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Jap. J. Crim. Psychol. 41(2): 1-15 (2003)

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]ap.f Crim Psycho/.,

Vol.41, No.2 (2003)

小学生における攻撃性が社会的情報処理に及ぽす影響

玉 木 健 弘

The effects of aggressiveness on social information processing in elementary school children Takehiro Tamaki キード:表出性攻撃, 不表出性攻撃, 社会的情報処理過程, 小学生 問 題 近年, 小中学生による暴力行為の増加が大きな 社会問題になっている。凶悪犯少年の検挙人員の 推移を見ると, 平成元年から平成8年にかけての 検挙人員は, 1,500名以下であったが, 平成9年 になると, 急激に検挙人数が増加し検挙人員も 2,000名を超えた(警察白書, 2000)。 また, 平成 12年度の文部省の調査によると, 暴力行為の発生 件数は, 小学校で1,706件, 中学校では26,783件 が報告されている。特に中学校では, 前年度に比 べ5,000件以上も増加している。さらに, 校内暴 カ事件での検挙人数は, 平成元年をピークに減少 傾向になったが, 平成9年に増加傾向に転じた。 そして, この検挙人員の構成を見ると圧倒的に中 学生が多いことが報告されている(犯罪白書, 2000)。さらに, 近年の犯罪少年の特徴としては, 非行の低年齢化, 集団化, 粗暴化(萩原, 2000) などがあげられる。そして, このような暴力行為 をおこす要因として,様々なものが考えられるが, その中で個人の特性としての攻撃性は, 重要な要 因として考えられる。 攻撃性の研究は, 古くから多くの分野で行われ てきているが, 近年の攻撃性研究の流れとして, 攻撃性を細分化して研究することが盛んに行われ るようになった。すなわち, 攻撃性を一面的なも のではなく, 多面的な側面から構成されていると いう観点から研究が行われている。この攻撃性を 細分化して行った研究は数多くあるが (Buss & Durkee, 1957; Buss & Perry, 1992; Spielberger, 1985), 多くが成人を対象に研究が行われてきた。 その中で, Dodge & Coie (1987) は, 児童期の 攻撃性を中心に攻撃性を反応的攻撃 (reactive aggression) と向行為的攻撃 (proactive aggres­ sion) とに分類して研究を行ってきた。この概念 は, Scott (1972) によって提唱されたと考えら れるが, この概念を用いた研究の必要性を強調し たのは, Dodge(1987) である。反応的攻撃と は, 敵意的攻撃 (hostile aggression) とも呼ば れ, 目標を邪魔された時や挑発, フラストレー ョンに対する防衛的反応として表出される。向行 為的攻撃は, 道具的攻撃 (instrumental aggres­ sion) と表記されることもあり(本研究では表記 から意味が理解しやすいということで以後この表 記を採用する), 食べ物の略奪, 他人に対する支 配, 物事の専有などを目標として解発され, 否定 的な感情の表出は比較的少なく, 行動はコントロ *徳島文理大学大学院家政学研究科 (Graduate School of Home Economics, Tokushima Bunri University)

(2)

犯罪心理学研究第41巻第2号 ールされ,計画的で目標が絞られる (Scott, 1972)

と定義されている。また, Crick & Dodge (1996) は, 反応的攻撃を欲求不満や挑発など, 怒りの原 因となるようなものに対しての怒り, 防衛反応で あるとした。一方道具的攻撃は, 外的な強化によ ってコントロールされた, 計画的な行動であると 定義している。 そして, この反応的攻撃と道具的 攻撃を分類する質問紙をDodge (1987) らは作成 したが, 反応的攻撃を測定する項目の中に身体的 攻撃や短気といった攻撃と敵意がともに含まれて いた。 しかし, この両者の攻撃特性を考えると, 同じ攻撃性とし分類することには問題があるた め, 山崎 (1999) は反応的攻撃を表出性攻撃と不 表出性攻撃とに分類した。 表出性攻撃とは, 怒り 感情を時間をおかずに言語的あるいは身体的に表 出することで, 不表出性攻撃は, 主に敵意を中心 として, 怒り感情を持ちながらそれを表現しない と定義される。 また, 犯罪や暴力行為を引き起こす要因として 個人特性としての攻撃性以外のものでは, 認知の 歪みが指摘されている。 例えば, 非行少年は, 独 特の認知構造をもっていると考えられ(國吉, 1997), 犯罪を合理化する認知の歪みを持つよう になることが指摘されている(藤岡, 2001)。 こ れらのことから, 認知の歪みが犯罪や暴力行為と いった攻撃行動を引き起こす大きな要因として考 えられる。 この認知構造についての研究は数多く 行われているが,その中の一つに, Dodge (1986) が提唱した社会的情報処理過程モデル (social information processing model) を用いて認知段 階での問題点を明らかにする試みがなされている (Figure 1)。 社会的情報処理過程とは, 対人的 な相互作用の場面において人が行う一連の社会的

