立正大学経営学会
立正経営論集
第46巻 第1号
U.S.GAAP と IFRS の コンバージェンスの変遷 (1)
榊 原 英 夫
Ⅰ はじめに
Ⅱ ノーウォーク合意(2002年10月)~
MoU
のアップデート(2008年4月)(1) FASBとIASBによるノーウォーク合意(2002年10月)
(2) FASBとIASBによる MoU(2006年2月)
(3) MoU
のアップデート(2008年4月)(以上、本号・第
46
巻1
号)Ⅲ FASBとIASBによる共同声明(2009年
11
月)~コンバージェンスに関する進捗報告書(2012年4月)
⑴ FASBとIASBによる共同声明(2009年
11
月)⑵ コンバージェンスに関する四半期進捗報告書
(2010年4月~2011年4月)
⑶ コンバージェンスに関する進捗報告書(2012年4月)
Ⅳ むすび
U.S.GAAP
とIFRS
のコンバージェンスの変遷(1)
榊 原 英 夫
Ⅰ はじめに
会計基準のコンバージェンスは、双方の会計基準が互に歩み寄ることによっ て、2つの会計基準の差異を最小化することを意味するが、それら2つの会計 基準の完全な一致を意味しない。また、そのコンバージェンスは、2つの会計 基準の単なる差異の解消ではなく、高品質の会計基準に向けての改善をも意味 する。つまり、コンバージェンスは、高品質の会計基準に向けて、双方の会計 基準が互に歩み寄ることを意味する。
たとえば、D.T.ニコライセン([2], pp.8-9)は、コンバージェンスの意味に ついて、「コンバージェンス・プロジェクトは、差異を最小化する試みである と同様改善プジェクトでもある。・・・国際財務報告基準(IFRS)と米国会計 基準(U.S.GAAP)のコンバージェンスについて語る場合、2組の基準が完全 に同一の財務諸表を必ず生み出すであろうことは期待されていない。」と説明 している。また、R. ジョンソン等([23],p.4)は、コンバージェンスの意味に ついて、「コンバージェンスは、同一の基準を必ずしも意味しないことに留意 しなければならない。むしろ、コンバージェンスは、主要な専門的な問題を扱 い、両基準を互いに近付ける取り組みである。コンバージェンスの取り組みの 完成時には、米国会計基準(U.S.GAAP)と国際財務報告基準(IFRS)の間の 差異は最小化されるであろうが、コンバージェンスによって、米国発行体それ 自体が
IFRS
へ転換するわけではないだろう。」と説明している。D.T.
ニコライセン([2], p.8)によって提示された次頁の図は、コンバージェ ンスの意味を的確に表していると考えられる。本論文(U.S.GAAPと
IFRS
のコンバージェンスの変遷(1)・(2))の目的は、U.S.GAAP
とIFRS
のコンバージェンスの変遷を①「ノーウォーク合意(2002年10月)~
MoU
のアップデート(2008年4月)まで」の期間と②「F ASBとIASBによる共同報告書(2009年11
月)~コンバージェンスに関する進捗状況報告書(2012年4月)まで」の期間に大別して、説明す ることである。本号(U.S.GAAPと
IFRS
のコンバージェンスの変遷(1))では、①の期間について説明する。
Ⅱ ノーウォーク合意(2002年10月)~
MoU
のアップデート(2008年4月)
本節では、2002年から2008年までにおける財務会計基準審議会
(Financial Accounting Standards Board-以下、FASBと略称する)と国際会計 基準審議会(International Accounting Standards Board-以下、IASBと略称す る)によるコンバージェンスの変遷を①
FASB
とIASB
によるノーウォーク合 意(2002年10月)、②FASB
とIASB
によるMoU(2006年2月)
、③MoU
のアップデート(2008年4月)を中心に説明する。ここで、MoU
とは、FASB
とIASB
により同意された、2006年から2008
年までにおける米国会計基 準(United States Generally Accepted Accounting Principles-以下、
「U.S.GAAP」と略称する
)
