要旨
2000年から2014年まで標本数4,843件の日本企業の社債発行データをもと に,社債発行需要関数をモデル化し,どのような要因が社債発行に影響を及ぼ しているかを回帰分析手法にもとづき調べた。社債発行においては,資本的支 出やキャッシュフローという企業自らの資金需要要因よりも,応募者利回りや トービンのQというマーケット要因が強く働き,企業は社債市場をタイミン グでとらえており,企業の現預金や有利子負債ポジションはあまり関係がない という結果が得られた。このことは,日本企業は社債発行を銀行借入を補完す る手段として位置付けており,社債発行額はマーケットのタイミングに依存す ることを示唆している。
キーワード
社債発行需要関数,リーマンショック,応募者利回り,企業の資金需要,社 債市場の活性化,メインバンク制
1.はじめに
一般的に企業は自己資金,負債,増資という順番で資金調達手段を検討する。
この経験則に対し,Myers and Majluf (1984)は企業と資金提供者との情報の非
日本企業の社債発行要因
1高 見 茂 雄
1 本研究はJSPS科研費25380483の助成を受けたものである。
対称性を理論的基盤においたペッキングオーダー仮説を提起した。それが契機 となり研究は蓄積されてきた。Fazzari et al. (1988)はこの順番で調達コストが 増大することや,負債の中でも銀行借入と社債ではマーケットが異質であるこ とを財務制約度の観点から指摘した。調達手段の種類を発展させた研究として,
Denis and Mihov(2003)とArena(2011)は負債区分を銀行借入,公募債,私募債,
144a私募債などに細分化し,クレジットクオリティーの観点から議論している2。
またFloros and Sapp(2012)は公募増資と第三者割当増資の違いを情報の非対
称の観点から論じている。また自己資金の価値としてはAcharya et al.(2007) をはじめとする将来の予備的動機を現預金保有の価値に見出す研究もある。
このように,資金調達手段ごとペッキングオーダー仮説は研究されてきたが,
必ずしも企業と資金提供者との間の情報ギャップだけでは説明はつかない。銀 行借入,社債,新株発行の順で、情報ギャップは増大するとの想定は妥当では あるが,日本の上場企業資金調達事例を調べると,銀行借入件数が他より圧倒 的に多い3。また,理論通りならば,長期銀行借入の借入限度まで借入れた段 階で社債発行や新株発行が検討され,社債発行は長期銀行借入と同時,新株発 行は二者と同時に実行されるはずである。しかし,実際のデータでは長期銀行 借入を伴わない事例もみられる4。銀行借入と社債発行や新株発行が異なるの は,資金提供者が相対で交渉する銀行とマーケットで出会う投資家とで異なる 点である。前者では長期にわたるリレーションシップバンキングにもとづき,
継続的モニタリングにより公開情報以外の情報ももたらされるのに対し,後者 では単発的取引であり,公開情報のほかにマーケットでさまざまな思惑やノイ
2 Kale and Meneghetti (2011)は負債間の相違に焦点をおき,ペッキングオーダー研究をレ
ビューしている。
3 高見(2016)が分析対象とする11年1,555社標本数17,105件のデータでキャッシュフロー計算 書項目によると,資金調達の実績は,長期銀行借入10,501件,社債発行2,461件,新株発行2,422 件である。
4 前述のデータでは長期銀行借入を伴わない社債単独発行事例が241件,長期銀行借入も社 債発行も伴わない新株発行事例が689件ある。
ズが飛び交う側面もある。このように社債発行や新株発行では,単に企業と資 金提供者との情報ギャップだけでなく,マーケットの特性や制度も影響を及ぼ していることが考えられる。
本論文ではこのうち,社債発行に焦点をおき,企業が社債を発行する要因を 明らかにすることを目的とする5。同じデットといえども,銀行借入と社債発 行では企業の資金調達要因は異なるはずである。高見(2016)が示したように,
メインバンク制が依然として支配的な日本では,上場企業で信用不安のない企 業であれば,借入限度(デットキャパシティー)はあまり意識されず,銀行側 でもBIS規制などの事情で個別企業向けに資金供給量を抑制することはあま りない。企業は社債をマーケットのよいとき,タイミングを見ての資金調達手 段としてとらえていると考えられる。これらを検証する手段として,企業側が 想定する社債発行需要関数をモデル化し,回帰分析で係数の有意性や弾力性を 検討する。
本論文の構成は以下の通りである。第2節では日本の社債発行状況を検討す る。第3節では,投資家側の想定する社債発行供給関数と企業が想定する需要 関数をモデル化し,最終的に需要関数を推定する手法を検討する。第4節では 分析対象データを概観した後,需要関数の回帰分析を行う。第5節では分析結 果が表す意味を考察し,第6節では結論と今後の課題について述べる。
2.日本企業の社債発行状況
日本企業の社債発行状況を示すデータは,集約データであれば,日本証券業 協会が提供する「公社債発行額・償還額」をはじめとし,多くの文献・資料で 利用可能である。しかし,それではデータでは個々の社債発行案件ごとのミク ロ単位で分析はできない。また,社債発行につきミクロ単位のデータを活用し た分析はほとんど見られない。その中で,日本経済新聞社デジタルメディア局
5 新株発行要因については今後の研究テーマとする。
が提供する「NEEDS企業ファイナンス関連データ」の「社債情報(普通社債,
転換社債)」6は,個々の発行案件ごと,発行日,償還期日,発行市場,応募者 利回りなど項目の種類が多く,かつ1970年から収録されていることから,本 研究に大いに役立つと期待できる。本論文では,このデータベースから,2000 年1月から2014年12月までの上場企業の社債発行事例,普通社債9,783件,
転換社債1,249件,計11,032件を対象に日本企業の社債発行状況を概観し,そ
のデータの一部を用い日本企業が社債を発行する要因を分析する。
2.1 日本企業の社債発行状況概観
表1は対象データベースを集約して得られた社債発行状況を普通社債と転換 社債に分け暦年別に示している。
表 1 社債発行状況概観