手がかり処理のことであり (Dogde, Pettit, McClasky, & Brown, 1986), Dodge (1986) は, 社会的情報処理モデルを次の5段階に分けて認知 段階をとらえている。 まず, 第1段階が情報の符 号化 (encoding) である。 これは, 情報を探し 出し, 選択し, 注意して, 記憶する段階である。 第2段階は, 表象化過程 (representation) であ る。 これは, 相手の行動の意図を推測する段階で ある。 第3段階は, 反応の探索段階 (response search) である。これは, 問題を解決するための 方法を検索する段階である。 第4段階は, 反応の 決定 (response decision) である。 これは, 第3 段階で検索した方法を決定する段階である。 最後 の第5段階は, 行動の実行 (enactment) である。 これは, 第4段階で決定した方法を実行する段階 である。 そして, この第5段階の次に, 第6段階 として実行した行動を評価する段階を設けること も考えられている(例えば, Perry, Perry, & Rasmussen, 1986)。 この段階は, 実行した行動 が有効な手段であるかどうかを評価するととも に, 行動をもたらす自分や相手に対しての影響も 評価する段階である。 この社会的情報処理モデル を用いた過去の研究から, 攻撃的な子どもはこれ らの情報処理のほとんどの段階で問題をもつこと が指摘されている(Pepler, King, & Byrd, 1991)。 まず, 第1段階では, 攻撃的な子どもは, 非攻撃 的 な 子 ど も よ りも収集する情報が限定 さ れ (Dodge & Newman, 1981), 情報喚起力の強い 手がかりに注意が集中する (Milich & Dodge, 1984) といったことが挙げられる。また, 第2段 階では, 攻撃的な子どもは, 他人の行動を敵意あ るものとしてとらえがちである (Dodge, 1980 ; Dodge & Frame, 1982 ; Dodge, Murphy, & Buchsbuam, 1984; Dodge & Newman, 1981 ; Nasby, Hayde, & DePaulo, 1980) ことが特徴と して挙げられる。 そして, 第3段階では, 攻撃的 な子どもは, 問題事態で思いつく反応数の数が少 なく (Richard& Dodge, 1982 ; Slaby & Guerra, 1988), 検索した行動レパートリに攻撃的反応

の占める割合が高い (Dodge, Pettit, McClaskey, & Brown, 1986) ことなどが挙げられる。さらに,

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玉木:小学生における攻撃性が社会的情報処理に及ぽす影響 生物学的に 決定した能力 デ ータベ 第1段階 符号化過程 .感覚 ・認知 ・注意と焦点化 ↓ ↑ 第2段階 表象化過程 ・手がかりとデータベースの統合 ・決定基準の適応 .符号化へのフィー ドバック ・解釈 ↓ 第3段階 反応探索過程 ・反応の産出 ・反応ルールの応用 ↓ ↑ 第4段階 反応決定過程 ・潜在的な結果の表出 ・結果の評価 ・反応表出へのフィードバック ・反応選択 ↓ 第5段階 実行過程 ・記録や計画の使用 ・実行のモニタリング ・自己規制 行動的反 応 社会的な手がかり Fig. 1 社会的情報処理モデル (Dodge, 1986より改変)

(4)

犯罪心理学研究第41巻第2号 第4段階では, 攻撃的な子どもは, 攻撃的でない

子どもより攻撃反応の実行を決定するようになり (Dodge, 1986), 問題解決に有効な行動をとる傾 向が弱く (Dodge, Pettit. McClaskey, & Brown, 1986), そして, 問題事態で有効な反応がほとん どできない (Richard & Dodge, 1982) などが挙 げられる。 そして, 第5段階では, 攻撃的な子ど もは, それ以前の段階で非攻繋的な反応が選択さ れたとしても, その実行スキルが欠如しており (Dodge, 1986), 攻撃児は非攻撃児よりも, 特定 の状況において攻撃的行動を実行することができ るという強い信念を持って反応する (Perry, Perry, & Rasmussen, 1986) といったことが挙 げられる。 最後の第6段階では, 攻撃的な子ども は, 実行された行動の評価を正確に行うための自 己評価力が乏しく, 自己知覚にも欠けていると言 われている (Gagnon, 1988)。 さらに, 攻撃性を 細分化し, 攻撃性による社会的情報処理過程の違 いを指摘する研究も強調される。 まず, 反応的攻 撃傾向の高い子どもは, 道具的攻撃傾向の高いf どもと比較して, 手がかり, 注意, そして意図帰 属に問題があるいわれており, 相手に悪意がない 場合でも敵意を感じやすく, 敵対的な解釈をする とその後の解釈も敵対的な解釈をする (Crick & Dodge, 1996)。 一方, 道具的攻撃傾向の高い子 どもは, 実行した結果に関連した処理に問題があ るといわれ, 攻撃行動が自分にとって都合の良い 結果をもたらすと考えている (Crick & Dodge, 1996)。 このことから, 攻撃性と認知は, 犯罪や暴力行 為を引き起こす大きな要因として考えられる。 そ して, 攻撃行動も1種類だけでなく, 複数存在し ていることから, 攻撃性を細分化し種類別に研究 することが必要だと思われる。 さらに, 暴力行為 を予防する観点から考えた場合, 暴力行為が多発 している中学生より, 暴力行為の発生が少ない小 学生の攻撃性と認知の歪みについての因果関係を 明らかにすることがより重要だと思われる。 つま り, 暴力行為が発生する前に効果的な指導や援助 を行うことで暴力行為や犯罪の発生を抑制するこ とができるのではないかと推測される。 以上のこ とから,本研究では小学生を対象に調査を行った。 また, 攻撃性については, 今回, 表出性攻撃と不 表出性攻撃の2側面からの調介を行った。 その理 由として, 反応的攻撃と道具的攻撃の分離性には 問題があることがあげられる。 先行研究を見てみ ると, 反応的攻撃と道具的攻撃の内的相関は, そ のほとんどが70を越える高い正の相関を示して いる (Poulin& Boivin, 2000a ; Poulin & Boivin, 2000b ; Vitaro, Gendreau, Tremblay, & Oligny, 1998)。 このように, 2つの攻撃性は仮説概念上 での違いはあっても, 現実には独立して存在して いない可能性が考えられる。 そのため, 本研究で は, 明確な分類が行われている表出性攻撃と不表 出性攻繋を用いて調査を実施した。 また, 各攻撃性の特徴としては, まず, 表出性 攻撃傾向の高い子どもについては, 他人の意図を 決 定 す る の に 少 な い 手 がか り し か使用 せ ず (Dodge & Newman, 1981), 攻撃的な子どもは非 攻撃的な子どもより敵意の意図をその仲間に帰属 させやすいとあるように (Steinberg & Dodge, 1983), 情報収集と悪意意図婦属に問題があるも のと推測される。 次に不表出性攻撃傾向の高い子 どもは, この攻撃性の特性から敵意を感じやす く主張的な反応をとりにくい (Perry, Perry, & Weiss, 1989) ということに問題がある。 つまり, 表出性攻撃傾向が高い児童生徒は, 情報収集が不 足しており, 相手の意図を悪意に帰属しやすく, 不表出性攻撃傾向が高い児童生徒は, 敵意に帰属 しやすく主張性や共感性が欠如していると考えら れる。 また, 攻撃的な子どもは, これらの情報処 理過程のほとんどの段階で問題を持つことが指 摘されていることから (Pepler, King, & Byrd, 1991), 表出性攻撃傾向の高い児童でも共感性や

