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個人別態度構造分析で比べる教師の学校イメージ

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(1)

個人別態度構造分析で比べる教師の学校イメージ

著者 今野 博信, 池島 ?大

雑誌名 教育実践総合センター研究紀要

巻 18

ページ 55‑62

発行年 2009‑03‑31

その他のタイトル Teacher s School images by Analysis of Personal Attitude Construct

URL http://hdl.handle.net/10105/1021

(2)

1.はじめに

 これまでの教師へのインタビューをもとにした先行 研究では、校種ごとの独自性や共通性というような学 校文化や学校風土などの集団的な特性が論議の対象と されることが多かった(野口ら2007)  

1)

。しかし、この 研究では、教師個人に受けとめられている学校イメー ジについて検討することを目的にしている。なぜなら、

現在の学校教育では、各学校種間や他機関との連携や 相互理解の必要性が高まってきていることや、学校内 に新しい職種の教職員(カウンセラー・特別支援教育 支援員

2)

・特別免許状による社会人教員など)が増え てきていることから、そうした動向に能動的に関われ るように教師個人が自己理解を深めることの重要性が 一層高まってきているからである。

 具体的には、通常学校における特別支援教育の実施 場面では、これまでの学級担任や教科担任だけが学級 運営や授業を受け持つのではなく、学習支援担当の学

校職員が配置されて協働による対応がとられるように なってきている。また、個別の支援計画立案に際して は、特別支援学校や医療機関との連携が必要とされて いる。さらに、幼児・児童・生徒理解は、教育の基本 となる営為であるが、そのための教育相談活動には心 理士などのカウンセラーとのアセスメント協議などが 必要となってきている。

 このような連携や相互理解を進める際に、学校教員 自身がいだく学校イメージが自覚されないままに、各 専門家との協議が進められるのでは、検討内容や実施 過程での無用な誤解やストレスが生じかねない。学校 教員が、どのような点にこだわりをもち、どのような 点にやり甲斐を見出しているか、などの知見を当人と 関係者が前提とすることで、よりよく協議を活性化さ せていけるはずである。

 また、個々の教員の学校イメージを検討対象とする ことで、そのイメージの中に見出されるマイナス面

(例えば、学級崩壊への恐れや保護者との対応につい

個人別態度構造分析で比べる教師の学校イメージ

今野博信

(登別市立鷲別小学校)

池島 大

(奈良教育大学大学院教育学研究科専門職学位課程)

Teacher s School images by Analysis of Personal Attitude Construct

Hironobu KONNO

(Washibetsu Elementary School)

Tokuhiro IKEJIMA

(School of Professional Development in Education, Nara University of Education)

要旨:半構造化されたインタービューの手順をもつ個人別態度構造分析(PAC分析)を用いて、小学校教員の描く学 校イメージを検討した。合わせて、教員以外の職種として子ども達と関わる学校職員である、介助員、特別支援教育 支援員にも同様の分析を試みた。教員では、小学校は子ども達との近さやそれに連なる保護者との近さを要素として イメージされることが示された。とくに、中学校からの異動者は子どもの活動性の高さを受け止めていた。学校職員 では、自分を含めたイメージが立ち上がることがなく、その点で教員との違いがみとめられた。教員と学校職員との 関係づくりには、このような差異を双方が認識し合うことで、よい効果を生むであろうことが期待される。さらには、

学校教育と連携する各種機関との関係づくりにも、同様の分析結果からの資料が効果的に用いられることが期待され る。

キーワード:個人別態度構造分析(PAC分析)   Analysis of Personal Attitude Construct

      学校イメージ  School images  学校職員 School staff

(3)

ての緊張感など)にも注目しやすくなるはずである。

こうした点への理解を深めることは、教員自身がメン タルヘルスを意識的にコントロールするためにも必要 なものと考えられる。その際には、この個人別態度構 造分析(PAC分析)のもつ、カウンセリング的な機能 を有効に活用することになろう。

 PAC分析 (Analysis of Personal Attitude Construct)