暦年
資金調達額 応募者利回り 年限
普通社債 転換社債 普通社債 転換社債 普通社債 転換社債 件数(百万円)平均値 件数 (百万円)平均値 件数 平均値(%) 件数 平均値(%) 件数 平均値(年) 件数 平均値(年)
2000 657 14,376 64 10,294 609 1.96 64 0.56 654 6.07 63 4.90 2001 660 12,658 76 11,874 611 1.21 76 0.59 657 5.91 76 4.62 2002 831 8,217 58 21,927 823 0.92 58 0.21 830 5.26 54 5.44 2003 1,290 4,998 92 11,590 1,265 0.80 92 0.07 1,290 5.36 92 5.40 2004 1,071 4,864 226 10,095 954 0.99 226 0.01 1,071 5.32 226 4.52 2005 1,012 6,340 179 7,393 906 0.96 179 0.04 1,012 5.50 179 3.13 2006 834 7,321 182 14,468 767 1.49 182 0.13 831 5.80 180 4.10 2007 807 9,499 77 11,258 785 1.68 77 0.22 807 5.97 77 4.28 2008 478 14,360 48 27,392 466 1.61 48 0.78 477 6.41 48 3.99 2009 358 22,487 51 9,790 345 1.58 51 1.31 356 7.15 51 3.53 2010 380 19,351 34 13,012 376 1.38 34 1.56 379 7.38 33 3.97 2011 316 18,055 13 25,999 314 1.23 13 0.42 315 6.69 13 3.70 2012 340 16,821 29 10,634 337 0.85 29 0.39 339 6.41 29 4.34 2013 382 19,206 57 12,199 379 0.94 57 0.15 382 6.59 57 5.17 2014 367 18,686 63 15,895 363 0.70 63 0.17 366 7.47 63 4.78 通年 9,783 10,667 1,249 12,493 9,300 1.19 1,249 0.28 9,766 5.94 1,241 4.33 注 資金調達額欄のデータ件数が分析活用できる最大限度を示している。応募者利回りの普
通社債件数で資金調達額件数より483件減少するのは,変動利付債やスワップ付きでない 外貨建て債等を,年限でも17件少なくなっているのは年限を示すことのできない永久債 を反映している。
まず,資金調達額欄で発行件数のトレンドを見ると,2003年から2005年 の発行件数の多かった時期(普通社債で1,000件超,転換社債で100件弱から 200件超)から,2008年のリーマンショックで激減しており(普通社債で478件,
転換社債で48件),その後も低い水準で推移している。しかし,調達額平均値 で見ると,普通社債ではリーマンショック後むしろレベルは約200億円に切り 上がっている。一方,件数が少ない転換社債では暦年ごと平均調達額の変動は 激しい7。これらは,時期ごとに頻繁に起債する発行企業や業種が入れ替わっ ていることを示唆している。代表的な事例は,2000年には自己資本増強のため,
銀行・保険会社で永久債の発行が多かったこと,2011年の東日本大震災以降 東京電力の起債がなくなったことである。なお,t検定の結果,資金調達額で は普通社債も転換社債もグループ間で平均値の差があるとは言えなかった。
次に,応募者利回り欄を見ると,暦年ごと利回り水準は普通社債が転換社債 グループを上回っており,t検定結果でも,2010年を除き平均値の差がないと いう仮説は棄却されている。転換社債はオプション価値を含むため当然のこと である。暦年ごとのトレンドを見ると,普通社債では低金利時代が続いている とはいえ,2008年のリーマンショック以降のレベルは2003年から2005年の 大量発行時期のレベルよりは低くなっていない。このことは,資金調達の必要 性から,平均資金調達額が高止まりしていることと合わせ,投資家寄りの発行 条件で決まる傾向にあることを示唆している。一方,転換社債では件数も少な いことから顕著な傾向は見られない。
6 本論文では当該データベースでの欠落個所,誤入力と思われる個所を適宜修正し,できる かぎり多くの発行事例で分析できるように準備した。当該データ項目には格付や資金使途な ど魅力的な項目もあるが,データ欠落が多く,他のソースで補うこともできないため割愛し た項目もある。分析対象期間にはワラント債の発行事例はないので,分析対象からは除外し ている。
7 なおこれらの平均資金調達額のトレンドは日本証券業協会「公社債発行額・償還額」(暦 年別)とおおむね一致している。本件データと日本証券業協会との乖離は,本件データが日 本企業が外国で起債した案件や私募債を含む点,後者がNHK債,投資法人債,東京メトロ 債など発行体が上場会社でない債券も含むことによる。
最後に,年限を見ると,暦年ごと普通社債が転換社債グループよりも2002/3 年を除き長い。t検定結果でも,2002/3年を除き平均値の差がないという仮説 は棄却されている。これは早期に転換を図ろうという企業の意図を反映してい ると考えられる。普通社債のトレンドとして,リーマンショック以降,年限が 長期化している。これも安定的資金の確保が背景にあり,平均利回りが高止まっ ていることと関連している。一方,転換社債では件数も少ないことから顕著な 傾向は見られない。
表1だけでも,応募者利回りや年限の情報が得られ,本件データベースの価 値はある。しかし,ミクロ単位のデータベースならではの特徴は,各項目の分 布状況や相関が得られる点にあり,単なる件数や平均値だけの集約情報よりも 豊かな情報を与えている。
表2は普通社債と転換社債を合わせ,代表値と四分位などの分布状況を示し ている。
資金調達額を見ると,8.8百万円(鈴縫工業,建設業;私募,工場抵当)から,