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玉木:小学生における攻撃性が社会的情報処理に及ぼす影響 主張性に何らかの問題があるものと考えられる。 同様に,不表出性攻繋傾向の高い児童についても, 情報収集の段階で問題があるものと推測される。 以上のことから, 本研究は, 各攻撃性が社会的 情報処理過程にどのような影響を及ぼすかを調究 し, 問題点を明らかにすることを目的とした。 そ して, 本研究の仮説として, 表出性攻撃傾向の高 い児童と不表出性攻撃傾向の高い児童は, 社会的 情報処理過程の第1段階である情報の収集, 第2 段階である悪意意図帰属, 第3'4段階である 主張性と共感性のそれぞれに問題があるものと考 えられる。 さらに, 本研究の仮説をDodge (1986) の社会的情報処理過程に沿ってモデルをたてる と, 情報の収集から悪意意図帰属, そして悪意意 図帰属から主張性, 共感性の順に情報が処理され ていくと推測される。 しかしながら, 主張性と共 感性は, Dodge (1986) のモデルでは, 第3段階 の反応の探索, 第4段階の反応の決定に分類して 表 出 性 攻 撃 いるが, 反応の探索と決定を厳密に線引きするこ とは難しいと考えられる。 そこで, 本研究は, 第 3'4段階を1つのものと考え反応段階として 扱う。 これらのことをふまえ, Figure 2に本研 究の因果モデル仮説を示した。 なお, それぞれの 変数間でより強く関係すると考えられるものにつ いては実線で示し, 関係が弱いと思われるものに ついては点線で示した。 方 法 1. 調査対象者および実施時期 調査対象者数は, 大阪府1校, 徳島県2校の公 立小学校4年生から6年生までの615名(男子

322

名, 女子

293

名)であった。 内訳は,

4

年生 男子105名, 女子86名, 5年生男子108名, 女子

104

名,

6

年生男子

109

名, 女子

103

名である。 評 定者は, 小学校教員20名(男性6名, 女性14名) であった。 調査は, 19996月上旬から6月下 情 報 収 集カ 共 感 性 Fig. 2 攻撃性と社会的情報処理過程との因果関係モデル図 *各攻撃性から社会的情報処理過程への実線は, 変数間の関係が強いことを示し, 点線は, 関係が弱いことを示している。

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犯罪心理学研究第41巻第2号 旬にかけて行った。 この時点でクラス担任は, 受 け持ちクラスの子どもの性格・行動特性について 十分把握していたものと推測される。 2. 質問紙 (1) 攻撃性質問紙 攻撃性を分類するための尺度として, 各クラス 担任が, 18項目からなる児童用攻撃性質問紙 (General Aggression Questionnaire for Children: 以下GAQC) (玉木・山崎• 松永, 2003)を使用し, 評定者は, 日常の学校生活の中 で見られる様子から, 担任クラス児童を一人ひと り評価した。 回答方法は「まったくあてはまらな い」,「あまりあてはまらない」,「どちらともいえ ない」,「すこしあてはまる」,「よくあてはまる」 の5件法である。 (2)社会的情報処理測定質問紙 表出性攻撃, 不表出性攻撃の社会的情報処理過 程の違いを測定するために, 社会的情報処理測定 質問紙を使用した。 この質問紙は, 児童生徒一 ひとりによって回答され, まず, 今回調査する社 会的情報処理過程の内容として, まず, 第1段階 である「情報の収集」 は, 周囲からの情報を確か められたり集めたりすることができるかどうかと いう情報収集力について質問した。 また, 第2段 階の「情報の解釈」 は, 相手の行動・考えを悪意 意図帰属しやすいかどうかという悪意意図帰属に ついて質問した。 そして, 第3' 第4段階の「反 応の探索・決定」 は, 相手の気持ちを考えること ができるかどうかという共感性と相手に自分の気 持ちを伝えることができるかどうかという主張性 についてそれぞれ質問した。 これらのことを調査するために, 設定場面は, 相手の行動が偶然なものか意図したものかわから ない状態である曖昧な挑発場面と日常生活の中で 一般的にみられる対人葛藤場面を選んだ。 その理 由として, 曖昧な挑発場面は, 過去の研究(例え ば, 濱口, 1992) などで頻繁に使用されている。 また, 対人葛藤場面についても, これまでの研究 においてよく使用されている(例えば, Dodge, Lochman, Harnish, Bates, & Pettit, 1997)。 そし て, これらの場面は, 日常生活を営む上で必ずお こる状況であると考えられる。 以上のことから, 設定場面は, 曖昧な挑発場面と対人葛藤場面の2 場面を用いた。 設定場面数は, 曖昧な挑発場面3 場面, 対人葛藤場面3場面の合計6場面とした。 対人葛藤場面は, 性差を考慮し, 登場人物は男子 には男子を女子には女子をそれぞれ設定し, それ 以外の質問項目・内容についてはすべて同じもの とした。 具体的な場面設定として,曖昧な挑発場面では, 「あなたは砂場で山をつくっています。 あと少し でできあがりそうなとき, ボールが山にあたり, 山がこわれてしまいました。」 という場面を設定 した。 また, 対人葛藤場面では,「あなたは, コ ンピュータ室でパソコンをしていました。 そこに Aさんがきました。 Aさんは, あなたに「パソコ ンかわってくれない?