とは、ダイナミックな人間的成長に視点をおき個人の 内面の構造を明らかにする技法として、内藤(1 9 9 3)

によって開発された技法である

3)

。前述のようなカウ ンセリング的な機能を含めて11の機能をもち、それら は大きく三つに分類されることを、井上(1 9 9 7)は指 摘している

4)

。一つ目は、カウンセリング場面におけ るカウンセラーとクライエントの二者関係に着目した 分野であり、PAC分析そのものが良好な関係形成を促 進するものとして位置づけている。二つ目は、クライ エントの問題認識を深めるのに有効で、自己理解を深 めさせる働きがあるとしている。三つ目は、客観的な データ・資料・査定・評価の機能をもち有用なアセス メントの道具であることを示している。

 具体的なPAC分析の手順は、質問文に対する自由連 想で語句を想起し、それらの語句の重要度や類似度を 評定し、正負の符合付加を経てクラスター分析による デンドログラム(樹状図)を作図し、そのクラスター についてのインタビューの記録していく形で進められ る。

 さらに、今回の調査で実施したPAC分析に際しては、

PAChelperという自作のコンピュータソフトを利用し てデータ収集をしたので、その使用方法についても合 わせて報告する。

 今回はとくに小学校の教員を対象としているが、継 続して幼稚園や中学校、高等学校、特別支援学校、中 等教育学校など校種の幅を広げていくことや、学校と 連携する機関である児童相談所や医療機関などの担当 者に対象を広げていくことで、それぞれの専門性を背 景とした学校イメージや教育観を比較検討できるもの と構想している。

 さらに本研究では、教員以外の立場で子ども達に接 している学校職員として、特別支援教育学級の介助員 と特別支援教育担当の学習支援員、通常学級担当の学 習支援員にもPAC分析を試行的に実施し、その結果を 教員の結果と比較検討することにしている。

2.目 的

 本研究の目的は、小学校教員がどのような要素に影 響を受けて学校イメージを形成しているかを、個人別 態度構造分析(PAC分析)を用いて検討することであ る。その際に、教員以外の立場の学校職員(介助員と 学習支援員)との比較も加味して検討する。

3.方 法

3.1.被調査者  公立小学校教員AとB

(Aは高学年、Bは低学年の担任。共に経験7年の女 性で転勤後1年目、Aは中学校からの異動者)

3.2.提示刺激  小学校のイメージ

「あなたにとって小学校とはどのようなものですか。こ れまでのこと、今現在のこと、これからのことなどど んなイメージでも結構ですので、感じたとおりに教え てください。 」

3.3.手続き

 2007年の一学期終了後の8月に1回目、二学期終了 後の12月に2回目を、それぞれ個別にPAC分析を実施 した。

 得られた4種類のデンドログラムと被調査者のイン タビュー内容から、それぞれの描く学校イメージを比 較検討した。

 PAChelperを用いたデータ収集の手順は、以下のと おりである。

1.プログラムをダブルクリックでスタートさせて、

保存用ファイル名を「半角英数字」で指定する。

OKをクリックすると反応語の入力ページになる。 

2.被調査者が想起した反応語を言うのに合わせて  全角文字」で記入していく。同時に被調査者に は、渡した紙に自分の言葉をメモ書きしてもら う。その紙と見比べて内容を確認してもらい、問 題がなければOKボタンで重要度評定のページに 進む。

3.入力された想起項目が右側に並んでいるので、

その先頭の文字をドラッグして左側に重要だと思 う順番に並べ替えていく。被調査者が操作に不慣 れであるなどの場合で、本人に操作を頼めない場 合は、調査者が答えを聞いて代わりに操作する。

内容を確認し、OKボタンで類似度のページに進 む。

4.ランダムな順に想起項目対が最上部と中央部に 表示されるので、中央部の項目の先頭の文字をド ラッグしながら類似の度合いに合わせて距離を決 めていく。この際に、あまり考えすぎないで素早 く決めていくように言い添える。右側には、概算 の距離とやり直しのためのボタンが配置されてい るので予め説明しておく。概算距離の表示は小数 第1位までだが、実際の記録は小数第2位までの 精度となっている。これはデンドログラム作成の 際に微少な差も反映させるためである。この類似

