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黒鉛への窒素およびアルゴン吸着(第1報)

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(1)

黒鉛への窒素およびアルゴン吸着(第1報)

    一水素およびオゾン処理の効果一

三浦 和久*

Adsorption of Nitrogen and Argon on Graphite, 1 Effect of Hydrogen and Ozone Treatments,

Kazuhisa MIURA$

  The effect of the H2一一 and 03−treatments of the natural graphite on the adsorbability of N2 and Ar was investigated by measuring the adsorption isotherm of both gases, The H2−treatment redueed the surface heterogeneity and promoted crystallization of the graphite. The succeeding 03−treament of the hydrogenat−

ed graphite again enhanced the surface heterogeneity to some extent. As a result, the phenomena stated below was observed: the amounts of N2 and Ar adsorbed on the hydrogenated or ozonized graphite in the mediurn pressure range are reduced to about a half of those on the natural graphite; the BET plots of N2 0n the treated graphites give two linear portions; every adsorption isotherm shows a remarkable step at a re1ative pressilre of O.4; a prominent hysteresis appears in every adsorption isetherm. Here, the causes of thes ?@phenomena were discussed. And besides, the cross一・sectional area of an adsorbed Ar moiecule available for calculation of the surface area was mentioned briefly. 

1 緒  言

 固気界面吸着現象の研究において、液体窒素温度での窒 素吸着は古くから取り扱われて来ており、著者の様な固気 界面の実験に携わる者には、最も馴染みのあるものである。

この吸着現象は多くの粉体のBET比表面積の測定やその 細孔分布の評価等に広く利用されている1一一5)。 一方、ア ルゴン吸着6・7》は窒素吸着の場合ほど一般的ではないが、

やはり、BET比表面積の測定に利用されている。しかし、

表面積鼻出の際の重要な定数であるアルゴンの分子断面積 の評価に関しては未だに議論がわかれている8㌔

本四では、未処理の天然黒鉛およびその黒鉛を高温水素 処理して得た試料と、ざらに水素処理試料を室温において オゾン処理して得た試料に対し、窒素とアルゴンの吸着・

脱離等温線を測定した。 得られた等温線に基づいて、両 気体の吸着に及ぼす上記の処理の影響を調べ、さらにアル ゴンの分子断面積についての考察を行った。

2 実  験

2.1 試  料 ee一般科目

 平成6年10月31日受理 用いた黒鉛粉末は日本黒鉛商事株式会社(滋賀県大津市

一9一

(2)

唐橋町16−3)から販売されている黒鉛ACPである。これ は元々スリランカの原産である天然黒鉛を同社において選 別、粉砕、分級したものである。純度および紋度は前報9》

で用いた黒鉛試料と同じであるが、バヅチが異なる。濃硫 酸を用いた溶媒抽出でチオフェンを取り除いたC6H6によ ってこの黒鉛を6日間抽出した後、室温にて充分に真空排 気して出発試料G25とした。

 さらに、G25を乾燥窒素気流中2800℃で1時間処理した 後、1000℃で1気圧の水素中に1時間保ってから、室温ま で自然放冷した。これを室温において充分に真空排気して 水素処理黒鉛HYG25とした10 12}。

 オゾン処理は、HYG25の充填層に約3%のオゾンを含 む酸素ガスを室温で約48時間通し続けた。48時間後には充 填層出口のオゾン濃度がほぼ一定になった。こうして得た 黒鉛を室温で充分に真空引きしてオゾン処理黒鉛OZG25

としたt3,14)。

 窒素ガスは液体窒素からの蒸発によってほほ1気圧のも のを得た。高純度アルゴンガスは播磨酸素KKのガスボン ベから得た。

時維持する事に要する労力も不必要になり、大いに助かっ た。この装置も本校の重点設備事業費(平成3年度)によ るものである。

3.緒  果

 Fig.1はG25の窒素吸着等温線である。縦軸は黒鉛1[g]

