図が出ている地域とその出典文献があげられている。

奇数頁右上には6.7×9.8 cmの枠があり,その中にシダ植物の線画が掲載されている。巻末には和名で学名が 分かるようになっている。種毎のアジアでの分布を完成するには,膨大な時間が必要と思われる。この本はま ずその一歩と考えられる。

我々は,植物の学名の出典を調べるために,キューエンシス(Index Kewensis plantarum phaneroga- marum)を利用し,植物の図を調べるために,ロンディネンシス(Index Londinensis to illustrations of flow- ering plants, ferns, and fern allies)を活用する。世界のシダ植物分布図を調べるために,本書が利用される というように,今後発展拡大されることを密かに期待している。

本の購入希望者は,中池敏之氏(〒158―0098 東京都世田谷区上用賀2―5―2―307)まで申し込むと,実費

+送料の2,310円で手に入れることができる。 (鳴橋直弘)

○ 中池敏之:シダの和名辞典 だれが,いつ,どこで名付け,その意味は A 4判,180頁.200331 日.羊子社出版部.2,500円.

本書は,日本産シダ植物の全ての和名について,その漢字表記,命名者,命名した年,出典,およびその云 われが記された本である。

本は,アイウエオ順で和名が掲載され,その和名は,オオ・アカ・ウキクサのようにもとからあった和名に 新しく付けられた形容詞等の言葉ごとに,・で区切られている。

植物の和名を覚え,その和名の由来(だれが,いつ,どの文献で発表し,和名の意味など)がわかれば,そ の植物に対して一層の理解,愛着,観察心が増すはずである,と著者は言う。この本はよくその目的を達成し ている。シダ愛好家には必携の書となるであろう。

植物の和名の由来についての記述は,牧野植物図鑑をはじめ,多くの図鑑類に見られ,深津 正の一連の著 作,「植物和名語源新考」(1976年)「植物和名の語源」(1989年)「木の名前の由来」(1993年)「植物和 名の語源探究」(2000年)や前川文夫(1995年)「植物の名前の話」など,参考となる文献もあるが,ある植 物群を全部網羅したものはこれまで見当たらなかった。筆者の知る限り,堀内 洋によってすげの会の「すげ の会会報」10号(2003年)に掲載された カヤツリグサ科の和名の出典 その1 があるくらいである。「シ ダの和名辞典」のように1冊に1つの植物群の和名に関しての情報が纏められていることは,読者にとって は有り難い。

購入希望者は,中池敏之氏(〒158―0098 東京都世田谷区上用賀2―5―2―307)に申し込むこと。実費+送

料で2,500円で譲ってもらえる。 (鳴橋直弘)

○ 荒金正憲:豊の国 大分の植物誌 A 4判,461頁.2003315日.自費出版.

この本は,大分県の植物をそれらの生育地から分析し,写真で分りやすく解説したものである。

本書は,大分の季節と植物,大分の自然と植生,大分の植生,大分の植物(生育地を選ぶ,大分の紅葉) 大分の植物(地域の自然にこだわる),大分の絶滅危惧種,幻の植物,の各章から成り立っている。

大分県の地質や地形は複雑であり,気候もまた年間降水量1,500〜1,600ミリという瀬戸内海式気候から,

2,500〜3,000ミリという多雨の山岳地帯で冬期降雪を見る所までと変化に富む。植生区分は,0―400 m

イ林,400―800 m カシ林,800―1,000 m モミ・ツガ林,1,000―1,800 m ブナ林,1,000―1,800 m ミヤ 82

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マキリシマ群落として,垂直分布的に示されている。このような変化に富んだ県ゆえに,固有種や準固有種も 多く,植物地理学や生態学上興味がそそられる。寄生植物や腐生植物の大分県での種類の多さにも感心させら れる。また,県での特産種は云うにおよばず,帰化植物や人家近くのありふれた植物も多数登場している。ユ リ,ナデシコ,クスノキ,スミレ,ツツジ,スイカズラ,ノジギクなどは,その仲間の植物を取り上げ,時に 分布図を示し,それらを比較している。タチスミレ,ホソバナコバイモ,ノヒメユリ,ハマオモト,クルマバ アカネなど,他の書物にあまり登場しない植物の果実まで見られる。