表1 PAChelperによるデータ収集手順

(4)

度評定に最も時間を要する。

5.最後に正負の項目評定となる。ランダムな順で 想起項目が一つずつ表示されるので、それぞれの 項目が自分にプラスの印象を与えるのか、それと もマイナスの印象を与えるのかの判断を求める。

どちらにも当てはまらない場合や、ちょうど真ん 中ぐらいの場合は0として扱うが、表示上の混乱 を避けるために△の記号を用いている。すべての 評定が終わると 、保存のページになるので、問題 がなければそのままOKボタンで終了させる。

6.保 存 さ れ た フ ァ イ ル は、「*bun.txt」「*

rui.txt」の名前になっている(*部分は最初に指 定 し た 文 字 列 の 意 味)。「*rui.txt」が HALWIN(HALBAU for Windows)用の保存形 式になっている。「*bun.txt」には想起項目がそ のまま記録されており、また、類似度評定の際に 項目ごとにかかった時間が秒単位で記録されている。 

備考 ファイルの保存場所は、PAChelperのある同 じフォルダとなっている。このフォルダには、他 にもトラブル対応のために自動的にファイルが保 存されているが、正規のファイルが問題なく保存 された場合は削除してもよい。PAChelperプログ ラムは、HSP(Windows9x/NT/2000/XP対応の インタプリタ言語、Hot Soup Processor)で書か れていて、Windows用にコンパイルされている。

PAChelperはつぎのサイトからダウンロードでき る。http://www.naravan.net/

 

 使用分析ソフト:ノートパソコンでPAChelperを用 いたデータ収集した後に、クラスター分析用のMSエ クセルのアドインソフト

5)

を利用してデンドログラム を作成した。その結果をMSパワーポイントでノート パソコンに表示させ、それを被調査者と一緒に見なが らインタビューをした。

 上述の手続きと同じようにして、2008年7月の一学 期終了時には、学校職員3名に対するPAC分析を試行 的に実施した。

 対象者は、C介助員(男性) 、D支援員(女性) 、E 支援員(女性)の3名であった。いずれも30代で教員 資格は採用条件ではなかった。配置先は特別支援学級 と通常学級とに分けられ、仕事内容や勤務条件にも幾 つかの点で違いがあった。

4.結 果

4.1.教員の学校イメージ

 4回の調査で想起された全項目数は67で、最多は19 であり最少は13であった。これらの項目を、正負評定

(+△−評定)の結果で分類したものを表2に示す。

 ABは被調査者の別を示し、1と2は調査時期を表し ている。A1はA教諭の1回目の調査を示す。

 この表を元にそれぞれの葛藤度を計算し相互に比較 すると、A教諭の第1回目(A1と表記し、他も同様と する)で1.23、B1で1.1、A2で1.08、B2で1.09であった。

中学校から異動して来て間もないA教諭の葛藤度が、

第1回目の7月に高かったことが示されたが、第2回 目の12月には低下している。ここで葛藤度とは、 (プラ ス項目数+マイナス項目数)を(|プラス項目数−マ イナス項目数|+1)で除した数値のことであり、+

評定数と−評定数が拮抗している場合に最も高い値を 示すものである。

 つぎに、回避度について計算すると、A1で0.16、B1 で0.15、A2で0.18、B2で0.33となった。B教諭にだけ回 避度の上昇がみとめられた。この回避度とは、内藤

(2002)において、 「情緒が喚起して苦痛が生じるのを 避ける、 『解離』や『自己疎隔感』の強さの指標とし て読み取れる」とされている数値のことであり、△項 目数を合計項目数で除した割合である。

