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原子パラメーター(2)

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Academic year: 2021

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(1)

基礎化学 1 無機化学分野第 7 回

原子パラメーター (2)

電子親和力,電気陰性度,分極率

(2)

本日のポイント

電子親和力:追加の電子の受け取りやすさ 基本的に周期表の右の方が大きい ハロゲンあたりで最大,貴ガスでは負

電気陰性度:結合を作った時の電子を引っ張る強さ 値が大きいと,結合相手から電子を引っ張る 値の差の大きい原子間での結合 → イオン的

イオン化エネルギーと電子親和力の平均に近い 分極率:電子の分布がどのくらい変化しやすいか

周期表の左,下,アニオンは分極しやすい

分極率が大きい → 分子間の相互作用が強い

(3)

電子親和力

(4)

電子親和力 = アニオン(負イオン)へのなりやすさ

原子に電子を追加したときに出てくるエネルギー 値が正:電子がくっついた方が安定

値が大きい → 電子がくっついた方が凄く安定

(=電子を強く引きつける)

値が小さい → そんなに電子を引きつけない 値が負:電子を無理矢理押し込む必要がある

(原子単体で見ると,電子を弾き出した方が安定)

では,電子親和力の大きさは何で決まるのか?

電子を「押し込む先」のエネルギーによって決まる

(5)

1s 2s 2p

O

電子親和力と,押し込む先のエネルギーの関係 真空中の電子の エネルギー( E = 0 ) 電子親和力

押し込む先の軌道(空席のある軌道)の エネルギーが低いほど,電子親和力は 大きい(電子が軌道に入りたがる).

・入った電子から見た有効核電荷が大

・入った電子の主量子数が小

→ これらの時,電子親和力は大きい

(6)

例えば,酸素原子とフッ素原子の比較

O

1s 2s 2p

F

1s 2s 2p

原子核: +8 原子核: +9 入る軌道:どちらも 2p 軌道で同じ

「電子が 1 個入った後」の,最外殻から見た有効核電荷 酸素: +8 - 0.35  6 - 0.85  2 = +4.2

フッ素: +9 -0.357 - 0.852 = +4.85

F の方が有効核電荷が 大きいので,電子親和力 も大きいはず.

実測:

O: +141 kJ/mol

F: +328 kJ/mol

(7)

例えば,リチウムとナトリウムの比較

Li

1s 2s

Na

1s 2s 2p

原子核: +3

原子核: +11 入る軌道が違う

3s この場合, Na の 3s 軌道 の方が, Li の 2s 軌道より エネルギーが高い.

一般的に,周期表を下に 下がると空いている軌道 の主量子数が増えるた め,エネルギーは高くな る傾向がある.

( = 周期表の下の方が

電子親和力が小さい)

(8)

例えば,フッ素(ハロゲン)とネオン(貴ガス)の比較

F

1s 2s 2p

原子核: +9

Ne

1s 2s 2p

原子核: +10

3s

「最外殻」で比較すると,

Ne の方が有効核電荷が 大きい.しかし Ne の最外 殻は全て埋まってしまっ ているため,電子を押し 込むには一つ上の軌道 を使うしか無い.

そのため電子親和力は ハロゲンが最大になる.

電子間反発のせいで

真空準位以上に

(9)

周期表中での傾向を見てみる

ハロゲンで大きい(周期表の右で有効核電荷が大きい)

貴ガスは小さい(空いた軌道が一つ上にしか無い)

(Web Elements

the periodic table on the web

より

)

(10)

周期表中での傾向を見てみる

第 2 族で一度小さくなる( s 軌道が埋まり,電子は少しエ

ネルギーが高い p 軌道に入る必要がある)

(11)

周期表中での傾向を見てみる

第 15 族,第 7 族で,値が少し小さくなる

(12)

N

1s 2s 2p

第 15 族,第 7 族の電子配置

Mn

3d

C

1s 2s 2p

第 14 族

(比較用)

第 15 族 第 7 族

( 下の軌道は省略 )

第 15 族,第 7 族では,電子を 1 つ加えると同じ軌道の

電子と反発する → 入りにくくなる(電子親和力小)

(13)

電子親和力は,

「電子の追加しやすさ」

(電子を追加した時のエネルギーの下がり方)

を表す値だった.

このため,電子親和力の大きい

・ハロゲン類(フッ素,塩素,臭素,ヨウ素)

・カルコゲン類(酸素,硫黄,セレン,テルル)

は,負イオン(アニオン)になりやすい.

(14)

電気陰性度

(15)

電気陰性度とは?

「原子が結合を作った時」,結合に使っている電子 をどれだけ自分の方に引き寄せるか,を表した量.

