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「難病の患者に対する医療等に関する法律(難病法)」

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(1)

Ⅰ.はじめに

近年、長期療養を伴う難病疾患の療養者は増加し ており、在宅において難病疾患をもつ療養者の生活 を支えていくことは必要不可欠である。現在は、

「難病の患者に対する医療等に関する法律(難病法)」

(2014年)により、難病の患者に対する医療等の総 合的な推進を図るため、医療費助成や療養生活環境 整備事業の実施が進められている

1)

わが国の神経難病の総数は892,445人であり、そ のうち筋萎 縮性 側索 硬 化 症(amyotrophic lateral sclerosis, ALS:以下ALS療養者)は9,636人である

2)

。 全国のALS療養者6,180人に対して、4,730ヶ所の訪 問看護ステーションが看護を提供している(平成 13年度)

3)

。これらのことから、多数のALS療養者 が訪問看護ステーションを利用しており、訪問看護 師がALS療養者の生活を支える役割を担っている ことがわかる。神経難病を持つ療養者は、自宅で医 療・介護を受けて生活しており、訪問看護師は療養 者の病の進行に合わせて身体的側面、心理社会的側

面への介入が求められる。

ALSは、一次運動ニューロンと二次運動ニュー ロンの変性脱落により、随意運動が障害される疾患 である。症状は進行性であり、四肢・体幹の筋力が 徐々に低下し、球麻痺症状である構音障害や嚥下障 害、呼吸筋障害が生じ、療養者は早期に経管栄養や 呼吸器装着の決断を迫られる。また構音障害が進行 すると言葉が発しにくくなり、そのような場合に は、うなずきや表情、文字盤や口文字、スイッチ、

パソコンによる意思伝達装置を用いて、コミュニ ケーションを維持していく

4)

。病気の進行に伴い、

徐々に体が動かなくなる状況の中で、最後まで自ら の意思を持つALS療養者にとって、ケア提供者は コミュニケーションツールをうまく活用しながら、

療養者の意思を確認し、生活を支援していく必要が ある。

現在の看護基礎教育においては、臨地の状況をリ アルに示した学習の方法として、模擬患者による学 習、シミュレータを活用した学習、客観的臨床技術

視聴覚教材から学ぶ在宅筋萎縮性側索硬化症療養者への支援

-療養者の意思を尊重した支援を中心として-

福井郁子 田中博子 佐藤亜月子

帝京科学大学医療科学部看護学科

Audiovisual learning materials for students to help understanding support of patients with amyotrophic lateral sclerosis living at home

-as a central focus on supports to respect the patient's will-

Ikuko FUKUI Hiroko TANAKA Atsuko SATO

Department of Nursing Teikyo University of Science

Abstract

 Patients with intractable diseases are increasingly receiving long-term treatment at home. It is difficult for students to imagine the home life of patients with amyotrophic lateral sclerosis (ALS), which is an intractable neurological disease. These students have few opportunities to learn the practice of nursing with these patients, therefore, how to teach the nursing skills for these patients is an issue in the field of nursing. The purpose of this study is to use audiovisual materials to help students understand their patients with ALS and clarify their learning to support of patients with ALS living at home. Nursing students must learn how to support their patients with ALS who want to live in a familiar area by creating a system to provide 24-hour support for their patients. In doing so, they can maintain their patients’ quality of life using the knowledge, skills, and attitudes that they have mastered. Therefore, the nurses can help the hopes of their patients with ALS to come true and maintain their mental health. The incorporation of audiovisual materials in learning allows nursing students to imagine the life of patients with ALS living at home by listening to their stories.

キーワード:在宅筋萎縮性側索硬化症療養者、視聴覚教材、意思決定支援

Keywords : amyotrophic lateral sclerosis patients living at home, audiovisual materials, support of decision‐making

(2)

試験等が導入されている。坂本ら

5)

は、成人看護実 習前準備教育の1つとしてDVD学習を用い、疾患 の観察やアセスメントの視点、援助のポイント、患 者への関わりについての学習を行っている。しか し、半数以上の学生が実習にあまり役に立たないと 回答しており、効果的な学習にするためには、学生 に到達点を示し、関わりについての解説を取り入れ ていく必要性を述べている。在宅看護学領域におい ては、片山ら

6)