4,000億円(ソフトバンク,無担保,工場抵当;この条件で3件事例あり)ま
で,広い範囲で分布している。また,中央値が50億円に対し,平均値が109 表 2 主要項目代表値
資金調達額 (百万円)
応募者
利回り(%) CBダミー 年限 募集の方法
ダミー 保証ダミー 担保ダミー
標本数 11,032 10,549 11,032 11,007 11,032 11,032 11,032
平均値 10,900 1.08 0.11 5.76 0.48 0.35 0.08
標準偏差 19,900 0.84 0.32 3.56 0.50 0.48 0.27
最小値 8.8 -1.22 0 0.08 0 0 0
第1四分位 500 0.55 0 4.00 0 0 0
中央値 5,000 0.97 0 5.00 0 0 0
第3四分位 15,000 1.48 0 7.00 1 1 0
最大値 400,000 11.00 1 60.08 1 1 1
CBダミー :0が普通社債,1が転換社債を表す。
募集の方法ダミー:0が私募,1が公募を表す。
保証ダミー :0が無保証,1が銀行や政府の保証付き起債を表す。
担保ダミー :0が無担保,1が工場抵当や一般担保(電力債)などの担保付き社債を表す。
なお,転換社債はすべて無担保発行である。
億円であることから,第3四分位より上位の大口発行の寄与が大きく,下方の 密度が大きい偏った分布形状をしている(図1)。応募者利回りも-1.22%(ダ ヴィンチ・ホールディングス,円建てユーロ市場転換社債)から11%(マネッ クスグループ,円建てユーロ市場普通社債)まで広く分布するが,資金調達額 ほどには偏った分布は示していない(図2)。なお,マイナスの利回りを示すデー タはすべて転換社債である。(なお,図1~3で数値の大きいはずれ値件数は ごく少数なので,グラフでは観察できない。広く分布することを伝えている。)
年限でも0.88年(マネックスグループ,円建てEURO市場普通社債)から,
60.08年(東芝,私募普通社債,工場抵当担保付)まで広く分布するが,6年
前後の階級で頻度がいちばん大きい(図3)。
図 1 分布形状 (資金調達額) 図 2 分布形状(応募者利回り)
図 3 分布形状(年限)
募集の方法以下の項目はダミー変数を示しているので,平均値が1をとる確 率を示している。公募と私募はほぼ半々,保証付きの場合はほぼ3分の1,担 保付きの場合は10分の1くらいを示している。
これまで表2の代表値を概観したが,代表値は個別項目の分布状況を示すに 限られており,項目相互の関係は分からない。そこで,表3で相関係数を示す。
資金調達額を軸とすれば,公募で無保証の発行事例で大口金額の発行の傾向 がうかがわれる。また,公募は無保証と結びつく傾向にある。他の項目間で目 立った相関はうかがわれないものの,資金調達額と応募者利回りや年限では正 の相関を示している。また,応募者利回りと年限との間も正である。これらか ら,表1で考察したように,企業は安定的な資金調達の必要性から多くの資金 や長い期間を獲得するためには,投資家寄りの高い応募者利回りに是認しなけ ればならないことを裏付けている。ただし,企業側からの資金調達ニーズから は,本来は高い利回りなら発行額を少なくするはずである。当該データは需要 と供給が均衡した結果を示しているに過ぎない。本論文の課題である企業の社 債発行要因を考察するにあたっては需要関数をどう考えることが課題であり,
第3節ではその問題を扱う。
表 3 相関係数
ln資金 調達額
応募者
利回り CBダミー 年限 募集の方法
ダミー 保証 ダミー
担保 ダミー
ln資金調達額 1
応募者利回り 0.142 1
CBダミー 0.059 -0.345 1
年限 0.349 0.311 -0.150 1
募集の方法 0.821 0.213 -0.146 0.367 1
保証 -0.724 -0.176 -0.253 -0.220 -0.669 1
担保 0.180 0.083 -0.108 0.157 0.174 -0.211 1
資金調達額は分布状況を勘案し対数値に変換している。標本数は10,536
2.2 普通社債の発行状況
第3節に入る前に,普通社債と転換社債に分けて詳しくデータをまとめてお く。表4は普通社債の発行状況を暦年別に,発行市場,募集の方法,保証の有 無,担保の有無でとらえている。
発行市場を見ると,圧倒的に日本市場での発行が多いが,2000年にユーロ 市場での発行が83件と顕著である。この時期信販会社・消費者金融会社で34 件,銀行で6件の起債が続いた。また,ユーロ市場やその他市場では件数が少 ない分,大口発行の寄与が多く平均残高では日本市場より大きくなる傾向にあ る。ユーロ市場では,2004年東京電力1,343億円,2006年新生銀行906億円,
東日本旅客鉄道783億円,その他市場で,2000年三菱東京UFJ銀行(米国市 場),2013年ソフトバンク2,435億円(米国市場)の寄与が大きい。表2で私募,
公募の割合は半々と指摘したが,2008年のリーマンショック以降私募の件数 は300件以上だったものが,2010年以降は10件台に激減し,そのために普通
表 4 普通社債発行状況(暦年別)
発行市場 募集の方法 保証の有無 担保の有無
暦年
ユーロ市場 日本市場 その他市場 私募 公募 無保証 保証付 無担保 担保付 合計 件数
平均 調達額
(百万円)
件数 平均 調達額
(百万円)
件数 平均 調達額
(百万円)
件数 平均 調達額
(百万円)
件数 平均 調達額
(百万円)
件数 平均 調達額
(百万円)
件数 平均 調達額
(百万円)
件数 平均 調達額
(百万円)
件数 平均 調達額
(百万円)
件数 平均 調達額
(百万円)
