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池田 大輔, 1

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池田 大輔, 1

B–21

塩基性熱水を用いたデカブロモジフェニルエーテルの脱臭素化 Hydrothermal debromination of decabromodiphenyl ether

in basic solution

応用化学専攻 池田 大輔 IKEDA Daisuke

緒言

臭素系難燃剤であるデカブロモジフェニルエーテル

( DBDE)は家電など様々な製品の筐体に混練されて

いる

1,2)

。従来、これらの DBDE 混練製品は、焼却や 埋め立てにより廃棄されているが、臭素系ダイオキシ ン分子の発生や DBDE の溶出により、大気や土壌の汚 染が懸念されている

3)

。従って、従来の廃棄処理の前 に、筐体から DBDE など臭素系難燃剤、あるいは臭素 イオンを除去する必要がある。

当研究室では、水熱反応を利用してハロゲン化合物 からの脱ハロゲン化を推進している

4)

。ポリ塩化ビニ ルの脱塩素化反応ではアンモニア添加熱水により、効 率的に塩素を除去できている

4)

。そこで本研究では、

水熱条件下において、塩基性試薬の添加による DBDE からの脱臭素化を検討した(図 1) 。

1. 実験

ステンレス製回分式反応器 (内容積3.4 mL) にDBDE

( 30 mg)と蒸留水、あるいは塩基性水溶液(0.6 mol/kg)

をそれぞれ 2.0 g を封入した。塩基性試薬として、アン モニア、NaOH、メチルアミンを使用した。ここで、

0.6 mol/kg の濃度では、 DBDE に対する塩基性試薬の モル比は 40 になる(図 1) 。反応器は溶融塩浴に浸し、

220~300 ℃で 120 min 反応させた。反応器を水冷し反 応を停止させた。反応物(生成物)はろ過し、水溶性 分(ろ液)と固体残渣に分けた。ろ液中の臭素イオン 濃度は、イオンクロマトグラフィーで定量した。加え

て、ろ液の pH を測定した。固体残渣は、赤外吸収ス ペクトル(FT-IR)で KBr を用いて測定した。脱臭素 化率は、以下の式を用いて計算した。

] 100 [ ]

[%]  [ 

g g

  反応前試料中の臭素量

ろ液中の臭素量  脱臭素化率

2. 結果と考察

300 ℃ における、 水及び種々の塩基性水溶液におけ る脱臭素化率の経時変化を図 2 に示す。何も添加しな い水のみの水熱反応では、120 min の反応では脱臭素 化が起こらなかった。一方、塩基性水溶液では、 30 min の反応で、脱臭素化が確認された。特に、メチルアミ ンと NaOH 水溶液 は、アンモニア水溶液よりも脱臭 素化が進行し、 90 min で約 80% の脱臭素化率を示した。

この塩基性水溶液の違いを調査するために、 pH に着目 した。アンモニア、メチルアミン、NaOH 各水溶液の 室温における pH は、 11.0、 12.4、 13.7 であった。蒸留 水の室温での pH は、 6.8 である。メチルアミン水溶液 と NaOH 水溶液を比較すると、メチルアミン水溶液の

図 1. 水熱条件下における塩基性試薬を添加したときの

DBDE の脱臭素化の模式図。

塩基性試薬 O

Br Br Br

Br Br Br Br

Br Br Br

H

2

O

O

+ Br

図 2. 300 ℃における水と塩基性水溶液(0.6 mol/kg) を利用した DBDE の脱臭素化率の経時変化。

0 20 40 60 80 100

0 30 60 90 120

脱臭素化率

[%]

反応時間[min]

0.6 mol/kg メチルアミンaq 0.6 mol/kg NaOHaq 0.6 mol/kg アンモニアaq

(2)

