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貿易の自由化と工業政策の課題

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(1)

貿易の自由化と工業政策の課題

その他のタイトル Problems of Industrial Policy and Trade Liberalization.

著者 松原 藤由

雑誌名 關西大學經済論集

13

1‑2

ページ 43‑62

発行年 1963‑06‑20

URL http://hdl.handle.net/10112/15449

(2)

43 

貿

わが国における技術革新←生産性の向上←経営革新←工業内部構造の高度化←経済発展という経済政策的路線にお

わけても高度加工諸工業︵附加価値率が高く︑連関効果の大きい︑し

かも関連諸工業の技術水準引上げ効果の明らかな工業︶の国際競争力︵価格・品質・資本力の競争︶を強化し︑それとの関連に

おいて一般工業の輸出成長率をも引上げていくことが政策的に配慮されなければならない︒何故ならばそれらの諸工

貿易・為替の自由化︵ここでは以下単に貿易自由化という︶の

本番に当面せるわが国︑今後の経済発展にとって重大な政策的課題だからである︒

そこで今日のわが国のエ鉱業にとっては︑エ鉱業発展の一連の根本的要因︑すなわち①技術の進歩︵綜合的科学技術

の発達︶ヽ②原料の豊富な存在︵原料の多量と︑その良質および多種類の存在︶︑

質および構成︶ヽ④資本の蓄積︵資本の供給︑合理化・近代化投資および在庫投資︑等多額の資本量︶︑

よび海外の有効需要の増大︶︑等のうち︑固の市場の拡大要因が他の要因にも増して特に重要であると考えられるので

ある︒もとよりこの要因についての重要性は次の二つの側面から考察しうる︒ 業の国際競争力が脆弱であり︑輸出成長率の低いことは︑ ける工業内部構造の高度化には︑特に重化学工業︑ 貿易の自由化と工業政策の課題

その︱つは海外市場の拡大︵積極的側 固市場の拡大︵国内お ③労働力の増強︵労働力の豊富さと︑その素

(3)

 

後者の地域的貿易の自由化とは︑EECにその典型をみる如く︑ 面︶であり︑他は︑外国品の流入による国内市場の混乱︵消極的側面︶である︒場の混乱を可及的に避けるとともに海外市場の拡大に乗り出すためには︑わが国工業の中核をなすべき重化学工業︑わけても高度加工諸工業の国際競争力を強化し︑

その原理としては︑①加 したがって外国品の流入による国内市

それとの関連において一般工業の輸出成長率をも引上げていくこと

が貿易自由化の本番に当面せるわが国の経済発展によって極めて重要な政策的課題なのである︒そこで本小論の意図

は︑貿易の自由化と工業内部構造の高度化としての︑特に高度加工諸工業の国際競争力の強化とそれとの関連におけ

る一般工業の輸出成長率の引上げが︑如何なる理由で政策的に配慮されなければならないかを︑経済政策の部門政策

としての工業政策研究の立場から︑それを論理的に考察してみることにある︒

さて世界の大勢である貿易自由化の態様︵方向・速度・構成︶に二つの区別が認められる︒その︱つは︑

( 1 )  

いわゆる貿易為替の自由化であり︑他はEEC︵欧州共同市場︶にその典型をみる地域的貿易の自由化である︒前者の

( 2 )  

意味における貿易自由化の原理としては︑だいたい次の三つが考えられる︒すなわち①国際協力体制の確立︵国際的

貿貿

( 3 )  

②比較生産費の原則︵国際分業の行われる差礎を説明する比較生産費説﹁

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o f  comparat

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o st s

⑧新しい産業主義への推進︵ピッグ・ビジネスが経済を先導しているという考え方であり︑戦後の先進国における産業活動の活発

他性

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)

と地域内の結合性

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西

地域外に対する差別性

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または排

または相互補完性

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をもつ

( 4 )  

地域化

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或は区劃化

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における︑貿易の自由化であり︑

(4)

4/l 

貿

一九二九年の大恐慌にいたるまでの間に︑ 盟国の政治︑経済的統合の確立︵西欧は一体であるという欧州合衆国︑しかしアメリカ合衆国のような

Fe

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( 5 )  

⑨単一価格ないし一物一価の法則から単一通貨制度の創設︵単一価格の設定︑つまり一物一価の法則が作用する市場を作り︑

最後には単一通貨制度に到達するという原理︶ヽ③自由競争を基礎とする域内外企業の提携︵自由競争を貫く広域市場創設のた

( 6 )  