.I

と, いいました。」とい う場面を設定した。 次に, 質問項目は, 情報収集 力測定項目が,「その時, あなたは, 落ちついて, まわりの様子を見たり, 調べたり, することがで きますか。」(曖昧な挑発場面)と「その時, あな たは, 落ちついて, Aさんやまわりの様子を見た り, 調べたり, することができますか。」(対人葛 藤場面)とした。 悪意意図帰属測定項目は,「だ れかかがわざと山にボールを当てたと思います か。」(曖昧な挑発場面)と「Aさんは, あなたの じゃまをしようとして,『パソコンかわってくれ ない?」と, いったのでしょうか。」(対人葛藤場 面)とした。 主張性測定項目は,「ボールを投げ た人がわかれば, あなたは, 怒らずに,『気をつ けてね。jと, はっきりいうことができますか。」 (曖昧な挑発場面)と「その時, あなたは, Aさ んに, 怒らずに[今, 使っているから, あとにし てほしい。jと, はっきりいうことができますか。」

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玉木:小学生における攻撃性が社会的情報処理に及ぼす影響 (対人葛藤場面)とした。最後 に共感性測定 項目 は,「このとき,あなたが,ボールをなげた人 を 怒鳴ったりすれば,その人は,傷つくと思います か。」(曖昧な挑発場面)と「この時,あなたが, Aさん を怒鳴ったりすれば,Aさんは,傷つくと 思いますか。」(対人葛藤場面)とした。回答方法 は,それぞれの場面の1番目と3番目が,「絶対 そう思う」,「そう思う」,「そう思わない 」,「絶対 そう思わない 」 の4件法であり,2番目と4番目 は,「絶対できると思う」,「できると思う」,「で きないと思う」,「絶対できないと思う」 の4件法 で回答を求めた。 調査 に際しては,検査対象者に架空の状況を想 像 しやすくするために絵を見せ,その絵の中に, 自分がいると想定 させた。そ して,設定 された場 面 において,どのように考えるか質問した。また, 各場面は,A3版の 紙 に場面が想像できるような 絵を描き,各質問を行う前に1枚ずつ提示した。 3. 実施手続き 社会的情報処理測定質問紙は,クラスごとの集 団一斉方式で実施した。調査は,検査者本人が, 「これから,色々な場面で起こった事について, あなたが どのように考えるか を質問します。これ から,何枚かの絵を見せますので,その絵の中に あなたが実際にいると思って質問に答えてくださ い。」 という教示文を読み終えた後,一枚ずつ絵 を見せ,各質問項目 を読み上げるかたちで実施し た。実施前に,調査 に対する緊張感 を和らげるた めに簡単なリラクセーションを行い,1分間且を 閉じてから調査を開始した。また,集中力を持続 させるため,4場面が終了したところで,再度, リラクセーションを行った。また,攻撃性質問紙 は,各クラスの担任教師によって実施され,クラ ス担任児童の一人ひとり を評価した。 4. 分析方法 基本統計量の算出は,統計パッケージSPSS (Ver.11.0, SPSS社)を使用 した。また,因果関係 を分析するために統計パッケージAMOS(Ver.4.02, Small Water社) を用いて分析を行った。 結 果 1. 質問紙の信頼性の検討 社会的情報処理測定質問紙の信頼性 を調べるた めに,情報収集力(第1段階),悪意意図帰属 (第2段階),主張性ならびに共感性(第3' 第4 段階) について,それぞれの尺度のa係数 を算出 した。結果はTable 1 に示されている。各尺度の 信頼性は,曖昧な挑発場面の女子でやや低い数値 を示しているが, 全体的 には高い数値 を示してお り,今後の分析 に耐えうる値であると考えられる。 2. 攻撃性 における性差ならびに学年差の検討 各変数の学年,性別,および全体の平均得点な らびに標準偏差 をTable 2 に示した。そ して,各 場面での社会的情報処理過程と表出性攻撃,不表 出性攻撃 における性差および学年差 を検討するた め,性x学年の2要因分散分析を行った。その結 果, 表出性攻撃では,学年及び性の主効果が有意 であったが(それぞれ,F(2,612)=41.16, p<.001; F(l,612) =27.73, p<.001), 学年と性の交互作用 は有意ではなかった。不表出性攻撃では,学年の Table 1 各場面での社会情報処理過程測定尺度のa係数 女子 男子 情報収集力 .72/.76 .72/.71 悪意意図帰属 .63/.70 .74/.65 主張性 .771.67 .80/.71 共感性 .82/.79 .85/.79 *左が曖昧な挑発場面,右が対人葛藤場面 を示す。