(1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10) (11) (12) (13) (14) (15) (16) (17) (18) (19) (20) (21) 2000 83 4,477 573 15,448 1 221,700 260 5,450 397 20,221 600 15,689 57 14,376 511 15,123 146 11,762 657 14,376 2001 44 3,618 615 13,191 1 82,500 331 2,685 329 22,690 516 15,977 144 12,658 542 11,340 118 18,711 660 12,658 2002 25 6,205 806 8,280 576 1,335 255 23,763 450 14,614 381 8,217 749 6,743 82 21,688 831 8,217 2003 21 2,287 1,269 5,043 959 956 331 16,709 487 11,917 803 4,998 1,234 4,107 56 24,629 1,290 4,998 2004 18 28,994 1,053 4,451 808 824 263 17,276 360 13,205 711 4,864 1,029 4,226 42 20,474 1,071 4,864 2005 8 18,939 1,003 6,245 1 300 723 943 289 19,842 382 15,463 630 6,340 969 5,443 43 26,547 1,012 6,340 2006 8 48,991 824 6,721 2 87,825 545 1,175 289 18,911 347 16,541 487 7,321 787 6,388 47 22,950 834 7,321 2007 18 13,167 788 9,350 1 60,500 424 1,020 383 18,885 430 17,056 377 9,499 745 7,871 62 29,060 807 9,499 2008 8 5,175 470 14,516 179 1,017 299 22,347 326 20,340 152 14,360 403 11,622 75 29,067 478 14,360 2009 22 6,176 336 23,555 36 11,951 322 23,665 330 24,065 28 22,487 312 21,604 46 28,478 358 22,487 2010 15 17,225 361 18,584 4 96,511 14 4,498 366 19,919 360 19,843 20 19,351 327 18,924 53 21,983 380 19,351 2011 14 19,207 298 17,531 4 53,064 13 335 303 18,816 298 18,846 18 18,055 309 17,477 7 43,571 316 18,055 2012 10 13,438 327 16,223 3 93,248 13 19,267 327 16,723 329 17,192 11 16,821 317 16,227 23 25,000 340 16,821 2013 16 7,673 361 18,556 5 103,100 10 401 372 19,711 366 18,866 16 19,206 344 18,348 38 26,974 382 19,206 2014 12 12,387 351 18,497 4 54,159 9 594 358 19,141 353 17,266 14 18,686 334 18,437 33 21,212 367 18,686 通年322 9,772 9,435 10,499 26 82,713 4,900 1,500 4,883 19,866 5,934 16,812 3,849 10,667 8,912 9,553 871 22,072 9,783 10,667 発行市場,募集の方法,保証の有無,担保の有無のそれぞれのカテゴリーで件数の合計は合計欄と一致する が(例 (2)+(4)+(6)=(20)),平均調達額は件数重みの加重平均が合計欄の平均調達額に一致する。また,合計 欄の計数は表1の資金調達額の普通社債欄と一致する。
社債ひいては社債全体の発行件数の減少につながっている。おおむね同じこと が,保証付や担保付社債の減少につながっており,リーマンショック以降は一 定水準以上の信用力や投資家の支持がなければ普通社債発行は難しくなってい ることを示唆している。
まず,(21)欄の合計欄を見ると,500件を超える実績がある業種は,電気機器,
電気・ガス業,陸運業,卸売業,小売業,その他金融業,不動産業であり,設 表 5 普通社債発行状況(業種別)
発行市場 募集の方法 保証の有無 担保の有無
業種 対象 社数
ユーロ市場 日本市場 その他市場 私募 公募 無保証 保証付 無担保 担保付 合計 件数
平均 調達額
(百万円) 件数
平均 調達額
(百万円) 件数
平均 調達額
(百万円) 件数
平均 調達額
(百万円) 件数
平均 調達額
(百万円) 件数
平均 調達額
(百万円) 件数
平均 調達額
(百万円) 件数
平均 調達額
(百万円) 件数
平均 調達額
(百万円) 件数
平均 調達額
(百万円) (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10) (11) (12) (13) (14) (15) (16) (17) (18) (19) (20) (21) (22) 水産・農林業 3 5 1,700 5 1,700 1 5,000 4 875 5 1,700 5 1,700
鉱業 3 20 733 20 733 5 640 15 763 15 763 5 640 20 733 建設業 76 11 2,430 326 4,709 239 820 98 13,939 140 10,140 197 723 328 4,752 9 376 337 4,635 食料品 54 1 1,000 225 11,070 1 50,010 62 462 165 15,231 176 14,355 51 299 218 9,914 9 42,279 227 11,197 繊維製品 25 2 11,000 108 3,076 87 853 23 12,174 40 7,838 70 581 106 3,320 4 550 110 3,220 パルプ・紙 15 91 9,015 31 1,045 60 13,133 57 10,721 34 6,156 90 9,104 1 1,000 91 9,015 化学 84 3 3,043 370 7,746 173 1,156 200 13,375 253 11,186 120 375 367 7,823 6 650 373 7,708 医薬品 15 48 14,485 2 119,200 30 8,459 20 34,000 28 32,974 22 477 48 19,424 2 700 50 18,675 石油・石炭製品 9 65 11,658 13 5,446 52 13,212 63 11,843 2 5,850 65 11,658 65 11,658