貿

かくの如き諸原理を背景としてもつ世界の貿易自由化は︑もとより二0世紀初期の自由化とは全く異なっている︒

その相違点は﹁一九二三年以来︑世界の資本主義国は︑ようやく︑第一次大戦後の混乱から脱して︑いわゆる﹃相対

的安定期﹄をむかえたが︑

(

過することがなく︑わずか二年足らずで︑

(

0

年 ︶

(

金解禁を行なっ

た︒もっとも日本の金解禁の時期は︑世界恐慌の翌年であったから︑各国のように金解禁から再禁止まで数年間を経

一九三一年︱二月に再禁止せざるをえなかった︒ところで日本資本主義に

とって︑解禁による自由化は︑どのようなねらいをもっていたか︒第一には︑金本位体制︵実際には金為替本位制︶への

復帰によって︑為替相場を安定させ︑さらにそれを通じて国内経済を安定させることである︒そのことは当然に国内

物価の国際水準への引下げによる︑中小企業の没落︑産業合理化︑失業の増大︑独占の強化につながる︒ところが産

そして国際収支の改善をめざして行なわれた金本位制への復帰は︑日本資本主義にとっ業合理化による輸出の振興︑

(5)

的にはインフレを招来しているのである︒もちろん︑

西欧の資本主義工業諸国は︑アメリカと社

一 九 ︱ ︱

0

年の金解禁後のデフレは︑世界恐慌のあおりが大きな 関西大学﹃経済論集﹄第十三巻第一号

0年代の ては︑明治以来のインフレ政策を大転換する画期的なくわだてであった︒しかしこのくわだては失敗に終った︒世界

恐慌の深化と昭和恐慌の勃発がその原因である︒⁝⁝しかし第二次大戦後の自由化は︑多くの面で︑

金解禁とは異なっている︒その相違点の第一は︑金本位制への復帰という形での自由化は︑今日では不可能であり︑

したがって︑自由化は必らずある程度の為替管理1

国内的には管理通貨制ーの制度を残しながら行われる︑とい

うことである︑そのことから︑

会主義国との間にはさまれて︑

0年の日本の金解禁が︑デフレを招来したのとは反対に今日の自由化は︑国内

原因であるけれども︑基本的には金本位制復帰による国内価格の国際価格へのさやよせ︑したがって国内物価の低落

が必然的にあらわれたものである︒ところが︑今日の管理通貨制1金本位制からの離脱を前提とした││はインフ

レ政策に通じているから︑自由化による国内物価の低落が一九三0年代のようにはあらわれないのは当然であろう︒

相違点の第二は︑今日の自由化は︑⁝⁝プロック経済化を前提として西欧諸国からはじまったことであるCすなわち

一九四八年のOEEC︵欧州経済協力機構︶や一九四九年のEPuEEC

EFTA︵欧州自由貿易連合︶の結成などにみられるように︑

いわば﹁暗い谷間﹂になりつつあったので︑

( 7 )  

プロック化の必要に迫られたのである︒﹂

ところで現段階における西欧諸国を典型とする各国のプロック化は︑

a ft )

或は広域経済

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)

ここから抜け出すためにも︑西欧諸国は

一 九 ︱ ︱

0

年代のプロック経済

(B

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化とは大いに異なっている︒その当時の資本主義諸国におけるプロック経

済形成の主要な動因は︑山独占資本の発展︑②産業合理化による生産力の拡充︑③世界恐慌の克服︑④国防体制の整

(6)