 A1の葛藤度の高さと、B2の回避度の高さについて、

それぞれの項目評定の差違を検討するために調査ごと に構成比(百分率)を求め、その数値を比較したもの が図1である。これは、調査ごとに想起項目の数が違 うので、割合を用いて比較するためである。

 B1とB2を比較すると、χ

2

検定で有意な差がみとめら れた(χ

2

(2)=8.77、p <.05) 。残差分析をおこなうと、

+評定が減少し△評定が増加していた。その他の割合 では、有意な差はみとめられなかった。

 以上の数量的な検討に加えて、つぎに想起項目の意 味内容に注目して比較した。意味の分類は、過去・現 在・未来の時制についてと、自己・他者・事物の言及

表2 教員の正負評定

合計

+

19 17

14

13 A1(前)

A2(後)

13 18

10

11 B1(前)

B2(後)

$㸝๑㸞

$㸝ᚃ㸞

$㸝ᚃ㸞

%㸝๑㸞

%㸝ᚃ㸞

㸠 ڸ 㸢

図1 正負(+△−)評定の割合

(5)

対象についておこなった。

 時制では、67項目数のうち一つだけが過去に関わる 内容で、その他はすべて現在に関わる内容であった。こ の想起項目が現在の内容に集中する傾向は、これまで に得られた結果(今野2007)と共通している

6)

。過去 の体験について語る例が見られたのは、主に保護者の 場合に多かったことが示されていた。

 現在に関わる項目について言及対象ごとに分類した 結果を、百分率の割合で表わしたのが図2である。こ の言及内容の分類は、例えばA教諭の想起項目にある

「決断が速い」を「現在の他者言及」と分類し、 「時 間が短い」を「現在の事物言及」と分類するように、

その項目に示されている事象の主語(主体)となるの は何であるかを基準にしておこなった。

 A1とA2を比較するとχ

2

検定で有意な差がみられた

(χ

2

(2)=134.5、 p <.01) 。残差分析によると、A1では自 己言及が多かったが、A2では少なくなり事物言及が増 えた。B1とB2の比較についても、χ

2

検定で有意差がみ とめられ(χ

2

(2)=133.8、p <.01) 、他者言及が増え、事 物言及が減ったことが示された。第2回目でのA教諭 とB教諭の言及対象は、自己<他者<事物の順となっ て、その構成比は相互に似てきた。    

 さらに、第1回目と第2回目の調査で、個人内で2 回とも一致して想起された語句について調べた。両者 共に一致したのは、 「子ども」と「時間」という単語 で あ っ た。A 教 諭 は、 「忙 し い」 「元 気」 「汗」 「遊 ぶ

(び) 」という人の活動性に関する単語の想起が、第 1回目と第2回目で一致していた。B教諭は、 「にぎや か」の他に「給食」 「勉強」 「テスト」 「仕事」という 学校内での義務的な課業に関した単語が一致していた。

加えて、個人間で共通して想起された語句について調 べると、第1回目の調査では、AB両教諭間で共通して いたのは、 「子ども」 「時間」という2語だけであった。

それが、第2回目の調査では、第1回目と同様の「子 ども」 「時間」の他に、 「宿題」 「休み」 「机」と共通す る語が増えていた。

4.2.学校職員の学校イメージ

 3名で想起された全項目数は31で、これは教員の1 回目の調査時に2名で36項目の想起があったのに比べ て少なく見える。項目数の平均値をt検定すると、教員 の反応数の方が学校職員の反応数よりも有意に多かっ た(t (3)=4.73、p <.05) 。

 学校職員の想起項目数を、正負評定(+△−評定)