当たりの気体吸着量を標準状態での体積で、横軸には相対 圧X(相対圧とは平衡圧を吸着温度における気体の飽和蒸 気圧で除したものであり、無名数である)をとって表して

いる。この中には、同等温線のBETプロットも入れてい る。この等温線はBDDT分類16》のII型に属するが、 X=

0.4付近に僅かではあるが、 ステヅプが認められる。X=

0.94まで吸着させた後、脱離を試みたところ、図に見られ る様なヒステリシスが直ちに生じた。 このヒステリシス は、de Boeri7)、GreggとSing18)の分類によるB型に該当 するものと思われるが、特徴的なのは、X=0.5付近で脱 離等温線は吸着等温線に一致すると見えて、実際は一致せ ず、ごく僅かの差を極めて低い相対圧まで保ち続けている 事である。また、脱離等温線にもX=0.4付近にステヅプ が認められる。

2.2 測定方法

 上に述べた3種類の黒鉛試料に窒素あるいはアルゴンを 吸着させる前には、これらを室温において10朝5[Torr](1

[Torrl=133.3[PaDで充分に脱ガスした。吸着温度は液 体窒素温度とした。特に、アルゴンの場合は同温度での飽 和圧が測定時の外気圧によってかなり変動するので、その 都度実測した。容量法による吸着量の測定方法および装置 は前事15》に詳細に述べたので割愛するが、著者は従来から 圧力測定に水銀マノ営門ターを用いており、その使用に必 然的に伴う大きな誤差を除くため多大の労力を払って来た。

しかし、幸運にも本校内の重点設備事業費(平成2年度)

の配分を受ける事が出来、念願のBaratronキャパシタンス マノメ旧離ーを装置に組み込む事が出来た。 これにより、

測定精度が飛躍的に向上し、しかも吸着平衡の到達が同圧 力計に接続したレコーダーによって容易に確認できる様に なり、その結果、測定に要する労力も相当に軽減された。

 吸着平衡の達成に要した時間はdoseの間隔、平衡圧の高 低などによって長短があるが、窒素吸着で10分から30 分、アルゴン吸着で20分から40分であった。両気体共、

脱離等温線の測定時には、対応する圧力域で吸着の時より も長い平衡達成時間を要した。

 同一・一 at料に対して吸着と脱離を行うため、測定は2乃至 3日間に及ぶ。bathの液体窒素の夜間における自動補給は 日本ベルKK製の液体窒素供給システムを導入してはじめ て可能となった。勿論、液体窒素メニスカスを定位置に常

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Fig.1 Adsorption一一desorption isotherm of nitrogen    on G25 at 77K. e: adsorption, O: desorp一一    tion.

1.0

(3)

 BETプロヅトにはX=0.26以下の相対圧域において非 常に良い直線性が見られる。 これから最小自乗法を用いて 算出した単分子吸着量V皿は3.11[c皿3/g]である。一方、

B点法19)によって吸着等温線より直接に、図形的に求めた 単分子吸着量VBは3.10[cm3/g]であり、 両者は非常に良

く一致している。ちなみに、B点はX=0.08にある。

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Fig.2 Adsorption−desorption isotherra of argon on    G25 at 77K. e: adsorption, O: desorption.

 Fig.2は77【K]におけるG25へのアルゴンの吸着等温綜で ある。この図にも同等温線のBETプロヅトを入れている。

等温線の形は、窒素のときと同じII型であるが、 X =0。4 付近にかなりはっきりと一つのステヅプが認められる。こ れは、1948年にJoynerとEmmettがグラフオン(GraPhen)

への窒素の吸着を行った隙に発見した未知のステップで2。,,

1964年PierceとEwing hs. Joyner−Emmett step(本報では、

以下、JEステップと略記する)と呼んだもである2Dと考 えられる。JEステップは均一な表面を持つ黒鉛への窒素 およびアルゴンの吸着の際に現れる特徴的な現象であると 言われてきた20。 さて、X=0.96まで吸着させた後、

引き続いて脱離等温線の測定を行った。 このときも驚いた 事には、図に示す様に全圧力領域にわたるヒステりシスが 生じた。 このヒステリシスは、de Boer分類のB型に属す るものと考えられるが、脱離等温線は相当に低い圧力まで 吸着等温線に一致せず、X=0.02を下回った所でやっと一 致する。 また、脱雌等温線にも大きなJEステップが見ら れる。 ところで、吸着等温綜のBETプロットは良い直線 性を示す。これから求めたV皿は3.04[c皿3/91である。

また、吸着等温線からB点法で求めたVBは3.12[cm3/g]と なる。両者の差は2.6%なので、これらは比較的良く一致

していると言える。なお、B点の相対圧は0.08である。

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1.0

Fig.3 Adsorption−desorption isotherm of nitrogen    on HYG25 at 77K. e: adsorption, O: desorp−

   tion.