47 

貿

保すること︑目国防地帯としての戦略用兵の基地充実︶等であった︒

いうまでもなくその当時のブロック経済と広域経済とは︑

が進んでいたこと︑などである︒しかし実際的には前者と後者は︑

それを持たざる国の広域主義の対立であり︑

しかるに﹁第二次大戦後のブロック経済化は︑表面上﹃植民地なき﹄ブロック化であり︑

備︵い自国産業一般の原料資源を確保すること︑回生産品に対する確実なる販路を獲得すること︑い軍需資材並びに食料の供給を確

そして世界の経済は︑①英帝国および北欧諸小国を加

スターリング・プロック︑②南北米を一帯としたアメリカ・ブロック︑③仏︑白を中心とするフランス・ブ

ロック︑④ドイツおよびイタリアの独伊ブロック︑固日満支ブロック︑⑥社会主義のソ連ブロック︑等に分割され︑

理論的に対立するものと考えられていた︒その主要な相

違点は︑いブロック経済が主として支配国と被支配国との関係的結合であるのに反して広域経済は独立国と独立国︑

或は指導国との関係的結合であった︒回ブロック経済では遠隔地を包含するのに対して広域経済は主として近接地域・

の結合に重点がおかれていた︒い相対的アウタルキーを意図することには変りがないが︑広域経済では︑その上に軍

事的アウタルキーを目標としていた︒日高度の統一性および計画性においてはプロック経済の方が遅れ広域経済の方

それほど明確に区別しがたいが︑前者は植民地の

﹁持てる国﹂の体制であり︑後者は﹁持たざる国﹂の体制であったといえよう︒すなわち植民地を持てる国のブロッ

日︑独︑伊の如き当時の全体主義国家は後者であり︑民族共

( 8 )  

同防衛的アウタルキー︑すなわち広域経済体制の確立に向ったと考えられるのである︒

それは後進国を除外した

高度の工業国間のブロック化であるといわれている︒したがって各ブロックの生産力はきわめて高く・⁝⁝その巨大な

工業力はどうしてもやがてはブロック外にたいしても︑貿易や為替の自由化を求めてやまないだろう︒こう考えてく 先進支配国によって統合されたのである︒

(7)

関西大学﹃経済論集﹄第十三巻第一号

ると︑差し当りの自由化は︑プロック内の自由化であるが︑

一八カ国︵インド︑フィリビン︑台湾

それは世界市場の再分割

i

ただし植民地の再分割では

なく、プロックや後進国市場の再編成という意味での—|'を招来すると考えられるのである。たとえばすでに、イギ

リスを中心とする欧州自由貿易連合

(E

FT

A)

が欧州共同市場

(E

EC

)

に近く合体する︑

れてある︒

EEC

加盟交渉は一九六一年七月三一日の英下院におけるマクミラン首相の正式加盟声明以来

ヵ月にわたって続けられてきたが︑ドゴール仏国大統領の強い抵抗に起因して一九六三年一月二九日に交渉決裂︑すなわち加盟交渉

は無期延期となった︒︶とにかく自由化の波はこうした世界経済のプロック化と深くからみ合いながら進展しているよ

(9) 

ここに現段階における世界経済のプロック化を具体的にいえば

EEC六カ国︵フランス︑西ドイツ︑イタリ

ア︑オランダ︑ベルギー︑ルクセンプルグ︶のほかに︑EFTA七カ国︵イギリス︑ノールウェー︑スエーデン︑デンマーク︑ポ

ルトガル︑スイス︑オーストリア︶LAFTA﹁ラテンアメリカ自由貿易連合﹂七ヵ国︵アルゼンチン︑プラジル︑チリ︑ウ

ルグアイ︑ペルー︑︒ハラグアイの南米六ヵ国とメキシコ︶︑さらにアフリカではカサブランカ派六カ国︵アラプ連合︑ガーナ︑

ギニア︑マリ︑モロッコ︑アルジェリア︶およびモンロビア会議諸国二〇カ国︵セネガル︑モーリタニア︑ガボン︑チャド︑中

央アフリカ︑仏領コンゴ︑マダガスカルの仏共同体七ヵ国︑ギルタ︑ニジェール︑ダオーメー︑ぞうげ海岸︑カメルーン︑トーゴ︑

ナイジェリア︑シェラレオネ︑リビア︑ソマリア︑リベリア︑

ルサルバドル︑グアテマラ︑ホンジュラス︑ニカラグア︶︑

タイ︑ビルマ︑パキスタン︑インドネシア︑ エチオピア︑チュニジア︶︑中米共同市場五カ国︵コスタリカ︑エ

それに共産圏のセマ

(C

EM

A)

ド︑モンゴル︶またアジアでは前途多難ではあるが

0AEC

俗称コメコン︵東欧経済相互援助会

議︶といわれる東欧の経済統合八カ国︵ソ連︑プルガリア︑ハンガリー︑東ドイツ︑ルーマニア︑チエコスロバキア︑ボーラン

という現実がそのあらわ

(8)