と国際財務報告基準(International Financial Reporting Standards- 以下、「IFRS」と略称する)のコンバンジェンスのためのロードマップに関す る覚書(Memorandum of Understanding)の略称である 。図
コンバージェンス
IFRSs U.S.GAAP
⑴ FASB と IASB によるノーウォーク合意(2002年10月)
証券監督者国際機構
(International Organization of Securities Commissions
-以 下、「IOSCO」と略称する)
は、2000年 5
月17日に、国際会計基準(InternationalAccounting Standard
-以下、「IAS」と略称する)を世界的に認められる会計基 準として容認した1)。このことを背景に、EUは、2002年7
月にEU域内で 公募または上場を行うEU域内の企業が、2005年1
月1
日以降に開始する事 業年度より、原則として国際財務報告基準2)を会計基準として採用すること を決定した3)。このEU
によるIFRS
採用の決定をうけて、FASBとIASB
は、米国コネチカット州ノーウオークにおける
2002
年9
月18
日の合同会議におい て、国内および国境を越えた財務報告に利用しうる、高品質で比較可能な会計 基準の開発に対するコミットメントを相互に承認した「ノーウォーク合意」(文 献[10])を発表した。
FASB
とIASB
は、この合同会議において、(a)実行可能な限り早期に、両者 の現行財務報告基準を完全に互換性のあるものにし、(b)互換性がいったん達 成されれば、それが確実に維持されるように両者の将来の作業プログラムを調 整することに、最善を尽くすことを約束した。また、FASBとIASB
は、互換 性を達成するために、最優先事項として次の事項に合意した。① U.S.GAAPと
IFRS
の間にある様々な差異を除去する目的で短期プロジェ クトに着手する。② 2005年1月1日時点において残るであろう
IFRS
とU.S.GAAP
のその 他の差異について、両者の将来の作業計画を調整することを通して除去す る。つまり、両審議会が同時に取り組むであろう、別々の重要なプロジェ クトについての相互理解を通して除去する。③ 現在着手している共同プロジェクトの推進を継続する。
④ 両審議会のそれぞれの解釈指針設定組織がそれぞれの活動を調和させるこ とを促進する。
要するに 、 ノーウォーク合意は、FASBと
IASB
が将来にわたり互換性を達 成するための協力関係を約束したものである 。 ノーウォーク合意により、IFRSと
U.S.GAAP
とが中長期的にコンバージェンスされる方向性が明らかになった。
⑵ FASB と IASB による MoU(2006年2月)
SEC
委員長・W.
ドナルドソンとEU
域内市場委員・C.
マクリービー([24],p.1)は、ワシントン
D.C. において、2005年4月21日に、SEC
とEU
との間 で相互に関心のある一連の審議事項を検討するために会合し、IFRSを使用し ている外国の発行体(private issuers)
に対するU.S.GAAP
との差異調整表要求 を廃止するに必要なステップを強調した、SECスタッフによって開発された「ロードマップ」 について合意した。このロードマップによれば、遅くとも 2009年までのできる限り早い時期にこの差異調整表要求を廃止するとの目 標が定められている4)。この目標の達成は、会社間および法域間における財務 諸表への
IFRS
の適用と解釈についての忠実性や一貫性に関する詳細な分析とFASB
とIASB
とのコンバージェンス・プロジェクトの継続的な進展に依存し ている。しかしながら、このロードマップには、2つの会計基準間の差異をど の程度コンバージェンスするかが具体的に示されていなかった。そこで、「F ASBとIASBの間おける、2006年から2008
年までのIFRS
とU.S.GAAP
のコンバージェンスへ向けたロードマップに関する覚書(MoU)」(文献[11])
が2006年2月に公表された5)。
FASB
とIASB
は、MoUにおいて、2008年までのFASB