一11一

(4)

 当然の事ではあるが、窒素ならびにアルゴン両等温線の BETプロットの良い直線性はJEステップが生じる前の 低圧領域において成立している。JEステップが窒素吸着 等温線では僅かに認められるに過ぎないが、アルゴン吸着 等温線では顕著に認められる事は面白い。

14

12

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   Relative pressure, X

Fig,4 Adsorption一・desorption isotherm of argon    en HYG25 at 77K, e: adsorption, O: de一一    sorption.

10

 次に、HYG25の窒素吸着等温線ならびにアルゴン吸着 等温綜をFig.3, Fig.4にそれぞれ示す。 Fig.3にはx=

0.98まで窒素を吸着させた後に引き続いて測定した測定し た脱離等温線.も示している。吸着等温線の形状はBDDT 分類16》のII型に属するが、細部において少し変化が見られ る。 即ち、X=0.2付近で吸着量がやや急に増加し初め、

更に、X=O.4付近でJEステップが微かに認められる。

また、広い圧力範囲においてヒステリシスが認められるが、

HYG25ではX=0.2以下の低圧域において脱離等温線は 吸着等温線に完全に一致している。これはG25の場合と少 し異なる。Fig.3の中にはこの等温線のBETプロットを 示している。ここに見られる特徴はBETプロットがX=

0.2で下に折れており、二本の直線から成っている事であ

る。低圧域の直線から計算した単分子吸着貴Vmは1.45

[c皿3/g]であり、吸着等温綜からB点法によって求めたVB

=1.50[cm3/g](このとき相対圧X=0.03.)と極めて近い。

X=0.20〜O,35日高圧平の直線から得たV皿は1.91[cm3/g]

であり、前二者よりも大きい。

 Fig.4はアルゴンの吸着・脱離等温線である。窒素の場 合(Fig.3)よりも顕著に階段型等温綜の特徴を現している。

即ち、X=0.35,0.60,0.83付近にステップが認められる。

この内、最初のものは、いわゆるJEステヅプと思われる。

X=0.91まで吸着させてから直ちに脱灘を測定したところ、

図の様なヒステリシスが現れた。 このヒステリシスはde Boer分類のB型に該当する。 G25のときと異なり、脱離等 温線はX=0.30近傍で完全に吸着等温線に一致する。脱離 等温線にもJEステヅプに相当するステップが現れている。

また、このもののBET等温線は、 窒素の場合とは異なり X=0〜0.3において非常に良い直線になっている。これよ り計算した単分子吸着量Vmはし64[c田31g]である。一方、

B点法によって求めたVBは1.72【cm3/g](このとき相対圧 X=0.04)である。両者は比較的良い一致をみている。

16

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Fig.5 Adsorption−desorption isotherm of nitrogen    on OZG25 at 77K. e: adsorption, O: desorp−

   tion.

 Fig.5ならびにFig.6は水素処理試料HYG25を更にオ ゾン処理して得た黒鉛、』OZG25への窒素ならびにアルゴ

(5)

Table 1 Amount of various gases evolved on igniting the graphite samples.

A瑚ount of gas evolv ed [ 皿1(STP)/9 ]

Sample

H20 CO2 CO H2 CH4 C2H6

G25 0,441. 0,773 0,705 0,381 0,034 0,006

HYG25 0,016 0,003 0,010 0,019 0,010 0,007

OZG25 0,138 0,132 0,109 0,041 0,038 0,005

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Fig.6 Adserption−desorption isotherm of argon    on OZG25 et 77K. e: adsorptjon, O: de−

   sorption.