池田 大輔, 2

pH は低い。 90 min までの反応では、脱臭素化率は同

程度であるが、 60 min までの反応では、常に高い脱臭 素化率を示した。塩基性が強いほど脱臭素化は高くな ると言えるが、単純に pH のみの効果ではないことも 示唆される。また、 90 min 以降の反応では、メチルア ミン、NaOH 各水溶液ともに脱臭素化率は減少してい る。ここで、メチルアミン水溶液における反応後のろ 液(水溶液)の pH の変化に注目した。脱臭素化反応 が進むにつれて pH は低下した。これは、DBDE から 脱離した臭素イオンのため、系中の塩基濃度が低下し ていることが示唆される。また、 90 min 以降の脱臭素 化率の減少と pH の増加も一致している。

メチルアミン水溶液が NaOH 水溶液と比較して、短 い時間で高い脱臭素化率を示したため、メチルアミン 水溶液の反応条件の制御を試みた。脱臭素化率の温度 依存性を図 3 に示す。240 ℃以下では、ほとんど脱臭 素化反応が進行しなかった。 250 ℃では、30 min まで は顕著な変化が見られなかったが、それ以降に反応が 進行し、約 30%の脱臭素化率を示した。260 ℃では、

40 min までは緩やかに脱臭素化が進行したが、それ以

降急激に反応し、 60 min で 60%の脱臭素化を示し、そ の後脱臭素化率は 70%まで到達した。 280 ℃における 脱臭素化率の挙動は、300 ℃の場合とほとんど同様で あった。従って、280 ℃以上であれば、比較的短時間 で高い脱臭素化率を実現できる。また、この温度は DBDE の融点(304 ℃)に近い。これは、反応液中に DBDE が溶解することが脱臭素化の促進には重要であ ることを示唆する。しかしながら、260 ℃以上のいず れの条件においても 90 min 以降脱臭素化率は減少し た。

すべての条件で固体残渣が確認されたが、脱臭素化 率が高い条件と低い条件において、残渣の性状(反応 前の DBDE は白色粉末)が異なっていた。低い条件の 場合は、ほぼ未反応の DBDE であった。一方で、脱臭 素化率が高くても固体残渣はあるが、これらは、反応 前 DBDE と全く異なっていた。この固体残渣の FT-IR スペクトルを測定した(図 4) 。反応前の DBDE に存 在する 1070 cm

-1

付近の芳香族臭化物の C–Br バンド、

さらに 1300 cm

-1

付近の C–O バンドが反応時間ととも に徐々に消失している。これは、 DBDE から臭素が脱

離し、またエーテル結合も解裂していることを示唆す る。また、反応前 DBDE において観測されていた1500 cm

-1

付近の芳香族 C=C 伸縮振動が反応時間の経過と ともに 1600 cm

-1

付近にシフトしていることから置換 基の変化も示唆される。

3. 結言

水熱反応を利用して DBDE の脱臭素化に成功した。

DBDE の脱臭素化は、 単純な熱水中では進行しないが、

塩基性試薬を添加することにより進行する。その中で もメチルアミンを添加することにより、 90 min で最大

80%の脱臭素化率を達成した。また、FT-IR により

DBDE からの脱臭素化が確認できた。

参考文献

1) S. Sakai et al., J. Mater. Cycles Waste Manag., 8 (2006) 56. 2) 難燃剤データ集 日本難燃剤協会編 (2015) 3) M.

Bahadir et al., Environ. Int., 29 (2003) 711. 4) K. Hashimoto et al., J. Mater. Sci., 43 (2008) 2457.

図 3. 300 ℃における各反応温度における、DBDE の 脱臭素化の経時変化。

0 20 40 60 80 100

0 30 60 90

脱臭素化率[%]

反応時間

[min]

300℃

280℃

260℃

250℃

240℃

220℃

図 4. 300 ℃-0.6 mol/kg メチルアミン水溶液での 各反応時間における固体残渣の FT-IR スペクトル。

500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000

透過[%]

波数 [cm-1]

DBDE

120 min 90 min 60 min 30 min C–Br

C–O-C C=C

図 3. 300 ℃における各反応温度における、DBDE の 脱臭素化の経時変化。 020406080100030 60 90脱臭素化率[%]反応時間[min]300℃280℃260℃250℃240℃220℃ 図 4

参照

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