とIASB
によるコ ンバージェンス・プログラムにとっての下記の目標に向けて、作業をすること に同意した。MoUにおけるコンバージェンス・プログラムの目標は、①短期 コンバージェンスと②他の共同プロジェクトとに区分され、説明されている。1)短期コンバージェンス
2008年までの短期目標([11],p.1)は、下記の表・「短期コンバージェン
スに含まれる項目」に記載されているいくつかの特定分野(たとえば、公正価 値オプション)における主要な差異を1つまたは複数の短期的な基準設定プロ ジェクトにより、除去すべきか否かについて結論を下すことであり、その差異 を除去すべきであると結論づけた分野について、その作業を完了するかまたは 実質的に完了することである 。 要するに、「短期コンバージェンス」の目標は、
下記の表に記載されている
10
項目における差異について、①その差異を除去 すべきか否かを決定し、②除去すべきと決定した差異について、その除去作業 を完了することである。2)他の共同プロジェクト
FASB
とIASB([11],p.2)は、研究、審議、協議、デユー・プロセスの必要
性を考慮し、2008年までに多くの他の共同プロジェクトを完成できないこ とを認めている。両審議会は、この期間内における共同プロジェクトの完成で はなく、その共同プロジェクトに関する測定可能な進展が、ロードマップにお いて設定された目標(差異調整表要求の廃止)の達成に寄与するであろうと考 えている。両審議会は、コンバージェンス項目および審議要件の複雑さを考慮 し、他の共同プロジェクトに含まれる
(a)「すでに議題となっているコンバー
ジェンス項目」と (b)「いまだ議題にはなっていないが、すでにリサーチされ ているコンバージェンス項目」に対して、2008年に向けて、次のような目表・ 「短期コンバージェンスに含まれる項目」 ([11],p.2)
FASBが検討すべき項目 IASBが検討すべき項目 公正価値オプション 借入費用
減損(IASBと共同) 減損(FASBと共同)
法人所得税(IASBと共同) 法人所得税(FASBと共同)
投資不動産 政府補助金
研究開発費 ジョイント・ベンチャー
後発事象 セグメント報告
標(下記の表
(a)
および表(b)
の「2008年までに達成が期待される進展」の欄 に記載)を設定した。表 (a)「すでに議題となっているコンバージェンス項目」 ([11],p.3)
コンバージェンス項目
2008
年までに達成が期待される進展 1.企業結合 コンバージェンスされた基準の公表(2007年を予定)公開草案に対する応答として受理したコメント を十分考慮したうえでその内容と発効日を決定 2.連結 高い優先度の審議項目として、コンバージェンスさ
れた基準の完成を目指した作業の実施
3.公正価値測定 現行基準による公正価値要求を適用するさいに首尾 一貫性を提供することを目的とした、コンバージェ ンスされたガイダンスの公表
4.負債と資本の区分 会計基準案に関する1つ以上のデュー・プロセス書 類の公表
5.業績報告 本 プ ロ ジ ェ ク ト の 全 項 目 に 関 す る 1 つ 以 上 の デュー・プロセス書類の公表
6.退職後給付(年金 を含む)
会計基準案に関する1つ以上のデュー・プロセス書 類の公表
7.収益認識 包括的な会計基準案に関する1つ以上のデュー・プ ロセス書類の公表
表 (b) 「いまだ議題にはなっていないが、すでにリサーチされているコンバー ジェンス項目」([11],pp.3-4)
コンバージェンス項目
2008
年までに達成が期待される進展 1.認識の中止 スタッフによる調査活動の結果に関するデュー・プロセス書類の公表
2.金融商品(現行基準の置換) 金融商品の会計に関する1つ以上のデュー
・プロ セス書類の公表
3.無形資産
IASB
によるリサーチプロジェクトの結果 についての検討および潜在的議題プロジェ クトの範囲と時期についての決定4.リース 潜在的議題プロジェクトの範囲と時期につ いての検討および決定
⑶ MoU のアップデート(2008 年 4 月)
FASB
とIASB
は、2008年4
月の共同会議において、共通の高品質な基準の 開発に対するコミットメントを再確認し、MoUプロジェクトの完成に向けて の2011
