長野工業高等専門学校紀要第34号(2000) 57
高度交通管理を考慮した日々の学習過程と動的交通行動分析
柳沢吉保 高山純一 中沢伸樹 飯田恭敬
Analysis of Day‑to‑day Learning Processes and Travel Choice Dynamics in Traffic Networks Considering Real‑time Information and Signal Control
Yoshiyasu YANAGISAWA Jun‑ichi TAKAYAMA Shinju NAKAZAWA and Yasunori IIDA
Aday‑to・daydynamicframeworkisdevelopedtostudynetworkdynamicsunderreal・timeinforma‑
tionandresponsivesignalcontrolsystems.Twoleveloftripmakerdecision・makingprocessesareincorpo‑
rated:(1)day・to‑daydynamicsand(2)real‑rimedynamics.Inday‑to‑daydynamics,eachdriverusesa disutilityfunctionofperceivedtraveltimeandperceivedscheduledelaytoevaluatethealtemativetravel choices,thenselectsanalternativebasedontheutilitymaximizationprlnCiple.Day・to‑daydynamicsare governedbytripmaker'sdailylearningprocesses.Learningmodel,appliedtheBayesiantheorem,consider thetravelersupdatetheirtraveltimeperceptionsformonedaytothenextinlightofinformationprovided byITSandtheirpreviousexperience.Real・timedynamicsconsideren・routeswitchingdecisionsin responsetoreal・timeinformationonprevailingtrafficconditions.Trafficcontorolareevaluatedbythe actuatedcontrol.
Theframeworkisillustratedthroughnumericalexperimentstoinvestigatetheday・to・dayevolutionof networkflowsunderreal‑timeinformationandresponsivesignalcontrol,andassesstheeffectivenessof suchinformationinaproperdynamicperspective.
キーワー ド:ITS,動的交通行動,所要時間更新,学習過程, ベイズの定理,効用最大化理論
1. ま え が き
動的経路誘導 システムを導入す ることで, ドライ バーを適宜経路誘導 し,都市 ネ ッ トワークの渋滞 を 緩和す ることが期待 されている.一方,交通渋滞 は 交差点容量 の不足が影響す る場合が多 いため,ネ ッ
トワーク上 に存在す る信号交差点 も考慮 し,流入 フ ローの制御 を行 う必要がある.近年,情報提供 に対 す る ドライバーの経路選択特性に関す る分析 は行わ れているが,情報提供 と信号交差点流入制御の両面 を考慮 した渋滞緩和効果の分析評価 は十分行われて いない.既往 の研究 として高山 ら1)は,都市ネ ッ ト ワークの信号交差点で発生す る渋滞を考慮 した交通 量配分 の動的化を行 っている.動的 フローシ ミュレ ーシ ョンモデルを用いた経路誘導効果の評価分析 が
'第22回土木計画学研究発表会 ・講演集にて一部発表 日 長野工業高等専門学校環境都市工学科助教授 '日 金沢大学工学部土木建設工学科教授 HH 新潟大学工学部建設学科学生
HH●京都大学大学院工学研究科土木工学専攻教授 原稿受付 2000年9月29日
飯 田 ら2)によって先駆 的 に行 われた.、Mahmassani ら3)紘, リアル タイム情報提供下 での,信号制御 を 考慮 した 日々のネ ッ トワークフローの評価 を行 って いる. しか し過去の走行経験 も日々の経路 選択 に大 きな影響 を与 えると考 えられ るが, この点 が明確 に モデル化 されていない.MJha4)らは過去 の走行経 験 と提供情報による予測所要時間の学習過程 を考慮 した 日々の動的交通行動 シ ミュレーシ ョンモデルを 開発 している. しか し信号制御 による交差 点容量 の 変化 までほ分析 されていない.
以上を考慮 し本研究では,(1)過去の走行経験 の学 習 による知覚所要時間の更新,(2)提供情報 に対 す る 依存度を考慮 した知覚所要時間の修正,(3)信号交差 点での道路容量の変化, を考慮 した動的ネ ッ トワー
クフローの評価 システムの開発を試みた.
