日本の株式市場の現状と問題点
2011年9月1日
京都大学大学院経営管理研究部
川北 英隆
目次
1.日本の株式市場の現状
2.「日本企業」の収益力
3.資本コストの試算
4.投資家の観点から
5.まとめ
本日の前提
主に株式市場に関して
長期投資の観点から
たとえば年金ファンド
市場:長期的には正しく価格を形成する
企業収益を反映して価格が形成される
短期的には間違う
1.株式市場の現状
日本の株式市場、債券市場
株価の低迷
投資収益率の低下
名目
GDP(国内総生産)との関係性
利子率(金利水準)の低下
⇒経済成長が必要なのか
⇒もしくは・・・
株価推移
(日経平均株価)
1 10 100 1000 10000 100000 1949. 01 1954. 01 1959. 01 1964. 01 1969. 01 1974. 01 1979. 01 1984. 01 1989. 01 1994. 01 1999. 01 2004. 01 2009. 01 円 年月 日経平均株価(月末値) 18261.98(07/7) 08/09米国リー マン経営破たん 49/5証券取引所再開 50/6朝鮮動乱勃発 1829.74(61/7) 64/10東京オリンピック 1020.49(65/7) 66/1国債発行開始 73/10第四次中東戦争 5359.74(73/1) 3355.13(74/10) 84/5日米円ドル委員会報告書 38915.87(89/12) 64/4OECD加盟 89/11ベルリンの壁崩壊 97/11拓銀、山一経営破綻 7607.88(03/4) 176.21(49/5/16) 85.25(50/6) 7054.98(09/3)株式投資収益率
(
2010年まで)
注:株式投資収益率は当該年を含めた過去5年間の平均値。 長期金利水準は、1984年までは利付電々債、それ以降は10年利付国債流通利回りの年平均値。 -10 -5 0 5 10 15 20 25 30 35 40 19 60 19 65 19 70 19 75 19 80 19 85 19 90 19 95 20 00 20 05 20 10 経済成長率、株式投資収 益率、 利回り ・% 年 株式の投資収益率と長期金利水準 名目GDP成長率 長期金利水準 東証第1部投資収益率 注意点: 金融の自由化 1980年代後半のバブル 1990年代のバブル崩壊世界と日本の株価
資料:各国市場データに基づき作成。 20 40 60 80 100 120 140 20 00/ 01 20 01/ 01 20 02/ 01 20 03/ 01 20 04/ 01 20 05/ 01 20 06/ 01 20 07/ 01 20 08/ 01 20 09/ 01 20 10/ 01 20 11/ 01 2 000 年 1 月 =1 0 0 先進国の株価推移 アメリカ・ダウ平均 ドイツ 日本TOPIX2.「日本企業」の収益力の低下
付加価値生産力
労働分配率
総資産営業利益率
売上高営業利益率
総資産回転率
総資産営業利益率=売上高営業利益率×総資産回転率
総資産付加価値率の低下
資料:法人企業統計に基づいて作成。 総資産付加価値率の推移 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 19 60 19 70 19 80 19 90 20 00 20 10 製造業・大企業 製造業・中小企業 非製造業・大企業 非製造業・中小企業 % 年付加価値率低下:背景
①売上高付加価値率の低下
②総資産回転率の低下
①の影響が深刻
労働分配率の抑制
付加価値率の低下に対して・・・
1990年代後半以降:大企業中心に
人件費抑制(賃金カット、人員削減)
⇒
2000年代に入って効果が
営業利益率の低下抑制(→次葉)
しかし、経済全体としては・・・
付加価値の分配方法の変更のみ
→「国内需要の抑制」として跳ね返る
総資産営業利益率:製造業
資料:財務省「法人企業統計」に基づいて作成。 -2 0 2 4 6 8 10 12 14 1960 年 1 -3 月 1965 年 1 -3 月 1970 年 1 -3 月 1975 年 1 -3 月 1980 年 1 -3 月 1985 年 1 -3 月 1990 年 1 -3 月 1995 年 1 -3 月 2000 年 1 -3 月 2005 年 1 -3 月 2010 年 1 -3 月 % 総資産営業利益率の推移(製造業) 大企業 中堅企業 中小企業総資産営業利益率:非製造業
資料:財務省「法人企業統計」に基づいて作成。 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 1960 年 1 -3 月 1965 年 1 -3 月 1970 年 1 -3 月 1975 年 1 -3 月 1980 年 1 -3 月 1985 年 1 -3 月 1990 年 1 -3 月 1995 年 1 -3 月 2000 年 1 -3 月 2005 年 1 -3 月 2010 年 1 -3 月 % 総資産営業利益率の推移(非製造業) 大企業 中堅企業 中小企業総資産営業利益率に関して
人件費抑制:十分な効果があったのか
総資産営業利益率=資産効率の指標
これが高まれば投資家は好感
⇐株価低迷、ゼロ金利
投資家に評価されていないのでは・・・
⇒資本コストの観点からの分析
3.資本コスト
(資金コスト)
労働分配率の抑制は本物だったのか
企業収益力を確保できたのか
株価の上昇をもたらしたのか
資本コストに基づく分析
スターン・スチュワート社の
EVAの観点から
EVA(Economic Value Added)