年までの予定完成日を含む工程(pathway)に合意した。このMoU
プ ロジェクト完成に向けての工程(「2006年2
月の覚書の完成:進捗状況の報告 および完成予定表(2008年9
月)」・文献[12])において、 MoU
プロジェクトは、①短期コンバージェンス・プロジェクト,②主要な共同プロジェクトおよび③ 概念フレームワークに関する共同プロジェクト(MoUの作業計画の正式な一 部ではない)に区別され、説明されている。
1)短期コンバージェンス・プロジェクト
すでに指摘したように、MoUにおける2008年までの短期目標([11],p.1)
は、いくつかの特定分野における主要な差異を1つまたは複数の短期的な基準 設定プロジェクトにより、除去すべきか否かについて結論を下すことであり、
その差異を除去すべきであると結論づけた分野について、その作業を完了する かまたは実質的に完了することであった 。 これらの短期コンバージェンス・プ ロジェクトの状況
([12],p.2)
は、①完成した短期コンバージェンス・プロジェ クト、②継続中の短期コンバージェンス・プロジェクト、③延期された短期コ ンバージェンス・プロジェクトに区別され、以下のように説明されている。(a) 完成した短期コンバージェンス・プロジェクト
FASB
は、U.S.GAAPをIFRS
にコンバージェンスさせ,2007
年2
月に公正価 値オプションを導入した新基準(SFAS第159
号「金融資産および金融負債の 公正価値オプション」)を公表した。SFAS第159
号([7],para.3)
によれば、IAS 第39
号「金融商品:認識および測定」([14],para.IN.16)と同様、金融資産・金 融負債に対して、公正価値による測定の選択が適用できると規定されている6)。 また、FASBは、U.S.GAAPをIFRS
にコンバージェンスさせ,2007
年12
月に 企業結合時に取得される研究開発費の会計処理にIFRS
のアプローチを採用した改訂基準(改訂
SFAS
第141
号「企業結合」)を公表した。改訂SFAS
第141
号適用後において、SFAS第2
号「研究開発費」([4],para.3A)は、企業結合に おいて取得される研究開発資産には適用されない。研究開発活動において使用 され、企業結合において取得される有形および無形の資産は、IAS第38
号「無 形資産」([15],para.57)と同様、改訂SFAS
第141
号に準拠して公正価値で認識・測定される7)。
一 方、IASBは、IFRSを
U.S.GAAP
に コ ン バ ー ジ ェ ン ス さ せ、2007年3
月 に借入費用に関する改訂基準(改訂IAS
第23
号「借入費用」)を公表した。改訂
IAS
第23
号([16],para.8)
によれば、SFAS第34
号「支払利息の資本化」([3],paras.8-9)
と同様、すべての借入費用を費用として即時に認識する会計処理(旧
IAS
第23
号における原則的会計処理)は認められず、適格資産の取得、建設または製造を直接の発生原因とする借入費用は、当該資産の取得原価の一 部として資産化しなければならないと規定されている。
また、IASBは、IFRSを
U.S.GAAP
にコンバージェンスさせ、2006年11
月 にIFRS
第8
号「事業セグメント」を公表した。つまり、IAS第14
号「セグメ ント別報告」(1997年8
月)をSFAS
第131
号「企業のセグメントおよび関連 情報に関する開示」(1997年6
月)にコンバージェンスさせ、IFRS第8
号を公 表した。IFRS第8
号([18],para.IN.11)
によれば、SFAS第131
号 ([5],para.5)と 同様マネジメント・アプローチ(事業セグメントの決定にあたり、最高経営意 思決定者が、内部報告目的において使用する資源配分の方法の決定や業績測定 の際に用いる区分を外部報告目的にも使用するという考え方)が採用された。(b) 継続中の短期コンバージェンス・プロジェクト
IASB
は、2007
年9
月にジョイント・アレンジメント(ジョイント・ベンチャー)に関する公開草案を公表した。IASB は、公開草案に対するコメントの検討を 直ちに開始し、