電子を一つずつ結合に供与

「共有結合」

(16)

電気陰性度とは?

「原子が結合を作った時」,結合に使っている電子 をどれだけ自分の方に引き寄せるか,を表した量.

電子を一つずつ結合に供与

「共有結合」

(17)

電気陰性度とは?

「原子が結合を作った時」,結合に使っている電子 をどれだけ自分の方に引き寄せるか,を表した量.

電気陰性度 大

電気陰性度

(18)

電気陰性度とは?

「原子が結合を作った時」,結合に使っている電子 をどれだけ自分の方に引き寄せるか,を表した量.

電気陰性度 大

電気陰性度 小

電子を持って行かれ ちょっと正に帯電 電子を引き寄せ

ちょっと負に帯電

電気陰性度の差が大きいほど,生じる分極が大きい

(19)

電気陰性度は,何で決まるのか?

電気陰性度の大きな原子は ……

・自分の電子は渡さない

≒ (第一)イオン化エネルギーは大きい

・相手の電子は自分の側に引っ張り込む

≒ 電子親和力が大きい 大雑把に言うと,

電気陰性度 = ( イオン化エネルギー + 電子親和力 ) / 2

(マリケンの電気陰性度)

※他にも算出法があるが,傾向はそれなりに似ている

オールレッド・ロコウらによる値を推奨しておく

(20)

有効核電荷:大 有効核電荷:小

主量子数:小 主量子数 :大

電気陰性度 大

電気陰性度 小

通常,貴ガスは結合を作らないので,電気陰性度は

「 F , O , N で最大,左下に行くほど小さい」

と思っておけば良い.

(21)

電気陰性度は化学において非常に重要な値

・分子の中での電荷分布がある程度予想できる

→ 分子間での引力や,反応性が予想可能に

電気陰性度: N >> P ~ H

+

+

+ -

0 0

0

0

NH

3

の場合だけ, + の水素と

隣の分子の - の窒素との間に引力が働く(水素結合)

(22)

酢酸(酢の成分)

酢酸とトリフルオロ酢酸(電気陰性度: F >> C > H ) トリフルオロ酢酸

電子が押し込まれる 電子を引っ張る

酸として働き,電離した時を考えると ……

(23)

酢酸(酢の成分)

酢酸とトリフルオロ酢酸(電気陰性度: F >> C > H ) トリフルオロ酢酸

電子が押し込まれる 電子を引っ張る

酸として働き,電離した時を考えると ……

余った負電荷を吸い取ってもらえるトリフルオロ酢酸の

方が安定 → 酢酸より電離しやすい(酸として強い)

(24)

臭素化物とチオアニオンとの反応(電気陰性度: Br > C )

臭素に電子を引っ張られて + になった炭素を,

負電荷を持つチオアニオンが攻撃して置換.

+ -

(25)

このように,電気陰性度は(無機化学に限らず)

化学全般に大きく関わる非常に重要な性質

(むしろ,有機化学や生物化学で非常に重要)

(26)

分極率(原子分極率)

(27)

分極率:電場をかけたとき,電荷がどの程度偏るか

+ 電場 -

分極率:大 分極率:小 原子核

(最外殻)電子

(28)

ちょっと細かい話(わからなければ無視して OK )

電子は「軌道」と言う「決まった形」に分布するはずなのに,

なぜその分布がずれることが許されるのだろうか?

もともと, 1s 軌道や 2p 軌道と言った原子軌道は,原子核と 電子一つしかないときのシュレディンガー方程式の解であ る.外部電場を加えているようなときは,本当なら方程式 のポテンシャルの項に,原子核によるポテンシャル + 電 場によるポテンシャルを入れて解く必要がある.これをき ちんと解けば,「外部電場がある時の軌道」として電子の 分布に偏りがある解が得られる.

しかしこれをいちいち解くのは困難だ.そこで「元の原子

軌道からそんなにズレないだろう」と近似し,「元の軌道が

電場に引き寄せられちょっと歪む」と考える.

(29)

- 分極率は,分子間の相互作用に影響する

例えば:イオンと中性原子(分子)との相互作用

分極率:小

+

イオン 引力:小

+

分極率:大

+

イオン 引力:大

+ +

(30)

- +

例えば:中性原子(分子)同士の相互作用

①一方の原子が 偶然に分極

 -  +

②それに影響され 相手も分極

- +

③引力が働く

(分散力)

※ファンデルワールス相互作用

(中性分子間の引力)の主な原因

(31)

有機反応との関係

分極率が大きい = 軌道が容易に歪む

 + の炭素に負イオンが近づき結合を作る反応を考える.

