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地方公務員の行動様式と人事制度に対する意識

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(1)

地方公務員の行動様式と人事制度に対する意識

一係長へのア ンケー ト調査か ら‑

山 本 清

1一は じめに

自民党 による長期単独政権か ら細川連立政権 に移行 したことで,地方分権, 行政改革の機運が再び高 まって きた。大方の意見 も趣 旨には賛成のようである が,改革を実効 あ らしめるには,受 け入れ る土俵な り基盤が地方の側 にあるこ と, とりわけ自治体の政策能力が十分備わ っていることが必要である

そのた めには, 自治体組織内部の地方公務員の人事管理 も従来の年功序列型を変更せ ざるを得ないであろう

誰 も経験 した ことがない世界第 1位の高齢化を迎え る 状況下では,福祉施策等 において経験の蓄積が必ず しも適切 な政策形成能力を 保証 しないか ら,最適任の能力を有す る者に組織の運営責任を課す ことが要請 され るか らであ る。 また,既述 ( 山本

(1993)参照) したよ うに自治体職員

の年齢構成か ら年功序列の人事管理を物理的に実施不能 にな って きていやた め,何 らかの合理的な 「 選抜 ・差別化」制度の導入が不可避 になっている。 し たが って,好む と好 まざるに関わ らず伝統的な人事管理か ら能力 ・業績を重視

した方式 に移行 しなければな らないのである。確かに,公的分野,特 に公務員 の仕事 は民間企業の仕事 と異なる点 も多 い.中で も業績測定の困難性,チーム ワーク労働の特性 は人事管理 に関す る差異の代表である。 しか しなが ら, .勤務 態度及び能力がい くら優れていて も成果 ・実績が低い状態は公的部門 といえど

も許 されない。態度 ・能力の測定 ・評価 において も判断の懇意性 は介在す る し,業績 も完全を 目指 さないのであれば英国 ・米国の例のよ うに評価す ること

15

(2)

は可能である。行政学者の一部に評価尺度 にされた業績指標に関心 ・努力が集 中す る危険性か ら 「 客観的 ・中立的」な年功プラス試験区分による人事管理を 肯定する意見があるが,いずれの制度 も利点 と欠点を併せ持っ もつ ことを勘案 すると,現行 システム維持が困難で有力な代替案 として能力 ・実績による人事 管理が諸外国で展開されている以上,その導入によりどのようなイ ンパ ク トが 生 じるかを検討することが重要 と思われる

公務に 「 必須」なチームワークを維持す るためにはチーム構成員間に差別を もた らすのは協調性を破壊するか ら好ま しくないという見解 自体 は正 しいが, 現実の仕事の形態がすべてチームワークで行われている訳ではない。我が国官 僚制の特質 は村松

(1983)

,有馬

(1993)が説 くよ うに 「

課や係の独立性が強 く ・・職員相互の独立性 も高い」な らばチームワークの必要性 は低 く,情報の 経済学の観点 (

Itoh (1992)

,Ramakr

ishnanandThakor (1991)参 照)

か らすると,個人間の業績比較による相対業績評価 による人事管理がむ しろ望 ま しいことになるのである

また,相互依存性があって も

Lazear(1989)の

いう妨害行動が起 こらなければ,給与の公平化を維持 し無 くとも組織効率を向 上 させることが可能 となる。 ところが,既往の調査 ・研究では公務員の組織風 土,動機付けに関す るものが多 く,人事管理に焦点をあてたものが少ない し, 制度を変更 した場合の行動様式 に与え る影響を分析 した ものは, ほとん どな い。また,情報の経済学では労働者を リスク回避的 と仮定 しているが,組織学 者等が指摘す るように組織内には色々なタイプの労働者が存在す るか ら,一律 の リスク選好を前提に した議論 は規範的す ぎるが, リスク選好 に関す る実証 データもない。そこで,地方公務員の人事管理に対す る意識 と行動変化を把握 するため調査を実施することに した訳である。

以上のよ うな趣 旨か ら,調査項 目は地方公務員の勤労意識 と人事管理 との関

係を把握す るため,現在の仕事に対す る認識,働 き方 ・生 き方,人事管理制度

に対す る意識 に大別 して設定 した。また,今回は比較するべき民間企業に対す

る調査を行わなか ったため,既に実施 された民間企業に関する調査 と比較可能

性を維持す るべ く基本的な調査項 目は労働省

(1986)の 「日本的雇用慣行 と

(3)

地方公務員 の行動様式 と人事制度 に対す る意識 17

勤労意識 に関す る調査」( 以下 「 労働省調査」 とい う)及 び総理府

(1992)

「 勤労意識」に関す る世論調査 ( 以下 「 総理府調査」 とい う)に準拠 した。両 者を比較基準 に選定 したのは,母集団の大 きさや調査方法が信頼で きることに よる。 しか しなが ら,調査 目的の違いか ら上記 2調査には リスク選好 に関す る 項 目はな く,組織内における職務分担 に関す る項 目がない。そ して, リスク選 好 に関 しては リスクの程度 に応 じて個人の態度が一定不変でな く変化す るとの 指摘が心理学者及 び実験経済学者 ( 例えば

Thaler(1987)

参照)か らなされ ているため, リスクが高い場合 と低い場合の選択問題を設定す るとともに挑戦 加算の効果を測定す るため,高 リスク時に失敗 した場合に低 リスク時の失敗 と 同 じ程度の報酬を保証す る条件での意思決定問題を設定 した。また,組織内の 職務分担の実態を把握す るため,組織内部の集団聞及び集団内部の個人間の課 業の分担が どのようになっているかの設問を追加 した。具体的な調査項 目は別 添の調査票の通 りである

本稿の構成 は以下のようになっている。まず,次節では調査対象の概要及び 調査方法が述べ られ,第

3

節以降は調査結果の分析であ り,第

3

節では仕事の 満足度を中心 に して公務員を職業に選択 した理 由と現実の状況が整理 され る。

次の第

4

節では公務員の働 き方 ・生 き方,特 に同期 に対す る賃金 ・昇進格差 に 関す る意識 と行動が分析 され,第

5

節では人事管理制度 に関す る認識,特 に年 功序列 と業績 ・能力主義 とに関す る意識が分析 され る。最後の第

6

節では,分 析か ら得 られた知見 と今後の課題が述べ られ る。

2.