49 

貿

イラン︑モンゴル︑韓国︑日本︶等であろうC必らずしも高度の工業国間ばかりの経済統合ではない︒

しかし経済統合︑プロック化のモデルは何といってもEECであるが︑今度のイギリスのEEC加盟決裂によって

(10) 欧州経済のプロック化は益々強化されるであろう︒

何故ならばEECも第二段階に移行して

(E

EC

るにつれて共同市場六カ国内部にさえ政治的対立が表面化し︑今度の対英交渉でも︑

れ︑足並みは少しも揃っていなかったので︑政治的混乱にもまして︑イギリスをふくめた﹁欧州の統合﹂という理想

が遠のいたためにEEC内部だけの経済プロック化の方向を強める可能性があるからである︒

なお補足ではあるが︑イギリスのEEC加盟失敗は西側政局に重大な影響をもたらす歴史的事件といえるが︑特に

アメリカの世界政策路線︵大西洋共同体構想および通商拡大法にのっとっての世界的関税引下げ︶に影響するであろう︒

ても通商拡大法︵一九六二年一0月︱一日発効︶における関税引下げ交渉の構想︑

EECの輸出額が全世界の輸出額の八0形以上にのぽる商品の関税率を互恵的に向う五カ年間︑五 ﹁経済統合﹂の成果をあげてきているが︑

わけ

すなわちアメリカおよび︵イギリスを

OEEC地域でフランス九〇彩︑ 0彩引き下げる予定が︑イギリスの加盟決裂で困難となり︑関税を全廃できる品目はジェット機とマーガリン程度で

( 1 1 )  

はないかといわれている︒なお一九六三年五月のガット閣僚会議におけるアメリカの関税一括一律引き下げ方式とE

E

Cの段階別漸減方式の原則的対立は︑今後の関税一括引き下げの前途に暗影を投じているといえる︒

さて前後するが、•一九六0年頃の西欧諸国の貿易の自由化率は、

西ドイツ九二 フランスに引き回さ 昨年あたりから﹁政治統合﹂という︑より高度の段階にはい

(9)

比して低いこと︑回設備の技術水準が遅れていること︑ ところで上述の如き西欧諸国の自由化と比較して︑わが国の自由化が︑その当時︑遅れていた原因ないし理由は︑

山西欧諸国と異なり不完全雇用であったこと︑岡地域経済圏がないこと︑③国際競争力がないこと︑等であった︒こ

れらの理由のうち自由化が本番となった今日では︑重化学工業︑わけても高度加工諸工業はもとより工業一般にとっ

て重大な問題は国際競争力︵価格・品質・資本力の競争︶である︒そこで先ず一般論としての国際競争力のうち価格の

面から考察してみよう︒

﹁価格の問題﹂⁝⁝周知の如くわが国の工業製品は最近まで国際的に割高であった︒特に重化学工業製品と石炭な

ど鉱業部門の商品が国際的に割高であった主要な理由は次の如くである︒すなわち﹁い労働生産性が英米等の諸国に

節約が充分でないこと︑日輸入原材料が割高であること︑紺資本の回転率が低いこと︑日金利その他の経費がコスト 促進を強く要望しているといわれている︒ 関西大学﹃経済論集﹄第十三巻第一号

%︑イギリス九八%︑イクリア九九

9 6 ︑対ドル地域でフランス九

0 9

︑西ドイツ八五%︑イギリス九五彩︑イクリア6

0%であった︒かくの如く世界の大勢である貿易の自由化に対して︑わが国の自由化は︑その当時︑極めて遅れて

IMF総会︵一九五九年九月︶およびガット総会︵一九五九年一0月︶における各国の要請に基づいて政府は一

九六0年六月に﹁貿易・為替自由化計画大綱﹂を策定し一九六0年四月︵現在︶四一彩の自由化率を一九六一年四月

0

( 1 2 )  

由化品目に対しては︑IMFの八条国移行勧告とその受諾によって自由化促進が迫られる運命になっている︒非自由

化品目のなかでも先進工業国は自国と同様に乗用車︑大型工作機械︑電子計算機︑重電機器など重工業製品の自由化

一九六二年四月に七0

形 ︑

へと引上げてきたのであるが︑残る︱二彩の非自

(10)

5 I 

の中で占める割合が高いこと︑旧輸入が自由でなく独占が進行して競争による価格引下げの刺戟が少ないこと︑防商

( 1 3 )  