ゴム製品 11 68 9,895 21 802 47 13,957 48 13,875 20 343 68 9,895 68 9,895
ガラス・土石製品 32 1 718 148 6,114 87 570 62 13,806 76 11,494 73 440 140 6,410 9 911 149 6,078 鉄鋼 20 2 2,000 186 12,859 42 3,090 146 15,521 139 12,730 49 12,781 185 12,942 3 467 188 12,743 非鉄金属 19 1 5,000 109 8,381 38 1,067 72 12,194 86 10,581 24 358 109 8,426 1 100 110 8,350 金属製品 34 3 2,141 115 1,918 106 537 12 14,167 28 6,701 90 437 116 1,954 2 115 118 1,923 機械 97 6 3,690 417 5,463 274 792 149 13,982 223 9,778 200 599 407 5,638 16 347 423 5,438 電気機器 124 6 2,901 562 13,602 330 1,732 238 29,791 317 23,731 251 555 562 13,627 6 600 568 13,489 輸送用機器 52 4 1,482 250 16,282 102 1,270 152 25,967 176 22,744 78 944 254 16,049 254 16,049 精密機器 24 4 1,875 87 6,719 63 2,810 28 14,821 54 10,829 37 197 91 6,506 91 6,506 その他製品 54 2 1,619 231 2,700 199 737 34 14,129 65 7,896 168 677 229 2,732 4 363 233 2,691 電気・ガス業 20 39 8,238 762 24,052 40 2,725 761 24,362 797 23,390 4 1,750 128 15,207 673 24,818 801 23,282 陸運業 42 42 7,035 602 12,880 138 1,661 506 15,454 547 14,106 97 3,432 632 12,334 12 21,172 644 12,498 海運業 8 3 3,000 64 10,418 30 672 37 17,719 41 16,234 26 390 67 10,086 67 10,086
空運業 5 35 10,951 12 1,108 23 16,087 25 13,880 10 3,630 35 10,951 35 10,951
倉庫・運輸関連業 25 115 1,666 88 470 27 5,565 45 3,557 70 451 102 1,834 13 348 115 1,666 情報・通信業 114 13 26,811 427 17,865 4 89,614 291 1,029 153 52,524 197 36,234 247 4,848 418 15,581 26 70,109 444 18,774 卸売業 134 13 7,595 823 6,363 2 41,582 492 740 346 14,609 436 11,674 402 818 820 6,604 18 200 838 6,466 小売業 187 7 3,072 823 2,253 740 672 90 15,311 198 7,869 632 502 801 2,325 29 460 830 2,260 銀行業 76 13 31,816 349 26,509 2 127,100 31 40,502 322 25,522 364 27,251 364 27,251 364 27,251 証券、商品先物取引業 19 99 8,314 146 28,207 6 103,500 38 424 213 26,039 222 25,004 29 395 249 22,338 2 100 251 22,161 保険業 8 3 90,038 15 25,640 5 36,801 13 36,208 16 40,821 2 790 18 36,373 18 36,373 その他金融業 39 33 10,641 594 14,622 9 60,567 108 3,786 528 17,372 598 15,923 38 1,571 636 15,065 636 15,065 不動産業 102 7 4,736 767 5,212 498 1,275 276 12,303 362 10,209 412 813 772 5,218 2 1,100 774 5,208 サービス業 140 4 7,445 482 1,567 456 915 30 12,260 111 4,631 375 722 467 1,669 19 295 486 1,615 1,670 322 9,772 9,435 10,499 82,713 4,900 1,500 4,883 19,866 5,934 16,812 3,849 1,194 8,912 9,553 871 22,072 9,783 10,667 (1)欄の業種は東京証券取引所が用いている区分。(2)の対象社数とは本件データベースの起債事例のうち同 一企業で重複を除いた件数を表す。業種ごと上場会社の数は異なるが,おおむね対象社数の多い業種が普通 社債市場を資金調達手段ととらえているといえる。