調査対象者の概要

(1)

調査方法

地方公務員 といって も部長級か ら一般職員 まで様 々であるため,行政組織の 実質的権限を有 しているとされる係長を対象 に選定 した。 これは,係が組織の 最小単位であることか ら集団内部の分担及び他集団 との相互関係を把握す るこ

とが可能 とい うメ リッ トもあるか らである。我が国地方公務員の全貌を把握す

るとい う点では全国の 自治体係長を対象にすべ きであるが,調査能力の制約等

(4)

か らある県 ( 以下

「A

県」 とい う)の係長に限定 した。具体的には本庁部局の 係長1

00

名及び地方部局係長1

00

名,計200 名を職員名簿か ら無作為に抽 出 し, 自宅住所 に調査票を郵送す る方法をとった。 自宅に郵送 したのは他の職員に対 す る配慮等か ら実態を歪めて答え られる可能性を少な くするためであ り,回収 率 は

80%の160

通 とこの種調査 としては異例の高い数値を得 られた。なお,回 答期限を経過 した時点での催促等 は実施 していな い。

(2)

対象者の属性

調査対象者の属性は表

1‑ 6

に示 した通 りであり,性別では男性が93% と圧 倒的な比率を占めていて,比較的男女差別がないとされ る公務員の世界で も女 性が役付 きになるのが困難なことを表 している。年齢分布は

40‑44

才及び45‑

49

才が約

7

割を占めてお り団塊の世代が係長級 に昇進 してきたことを示 してい る。また,学歴についてみると,高卒が4

4%,大卒 ・大学院修了が49%,短大

・専門学校卒が

7%

となってお り全国平均 ( 平成

2

年度末で都道府県職員の大 卒者比率 ( 一般行政職) は

58.7%)に比べ ると高卒者の割合が多 いのが特色

である。 これはA県の大学進学率が低いことを反映 していると考え られ る。一 方,採用試験区分別にみると上級職が23

.8%,中級職及び初級職が同率の33.7

%,その他8

.8%

とな ってお り,上級職比率が大卒 ・大学院修了者比率の半分

以下 となっているのは国家公務員 と同様に中級職のかな りの割合が大卒者によ

り占め られている状況を表 している。次 に年収については,600‑800 万の層

が約

6

割強であ り,平均年収 は7

00

万前後 と推計 され る。公務員の組織風土,

仕事の進め方等を規定す ると推定 される仕事の種類についてみると,総務,坐

活環境及び農林水産で約

3/ 4

を占めてお り, これを官職別に示す と事務職が

6

に対 して技術及び医療職が約

4

割 となっている

特に,事務職 と技術職

は企業,官庁 とも異なった人事管理がなされているが,従来の調査ではこの区

分がなされていないことが多いため,以下の結果の集約では両者で意識,行動

様式がどのように違 っているかを も検討す ることにする

(5)

地方公務員の行動様式 と人事制度 に対す る意識

1

30‑34 2 ( 1.3%) 35‑39 32 (20.0) 40‑44 165 (40.6) 45‑°49 44 (27.5)

‑50‑54 15 ( 9.4) 55‑ 2 ( 1.3)

3 採 用試験

38 (23.8%) 級 ー 54 (33.7) 54 (33.7)

‑14 ( 8.8) 160(100.0)

5 仕事の種類

2

19

高卒 71 (41.4%)

短大 .専 門学校卒 ll ( 6.9) 大学 .大学 院卒 78 (48.7)

4

( 万 円)

‑400 2 ( 1.3%) 400‑600 38 (23.7) 600‑700 53 (33.1) 700‑800 51.(31.9) 800‑ 16 (10.0) 160(100.0)

6 総務 .企画 .経理 .人事 38 (23.7%)

生活福祉 .保健 .環境 40 (25.0) 農政 .林務 .水産 41 (25.6) 土木 .住宅都市 21 (13.1) 商工 .労働 .観光 14 ( 8.8)

その他 6 ( 3.8)

事 務 職 94 (58..7%) 技 術 職 56 (35.0) 医 療 職 10 ( 6.3) 160(100.0)

(6)

3

.仕事の満足度

( 1) 職業選択の動機付け

地方公務員の現実の行動特性 としては,地方 自治研究資料セ ンター

(1977)

及 び寄木 ・下僚 ( 1 98 1 ) による調査が あ り, これ らによると就業動機が消極 的で安定重視が代表的特性 とされている。 しか しなが ら,近年の公務員志望者 はかな り明確 な意識を持 っていると考え られてお り,現実 にも表 7に示すよう に確かに安定指向が動機の トップで,次に地元指向が続 いでいるが,地元指向 とほぼ同率で能力 ・性格の適合が挙 げ られてお り,仕事の社会的意義 ・公共性 も同 じ程度の比重を有 している。 これを総理府調査 と比較す ると,民間企業で は第‑位が能力 ・性格の適合であ り,安定指向は第

4

位,仕事の社会的意義 は 第

6

位になっているか ら,安定指向 と同時に仕事の社会的 ・公共的意義に職業 の価値を兄いだ していると考え られ る。また,給与等の勤務条件がよいとい う 項 目が民間では11

.6%であるのに対 し公務員で はわずか3.4%

とな っていて, 経済的誘因への関心が相対的に低 いことを示 していると思われる

蓑 7 職業選択の動機

項 目 公務員 ( 今回調査) 民間企業 ( 総理府調査) 比 率 順 位 比 率 . 順 位

安定性

29.3% 1 9.6 4

: p地元勤務可能

17.5 2 12.0 2

能力 .性格 の適合

17.2‑ 3 15.9 31

‑社会的意義

16.9 4 5.5

勤務条件が よい

3.4

l

l.6

勤務 時間が短 い

2.