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犯罪心理学研究第41巻第2号

Table

2 各変数間の学年別および性別の平均得点ならびに標準偏差 4年生 男子 女子 攻撃性 表出性 13.74 11.72 (4.74) (3.89) 不表出性 14.02 13.80 (3.17) (2.79) 曖昧な挑発場面 情報収集カ 5.89 5.42 (1.95) (1.32) 悪意意図桶属 8.78 9.02 (1.79) (1.70) 主張性 8.40 8.99 (2.11) 0.77) 共感性 9.90 10.19 (l.90) (1.77) 対人葛藤場面 情報収集カ 5.38 5.36 (1.58) (1.60) 悪意意図帰属 8.55 9.00 (1.72) (1.68) 主張性 9.51 9.55 (1.84) (1.90) 共感性 9.92 10.20 (1.79) (1.80) 主効果が有意であったが(F(Z,612)

=

27.05, p<.001), 性の主効果および学年と性の交互作用 は有意ではなかった。 表出性攻撃では, 菟木・山 崎(1999)でも性の主効果が見られ, 女子に比べ て男子が高い値を示した。 このことから,表出性 攻撃は, 男子に多く見られる攻撃性であることが 示唆された。 不表出性攻撃では, 玉木・ 山崎 (1999)でも性の主効果は見られず, 男女に差が ないことが示唆された。 また, 学年の主効果が見 られたことから, 不表出性攻撃の学年による違い が明らかとなった。 学年の主効果が, 表出性攻撃 と不表出性攻撃それぞれで見られたため,Tukey の多重比較を用いた下位検定を行った。その結果, 表出性攻撃では,

4

年生と

5

年生,

4

年生と

6

年 生で有意差が見られ, 不表出性攻撃では, 4年生 と 5年生, 4 年生と 6 年生で有意差が見られた。 これは, 4 年生と 5, 6 年生では, この特徴に関 して発達差があることを意味している。 3. 構造方程式モデリングを用いた因果関係の検 討 各攻撃性と各場面ごとの社会的情報処理過程と 5年生 6年生 全体 男子 女子 男子 女子 男子 女子 10.31 8.61 10.25 8.73 11.41 9.56 (4.53) (3.70) (4.42) (3.36) (4.83) (3.89) 11.63 12.68 12.14 12.07 12.58 12.79 (3.61) (3.10) (2.82) (3.34) (3.36) (3.14) 6.58 5.37 6.39 5.69 6.29 5.49 (2.06) (1.44) (1.79) (1.20) (1.95) (1.33) 8.26 8.67 8.80 9.06 8.61 8 91 (1.67) (1.63) (1.73) (1.30) (1.74) (1.55) 7.27 8.26 7.62 8.37 7.76 8.51 (2.09) (2.02) (2 14) (1.82) (2.16) (1.90) 8.52 9.69 8.96 9.28 9.12 9.69 (2.48) (2.48) (2.19) (1 73) (2.27) (1.73) 6.01 5.24 5.88 5.86 5.76 5.49 (2.05) (1.59) (1.71) (1.70) (1.81) (1.65) 7.90 8.70 8.75 8.87 8.40 8.85 (1.75) (1.74) (1.60) (1.49) (1.72) (1.64) 9.06 5.55 9.23 9.74 9.27 9.61 (2.04) (2.04) (2.03) (1.69) (1.98) (1.69) 8.94 9.97 9.26 9.37 9.37 983 (2.27) (2.27) (2.01) (1.74) (2.07) (1 74) の具体的な因果関係を調べるために, Figure 2 に示された仮説因果モデルを検討した。 (1) 各攻撃性と対人慈藤場面における社会的情報 処理過程との因果関係の検討 まず, 各攻撃性と対人葛藤場面との仮説因果モ デルの検討を行った。 仮説因果モデルの構成は, まず, 各変数を測定している質問紙の項目を観測 変数とした。 そのため, 観測変数は, 表出性攻撃 と不表出性攻撃で各5個となり, 社会的情報処理 過程の情報収集力,悪意意図婦属,主張性そして, 共感性では各

3

個となった。 また, 想定した変数 以外の影響も考えられるため, 内生変数それぞれ に攪乱変数を設定した。 さらに, 各観測変数につ いても, 想定した変数以外の影響も考えられるた め, 観測変数それぞれに誤差変数を設定した。 そ して, 各攻撃性から社会的情報処理過程への因果 関係を測定するため, 表出性攻撃と不表出性攻撃 の分散を1 に固定して分析を行った。 その結果, 男女ともモデルの適合度を示すGFI (Goodness of Fit Index) が, モデルを採択する目安であ る.90 を越えなかった。 豊田(1992)は, モデル

(9)

玉木:小学生における攻撃性が社会的情報処理に及ぽす影響 を採択するには,GFIが.90以上であることがl つの目安であると述べており, 仮説因果モデルの 妥当性は確認されなかった。 そこで, モデルの適 合度を上げるため, 修正指数を求めた。 この修正 指数をもとに, 数個の誤差変数間に共変動を設定 し, 仮説因果モデルの修正を行い再度分析を実行 した。 その結果, 修正因果モデルにおいては, 男 女ともGFIが, .90以上の値を示した (男子.91, 女 子. 9 0 )。 ま た , 修 正 適 合度 を 示 すAGFI