の研究で、実習前の訪問看護に関す る視聴覚教材を用いた学習の報告がされている。そ れによると、実習前は、ビデオ視聴学習から訪問看 護の特徴と在宅ケア技術に関する学びが多く、実習 後は家族や社会資源の活用・連携の学びが多かった ことが示されている。このことから、ビデオ視聴学 習では訪問看護の対象や援助などイメージしやすく なることが考えられる。

学生は、神経難病をもつ療養者の生活の様子に触 れることや、看護の実際を学ぶ機会が少ないことに より、自宅で生活する難病疾患であるALS療養者 をイメージすることは難しく、在宅看護学領域の授 業において、どのように教授するかは課題である。

そこで、視聴覚教材を活用した学習が有効的な結果 が得られるのではないかと考え、視聴覚教材を使用 した学習を試みた。

本研究は、ALS療養者のイメージを助けるために 視聴覚教材を使用し、在宅ALS療養者への支援に対 する学生の学びを明らかにすることを目的とする。

Ⅱ.研究方法

1.対象者およびデータ収集方法

2017年度における在宅看護援助論Ⅱの授業で、

視聴覚教材を視聴して学習した3年次の学生を対象 とする。在宅看護援助論Ⅱは看護学科3年次前期の 必修科目であり、2単位30時間である。履修学生 83名のうち、研究の同意が得られた81名を対象と した。

今回、使用した視聴覚教材は、『ライフヒスト リー:ALS(筋萎縮性側索硬化症)岡部宏生さんの 場合:DVD』

7)

(39分)である。主な内容は①ALS の発症、②人工呼吸器をつけるということ、③介護 をされること、④生きること、⑤口文字について、

療養者本人の語りを中心に構成されている

7)

。DVD 視聴後に「住み慣れた地域で生活したいという意思 をもったALS療養者にどのような支援が必要か」

という問いを設定し、記録用紙に記載してもらっ た。

在宅看護援助論Ⅱの授業で療養者のDVD視聴学 習を行う目的は、当事者の生の声で、当事者の語り を聞くことによって、学生はよりリアルに在宅で療 養生活するALS療養者の姿がイメージでき、この 後に計画しているALS療養者の事例を用いた看護 過程の導入がスムーズに行われることを意図してい る。

2.データ収集期間 2018年6月27日

3.分析方法

データ分析には、質的研究デザインのBerelson, B.の方法論を参考にした内容分析

8)

を用いた。学生 から提出された記録用紙をデータとし、それを基に 逐語録を作成した。逐語録を繰り返し読み、内容を 把握した。「住み慣れた地域で生活したいという意 思をもつALS療養者にどのような支援が必要か」

という問いを設定し、学生が学んだ「住み慣れた地 域で生活したいという意思をもつALS療養者への 支援は〇〇である」を問いに対する回答文とした。

関連する内容のデータを切片化し、文脈単位で抽出 した。文脈単位から、一つの意味を持つ記録単位に 分割し、文脈を変えないようにコード化した。記録 単位は類似性と共通性に従い、同一記録単位群を抽 出し、さらに統合させてカテゴリを抽出した。各カ テゴリに含まれた記録単位の出現頻度を数量化し、

カテゴリ毎に集計した。カテゴリ抽出の際、質的研 究を行っているメンバー間でカテゴリ間の関係性や 類似性、妥当性を検討した。

4.倫理的配慮

本調査は、帝京科学大学「人を対象とする研究計 画等審査委員会」による承認を得て行った(承認番 号 第17021号)。DVD視聴の前に、学生には研究 の目的と方法について口頭で説明を行い、研究協力 を求めた。研究協力の有無が成績に一切関わらない こと、研究協力を撤回しても何ら不利益を受けるこ とがないことを伝え、提出をもって同意とみなし た。調査で知り得た内容に関しては、厳重に情報管 理し、匿名性の保持に努めた。

Ⅲ.結果

81名分の記述から形成された記録単位のうち、

学生が考えた住み慣れた地域で生活したいという意

思をもつALS療養者への支援に関する記録単位の

(3)

総数152を分析した結果、3つのカテゴリと10の同 一記録群、40の記録単位(要約)に分類された(表 1)。

以下、カテゴリを【 】、同一記録群を< >、

記録単位(要約)を「 」で示す。

学生は、視聴覚教材を使用した学習を通して、住 み慣れた地域で生活したいという意思をもつALS 療養者への支援として、【24時間生活を支えるため の体制作り】【看護師が身につけた知識・技術・態 度を駆使して生活を維持する】【療養者の意思に沿 い希望を実現する】ことを学んでいた。