2009 年初めに最終基準を公表する予定である
8)。また、IASB は、
IAS
第12
号「法人所得税」を改善し、IFRSとU.S.GAAP
の差異を除去する法人所得税に関する基準案を公表する予定である9)。
FASB
は、2008 年後半に後発事象の会計処理および開示に関する基準案を公 表する予定である10)。FASBは、2008年後半に、米国公開企業の一部または全 部が将来のある時点で、IFRSの採用を許容または強制される可能性の観点か ら、短期コンバージェンス・プロジェクトに対する戦略を再検討するであろう。その再検討の一環として、FASBは、IASBが
IAS
第12
号「法人所得税」を取 替える改訂案を含めたコメント募集を公表することにより、米国の関係者か らの情報を強く要請するであろう。FASBは、その再検討の最後に、関連するIFRS(改訂 IAS
第12
号「法人所得税」、IAS第40
号「投資不動産」およびIAS
第38
号「無形資産」)を採用することにより、税金、投資不動産、研究開発費 に関する会計処理の差異を除去するプロジェクトに着手するかどうかを決定す るであろう。(c) 延期された短期コンバージェンス・プロジェクト
両審議会は、その他の作業が完成するまで、政府補助金および減損に関する プロジェクトの完成を延期する選択をした。
短期コンバージェンス・プロジェクトは、次の表のように要約できる。
表・ 「短期コンバージェンス・プロジェクト」
FASBによるコンバージェンス IASBによるコンバージェンス 公正価値オプション・完成 借入費用・完成
減損(IASBと共同)・延期 減損(FASBと共同)・延期 法人所得税(IASBと共同)・継続 法人所得税(FASBと共同)・継続 投資不動産・継続 政府補助金・延期
研究開発費・完成 ジョイント・ベンチャー・継続 後発事象・継続 セグメント報告・完成
2)主要な共同プロジェクト
2006
年2
月に公表されたMoU
は、主要な共同プロジェクトに関して2008
年までに達成すべき目標(milestones)
を示していた。2008年4
月の共同会議 において、両審議会([12],p.2)
は、共同プロジェクトに関する優先順位および2011
年までに達成すべき目標に合意した。2008
年版のMoU
により識別された11
分野のうち7分野(①企業結合、② 金融商品(現行基準の置換え),③財務諸表の表示、④無形資産、⑤リース、⑥負債と資本の区分
,
⑦収益認識―(表1-12頁参照))において、両審議会([12],p.3)
は、共通の基準を完成させたか、類似の結論に到達したか、または、共通の高品質の基準を開発するために現在共同で作業している。その他の
4
分 野(⑧連結、⑨認識の中止、⑩公正価値測定、⑪退職後給付(年金を含む)―(表2-13頁参照))において、両審議会は、当面の関心分野に取り組むために、
審議事項に対するアプローチを開発するうえで異なる段階にある。両審議会
([12],p.4)
は、短期的には差異を最小化し、長期的には共通の基準の開発を容易にするため、互いの進捗状況を注目している。
3)概念フレームワーク
FASB
とIASB([12],p.4)
は 、 共同の概念フレームワーク・プロジェクトついて、次のように説明している。
2006 年にこの作業プログラムを当初提示したさいにも、2008 年に予定表を
更新するさいにも、主要な共同プロジェクトは、それぞれの概念フレームワー クを改善し、コンバージェンスをもたらすための共同プロジェクトに関する、FASB
とIASB
による継続中の作業を考慮に入れるであろうことが両審議会に よって指摘された。両審議会は、2008 年に予定表を更新するさいに、共同の 概念プロジェクトの一部として、会計基準で用いられている測定属性(原価お よび公正価値を含む)の範囲に関連する諸問題に取り組むための継続的な努力 を強調した。表1「両審議会が IFRS および
U.S.GAAPの改善のため識別されている分野に関して現 在共同で作業しているプロジェクト(7項目) 」
コンバー ジェンス 項目
2006 年 MoU に記
載された2008
年 までに達成が期待 された進展現在の状況 完了見込日 次の段階
1.