の結果で分類したものを表3に示す。

 さらに、正負評定から回避度を求めて相互に比較す ると、学校職員の回避度が教員の示す回避度よりも有 意(t (3)=14.05、p <.01)に低かった。

 意味に注目した結果では、CDE三者ともに自己に言 及する内容の反応項目はなく、教員の場合には自己言 及が必ずあったことと比べると対称的な結果といえる。

また一方で、教員の場合と同じように現在の時制に関 係する反応項目が圧倒的に多かった。

 三者間で共通する言葉について調べると、 「子ども」

という単語だけが反応項目の中に共通しており、 「先生」

と「あいさつ」の言葉は、二人の間だけで共通してい た。

 さらに、統合過程でのクラスター命名の際には、教 員間では「子ども」 「楽しい」 「学校」 「頑張り」 「今」

などの共通する言葉が見られたのに対して、学校職員 間では「子ども」 「社会」の言葉が、二人の間だけで 共通していた。

5.考 察

5.1.教員の結果から

 A教諭の第1回目のデンドログラム(図3)は、反 応項目そのものと統合の過程が、とてもシンプルな形 になっていて、子どもに関わるコメントが多いことと、

それに対する自分の印象が語られている点に特徴があ る。教員が学校イメージを語る際に、自己に言及した 内容が加わるという傾向は、これまでにも得られた結 果(今野2007)と共通している。このような教員によ る「自己語り」は、保護者や教育行政担当者担当者に はあまり見られない特徴と考えられる。第2回目にな ると、A教諭の自己への言及が減り事物への言及が増 えるが、子どもへの言及が多いという特徴は大きく変 わっていない(A2のデンドログラムは省略) 。  葛藤度については、A教諭の7月が高かったことが 特徴的であった。この葛藤度は、 「プラスイメージと マイナスイメージが拮抗するほど、また両者の合計項

㧗 ٌ 㧙

㧭 㧝

㧭 㧞

㧮 㧞

⃻࿷⥄Ꮖ ⃻࿷ઁ⠪ ⃻࿷੐‛

図2 言及対象別の割合

表3 学校職員の正負評定

合計

+

10 11 10

1

1 1 3

10 8

(6)

図3 A教諭の第1回目のデンドログラム(A1)

図4 B教諭の第2回目のデンドログラム(B1)

(7)

数が多いほど、葛藤状態が強いことを示すことができ る」と内藤(2008)によって解説されている

7)

。B教 諭との比較や、A教諭自身の2回目の結果と比較して みると、7月の時点ではA教諭にとって一定のマイナ ス要素を含むものとして学校イメージが形づくられて いたことがうがえる。

 このように葛藤度が変化する例として藤田(2007)

では、日本語の作文を学ぶ外国人留学生に影響する授 業スタイルの効果が検討されている

8)

。日本人学生によ るサポート的なEメール交換を含んだ授業スタイルが、

授業開始時期の留学生達の高い葛藤状況を、学期終了 時には低減させた例が示されていた。

 A教諭の場合に当てはめてみると、同様に二学期の 間に葛藤が低くなってきたことを示していると考えら れる。さらに、A教諭が小学校を語る際には、子ども の様子(とくに活動性)が中心になっていることを想 起項目から読み取ることができる。

 B1のデンドログラム(図省略)では、項目数も少な く△評定も少なかったが、B2のデンドログラム(図4)

では、項目数も△評定も増え構造も複雑化し、回避度 も上昇している。プラスでもマイナスでもどちらでも ないイメージの場合や、プラスとマイナスのちょうど 真ん中ぐらいの場合に△が評定される。この△評定が 多く選ばれることで回避度は上昇していく。この回避 度の上昇は、プラスかマイナスかを決めるのに際して 断定的な評定を避けたいとして選ばれる例も見受けら

れる。それには、多様な要素の比較検討を強いられる 場合の困惑や、限定的にしか状況を把握できていない 現実の曖昧さから判断を留保したい場合などが、理由 として考えられる。このように受け止められる状況が、

内藤(2002)では、 『解離』や『自己疎隔感』として表 現されている。

 B教諭だけで回避度が高かったことにも、このよう な判断を留保したくなる状況や意識が見られたと考え られる。それは、B教諭だけが認識できたが、じつは 学校全体に共通する内容であった可能性もあり、また B教諭だけに当てはまる個別的な要素だった可能性も ある。その共通性についての課題は、今後も調査を続 けていく中で検討していかなければならない。