荒金正憲氏らによって1989年に出版された「新版 大分県植物誌」と今回の本は,写真と生態学的観点で 互いに補完している。多様な生育環境とそこに適応しつつ生活する植物と群落を,永年観察してきた著者だか らこそできたもので,ふんだんにある写真を眺めているだけでも楽しめ,値段からするとこの本は安い。

本の購入希望者は,荒金正憲氏(〒874―0031 大分県別府市照波園町10―2)まで申し込むと,頒価(4,900 円)+送料(450円)で手に入れることができる。 (鳴橋直弘)

○ 高橋 誼・田中正人:アポイ岳の高山植物と山草 B 6判,167頁.2003329日.アポイ岳ファン クラブ.非売品.

この本は,カンラン岩からなるアポイ岳とその麓の植物をカラー写真で紹介したものである。

本書は,前部の 植物の紹介 ,後部の 解説 および末部の 参考図書・文献 からなっている。前部に は,針葉樹林の植物,高山植物群落の植物,上部広葉葉樹林の植物,下部広葉葉樹林の植物,海食崖の植物,

アポイ岳のコケの項がある。各頁に2枚のカラー写真があり,それぞれ和名,学名,科名,数行の形態の記 載,花期,生育地が書かれている。後部の解説の部分は,地形と地質,植物調査研究の歴史,アポイ山塊の植 生と植物相,特殊な植物が多い理由,アポイ・幌満山塊の高山植物目録からなっている。これらの解説は必ず しも長くはないが,要領良く,簡潔に書かれている。

アポイ岳は,標高810 mであるが,超塩基性岩からなり,アポイアザミ,アポイアズマギク,アポイカラ マツ,アポイカンバ,アポイキンバイ,アポイクワガタ,アポイシモツケ,アポイゼキショウ,アポイタチツ ボスミレ,アポイタヌキラン,アポイツメクサ,アポイハハコ,アポイマンテマ,アポイミセバヤ,アポイヤ マブキショウマなど,アポイと付く植物も多く,それらは固有植物や準固有植物である場合が多い。これらの 貴重な植物のきれいな写真が見られて楽しい本である。

入手希望者は,アポイ岳ファンクラブ(〒617―0824 北海道様似郡様似町大通り1丁目1 様似町中央公 民館内 TEL 01463―6―3601)へ申し込むと,消費税込み本代(1,500円)+郵送料(310円)で購入できる。

(鳴橋直弘)

○ 中池敏之:シダ植物の方言小辞典 A 4判,127頁.200341日.羊子社出版部.2,000円.

本書は,日本産シダ植物の方言(県単位の色々な地域での和名)を集めたものである。

本は,まえがき,凡例,引用,参考文献,和名から方言,方言から和名,和名の索引,および学名の索引か らなっている。引用,参考文献には,シダ植物が出ておれば引用されており,文献が極めて広範囲から収集さ れていることが分かる。学名の索引から見ると,掲載は141種で,日本のシダ植物全体からすると少ないよ うにも感じるが,人の生活とほとんど関係がないと思われるシダ植物もかなりの数にのぼることを考えると,

この数は非常に多いと云わざるを得ない。スギナの項には,593もの異名が示されていて,この植物の人との 関わりの深さを物語っている。また,飛び離れた地域で同じ植物名を使っているには何か訳がありそうだなど,

と民族植物学的な興味もそそられる本である。

本の購入希望者は,中池敏之氏(〒158―0098 東京都世田谷区上用賀2―5―2―307)まで申し込むと,実費

+送料の2,000円で譲ってもらえる。 (鳴橋直弘)

○ 食虫植物研究会(編):世界の食虫植物 B 5判,159頁.2003320日.誠文堂新光社.3,800円.

この本は,世界の食虫植物をカラー写真で紹介したものである。

本書は,ギアナ高地の食虫植物(特集),閉じ込み式捕虫をする食虫植物,吸い込み式捕虫をする食虫植物,

粘り着け式捕虫をする食虫植物,ヨーロッパのPinguicula(特集),落とし穴式捕虫をする食虫植物,誘い込 み式捕虫をする食虫植物,日本の食虫植物・自生地と保護(特集)の項目からなっている。各項目の中に簡単 な説明を持った1〜数属の植物が紹介されている。カラー写真650点余は,ほとんどすべて食虫植物研究会会 員の手で撮影されたという。それぞれの写真には,学名,撮影者,撮影地が記載されている。生育地や花の拡