企業結合
コンバージェンス された基準の公表
(2007年を予定)
公開草案に対する 応答として受理し たコメントを十分 考慮した上でその 内容と発効日を決 定
プ ロ ジ ェ ク ト を 完 成 し、共通の基準を公表
2007
年 に プ ロ ジェクト完成 改 訂FAS
第141
号 を2007
年 に 公表改 訂
IFRS
第3
号 を2008
年 に 公表改 訂 基 準 を
2
年 間 適 用 し た 後 に 適 用 後 レ ビ ュ ー[
レ ビ ュ ー は2012
年前半に予定]
2.
金融商品
(現行基準 の置換)
金融商品の会計に 関する1つ以上の デュー・プロセス 書類の公表
IASB:ディスカッショ
ン・ ペ ー パ ー を2008
年に公表FASB:IASB
デ ィ ス カッション・ペーパー に関するコメント公募FASB
は2008
年 半 ば にヘッジ会計を簡素化 するための公開草案を 公表未定
IASB:ディスカッショ
ン・ ペ ー パ ー お よ び ヘッジ会計を簡素化す る
FASB 公開草案に関
するコメントを検討し た 後、U.S.GAAPお よ びIFRS
に対して提案 する改善の内容および 範囲について2008
年 末までに決定1)3.
財務諸表 の表示
本プロジェクトの 全項目に関する1 つ以上のデュー・
プロセス書類の公 表
IASB:2007
年 に 改 訂IAS
第1
号を公表 両審議会による共同審 議が継続中2011
年2008
年 第3
四 半 期 に 予 備 的 見 解/
デ ィ ス カッション・ペーパー2)
4.
無形資産
IASB
に よ る リ サーチプロジェク トの結果について の検討および潜在 的議題プロジェク トの範囲と時期に ついて決定活動していない-両審 議 会 は、2007年 に 共 同の議題にプロジェク トを追加しないことを 決定
活 動 中 の 議 題 ではない
活動中の議題ではない
5.
リース
潜 在 的 議 題 プ ロ ジェクトの範囲と 時期に関する検討 および決定
共同の議題に追加され たプロジェクト 審議会による審議継続 中
2011
年2008
年 後 半 に 予 備 的 見解/
ディスカッショ ン・ペーパーの公表3)6.
負債と資 本の区分
会 計 基 準 案 に 関 す る 1 つ 以 上 の デュー・プロセス 書類の公表
2008
年 前 半 に 予 備 的 見解/
ディスカッショ ン・ペーパーを公表2011
年2009
年に公開草案4)7.
収益認識
包括的な会計基準 案に関する1つ以 上のデュー・プロ セス書類の公表
両審議会による共同審 議が継続中
2011
年2008
年 第4
四 半 期 に 予 備 的 見 解/
デ ィ ス カッション・ペーパー の公表5)表2「両審議会が共通の基準を求めているが、異なる基準開発段階にある、
IFRS および
U.S.GAAPの改善のため識別されている分野(4項目) 」
コンバージェンス 項目
2006
年MoU
に 記 載 さ れ た2008
年 までに達成が期待 された進展現在の状況 完了見込日 次の段階
8.
連結
高い優先度の審議 項目として、コン バージェンスされ た基準の完成を目 指した作業の実施
両 審 議 会 は、2008 年 に公開草案を公表予定
両 審 議 会 は、
2009
年 か ら2010
年 の 間 に 最 終 基 準 を 公 表予定2008
年 に 共 通 の 基 準 を開発する戦略につい て決定1)9.
認識の中 止
スタッフによる調 査活動の結果に関 するデュー・プロ セス書類の公表
両 審 議 会 は、2008年 または
2009
年初期に 公開草案を公表予定2)両 審 議 会 は
2009
年 か ら2010
年 の 間 に 最 終 基 準 を 公 表予定2008
年 に 共 通 の 基 準 を開発する戦略につい て決定10.
公正価値 測定
現行基準による公 正価値要求を適用 するさいに首尾一 貫性を提供するこ とを目的としたコ ンバージェンスさ れたガイダンスの 公表
FASB:基準完成 IASB:2007
年 に デ ィ ス カ ッ シ ョ ン・ ペ ー パーを公表審議を継続中
FASB:2006
年 に基準が公表IASB:2010
年IASB:2009
年 前 半 に 公開草案FASB:IASB
の審議の 観 点 か らFAS
第157
号をレビュー3)11.