10

ンの吸着・脱離等温線である。Fig.5の窒素吸着等温線に 見られる特徴は先にHYG25のそれにみられたものと大差 ない。この場合も脱離等温綜はX=0.2近傍で吸着等温線 に一致している。これらのBETプロットはX=0,2で下

方に折れ、この場合もやはり全体として二本の直線部分か ら成っている。 低圧域の直線から算定した単分子吸着量 Vmは1.61[cm3/g]であり、等温線からB点法によって求め たVBはし63[cm3/g】(このとき相対圧X=0.04)であって、

両者は良い一致をみている。

 Fig.6のアルゴン吸着・脱離等温線も階段型である。先 にFig.4で示したHYG25の等温線に見られるものと同じ 相対圧に、より明瞭なステップが出現している。脱離等温 線にも対応するステヅプが認められる。 脱離等温線はXニ 0.3付近で吸着等温線に完全に一致している。この型のヒ ステリシスはde Boer分類のB型に属する。アルゴンのB

ETプロットはX=0〜0.3で直線となり、窒素の場合の様 に折れ曲がって二本の直線とはならない。この直線から算 出した単分子吸着量Vmは1.81〔cm3/g】であり、等温線か

ら直接にB点法によって求めたVBは1.90【cm3/g】であっ て、聖者は比較的良く一致している。

 Table 1は三つの黒鉛試料の表面酸化物量を昇温風醗法 によって調べた結果である。黒鉛上の酸化物即ち含酸素官 能基は真空下で高温に晒されると熱分解する。分解生成物 は主としてCO2, CO, H20, H2, CH4, C2H6の様 な気体である。これらの気体を分別定量し、それぞれの量 の大小から表面酸化物種の多少を知る事が出来る。発生し た気体量は黒鉛1[g】当たりの体積で表してある。このデ ータは著者が既に他誌において公表したもの12・14}から換 算し直したものである。

これから、G25上の表面化合物が水素処理によって激減し ている事がわかる。恐らく、水素還元に先立っ2800[℃】処 理によってG25上の表面酸化物の殆どが熱分解し、分解を 免れた表面酸化物も更なる水素処理によってその大部分が 還元されたものと考えられる。しかし、その後のオゾン処 理ではオゾンの強力な酸化作用で表面酸化物が幾分か再形 成されている事もわかる。

 Fig.7は上に示した三つの窒素吸着等温線からCranston

一一撃獅汲撃?剿@2)によって計算した各試料の細孔分布曲線であ

一13一

(6)

2

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Fig.7 Pore size distribution curves of graphite samples. a: G25, b: HYG25, c: OZG25

る。横軸のdは細孔直径を、縦軸のVは細孔の容積を表し ている。G25を水素処理すると細孔容積は大幅に減少して いる。これはプリズム面の結晶化が進んだ12)ためであろう。

即ち、2800【℃】という高温に晒されて表面酸化物が脱離し、

更に飛び出た炭素原子(dangling carbon atoms)が脱離 するなどして表面の凹凸が目立たなくなったものと思われ る。しかし、80[A}を越える直径のメソポアの分布の形は 水素処理では変化していない。また、80[A]以下の直径の メソポアにおbては水素処理はかなりの変化をもたらして いる。特に、40〜60[A】の細孔はその削合を減らしている。

しかし、オゾン処理によって回復し分布の形はG25のそれ に近ずく。分布曲線の形は圓復するが、細孔容積はG25を 上回らなかった。この範囲のメソポアの存在は表面酸化物 の有無と関係するのかも知れない。OZG25の分布曲線は G25およびHYG25のそれらに比べ凹凸が小さく滑らかで

ある。

G25の等温線はどちらのものもその中央部が盛り上がって いる。即ち、中間圧領域の吸着量が比較的多い。その分J Eステヅプが昌立たなくなっている。この事実は出発試料 であるG25の表面不均一性(表面酸化物の存在や細孔等の 幾何学的不均一さ22))の吸着を促進する効果が極めて大き い事を示唆している。Table 1に示すようにG25が最も高 い表面酸化物濃度を持ち、また、Fig.7に示すように、細 孔容積もG25が最大である。 HYG25のkneeの高さが半 減したのは、高温水素処理によってプリズム面に細孔を形 成していた出っ張った炭素原子が脱離し、同時に表面酸化 物が還元されて表面の均一性が高まったためと考えられる。

オゾン処理黒鉛OZG25では、両気体の等温線のkneeは共 に少し高くなった。オゾンがプリズム面を酸化したため、

表面不均一性が再び高くなった事による(Table 1参照)