品に対する需要が国内の供給力を上回っていたこと︑﹂等である︒もとより現在では上述の理由の若干は解消してい

るが︑海外諸国より高い価格は企業の経営合理化︑質的な改善によって引下げなければならない︒

﹁品質の問題﹂⁝⁝次に価格と関係のある品質について考察してみると︑

あるから抽象的に考察しょう︒

国内に形成され︑

輸入品に対する国内市場における競争であり︑国産化の過程で日本の企業間の競争が展開される︒国産化が達成され

ると輸出に進出し︑海外の市場で外国の企業との競争がはじまる︒これは明治以来の日本の大企業の歩みをかえりみ

これは具体的には紙数の制約上不可能で

日本の新らしい産業は︑外国の製品を輸入し︑輸入品のマーケットが

日本の企業がその輸入品を国産化する過程で発展する︒したがって︑輸入品の国産化は︑国産品の

いつも同じ過程をくりかえしている︒外国からの輸入品の国産化の過程で日本の企業の基礎が確立される場合

が多いのであるから︑国産化に当っては︑外国においてすでに出来あがっている技術を導入することが多いのも自然

の成行きである︒同じ製品に対して︑外国では︑それぞれの国で開発した伝統的な技術をもっているが︑日本ではそ

( U )  

れぞれの企業が勝手に外国の技術を採用し︑競争を展開する﹂のである︒試みに昭和二五年八月の﹁外資法﹂制定以

来︑約一〇カ年の技術導入︵国別件数︶をみると︑

フランス三五件︑オランダ三四件︑

貿易の自由化と工業政策の課題︵松原︶ アメリカ七七六件︑

イタリアニ七件︑ 西ドイツ八七件︑

イギリス三

スェーデンニ三件の順となっている︒な

お今年三月末までに︑わが国が受けいれた外資の総額は︑二0億六千万ドル︑導入技術の件数は︑一千九百九八件であ

る︒かように戦前にも増して外国技術に対する依存度を高めているが︑それだけに︑外国品との品質における今後の

国際競争に如何に対処してゆくか︑品質本位の生産に如何にして徹するかは︑わが国の大企業のみならず中小企業に

(11)

が五九年度の二四位から一七位に飛躍したのをはじめ︑

東芝︵三八位から三一位へ︶︑富 では日立が七0

位 ︑

西

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巻第1

﹁資本力の問題﹂⁝⁝次に価格と品質にも関係のある資本力についての国際競争力について考察してみょう︒ここ

に価格と品質に関係のある資本力についての国際競争力とは︑個別資本の立場から︑わが国の企業規模と企業の体質

が如何にして国際競争力にたえるかという問題である︒そのうち先ず企業規模についていえば︑

的には如何なる地位を占めているのであろうか︒試みに﹁世界の大企業一五0社をあげ︑そのなかで日本の大企業が

どんな地位にあるかをみると︵米誌﹃フォーチュン﹄一九六0

1

一九六一年七・八月号による︶すなわちアメリカが一五1

0社中九八社と約一二分の二を占め圧倒的に多い︒アメリカのつぎはドイツの一七社︑

ある︒とくに︑

フランスおよびイタリーの一二社︑

センプルグはそれぞれ一社であるC五九年版においては︑

五七年版では八幡がようやく一五0位に入ったに過ぎなかったのが︑五八年版には日

立が一三七位に入り五九年版になると︑

八幡が九二位︑

東芝が一〇一位︑

0社のなかでの日本の企業の地位であるが︑ アメリカの一0三社のつぎは︑ドイツ一四社︑

0三位︑東芝が︱二九位と進出し︑さらに六0年版

富士鉄が一四0位と躍進した︒

アメリカを除く上要工業国一︱力国の上位一

00

社のなかでは日立

士鉄︵五三位から四六位へ︶︑鋼管ェ七九位から七二位へ︶の五社がその地位を高めたほか︑新たに松下︵七四位︶︑三菱電

日本石油︵八一位︶︑東洋レーヨン︵八五位︶︑ 日本の大企業は国際

イギリスの一四社︑やや下って

スイスおよびベルギーの二社の順で︑オランダ︑ルク

トヨタ︵九三位︶︑新三菱重工︵九五位︶の六社がニュー 右はアメリカをも含めた 社︑カナダの六社の順で日本は三社であったから︑

日本の企業が地位を高めたので とっても極めて重大な問題である︒

(12)

