不均一な照明空間の評価指標に関する研究 [ PDF
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(2) 被験者は、主に九州大学建築学科の学生である。実験 1. ■パターンA. が実験 2 に及ぼす影響を防ぐため、実験 2 では、実験 1 と異なる被験者を選定した。実験 1 の被験者は 22 人、実. Wm値. 験 2 の被験者は 21 人である。また、矯正視力が 0.6 以上. 標準刺激. であることも条件に加えた。. 比較刺激. 5.46 平均明度レベル 101 平均明度レベル 90∼170(計8枚). ■パターンB. 4.1 実験 1 4.1.1 実験概要. Wm値. 実験 1 の目的は、平均明度レベルの違いと不均一感と. 標準刺激. の関係を検討することである。暗室に 2 台のディスプレ. 比較刺激. イを L 字型に配置し、被験者の目と各ディスプレイまで の距離が等しく 573 ㎜になるようにした。. 5.46 平均明度レベル 111 平均明度レベル 71∼151(計8枚). ■パターンC. 片方のディスプレイに標準刺激となる画像を提示し、 Wm値. もう片方のディスプレイに標準刺激と同じ照明パターン. 標準刺激. で、平均明度レベルの異なる比較刺激を提示した。被験 者には、標準刺激を 100 として、比較刺激がどの程度不. 比較刺激. 5.20 平均明度レベル 122 平均明度レベル 82∼162(計8枚). 均一と感じるかを評価させた(ME 法) 。1 つの比較刺激. ■パターンD. を評価し終えると、次の比 較刺激を提示した。比較刺. Wm値. 激の提示順序はランダム. 標準刺激. とした。 この手順を 8 種の. 比較刺激. 照明パターン毎に繰り返 した。図 1 に実験風景を. 5.46 平均明度レベル 101 平均明度レベル 71∼141(計7枚). ■パターンE 図 1 実験風景. 示す。. Wm値. この実験に用いた評価刺激は、幅 3,400 ㎜×奥行き. 標準刺激. 4,000 ㎜×高さ 2,600 ㎜の照明空間を想定した 1/6 の縮 尺模型を、8 種の照明パターンによって照射し、それをデ. 比較刺激. 5.00 平均明度レベル 115 平均明度レベル 75∼165(計9枚). ジタルカメラで撮影した画像を基にしている。照明パタ. ■パターンF. ーンは、ランプの位置と個数によって変化させ、出力の 強弱と照明器具の前面に設置した拡散板によって、画像. Wm値. の輝度対比を変えた。この画像に対して、画像処理によ. 標準刺激. って、平均明度レベルのみを 10 単位で変化させた画像を. 比較刺激. 作成し、評価刺激とした。評価刺激は 1024 ピクセル× 768 ピクセルとした。各照明パターンの標準刺激を図 2. 5.12 平均明度レベル 116 平均明度レベル 76∼166(計9枚). ■パターンG. に示す。また、図 3 に画像処理フローを示す。撮影に用. Wm値. いたカメラは、デジタルカメラ Nikon COOLPIX 990 で. 標準刺激. ある。表 1 に撮影モードを示す。. 比較刺激. 5.98 平均明度レベル 127 平均明度レベル 87∼167(計8枚). 表 1 撮影モード シャッタースピード 絞り値 露出補正値 焦点距離 階調補正 感度 ホワイトバランス 輪郭強調 画質. ■パターンH. 1/30秒 F4.4 0 f8.2mm(×1.0) 標準 オート 電球 標準 XGA FINE. Wm値 標準刺激 比較刺激. 図 2 評価刺激 45-2. 4.75 平均明度レベル 115 平均明度レベル 75∼165(計9枚).
