γ線測定による駿豆断層の調査
著者 里村 幹夫
雑誌名 静岡大学教養部研究報告. 自然科学篇
巻 15
ページ 51‑58
発行年 1980‑03‑28
出版者 静岡大学教養部
URL http://doi.org/10.14945/00008241
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γ線測定による駿豆断層の調査
Examination of Sunzu Fault byγ・Ray Survey
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(Received Oct.6,1979)
ABSTRACT
It was recently proposed that Sun、zu Fault exists across the S登ruga Bay, by so田e
geologica1, geophysical and topograp}1三c investigations. However, the Fault 1ユas n◎t i)ee且f◎und by other geological surveys. The existence◎f the Fault魚ay play an加portant part of research olt tecto篇三cs i箆魚e whole a工ea neaコSuxuga Bay, Aγ一ず段y suごvey was carried◎ut綴◎ss the Fault。nもhe westera c◎ast of the Bay. The ncesult。btained d◎es
not supPort the ex三ste】3ce of the Fa竃ユ1t.薯.はじめに
西南日本周辺のフィリピソ海プレートとアジアプレートの境界は,杉村(ユ972)oの提唱以来,
南海トラフー一駿河トラフー田子ノ浦・酒匂川線一網模トラフを結ぶ構造線であるとの説が,
一般に受けいれられてきた。しかし,最近になって,田子ノ浦・酒匂州線の地質的実態ととら えられている神縄断層や国府津・松田断層の変位速度がプレートの運動速度に比べて小さすぎ るなどの理由により,必ずしも上記の構造線がプレートの境界ではないという考えがでてきて いる。例えば,伊豆半島周辺のプレートのもぐり口は,駿河トラフと伊豆東方線の二重構造に なっているという説2)・8)や,さらに進んで,伊豆半島全体が,駿河トラフと西相模湾断層を結 ぶトラソスフォーム帯を形成しているという説4)・5》などがある。また一方,駿河トラフは,プ レー一トのもぐり口としての逆断層によって生じたものではなく,左横ずれ断層(駿河湾断層)
によるものであり6),伊豆東方線が,プ,v一トのもぐりPを反映したものであろうという説も ある。駿豆断層とは,最後の説の根拠のiつとなっている亀ので,左横ずれの駿河湾断層と共 役な右横ずれ断層ではないかと考えられている。
そもそも,駿豆断層は,駿河湾の海底地形,地震活動,地殻変動などをもとに,茂木7)によ り,1974年伊豆半島沖地震(M=:6.9)を起こした断層の延長線上に,駿河湾をまたぐ活構造 線(E−−IF活構造線)が存在することが提起され(Fig。1),それに対応する活断層として,恒 石・杉山6)により,推定され名づけられたものである(Fig.2)。しかし,他の地質調査8}・9,で は,この断層は確認されていない。駿河湾周辺のプレートの境界は,駿豆断層が存在するか否 かにより決められるものではないが,駿豆断層の有無が,1つの重要なポイントになりうる可 能性も考えられるので,その有無を調べる補助手段の1つとして,推定されている断層周辺で
γ線測定を行った。
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γ線測定による駿豆断層の調査 53
2.ア線測定
活断層付近で放射線の量が増えることは,III本では,まず, Hatudaie}が理論的に検討し,
また,兵庫県の六甲断層などで,実際に地中空気の放射線を測定し,断層周辺は放射線が強く なっていることを報告している。最近では,γ線用シソチレーショソ・サーベイ・メータを用 いて,京都府の黄桀断層11)や花折断層12 ・X8)において,破砕帯の周辺でア線強度が増加するこ とが確められ,断層の位置や走向を推察するのに役立っている。また,未公表の資料によると,
1978年俳豆大島近海地震の地震断層についても,同様の結果が得られている。しかし,近畿地 方で第一級の濤断層とされている山碕断層では,顕著なア線強度の増加がみられない翰という 例もあり,今のところ,活断層周辺で必ず7線強度が増加するとはいいぎれない面もある。こ れらの測定例は,すべて,地質調査や地震震源分布などから,存在が確認されているか,ある
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駁 里村幹夫
いは確実視されている活断層ばかりであり,駿豆断層のように,存在そのものが問われている 推定断層を調べるために7線測定を試みるのは,今回が始めてであろう。
3.測定および測定結果
測定点を決めるために,まず,断層とほぼ直交している道路を選び,Fig.3に示すように,
断層をまたぐ長さ2km程度のA(岡部町桂島周辺), B(岡部町岡部周辺), C(焼津市吉津周 辺)およびD(焼津市小浜周辺)の4本の測線を作った。そして,その測線上に,Fig. 4に示
すように,断層の近くはほぼ25mごと,断層から離れたところはほぼ50mごとに,道路わき
の,舗装されていない,比較的自然の状態が保存されていると考えられるような場所を,測定 点に選んだ。ただし,断層の位置は,恒石・杉山の報告6》には詳しい記載がなされていないの で,A, B測線では少しずれているかもしれない。測定点には,各測線ごとに,北東から順に 測定点番号をつけた。測定計器は,京都大学防災研究所所有のアn力社製γ線用シンチレーシeソ・サーベイ・メ