1. 【24時間生活を支えるための体制作り】につ いて

このカテゴリは、記録単位数36で23.7%を占め た。<24時間介護を必要とする生活を支える体制 を整備する><フォーマル・インフォーマルなサ ポートを活用する><周囲の人々の理解と協力を得 る>の3つの同一記録群で構成された。記録単位

(要約)は、「24時間介護ができるヘルパーが存在 する」「吸引や口文字ができるヘルパーを増やす」

「24時間介護を受けるために複数の事業所を利用す る」「訪問看護師やホームヘルパーを活用する」「ボ ランティアなどを活用する」「周囲の人々に病気を 理解してもらう」「周囲の人々に協力を得る」「周囲 に自らの病について発信する」などであった。

2. 【看護師が身につけた知識・技術・態度を駆使 して生活を維持する】について

このカテゴリは、記録単位数75で49.3%を占め た。<療養者と向き合い信頼関係を築く><コミュ ニケーションツールを用いて意思疎通の手段を確保 する><療養に必要な知識・技術を活用してケアを 提供する><療養しやすい環境を整える>の4つの 同一記録群で構成された。記録単位(要約)は、

「ALSの知識をもち信頼関係を築く」「情報を誠実 に伝え信頼関係を築く」「療養者に向き合う」「繊細 な気遣いと思いやりをもつ」「口文字や文字盤を活 用する」「意思疎通の手段を確保する」「ALSの知 識をもつ」「療養者の病状を観察する」「療養しやす い環境を整える」「生きる希望を持ち続けるための 環境づくり」などであった。

表1 住み慣れた地域で生活を送ることを望む在宅ALS療養者への支援

記録単位(要約) 同一記録群(数) カテゴリ(数)%

24時間介護ができるヘルパーが存在する/吸引や口文字ができ るヘルパーを増やす/24時間介護を受けるために複数の事業所 を利用する/外出時の介護体制を整える/信頼できる医療者の存 在

24時間の介護を必要とする生活を

支える体制を整備する(19) 24時 間 の 生 活 を 支えるための体制 作り

(36)23.7%

訪問看護師やホームヘルパーを活用する/制度や自治体のサポー

トを活用する/ボランティアなどを活用する フォーマル・インフォーマルなサ

ポートを活用する(7)

周囲の人々に病気を理解してもらう/周囲の人々の協力を得る/

周囲に自らの病について発信する 周囲の人々の理解と協力を得る(10)

ALSの知識をもち信頼関係を築く/情報を誠実に伝え信頼関係 を築く/療養者に向き合う/繊細な気遣いと思いやりをもつ/療 養者の思いを理解する/療養者の気持ちに寄り添う

療養者と向き合い信頼関係を築く

(51) 看護師が身につけ

た知識・技術・態 度を駆使して生活 を維持する

(75)49.3%

口文字や文字盤を活用する/意思疎通の手段を確保する コミュニケーションツールを用いて

意思疎通の手段を確保する(8)

ALSの知識をもつ/療養者の病状を観察する/十分な観察と確

実な吸引技術をもつ/一人一人に応じたケアを提供する 療養に必要な知識・技術を活用して

ケアを提供する(10)

療養しやすい環境を整える/生きる希望を持ち続けるための環境

づくり/生活を維持する 療養しやすい環境を整える(6)

自ら意思決定できる/意思を尊重する/生命に関わる決断におけ る意思決定を支える/療養者の意思を確認する/生きる道を選択 できる支援

生命に関わる決断を自ら意思決定で

きるように支える(13) 療養者の意思に沿

い希望を実現する

(41)27.0%

生きることに価値を見出していく/生きがいや希望を一緒に見つ ける/療養者自身の力を発揮できるようにする/生きる希望を叶 える/積極的に社会参加する

生きがいや希望、生きる価値を見出 し、力を発揮できるように関わる

(16)

同病者との交流をもち新しい生き方を見出す/同病者の生き方を 知り励みとする/同病者の役に立ちたいという気持ちを支える/

同病者との気持ちを共有し生きる/希望を見つける

同病者との交流の機会をもち、自己 の新たな生き方を見出す(12)

(4)

3.【療養者の意思に沿い希望を実現する】について このカテゴリは、記録単位数41で27.0%を占め た。<生命に関わる決断を自ら意思決定できるよう に支える><生きがいや希望、生きる価値を見出 し、力を発揮できるように関わる><同病者との交 流の機会をもち、自己の新たな生き方を見出す>の 3つの同一記録群で構成された。記録単位(要約)