(3) 4.1.3 平均明度レベルによる Wm 値の補正 実験 1 の結果より、Wm 値に以下の式を用いて補正を 加え、 不均一な照明空間の新しい評価指標として Ldif 値を 提案する。ただし、以下の式は、平均明度レベルが 70∼ 170 の範囲において有効とする。. Ldif % Wm $ !255 # L " / 255 ( L は平均明度レベル) 4.2 実験 2 4.2.1 実験概要 実験 2 の目的は、局所的要素を考慮した評価指標とし て新しく提案した Ldif 値と不均一感との関係、及び、大局 的要素を考慮した評価指標と不均一感との関係を検討す ることである。実験 2 においても、実験 1 と同じ暗室で、 被験者の目とディスプレイまでの距離が 573 ㎜になるよ. 図 3 画像処理フロー. うにした。なお、実験 2 で使用したディスプレイは一台 のみである。. 4.1.2 実験結果と考察 ME 法では、一般的に、物理尺度上に等比数列をなす. ディスプレイに評価刺激を提示し、被験者に不均一感. よう比較刺激を選択することとしている。しかし、本研. を「非常に均一」 、 「かなり均一」 、 「やや均一」 、 「どちら. 究では、評価刺激として使用した画像の性質上、比較刺. でもない」 、 「やや不均一」 、 「かなり不均一」 、 「非常に不. 激を物理尺度上(この場合は平均明度レベル)に等比数. 均一」の 7 段階で評価させた。評価刺激は、実験 1 と同. 列をなすように選択できず、また、実験後の個人面接に. じものであり、実験 1 における標準刺激、比較刺激、照. より、ほとんどの被験者が間隔尺度での目視評価を行っ. 明パターンによらず、全てランダムに提示した。. ていたことが判明した。したがって、ME 法の代表値と. 4.2.2 実験結果と考察. して幾何平均ではなく、算術平均による分析を行った。. 被験者に不均一感を 7 段階で評価させたものに、不均. 以後は、間隔尺度による評価を行った被験者のデータの. 一感の低い方から-3∼+3 の得点を与え、 算術平均をとる。. みを扱う。図 4 に実験結果を示す。. また、それぞれの評価刺激について Ldif 値を算出する。こ れより、Ldif 値と不均一感との関係を検討した。図 5 に実. 照明パターン毎に回帰直線を作成すると、どの照明パ. 験結果を示す。. ターンにおいても、平均明度レベルと不均一感との関係 は、0.96∼0.99 の高い相関係数で、右下がりのグラフと. どの照明パターンにおいても、Ldif 値が大きくなると不. なる。これより、平均明度レベルが 70∼170 の範囲にお. 均一感も大きくなる傾向があり、Ldif 値と不均一感との間. いては、平均明度レベルと不均一感との間には、直線的. に正の相関関係があることは明らかである。しかし、Ldif. で一定の相関関係があり、平均明度レベルが大きくなる. 値が同じ値であっても、照明パターンによって不均一感. ほど均一に感じ、平均明度レベルが小さくなるほど不均. の大小が見られる。. 一に感じるといえる。また、回帰直線の傾きについて、. 3. 照明パターンによる大きな差異は認められなかった。 2. 160 パターンA パターンA - Regr. 140. 1. パターンB. 不均一感. 不均一感 ME 値. パターンB - Regr パターンC. 120. パターンC - Regr パターンD パターンD - Regr. 100. パターンE パターンE - Regr. 0 パターンA パターンB パターンC パターンD パターンE パターンF パターンG パターンH. -1. パターンF. 80. パターンF - Regr パターンG. 60. -2. パターンG - Regr パターンH パターンH - Regr. 40 60. 80. 100. 120. 140. 160. -3. 180. 1.5. 2.0. 2.5. 平均明度レベル. 3.0. Ldif値. 図 5 Ldif 値と不均一感. 図 4 平均明度レベルと不均一感 45-3. 3.5. 4.0. 4.5.