と考えられる。

4.2 BET比表面積とアルゴンの分子断面積

4.考  察

4.1 各処理の吸蒲等温線に及1ます効果

 先ず、各処理によって吸着等温線がどのように変化した かを見てみる。

 水素処理によって得たHYG25の窒素およびアルゴンの 両等温綜のkneeはG25の両等温綜のそれらの約半分の高 さになっており、X=0.9近傍まで両気体の吸着量も約半 分のままである。 さらに、HYG25の等温線に比べて、

 G25は他試料に比べて、表面のroughnessも表面酸化物 濃度も最も高いものであるが、窒素とアルゴンの単分子吸 着量Vmが殆ど同じである事から、両分子は単分子層完成

までは同一サイトに吸着すると考えられる。両者は分子サ イズも異なり、窒棄分子は核四重極を持つがアルゴン分子 は無極性であり、且つ前者の形状は回転楕円体型(ellip一・

soiので、後者のそれは球形である。これらの事を考え合 わせると、上の事実は大変興味深い。この事実は、単分子 層完成までは、換言すると、相対圧x≦o.08(Fig.1,

Fig.2のB点の相対圧から)の圧力域では、両気体分子が

(7)

表面酸化物の在るプリズム面(柱面)へ吸着しても表面酸 化物がつくる電場には影響されていない事、同時に、外部 表面に存在する活性サイトに吸着し細孔内へは殆ど吸着し ない(Fig.2のアルゴンの等温線ではx=o.08でもヒス テリシスが見られる。後述するが、ヒステリシスは細孔へ の吸着に起因している。従って、VB達成段階で全吸着量の 約8%が細孔内吸着量であるが、分子径の大きな窒素では 殆どすべての吸着分子が外部表面上にある)事を示唆して

いる。

 同試料の比表面積は、窒素のこの温度での分子断面積 0.162【m21を七種にして求めると、13.5[m2/g]であるが、

この値と同じ比表面積を与えるアルゴンの同温度での分子 断面積は0.161【nm2】と算定出来る。この値はIsmai1が黒 鉛化されていない、もしくは賦活されたカーボン上のアル

ゴンに割り当てた0.157[nm2]s)にほぼ等しい。

 Fig.3ならびにFig、5に示すように窒素のBETプロッ トがX=0.2で下に折れ直線部分が二つになると、比表面 積の計算にどちらの方を採用するか、もしくは全体で平均 を取るか、などと頭を悩ます事になる。しかし、この問題 にたいしてはBETプロヅトから算出したVrnと等温線か ら直接求めたVBとの一致という事実が一つの判断基準を 与えてくれると思われる。即ち、窒素で面積を評価する場 合には低圧域のBETプロヅトを用いるべきであろう。

 また、HYG25とOZG25のそれぞれの場合において、

上で見たように、窒素とアルゴンのVm(もしくはVB)は 異なっているが、アルゴンの分子断面積を以前から知られ ているO.138[nm2}23・24)として、両気体から求めた比表面 積はかなり良く一致する。ちなみに、HYG25の窒素によ

るBET比表面積は6.31[m2!g】、また同試料のアルゴン によるそれは6.08[m2/g]であり、OZG25の窒素による BET比表面積は7.00[皿2/g]、またアルゴンによるそれ は6.72[m2/g】である。故に、 HYG25ならびにOZG25に 対しては、G25の場合と異なり、アルゴンに従来の分子断 面積を割り当てた方が良い事がわかる。また、この事実は すぐ上で触れた低圧部のBETプロットを用いて得た窒素 面積が妥当な値であるという考え方を支持する。

 それでは、この窒素のBETプロットの二折れ現象は一 体何に原因す・るのであろうか。X=0.2で直線の傾きが小 さくなり、切片がおおきくなるとC値は小さくなる。C値 はexp(q一一qL)/RTで表される。 qは等量微分吸着熱、 qLは 液化熱である。従って、X=0.2で等量微分吸着熱または 液化熱が不連続的に変わった事になる。著者は、窒素分子 の形状(回転楕円体)と分極率が異方的である事から、丁 度この圧力で吸着分子の配列の仕方に変化、即ち吸着相の 状態変化が起き、それが原因となってBETプロヅトが折 れるのであろうと考えている。これに対して、アルゴンの 形状および分極率は等方的なので、窒素に見られる様な現