は、「自ら意思決定できる」「意思を尊重する」「生 命に関わる決断における意思決定を支える」「生き ることに価値を見出していく」「生きがいや希望を 一緒に見つける」「生きる希望を叶える」「同病者と の交流をもち新しい生き方を見出す」「同病者の生 き方を知り励みとする」などであった。

Ⅳ.考察

1.【24時間の生活を支えるための体制作り】

このカテゴリは、<24時間介護を必要とする生 活を支える体制を整備する><フォーマル・イン フォーマルなサポートを活用する><周囲の人々の 理解と協力を得る>の3つで構成されていた。<

24時間介護を必要とする生活を支える体制を整備 する>では、ALSは治療方法が確立しておらず、

長い療養生活を送ることになる。そのため、病気の 進行により呼吸筋障害による痰の喀出困難、人工呼 吸器の装着による管理が必要となる。このような状 態の場合、ALS療養者にとって痰の吸引が行える ホームヘルパーとの協働、フィジカルアセスメント を行い、吸引技術や人工呼吸器管理が行える訪問看 護師の存在は重要である。学生は、病状が進行する と徐々に動けなくなり、全介護が必要になっている ALS療養者の姿から、住み慣れた地域で生活を望 む療養者を支えるためには、【24時間の生活を支え るための体制作り】が必要となることを学んでい た。

「難病の患者に対する医療等に関する法律」の基 本理念は、「難病の患者に対する医療等は、難病の 克服を目指し、難病の患者がその社会参加の機会が 確保されること及び地域社会において尊厳を保持し つつ他の人々と共生することを妨げられないことを 旨として、難病の特性に応じて、社会福祉その他の 関連施策との有機的な連携に配慮しつつ、総合的に 行われなければならない」

1)

と述べている。このよ うに国全体でALS療養者が地域で生活できるよう な社会資源の整備が求められているが、現実は十分 に整えられているとはいい難い。平野

9)

は、在宅人 工呼吸療法を行うALS療養者の医療・福祉サービ

スの利用状況においては、訪問看護と訪問介護は重 症度が高くなる程利用されていたが、レスパイト入 院は重症度が高くなる程利用されていないことを報 告している。これは家族介護者の負担軽減のための レスパイト入院が社会資源不足のために十分利用さ れていないことが考えられる。このような社会資源 の不足を鑑みると、住み慣れた地域で生活を望む療 養者を支えるためには、<フォーマル・インフォー マルなサポートを活用する>という、訪問看護師や ホームヘルパーによるフォーマルなサポートに加 え、ボランティアや友人などのインフォーマルなサ ポートの活用が必要である。視聴覚教材では、それ らを組み合わせながら生活している現状が示されて いた。実際には、複数の訪問看護ステーションやヘ ルパーステーションを利用しながら生活を送ってい るため、様々なサポートを受けるには、<周囲の 人々の理解と協力を得る>ことが必要となる。ま た、周囲の人々に自身の病気を理解してもらうため に、療養者本人は、自らの病についてSNSや講演 活動を通して、社会に発信していた。24時間の生 活を支えるためには、周囲の人々の理解と協力が必 要であり、視聴覚教材からはそのようなことも映像 に映し出されており、理解が深まったと思われる。

24時間介護体制を確立するためには、ALSのよ うな24時間365日、常時介護を必要とする場合、

「重度訪問介護」の制度を用いる。これは24時間 365日訪問ヘルパーが吸引などの介護ができるよう に、3名のヘルパーが8時間交代で介護する体制の ことである。学生は視聴覚教材を用いた授業から、

家族介護者がいない独居のALS療養者もこのよう なサービスを利用し、体制作りを整えることが看護 師の役割であることを学んでいた。

2. 【看護師が身につけた知識・技術・態度を駆使 して生活を維持する】

このカテゴリは記録単位数の約半数を占め、この ことから学生は、住み慣れた地域で生活したいとい う意思をもつALS療養者への支援のうち、【看護師 が身につけた知識・技術・態度を駆使して生活を維 持する】ことが看護師の支援として求められている ことを多くの学生が学んでいたと読み取れる。この カテゴリは、<療養者と向き合い信頼関係を築く>

<コミュニケーションツールを用いて意思疎通の手 段を確保する><療養に必要な知識・技術を活用し てケアを提供する><療養しやすい環境を整える>

の4つで構成されていた。<療養者と向き合い信頼

(5)