(4) 照明パターンによる不均一感の大小には、照明配置や. 度レベルの標準偏差値の二元的なものであることが望ま. 光源の個数などの違いによって生じる大局的要素の違い. しい。Ldif 値及び明度レベルの標準偏差値と不均一感の関. が影響していると考えた。ここで、パターン A、パター. 係を図 8、図 9 に示す。. ン B、パターン C は、正面壁から被験者の目に向かって. どちらのグループにおいても、Ldif 値が大きくなるほど、. 照射する特殊な照明配置であることを考慮し、正面壁の. また、明度レベルの標準偏差値が大きくなるほど不均一. みに光源がある照明パターンの集合をグループⅠ、正面. に感じるといえる。つまり、Ldif 値と明度レベルの標準偏. 壁以外の壁にのみ光源がある照明パターンの集合をグル. 差値を算出することにより、照明空間の不均一性を評価. ープⅡと分類し、各グループについて回帰直線を作成し. できる。. た。その結果、Ldif 値と不均一感との関係は、相関係数. 3. 0.93∼0.96 の高い相関を示した。各グループの回帰直線. 2. を図 6、図 7 に示す。 値を求め、不均一感との関係を検討すると、どちらのグ. 1. 不均一感. 照明パターン毎に、画像全体の明度レベルの標準偏差 ループにおいても、明度レベルの標準偏差値が大きいほ. 0. -1. ど、同じ Ldif 値に対する不均一感は大きい。これより、照. パターンA パターンB パターンC. -2. 明配置の似ているパターンでは、明度レベルの標準偏差 -3. 値が大きいほど不均一に感じるといえる。. 32 明 度31 30. レベル 29 28 の標 27 準偏. 3. 図 8. 2. 2.0. 26. 差 値 25. 24. 2.5. 1.5. 3.0. 3.5. 4.0. 4.5. 値 L dif. Ldif 値及び明度レベルの標準偏差値と不均一感 (グループⅠ) 3. 0 2. -1. パターンA(30.98) パターンA - Regr パターンB(26.59) パターンB - Regr パターンC(29.45) パターンC - Regr. -2. 1. 不均一感. 不均一感. 1. -3 1.5. 2.0. 2.5. Ldif値. 0. パターンD パターンE パターンF パターンG パターンH. -1. 3.0 3.5 4.0 4.5 ( )の中は明度レベルの標準偏差値. -2. 図 6 Ldif 値と不均一感(グループⅠ) -3. 3. 明 度レ23 22 21 ベルの 標 準 20 19 偏差 値. 2. 図 9 1. 不均一感. 24. 0. パターンD(18.69) パターンD - Regr パターンE(19.64) パターンE - Regr パターンF(21.26) パターンF - Regr パターンG(23.40) パターンG - Regr パターンH(18.23) パターンH - Regr. -1 -2. 2.0. 2.5. Ldif値. 17. 1.5. 2.5. 3.5. 4.0. 4.5. 値 L dif. Ldif 値及び明度レベルの標準偏差値と不均一感 (グループⅡ). 6. おわりに 本研究では、照明空間の不均一性が、局所的要素と大 局的要素によって構成される複合的な尺度であることを 明らかにし、Ldif 値と明度レベルの標準偏差値による二元. -3 1.5. 2.0 18. 3.0. 3.0 3.5 4.0 4.5 ( )の中は明度レベルの標準偏差値. 的な評価指標を提案した。この評価指標を用いれば、照 明環境の心理的効果について、定量化が可能となる。. 図 7 Ldif 値と不均一感(グループⅡ). 参考文献. 5. 評価指標の提案 実験 2 の結果より、照明空間の不均一性は、局所的要 素と大局的要素によって構成される複合的な尺度である ことが明らかになった。したがって、その評価指標は、 大局的要素を考慮した明 局所的要素を考慮した Ldif 値と、 45-4. 1) 李善永、他:住宅居間における明るさの分布が心理評価に及 ぼす影響に関する研究、日本建築学会計画系論文報告集、 pp.1-6、1997 年 2) 中村芳樹、他:オフィスの輝度分布特性とその心理的効果、 日本建築学会計画系論文報告集、pp.27-33、1993 年.
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