2.日々の動的シミュレーションの フレームワーク
本研究 における動的ネ ッ トワークフロー評価 シス テムは,図1に示す よ うに 「日々の動的選択行動」
58 柳沢吉保 ・高山純一 ・中沢伸樹 ・飯田恭敬
l 動的フローシミュレーション l
l l
図 1 動的ネットワークフローの評価システム
・「動的 フローシ ミュレ‑シ ョソ」・「交通管制」の 3つのシステムから成 っている.
日々の動的選択行動 システムでは,(丑ドライバー は前 日までの走行経験に基づいた利用経路 の混雑状 況を学習 し,知覚所要時間の更新を行 う.@知覚所 要時間に基づいて利用経路を選択す る. とくに通勤 な ど始業時刻が存在す る トリップの場合,出発時刻 も選択す る.(卦さらに情報利用者は,出発時 にある いは走行途中に交通管制 システムか ら提供 された所 要時間情報を考慮 し,知覚所要時間を修正 し,選択 経路の変更を行 う.以上①〜③ までの考 え方に基づ いたモデルを用 いて,各OD,経路 の出発時刻分布 を算出す る.
動的 フp‑シ ミュレーションシステムでは,信号 制御に伴 うリンク末端の容量変化や, リアル タイム 情報提供による経路変更行動に対す る渋滞 の時刻変 化を評価す る.そ こで短い時間間隔で変化す る リン
ク交通量を扱 う一般 リンクは, とくに(BフT,‑は下 流側の トリップ数の影響 は受けるが,上流側の トリ
ップ数の影響 は受けない.② リンクを移動 している フローは リンク容量を超 えない,などの条件を満た す. また交差点から上流側へ延伸す る渋滞 を扱 う交 差点 リンクは,③ ある時刻の交差点流入 フローの方 が交差点容量 よ りも小 さければ,同時刻に下流 リン クに流出させ る.④流入 フp‑の方が大 きければ交 差点容量を超過 した分だけ交差点 リンクに残留 させ, 次時点以降に下流 リソクに流出させ る.一般 リンク, 交差点 リンクともにFIFOの原則は保持す る,など
の条件を満たしなが ら,一般 リンクフローと交差点 リソクフローの時刻変化を表現で きるボ ックス型交 差点 フローアル ゴリズム5)を適用す る.
交通管制 システムでは, ドラ′ィ′,'‑の適正 な経路 誘導を促すため,道路交通状況の把握 ・データの収 集 ・加工に基づいた ドライバーへの情報提供 と信号 制御の2つのサブシステムか らなっている.情報提 供 と信号制御のための道路交通状況の把握 は,(丑前 日までや当日の前時刻までの実所要時間データが収 集 されている.(塾ビーコソを介 して, これか ら交差 点に流入す る,あるいは交差点か ら流出す るフロー の状沢, さらには各車両の目的地や利用予定経路が 把握 される.本 システムでは,目的地別の各時刻 ・ 各経路の実所要時間 と,交差点に残留 している,め
るいは次時点に交差点に流入す る交通量はフローシ ミュレーシ ョンに基づいて得 られ る.
3.日々の動的選択行動のモデル化
(1) 知覚所要時間更新のモデル化
ドライバーが n日日の行動を決定す るために知覚 す る目的地 まで の所要時間 Eは,前 日までに経験 した実所要時間 Tn1‑(Tl,T2,・・., Tn̲1)に基づ い ていると考 えられる.知覚 した所要時間に基づいて 行動 した結果,実際に生起 した所要時間がTnとす る.