関係を築く>では、DVDの中でALS療養者は医師 からALSという診断名を伝えられず、不信感を募 らせていたことが語られ、「情報を誠実に伝え信頼 関係を築く」ことの重要性を多くの学生が認識して いた。長い療養生活を送るALS療養者にとって信 頼できる医療者の存在は、ALS療養者が病の進行 に対応し、在宅での生活を継続していくことにつな がると考えられる。そのため<療養者と向き合い信 頼関係を築く>ことができるように、病気の知識を もち、情報を誠実に伝えることが信頼関係を築き、

かつ療養者と向き合い、意思を尊重することが求め られる。

また、ALS療養者は自らALSを調べることで、

病気の進行により全く自分では動けなくなる未来を 想像してしまうため、将来への不安が強く、絶望感 も強いことが考えられる。三浦らの研究

10)

では、

人工呼吸器を装着したALS療養者の苦悩には、在 宅で人工呼吸療法を続けることの不安、目で表現し ていることをしっかり受け止めてくれない他者の存 在と自分の存在価値への疑問、家族の介護負担に関 する苦しみが存在しており、そのため在宅で人工呼 吸療法を安心して受けられる技術的支援の必要性を 述べている。本研究でも、コミュニケーション障害 が進んでも、アイコンタクトや口文字、文字盤、意 思伝達装置などの<コミュニケーションツールを用 いて意思疎通の手段を確保する>ことは、ALS療 養者の苦悩を軽減し、療養者が望む<療養しやすい 環境を整える>ことにつながることを学んでいた。

DVDの中で訪問看護師は、病気の知識と観察によ るフィジカルアセスメントと確実な医療技術によっ て、症状の安定と異常の早期発見・早期対応を行っ ていた。また、胃ろうや人工呼吸器、吸引などさま ざまな医療機器を訪問看護師が安全に取り扱うこと によって、療養者が安心して生活を送り、在宅療養 を維持することが可能となることを関わりの姿から 伝えていた。学生はそれらのことを含め、訪問看護 師は、<療養に必要な知識・技術を活用してケアを 提供する>関わりを行っているということが理解で きていた。

3.【療養者の意思に沿い希望を実現する】

このカテゴリは、<生命に関わる決断を自ら意思 決定できるように支える><生きがいや希望、生き る価値を見出し、力を発揮できるように関わる><

同病者との交流の機会をもち、自己の新たな生き方 を見出す>の3つで構成されていた。片山らの研究

6)

においても、DVD視聴学習により訪問看護の対象 者を理解しやすくなり、本研究でも療養者の思いや 希望、生きることに価値を見出すなど、相手の気持 ちに寄り添う看護を学んでいた。DVD視聴学習に より療養者の思いや希望を学んだ学生は、さらに実 習を通して学びが深められると考えられる。平野の 研究

11)

では、在宅侵襲的人工呼吸療法を行うALS 療養者において、身近な心の支えになる他者や些細 な楽しみの維持・創出を目指す支援が重要であり、

Hopeを向上し、よりよい療養生活を目指すために は、社会とのつながりや意思伝達装置のパソコンを 利用することが有用であると述べている。意思伝達 について記録単位では、「自ら意思決定できる」「意 思を尊重する」「生命に関わる決断における意思決 定を支える」といった意思決定支援に関することが 記載されていた。本研究では、ALS療養者が呼吸 筋障害により人工呼吸器をつけるかどうか生死に関 わる決断についての意思決定をALS療養者自らが 行えるように支援すること、療養者が人工呼吸器を つけてからの長い生活の中で、「生きることに価値 を見出していく」「生きがいや希望を一緒に見つけ る」など自己実現を支える関わりを行うことなどを 学んでいた。また、患者会などで「同病者との交流 をもち新しい生き方を見い出す」「同病者の生き方 を知り励みとする」など、同病者との交流をもつこ とで、自己の新しい生き方を見出すことにつながる ことが理解できていた。

ALS療養者の思いの理解を深めるための一つの 手段として、『生きる-神経難病ALS患者たちから のメッセージ』

12)

という、ALS療養者35名の闘病 記を記載した著書の活用がある。その著書の中で ALS療養者は、異変の気づきから療養の場の決定 など、本人が自分の人生として意思決定していかな くてはならない重要な場面での、葛藤や心の揺れ動 きなどを述べている。文中には「検査をした結果 ALSだと告知されました。正直言って、はじめて 聞く病名で、何がなんだかわからなくなりました が、先生の様子から、ただごとでないことは察する ことが出来ました。…(略)…また、患者の集まり にも参加して、病気と向き合って生活している方が 他にたくさんおられることを知り、大変勇気づけら れました