備投資需要が恒常的にあり,銀行からの融資だけでは必ずしも賄いきれないと いう事情が示唆される。これらの業種を対象に,カテゴリー別件数の割合を見 ると,必ずしも表4で検討した通りにはなっていない。電気機器業,卸売業,
小売業,不動産業では私募・保証付,電気・ガス業では公募・担保付,陸運業 では公募,その他金融業ではユーロ市場・公募の割合が大きい。これらの業種 以外にも,証券、商品先物取引業はユーロ市場・公募,銀行業では公募の割合 が顕著である。これらは,業種を構成する企業の規模や信用力または法規制に よってアクセスする市場と投資家の要求する条件が異なっていることを示唆し ている。
2.3 転換社債の発行状況
表6と7は第2.2節で検討した普通社債の状況と対応させ,転換社債の発行 状況を示している。
表 6 転換社債の発行状況(暦年別)
発行市場 募集の方法 保証の有無
暦年
ユーロ市場 日本市場 その他市場 私募 公募 無保証 保証付 合計 件数 平均
調達額
(百万円)
件数 平均 調達額
(百万円)
件数 平均 調達額
(百万円)
件数 平均 調達額
(百万円)
件数 平均 調達額
(百万円)
件数 平均 調達額
(百万円)
件数 平均 調達額
(百万円)
件数 平均 調達額
(百万円)
(1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10) (11) (12) (13) (14) (15) (16) (17) 2000 34 8,345 26 13,744 4 4,441 40 4,883 24 19,313 64 10,294 64 10,294 2001 38 14,376 29 11,435 9 2,724 53 7,611 23 21,696 76 11,874 76 11,874 2002 32 26,006 22 19,453 4 2,906 30 7,652 28 37,222 58 21,927 58 21,927 2003 64 15,324 20 3,617 8 1,650 50 2,242 42 22,719 91 11,663 1 5,000 92 11,590 2004 127 13,284 80 7,001 19 1,813 142 4,806 84 19,037 222 9,194 4 60,129 226 10,095 2005 36 9,068 130 6,867 13 8,015 155 7,013 24 9,846 175 6,751 4 35,500 179 7,393 2006 46 25,963 133 10,758 3 2,667 151 10,503 31 33,781 182 14,468 182 14,468 2007 33 22,050 42 3,028 2 6,000 62 7,659 15 26,133 75 9,691 2 70,000 77 11,258 2008 22 29,791 26 25,362 40 20,645 8 61,125 48 27,392 48 27,392
2009 14 15,121 37 7,773 43 3,840 8 41,768 51 9,790 51 9,790
2010 11 24,636 23 7,453 22 2,928 12 31,500 34 13,012 34 13,012
2011 5 59,600 8 4,998 6 1,248 7 47,214 13 25,999 13 25,999
2012 12 22,583 17 2,199 23 4,343 6 34,750 28 10,925 1 2,500 29 10,634 2013 30 19,929 27 3,609 35 5,135 22 23,437 57 12,199 57 12,199 2014 36 24,922 27 3,859 37 8,717 26 26,110 63 15,895 1 63 15,895 540 18,112 647 8,652 62 3,641 889 7,239 360 25,467 1,237 12,186 12 44,168 1,249 12,493 表4に対応する。ただし,転換社債では担保付起債がないため担保の有無欄は除いている。
まず,転換社債の発行では,ユーロ市場または私募の割合が普通社債と比べ て圧倒的に多い8。リーマンショック以降いったんユーロ市場や私募発行件数 は一桁台に落ち込んだが,その後一定水準まで回復している。これらから,転 換社債の投資家は普通社債と大きく異なっていることが示唆される。
次に,表7で業種別の発行状況を検討する。
表 7 転換社債の発行状況(業種別)
発行市場 募集の方法 保証の有無
業種 対象
社数
ユーロ市場 日本市場 その他市場 私募 公募 無保証 保証付 合計 件数
平均 調達額
(百万円)
件数 平均 調達額
(百万円)
件数 平均 調達額
(百万円)
件数 平均 調達額
(百万円)
件数 平均 調達額
(百万円)
件数 平均 調達額
(百万円)
件数 平均 調達額
(百万円)
件数 平均 調達額
(百万円)
(1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10) (11) (12) (13) (14) (15) (16) (17) (18) 水産・農林業 2 1 3,000 1 12,000 2 7,500 2 7,500 2 7,500
鉱業 1 2 3,000 2 3,000 2 3,000 2 3,000
建設業 32 10 13,340 32 6,703 7 743 43 5,467 6 19,667 48 7,335 1 1,000 49 7,206
食料品 13 10 12,848 8 5,612 12 3,448 6 22,000 18 9,632 18 9,632
繊維製品 11 12 22,708 7 3,491 10 2,294 9 30,444 19 15,628 19 15,628
パルプ・紙 6 1 1,858 5 18,900 2 16,429 4 15,875 6 16,060 6 16,060 化学 28 21 26,451 17 7,235 19 15,410 19 20,299 36 14,957 2 70,000 38 17,854
