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応用倫理学から具体倫理学ヘ : 対人援助職との研 究連携のなかから

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応用倫理学から具体倫理学ヘ : 対人援助職との研 究連携のなかから

著者 松田 純

雑誌名 文化と哲学

巻 29

ページ 15‑23

発行年 2012‑07‑31

出版者 静岡大学哲学会 

URL http://doi.org/10.14945/00024391

(2)

応 用 倫 理 学 か ら 具 体 倫 理 学 ヘ

︱ 対 人 援 助 職 と の 研 究 連 携 の な か か ら ︱

松 田 は

めじ に 近年

わた しは 科︑ 研学 究 費 のプ ロジ クェ なト ど で︑ 対 人援 助職 の倫 理と 法 薬︑ 剤師 の倫 理︑  エ ン ハン スメ ント 問題 の倫 理的

・法的 検 討︑

ド イ ツ応 用倫 理学 の総 合 的研 究な ど に取 り組 み︑ 現 在︑ 宅在 療医 と介 護福 祉 の倫 理と 法︑ ロボ ッ ト スー ツロ

>r のO 臨 床応 用︑ 希少 性難 病患 者 に関 す る医 療 の向 上及 び患 者 支援 のあ 方り 患︑ 者 団体 など 先 端 医科 研学 究 と の連 携構 築

︵後半 三件 厚は 生労 働省 研究 班

︶な ど に取 り組 ん で いる

︒ こう たし 諸 分 野 の倫 理的 問題 への 取 り組 み は 応﹁ 用倫 理

﹂学 と称 され る こと 多が い︒ し かし

﹁︑ 用応 倫 理学 oC ユいoヽ

3 8 ご と いう 名称 は︑ す でに あ る理 論 や 則原 を︑ さ まざ ま な分 野 の具 的体 な問 題 に 応﹁ 用す る

︐ 0︵

■じ

﹂と いう イメ ージ 与を え る︒ 強く 言え ば 普︑ 的遍 な規 範 具を 体 的 なケ ー スに 演繹 的 に適 用す ると いう イ メー ジ であ る︒ け れど も︑ 具体 的ケ ー スに 取 り組 むと き 既︑ 存 の理 論 や原 則 の問 直い しを 迫 ら るれ こと が起 こり 得 る︒ この 態事 真に 摯 に向 き合 う こと が 求め られ る︒ とり わ け 3 1 1・

の よう な何 百年 に 一度 と いう 衝撃 的な 体験 をす ると

︑ 私た ち の 当﹁ た り前

﹂の 日常 だけ では な く︑ みず から がよ てつ 立 一五

(3)

﹁医

ン2

﹁医

稿

﹁具

︵因

︼じ

(4)

の構想に学びながら︑具体的 な課題に︑他領域の人々と学 際的な研究に取り組む際の︑ 方法論と作法について考察し てみたい︒まず︑ジープの﹁具 体倫理学﹂の理念を検討する︵1

次生命倫理学の基︶ ︒に︑ 本テクストとして定着してい るビーチャム&チルドレスの﹃生物医学倫理学の諸原則﹄を

取り上げる︒この著作は現在 第六版まで改可されてきたが︑ この改訂の過程に︑﹁原則主言 という批判を超えて︑﹁具体倫 理学﹂への接近があることを 明らかにしたい︵2

︶ ︒

︵企

 

倫理学の配置国

(ピーパー&ト ゥルンヘアによる倫理学体系図2を一部改変)

︵環

(5)

一 

︿臨

︵本 ︶︒

﹃具

︵︻

ss

﹂お 西

西

西

(6)

・科 学 化 の道 歩を だん

︒ 望

﹂日い べ﹁

﹂し など の倫 言理 語 の分 析 没に 頭 し︑ 現実 具の 体 的諸 問題 は倫 理学 の視 界 から 消え た︒ ージ プ はこ の道 を 逆 に辿 り︑ とり わけ 近代 倫 理学 によ てつ 狭 めら たれ 倫 理学 を 再び 広︑ く 世﹁

﹂界 へと 開放 よし う とす る︒ こ の 世﹁ 界

﹂ はに 社会 と自 然世 界が 含ま れる 倫︒ 理学 が個 人間 の諸 権利

・諸 義務 に つい て の考 察 超を え て︑ 社 会倫 理 へと 開 かれ る︒ それ だけ でな く︑ 人 間関 係 にと まど ずら 動︑ 植物 や生 態系 を合 む自 然 対に す る倫 理