ドライバーがn+1日目に知覚す る所要時間は,莱 際に生 じた所要時間砧と前 日までに生起 した rn1に よる, Tnに基づいて行われ ると考 えられ る. このよ うに日々繰 り返 される トリップによって所要時間を 学習す ることで,対象道路網の渋滞状況が しだいに 明 らかになる. ここでは学習過程 プロセスにベイズ の定理を適用す る.そこで ドライバーの知覚す る所 要時間のばらつ きを正規分布 で近似 し,n日日にお ける知覚所要時 間の確率密度関数p(Elrn‑1) はN
(En,Orn2) に従 うとす る.また,実所要時間は知覚 所要時間まわ りに分布す ると仮定す ると,n日日の 実所要時間の確率密度p(TnLど)はN(E,OT2)に従 うとす る.実所要時間Tnを得 ることで,(n+1) 日 日の知 覚所 要時 間 の確 率 密 度 関 数 p(Elrn)はN (En.1,6En.12)に従 うとす る.以上 の確率密度関数 を(1)式のベイズの定理に適用す る.
p(押 )‑ /P,'(EEl.;‑111','・P,'(TTnnl.EE',dE
知覚所要時間Eの期待値 と分散を以下に示す.
ら+1‑㍍・# ・OEn2
(1)
(2)
高度交通管理を考慮した日々の学習課程と動的交通行動分析 Orn4
Orn・.2=CEn2‑‑秤 (3)
分散を示す(3)式を見 ると,右辺第 2項の符号が正 であることか ら,経験回数nが増す ほど,分散 の値 が小 さくなることがわかる. これは走行経験が増 し, 実所要時間情報が蓄積 されるほど知覚のば らつ きが 小 さくな り,交通状態が明 らかになることに対応す る.期待値を示す(2)式では,右辺第 2項は知覚 と実 所要時間の差 と,知覚の分散からなる.知覚 と実所 要時間差が小 さくなれば,右辺第2項 はゼ ロに近づ き, 日々の知覚所要時間の変化は小 さくなる. また 走行経験回数が増す と,分散はゼ ロに近づ くことか ら,やは り右辺第2項が小 さくな り,知覚所要時間 の変化が小 さくなる.
経路あるいは出発時刻選択行動は,以上 の特性を 持つ知覚所要時間に基づいた交通選択行動 モデル6) により求める.
(2) 所要時間情報による知覚所要時間の修正 情報提供を受ける ドライバーは,走行途 中で提供 され る情報に基づ き,出発前 に知覚 した所要時間を 修正す る.前節の通 り,N(En,Orn2) に従 う出発前 の知覚所要時間の確率密度p(引rn1)は,走行途中 で提供 され る所要時間情報)によって,知覚所要時 閉はN(E〜R, 6‑En2) に従 う確率密度p(EITn‑1,))に 変更 され る.情報所要時間は実所要時間に基づいて 提供 され るため,実所要時間の平均値 まわ りに分布 す ると考 えられ,情報所要時間の確率密度p())は
N(i,OA2)に従 うとす る. ここで,n日日の知覚所 要時間Eと情報所要時間)の同時確率p(E,AlTn‑1) は,(4)式あるいは(5)式の関係がある.
p(E,AlTn‑1)‑p((Irn1,)) (4) p((lTn‑1,))‑p(E,Alrn‑1)/p()) (5) 式(5)より,情報提供後に更新 された知覚所要時間の 期待値は式(6)で,分散は(7)式で表 され る.
En‑6m・p・客 (A‑ i) (6) 6〜rn2‑Orn2(1‑p2) (7) 式(6),(7)のpはEと)の相関係数であ り,知覚所要 時間の修正における提供情報への依存度 と解釈す る.
したがってpの値が大 きい とき,情報)が大 きめで あれば,知覚所要時間は大 きめに修正す る.もしp の値が小 さければ,提供 された情報はあま り関係せ ず,知覚所要時間は大 きく修正 され ることはない.
知覚の分散 は,情報 に対す る依存度pが大 きいほ ど 情報提供後の分散は小 さ くなる. ドライバーは修正
された所要時間の短 い経路に変更す る.ただ し情報 提供を受けない ドライバーは,前節(1)で示 した よ う
59
JT l L i
一 一 ∴ 三 一 ■ ト ー 年 ‑ → く ト
r iit
:
.,ドr や
図2 交差点の リンク化
に,過去の走行実漬のみで知覚す る所要時間に基づ いて経路選択などを行 う.