 回避度の高さ以外でA教諭との比較から明らかにさ れた点に注目すると、想起項目やインタビュー内容か らB教諭に特徴的な語りとしては、保護者(親)につ いての項目と保護者に関連した統合過程での命名があ る。A教諭の語りの中に、 「小学校では子どもと近い」

という言葉があったが、B教諭の場合は、子どもに連 なる存在としての保護者との近さが認識されているこ とを読み取ることができる。

 さらにB教諭では、 「このようにすべき」という視

点からの語り口が特徴的である。これは、A教諭が仕

事の中身そのものについて語るのと違って、B教諭の

場合は仕事を自分から一度切り離して客観視する語り

口にも通じている。理想と現実の両方を比較する視点

図5 C介助員のデンドログラム

(8)

から、多義的な評定結果が導かれたと解釈できる。

今回の調査では、小学校のみの経験者と中学校からの 異動者との違いや担任する学年の違いなどの影響があ る中で、教員ABに共通する傾向として、子どもとの 近さや忙しさなどの要素を見出すことができた。

5.2.学校職員の結果から

 図5に示したC介助員のデンドログラムには、子ど も達の言動に対する憤りの表現が多く見られる。学校 外の要素からの影響が大きいことと、補助的で間接的 な立場で子ども達と接する形になる自己の現在の勤務 形態へのジレンマを訴える様子は、インタビューの内 容からもうかがえた。そして、こうした思いは、学校 職員でありながら保護者的な眼差しとして教員へ注が れる可能性につながり、そうした場合には教員を防御 的に萎縮させる作用をもつことも考えられる。

 教員における回避度の高さは、教員が学校イメージ を思い浮かべる場合に、それが多様な要素から構成さ れていることを推測させるが、そのことは同時に曖昧 な態度表明にもつながりやすいことを示している。そ して、そうした曖昧さは、場合によっては批判を招く 結果にもなりうる。

 一方でD支援員E支援員は学校イメージを肯定的に 表現している。教員は、学校に向けられたこのような 支持的なまなざしに気づいているであろうか。さらに は、それに応えて、素直な感情を伴った自己開示的な 受け入れを表現しているであろうか。今回の調査結果 だけでも、同じ職場で働く関係なのにお互いの感じ方 に違いがあることが示された。教員同士、教員と職員 間でお互いに関心をもち感じ方を交流し合う必要性を 実感できる。

 しかし一方で、学校職員3名の最終のクラスター統 合の結果、つまりは学校イメージそのものは、全員共 通して△評定となっている。このことは、学校や教員 への支持的な感覚はあっても全面的なものではないこ とを示していよう。課題を含んでいる現状を共通認識 の基礎において、教員と職員で、または学校内と学校 外各機関との連携を構築していく必要がある。

6.おわりに

 本研究では、小学校教員の学校イメージをPAC分析 を用いて検討した。どちらも7年間の教職経験を有す る女性教諭について比較したところ、中学校からの異 動者にとって小学校をイメージさせる主な要素とは、

子ども達の活動性であることが示された。もう一人の 小学校のみの勤務経験を有する教諭の結果からは、子 どもとの近さの要素だけではなく、その近さに連なる ように保護者との近さも影響して小学校のイメージが 形づくられていることが示された。

 これら二者の違いは、2回目調査時の二学期終了時 期にはそれほど目立たなくなり、むしろ相互に似た傾 向を示すものも見られるようになった。それらの似た 傾向を示した具体的な指標としては、葛藤度と呼ばれ るプラスの評定とマイナスの評定の比率を表す数値が あった。中学校からの異動者では、最初の頃は葛藤度 が高かったが、二学期終了時にはもう一人の葛藤度と 同じような数値を示すようになった。両者ともにプラ スの評定が多くなる結果を示した。