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大写真も多く,植物の理解を助けている。

主に西オーストラリア州南西部に分布しているピグミードロセラは亜種を含めて40種があるという。62〜

63頁にある花の多様な形態にびっくりさせられる。食虫植物と言えば国内ではタヌキモ,ムジナモ,モウセ ンゴケ,ムシトリスミレなどの仲間で,外国ではハエトリグサ,ネペンテス,サラセニアが有名である。この 本では,日本になじみのないドロソフィルム属,ロリズラ属,ビブリス属,イビセラ属,プロボスシデア属,

セファロツス属,ダーリングトニア属,ヘリアンフォラ属,ブロッキニア属,カトプシス属,パエパランツス 属,ゲンリセア属などが紹介されており,食虫植物の世界が楽しめる本である。 (鳴橋直弘)

○ 中西弘樹(編):唐比湿地の自然調査報告書 A 4判,100頁.2003331日.長崎県森山町.1,500 円(送料別)

この本は,島原半島と長崎半島のほぼ中間にある長崎県森山町の,またその南端部にある唐比(からこ)湿 地の自然調査報告書である。

本書は,唐比低地の地形と地質・古生物 海跡湖の古環境学的研究 ,唐比湿地の植物相と植生,唐比湿地 の昆虫類,唐比湿地の魚介類,唐比湿地の鳥類,唐比湿地の両生・爬虫・哺乳類,唐比湿地における湿地植生 の回復実験,の各章から成り立っている。

この湿地は永年水田やハス畑として利用されてきたが,近年水田の耕作放棄により,植生遷移が進み,ヨシ やセイタカアワダチソウが繁茂するようになったという。ここのスイランは長崎県で唯一の産地であり,ミズ ワラビ,テツホシダ,イトモ,イヌクログワイ,ヒメコウガイゼキショウ,ウスゲチョウジタデ,シソクサ,

スズメハコベなどは長崎県での貴重植物だという。

湿地植生の回復のために,タイプの異なった3つの群落を選び,その中に5 m×5 mの刈り取り区をつくり,

手をいれない対照区と比べている。その結果,刈り取りと耕作によってかなりの程度湿地植生の復元が可能で あるという。本の末尾に湿地の利用と保全の提言をおこなっている。湿地の保全を考えている読者には参考と なる文献である。

本の購入希望者は,長崎県森山町役場企画課(〒854―0200 長崎県北高来郡森山町大字森山本村名1300)

まで申し込むと,頒価(1,500円)+送料で手に入れることができる。 (鳴橋直弘)

○「種生物学会」編(村岡裕由・可知直毅 責任編集):光と水と植物のかたち 植物生理生態学入門 A 5 判,319頁.2003510日.文一総合出版.3,800円.

種生物学会和文誌「種生物研究」が単行本化してから4冊目にあたる本書は, 光合成をささえる「かたち」 , 植物の生活をささえる「かたち」, 植物の生理生態学特性の測定法 の三部から構成されている。細胞レベ ルから組織,器官,個体,群落,さらには種の分布に至るまで,様々なスケールにおける植物生理生態学の研 究成果を紹介しながら各種測定法も具体的に解説した植物生理生態学の良い入門書である。植物が生きていく 上での様々な工夫を,植物が備えている構造と機能が織りなす姿としての「かたち」から捉え,それを生理生 態学の視点から解析している。「光」や「水」といった資源の獲得・利用から植物の「かたち」を論じている ため,本書では葉・茎・根といった栄養成長器官に話が限定されているが,分担執筆者の努力によってなるべ く分かりやすい紹介や解説が試みられている。

植物の生理生態学研究の紹介だけでなく,その測定法についての解説もあり,実際にこれから調査を始めよ うとする初心者には嬉しい。例えば,近年盛んに行われるようになった野外での光合成速度(CO2ガス交換 速度)の測定方法と注意点,クロロフィル蛍光の原理と測定結果の解釈,水利用効率の指標としての炭素安定 同位体等である。これらの測定方法は,様々なレベルで生じている地球環境問題のメカニズムを解明する上で も今日では必要不可欠になりつつある。植物の生態学全般に興味のある学生・研究者だけでなく,環境科学に

携わる方々にも一読をお勧めします。 (和田直也)

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