4.動的フローシミュレーション5)
交通需要の時刻変化 に対応 したネ ットワークフロ ーを表現す る.ネ ットワークは一般 リンクと交差点 における交差点 リソクで構成す る.一般 リンクフロ ーをも リンク所要時間が自由走行時間 と遅れ待 ち時 間で表す ことができるので, リンクを自由走行箱 と 遅れ待ち箱によ り構成す る6).箱 には容量制約 が設 けられていて,渋滞のように容量以上 の交通量がか かった場合は, 自由走行箱 の最後端の箱以降の空 い ている部分にフローを埋めてい く.箱 の中のフロー は単位時刻 ごとに進行方向側の箱 に1つだけ移動 さ せ る. リソク所要時間は通過 した箱の数を数 えるこ とによって求まる.以上のルールを一般の リソクフ p‑に当てはめる.
交差点 における交差点 リンクは図2に示す よ うな 右左折直進 リンクで構成す る.飯 田 ら8)に よ り右左 折直進を考慮 したモデル化が行われているが, ここ では短い時間間隔で離散化 された各時点に対応 した 信号サイクルに基づ く交差点容量 の設定を考慮 した アル ゴリズムを明示す る. とくに①信号サ イクルに 基づいて各時点 ごとに容量を設定できる,(塾設定 し た容量に応 じて交差点で残留 していた フローと上流
リンクか ら流入 してきた フローを下流 リソクへ移す 量を算出できる,(参FIFOの原則 を保持で きる, こ
とを考慮 したアルゴ リズムを明示す る.
ある時点 に交差点の上流側 リンクか ら流入 した フ ローは交差点 リンクの空 き箱 にすべて移す.先 に交 差点に流入 した フローが先 に交差点を流出 させ るた め, 1つの箱に異なる時点 に流入 した フローは存在 させない.そこで交差点 リソクには容量制限のない 箱を複数存在させ る. また交差点への流入 フローは 交差点流出容量 よりも大 きくない限 り交差点で滞留 しないことを考慮 し,以下のアルゴ リズムで交差点 内のフローを動的に表現す る. まずある時間帯内の K時点 目の初期状態を図3.1に示す. この例 におい
60
[∃ 三 ㍍ ロ
国
山柳沢吉保 ・高山純一 ・中沢仲樹 ・飯田恭敬
堅塁 ∃.1三U::一一:lL:‑T 、E∃
K
':l‑ 2
tIA時点に流入したフロー':::I:̲'●■7、下 流 側 一
般 リンク上流側一般 リンクの [:= ]
先頭の箱\ 囲
上流鼎 〇 一禦
; I L 6
1 '交差点̲。S/R憶箱 ‑f霊芝三三ク 図3.1 K時点の交差点 リンクの初期状態
先頭フローの移動 ⊂=]
⊂ コ
匪表 圏下 流 側 一 般
リンク交 差 点 リ ン ク ○ム ー
交差点一時記憶箱/
図3.2 K時点の上流側 1)1/ク先頭のフローの移動
ー̲≡
一時記憶箱内 フローの移動
⊂:コ 。 下流側一般 リンク
̲L∴鰯 ‑警 讐
「 , ‑ o i
/1
交差点一時記憶箱
図3.3 K時点の交差点一時記憶箱のフローの移動
て交差点 リンクには時点K‑2,K‑1に上流側 リン クか ら流入 し,K‑1時点 まで交差点で残留 してい るフローがあ るもの とす る.
ス テ ップ1 :図3.2に示す よ うに,交差点 リソクの 一時記憶箱 に,上流側 リンクの先頭 の箱 の フローを すべて移す.
ス テ ップ2:交差点 リンクの箱 に容量制限を設 けな いので,図3.3に示す よ うに,交差点 リンクの空 き 箱 の先頭 に,K時点 に流入 した一時記憶箱 の中の フ
ローをすべ て移す.