 他にも、想起された項目に用いられた単語で比較す ると、最初は両教諭間で共通していたのは、2語しか なかったが、二学期終了時には5語に増えていた。

 一方、介助員や学習支援員という教員以外の職種で 子ども達と関わる学校職員が描く学校イメージには、

自分自身の姿が位置づけられていない点が共通してい た。これは、仕事内容が補助的なものに限定されてい ることからの結果と考えられた。教員の学校イメージ には、自分について語られる要素が入っていたのに対 して学校職員には、そのような自分について語る要素 は見られなかった。

 学校職員が批評的に学校イメージを描いているとい う構図は、場合によっては教員に向けた批判的な眼差 しとなる可能性も含んでいる。そうした場合に、教員 が防御的に内にこもるのではなく、共に学校教育に携 わる同僚性を確認し合うような関係づくりをしていく 必要があろう。

 教員2名と学校職員3名の描く学校イメージを相互 に比較検討したが、これら少数の結果からすぐに一般 化させた議論に結びつけていくことはできない。今回 の調査での特別な記録は、小学校での勤務が初めてと なる中学校からの異動者が描いた小学校のイメージで ある。それは、小学校だけの勤務経験者もとっても、

新任当時に感じていた学校イメージと共通する可能性 がある。

 調査結果で強調されていた、子どもとの近さや活動 性の高さへの注目は、経験を経た後の教員にも共通し た認識ではあろう。しかし、その受け止め方がプラス なのかマイナスなのかの評定は、変化していく可能性 がある。活動的な様子を積極的に評価できていた感覚 を取り戻してみるには、このような調査結果がきっか けとして有効であろう。

 このような調査と分析が、ただちに一般化の議論に

結びつくものではないといっても、一つの職場におけ

る職種間の調整や関係づくりには重要な資料を提供し

ていると考えられる。それは、職場における共通理解

という言葉の実質を支えることを意味している。さら

には、このPAC分析がもっているカウンセリング的な

機能が、精神的な困難を抱えている場合の助けになる

可能性にも着目すべきである。この分析法が、自分自

身では言語化できない点に当人の目を向けさせる働き

(9)

を備えていることに期待できよう。

 このように、職場ごとに実際の担当者同士が描く各 職場のイメージが検討されていくことで、最終的には 一般化した議論ができるようになっていくであろう。そ の際には、教師のもつ傾向や学校職員の抱く共通した 思い、連携機関の担当者の要求の強さなどを論じられ るようになるであろう。そこに至るまでの、各職場ご との資料収集を地道に、しかし期待感をもって進めて いく必要がある。

文献と参考URL

1)野口隆子、鈴木正敏、門田理世、芦田宏、秋田喜 代美、小田豊 2007 教師の語りに用いられる語のイ メージに関する研究 教育心理学研究、第55巻  第4号 457-467

2)文部科学省パンフレット「特別支援教育支援員」

を活用するために(平成19年6月)        

http://www.mext.go.jp/a̲menu/shotou/tokube- tu/mat

3)内藤哲雄 2002 PAC分析実施法入門[改訂版] 「個」

を科学する新技法への招待 ナカニシヤ出版 4)井上孝代 1998 カウンセリングにおけるPAC(個

人別態度構造)分析の効果 心理学研究、   第69巻 第4号 295-303

5)クラスター分析(Cluster97.xla)   Ver.3.7につい ては、作成者の早狩進氏のサイトに詳しい説明が ある。

http://www.jomon.ne.jp/˜hayakari/index.html 6)今野博信 2007 学校教育関係者間の個別態度構造の

変化に関する研究 奈良教育大学大学院教育学研 究科修士論文  (未公刊 ただし一部は日本教育 心理学会 第4 9回大会発表論文集 618)

7)内藤哲雄 2008 PAC分析を効果的に利用するため

に 内藤哲雄・井上孝代・伊藤武彦・岸太一編著

PAC分析研究・実践集1 ナカニシヤ出版 19頁

8)藤田裕子 2007 日本人学生とのやり取りを通した

作文授業の影響−PAC分析による学習者理解 

JALT Journal 全国語学教育学会20.01 81-97

参照

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