53 

貿易の自由化と工業政策の課題︵松原︶

0月二九日︶した おける大企業の資本集中・集積が著しいのは︑その証拠である︒ ・フェースとして登場するにいたった﹂といわれるほど︑

したがって最近産業界では企業の合併が進んでいるが︑

ての競争分野における企業の大型化と大規模生産の利益︵規模に関する収獲逓増の利益︶

﹁企業の合併効果﹂︑

営の多角化がニ︱形︑事業の補完や継続が一五形となっている︒

日本の大企業の成長は実に目覚しいものがある︒わが国に

これは貿易自由化後における図際競争に対応する態勢とし

をえんがためである︒通産省

それによると︑調査対象は昭和三0年から三六年末までに合併した鉱業︑製造業関係の会社のうち合併後の資本金が

一億円以上のもの全部︑および同五千万円以上一億円未満の一部六八社であり︑合併の様式と数字は概ね次の如くで

ある︒すなわち親子会社の関係にあった企業同士の合併が最も多く全体の三八・八%︑兄弟会社の関係にあったもの

が二五•四%、また旧同一会社であったものが一三•四形となっており、全く資本的にも人間的にも無関係であった

企業間の合併は一―•九%である。企業の合併を目的別にみると生産の集中化、専門化をねらったものが三一形、経

しかしながら企業規模の国際比較においては︑二重構造のもとにおける経済成長下に階層分化をおこしている中小

企業を考察に入れるならば︑わが国経済における企業規模は小規模であり︑企業の乱立︑過当競争が行われているの

が実状である︒特に企業規模が小さすぎるのは機械工業と装置工業であろう︒

周知の如く機械工業では中小企業が乱立して多品種少量生産をなし過当競争を演じている︒わが国では大企業でも

多品種少量生産をしている︒例えばベアリング工業をみると︑大手五社の一社当り生産種類は二0種にのぽり︑コス

ト割高の原因となるほか技術水準の向上を妨げている︒また工作機械工業は西欧諸国では一機種につき月産一

00

これは企業の﹁合併白書﹂ともいえるものであるが︑

(13)

装置工業についてみると︑ ないし二

00

台が最も多いが︑わが国のそれは最高で五0台にすぎないといわれている︒機械工業の企業規模が如何

に小さいかを従業員数でみれば︑わが国の場合は一企業当り従業員は四四・七人で西欧諸国の約六分の一であるとい

一般に化学︑石油精製︑合成繊維などの諸工業が国際的に小規模である︒例えば生産規

模では︑三菱油化︑住友化学のエチレンの年産一万二千ないし二万二千トンがアメリカのダウ・ケミカル社︑イギリ

ICI

0ないし二0分の一︑昭和電工のアルミニウムの年産四万六千トンがアメリカのアルコア社やカ

ナダのアルギャン社の約一七ないし一九分の一であり︑自動車ではトヨタ︑

日産の規模が西欧諸国の二ないし三分の

アメリカとは問題にならない︵一九六一年現在︶といわれている︒

ところで既に拙著﹃工業経済学の基本問題﹄において指摘した如く︑わが国の高度加工諸工業の確立には︑①主要

鉱工業の合理化・近代化︑⑨量産体制の確立・オートメーション化︑③専門化・規格化の推進︑④コンビナート化の

促進︑固産業︑特に工業の細分化︑⑥大工業と中小工業の補完体制の強化︑等と︑そのための財政︑金融の弾力的裏

付が必要であるが︑その高度加工諸工業に属する自動車︑電機機械︑産業機械︑電子工業︑合成繊維︑石油化学︑等

いわゆる成長産業は︑天然繊維︑鉄鋼︑重電機︑造船︑合成樹脂︑等のエ鉱業と異なり︑特に国際競争力が弱い存在

( 1 6 )  

である︒ついでに国際競争力の面から中小企業に及ぽす自由化の影響についてみれば︑食料品工業︵農産物加工の部門︶

化学工業︵化粧品等の部門︶︑自動車工業︵部分品メrカー部門︶︑機械工業︵エ作機械︑ミシン︑光学機械︑計測器具等の部

門︶等は可成りの影響をうけるものと予測されている︒

一応︑技術面を除外し︑中小企業を含めていえば︑わが国工業の小規模と乱立および過当競争は︑

西

(14)