0

6.3

他 に就職 口な し

8.3 3.8

その他

5.4 35.3

荏 :総理府調査の項目は今回の調査項目と対応づけするため一部修正 してある

(7)

地方 公務員の行動様式 と人事制度 に対す る意識

21

動機 を事務職 と技術 ・医療職 に区分 して比較 したのが表

8

であ り,両者 とも 安定指向が トップであるが事務職の方が より安定指向であること及 び仕事の社 会的意義 ・公共性を重視す るものが技術 ・医療職で事務職 よ り約

3

割程度多 い

のが特徴である。 これ は技術 ・医療職が土木 ・建築や社会福祉等の特定分野の 仕事 に従事す ることを期待 して公務員 にな っているのに対 し,事務職の方 は組 織風土 によ り職場の選択を していることを想定 させ る。

8

官職 による職業選択動機 の違 い 項 目 技術 .医療職 事 務 職

安定性

25.3% 32..0%

能力 .性格の適合

20.4 1.5.0

, 社会 的意義

19.7 15.0

地元勤務可能

・16.9 18.

0

その他

17.7 20.0

(2)

仕事の満足度

公務員の仕事 内容 は職業選択動機 に現れたよ うに安定性が特色であるか ら, 仕事 に対す る満足度 は可 もな く不可 もな くとい った状況でないか と推察 され る が,「 満足」 と 「まあ満足」を併せた満足派 は表

9

に示す よ うに約

6

割であ り, 総理府調査 の男子40 才台の満足派 の82.5% と比較す ると満足度 は決 して高 い

とは言 えない。 この結果 は同 じ地方公務員 ( 壮年層)を対象 に した長崎県職員 組合

(1993)

の調査結果 ( 満足派 は57.6%) と類似 した もの とな ってお り, 田尾

(1990)

らによるモラールの公私比較 において企業の方が 自治体 よ り「 や り がい」があるとい う結果 と一致 している。なお,事務職 と技術 ・医療職別 に満 足度 の差 をみ ると,満足派 はそれぞれ59.6%,66.2% とな っていて大 きな差

はない状況である。

(8)

項 目 公 務 員 民 蘭

(40‑4

r

9

才男子) 満足

15( 9.4%) 2L8.p1.'%

. .

まあ満足

∴84(52.8). 5'4.4.

やや不満

44(27.7) I̲16.9

不満

7=(.4.4) 0.6

どち らともいえない

9( 5.6)

159(lop.P) 100.0

荏 :回答者の うち1人 は本項 目につ き無記入であったため合計 は159となる

(3)

不満の理 由

次の仕事の不満の理由を尋ねたところ,表

10

に示すよ うに仕事 にや りがいが ない, 能力 ・実績が評価 されないとい う項 目がそれぞれ第

1

位, 第

2

位であ り,

これを民間企業 と比較す ると勤務時間が長 い,給与が少ないが圧倒的 に多 く な っている

これは,公務員の仕事の法令 ・通達等による拘束が強いため創造

10

不満の理 由

項 目 公 務 員 民間企業

・仕事にや りがいがない

2230..2%9

l

9l...27%

̲ ( 能力. .性格 が合わない)

・ ニ 能力 .実績が評価 されな‑ い

・ ‑ 給与が少な い

15.1 19.5

・勤務 時間が長い

1195..3∴1 325..92 (

仕事かつ ら亘 忙 しい思 うよ うに仕

事が はか ど らない ) ‑ . ‑ .

・人間関係が うま く. ‑ いかない

・昇進等が期待で きない ‑

7.0

,

3.6

・転勤カさ 多 い

9.3 1.2

・嘘場療境が惑い

5.8

・その他

109 .

100.0 100.0

注 :民 間企 業 は総 理府調 査 にお いて年齢 階層別 デ ータが記載 され て い な いため 全年 齢 階層 に及 ぶ値 で あ る

(9)

地方公務員の行動様式 と人事制度 に対す る意識 23

的な意味での裁量性発揮が制約 されていること及び市場機構が働かないことか

らくる成果の測定 ・評価の困難性を反映 していると考え られる。同時に金銭的 誘因は民間企業よ り低い ものの仕事の満足度 に無視で きない要素であることを 示 していると考え られる。なお, 官職別の分析 はデータ制約か ら行えなか った。

3

.働 き方 ・生 き方

(1)

働 き方及び生 き方

これは公務員のライフスタイルを把握 し,仕事のや り方の中身が民間企業 と 異なるのか否か,また,どの程度異なっているかを把握す るため実施 した もの である。結果 は表11に示す とお りであ り,同期入庁者に対す る競争心 は安定的 な職業指向にかかわ らず7

3%

と高い ことがわか る。また,民間企業 と労働省調 査 と比較可能な項 目について対照す ると同期同士の競争心 は官民 ともほぼ同 じ であるのに対 し, 自宅 に仕事を持ち帰 る率及び仕事人間のタイプは民間甲方が 多 く,反対に実力発揮か昇進かの選択では民間は仕事の中身重視が多 いのに公 務員では昇進重視が多 く,公務員の仕事 に対する誘因 として昇進が大 きな比重 を占めていることを示 している。一方,官職別にみると自宅への仕事持 ち帰 り

11

働 き方及び生 き方 (「は い」 の割合)

、項

公準員 事務職 技術 .医療職

. :‑ 民 1問 ・ ‑ ̲民∴. 間

25.2 ̲20.4 32.3 ・36.2 41.̲,6

・趣味や社会活動を楽 しむ 50.6 48.4 53.9 18.8 ̲̲47.4

(10)