退職後給 付(年金 を含む)
会 計 基 準 案 に 関 す る 1 つ 以 上 の デュー・プロセス 書類の公表
FASB:FASB
に よ り 定 義 付 け ら れ た プ ロ ジェクトの第1
段階完 了IASB:2008
年3
月 に デ ィ ス カ ッ シ ョ ン・ペーパーを公表
IASB:2011
年IASB:ディスカッショ
ン・ペーパーに対する コメントを検討した後 に、2009 年 に 公 開 草 案4)[MoU
のアップデートにおける「次の段階」後の作業]
1) IFRS第10
号「連結財務諸表」(2011年)
が公表された。2) 公開草案「認識の中止-
IAS
第39
号およびIFRS
第7
号の修正案」(2009年)
が公表された。3) IFRS第
13
号「公正価値測定」(2011年)
が公表された。4) 改訂
IAS
第19
号「従業員給付」(2011年)
が公表された。[MoU
のアップデートにおける「次の段階」後の作業]
1) IAS第
39
号「金融商品:認識および測定」(2003年)が置換され、IFRS第9
号「金融商品」(2009 年11
月)が公表され、さらに、追加修正されたIFRS
第9
号「金融商品」(2010年10
月)が公表 された。2)その他の包括利益の表示の改訂(2011年-
IFRS・U.S.GAAP
共)が公表された。3) 公開草案
(2010
年)・再公開草案 (2013
年)
が公表された。4) 追加修正された
IFRS
第9
号「金融商品」(2010年10
月)が公表された。5)共同提案
(2010
年)
が公表された。【注】
1)IOSCOの総会は,専門委員会によるIASC基準の評価作業の完了を受け て,2000年
5
月17
日に「多国間での証券の募集および上場を促進するためのI ASC基準の使用に関する決議」を採択した。この決議の中心部分を示せば,次 の通りである([26],240頁)。「総会は,IOSCOのメンバーに対して,多国籍の証券発行体が多国間での 証券の募集および上場のために財務諸表を作成する目的で,30のIASC
2000
年基準を使用することを容認するよう勧告する。ただし,財務諸表は,各国また は各地域レベルにおける未解決な本質的問題を処理することが必要な場合,以下 で示す方法(補完措置)で補完される。調整:IASC基準と異なる会計処理方法を適用することの影響を表示するた めに,IASC基準のもとで適用される方法と対比する形式で,特定の項目につ いての調整を要求すること。
開示:財務諸表本体または脚注における追加的な開示を要求すること。
解釈:IASC基準で規定されている特定の代替的方法の利用を明示したり,
IASC基準が曖昧であったり,規定が無いケースにおいて特定の解釈を明示す ること。」
要するに,IOSCOは,補完措置をするとの条件付きで国際会計基準を容認 した。
2) IFRS(国際財務報告基準)は、
IAS
(国際会計基準)を含むものとして用いられる。3)「国際会計基準の適用に関する
2002
年7
月19
日付けのEC
議会および理事 会の命令(REGULATION (EC) No 1606/2002 OF THE EUROPEAN PARLIAMENTAND OF THE COUNCIL of 19 July 2002 on the application of international accounting standards)
」の第4条「上場企業の連結財務諸表」によれば、「2005年1
月1日 以降の各会計年度から、EC加盟国の法令の法域下にある上場企業は、国際会計 基準に準拠して連結財務諸表を作成しなければならない 。」と規定されている。なお、EUが
IFRS
を採用したことにより、従来EU
においてその適用が容認され ていたカナダ基準、日本基準および米国基準の同等性評価が問題となった。欧 州証券規制当局委員会(The Committee of European Securities Regulators-以下、「CESR」と略称する)は、
2005
年7
月(6月付け)に、EC
に対して、カナダ基準、日本基準および米国基準と
IFRS
との同等性に関する「技術的助言(確定版)」(文献