55 

が国は極めて弱いのではあるまいか︒ 著しく国際競争力を減殺しているといっても過言ではないのである︒

それでは企業の体質は如何︒企業の体質で先ず問題となるのは企業の資本構成であろう︒周知の如くわが国経済は

金融構造が西欧諸国に比較して弱体であるうえに企業の資本構成は自己資本約三に対して他人資本約七という貧弱な

(17) 状態であり︑それだけに資本コストが非常にかかって国際競争力を減殺することになる︒端的にいえば西欧諸国とく

らべて自己資本の充実が遅れており︑自己金融力も極めて低いといえるのである︒なお資本力の国際競争は諸種の形

態をとってあらわれるであろう︒その第一は︑販売面を通じて支払条件の優遇であり︑第二は︑資本支配としての企

業進出である︒第一の支払条件の優遇については︑例えば機械の延べ払いにおいてアメリカ︑

スイス︑イギリス︑

これらの延べ払い条件は︑金利年六ないし七彩︑期間は三年ないし五年間であるの

に︑わが国では短期の標準金利でも七・三形︑長期延べ払い金融なら一0(

の支配としての企業進出についていえば︑

フランス︑西ドイツ︑

日本産業への外国の巨大資本は比較的に国際競争力の弱い自動車︑化学︑

産業機械︑食品工業等の分野への資本攻撃︑いわば直接的な手段として進出してくるのは必掟である︒今年三月末ま

でに経営参加の形ではいってきた外資は一億五千四百万ドル︑技術件数は三百四六件である︒なお第三は資本力にも

のをいわせて強力な︑しかも巧みな宣伝攻撃である︒これら三つの資本力の攻勢には遺憾ながら︑現在のところ︑わ

さて周知の如く︑戦後の世界経済の構成的変化と︑

工業を振興ないし確立するためには︑

貿易の自由化と.工業政策の課題︵松原︶ それに伴なう貿易市場構造の変化および貿易自由化とプロック

化のからんだ現段階における貿易自由化の世界的展開に当面して︑わが国工業内部構造の高度化としての高度加工諸

それらの諸工業の国際競争力を強化し︑それとの関連において一般工業の輸出

(15)

関西大学﹃経済論集﹄第十三巻第一号

成長率を引上げることが重要な政策的課題であることはいうまでもない︒ところがエ鉱業の国際競争力の強化と輸出

成長率の引上げとは︑いわば相関的な問題である︒何故ならば競争力の強い国ほど高い輸出成長率をあげることが可.

能だからである︒このことは既に数字的分析として明らかにされている︒すなわち日本︑西ドイツ︑イクリア︑フラ

スウェーデン︑イギリス︑アメリカの七カ国における一九五三l五八年のエ鉱業生産と輸出量の成長率の計

﹁輸出成長率の高い国ほど工鉱業成長率が大きい︒たとえば︑日本の輸出成長

率は一九•五形であるが、エ鉱業の生産の成長率は―ニ・七彩であり、西ドイツは一四·五形に対して八・七光、ぐ

っと下てっアメリカなどを見ると輸出成長率は三•四光、エ鉱業生産の成長率は一・三形という具合に、エ鉱業生産

の成長率が低いほど輸出成長率もそれに平行的に下っている︒⁝⁝つまり輸出成長率が大体の国においてエ鉱業成長

率よりは高いということは︑輸出が指導的な役割を果しているということを意味する︒第二に︑エ鉱業成長率のこの

順位と輸出成長率の順位とが大体平行しているということは︑いろんな国でエ鉱業生産の凹凸︵おうとつ︶がある︒そ

れらの高い国は輸出成長率も高いことを意味する︒だからいろんな国でエ鉱業生産成長率の凹凸があるということを

(18) 説明する一番大きな要因は︑輸出成長率であろうか﹂︑と考えられるのである︒

上述せしことから明らかな如く︑先ずわが国の重化学工業︑わけても高度加工諸工業の国際競争力を強化し︑それ

との関連において一般工業の技術水準を高めて国際競争力を全般的に充実することが︑それといわば相関的な問題で

ある輸出成長率引上げの基本的な前提となるのである︒しかしながら国際競争力を強化しても消費性向︵所得増加に伴

国際競争力の強化が直ちに輸出成長率の引上げとなるとは限らない︒とはいえ従来の開放体系

(O

pe

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em

)