及 び仕事人間のタイプの

2

項 目を除き大 きな差異 は見 られないが,仕事持 ち帰 り派 は事務職が技術 ・医療職の

2

倍弱であるのに対 し,仕事人間派 は反対 に技 術 ・医療職の方が

5

割強多 い状況 となっている。 これは,事務職の仕事が内業 中心であるのに対 し,技術 ・医療職の仕事 は外業が多いこと及 び特殊な機器等 を利用す るという性格の差 によると考え られ る。

(2)

昇進指向

上記 ライフスタイルについては自分 白身でな く同僚を観察 して答えて もらう 形式であったが, 自分 自身の昇進願望及 び理由を尋ねたところ,昇進 したいと す る者 は

68.1%

であ り,労働省調査 ( 管理職 につ きたい率 は男子

40‑44

才で

62.0%

,

45‑49

才で

56.5%)

と比較す ると民間 と大 きな差 はな く,昇進 した くない理由について も表

12

に示 したように似た傾向である。ただ し,公務員で は人を使 うのが嫌 とす るものが民間より多 いのが特徴であり管理者教育の問題 点を提示 しているのか もしれない。また,昇進を望まない者に対 して,それで はどの程度の給与増があれば昇進 してよいか,すなわち昇進の代償価値を聞い た ところ, 3割以上 とした者が 6割を超えている。 したが って, こうした昇進 指向が低い層 ( 全体の

3

割を占める)に対 しては,現行年功序列制及び昇進に よる給与増が低い業績給制度では昇進 は必ず しもモチベイションの改善 につな が らず,かえ って組織効率を低下 させ る可能性があることを示唆 している。な 秦, 官職 による昇進指向の差 は認め られなか った。これは, 地方公務員の場合, 国家公務員のようにほとん ど全ての最高ポス トを事務系が 占めるの と異な り, 技術 ・医療職 も特定部門の長 となる慣行が確立 しているためによると思われる

12

昇進 した くない理 由

仕事 に魅力が ない

38.8% 35.6 27.2

収入が増えず責任が重 くな る

20.4 19.1 26.4

人を使 うのか嫌

16.3 4.5 7.2

(11)

地方公務員の行動様式 と人事制度 に対す る意識

25

( 人事院

(1993)調査で は Ⅰ種試験合格者で も事務系 と技術系で は将来の昇

進希望 に差があ り,例えば本省庁局長以上を挙 げた率 は事務系58.3%に対 し 技術系36

.4%である)

0

(3)

同期 との格差 の仕事への影響

業績給 ・能力給 は同 じ勤務年数,学歴で も個 々人の業績 ・能力に応 じて給与

・賃金を支給す るものであ り,それが昇進 も含む人事管理制度 として機能す る な らば基本的には同期採用者間に 「 差別」を もた らす ことになる

この差別は 優位な立場を得た者 にとってはモチベイ ションを高めることになろうが,問題

は業績給 に対す る批判者の多 くが指摘す る劣位のランク付 けを得た者に与える 負のモチベイション効果である。産 業心理学者 は早 くか らこの負の効果 に関心、

を有 していたが,近年

Lazear(1989)

らによって経済学者 も個人間取引をモ デルに組み込む ことによ り合理主義 ・功利主義的枠組みを維持 しつつ組織内部 の相互関係 を考慮 した分析を行 って一定条件下で公平な給与の差別的給与 に対 す る優位性を示 している。Lazear は相対業績評価の場合,相互 に相手の業績 を妨害す る事 も協力す ることも可能 とした上で賃金格差が大 き くなると互 いに 相手を妨害す ることが労働者 にとって最適行動 となるが, この場合経営者の持 ち分 はかえ って減少す ることを証明 している。 しか しなが ら,妨害行動をす る か否か及び妨害す るときの程度 は組織構成員の性格 によって大 きく左右 される ため,構成員の給与格差の効用に与える鋭敏性及び妨害行動指向性が無視でき る程度であれば,「 差別」化 による負の効果 はそれ ほど考慮 しな くてよいこと になる。そ こで,今回の調査では同期に対 して賃金及び昇進で差をっけ られた 場合の意識 と行動様式を把握す ることに した。

まず, 1割程度の給与格差をっ け られた場合 ( 但 し,昇進差別 はない)の意 識 としては表

13,14

に示す ように 「 非常に気になる」及び 「やや気 になる」を 併せて75

.4%であ り,労働省調査 による民間企業 とほぼ同 じ傾 向であ るO

,こ こで, 1割 としたのは,諸外国での業績給の実例で も最大格差が 1割程度が多 いことによる。そ して,気 になる者 に限定 してその場合の行動様式を尋ねたと

ころ,妨害行動を とると答えた者 はな く 「わか らない」 と回答 した者が7

.6%

(12)

いた。ただ し,こうした設 問で正式 に妨害行動 を とると答え難 い ことを考慮 し,

「わか らない」及 び 「 仕事のや る気をな くす」 タイプを潜在的妨害者 とみなす と約

2

割 について は負の効果を与え る可能性があると考え られ る。 しか し,一 方で,勤勉性を示 しているのか 「 がんば って業績 を上 げ る」 とす るタイプ も約

3

割 いるか ら,妨害行動が先鋭的でないか ぎりこの程度 の給与格差であれば負 の効果が卓越す るとは考え られず,む しろネ ッ トとして はプラスの効果を示す 可能性がある。 この傾向 は,表1

4,15

に示す よ うに昇進格差の場合 も同 じであ

る。なお,官職別の差異 は認め られなか った。

13

給与格差 に対す る意識

項 目 公務員 民 間

(40‑44)

同左

(45‑49)

非常 に気 にな る

23 (14.4%) 21.7 25.5

やや気 にな る ‑

97 (61.0) 50.4 44.7

あま り気 にな らな い

33 (20.7) 22.8 26.8

全 く気 にな らない

4 ( 2.5) 3.4 2.2

わか らない

2 ( 1.3) 1.5 1.1

14

給与格差 ・昇進格差が気 になる者 の対応行動

給与格差 の場合 昇進格差 の場合

・仕事 のや る気 をな くす

10.2% 6.2%

・致 し方 ない とあ き らめ る ( 従来通 りに仕事 をす る) .

