原子核物理学
6.殻構造
元素の周期表
原子における電子配位
電子数が
2, 10, 18, 36, 54, 86
で 他の原子と結合しにくい希ガスが現 れる。⇒ 電子の殻構造
He (Z=2): 1s
軌道が埋まるNe (Z=10): 2s,2p
軌道が埋まるPhys. Rev. B 42 (1990) 9377
原子核にも
殻構造は存在するのか?
原子の場合には,中心に重い原子核があり,電子は原子核 の正電荷によるクーロンポテンシャルの中を運動する。
クーロンポテンシャル内の一粒子軌道を電子は順次占有して いく。
しかし,原子核には中心になるものがない。
実験データは殻構造の存在を示唆するか?
魔法数
殻構造を示唆するデータ
1.
結合エネルギー液滴模型に基づいた質量公式からのずれ
2.
中性子分離エネルギー3.
第1励起状態(2
+ 状態 )の励起エネルギー4.
電気四重極モーメント5.
元素の存在比6.
中性子吸収断面積7.
放射壊変系列の終点半経験的質量公式
Weizsaecker
の質量公式1.結合エネルギー
原子核の結合エネルギー
実験値-理論値(質量公式)
上図
N が等しい原子核を線で結ぶ 下図
Z が等しい原子核を線で結ぶ
魔法数の近傍で大きな値になる
⇒ 液滴模型の予言より,実際の原 子核は,より強く結合している
2.中性子分離エネルギー
質量数が等しい中で
結合エネルギーが最大の原子核
中性子数が増加するに伴って減少す るが,魔法数の直後で急に減少
中性子の1粒子状態があり,殻構造を なしていると考えられる
魔法数の直後では,閉じた殻の外の1 粒子状態に中性子が入る
核子放出に対して安定な,奇数個 の中性子をもつ全ての原子核
陽子数が等しい原子核を線で結ぶ
魔法数をはさんで,分離エネルギーは 急激に減少
3.2 + 状態の励起エネルギー
原子核の基底状態と第1励起状態とのエネルギー差は,
原子核の励起のしやすさを示す尺度
Z
= 14, 16
の原子核 :34
Si
と 36S
が N= 20
の魔法数N
= 60, 62
の原子核110,112
Sn
が Z= 50
の魔法数4.電気四重極モーメント
電気四重極モーメントは球対称からのずれ(四重極変形)の尺度
閉殻をなす核子の集まりは球対称
Z
=
奇数,N=
偶数の原子核 横軸には Z をとる Z
=
偶数,N=
奇数の原子核 横軸には N をとる 魔法数の近傍では
0
,魔法数の間で大きな値をとる5.元素の存在比
鉄より原子番号が大きい元素のほとんどは,超新星爆発の際に,
r-process (急速な中性子捕獲とβ崩壊)でつくられる
中性子数が魔法数の中性子過剰核が多くつくられ,その後,β崩壊によって 安定な同位体へと変化していく
実験事実は、原子核においても 殻構造が存在することを示す。
それでは、魔法数を再現するには
どのような一粒子ポテンシャルが必要か。
簡単な中心力ポテンシャル
1粒子状態の固有値方程式
1粒子ポテンシャルとして,次の3種類の中心力ポテンシャルを考える
調和振動子ポテンシャル : 解析的に解が得られる
井戸型ポテンシャル : 有限の深さをもつ
Woods-Saxon
ポテンシャル : 原子核の電荷密度分布と同じ形保存する量子数
1粒子状態の量子数
演算子 : 1粒子
Hamiltonian
と可換で,互いに可換 量子数 :
は動径波動関数のノード数(
0
点の個数)エネルギー固有値
右図の左から順に,1粒子エネル ギーの縮退が解けていく
右端は,
Woods-Saxon
ポテン シャルの場合の1粒子軌道 量子数
占有できる核子の数
エネルギーが低い状態から全 て占有したときの核子の数
1粒子エネルギーの大きなギャップ があるところが魔法数に対応する
小さいほうから3つの魔法数(2, 8, 20)は再現できるが,それより大き
スピン - 軌道相互作用
Meyer
,Jensen
はスピン-
軌道相互作用を提案 1粒子状態の固有値方程式
1粒子状態の量子数
は の z 成分
は保存しない
スピン
-
軌道相互作用の効果(右図)
現実的な Woods-Saxon ポテンシャル
中心力ポテンシャル
スピン
-
軌道ポテンシャル原子核の表面付近にピークをもつ
中性子過剰核では 中心力ポテンシャルが
浅くなる
魔法数の再現
スピン
-
軌道相互作用により の縮退が解ける
軌道のエネルギーが 大きく下がり魔法数が再現できる
g
9/2, h
11/2, i
13/2Z
= 82
の魔法数の上まで閉殻になると Z