(Adjusted GFI) についても男女ともGFIとの差

が小さいことから(男子.89, 女子.87), 修正因果 モデルの妥当性が確認された。 さらに, モデルの 適合度 に つ い て , RMSEA (Root Mean Square Error of Approximation) を調べた。

RMSEAは,.08以下であれば適合度が高いとさ れ,.10以上であればそのモデルを採択すべきで はないとされている (山本・小野寺,1999)。 今 回の修正因果モデルのRMSEAは, 男女ともに.08 以下を示していることから (男子.05, 女子.06), 修正因果モデルは因果関係を分析する上で適切な モデルと見なすことができる。 以上のことから, 修正因果モデルが各変数間の因果関係を検討する モデルとして, 適切なモデルであるということが 明らかとなった。 続いて, 各変数間の因果関係の検討を行った。 各変数間の因果係数がTable 3. 4に示されてい る。 各攻撃性から各社会的情報処理過程への因果関 係について, まず, 女子では, 表出性攻撃から悪 意意図帰属へのパスが有意となり, 正の因果関係 が示された。 しかしながら, 男子ではすべての変 数間で有意なパスは示されなかった。 また, 各情 報処理間についてはすべてのパスが男女とも有意 となり, 情報収集から悪意意図帰属は, 負の因果 関係が示され, 悪意意図帰属から主張性ならびに 悪意意図帰属から共感性は正の因果関係が示され た。 このことから,表出性攻撃傾向が高い女子は, 悪意意図掃属しやすいということが示された。 ま た, 情報処理については, 情報収集力が高ければ 悪意意図帰属しにくく,悪意意図帰属が高ければ, 主張性ならびに共感性は欠如しにくいということ が示唆された。 (2) 各攻撃性と曖昧な挑発場面における社会的情 報処理過程との因果関係の検討 次に, 各攻撃性と曖昧な挑発場面との仮説因果 モデル (Figure 2) の検討を行った。 仮説因果 モデルの構成は, 対人葛藤場面と同様である。 分 析の結果, 男女ともGFIが, モデルを採択する目 安である.90を越えなかった。 そのため, 対人葛 藤場面と同様に修正指数を求め, 数個の誤差変数 Table 3 対人葛藤場面における各攻撃性と各社会的情報処理過程間の因果係数 情報収集力 悪意意園帰属 主張性 共感性 攻繋性→社会的情報処理過程 男子 女子 男子 女子 男子 女子 男子 女子 表出性攻撃 ー.05 -.03 - .14 _33• .16 -.02 .03 - .12 不表出性攻撃 ー.01 .15 .26 -.23 -.26 .02 -.07 .13 ** P<.Ol * P<.05 Table 4 対人葛藤場面における各社会的情報処理過程間の因果係数 情報収集→悪意意図帰属 悪意意図帰属→主張性 悪意意図帰属→共感性 ** P<.01 * P<.05 男子 女子 - .66** _77•• _70•· - _43•• .52** .40**

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犯罪心理学研究第41巻第2号 間に共変動を設定し, 再度分析を実行した。 その 結果, 男女ともGFIが.90以上を示した(男子.91, 女子.92)。 また, AGFIについてもGFIとの差が 男女とも小さいことから(男子.88, 女子.89), 修 正因果モデルの妥当性が確認された。 次に, モデ ルの適合度についてRMSEAを調べた。その結果, 修正因果モデルにおいて, RMSEAは男女とも に.08以下を示した(男子.05, 女子.04)。 このこ とから, 修正モデルは因果関係を分析する上で適 切なモデルであることが確認された。 続いて, 各変数間の因果関係の検討を行った。 各変数間の因果係数がTable 5, 6に示されてい る。 まず, 各攻撃性から各社会的情報処理過程への 因果関係について, 女子では表出性攻撃と不表出 性攻撃ともに悪意意図帰属と共感性で有意なパス が示され, 悪意意図婦属については正の因果関係 が, 共感性については負の因果関係が示された。 さらに, 表出性攻撃から主張性でも有意なパスが 示され,負の因果関係が示された。しかしながら, 男子ではすべての変数間において有意なパスは示 されなかった。 また, 各情報処理間については, 対人葛藤場面と同様の結果が示された。 これらの ことから, 表出性攻撃傾向が高い女子は, 悪意意 図帰属しやすく, 主張性や共感性は欠如しにくい ということが示された。 また, 不表出性攻撃傾向 が高い女子は, 悪意意図帰属しにくく, 共感性が 欠如しやすいということが示され, 情報処理につ いては,対人葛藤場面と同様のことが示唆された。 考 察 本研究では, 表出性攻撃と不表出性攻撃性の強 い児童について, それぞれ社会的情報処理の違い を調査した。 まず, 構造方程式モデリングを用い て因果関係の分析を行ったところ, 本研究で用い たモデルの適合度が,両場面とも高い値を示した。 この適合度の高さから, モデル内の因果係数の 解釈は, 意義あるものだと判断される。 そこで, 場面ごとに結果を見てみると, 対人葛藤場面にお いては, 女子の表出性攻撃から悪意意図帰属への パスのみが有意となり, その他では有意なパスは 見られなかった。 これまで, 攻撃性と悪意意図帰 属との関係については, 攻撃的な子ども達は, 非 攻撃的な子ども達より仲間のネガテイヴな行動を 悪意意図帰属しやすいと報告されている(Dodge, & Frame, 1982 ; Waldman, 1996)。 そして, こ れらの攻撃群は, 暴力的な行動をする子ども達で 構成されており, 本研究の表出性攻撃と同じ特性 Table 5 曖昧な挑発場面における各攻撃性と各社会的情報処理過程間の因果係数 情報収集 悪意意図帰属 主張性 共感性 攻撃性→社会的情報処理過程 男子 女子 男子 女子 男子 女子 男子 女子 表出性攻撃 ー.08 -.03 -.03 .70.. .03 -_53•• -.00 -.57 .. 不表出性攻撃 ー.07 .05 .27 -_52• -.22 .39 -.10 .44 * ** P<.01 * P<.05 Table 6 曖昧な挑発場面における各社会的情報処理過程間の因果係数 情報収集→悪意意図帰属 悪意意図帰属→主張性 悪意意図帰属→共感性 ** P <.01 * P <.05 男子 女子 -.73** .so·· .75** -.67 .. .93 .. .78 ..