51.7 58.0

・頑張 って業績 を上 げ る

30.5 32.1

・上 司に反抗 した り,同僚 の仕事 を妨 げ る 0 0

・わか らない

7.6 3.6

(13)

地方公務員 の行動様式 と人事制度 に対す る意識

表 1 5 昇進格差 に対す る意識

項 目 比 率 ( %)

・非常 に気 にな る

20(12.6)

・やや気 になる

94(59.1)

・あま り気 にな らない

38(23.9)

・全 く気 にな らない

5( 3.1)

・わか らない

2( 1.3).

27

( 4) 業務の独立性

業績給の本質的要素である個人別業績 に基づ く 「 差別化」 は,業務間に相互 依存 ・作用が大 きいほど前記妨害行動等の負の影響が大 き くなる。上記調査結 果か らは公務員の場合,その属性か らか妨害行動を採 る者の割合 は比較的少数 派であるが,業務問に重要 な相互依存がある場合 には, これ ら少数派の行動が 組織全体の業績 に大 きな影響 を与え ることが起 こり得 る。そ こで,公務員の組 織の最小単位である係 の業務 を遂行す る上で,同 じ組織内の他の係等の協力 ・ 協調を どの程度必要 としているかを質問 し,併せて係内部の業務分担の状況を 尋ねた。その結果 は,表

16,17

に示す とお りであ り,係単位 の業務 の独立性 は 我が国行政組織の特性 に関す る通説 と異な り,「 非常 に必要」及 び 「 やや必要」

を合わせ ると 9割が協力 ・協調の必要性を指摘 してお り,かな り相互依存の業

務体制 とな っていることが窺 われ る。また,係 内部の業務分担 については,完

全 に個 々人 に仕事を割 り振 っているタイプ と個別 に行 う職務の方が多 いタイプ

を合わせ ると約

3/ 4

とな り, 日本的経営の特質 とされ るチームワーク労働 と

い うよ りむ しろ各 自に職務を割当て,係長が全体を管理す る欧米型組織 に近い

傾向を示 している。 この結果 は,非常 に興味あるものであ り,係長単位の業績

給制度では業務の相互依存度 を勘案す ること,すなわち関連す る業務を一つの

群 としたチーム業績給 を採用す るか,あるいは通説が成立す るよ うに関連業務

を一つの組織 に集約 して組織の独立性 を維持す ることが望 ま しい ことを推察 さ

(14)

せ る。そ して,他 との調整活動を もっぱ ら係長が行 っているとす ると,係員同 士 は職務の独立性 はかな り高 いと考え られ るか ら業績給 に適合 しているとみな

してよいことになる

なお,官職別にみ ると業務の独立性 については事務職,技術 ・医療職 とも差 はないが,係 内部の分担 につ いては,分担派が技術 ・医療職 き り事務職 に多 か った ( 事務職

83.0%

に対 して技術 ・医療職

67.7%)

( 他 の係等 との協調) 表

16

係 の業務の独立性

非常 に重要

67(41.9%)

やや重要

77(48.1)

あま り重要でない

15( 9.4)

全 く必要でない

1

(

0.

6 ) わか らない 0(0

)

17

係 内部の業務分担

全員で行 う

3( 1.9%)

イ 甲人別

2(15.7)

全員で行 う割合が多 い

32(20.1)

個人別 に行 う割合が多 い

97(61.0)

その他 2 (

1

. 3 )

5.

人事制度 に対する意識

(1)

年功序列制の評価

公務員の人事管理制度 は,給与及 び昇進が年功の他,採用試験 の違 い等 に よって決定 されているのが現状であるか ら,厳密 には年功序列制 と言えない が,試験及 び学歴が同 じであれば民間企業以上 に勤務経験 と年齢 によ り規定 さ れ,同期採用者間の差異 は極 めて小 さいのが特質である

その意味では我が国 大企業 よりも年功制 といえる

この年功制 についての評価 については表

18

に示 すよ うに民間企業 ( 総理府調査)に比較 して積極的評価 は少 ない結果 とな った。

実績よ りも試験及び学歴で昇進等が決定 され ることの不満が現れているのか も

しれない。いずれにせよ,仕事 に対す る満足度の低 さと併せて考え ると人事制

度の改革の必要性 は確かなよ うである。官職別ではよい制度 とす る者の比率が

事務職

17.0%

,技術 ・医療職

12.3%

とな ってお り,事務職で評価す る者がや

(15)

地方公務員 の行動様式 と人事制度 に対 す る意識

や多いが全体 としては大 きな差 は兄いだせなし 土。

18

年功制の評価

29

よい制度 .‑

24(̲15.1%) 54.2 %

■ どち らともいえない

116(73.0) 10.6

その他

0.3

注 :総理府調査 は労働者 の観点及 び雇用者 の観点 か ら質 問 して い るため、今 回の調査 と比較 す るため労働者 の観点及 び労働者 ・雇用者両方 の観点 を合 計 した数値 を民 間の値 と した

(2)

業績給 ・能力給の評価

次に業績給 ・能力給への移行についての見解及び理 由についてみると,表

19

に示す とお り,移行 を好 ま しい とす る者 の比率 は約

4

割であ り民間の

6

割強 ( 総理府調査)より低 く,年功制の評価が低い ものの年功制 にかわ る代替制度 として抵抗感があることを示 している

肯定派の理 由としては成果 ・努力に対 す る公正,組織の活性化及び競争 による効率改善が多 く,また,具体的に業績

・能力給の給与総額に占める割合を尋ねたところ,

1‑2

割 とした者が最 も多

か った ( 平均す ると

24%)