[1])を公表した。CESR
は、この「技術的助言」において、カナダ基準、日本基準および米国基準を、全体として、同等としたうえで、一定の補完措置を要 求したが、その補完措置の適用は
2006
年12
月に2
年延期された。この補完措置 は、実際には、2008年12
月にEU
による同等性承認により廃止された。4)実際には、この差異調整表要求は、
2007
年12
月にSEC
ルール「米国会計基準(US‐GAAP)への差異調整表の要求なく、IFRSに準拠して作成された財務諸表の外
国の発行体からの受理」(文献
[25])により、廃止された。
5)
MoU
において、FASB
とIASBによるコンバージェンス・プログラムへのアプロー
チに関する最近の議論に基づいて、次のようなガイドラインに関する同意が指摘 されている([11],p.1)。
① 会計基準のコンバージェンスは、長期にわたる高品質で共通の基準の開発を 通じて、もっとも適切に達成できる。
② 重要な改善が必要な2つの基準間の差異を除去しようとする試みは、FASB と
IASB
の資源の最善の利用ではない。そうではなく、投資家に対して報告さ れる財務情報を改善する、新しい共通の基準が開発されるべきである。③ 投資家のニーズに応えることは、両審議会が、難点のある基準をより説得力 のある基準に置き換えることによりコンバージェンスしようとすることを意味 する。
6)
SFAS
第159
号([7],para.3)
は、金融商品を公正価値で測定することを選択した 場合、その未実現利益・損失を損益計算書において認識しなければならないと規 定している。なお、公正価値による測定自体は、SFAS 第157
号「公正価値測定」(2006年
9
月・文献[8])が適用される。また、IASB
は、IFRS 第13
号「公正価 値測定」(2011年4
月・文献[22])を公表している。
7)改訂
SFAS
第141
号は、FASBとIASB
との共同プロジェクトの成果であり、そ の後、IASB は、2008年1
月に改訂IFRS 第 3
号「企業結合」を公表している。8)公開草案第
9
号「ジョイント・アレンジメント(2007年9
月)」は、IAS 第31
号「ジョイント・ベンチャーに対する持分」を置き換えるための公開草案であっ た。その後、IASB は、2011年5
月にIFRS
第11
号「ジョイント・アレンジメン ト」を公表した。IFRS第11
号によれば、ジョイント・アレンジメントは、①ジョ イント・オペレーションと②ジョイント・ベンチャーのいずれかに分類される([21],para.14)。また、ジョイント・オペレーションに対する投資は、
「資産に対する権利」および「負債に対する義務」がある場合には、個々の科目ごとに会計
処理
([21],paras.20-21)
され、ジョイント・ベンチャーに対する投資には、持分法が適用される
([21],para.24)。
9)実際には、
IASB
は、2009
年3
月に公開草案「法人所得税」を公表した。その後、IASB
は、2010年9
月に公開草案「繰延税金:原資産の回収-IAS
第12
号の改 定案」を公表し、2010年12
月には「繰延税金:原資産の回収-IAS
第12
号の 改訂」を公表した。改訂IAS
第12
号によれば、繰延税金資産・負債は、原則と して、原資産・負債について予想される回収および決済の方法に基づき測定され るが([17],para.51)、IAS
第40
号「投資不動産」に基づく公正価値モデルを用い て測定する投資不動産については 、 この一般的な測定原則に例外規定を設け、投 資不動産の帳簿価額の回収は、すべて売却を通じて行われるという反証可能な推 論に基づいて繰延税金が計算される([17],para.51C)。
10)
実際には、FASBは、2009年5
月にSFAS
第165
号「後発事象」を公表した。SFAS
第165
号([9],para.8)
は、認識される後発事象について、「報告実体は、財務諸表作成プロセスに固有の見積もりを含め、決算日に存在する諸条件につい ての追加的証拠を提供するすべての後発事象の影響を財務諸表において認識すべ きである。」と規定している。また、SFAS第