12)

」「多くの患者や家族に出会い、その不 安や悩みを知り、同感し、前向きに生きている方か らは励まされ、生きる力を与えられました

12)

」など が記載されており、このことから書籍によっても、

ALS療養者の思いを読み取ることはできる。しか

(6)

し、DVD視聴学習はALS療養者の葛藤や心の揺れ 動きが、表情、意思伝達装置や口文字を用いて伝え られる意思、そこにナレーションが加わることに よって、よりリアルな状況として映し出されること で、学生の心に深く訴えることができる。そのこと で学生の前にALS療養者がいるかのような体験が でき、療養者の意思に沿い希望を実現する訪問看護 師の関わりのあり方について思考することが可能と なる。

4.今後の課題

今回、視聴覚教材を使用した在宅ALS療養者へ の支援に対する学生の学びでは、訪問看護で重要と なる家族介護者の視点があまり含まれていなかっ た。それは、独居のALS療養者のDVD視聴学習で あったためである。しかしながら、角度を変えて考 えてみると、信頼できる職種によって、24時間の 生活を支えるための体制作りが行われていれば、独 居でも在宅療養生活を送ることができるということ である。そのため今後の課題としては、そのような 解釈ができるよう多様な意見が聞ける授業展開を工 夫していく必要がある。また、坂本ら

5)

の報告のよ うに、DVD学習では家族の関わりなどが見えにく いため、教員から家族介護者に対する視点を含めた 補足解説があると学生の理解を助けると考える。

Ⅴ.結論

学生は視聴覚教材を視聴して、住み慣れた地域で 生活したいという意思をもつALS療養者の支援と して、【24時間の生活を支えるための体制作り】【看 護師が身につけた知識・技術・態度を駆使して生活 を維持する】【療養者の意思に沿い希望を実現する】

を学んでおり、視聴覚教材を用いた学習の効果を確 認できた。

本研究は、帝京科学大学平成30年度共通研究費 の支援を受けて実施した。

引用文献

1) 厚 生 労 働 省: 第 2 編 保 健 衛 生 第 1 章 保 健,

https://www.mhlw.go.jp/toukei/youran/

indexyk_2_1.html(2019.9.19)

2)厚生労働省:ALS患者数・訪問看護実施施設 数,https://www.mhlw.go.jp/shingi/2003/02/

s0203-2f.html(2019.9.19)

3)厚生労働省:難病の患者に対する医療等に関す る 法 律,https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shin gikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/

0000052488_1.pdf(2019.9.19)

4)川村佐和子監修,中山優季編集:

【改訂版】

ナーシングアプローチ難病看護の基礎と実践-

すべての看護の原点として

,桐書房,2016,

pp.59.

5)坂本弘子,市川裕美子,小笠原陽子:成人看護 実習前準備教育の学生評価報告,

八戸学院短期 大学研究紀要

,43:25-33,2016

6)片山京子,鈴木みちえ:訪問看護実習前後の学 生の学びとその変化:ビデオ学習後の感想と実 習 課 題 レ ポ ー ト の 比 較 か ら,

紀 要

,51-60,

2002.

7)石田千恵(原案監修):ライフヒストリー:

ALS(筋萎縮性側索硬化症)岡部宏生さんの場 合:DVD,医学映像教育センター,2015 8)舟島なをみ:

質的研究への挑戦

,第2版,医学

書院,2016,pp.51-80.

9)平野優子:在宅人工呼吸療法を行うALS患者 における身体的重症度別の医療・福祉サービス の利用状況,

日本公衛誌

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10)三浦美穂子,浅沼義博:筋萎縮性側索硬化症療 養者と介護者の苦悩と看護支援~侵襲的人工呼 吸器を装着した1事例の検討より~,

秋田大学 保健学専攻紀要

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11)平野優子:在宅侵襲的人工呼吸療法を行う筋萎 縮性側索硬化症患者の対処資源の存在と意味-

心の支えである他者と喜び・楽しみ,それらと 前向きに生きる力Hopeとの関連から,

日本看 護科学会誌

,29(4):32-40,2009.

12)「生きる力」編集委員会編:

生きる-神経難病 ALS患者たちからのメッセージ

,岩波書店,

2007,pp.9-43.

参照

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