ス テ ップ3:図3.4に示す よ うに,交差 点 リンクの 先頭の箱内の フローを,単位時間当た りの交差点流 出容量Cと等 しくなるまで下流側の リンクの一時記 憶箱 に移す. もし先頭 の箱内の フローよ りも交差点 流出容量Cの方が大 きければ 2番 目以降の箱 内の フ
ローも順番 に下流側 の一時記憶箱 に移す.
ス テ ップ4:交差点 リンクの先頭の箱 に空 きが生 じ
[= コ
園 児 *
‑ 3
‑I
… l' …‑ ∴‑‑:.:
国
且 ㌔ :流 出容 量上 流智 慧 f i SD ‑
図3.4 K時点の交差点 リンクフローの移動
彪 il
⊂ 二 才 ̲i
⊂ = 1 1‑7‑三二ム移㌫
上流忘 如 禁 教 リ ン ク
一時記憶箱
図3.5 K時点の交差点 リンクフローの移動
⊂:コ
匠 詔 [二二 ]
上流走□
扇 去01 妄 重 点 9 ‑ =
交差点リンク
下流側一般リンク
t I G s
上下 流 側
リンク一時記憶箱 B]3.6 K時点における交差点リンクフt]‑の最終状態
た ら,他 の箱内に残留 しているフローを空 き箱 に順 次移す. この ときFIFOの原則 を保持す るため,同 一の箱 に異時点流入 フローが混在 しないよ うにす る.
図3.5は交差点 リンクの先頭 の フp‑がすべて下流 側 リンク‑流出 した場合である.
以上のアルゴ 1)ズムによる交差点 リンク7°‑の K時点 の最終状 態を図3.6に示 す.下流側 リソクの 一時記憶箱 内の フローはこのK時点内に一般 リンク の箱 に移 され る.
以上 のアルゴ リズムによ り,交差点に流入す るフ ローと交差点で残留 していた フローの和が交差点流 出容量 よ りも大 きければ,交差点か ら上流側へ渋滞 が延伸す る状態 を再現 し,小 さけれは交差点 に残留 す ることな く通過 し,下流 リンクに移 る.
5.信号サイクルと交差点容量
ここでは図2で示 した信号交差点 の各流入部 よ り 流入す る交通量 に応 じて信号サイクルや育時間を設
高度交通管理 を考慮 した 日々の学習課程 と動的交通行動分析 定す る感応制御を行 う. また各交差点 ごとに信号制
御を行 う地点制御方式を適用す る.以下本分析 にお いて行 う流入 フローを考慮 した信号サイクルと青時 間の設定 と,信号制御に基づいて変化す る交差点容 量について説明す る.
(1) 信号サイクルおよび胃時間の算出7)
現示iにおける リンク 2の正規化交通孟 納 ま次式 により求めることができる.
aL(t)‑掌 (8) QIL(t)は時点tに リンク 2か ら交差点に流入す る実交 通重で,SILは リソク 2の飽和交通流率である.同様 にして現示jに リンク Pから流入するフローの正規 化交通量 O,I(t)を求め る.現示iの飽和度 は次式 に
より算出す る.
81・(t)‑m2aXeIP(t) (9)
同様 に して算出 した現示 jの飽和度 がOl*とす る と交差点飽和度は次式で得 られる.
ワ(t)‑拐*(t)+Oj* (10)
以上 より時点tの信号周期長S。(t)と青時間Gl(t)は 次式によ り算出す る.
sc(t)‑ #
G,(t)‑(Sc(t)‑L)×票 字
ただ し,信号周期長の最大値 は120‑180秒 なので, この範囲内で設定する.
(2)交差点の交通容量
時点 tにおいて現示iに交差点 に流入す る7°一 に対す る交差点容量G(t)は前項(1)で算出 した信号 周期長 と青時間を用いて次式で表す ことができる.
cl(t)‑SLx 昔 静 舶)
現示 jの青時間は,信号周期長から現示iの青時 間および黄時間Yを減 じることで得 られ るので,吹 式 より算出 した.