。一方,否定派の理 由は,情実人事 の可能性及 び評

価 され易い項 目‑の努力の偏 りを指摘す るものが多 く,同僚 との格差時の行動

様式に関す る回答を裏付けるように協調性を破壊す るとい う理 由をあげた もの

5%

にす ぎなか った ( 以上表

20

参照) 。 これは,欧米での反対 ・慎重派の論調

と同 じく主 として行政活動の測定困難性か らくるものであるが,欧米公務員組

合での公務員文化である協調性 を破壊す るとい う見解が少なか ったのは我が国

公務員の特性を示 しているのか もしれない。昇進面での適用 について同期での

昇進スタイルを年功重視の同時昇進か実力重視の 「 差別」昇進かの選択を尋ね

たところ,表

21

に示すように民間企業より低い ( 労働省調査 との対比) ものの

(16)

実力主義を肯定す る者 の比率 は68

.2%

と過半数 を超 えてお り,理念 と して は 評価 していると考え られ る。

なお,官職別 にみ ると業績給 ・能力給への移行 を支持す る比率 は技術 ・医療 職が

47.7%に対 して事務職が38.9%

とやや技術 ・医療職 の方が大 きい。 しか

しなが ら,同期昇進の基準 と して実力主義を肯定す る率 は事務職

70.2%

に対1 して技術 ・医療職65%とやや事務職の方が大 きい。 この結果をさ らに詳細 に調 べ ると実力主義 につ いて は消極的肯定派が事務職 に多い ことによるか ら,就職 動機で事務職の方が安定指 向が強か った事実 と符合 しているとみな してよい。

19

業績給 ・能力給への移行

項 目 公 務 員 民間 ( 男子40‑49 才) 好 ま しい

68(42.5%) 64.2%

好 ま しい とは思わない

24 (15.0) 15.2

どち らとも言 えない

68 (42.5) 18.6

わか らない ‑

2.0

表20 移行 を肯定/否定す る理 由

1

)肯定

2

)否定

正 当な対価 ( 公平性 )

30.4%

情実人事 の横行

46.1

組織活性化

30.4

努力の偏 向

35.9

仕事 の効率 .質 の改善

24.1

潜在能力 を重視 すべ き

10.2

能力開発 に有益

13.4

協調性が失 われ る

5.1

その他

1.8

その他

2.6

100.0

100.0

(17)

地方公務員の行動様式と人事制度に対する意識 表21 同期採用者 における望 ま しい昇進基準

31

項 目 公 務 員 民間

(40‑44)

同左

(45‑49)

・同時昇進がよい

5( 3.1%) 4.5% 4.4%

・どち らか といえば 同時昇進が よい

35(21.9) 9.8 14.8

・実力主義が よい

31(19.4) 32.8 28.8

・どち らか といえば 実力主義が よい

78(48.8) 49.4 49.6

・わか らない

ll( 6.9) 2.6 1.9

・不明

0.9 0.5

(3)

リスク選好 による類型分 け

業績給の実施 には,成果 ・業績を何 らかの方法によ り測定 ・評価す ることが 必要である。 しか しなが ら,セールスマ ン ・ウーマ ンの成果を想定すれば容易 に理解で きるように当該個人の努力以外 に景気等の環境要因の影響を受 けるか ら,業績 は不確実な ものである。 このため,測定 された業績 に応 じて給与,罪 進を決定す る場合,各個人が報奨 と努力か らなる期待効用を最大化す ることを 前提に して も, リスクに対す る各人の選好によって同 じ報奨 システムで も努力 水準及 び達成 され る期待業績 ( 及 び経営者 ・株主 に帰属す る期待余剰) は異 なった もの となる。 したが って,組織構成員の リスクに対す る態度を把握 して お くことが重要 になるが,組織 ・情報の経済学では合理性を仮定 しているため 常に リスクに対 して各個人固有の選好 に基づ き意思決定をす るとされている。

そ して,多 くは リス ク回避的 ( 具体事例で説明す ると,確実 に

100

万 円が得 ら

れ る案 とそれぞれ

0.5

の確率で

200

万 円または 0円が得 られ る案の

2

案があ る

場合 に,前者 の案を選択す る場合 を 「リス ク回避的」 ,反対 に後者の案を選択

すれば 「リス ク愛好型」 ,いずれの案 も無差別 とみなせば 「リスク中立的」 と

いう) と仮定 している。 しか しなが ら,プロスペ ク ト理論が批判す るように,‑

(18)

成果の生起確率は意思決定者の選好において線形的な重みを有 していないこと が少な くないこと及び組織には種 々のタイプの構成員が存在 しているか ら一律 の報奨制度で対応することは 「 合理的」でないと考え られる。そこで,生起確 率の差異 に応 じた選好の変化を尋ね ることによ り,期待効用理論の前提である 一貫性が維持 されるタイプと維持 されないタイプを区分 し,さらに リスクに対 す る態度を組み合わせ ることにより公務員のタイプを類型分けすることを試み た。具体的には設問

12

でそれぞれ 1

,2

,

3

を選択すれば生起確率が低い場合 に リスク回避的, リスク愛好的, リスク中立的 とし,同様に設問

13

で 1

,2

,

3

に応 じて生起確率が高い場合に リスク回避的, リスク愛好的及び リスク中立 的 と判定 した。

その結果 は,表

22

に示すように選好の一貫性の有無 とリスクに対す る態度に より

9

タイプに区分 され,一貫 して リスク回避的なタイプは全体の約

1/ 4

弱 にす ぎず,ある生起確率時において リスク回避的な ものを含めて も全体の約

2/3

になっている。また,一貫 して リスク愛好型のタイプは約

1/ 8

を占め る

そ して,上位

2

つのタイプを公務員の代表的属性 とみなせば, リスク回避 的行動を採 るのは成果が得 られる可能性が低い場合に限 られ,一定条件をみた せば安定指向の公務員で もリスク回避的でな くなる可能性を示 していると考え