ー…一^TCS−−121 C, No.96 R OO4を用いた。測定は,1979年8月22碍,23日および25日の3日 間行い,各測定点では,5秒ごとに12回の読取りを行って,最大値と最小値を除き,残りの 値の平均値をその点の読取値とした。また,毎日の測定の出発時と修了時および測定中の適当 時に,標準線源を罵いて計器の検定を行った。これらの検定結果をもとにして,各測定時の計 器定数を,時間に対して一次補間法で求め,読取値をこの定数で補正して,各測定点での測定
値を求めた。その結果をTableのOBSERVEDの欄に示す。なお,測定点の位置決定には,
岡部町および焼津市の1万分の1行政地図を利用した。
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γ線測定による駿豆断層の調査 55
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魚ヨnimum distaxxce from the Fault.各測定点ごとの測定値では,断層に関係する7線強度の有意なピークはみられないので,全 体の傾向をみるために,次の式を用いて前後7点の重みつき平均値14>を計算した。
灘・一(・・Ci−s + 2 ci−, + 3xi−,+4x・・−1−・3・・v・+t+2」Ci+2+x・・3) ………・…・・(i)
ここで,Ciはi番目の測定点の測定値,娩はゼ番目の測定点の重みつき平均値を示す。その
結果をTableのFILTEREDの欄およびFig.5に白丸で添す。 Fig.5の白丸をみると, C測
線ではちょうど断層の推定地点あたりで7線強度が強くなっている。しかし,800m程度しか 離れていないD測線の対応する揚所には,そのような傾向はみられない。A測線, B測線では,γ線灘定による駿豆断層の調査 57
推定していた位置にはまったくγ線強度の増加はみられない。しかし,A測線では,推定され る断層上より2㏄順南西寄りに7線強度の山がみられる。B測線では,全体的に北東上がり一 南西下がりの傾向がみられるが,それからのずれを考えると,推定される断層上より400m程 度南西寄りが少し強くなっているようにもみられる。この位置を付近の地形をもとにして南東 方向へ延長すると,ちょうど高草山の南西側斜面にくる。また,北西側へ延ぽすと,古第三系 瀬戸川層群の山体を侵食して流れている朝比奈川の谷へ続く。今回のγ線測定では,これらの 斜面や谷に沿う断層は予想していなかったので,それに対応するC,D測線の測定はなく,今 回の結果だけからは積極的に主張はできないし,また,ここに断層を認めている地質図はないようだが,高草山南西側斜面から朝比奈Jll流域にかけては,地形図上で北西一南東方向のリニ アメソトが認められ,断層があってもよいように思われる。それはさておき,憧石・杉山6}の いう駿豆断層付近では,今回の測定でみる限りにおいては,明瞭なγ線強度の増加ということ は,認められなかった。
5.まとめと今後の課題
すでに数箇所の活断層で増潴の傾向が表われることが確められているγ線強度を測定するこ とにより,存在そのものの可否が問題になっている駿豆断層の調査を行った。その結果は,推 定されていた断層の位融こは,7線強度の明瞭な増加は認められなかった。しかし,他の活断 層にも,γ線強度の増加が認められないものもあり,この結果だけからは,駿豆断層がないと はいいきれないが,その存在は否定的である。
今後は,活断層の存在が確認されている場所で,γ線測定の資料を蓄積し,7線強度と活断 層との関係をより明確にさせるとともに,その周辺の岩質や断層の活動度などとの関係を調べ る必要があろう。また,今回の調査からは推測の域を出ないが,高草山の南西側斜面に断層が 存在する可能性がでてきたので,とりあえず,今圓のC,D測線を南西方向へ延ばす測定を行
う予定である。
謝 辞
今回の調査にあたり,7線測定に関するすべての面にわたって懇切ていねいに指導していた だき,また測定計器を貸していただいた京都大学防災研究所の見野和夫氏に感謝いたします。
実際の測定に際しては,静岡大学理学部学生の川口哲也,遠山忠昭の両馬の助力をいただい た。また,断層周辺の地質や断層そのものについて,静岡大学教育学部の狩野as−一博±,静岡 大学教養部の佳藤通玄教授,環境アセスメントセソターの高木照正氏に有益な教示をいただい た。あわせてお礼申し上げます。なお,計算は静岡大学理学部の共用計算機を利用した。
(追記)本報告脱稿後,日本地質学会第86年学術大会講演において,恒石・塩坂により,m 頭にて,恒石。杉山6}が報告したような変位量を持つ駿豆断層の存在は否定された。
参 考 文 献
1)杉村新:日本付近におけるプレートの境界科学,42,192−2e2.(1972)
2)石橋克彦:「伊豆東方線一西摺模湾断層」と伊豆異常隆起の解*R−一フィリピソ海プレート最北境界 の二重構造一.昭称51年度地震学会秋季大会講演予稿集,29.(1976)
3)藤井陽一郎:南関東・東海地方の地殻活動の相互関連:フイリヅピン海プレー5北縁の最近の地殻ダ
イナミックス.地震i2,32,75−88.(ユ979)
58 里 村 幹 夫
4) 石橋克彦:f西相模湾地震」の可能性と東海地震との関連一相模湾・伊豆半島・駿河湾地域のサイ
スモテクトuクス試論一.地震予知連絡会東海部会資料,53−−68.(1977)
5)石橋克童:糧模湾〜俳豆半島〜駿河湾における大地震の発生様式.地震予知連絡会会報,ig,86−88.
(1978)
6)憧石幸正・杉山雄一:駿河トラフを横断する駿豆断層.地震予知違絡会会報,20,138・−141.(1978)
7)茂木清夫:伊豆・東海地域の最近の地殻活動の一解釈.東京大学地震研究所彙報,52,315−331.
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8)鮫島輝彦・俳藤通玄:大崩海岸地域の地質一鋤崩れ災害の地質学的背景一.静岡大学地学研究報
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9)高草山団研:静岡県高草山地域の層序と構造.地質学論集,16,157」167,(1979)
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