︵自 倫然 理学

︶を も 包括 す る︒ か かる 開放 がな ぜ必 要 な のか

?  技 術

・科 学と 経済

・政 治 など が現 在投 げ かけ て るい 問諸 題 でわ た たし ち が或 る社 会 的な 選 択を 迫ら れ ると き 個︑ 人間 の義 務 関に す る倫 理学 では ま たっ く足 りな いか ら だ︒ 地球 態生 系 の危 機 にど う対 応す る か?  人 的間 自然

︵本 性︶ をも 変え よう とす る イバ オ テク ノ ロジ ー 利の 用

︵人体 改 造︑  エ ン ハン スメ ント

︶ は ど こま で許 され る のか

?   これ ら は︑ カ ント の普 遍的 な道 法徳 則を も てつ てし も 功︑ 利主 義 の原 理を も てつ てし も︑ 扱 きい れ な い︒ ま し てや 倫 理言 語 の分 析だ け もで

︑ 無 理 あで る︒ 自 然 と の つき あ い方 を主 題化 たし 自 然倫 理学 な︑ ら び に社 会 とし て の選 択 もを 扱 社う 会倫 理学 を合 む も︑ とつ 包括 的 な倫 理学 の構 想 が必 要 にな る︒ ジ ープ が こ の構 想 の た めに 持 ち出 す理 念 は 撃﹈き 世 界

︐ 0 o 一お ζお じ

﹂と いう 理念 であ る︒ 人間 世界 とに まど らず 動︑ 植物 含を む自 然 世界 を包 括 たし 世界 の 善﹁ き秩

﹂序 を 目標 と し てい る︒

﹁善 き秩

﹂序 は西 洋 の倫 理学 とに てつ 新 し い概 念 では な い︒ む し ろ古 代倫 理学 以来 の伝 的統 概念 あで る︒ ジ ープ は これ を︑ 個 人間 係関 の倫 理を 超え て︑ 社 会倫 理 十自 然倫 理 の全 体 構想 なの かで 彫琢 てし いく 可能 性を 模索 し てい る︒ こ の構 想 のな か で︑ ジ ープ は︑ 既 にど こか で確 立さ たれ 倫 理学 の原 理を 具体 的 課題 応に 用 てし 考察 す ると いう イメ ー ジ はに きつ りと 反対 てし いる 倫︒ 理学 の原 理論 的考 察 と︑ 諸 課題 への 実 践的 取り 組 みと し て の応 用倫 理学 分を け る の では くな

︑ 具体 的諸 課題 への 倫 理学 の取 り組 み なの か で︑ 原 理や 倫 理学 そ のも の のあ り方 問を い続 るけ 営 みが 具体 倫 一九

(7)

・世

反﹁ 省的 均衡

﹂ は ロー ルズ oO

●●

コオ

︶H8

︐卜 いo S︶ の概 念 であ る︒ T 般

︺原 則 と

︹具 的体 なケ ー スに つい て の︺ 判断 あ る いは 確 信 の間 食に い違 いが 生 たじ とき 最︑ 初 の説 明を 修 正 たし り︑ 現在 の判 断を 見直 たし りと い たっ 仕 方 で︑ 行 たっ り来 たり くθ 鴨︶

rこ

●F 口ヽ

♂詳 じ 繰を り返 す こと 通を じ て︑ 則原 と 判断 あ る いは 確信 とが 釣 り合 とう ころ ま 熟で 慮 を重 るね

︒ のこ 原﹁ 則 と熟 慮 した 判 断

︵8

●∽ 0お ヨヽ 盲P OPO

とを 相互 調整 す るプ セロ

﹂ス を︑ ーロ ルズ は 反﹁ 省 均的 衡

→﹄ 8与 8 ρoL

︼夢 日じ

﹂と 呼ん だ︒ ジ ープ は︑ ロー ルズ 以来 定着 てし き た こ の概 念 を 借 り て︑ 具 体倫 理学 の方 法 説を 明 し て いる

︒ ニ 

ービ チ ムャ

& チル ド スレ の原 則主 義 から の脱 却 ピ

ーチ ムャ

&チ ルド レス の

﹃生物 医 学倫 理学 の諸 原則

﹄も

﹁︑ 反省 的 均衡

﹂を 倫 理学 的比 較衡 量 の方 法 と てし 採用 し て いる

︒ 本書 が これ 採を 用 たし のは

︑ じ つは 第 四版

︵一 九九 年四

︶ から あで る︒ 本書 改 訂 の過 程を 詳細 に分 析 した 香 川知 氏晶 によ れば

︑ 一九 九

〇年 代 から 本︑ 書 に対 し て︑ 原﹁ 則主 義 C

●o ぼ︻お 日ご と いぅ 批 判 がな さ れ るよ う なに る︒ 原﹁ 則 主義

﹂と は︑ 自 律尊 重 無︑ 危害 ヽ善 行︑ 正義 と い たっ 一般 原則 演を 繹的 個に 別ケ ー スに 当 ては るめ 方法 に対 す る

(8)