C.(t)‑sLxS'(t)‑sc?t()t) Y u¢
SILは現示 jI)ソク 2の飽和交通流率である.
(3) ビーコンによる実交通塁の計測 と信号制御 前節で示 した各現示の交通容量 は正規化交通量 に 基づいた青時間 と交差点飽和度か らなる.正規化交 通量は実交通量から計算 される構造になっている.
したがって, ビーコンにより交差点へ流入す る交通 量を正確 に把握できれば,そのフローに対 し効果的 な信号制御が行 うことができる.本研究では信号サ
61
図4 モデルネットワーク
イクル ・青時間 と交差点容量を結 びつけ,信号設定 の時間変化を考慮 したマクロなネ ットワークフロー を評価す る.
6.数値実験
(1) モデルネ ットワークの設定
モデルネ ッ トワークを図2に示す.図の ノー ドを 信号交差点 とす る5).ODl経路1は幹線 ルー トとし, 自由走行時間が比較的短 く, リンク容量 を大 き く設 定 しているが,主要交差点が3つあ り,混雑 を起 こ
しやす くしている.一方,ODl経路2は経路 1の 迂回路であ り,自由走行時間が長 く, リンク容量 は 小 さい.幹線 と迂回路 は リンク4の ところで合流 し ている. シ ミュレーシ ョン時間帯 にかか る全需要量 はODlが1350台,OD2が250台,OD3が500台,
OD4が250台 とす る. また対 向車 需 要 量 は50(台/
5min)と設定 した.
(2)ドライノミ‑の交通行動特性 の設定
通勤交通を想定 し,通勤効用関数6)のパ ラメータ は所要時間に関 し0.05,始業時刻 に対す る早着時間 に関 し0.05,遅着時間に関 し0.16と設定 した. また 情報利用者は全需要の70%とし, ドライ,(‑の情報 提供に対す る依存度を0.75とした.そ して1単位時 間5分間隔でシ ミュレーシ ョンを行 った.
(3)ケースの設定
ここでは,情報提供あるいは信号制御 の有無が, 経路や出発時刻選択 に与 える影響を分析す る.情報 が提供 される場合,情報利用者は式(6),(7)に従 って 知覚所要時間を修正 し,事前の選択経路 を変更す る.
62 柳沢吉保 ・高山純一 ・中沢伸樹 ・飯田恭敬 信号制御が行われ る場合 は,交差点流入 フローに応
じた青時間が設定 され7),交差点容量 が変化す る.
信 号制 御 が行 わ れ ない場 合,交差 点容 量 は60(台/
5min)に固定す る.表1に設定 した ケースを示す.
表1 ケースの設定 (行 う:○,行わない :×)
(4) 実験結果 と考察
ここでは,道路容量 の大 きい幹線道路 と迂 回路 か らなるODlの経路選択行動 と渋滞緩和効果 につ い て検討す る.表2に各経路 の平均所要時間 とネ ッ ト
ワーク総所要時間を示す. また ケース3と4の出発 時刻 と実所要時間分布 を図3に示す. なお結果 は, 日々の選択行動 において出発時刻分布が前回に対 し て変化 がな くなった収束状態を示 した ものである.
表2 各経路平均所要時間と総所要時間(分) ケース ル ー ト1 ルー ト2 総所要時間
1 72.4 72.8 112465 2‑ 82.7 70.1 123666 3 66.1 80.0 111224 4 67.9 75.3 108999
表1か らケース1の よ うに交差点容量 が 日々の変 化 も時刻変化 も起 こさず一定で,情報提供 もされな い と, ドライ,i‑は各 自の走行経験 か ら最 も通勤不 効用が小 さ くなるよ うな交通選択行動が行われ る.
その結果各 ルー トの平均所要時間が等 しく, ほぼ均 衡 に近 い状態が生 じていることがわかる. ところが 他 のケースの よ うに情報提供や信号制御を行 うと均 衡状態が崩れ,各経路 の所要時間差が大 き くなる.