X

-

の分極率が大きいと, C

+

に近づいたときに軌道が引っ 張られて大きく伸びる.

炭素の軌道との重なりが増え,結合を作りやすくなる

(32)

このように,分極率が大きくなると 分子間での相互作用が強くなる

→ 融点や沸点が上がる

他の原子との結合を作成 / 切断しやすくなる

→ 有機反応において重要

と言った特徴を持つようになる.

では,どんな原子の分極率が大きいのだろうか?

(33)

・ポテンシャルエネルギーの側面から考える

原子核と電子との相互作用 = クーロン力

クーロン力によるポテンシャルエネルギー ∝ 1 / r

原子核 電子

原子核の近く:少し動くと,エネルギーが大きく変化

→ 電場がかかっても変形しづらい 原子核から遠い:多少動いても,

エネルギーはほとんど一緒

→ 電場で少しずれても OK

(34)

電子が原子核から遠い方が,

外からの電場で電子の位置が容易にずれる 電子が原子核から遠い = 主量子数が大きい

(周期表の下の方)

電子の位置が容易にずれる = 分極率が大きい

周期表の下の元素ほど,分極率が大きい

(35)

4.5 164 162 290 318 400 (317)

38 72 160 199 273 (246)

大まかに,下の原子の方が分極しやすい

(最下段は相対論的効果などのためずれる)

"Atomic Static Dipole Polarizabilities", P. Schwerdtfeger

より

単位:原子単位

(36)

有効核電荷も影響する

有効核電荷:小

有効核電荷:大

有効核電荷が小さい方が,

ポテンシャルが平らで電子 は動きやすい

→ 分極率が大きい

(37)

有効核電荷が大きい方が,分極率は小さい 周期表の右の方= 有効核電荷が大きい

→ 分極率が小さい 周期表の左の方= 有効核電荷が小さい

→ 分極率が大きい

164 38 20 11 7.4 6.0 3.8 2.7

(単位:原子単位)

"Atomic Static Dipole Polarizabilities", P. Schwerdtfeger より

(38)

イオンの効果

カチオン(正イオン):電子への引力が強い

→ 電子を強く束縛

→ 分極しにくい

最外殻が変わる場合( Na→Na + など)は,最外殻の 主量子数減&有効核電荷激増もあり分極率激減 アニオン(負イオン):電子間の反発が強い

→ 遮蔽効果が大きくなる

→ 電子と核の束縛が弱い

→ 分極しやすい

どちらも,価数が大きいイオンの方が効果が大きい 例: +3 価のカチオン → とても分極しにくい

-2 価のアニオン → とても分極しやすい

(39)

イオンの分極率の実例(単位:原子単位)

164 → 0.2 162 → 1.0 290 → 5.4 318 → 9.1 400 → 15.8 (317)→ 20.4

38 → 24.5 → 0.05 72 → 35 → 0.48 160 → 75 → 3.2 199 → 91 → 2.8 273 → 124 → 10.5 (246) → 106 → 13.4

中性 +1 価 中性 +1 価 +2 価

J Mitroy et al., J. Phys. B: At. Mol. Opt. Phys. 43 202001 (2010)

(40)

3.76 → 16 14.6 → 37 21.8 → 46 35 → 66

中性 -1 価

イオンの分極率の実例 2 (単位:原子単位)

E. Bichoutskaia and N.C. Pyper, J. Phys. Chem. C, 111, 9548-9561 (2007)

(41)

まとめると,分極率は

・周期表の左の方が大きい

・周期表の下の方が大きい(多分一番重要)

・アニオンになると,大きくなる

・カチオンになると,小さくなる

(42)

なお,例年,「結合の分極」と「分極率」を混同する学生 がかなり居ますが,両者は別のものです.

・結合の分極:

結合に使っている電子を結合の両側にある原子が 引っ張り合う結果,外部から何もしていなくても,

δ +と δ -が生じる.電気陰性度の差で決まる.

・分極率

外から電場をかけたりイオンが近づいたりした時に,

今ある電子がどの程度移動するか(どの程度分極

が現れてくるか),を示した量.

(43)

本日のポイント

電子親和力:追加の電子の受け取りやすさ 基本的に周期表の右の方が大きい ハロゲンあたりで最大,貴ガスでは負

電気陰性度:結合を作った時の電子を引っ張る強さ 値が大きいと,結合相手から電子を引っ張る 値の差の大きい原子間での結合 → イオン的 イオン化エネルギーと電子親和力の平均

分極率:電子の分布がどのくらい変化しやすいか

大きい原子(周期表左下)ほど分極しやすい

分極率が大きい → 分子間の相互作用が強い

参照

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