象は認められない。この点については今後更に実験と検討 を重ね確証を得るつもりである。

4.3 JEステップ

 Fig.1,3,5から明らかなよ・うに、 X=0.4付近のJEス テップでは吸着等温線と脱離等温線が殆と一致しているの で、この現象は本質的に可逆的で物理的な原因によるもの であると言える。恐らく窒素の二次元凝縮が生じているの であろう。Fig.2,4,6に示すアルゴンの等温線上に現れた JEステヅプも同様の原因によるものであると類推される。

前述の様に、アルゴンのステヅプの方がはるかに大きいが、

吸着媒は同一の黒鉛なのでこの差は両気体の特性の差に拠 るものである。これらのJEステップC; B点法と同じ考え 方を適用してステップ終了時の吸着貴を求めると、窒素で は、1.63VB(G25、このときX=0.384)、 1,93VB

(HYG25、このときX=0.426)、1.87VB(OZG25、

このときX=0.408)であり、 アルゴンでは、1,87VB

(G25、このときX=e.470)、 2.05VB(HYG25、こ のときX=O.438)、 1.94VB(OZG25、このときX=

0.426)である。G25以外の試料ではJEステップ終了時 にはほぼ2VBを達成しており、このステヅプが第二層目 の吸着の完了に対応する事を強く示唆している。

 著者が行った実験のデータ以外に、JEステップに関す るいくつかの論文に掲載されている吸着等温綜、即ちグラ フォンへの一204.7[℃]および一194.8[℃】での窒素吸着20)、

3100【℃】で処理されたSterling MTへの一195[℃】での窒 素吸着25)、更に.黒鉛化カムポンブラヅクへの窒素および 一酸化炭素の液体窒素温度における吸着21)の各等温線を用 いて、著者自身が計算したところJEステップの終点吸着 量はB点吸着量のほぼ2倍になっている事を知る事ができ

た。

 PierceとEwingは「JEステップは第二層ステップ

(asecond layer step)であり、このステヅプが色々な系 でそう頻繁に観測されるわけではないが、その生起を握る 因子が三つある」と言っている25㌔彼らが挙げた因子は、

①表面の一様性(unifermity of the surface)、②吸着分 子間の強い横の相互作用(strong lateral interaction between adsorbate molecules)、③熱的擾乱がステップを 生起させる小さなエネルギー差を不鮮明にしない位に充分 に低い吸着温度(asufficiently low temperature that thermal agitation does not smear out the small energy differences that give rise to the steps)であ

る。

 各試料の吸着等温線から明かな様に、アルゴンのJEス テヅプの方が窒素のそれよりも際立っている。第二層の形

一15一

(8)

成が窒素吸着では徐々に進行するのに対し、アルゴン吸着 では比較的急激に進むためであると思われる。吸着層内に 在る分子の横の相互作用の大きさは二次元ファン・デル・

ワーtルス定数によって表される。RossとOliverによれば、

アルゴンの値の方が窒素のそれよりも少し大きい26}。さら に、彼らの計算から、表面電場は吸着分子の横の相互作用 を弱める事が示されている。上で述べた様に、アルゴンは 無極性分子だが、窒素は核四重極モーメントを持つ。

従って、黒鉛の表面電場によって窒素の横の相互作用力は 弱められていると思われる。そう言う状態にあれば、アル ゴンのJEステヅプがこうも顕著である事実が上手く説明

される。

 上で述べたようにJEステヅプは均一表面に特徴的な現 象のはずであるが、 最も不均一な表面を持っているG25

(Table 1, Fig.7)上においてすらJEステヅプは現れて いる。しかし、ステヅプ終了点の吸着量が他の試料と異な って、2VBより少し小さい。この理由としては、ヒステリ シスの出現とも関係するが、インクボトル型細孔27)の首の 部分に相当する様な突出した、不安定な基底面が聖壇所か

あり、・ここに吸着分子の凝縮相がつくられ、ボトル内は空 洞であるにも拘らず、それより外の表面22》にのみ第二層目

を形成する吸着が生じたためと考えられる。この種の吸着』

が生じる可能性はSeri一・LeyyとAvnirがコンピューター・

シミュレーションによって示したもの22)であるが、著者の 系においても充分に起こり得ると考えた。高温処理を経て 結晶化の進んだHYG25やOZG25にはもはやインクボト ルの首に相当する部分が無くなったため共に2VBの達成が 認められる。 G25のJEステップ終了時の吸着量がより分 子径の小さなアルゴンで1.87VBと、窒素の場合の1.63 Vnを上回る割合である事は上の想像と矛盾しない。