フランスを例外として除けば︑

また好況時におけるような消費プームによる国内消費水準の上昇如何によって

(16)

57 

貿

ける保護貿易ないし管理貿易から貿易自由化或は地域的貿易の自由化へ移行した現段階においては︑やはりわが国の

重化学工業︑わけても高度加工諸工業を中心とする工業一般の国際競争力︑すなわちそれらの製品の価格︑品質︑資

本力における競争力を強化することが焦眉の急であり︑したがって産業界においては︑その重要なる国際競争力を如

何にして強化する態勢を整えるか︑また政府においては︑その問題に対して如何に配慮して万全を期するか︑という

ことが︑わが国の今後の経済発展にとって極めて重要な政策的問題なのである︒それではその態勢および配慮として

一般論として︑その要点︵価格・品質・資本力に関するもの︶を列挙し︑本

先ず﹁価格の問題﹂に関する要点としては︑わが国における二重経済の価格構造︑すなわち少数の大企業と多数の

中小企業の︑いわゆる二極集中的産業構造における賃金︑規模および生産性格差︑等の著しい経済的中進国の価格構

造における価格構造の是正と工業の合理化が必要である︒いうまでもなく二重経済の価格構造の特徴は資源に乏し

く︑したがって基礎資材や資本集約的な重化学工業製品が国際的にみて割高であり︑その反面︑労働集約的な軽工業

︵軽工業には中小企業が圧倒的に多い︶やサービス料金が著しく割安である︑という点である︒もとより最近における物

価騰貴が二重経済の価格構造を若干是正しているが︑それは大企業の重化学工業製品の価格の下げと︑これに反し︑

特に割安な公共︑サービス料金および中小企業の軽工業製品の適切なる引上げとなって現われなければ意味がないの

( 1 9 )  

である︒このような意味における二重経済の価格構造の是正と工業の合理化は貿易自由化に当面して極めて不十分で

あると考えられるのである︒したがって産業界も政府も︑この二重経済の価格構造の是正と工業の合理化に最善の態

勢と配慮をすることが必要である︒ 小論の結びにかえよう︒ 考うべき諸点は何であるか︒紙数の制約上︑

(17)

国際信用を落す原因の︱つである貿易秩序の確立︑

に︑それらの配慮が実践されねばならないのである︒ここに以上で述べたことを整備し列挙すれば︑日二重経済の中

曰自主的科学技術の振興︑

立︑固輸出振興︑因財政・金融の裏付けとその正常化︑が国際競争力の強化に必要なのである︒ 回貿易秩序の確

以上要するに技術革新←生産性の向上←経営革新←工業内部構造の高度化←経済発展という経済政策的路線を前提 進国型価格構造の是正と工業の合理化︑口企業の体質改善とその強化︑ 資本力の競争とは関係がないが︑等が真剣に考えられるととも

等が必要である︑といわれている︒なお健全財政の堅持︑金融の正常化︑貿易金融の促進および直接的には に徹して日本商品の国際信用を高めることが必要である︒

西

技術の自主的振興体制を確立し︑ 機関の綜合的一元化とその行政︑等による科学 次に﹁品質の問題﹂に関する要点としては︑

を意味するのではない︶の原動力である︒したがって海外技術の導入も必要であるが︑

民主的管理および研究資金︵研究投資︶の裏付け︑ と改府

のそれに対する助成措置の必要はもとよりであるが︑特に必要なのは科学技術の自主的振興体制の確立である︒いう

までもなく科学技術は社会革新︵経済発展を基礎的下部構造とする人間革新︑生活革新︑組織革新を社会革新という︒社会革命

自由と公開を原則とする各研究

科学教育の普及︑

その研究成果を採用する各企業︵大企業はもとより中小企業︶が品質本位の生産原則

最後に﹁資本力の問題﹂に関する要点としては︑企業の体質改善の一要素である資本構成の充実︑端的にいえば自

己資本充実対策と輸出競争に堪えうる資本力︵延べ払い方式と円借款方式︶に対する財政・金融の裏付けとその正常化が

必要である︒自己資本充実対策としては︑①増資の促進による外部資金の自己資本化の強化︑②設備の償却年限の短

縮︑経済的耐用年数に重点をおいた償却制度の確立︑③金利水準の引下げによる金利負担の軽減︵企業の内部蓄積力の

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