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玉木:小学生における攻撃性が社会的情報処理に及ぽす影響 のものと考えられる。そのため,本研究の結果は, これまでの研究と一致していると考えられること から,本研究の仮説は支持された。しかしながら, これらの研究は, 攻撃群と非攻撃群との比較をし ており, 男女差については明確にされていない。 本研究では男女差が認められたが, 男女差が生じ た要因として, 攻撃性の質の違いが考えられる。 これまでの研究の多くが身体的や言語的といった 表出性攻撃について研究がなされてきた。そして, それらの研究者は, 主に男子を対象に行われてき た (Waldman, 1996)。 その理由として, 男子に 比べて女子では表出性攻撃は少ないものと考えら れていたことがあげられる。 しかしながら, 女子 においても表出性攻撃は見られ, 非行や犯罪に関 しても男子より深刻な問題となることもある。 そ のため, 近年, 女子の攻撃性に関する研究も行わ れ る よ う に な っ て き た 。 例 え ば , Crick & Grotpeter (1995) は, 女子に多く見られる攻撃 性として関係性攻撃 (relational aggression) を 提唱して, 女子の攻撃性について研究を行ってい る。 関係性攻撃とは, 仲間関係の損害や操作を通 して他者を傷つけることである。 例えば, 無視す ることによって仲間に対して仕返しをするという ことがあげられる。 このように, 男女には, 攻撃 性の質の違いがあると思われ, この質の違いによ って男女差が生じたのではないかと推測される。 また, 曖昧な挑発場面においても, 女子では, 表 出性攻撃ならびに不表出性攻撃から悪意意図帰属 と共感性, そして, 表出性攻撃から主張性で有意 なパスが見られたが, 男子では, 有意なパスはみ られなかった。 このことからも, 攻撃性の質の違 いが何らかの影響を及ぽしているものと考えられ る。 次に, 曖昧な挑発場面では, 表出性攻撃から悪 意意図帰属へのパスは, プラスの値を示し仮説が 支持されたが, 不表出性攻撃から悪意意図帰属へ のパスはマイナスの値を示した。 これは, 不表出 性攻撃傾向の高い女子は, 悪意意図帰属しにくい ということを示し, 仮説とは逆の結果となった。 このような結果となった要因として, 不表出性 攻撃の特性が影響していると考えられる。 不表出 性攻撃傾向の高い者は, 攻撃行動を表出しないた め, 怒り・敵意感情を内面に溜めることが多いと 考えられる。そのため, 対象者が明確な場合では, 怒り・敵意感情が対象者に向かうため, やや悪意 に帰属するものと推測される。 しかしながら, 対 象者が不明確な場合は, 怒り・敵意感情を向ける 対象がないため, 悪意意図帰属が低くなったので はないかと考えられる。 そのため, 曖昧な挑発場 面でも, 表出性攻撃傾向の高い女子は悪意意図帰 属傾向が高いが,不表出性攻撃傾向の高い女子は, 悪意意図帰属傾向が低くなったものと思われる。 また, 表出性攻撃から主張性と共感性へのパスも マイナスの値を示した。 これは, 表出性攻撃傾向 が高い女子は, 主張性や共感性は欠如するという ことを示しており,仮説を支持する結果となった。 これらのことから,表出性攻撃傾向の高い女子は, 対象者が明確な場合は, 悪意意図掃属するととも に, 他者に対して主張することも共感することも できず, 対象者が不明確な場合でも, 悪意意図帰 属し, 主張することや共感することもできないこ とが示唆された。 次に, 不表出性攻撃から共感性 へのパスがプラスの値を示して有意となり, 本研 究の仮説とは異なる結果となった。 これは, 不表 出性攻撃傾向の高い女子は, 対象者が不明確な場 合において生じた出来事を意図的なものと捉えな いため, 他者に対して共感することができるので はないかと考えられる。 本研究では, 生じた出来 事を意図的に判断するか偶発的に判断するかを明 確に区別することはできないが, 表出性攻撃傾向 の高い女子と不表出性攻撃傾向の高い女子を比較 すると, 表出性攻撃傾向の高い女子は, 場面に関 係なく悪意意図帰属する傾向が高いことが示され ている。 しかしながら, 不表出性攻撃傾向の高い