 また、Fig.1〜Fig.6でJEステヅプの現れる相対庄xと Table 1,に示した表面酸化物量を比べると、プリズム面上 の表面酸化物の多少はJEステップの大きさ並びにその発 現する相対圧に殆ど影響しないといえる。JEステップは 第一層の上に起こった第二層の形成プロセスなので、下地 の表面は既に吸着した分子のいわば 絨毯 で均一に、一 様になっているのだろうか。

4.4 ヒステリシス

 Flg.1〜Fig.6の全等温纏においてヒステリシスが観測さ れた.。著者は各試料表面の細孔の存在が原因であると考え ている。ヒステリシスの幅の大小は、これらのヒステリシ スが例外なく吸着時に到噛した圧力から直ちに生じている ので、到達圧力の高さに依存して変化し、従って再現性は

無い。

 G25のアルゴンの等温線(Fig.2)ではヒステリシスの 終点がかなり低圧まで来ている。これに対し、2800[℃1で

処理を経たHYG25とOZG25のアルゴンの等温線

(Fig.4, Fig.6)に見られるヒステリシスの終点はX=

o.3付近まで後退した。 しかし、窒素の等温線(Fig.1,

Fig.3, Fig.5)ではこの様な変化ははっきりとは認められ ない。この面白い現象は、2800[℃】という非常に高い温度 での熱処理で小さなスリット型の細孔が焼結して無くなっ たために生じたと思われる(Fig、7)。

 また、各試料の窒素とアルゴンのヒステリシスを比較す ると、ヒステリシスの終点の圧力はアルゴンの方が高い。

これは、明らかに分子径の差が出ているものと考えられる。

即ち、分子径のより小さなアルゴンの方が径のより小さな 細孔に入る事が出来、従って、相対圧Xの小さい所までヒ

ステリシスが生じている訳である。

5 総  括

①HYG25ならびにOZG25では中間圧力領域の窒素およ  びアルゴンの吸着量がG25に比べてほぼ半減した。熱処  理によって結晶化が進んだためと考えられる。

②HYG25ならびにOZG25の窒素のBETプロットは二

 つに折れ、二本の直線になったが、アルゴンの場合には  その様な事は起こらなかった。恐らく、吸着相内で窒素  分子の配列に変化が起こるためではないかと思われる。

 比表面積は低圧部の直線関係から決定すべきである。な  お、G25ではこの様な二折れ現象は認められなかった。

③アルゴンの分子断面積はG25上と他の試料上では異なる。

④窒素による比表面積はG25で最も大きく、13.5[m2/g]で  あり、他の試料ではほぼ半減した。ちなみに、HYG25  で6.31[m2/g]、またOZG25で7.OO[m2g]である。後  者の二試料の吸着等温線のkneeの高さがG25のそれに  比べて半減している雑なとから、やはり、高温熱処理に  よる結晶化が原因していると考えられる。

⑤すべての試料のすべての吸着等温線にJEステップが出  現した。これは第二層形成に対糊する現象と考えられる。

 アルゴンのほうが窒素より顕著に現れた。熱処理を経た  HYG25やOZG25では、熱処理を受けていないG25よ  りもステヅプが目立った。

⑥すべての試料のすべての等温線にヒステリシスが現れた。

 これは、両分子の細孔充填さらに毛管凝縮によるものと  考えられる。HYG25およびOZG25においてはヒステ  リシスの終了する圧力が高くなった。これも熱処理によ  る結晶化が原因するものと考えられる。

(9)

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12)

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14)

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一17一

Table 1 Amount of various gases evolved on igniting the graphite samples. A瑚ount of gas evolv ed [ 皿1(STP)/9 ] Sample H20 CO2 CO H2 CH4 C2H6 G25 0,441. 0,773 0,705 0,381 0,034 0,006 HYG25 0,016 0,003 0,010 0,019 0,010 0,007 OZG25 0,138 0,132 0,109 0,041 0,

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