批判 であ る︒ す なわ ち︑ 倫 理理 論← 則原

← 則規

← ケ ー ス とヘ いう 演 繹的 な ト ツプ ウダ のン 方法 対に す る批 判 であ る︒ こう たし 批判 受を け て︑ 第 四版 で大 幅 な改 訂が なさ れ︑ 則原 主義 を放 棄す る に いた る︒ この 変更 後 の立 場を 第 版五 が 一層 明確 示に し て いる

︒ 第 五版 は第 九章 で生 物 医学 倫 理 の方 法論 扱を い︑ ト ップ ダ ウ モン デ ルと

︑ ボト ム ア ップ モデ ルを 比対 し てい る︒ ト ップ ダ ウ ン モデ ルと は︑  一 般規 則 を ケー スに 用応 す る方 法 であ り︑ こ﹁ れ 応が 用倫 理学 と いう 言 葉 の使 用を 動 づ機 けた

﹂ と いう

︒ こ の演 的繹 方 法 の対 極 あに る のは 帰︑ 納的 なボ ト ムア ップ モデ ルで あ る︒ 具体 な的 ケ ー スか ら 一般 的な 立場 へと 帰納 的 に推 論 す る方 法 であ る︒ ビ ーチ ムャ チ& ルド レ スは

︑ この 両者 を統 合 たし モデ ル を 整﹁ 合 説 o∂デ oお

●8

︐ RO

﹂と てし 提案 す る︒ ト﹁ ップ

︵原 則︑ 理論

︶と ボ ト ム

︵ケ ー ス︑ 個 人 の判 断︶ だけ で は︑ 生物 医学 倫 理 にと てつ 十分 では な

﹂︒い 原﹁ 則 ケは ー スに 対 し て特 定化

︹具 体化

︺ され る必 要が あ る し︑ ケー ス分 析 は 一般 原則 から の解 明を 必要 とし て いる

﹂︒

こ の整 合説 を彼 ら は︑ ロー ルズ の 反﹁ 省的 均衡

﹂と うい 言葉 で説 明し て いる こ ︒ のよ う に︑ 彼ら 当は 初 の 原﹁ 則主

﹂義 を捨 て︑ 理論

・原 則 と 具体 的な ケ ー スを 復往 す る 反﹁ 省 的均 衡

﹂ の立 場 に たど り つき

︑ これ が最 新 版 第︵ 六版

︑ 二〇

〇九

︶年 もに 引き 継 がれ てい る︒ ま

とめ 以

上 の考 察 から

︑ ロー ルズ ビ︑ ーチ ムヤ

&チ ルド スレ ジ︑ ープ ら の倫 理学 に通 底す る方 法論 が見 え てき た︒ それ は︑ 一般 理論 や倫 理 原則 と︑ 具体 的 なケ ー スを 双方 向 から す り合 わ せな がら 両︑ 者 均の 衡点 を探 ると いう 姿勢 であ る︒ 彼 ら は いず れも 一般 理論 を ケ ー スに 応﹁ 用す

﹂る と いう 発 想を 克 服 てし いる

一一 一

(9)

倫理学原論をから見たら︑月縁的な課題というイメージがある︒しかし︑日本に応用倫理学という学問領域を定着さ せた加藤尚武氏は︑﹁応用倫理学の方が︑倫理学のより根本的な問題を扱っているという逆転現象が起こっている﹂と 言う︒代理母︑サイボーグ人間︑クローン人間などが提起する倫理問題に直面したとき︑伝統的な倫理学説のどこに も答えがなく︑根底から問い直しを迫られるからである︒つまり︑応用倫理学は︑既定の倫理学構想を根底から問い 直すラジカルな営みになる︒であるなら︑この際︑﹁具体倫理学﹂という名称を普及・定着させることが︑現代の新し い学の本質をより明瞭にすることになろう︒それによつて︑課題指向型の学際的研究のなかで哲学・倫理学の役割が 果たす役割もより明確になるのではないだろうか︒

2.

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︵まつだ じゅん 静岡大学大文社会科学部︶

参照

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