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犯罪心理学研究第41巻第2号 女子は, 両場面とも悪意意図帰属する傾向が低い ことが示されている。 他者に対して悪意意図帰属 をする場合は, 自分に対して行われた行為が, 意 図的と判断された場合に生じるものと考えられ る。 つまり, 表出性攻撃傾向の高い女子は, 対象 者の有無に関係なく, 生じた出来事を意図的に起 こったものと判断するため, 悪意意図婦属が高く なったのではないかと考えられる。 一方, 不表出 性攻撃傾向の裔い女子は,対象者が明確な場合は, 悪意意図帰属との関係は見られなかったが, 対象 者が不明確な場合は, 悪意意図帰属との関係がマ イナスを示したことから, 生じた出来事を偶発的 に起こったものと判断する傾向が高いのではない かと考えられる。 これらのことから, 各攻撃性に よって情報処理に違いが生じる要因の一つとし て, 生じた出来事を意図的か偶発的かという判断 の違いが関係しているのではないかと思われる。 以上のことから, 男女によって各攻撃性から各 社会的情報処理過程との因果関係が異なることが 明らかとなった。そして, 場面による違いからも, 各攻撃性と各社会的情報処理過程との因果関係が 異なることが明らかとなった。 このことから, 性 別によって攻撃性が異なり, また, 認知パター も異なることから, 性別それぞれにあった指導を することが, 攻撃行動を予防する上で, 必要なこ とではないかと考えられる。 今後の課題 本研究では, 小学校4年生から6年生を対象と して, 攻撃性と社会的情報処理過程の因果関係に ついての検討を行った。 その結果, 女子において 攻撃性といくつかの社会的情報処理過程との間に 因果関係が確認された。しかしながら,男子では, 犯罪との関係について明確には分からなかった。 そのため, 今後, 青年期を対象としたり, 非行群 と非非行群との比較などを行うことによって攻撃 特性や認知の歪みが, 犯罪にどのように関係して いるかを研究することが必要であると思われる。 さらに, 社会的情報処理過程モデルについても, 本研究では, Dodge (1986) が作成した線形モデ ルを使用した。 このモデルの特徴は, 情報処理過 程を1本の線として構成されていることである。 しかし, ある刺激に対して行動をとろうとする場 合, 例えば敵意といったことを推測するとき, l つの要因だけではなく, 多数の要因が関係してい ると考えられる。 このような考えから, Crick & Dodge (1994) は線形の情報処理過程モデルを改 訂し非線形の情報処理過程モデルを提唱した。 こ のモデルの特徴は, 新たに「目標の明確化」とい うプロセスが付けられたことである。 これは, 社 会的場面においてどのような結果を期待するかと いうことを示すプロセスである。 このプロセスを 追加したことで計6段階の新たな情報処理過程モ デルとなった。 この改訂モデルは, 本人のこれま での経験や学習によって得られた知識といった情 報が蓄えられている, データベスに全ての段階 が連結していることも特徴の一つである。 これら のことから, 社会的情報処理過程モデルが改訂さ れた背景には, 反応を決定する際に1つの要因か らだけの影響を受けるというのではなく, 複数の 要因が反応を決定する際に影響しているという考 えがある。そして, この新しいモデルを使用して, 今後, さらに攻撃性と社会的情報処理過程との関 連について研究を行っていくことが重要だと思わ れる。 攻撃性と社会的情報処理過程との間に因果関係は 引用文献

確認されなかった。 この要因については, 明確な Buss, A. H., & Durkee, A. 1957 An inventory ことは分かっておらず, 今後の課題であると考え for assessing different kinds of hostility. る。 また, 本研究は, 小学生を対象としたため, Journal of Consulting Psychology, 21,

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343-玉木:小学生における攻撃性が社会的情報処理に及ぽす影響 349.

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R. H. Rosenman, Anger and hostility in carこの論文は,攻撃性(表出性攻撃と不表出性攻 diovascular and behavioral disorders, 5-30. 撃 )と社会的情報処理過程の関係を調在した。対 New York: Hemisphere. 象者は,小学校4年生から6年生615名(男子 Steinberg, M. S.,& Dodge, K. A. 1983 322名,女子293名)であった。攻撃性は,教師

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によって児童用攻撃性質問紙(GAQC) で測定さ れ,社会的情報処理過程は,6つの架空話を提示 し,対象者が測定した。いくつかの社会的情報処 理を測定する社会的情報処理測定質問紙は,4つ の社会的情報処理過程を含んでいる (符号化 ,表 象化過程 ,反応選択そして反応決定)。6つの架 空話は, 曖昧な挑発場面と対人葛藤場面そ れぞれ 3場面から構成されている 。 構造方程式モデリン グの結果 ,曖昧な挑発場面は,女子で表出性攻撃 と悪意意図帰属との間に因果関係が認められた。 対人葛藤場面では,女子で表出性攻撃と悪意意図 帰属主張性そして共感性との間に因果関係が認 められた。さらに,不表出性攻撃と悪意意図帰属 と共感性の間でも因果関係が認められた。 Attributional bias in aggressive adolescent

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玉木:小学生における攻撃性が社会的情報処理に及ぽす影響

Abstract

The purpose of this article was to investigate the relationships between aggression (expressive aggression and inexpressive aggression) and social information processing. Subjects were 615 (322 boys and girls 293) elementary school children in the 4th, 5th, and 6th grades. Aggression was assessed using General Aggression Questionnaire for Children (GAQC) by teachers, and social information processing was assessed using an original questionnaire. The social information processing questionnaire, designed to test several social information processing variables, included four domains of social information processing; encoding, interpretation (hostile attribution), response search, and response decision (assertiveness and sympathy). Six hypothetical vignettes each of which had three situations were composed in the ambiguous provocation situation and interpersonal conflict situation.

As a result of the structural equation modeling, it was recognized that there is a significant causal relationship between expressive aggression and hostile attribution for the girls in the ambiguous provocation situation. Moreover, significant causal relationships were found between expressive aggression and each of hostile attribution, assertiveness and sympathy for the girls in the interpersonal conflict situation, and between inexpressive aggression and each of hostile attri­ bution and sympathy for the girls.

参照

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