医薬品 13 4 17,500 13 3,631 1 1,200 13 4,031 5 13,200 18 6,578 18 6,578
石油・石炭製品 1 1 18,000 1 18,000 1 18,000 1 18,000
ゴム製品 2 1 5,000 1 3,000 2 4,000 2 4,000 2 4,000
ガラス・土石製品 10 8 24,250 5 23,040 6 20,867 7 26,286 13 23,785 13 23,785 鉄鋼 12 8 60,375 8 44,500 11 58,091 5 40,000 15 49,267 1 100,000 16 52,438
非鉄金属 10 11 12,466 2 2,700 7 7,714 6 14,754 13 10,963 13 10,963
金属製品 9 6 3,886 5 5,000 8 3,290 3 7,333 11 4,393 11 4,393
機械 50 41 10,013 47 5,080 62 5,223 26 12,520 87 7,113 1 30,516 88 7,379
電気機器 88 77 30,062 60 13,521 5 7,906 82 8,134 60 41,642 142 22,292 142 22,292 輸送用機器 24 11 9,914 22 22,898 15 14,454 18 22,000 33 18,570 33 18,570
精密機器 16 12 25,216 12 1,347 17 5,956 7 31,071 24 13,281 24 13,281
その他製品 14 11 29,727 12 2,767 1 7,000 13 3,400 11 29,364 24 15,300 24 15,300 電気・ガス業 3 3 4,333 2 4,000 1 5,000 3 4,333 3 4,333
陸運業 14 16 22,300 8 11,938 10 17,000 14 20,164 24 18,846 24 18,846
海運業 4 7 37,990 2 2,100 4 13,783 5 43,000 9 30,014 9 30,014
空運業 2 3 60,000 3 60,000 2 40,000 1 100,000 3 60,000
倉庫・運輸関連業 6 5 3,768 6 1,610 2 2,000 12 1,625 1 13,000 13 2,500 13 2,500 情報・通信業 70 54 12,321 81 5,680 15 7,320 128 4,455 22 30,229 148 7,789 2 41,250 150 8,235 卸売業 57 29 10,202 52 9,518 8 2,938 75 7,857 14 16,071 86 8,596 3 25,000 89 9,149 小売業 72 45 15,549 71 5,182 11 1,102 88 2,878 39 21,190 127 8,502 127 8,502
銀行業 36 11 41,171 40 13,126 28 21,748 23 16,042 51 19,175 51 19,175
証券、商品先物取引業 12 12 9,836 9 12,885 5 1,800 24 7,208 2 35,000 26 9,346 26 9,346
保険業 1 1 1,500 1 1,500 1 1,500 1 1,500
その他金融業 18 25 22,275 14 22,436 25 14,391 14 36,515 39 22,333 39 22,333
不動産業 43 47 9,844 44 7,373 3 2,667 75 5,874 19 18,658 94 8,458 94 8,458
サービス業 52 42 5,752 56 3,160 3 1,133 91 3,104 10 13,950 100 4,209 1 1,000 101 4,178 732 540 18,112 647 8,652 62 3,641 889 7,239 360 25,467 1,237 12,186 12 44,168 1,249 12,493 表5に対応する。ただし,転換社債では担保付起債がないため担保の有無欄は除いている。
8 ただし,ユーロ市場と私募を兼ねた事例が際立って多いわけではない。ユーロ市場の件数 540件のうち,公募は222件,私募は318件である。
まず,(17)の合計欄の件数を見ると,80件を超える実績がある業種は,機械,
電気機器,情報・通信業,卸売業,小売業,不動産業,サービス業であり,表 5で検討した業種と構成が異なり,電気・ガス業,陸運業,その他金融業が除 外され,機械,情報・通信業が加えられている。これらの業種では,事業リス クが相対的に高く,投資家はリスクをとる代償として,確定利付きに加えエク イティー的な要素をもつ転換社債を選好することを示唆している。
3.社債発行決定モデル
第2.1節で述べたように,本件データベースは社債発行需要と供給が均衡し 取引が行われた結果を表したものに過ぎない。いわば,企業側の想定する需要 関数と投資家側が想定する供給関数とが発行市場で出会い,資金調達額をはじ めとする発行条件項目が同時決定されたことを示している。現実の社債発行に あっては,媒介する証券会社が引受サイドと流通サイドに分かれ,シンジケー ション団が形成され,ブックビルディングないしは需要予測のもと仮条件が設 定される。この間さまざまなプライストークの動きがあり,最終的に起債案件 はクローズされる。もし,その動きの情報が検知できれば,需要関数と供給関 数は高い精度で推定できるであろうが,それら情報は収集不可能であり,案件 ごとの個別性が高いことから本論文の目的に適合しない。そこで,現実的妥当 性を保ちつつ,本件データベースが活用しやすいようなモデル設定が求められる。
3.1 モデル体系
まず,本論文の目的は企業側の社債発行要因を明らかにすることなので,企 業は投資家側の供給関数を観察した上で,社債をいくら調達するか自らの需要 関数に従い発行額を決定するものとモデル化する。ここで,企業は投資家の提 示する条件のうち何を重視して,資金調達額を決定するかを想定することが問 題になる。第2節で見たように,実際のデータには応募者利回り,年限,発行