られる

22

リスク選好 にみる公務員のタイプ

タ イ プ 生起確率が低い場合 生起確率が高い場合 ‑ 比 率 A ( 完全な リスク回避型) リスク二 回避 リスク回避

26.9%

冒 リスク回避 リスク愛好

21.1%

C

.( 完全な リスク中立型) リスク中立 リスク中立 ̲

15.4%

D

( 完全な リスク愛好型) リスク愛好 リスク愛好

12.8%

E

リスク愛好 リスク回避

9.0%

F リスク回避 1リスク中立

7.1%

G

リスク中立 リスク愛好

5.8%

H リスク中立 リスク回避

1.3%

(19)

地方公務員 の行動様式 と人 事制度 に対 す る意識

33

一方, これを官職別にみ ると表23に示す とお り,技術 ・医療職の方が事務職 よ りも完全な リスク回避型が多 く,また,完全な リスク愛好型が事務職の方が 多い という結果にな っている。 これは,就職の動機 と正反対の傾向を示 してい て興味深いが仕事の過程で リスクに対す る対応が変化 した と想定 され る。現実 にも自治体の革新的な施策 は技術的見地 というよ り国の政策先取 りは事務職の 提案 によるものが多 い気がす る ( 情報公開,公害規制,福祉等) し,現在話題 にな っている公共調達のあ り方 について も自治体の動 きは鈍か ったと思われる か らである。

表23 官職別の リスク選好 ( 上位 4タイプ) タイプ 技術 .医療職 事務職

A 32.8% 22.8%

B 21.9 20.9

C

12.5 17.4

(4)

挑戦加算制度の有効性

挑戦加算制度 は,減点主義 による人事考課の場合 に過度の リスク回避行動を

促す欠点をな くすため導入 され るものであ り,公的活動では特 に業績の測定 ・

把握困難性か らプラスの評価 よ りも失敗をどれだけ しないかが昇給 ・昇進 に重

要な要素であると言われて きた。実際は世間で言われているほど減点主義中心

で人事考課がなされている訳ではないが,税金等を原資にす ることか ら企業の

場合 より失敗 は許 されない ことが多 い。小 さな ミスで もマスコ ミで取 り上げ ら

れると行政不信を もた らしかねない

らであるが, 自治体を含めた政府活動が

大 きな変換点 にいる状況では,政策の先取 りを初めとす る戦略の立案 と住民参

加が必要であ り,従来の慣行 にとらわれない新 しい発想が職員に求め られてい

る。 このため,上か らでな く下か らの提案 による挑戦的な目標に対 して失敗 し

て も減点せず,む しろ挑戟せずに現状維持的な目標 に対 しては実績が満足な水

準で も若干減点 し,挑戦 目標 に成功 した場合には加点す る挑戦加算制度が公的

(20)

部門の人事管理 に も必要 とす る意見 も少 な くない。 もちろん,公的部門では会 計責任の見地か ら,失敗の もた らす結果の影響度を事前分析 して許容 される程 度か否かの事前検討が必要であ り,その場合の許容水準 も民間よ り厳 しい もの に設定 しなければな らない ことは言 うまで もない。 しか しなが ら,挑戦加算が どの程度有効かは挑戦加算の誘因の程度及 び リスク回避度 によって大 き く変動 す るし,一貫 して同 じリスク選好を示 さない限 り,その推定 は困難である。そ こで,具体事例によ りリスク回避的な者が挑戦加算制度 に対 して どのよ うに意 思決定を変化 させ るか,従前よりリスクが高い代替案を選定するようになるか を検証 してみた。すなわち,設問1

3

で リスク回避的な意思決定を した者 ( 成功 と失敗の確率が半分半分 で成果 はそれぞれ

400,800

万の

B

案 を,成功が

0.2

, 失敗が

0.8

で成果が それぞれ

1200,0

万の

C

案 よ り選好)が失敗 した場合 で も

100

万を保証 し,その他の条件 を同 じに した場合 に,その選好が変化す るかを 尋ねた。その結果 は,修正 された C案 ( 挑戦者 にイ ンセ ンティブを与え る)杏

B

案 よ り選好する,あるいは,

B

案 と無差別であるとした者が

47%

と約半分 と な り,挑戦加算によ りリスク受容度が高まるタイプが相当程度存在す ることが 明 らかになった。 もっとも,今回の設問では挑戦加算の性格を勘案 して生起確 率が低い場合 に限定 していることに留意 しておかねばな らないだろう

なお, 官職別の有効性には,ほとん ど差が認め られなか った。

6.結 .

地方公務員の係長 に関す る調査を通 じて業績 ・能力主義の人事管理‑移行す る場合にどのような問題点があるかを把捉 した訳であるが,その結果,次のよ うな ことが判明 した。すなわち,

1 )公務員の仕事に対す る満足度 は決 して高いとはいえず,能力 ・実績の評価 といった人事考課の不満が民間よりかなり高いこと

2)

職業選択動機 は仕事の安定性が トップであるが,仕事の社会的意義 ・公共 性の比重 も高い こと

3)

人事管理 として年功制の支持 は民間よ り少ない ものの,業績 ・能力中心の

(21)

地方公務員の行動様式 と人事制度 に対 す る意識

35

実力主義制の支持 は民間より低いこと, これ は,現行制度に不満があるも のの代替案 として業績主義には,情実人事や測定バイアス等か らくる不安 があると推定 されること

4)

同期 との昇進 ・賃金格差 は気 になるが,積極的な干渉 ( 妨害)行動を とる タイプはきわめて少ないこと

5

)係間の業務の独立性 は高 いとはいえず,む しろ相互依存 にあ り,一方,係 内部の業務 は係員間の独立性が高 く,官僚制モデル と日本的経営モデルが 階層間で混在 した組織形態 となっていること

6)

公務員のタイプは完全な リスク回避型 に代表 させ られないこと,また,挑 戦加算制度 はある程度有効 と推定 され ること

したが って,通説で述べ られているように公務員の仕事形態を協調性 と安定 悼 (リスク回避的)であると仮定 して,人事管理制度をデザイ ンした り分析す ることは危険であるといえ る