ケース2の よ うに情報依存度の高い ドライバ ーに情 報提供 のみ行 った場合 は,所要時間の短 い経路 に ト
リップが集 中 し, よ り大 きな渋滞を生起 させ る可能 性 があ ることを示唆 している. ケース3は情報が提 供 され ないが,信号制御 は行われている. したが っ て自由走行時間が短 く, トリップが集中 しやす い経 路1の交差点容量が大 きく設定 されやす いため,経 路間の所要時間差が大 き くなることが図3の所要時 間分布 からも分 かる. ケース4では,所要時間情報 が ドライバ ーに提供 され るため,所要時間の大 きい 経路2が回避 されていることが図3の出発時刻分布 か らも分か る. したが って経路2の所要時間が大 き
く改善 され,総所要時間が最 も小 さ くなった.
201800
160
品 140
きヨ て;462;0000 二ふ 臥臥 0908076;3芝lo0〈:慧0転O淋0至p
出発時刻
⊂=::コ軽路1出発分布
⊂:=コ経路2出発分布
‑■「経路1平均実所要時間
‑サト 経路2平均実所要時間
250200
石義 150
<&召 105000 二nL相 浦 . 90806…750一1oo0 至0 匹… 琵00 皆.I
出先時刻
…E==コ 経路 1出先分布
⊂=:コ 2
+ 軽路1平均実所要時間 一派‑経路2平均要所零晴間
(b)ケース4
図5 出発時刻分布 と所要時間分布
7.まとめ
本研究の成果 は次の通 りである.
(1) 情報提供だけでは,一部の経路 に交通量が集 中 して しまい,大 きな渋滞が生 じる可能性がある.
(2)信号制御 のみを行 った場合 も,交差点流入交通 量 の多 い方向に青時間が長 く与 えられ るため経路間
の所要時間に大 きな差が生 じるおそれがある.
(3)信号制御 と情報提供 を組み合わせ ることで,更 なる渋滞緩和効果が期待できる.
本論文では,簡単な例題 を通 して,提案 したシス テムの基本的なパ フォーマンスを検討 してみた.今 後の課題 として, さらに実際的 なネ ッ トワークに適 用 し,勤的 フローシ ミュレーシ ョンシステムの精微 化 を図 るとともに,高度交通管理 システムへの展開 を試みたい.
高度交通管理を考慮した日々の学習課程と動的交通行動分析
参 考 文 献
1) 井上 ,高山 :信号交差点を組み込んだ時間交通量配 分モデルの動的化に関す る研究 ,第30回 日本都市計画 学会学術論文集,pp.637‑642,1995
2) 飯田,藤井,内田 :勤的交通流シ ミュレーシ ョンを 用いた道路網における情報提供効果に関す る分析 ,交 通工学Vol.31No.6,pp.19‑28,1996年
3) TA‑YIN HU,HS.MAHMASSANI:Day・to‑Day EvolutionNetworkFlowsunderReal‑Timelnfor一 mationandReactiveSignalControl,Transpn.Res.
‑C,Vol.5,pp.51‑69,1997
4) M Jhaetal.:Perceptionupdatingandday‑to‑day travelchoicedynamicsintrafficnetworkswith
63 informationprovision,TranspnRes.‑C,γol,6,pp.
189‑212,1998
5) 柳沢 ,高山 :信号交差点を考慮 した高度交通管理の ためのネットワーク771‑の評価 ,第19回交通工学研 究発表会論文報告集,pp.29‑32,1999年12月 6) 飯臥 柳沢 ,内田 :通勤交通の経路選択 と出発時刻
分布の同時推定法 ,土木計画学研究 ・論文集 No.9 pp.93‑100,1991年11月
7) 例 えは藤田大二編交通工学実務双書 :交通現象 と交 通容量 ,第4章 道路の各区間における交通容量 8) 飯田,内田,藤井 ,庶尾 :渋滞の延伸を考慮 した動
的交通流シ ミュt/‑シ ョソ,土木計画学研究 ・講浜集 , No.14(1),pp.301‑308,1991