市場,募集の方法,保証の有無,担保の有無など多くの条件が提示される。し かし,需要・供給関数をモデル化する際に,量にあたるものは資金調達額であ るが,価格に該当するものとして応募者利回りを考えるのは自然である。そこ で,(1)式の供給関数と(2)式の需要関数を想定する。
投資家は(1)の供給関数に従い,i企業t時点の応募者利回りrit左辺を決定す る。(1)式の右辺は資金調達額xit,発行条件変数ベクトルyitとコントロール変 数zitの線形結合,並びに定数項から構成され,簡単のため線形モデルを想定 する。yitには第2節で検討した発行市場,募集の有無,年限,CBダミーなど,
zitには企業属性や信用度を示す指標などが候補になるが,第4節の回帰分析で は適合度が最大になるよう有意な変数を選択する。企業は(1)式で決定された rit理論値を投資家からの情報ととらえ,左辺の資金調達額xitを(2)式に従い決 定する。(2)式右辺では,企業側は応募者利回りの他の投資家が定めた発行条 件を所与ととらえ反応しない,あるいは定数項に組み込まれているとの単純化 を行っている9。そのためモデルでは発行条件変数ベクトルyitの項がない。現 実的には,企業は投資家サイドの消化状況を見て,たとえば年限を変更するあ るいは違う発行市場を検討することもありうる。しかし,発行条件の変数を増 やせばそれだけ操作変数も必要になり,本件データベースでは対応しがたくな る。そのため,大きな単純化とはいえ分析目的のために,この想定を採用する。
(2)式のzitには(1)式と共通する変数も含むが,企業側の資金ニーズにつなが rit=βsxit+ Σγ′syit+Σδ′szit+Consts (1)
xit=βdr^it+ Σδ′dzit+Constd (2)
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9 Baker and Wurgler (2013)はマーケットと企業経営者との取引でいずれかの主体に非合理的
行動を前提とし整理している。本件の場合,マーケットは企業のファンダメンタルを合理的 に認識するが,企業経営者側に心理的バイアスなどがかかり,利回り情報しか見ないで行動 するとの枠組みで考えられる。Baker and Wurgler (2013, p.403)は負債調達の場合,直前の発 行条件にアンカリングされることを指摘しており,本件の前提の一面を示している。
る資本的支出,トービンのqや代替的資金調達手段など先行研究でよく用いら れている変数の中から,有意なものを選択して行く。この体系で回帰分析によ る推定結果は,係数の符号はβs > 0とβd < 0と予想する。前者は投資家側か ら見て,応募者利回りが高ければより多く社債を購入することを,後者は企業 から見て,応募者利回りが高ければ資金調達額を抑えると考えられ,妥当な想 定といえる。
3.2 データ特性を加味したモデル体系の調整
第3.1節で提示した(1),(2)式は比較的簡単な線形モデルを前提にするが,
本論文の対象データを当てはめるにあたり,いくつかの点で調整を必要とする。
まず,モデル体系では,i企業t期のパネルデータを想定しているが,各企業 の社債発行日は,3月と9月の発行事例が多いものの,1年にわたり広く分布 する。また,各企業の決算期末と一致しないことも多い。一方,コントロール 変数zデータでは日足でとれるデータはごく限られており,企業の決算期に依 存する。そこで,i企業t時点の発行条件データrit, xit, yitに対応するコントロー ル変数zitは,その発行事例を含む決算期のデータを採用する。同一企業同一 決算期で複数の発行があった場合,コントロール変数zitが共通する場合はあ りうる。また,企業の決算期末は3月末が多いものの,毎月ありうるので,構 成するデータはアンバランスト・パネルデータになる10。
次に,先行研究で常套的に処理されているように,規模の影響を抑えるため に,企業の金額データは該当する決算期末の総資産で割った数値を用いる。焦 点となる資金調達額xiは図1が示すように,下方の密度が大きい偏った分布 形状をしていたが,総資産で割ったデータでも偏りが補正されない。そこで,
10コントロール変数は日本経済新聞社NEEDS Financial Quest 2.0, プロネクサス社eolのデー タベースを主に用いた。2003年以前の時価総額を算出する際,東洋経済新報社「株価CD-
ROM2005年度版」,パンローリング社「相場データ集」,日本経済新聞縮刷版で補った。
対数をとった数値xit=㏑(xit/Assetit)を用いる。さらに,銀行業,証券・商品 先物取引業,保険業,その他金融業の所属企業は除き,対応する資金調達額xit
で1期前のデータxit-1が,上場以前などの理由でデータ入手不可の事例は除い た。その結果,表2で最大限11,032件の発行事例標本数は,4,843件に圧縮さ れた。
4.分析結果
第4節では第2節の発行事例データから抽出したデータを第3節のモデル体 系を当てはめ,最終的には(2)式が表す社債発行需要関数の係数を推定し,そ の符号を検証する。その準備として,抽出したデータと採用するコントロール 変数データの代表値を検討する。
4.1 分析対象データ
表8は第4節での回帰分析に用いるデータの代表値を示している。表8の変 数名で資金調達額から年限までが発行条件変数ベクトルyitデータから,社齢 以降は該当する決算期の企業のデータで,採用するコントロール変数zitを表 す。表2で取り上げた担保ダミーは有意な結果を示さなかったので割愛した。
CBダミー,募集の方法ダミー,担保ダミーまでの平均値は表2の平均値とお おむね一致し,第2節で観察した傾向が当てはまる。ここで上げたコントロー ル変数以外にも,現預金残高,有利子負債残高,新株発行額,流動比率,固定 比率,ROE,配当性向,金融機関持株比率など多くの企業業績やガバナンス 変数を調べたがどれも有意な結果を示さなかったので割愛している。
4.2 社債発行供給関数の推定
まず,表8に掲げた変数を採用し(1)式に対応する(3)式を用いて,社債発 行供給関数を推定した。νisを個体効果とするが,Hausman検定により変動効