む しろ極論 としては,現在の課,係単位を大 き くして最近話題の リエ ンジニア リングの主張す るように,組織間協調を必要 と す るよりも業務単位 に仕事を分割 し,相互調整を不要 にす る完全 に独立 した仕 事形態に移行 した方がよいのか もしれないのである

そ うすれば,相対業績評 価による競争的な業績給制度が有効 に機能す るか らである

しか しなが ら,依然 として大 きな問題がある。それは昇進管理 と業績評価で

ある

現在の業績が上位職務への適合性 とどのよ うな関係があるかが今一つ明

確でない

らである

経済学者の多 くは現在業績 と将来の職務能力に一定のプ

ラスの関係が あるとみな しているが,

Milgrom andRoberts(1988)

のモ

デルの前提のように上位職務‑の適合性が現在の業績 と全 く関係がない ( ある

いは関係が少ない) ことも考え られ るか らである。彼 らによると,昇進候補者

が上位職務 に対す る能力証明を管理者に働 きかける影響活動が盛んにな りす ぎ

るとこの場合現在の組織業績が低下す るか ら, この影響を回避す るため給与格

差を縮小す る方が組織にとって最適 になることを導いている。それゆえ,現在

の人事管理で こうした潜在的能力が どの程度昇進決定要因になっているのか,

また,現在業績 と昇進後の業績 との関係を把握す るとい う問題が生 じて くる0

(22)

そ して,業績給を昇進管理 と切 り放 して運用す る場合で も,今回の調査で明 ら かになった業績をどのように測定す るかが最大の課題 になる。その意味で英国 での多元的な業績指標

(NHS

では質的要素の他短期 と長期 目標を区分 してい る)の開発状況に学ぶ ことの他,人事管理の実務者の参加を得て業績 ・能力給 と業績改善効果 との実証的研究が待たれるところである。

以上の他,調査方法上の課題 と しては今回の調査結果を既存統計結果 と比較 して官民の差を分析 した部分がある。 しか しなが ら,調査の方法の差 はもちろ ん, 目的が異なるため調査項 目に対応す るものがなか った リスクに対す る対応 や仕事の業務分担等の業績給検討で重要な項 目については,公務員 と同 じ係長 を対象 に した調査を改めて実施す ることが必要 と考えている。なお,現在人事 管理者 に対 して も調査を実施 して,人事管理の実態 と方向を とりまとめている ので,雇用者側 と被雇用者側の意識の差異等か ら更 に実態を的確 に把握 し,莱 態を踏 まえた人事管理改革の理論的検討を深めることに したい

最後 に今回の調査にご協力下さった

A

県の係長の皆 さんに謝意を表明させて 戴 くとともに,本稿 は平成

5

年度文部省科学研究費補助金 ( 一般研究 (

C))

及び 日本経営協会の経営科学研究奨励金を受 けて行 った研究成果の一部である

ことを申 し添えるものである

1.有馬晋作

(1993)

「自治体組織の日本的特色

『自治体で生きる‑魅力と可能性‑』 , 年報自治休学第

6号.

2. Itoh,Hideshi(1992), "Cooperation in HierarchicalOrganizations:

An incentivePerspective"

,

Journalof

L

a

w

,Economics,and Organiza‑

tion,Vol.8,pp.321‑345.

3.人事院 (1993)「新規採用職員 に対す るア ンケ ー ト調査結果」

4.Lazear,E.P.(1989)

,

"PayEqualityandIndustrialPolitics",Journal ofPoliticalEconoTny,Vol.97,No.3,pp.561‑580.

5.Milgrom,P.andRoberts,J.(1988)

,

"AnEconomicApproachtoIn‑

fluence Activitiesin Organizations",ATnerican Journalof Sociology

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Vol.94,Sup.,pp.154‑179.

(23)

地方公務員 の行動様 式 と人事制度 に対す る意識

37 6.

村松岐夫

(1983)

「 行政組織 と環境 一課長 ・係長のサ ーベイ分析か ら

『 法学論叢』

( 京都大学法学部) ,第

113

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3

,pp.1‑25. 7.

長崎県職員組合

(1993)

「 壮年層の意識 と暮 ら し」

8.Ramakrishnan

,

Ram T.S.and Thakor

,

A.V.(199

1),

"Cooperation versusCompetitioninAgency'

'

,Journalof

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,EcoTWmics,andOrga‑

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ll .田尾雅夫

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15.

寄本勝美 ・下僚美智彦

(198

1

)

『自治体職員の意識構造』,学陽書房.

(24)

地方公務員の職場環境 と勤労意識 に関す る調査

問 1.地方公務員になろうとした主な理由は何ですか。次の中か ら

3

つ以内逮 択 し,該当す るものに○を して下 さい。

1.安定 した職業 ( 職場)である.

2.

社会的に意義があ り,世の中のためになる仕事である.

3.

勤務時間が短い ( 残業が少ない,休暇が多 くとれ る) .

4.

自分の能力や性格 に合 っている.

5

.地元 ( 出身池)に勤務できる.

6.

給与などの勤務条件がよい.

7

.他に就職先がなか った.

8

.その他.

2.

あなたは,現在の仕事に満足 していますか。それ とも不満ですか。最 も あてはまると思 うものに二三̲ ,○を して下 さい。

1.満足 している.

2.

まあ満足 している.

3

.やや不満である.

4.

大いに不満である.

5.

どち らともいえない.

( 問

3

は,閏 2 で

3.

または

4.

と回答 した方のみお答え下 さい)

間 3.

不満に思われているのは,どのような理由か らで しょうか。あてはまる もの全三屋,○を して下 さい。

1.給料 ・収入が少ない.

2.

勤務時間が長い,仕事がきっい.

3

.仕事にや りがいがない,仕事が単調である,雑用が多い.

参照

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